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関連ワード 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) /  需要者 /  信義則 /  商品等表示 /  出所表示性(出所表示) /  類似性(類似) /  外観 /  印象 /  記憶 /  離隔的 /  混同のおそれ(混同) /  誤認混同 /  模倣 /  営業方法 /  差止請求(差止) /  営業上の利益 /  逸失利益 /  利益額(利益の額) /  無形損害 /  デザイン /  侵害 /  著名表示(著名性) /  代理人 /  営業表示性 /  識別力 /  混同のおそれ(混同) /  品質等誤認表示(誤認) /  損害賠償 /  推定 / 
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事件 平成 21年 (ワ) 6755号 不正競争行為差止等請求事件
原告株 式会社西松屋チェーン
同訴訟代理人弁護士小松陽一郎
同 福田あやこ
同 井口喜久治
同 森本純
同 辻淳子
同 藤野睦子
被告イ オンリテール株式会社
同訴訟代理人弁護士田中伸一郎
同 渡辺光
同 奥村直樹
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2010/12/16
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求(主位的請求)1被告は,別紙被告売場目録記載の各店舗の各ベビー・子供服売場において,別紙差止対象商品陳列デザイン目録記載1の商品陳列デザインを使用してはならない。
2被告は,別紙被告売場目録記載の各店舗の各ベビー・子供服売場において,別紙差止対象商品陳列デザイン目録記載2の商品陳列デザインを使用してはならない。
3被告は,別紙被告売場目録記載の各店舗の各ベビー・子供服売場において,別紙差止対象商品陳列デザイン目録記載3の商品陳列デザインを使用してはならない。
4被告は,原告に対し,2億2725万円及びこれに対する平成21年5月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(第1次予備的請求-主位的請求1及び2の予備的請求-)被告は,別紙被告売場目録記載の各店舗の各ベビー服・子供服売場において,別紙差止対象商品陳列デザイン目録記載1及び2の特徴を備える商品陳列デザインを使用してはならない。
(第2次予備的請求-主位的請求1ないし3の予備的請求-)被告は,別紙被告売場目録記載の各店舗の各ベビー・子供服売場において,別紙差止対象商品陳列デザイン目録記載1ないし3の特徴を備える商品陳列デザインを使用してはならない。
第2事案の概要本件における原告の被告に対する被告行為の差止めに係る請求は,原告が被告に対し,原告店舗でベビー・子供服の陳列のために使用している別紙原告商品陳列デザイン目録記載1ないし3の商品陳列デザイン(以下「原告商品陳列デザイン1ないし3」という )は,主位的にはそれぞれ独立して,第1次予 。
備的に原告商品陳列デザイン1及び2の組み合わせにより,第2次予備的に原告商品陳列デザイン1ないし3の組み合わせにより,子供服等の販売を業とする原告の営業表示として周知又は著名であるとして(以下,原告商品陳列デザイン1ないし3の商品陳列デザイン及び上記組み合わせにかかる商品陳列デザインを総称して「原告商品陳列デザイン」ともいう,不正競争防止法3条1 。)項(2条1項1号又は2号)に基づき,被告の特定店舗を対象として,被告が使用する商品陳列デザインの使用の差止めを求める事案であり,本件における原告の被告に対する金銭請求は,原告が被告に対し,主位的には上記不正競争行為を理由として,上記店舗及びそれ以外の被告店舗も対象とした上,不正競争防止法4条に基づく損害賠償と同損害金支払債務の遅延損害金の支払を求め,予備的には,被告が上記店舗及びそれ以外の被告店舗において原告商品陳列デザインに類似する商品陳列デザインを使用する行為が不法行為に当たるとして,民法709条に基づく損害賠償と同損害金支払債務の遅延損害金の支払を求める事案である。各請求の具体的特定は下記のとおりである。
記【被告行為の差止めに係る請求】?(主位的請求)の1ないし3原告商品陳列デザイン1ないし3がそれぞれ独立して周知又は著名な原告の営業表示に該当することを前提とする,別紙被告売場目録記載の店舗(以下「本件被告店舗」という )を対象とした不正競争防止法3条1項に基づ 。
く別紙差止対象商品陳列デザイン目録(以下「差止対象商品陳列デザイン目録」という )記載1ないし3の各商品陳列デザインの使用の差止請求。 。
?(第1次予備的請求-主位的請求1及び2の予備的請求-)原告商品陳列デザイン1及び2を組み合わせた商品陳列デザインが周知又は著名な原告の営業表示に該当することを前提とする,本件被告店舗を対象とした不正競争防止法3条1項に基づく差止対象商品陳列デザイン目録記載1及び2の特徴を備える商品陳列デザインの使用の差止請求。
?(第2次予備的請求-主位的請求1ないし3の予備的請求-)原告商品陳列デザイン1ないし3を組み合わせた商品陳列デザインが周知又は著名な原告の営業表示に該当することを前提とする,本件被告店舗を対象とした不正競争防止法3条1項に基づく差止対象商品陳列デザイン目録記載1ないし3の特徴を備える商品陳列デザインの使用の差止請求。
【金銭請求-(主位的請求)の4】(主位的)本件被告店舗及びそれ以外の被告店舗も対象とした上記不正競争行為を理由とする不正競争防止法4条に基づく2億2725万円の損害賠償及び同金額に対する不正競争行為の後の日である平成21年5月22日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求。
(予備的)上記主位的主張に係る事実が不法行為を構成することを理由とする民法709条に基づく2億2725万円の損害賠償請求及び同金額に対する不法行為の後の日である平成21年5月22日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求。
1判断の基礎となる事実(当事者間に争いがない )。
( )原告は,ベビー・子供用品及び婦人紳士用品の販売等を主たる目的とす1る株式会社である。
, ( )被告は,衣料品,食料品,家庭用品,日用品雑貨,電器製品,家具製品2化粧品,装飾品雑貨その他の百貨の小売並びにこれに関連する物品の製造,加工,卸売及び輸出入等を主たる目的とする株式会社である。
( )原告及び被告は,それぞれその経営する店舗のベビー・子供服売場にお3いて,ベビー・子供服を陳列して販売しているが,被告は,平成21年以降,本件被告店舗のベビー・子供服売場におけるベビー・子供服の陳列方法を変更した。
2争点( )被告の行為が不正競争防止法2条1項1号又は2号の不正競争に該当す1るかア?原告商品陳列デザイン1ないし3はそれぞれ独立して周知又は著名な原告の営業表示に該当するか,?原告商品陳列デザイン1及び2を組み合わせた商品陳列デザインは周知又は著名な原告の営業表示に該当するか,?原告商品陳列デザイン1ないし3を組み合わせた商品陳列デザインは周知又は著名な原告の営業表示に該当するか(争点1)イ本件被告店舗のベビー・子供服売場の商品陳列デザインは原告商品陳列デザインに類似するか(争点2)ウ誤認混同のおそれがあるか-不正競争防止法2条1項1号の不正競争を理由とする請求のみに関する争点-(争点3)( )被告の行為が原告に対する不法行為を構成するか(争点4)2( )原告の損害(争点5)3第3争点に関する当事者の主張1争点1(原告商品陳列デザインは周知又は著名な原告の営業表示に該当するか)について【原告の主張】( )原告商品陳列デザインの特徴1原告が全国の原告店舗のベビー・子供服売場において標準的仕様として採用している商品陳列デザインの特徴は原告商品陳列デザイン1ないし3のとおりである。
( )原告商品陳列デザインが原告の営業表示に該当すること2ア原告の各店舗では,原告のコントロールにより,原告商品陳列デザイン1ないし3が統一的に採用されているところ,かかる商品陳列デザインは,同種の商品を取り扱う他の店舗に見られない独自のものであって,本来的な識別力を有する。そして,原告は,平成9年頃からかかる原告独自の商品陳列デザインを長期間にわたり継続的に使用しており,その結果,需要者は,そのような商品陳列デザインを目にした場合 「いかにも西松屋ら,しい」という印象を視覚的に得ることになるので,かかる原告の商品陳列デザインは,単なる商品の陳列方法たる意味を超え,出所表示機能を獲得した営業表示となっている。したがって,原告商品陳列デザイン1ないし3は,それぞれ独立して原告の営業表示になっている。
イまた,原告商品陳列デザイン1ないし3のそれぞれが独立して原告の営業表示になっていないとしても,上記事実関係に照らし,原告商品陳列デザイン1及び2を組み合わせた商品陳列デザインは原告の営業表示になっているし,さらに少なくとも原告商品陳列デザイン1ないし3を組み合わせた商品陳列デザインは,原告の営業表示になっている。
( )周知又は著名性3原告商品陳列デザイン1ないし3は,それが他店に見られない独自のものであること,日本全国に展開されている原告の各店舗において長期間かつ統一的に使用されていること,需要者が繰り返し原告店舗に来店する傾向にあること,原告自身の著名性と来店者数の多さ,テレビコマーシャルにより原告商品陳列デザインが全国的に宣伝されていることなどにより,遅くとも,被告が原告商品陳列デザインの模倣を開始した平成21年1月頃には,需要者の間において著名であり,少なくとも広く知られた営業表示となっていることは明らかである。
【被告の主張】( )原告店舗の状況1原告の顧客は,原告店舗に入る前の段階で,店舗正面の「西松屋」の文字が記載されるなどした表示を目にすることによって原告店舗であることを認識しているのであって,この店舗正面の表示を離れ,売場状況のみで原告の店舗にいることを認識しているものではない。
また,原告店舗の売場においては,ベビー・子供服に加えて,肌着,ミルク,お菓子,おもちゃ,乳母車,マタニティ用品等の多数の商品が同じ売場の中に陳列されており 「ベビー・子供服売場」という売場が存在するもの ,ではない。原告店舗においては,ベビー・子供服は,一つの売場で販売のために展示されている商品のほんの一部であるから,顧客が原告店舗のベビー・子供服の陳列方法に注目するとは考えられない。
さらに,ベビー・子供服の商品陳列部分以外の原告店舗の売場を見ると,?例外は存在するが,壁に囲まれた背中合わせの長さが十数メートルから二十メートルを超えるゴンドラが数列置かれているという構成が基本的であり,?通常は顧客が出入りしない倉庫に置かれているべき商品ストックがゴンドラ等の什器の上に段ボール箱に入れて置かれ,?商品を着たマネキン等の通常の店舗にあるはずの装飾的展示が,原告店舗の売場には一切存在しないこと等が目に付く。このように,顧客は,原告店舗の売場において,上記?ないし?などの特徴を思い浮かべるのであり,ベビー・子供服の商品陳列方法のみに着眼して,原告店舗の内部をイメージすることはない。
( )したがって,店舗の一部だけをとりだして営業表示であるとする原告の2主張は誤りであり,原告商品陳列デザイン1ないし3が営業表示に該当することはありえない。
( )原告が主張する商品陳列デザインに特徴がないこと3また原告商品陳列デザイン1ないし3は,いずれもありふれた商品陳列方法であって特徴といえるものはない。またそもそも,商品陳列「デザイン」と称する意匠的な要素はなく,単に商品陳列「方法」と称すべき機能的なものである。詳細は以下のとおりである。
ア原告商品陳列デザイン1ないし3に共通する構成要素であるハンガー掛け状態での陳列について衣料品の通常の陳列方法は,ハンガー掛けか畳み置きのいずれかであり,ハンガー掛けの状態で陳列することは何ら特徴的なものではない。
イ原告商品陳列デザイン1ないし3に共通する構成要素である高い位置まで商品を陳列することについて限られた面積の売場に多数の商品を陳列するためには,高い位置まで陳列することは当然のことである。原告は,210?の高さに意味があるかのように述べるが,国内で一般に販売されている商品陳列什器にそのような高さのものが存在するだけであり,それ以外に意味はない。
ウ原告商品陳列デザイン1ないし3に共通する構成要素である複数商品をフェースアウトの形態で陳列フックに陳列することハンガー掛けでの陳列では,商品をフェースアウト(前身頃を通路側に向ける陳列方法)か,スリーブアウト(袖部分を通路側に向ける陳列方法)の形態のいずれかでしか陳列できない。また,フェースアウトの状態での陳列には陳列フックは必須であり,同フックに複数の商品を掛けることは当たり前である。また,高い位置まで商品を陳列する場合には,遠くからでも商品のデザインが確認できるようにフェースアウトでなければならない。フェースアウトの陳列は特徴的なものではない。
エ原告商品陳列デザイン1ないし3に共通する構成要素であるひな壇状ではなく陳列面が連続することについて陳列面を連続させることは通常のことであり,むしろひな壇状にすることが装飾的である。
オ原告商品陳列デザイン1,2に共通する構成要素である商品取り棒について商品取り棒を設置するのは,ディスカウント店で高いところまで商品を展示したときに当然なされることである。
カ原告商品陳列デザイン2の構成要素であるゴンドラが切れ目なく店舗奥まで連続していることについて副通路が短ければそもそもゴンドラに切れ目を設けることはできない。
ゴンドラに切れ目を設けるか否かは適宜設計されるべきことにすぎない。
キ原告商品陳列デザイン3の構成要素であるゴンドラエンドの反転フラップ方式の値段表示についてゴンドラエンドの反転フラップ方式の値段表示は,顧客に日々異なる低価格の商品の販売をアピールするスーパーマーケット等でよく用いられているものである。
ク以上のとおり,原告が主張する店舗壁面,ゴンドラ,ゴンドラエンドにおける原告商品陳列デザイン1ないし3の各構成要素は,いずれも何ら特異なものではなく,商品の陳列方法として小売業において適宜採用されてきたものである。
( )同業他社の商品陳列方法4ウォルマート,ターゲット,カルフール,ザ・プライス及びユニクロのほか,被告が経営するメガマートなどでは,原告が主張する特徴を多く備える商品陳列方法が普通に使用されているから,原告商品陳列デザイン1ないし3はいずれもありふれたものである。このような商品陳列方法は,原告がどれだけの期間,どのように使用していたとしても,営業表示性を獲得することはない。
( )原告商品陳列デザイン1ないし3が機能に由来すること5原告商品陳列デザイン1ないし3の各構成要素は,いずれも売上げを増大して利益をあげる目的を達成するための機能的なものであるから,競争上類似せざるを得ないものである。また,これらの構成要素を組み合わせることも,上記目的達成のためのものであるから,非機能的であるということはできない。このような機能的な商品陳列方法を営業表示に当たるということはできない。
2争点2(本件被告店舗のベビー・子供服売場の商品陳列デザインは原告商品陳列デザインに類似するか)について【原告の主張】( )原告商品陳列デザイン1ないし3に共通する特徴のうち210?を超え1る高さまで商品を陳列するという特徴は,一般の成人女性の手が届かない高さまで商品を陳列することに本質的な意味があり,一般の成人女性の手が届かないという点では,200?の高さでも同じである。
また,商品陳列デザインにおいて,原告商品陳列デザイン1ないし3に共通する各特徴を9割以上のスパンで採用した場合,隔離的観察をすることになる需要者は,全体的印象において,原告商品陳列デザイン1ないし3と混同を来すことになるから,そのような商品陳列デザインは,原告商品陳列デザイン1ないし3の類似範囲に含まれるといえる。
したがって,上記の点で原告商品陳列デザイン1ないし3と構成要素の一部が異なる差止対象商品陳列デザイン目録記載1ないし3の商品陳列デザインであっても,これらは順に原告商品陳列デザイン1ないし3に類似するといえる。
( )そして本件被告店舗の商品陳列デザインが差止対象商品陳列デザイン目2録記載1ないし3の商品陳列デザインと同一ないし類似する関係は,別紙[争点2に関する原告の主張]に記載のとおりである。
( )以上のとおり,差止対象商品陳列デザイン目録記載1ないし3の商品陳3列デザインは,それぞれ原告商品陳列デザイン1ないし3に類似する関係にあるといえるし,また本件被告店舗で使用されている商品陳列デザインは,それぞれ差止対象商品陳列デザイン目録記載1ないし3の商品陳列デザインと同一ないし類似する関係にあるから,以上を総合すると,本件被告店舗で使用されている商品陳列デザインは,原告商品陳列デザイン1ないし3に類似するということができる。
( )なお,本件被告店舗で使用されている商品陳列デザインの中には差止対4象商品陳列デザイン目録記載の商品陳列デザインの特徴の一部を備えていないものがあるが,それらの店舗においても将来的に同目録記載の商品陳列デザインが使用されるおそれがある。
( )以上により,原告は,被告に対し,原告の営業上の利益に対する侵害の5停止ないし予防のため,本件被告店舗を対象として,同目録記載の商品陳列デザインの使用の差止めを求める。
【被告の主張】( )原告は,本件被告店舗のベビー・子供服売場における壁面,ゴンドラ群1長手方向及びゴンドラエンドの商品陳列方法が,それぞれ独立して順に原告商品陳列デザイン1ないし3の商品陳列方法に類似すると主張するが,原告店舗では,壁面,ゴンドラ群長手方向及びゴンドラエンドのすべてにおいて商品が陳列されているのであるから,本件被告店舗のベビー・子供服売場の壁面,ゴンドラ群長手方向及びゴンドラエンドのすべての商品陳列方法が原告商品陳列デザイン1ないし3と類似しなければ,原告商品陳列デザイン1ないし3と本件被告店舗で使用されている商品陳列方法が類似するということはできない。
( )また,原告は,本件被告店舗で使用されている商品陳列方法が原告商品2陳列デザインと類似するかを検討するに当たり直接比較することをせず,原告商品陳列デザイン1ないし3の各特徴が9割以上のスパンで採用されていれば原告商品陳列デザイン1ないし3に類似する範囲に含まれるとして,それに基づいて設定された差止対象商品陳列デザイン目録記載の商品陳列方法と,現実の本件被告店舗で使用されている商品陳列方法とを比較して類似性を主張している。
( )しかし,原告が主張するように,原告店舗においては,原告商品陳列デ3ザイン1ないし3が全てのスパンで具備されていることに特徴があり,そのことが顧客の目を惹くというのであれば,原告商品陳列デザイン1ないし3の特徴のうち一部を欠いている場合には,その離隔的観察において顧客が原告の店舗であると混同することはないはずである。そうすると原告商品陳列デザイン1ないし3の特徴のうち一部を欠く差止対象商品陳列デザイン目録記載1ないし3の商品陳列方法は原告商品陳列デザイン1ないし3に類似するといえないことになる。
( )したがって,本件被告店舗において使用されている商品陳列方法が,差 4止対象商品陳列デザイン目録記載1ないし3の商品陳列方法に類似していたとしても,そのことから原告商品陳列デザイン1ないし3の商品陳列方法に類似しているということはできないということになる。
( )なお,本件被告店舗において使用されている商品陳列方法と原告商品陳5列デザイン1ないし3を直接対比検討すると,別紙[争点2に関する被告の主張]記載のとおりであり,本件被告店舗において使用されている商品陳列方法は原告商品陳列デザイン1ないし3と類似するということはできないし,また被告が,今後,原告商品陳列デザイン1ないし3と類似する商品陳列方法を使用するおそれもない。
3争点3(誤認混同のおそれ)について【原告の主張】上記2【原告の主張】のとおり,本件被告店舗で使用されている商品陳列デザインは,原告商品陳列デザイン1ないし3に類似するから,被告の商品陳列デザインを目にした需要者は,原告の営業表示である原告商品陳列デザイン1ないし3を想起し,被告ショッピングモール内に原告店舗が出店しているのではないかと誤認する可能性は十分にある。少なくとも,原告と被告との間に,いわゆる親会社,子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係が存するものと誤認する可能性があることは明らかである。
【被告の主張】上記2【被告の主張】のとおり,本件被告店舗において使用されている商品陳列方法は原告商品陳列デザイン1ないし3に類似しないから,混同のおそれもない。
また,原告は,本件被告店舗のベビー・子供服売場における商品陳列方法と原告店舗のベビー・子供服売場における商品陳列方法を対比して類似性の主張をするが,顧客は店舗の外観を見て特定の店舗であることを認識して店内に入った上で,その店舗の内部全体の状況を目にするのであるから,店舗の営業主体の混同惹起を問題とする場合に,店舗内部の一部の特定エリアの商品陳列方法のみを取り上げて対比すること自体がそもそも誤りである。
4争点4(被告の行為が不法行為を構成するか)について【原告の主張】( )原告商品陳列デザインは多大な費用や労力をかけて築かれたこと1原告は,平成4年頃から,商品陳列デザインの研究に着手し,約5年間に及ぶ試行錯誤の末,平成9年頃に現在の原告商品陳列デザインに到達したものであり,合計6回の店舗改装のために総額1億1878万円余りの費用を費やした。
そして,原告は,このようにして確立した原告商品陳列デザインを統一的に全店舗に使用し,これをコントロールするため,レイアウトマンという商品陳列デザインを専門的に扱う担当者を置き,オンラインシステムで本部から各店舗に対し,商品陳列を指示できる管理体制を確立するとともに,商品陳列デザインに関する研修会を繰り返し実施して,店舗責任者の指導を図るなどして,原告商品陳列デザイン徹底のためのコントロールを続けている。
その結果,原告は,その店舗数が全国713店に達する規模に成長し,子供服の売上高では業界の首位となっている。その意味で,原告商品陳列デザインは,単なる商品陳列方法,陳列態様ではなく,原告のかけがえのない資産であり,極めて重要な営業資産となっている。
( )被告による原告商品陳列デザインの模倣2被告は,平成21年1月頃から 「JUSCO N化計画」と称する原告を ,ターゲットとしたプロジェクトを起ち上げて,そのベビー・子供服売場において,大規模かつ組織的に原告商品陳列デザインの模倣を行っている。その模倣は,単に商品陳列デザインを真似るというだけでなく,ゴンドラ,金属製フックといった微細な部材にいたるまで同一のものを用いるなど徹底したものである。
( )原告の営業上の利益を害する意図3原告は,被告に対し,模倣行為を中止するよう警告する平成21年4月27日付けの通知書を送付しているが,被告はこれを無視して模倣を継続し,原告商品陳列デザインに類似する商品陳列デザインを採用した店舗数を増加させたものであるから,原告の営業上の利益を侵害することを十分に認識した上で意図的模倣行為を実行していたことは明らかである。
( )同一モール内での模倣行為4原告は,被告との間で,平成19年2月17日付けで,被告の運営管理するショッピングモール(ジャスコ六日町店)内において原告店舗を出店させる旨の定期建物賃貸借契約を締結し,原告六日町店として出店している。そして,平成21年4月10日頃,賃貸人たる被告は,同じモール内に,原告商品陳列デザインを模倣したベビー・子供服売場を開設し,原告の営業上の利益を侵害している。賃貸借契約が当事者間の人的・物的信頼関係を基礎とした継続的契約関係であり,信義則上互いに相手方の営業上の利益を侵害してはならない関係にあることは当然のことであるにもかかわらず,被告は原告との信頼関係を一方的に破って原告の営業上の利益を侵害しているのであり,その行為は,著しく不公正であり,その違法性は重大である。
( )以上のとおり,原告商品陳列デザインは,原告が試行錯誤を繰り返して5巨額の投資をした結果開発でき,現在も統一的に実施されるようコントロールされているものである。そうであるのに被告は,巨大企業の論理でその成果の模倣を繰り返して,原告商品陳列デザインから生じる原告の営業上の利益を侵害しているものである。その行為は,著しく不公正であり,公正かつ自由な競争原理によって成り立つ取引社会において許されないものである。
被告の行為によって原告の法的保護に値する営業活動上の利益が侵害されており,しかも被告には害意が認められる以上,被告の行為は不法行為を構成するといえる。
【被告の主張】費用や労力をかけて築いた成果であっても,第三者の利用を制限するためには,原則として法律上その旨の規定があり,その要件を満たす必要がある。もっとも,その利用が著しく不当と解されるようなものであり,それによって自由な競争秩序が害されるような場合においては,不法行為上の責任を負う場合があることまでは否定されないが,原告の主張を前提としても,本件は被告が原告の商品陳列方法を参考にしたというだけのことであり,被告の行為が不法行為を構成することはない。
5争点5(原告の損害の額)について【原告の主張】( )不正競争防止法に基づく損害1ア被告は,遅くとも平成21年1月頃から,次々に店舗を改装し,原告商品陳列デザインと同一の商品陳列デザインを使用してベビー・子供服の販売を始めており,その店舗数は少なくとも50店舗あり,これら改装後の店舗におけるベビー・子供服の売上高は,少なく見積もっても4億2417万円である。
そして,被告の利益率は30%を下らないから,被告が不正競争行為により得た利益の額は,少なくとも1億2725万円である。
よって,被告の不正競争行為により原告が被った損害(逸失利益)は,不正競争防止法5条2項に基づき,1億2725万円と推定される。
イまた,原告商品陳列デザインは,原告のブランドイメージを形成する極めて重要な要素となっているから,被告の模倣行為が新聞や雑誌に掲載されたことによって,被告との間に何らかの資本関係・提携関係が生じたのではないか,原告のノウハウが被告に流出しているのではないかとの疑問・懸念が取引先や株主から多数寄せられるに至っており,原告の信用は大きく毀損されている。かかる無形損害は1億円を下らない。
ウしたがって,原告が被告の不正競争により受けた損害は2億2725万円を下らない。
( )不法行為に基づく損害(上記( )の予備的請求)2 1被告は,原告商品陳列デザインを模倣した店舗において,原告店舗で販売されている商品と同種商品を販売し,これによって被告店舗と地域的に競業する原告店舗に対して多大な損害を与えている。原告商品陳列デザインを模倣した被告の店舗は少なくとも50店舗あり,原告はこれによって莫大な損害を被っている。被告の模倣行為によって原告に生じた損害は,逸失利益及び信用毀損に基づく無形損害も含めて,2億2725万円を下らない。
【被告の主張】争う。
第4当裁判所の判断1争点1(原告商品陳列デザインは周知又は著名な原告の営業表示であるか)について( )ア原告は,原告商品陳列デザイン1ないし3は,いずれも他店にない独1自のものであって本来的な識別力があり,またベビー・子供服販売の業界トップの原告が長年にわたり使用してきたことから,二次的出所表示機能も十分獲得しているとした上で,主位的にはそれぞれ独立して,第1次予備的に原告商品陳列デザイン1及び2の組み合わせにより,第2次予備的に原告商品陳列デザイン1ないし3の組み合わせにより,原告の営業表示として周知又は著名であることを前提に,被告の行為が不正競争防止法2条1項1号又は2号に定める不正競争に該当する旨を主張している。
本件における原告の不正競争防止法に基づく主張が認められるためには,主張に係る原告商品陳列デザインが,不正競争防止法2条1項1号又は2号にいう商品等表示(営業表示)であることがまず認められなければならないが,そもそも商品陳列デザインとは,原告も自認するとおり「通常,いかに消費者にとって商品を選択しやすく,かつ手にとりやすい配置を実現するか,そして,如何に多くの種類・数量の商品を効率的に配置するか,などの機能的な観点から選択される」ものであって,営業主体の出所表示を目的とするものではないから,本来的には営業表示には当たらないものである(なお被告は 「商品陳列方法」と称すべき旨主張しているが,本 ,件で問題であるのは,特定の陳列方法を用いた商品陳列の結果として作り出される商品陳列の外観であるから,以下においては,その意味で,原告の表現に従った「商品陳列デザイン」という表現を用いる。。)イしかし,商品陳列デザインは,売場という営業そのものが行われる場に置かれて来店した需要者である顧客によって必ず認識されるものであるから,本来的な営業表示ではないとしても,顧客によって当該営業主体との関連性において認識記憶され,やがて営業主体を想起させるようになる可能性があることは一概に否定できないはずである。
したがって,商品陳列デザインであるという一事によって営業表示性を取得することがあり得ないと直ちにいうことはできないと考えられる。
ウただ,商品購入のため来店する顧客は,売場において,まず目的とする商品を探すために商品群を中心として見ることによって,商品が商品陳列棚に陳列されている状態である商品陳列デザインも見ることになるが,売場に居る以上,それと同時に什器備品類の配置状況や売場に巡らされた通路の設置状況,外部からの採光の有無や照明の明暗及び照明設備の状況,売場そのものを形作る天井,壁面及び床面の材質や色合い,さらには売場の天井の高さや売場の幅や奥行きなど平面的な広がりなど,売場を構成する一般的な要素をすべて見るはずであるから,通常であれば,顧客は,これら見たもの全部を売場を構成する一体のものとして認識し,これによって売場全体の視覚的イメージを記憶するはずである。
そうすると,商品陳列デザインに少し特徴があるとしても,これを見る顧客が,それを売場における一般的な構成要素である商品陳列棚に商品が陳列されている状態であると認識するのであれば,それは売場全体の視覚的イメージの一要素として認識記憶されるにとどまるのが通常と考えられるから,商品陳列デザインだけが,売場の他の視覚的要素から切り離されて営業表示性を取得するに至るということは考えにくいといわなければならない。
したがって,もし商品陳列デザインだけで営業表示性を取得するような場合があるとするなら,それは商品陳列デザインそのものが,本来的な営業表示である看板やサインマークと同様,それだけでも売場の他の視覚的要素から切り離されて認識記憶されるような極めて特徴的なものであることが少なくとも必要であると考えられる。
( )そこで原告商品陳列デザインが,以上のような極めて特徴的なものであ2り,ひいては営業表示性を有すると認めることができるのか検討する前提として,原告店舗における営業そのものから他店における商品陳列デザイン等について見てみると,証拠(各項末尾に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア原告の営業実績(ア)原告は,昭和31年の創業以来,兵庫県及び大阪府を中心にベビー用品の専門店として事業を続けていたが,平成9年ころから全国規模で出店するようになり,平成12年には48店舗,平成13年に51店舗を出店し,それ以降も継続的に毎年50店舗以上を出店し,全国47都道府県のすべてに展開されている店舗数は平成22年4月時点では713店となっている。(甲7,甲41,甲44,甲48)(イ)原告におけるベビー・子供衣料の売上点数は,平成12年には1565万点であり,その後毎年50万点以上増加し続け,平成20年には7082万点となり,またその年度の子供服の売上高は615億0900万円にのぼり,その売上高は2年連続で業界1位であって,その額は同年度の売上高第2位のしまむら(267億5500万円)の2倍以上となり,また子供服売上高上位30社のなかで原告の売上高は約15パーセントを占めるに至っている。(甲7,甲12の1)また,経常利益率についても平成10年以降,毎年少しずつ増加する傾向にあるが,原告の収益構造には,売上高人件費が専門店業界平均の約半分であるとか,売上高販売管理費率が専門店業界の平均より大幅に低いなど,店舗の運営コストが極めて低いという点に際だった特徴があり,低価格の商品を取り扱っているにもかかわらず,売上総利益率も高率である。
なお,原告では,来店客の増加によって繁忙となり人件費などの管理コストが増大することを避けるため,一店舗当たりの売上高は平均して2億円前後で推移するよう新規出店が計画されており,現に原告の売上高は毎年伸びているものの一店舗当たりの売上高は2億円前後で推移しており,原告の総売上高の伸びも,一店舗当たりの売上の伸びによるのではなく,店舗数増加に正比例しているものである。
(甲42,甲48,乙39)イ原告商品陳列デザインを除く原告店舗の外観内装等の特徴(ア)原告が全国展開する際の店舗の約8割は,郊外の幹線道路沿いに立地する独立型の店舗である。店舗建物は,約200坪の長方形の平家建物が標準であり,店舗建物の前面には20〜30台分の駐車場が確保されている。 (甲48)(イ)上記の標準的な店舗では,建物の正面には,白を基調にしてピンク色に塗られた数本の太い柱が設けられており,上方の庇中央部の三角形状にゆるやかに盛り上がった部分には円形の青地に赤い服を着た白い兎のマークとその下には赤字で「西松屋」の表示が描かれている。
またオープンモール型のショッピングセンターに出店する店舗もあるが,その店舗では,上記標準的な店舗の外観とは異なるものの,入口正面には,白を基調にしてピンク色の帯状部分を設け,その上部には円形の青地に赤い服を着た白い兎のマークと赤字で「西松屋」の表示が描かれている。 (甲42,乙21の5)(ウ)原告店舗では,ベビー・子供服に加え,ベビー・子供服の肌着,ミルク,お菓子,おもちゃ,乳母車,マタニティ用品等の商品が取り扱われており,それらの売場のうち,ベビー・子供服売場は,売場面積の4分の1程度を占めているが,売場内には商品群ごとの仕切りはない。
さらに,ベビー・子供服の商品陳列部分以外でも,壁に囲まれた背中合わせの十数メートルから二十メートルを超えるゴンドラが数列置かれているという構成が基本的であり,ゴンドラ等の什器の上には段ボール箱に入れられた商品ストックが置かれ,逆に通常の衣料店舗に見られる商品を着せたマネキンなどの装飾的展示や,顧客の注意を引くPOPは原告店舗の売場にはない。(乙21の5,乙29,乙42)ウ原告店舗における営業方法の特徴(ア)原告では,普段着の実用衣料を中心として低価格帯の商品を取り扱っており,ベビー・子供服では,Tシャツが299円,半ズボンが499円など,競合店に比較して圧倒的に安い商品を取り揃えている。
(甲42,乙39)(イ)原告店舗では,約200坪の標準的店舗でも常時いる店員はパート店員の2人程度であって,店長は2〜4店をかけ持ちで管理しており常駐していない。売場には,レジスターは2台置かれているものの,繁忙とならない限り,店員1人だけが対応して,1台だけを稼働させることを原則としている。また原告の店員は,顧客に商品を勧めたり,あるいは陳列された商品を顧客に代わって陳列状態から取って顧客に手渡したりするようなサービスをすることが予定されていない。
(甲42,乙39)(ウ)原告においては,ポイントカード制度などの顧客囲い込みを目的として用いられるような顧客サービスは実施されておらず,また顧客を売場内に長時間滞留させる目的もある音楽等のBGMは流されていない。
(乙36,乙39)エ原告店舗における商品陳列デザインの変遷等(甲3の1,甲40(枝番を含む ,乙29))(ア)従前の原告店舗の商品陳列デザイン後記商品陳列デザインの変更に着手するまでの原告店舗におけるベビー・子供服売場における商品陳列デザインは,ワゴン,リングワゴン(ハンガーを掛ける部分が輪になっている什器 ,シングルハンガー)(ハンガーを掛けるパイプ1本で構成される什器 ,四方ラック(ハン)ガーを掛ける4本のフックが十字型に組み合わされた什器)といった什器が店内に配置され,ゴンドラの向きも一方向に揃っていないというものであり,全体として雑然としたものであった。
(イ)原告による商品陳列デザインの変更原告では,平成4年ころからベビー・子供服売場における商品陳列デザインの変更に着手し,その変更経緯は,概ね下記のとおりである。本件原告商品陳列デザインとの関係でみると,第2次変更のころから,ゴンドラの高さは徐々に上げられ,第5次変更で現在の高さである210?となっており,またフックを利用して商品をフェースアウトして陳列する方法は第2次変更のころから試みられている。また,ゴンドラアイルを連続させることは,第5次変更時から,商品取り棒を採用することは第4次変更時から,ゴンドラエンドの反転フラップの値段表示は第6次変更時から,それぞれ採用され,平成10年(第6次変更後)ころには,ベビー・子供服売場の商品陳列デザインとして,原告商品陳列デザインが原告における標準的な商品陳列デザインとして使用されるようになっている。
全国の原告店舗における本件原告商品陳列デザインの各構成要素の実施率は,ほぼすべての構成要素で90パーセント以上の率で実施されており,なかにはその実施率が99.9パーセントに達するものがある。
なお,原告店舗におけるベビー・子供服売場が占める割合は,概ね20〜30パーセントである。(甲3の1,乙29)記?第1次変更(平成4年から平成5年)既存ワゴン・ゴンドラ(1350?高)を並列に並べる。
雑貨・肌着売場壁面沿いに主通路(1.3〜1.5m幅)を設定する。
?第2次及び第3次変更(平成5年〜平成6年12月)雑貨・肌着売場のワゴン・シングルハンガー・四方ラックをゴンドラ(1500?高)にする。
主通路及び副通路を拡大する(各1.5〜2.1m,0.8〜1.5m 。)衣料のゴンドラエンドの1段リングハンガーを2段リングハンガーにする。
衣料売場をリングや四方トラックからゴンドラ(1500?高)に変更し,長いフックを導入して衣料のフェースアウト陳列を可能にする。
ゴンドラの向きを同一方向に変更する。
壁面の衣料品の陳列を3段から5段展開にする。
?第4次変更(平成6年12月〜平成7年)ベビー・子供肌着等を棚陳列からフック陳列に変更する。
衣料,雑貨,肌着のゴンドラを変更する(1800?高 。)壁面の衣料品の陳列を3mの高さにする。
商品取り棒を設置する。
?第5次変更(平成9年)ゴンドラエンドをリングハンガーからゴンドラ什器に変更する。
衣料,雑貨,肌着のゴンドラを変更し(2100?高 ,3段から)4段に及ぶ商品陳列を可能にする。
店内横通路をなくし,ゴンドラアイルの長さを延長する。
?第6次変更(平成10年)主通路,副通路を拡大する(各2.3m以上,1.8m以上 。)反転フラップ方式の値段表示をゴンドラエンドに採用する。
オ原告店舗についての広告宣伝等(ア)平成16年3月23日から平成17年12月30日にかけて全国で放映された原告のテレビコマーシャルでは,来店客に扮したキャストが店内各所で買い物をしているシーンが中心となっており,それに伴い原告商品陳列デザインによって商品が陳列展示された原告店舗の売場の様子が映し出されていた。(甲2の1,甲8の1,2)(イ)本件訴訟提起後の平成22年4月9日には,民放テレビの番組のコーナーの一つで 「ひるおびハテナ?3人に聞きました。不況も少子化 ,も関係なし!日本一子供服を売る西松屋躍進の秘密」と題する内容で,約17分間にわたり,不況下でも売上を伸ばしている企業として原告が紹介された。
その番組では,原告が不況下でも売上を一貫して伸ばしていることが冒頭に紹介され,消費者の声として,原告の人気の理由として,商品の値段が他店舗に比べ圧倒的に安いことと,品揃えが豊富なことが紹介された。そして,そのように商品を安く売ることができる理由について,商品の製造段階の工夫,あるいは売れ筋商品を選別するための独自の工夫のほか,コスト低減のためのさまざまな工夫取り組みが紹介され,商品陳列の工夫も,全国的に統一的にコントロールすることで新規出店のコストを下げ,また日々の営業における人件費を削減させ,もって商品を安価に売って利益を出すためのコスト低減に貢献していることが原告の常務取締役の説明として紹介された。なお,同番組では,原告店舗の売場の様子が,映像として放映された。
(甲44)(ウ)原告のホームページにおける入社希望者向け会社案内の職場紹介欄には店内の特徴を記載した部分があるが,その記載内容は下記のとおりである。 (乙21の5)記・ 2 5mから2 7m確保した広い通路..(ベビーカーやショッピングカート同士が楽にすれ違いできる余裕の広さです )。
・5mと高い天井を活用した陳列方法(3段,4段掛けと立体的に陳列したボリューム感を演出しています )。
・白を基調とした配色と明るい照明(清潔感と商品を引き立たせる役目)・ベビー・子供衣料は全品ハンガー掛け(ハンガー付納品)し,見やすく選びやすい売場。
・手の届かない上段掛けの商品用に商品取り棒を等間隔で配置。
他社にない店舗作り,売場作りで便利さを追求しております。
カ商品陳列デザインに関するインターネットによるアンケート調査原告の依頼を受けた調査会社が,同調査会社の登録会員のうち,東京都,千葉県,埼玉県,新潟県,三重県,大阪府及び奈良県(いずれも,原告商品陳列デザイン類似の商品陳列デザインを使用していると原告が主張している被告店舗が所在する都府県である )のいずれかに在住する9歳未満 。
の子供がいる女性を対象として,原告及び被告の実際の店舗において,本件で問題としている態様で陳列展示された商品陳列状態を中心として撮影した売場の様子の写真を示し,その被写体となった売場が原告,被告,アカチャン本舗,バースデイ,ベビーザらス及びダイエーのいずれであるかを選択させるというインターネットを利用したアンケート調査を,1000人を上限として実施したところ,原告店舗の壁面の陳列状態を撮影した写真(甲47の写真?,原告商品陳列デザイン1が使用されている様子を撮影した写真)については,1000人中622人が原告であると回答し,原告店舗のゴンドラ群長手方向を撮影した写真(甲47の写真?,原告商品陳列デザイン2が使用されている様子を撮影した写真)については,1000人中790人が原告であると回答し,原告店舗のゴンドラエンド及び長手方向を撮影した写真(甲47の写真?,なお,証拠の記載ではゴンドラエンドだけが被写体のように記載されているが,被写体はゴンドラ群長手方向に及んでおり,原告商品陳列デザイン2及び3が使用されている様子を撮影した写真となっている )については,1000人中844人 。
が原告であると回答した。
他方,被告店舗における壁面における商品陳列状態を撮影した写真(甲47の写真?)については,1000人中279人が原告,99人が被告と回答したが,最多回答はわからないとする373人であった。また被告店舗におけるゴンドラ群長手方向を撮影した写真(甲47の写真?)については,1000人中240人が原告,286人が被告と回答したが,わからないとする回答も189人あった。さらに被告店舗におけるゴンドラエンドを撮影した写真(甲47の写真?)については,1000人中425人が原告,211人が被告と回答したが,わからないとする回答も162人あった。 (甲47)キ競合他店舗における商品陳列デザイン(ア)メガマート一宮店メガマート一宮店では,平成6年4月当時,店舗壁面において,次の特徴を有する衣類の陳列デザインが使用されていた。(乙6)a商品を全てハンガー掛けの状態で陳列している。
b商品を顧客の手が届かない高さ(少なくとも210?以上の高さ)にまで陳列している。
c商品棚はひな壇状ではなく陳列面が連続している。
d商品はすべてフェースアウトの状態で陳列されている。
(イ)メガマート平島店メガマート平島店では,平成7年当時,店舗壁面において,次の特徴を有する子供服の陳列デザインが使用されていた。(乙6)a商品は全てハンガー掛けの状態で陳列されている。
b商品を顧客の手が届かない高さ(210?以上の高さ)にまで陳列している。
c商品棚はひな壇状ではなく陳列面が連続している。
d商品は,その3分の2以上がフェースアウトの状態で陳列されている。
e各陳列フックには商品が複数枚陳列されている。
(ウ)カルフール幕張店カルフール幕張店では,平成13年1月当時,次の特徴を有する衣料品の陳列デザインが使用されていた。 (乙7)aゴンドラ群長手方向(a)商品は全てハンガー掛けの状態で陳列されている。
(b)床面から210?の高さにまで陳列する。
(c)ひな壇状ではなく陳列面が連続している。
(d)少なくとも最上段はフェースアウトの状態で陳列している。
(e)各陳列フックに複数枚陳列している。
bゴンドラエンド(a)商品を全てハンガー掛けの状態で陳列している。
(b)床面から210?の高さにまで陳列する。
(c)ひな壇状ではなく陳列面が連続している。
(d)商品をすべてフェースアウトの状態で陳列している。
(e)各陳列フックに複数枚陳列している。
(エ)メガマート東浦店メガマート東浦店は,平成13年7月当時,次の特徴を有する子供服の陳列デザインを使用していた。 (乙6)aゴンドラ群長手方向(a)商品を全てハンガー掛けの状態で陳列している。
(b)床面から210?の高さにまで陳列する。
(c)少なくとも最上段をフェースアウトの状態で陳列している。
(d)各陳列フックに複数枚陳列している。
(e)副通路を形成するゴンドラ(ゴンドラアアイル)が切れ目なく店舗奥まで連なって設置されている。
bゴンドラエンド(a)商品を全てハンガー掛けの状態で陳列している。
(b)床面から210?の高さにまで陳列する。
(c)商品をすべてフェースアウトの状態で陳列している。
(d)各陳列フックに複数枚陳列している。
(e)上部に反転フラップ方式の値段表示板を設置している。
(オ)PLANT5見附店PLANT5見附店では,平成16年10月当時,ゴンドラ群長手方向において,次の特徴を有する子供服の陳列デザインが使用されていた。
(乙4)a最上段には商品を着せたマネキンを陳列しているが,その余の商品は全てハンガー掛けの状態で陳列している。
b一部の商品をフェースアウトの状態で陳列している。
c各陳列フックに複数枚陳列する。
(カ)トライアル八千代店トライアル八千代店は,平成20年5月当時,ゴンドラ群長手方向において,次の特徴を有する子供服の陳列デザインを使用していた。
(乙4)a商品を全てハンガー掛けの状態で陳列する。
bひな壇状ではなく陳列面が連続している。
c少なくとも最上段をフェースアウトの状態で陳列する。
d各陳列フックに複数枚陳列する。
(キ)西友新習志野店西友新習志野店は,平成20年12月当時,ゴンドラ群長手方向において,次の特徴を有する子供服の陳列デザインを使用していた。
(乙4)a商品を全てハンガー掛けの状態で陳列する。
bひな壇状ではなく陳列面が連続している。
c商品をすべてフェースアウトの状態で陳列している。
d各陳列フックに複数枚陳列する。
e上部に値段表示板を設置している。
(ク)ザ・プライス五香店ザ・プライス五香店は,平成21年3月当時,ゴンドラ群長手方向において,次の特徴を有する子供服の陳列デザインを使用していた。
(乙4)a商品を全てハンガー掛けの状態で陳列する。
bひな壇状ではなく陳列面が連続している。
c少なくとも最上段をフェースアウトの状態で陳列する。
d各陳列フックに複数枚陳列する。
(ケ)ユニクロららぽーと横浜店ユニクロららぽーと横浜店は,平成21年6月当時,店舗壁面において,次の特徴を有する衣類の陳列デザインを使用していた。(乙5)a商品を全てハンガー掛けの状態で陳列している。
b顧客の手が届かない高さ(少なくとも210?以上の高さ)にまで陳列している。
cひな壇状ではなく陳列面が連続している。
d商品をすべてフェースアウトの状態で陳列している。
e各陳列フックに複数枚陳列している。
( )ア以上に基づき検討すべきところ,まず原告商品陳列デザイン1ないし33を,他店舗の商品陳列デザインと比較して,その特徴を見てみると次のとおりである。
(ア)原告商品陳列デザイン1について原告商品陳列デザイン1は 「a商品を,全てハンガー掛けの状態 ,で陳列する「b床面から少なくとも210?の高さにまで陳列す 。」,る「cひな壇状ではなく陳列面を連続して陳列する「d少な 。」, 。」,くとも陳列面の3分の2はフェースアウトの状態で陳列する「e。」,各陳列フックに複数枚陳列する「f来店者の使用に供するための 。」,商品取り棒を,一壁面に少なくとも1本設置する 」という構成要素に。
分説することができるが,上記( )キによれば,各構成要素のうちaな2いしeは,それぞれの構成要素を個別に見れば,原告と同種の衣料品を販売する多数の店舗壁面の商品陳列デザインとして普通に用いられているありふれたものと認められる。そして,これらの構成要素の組み合わせという点で見ても,メガマート平島店(上記( )キ(イ))及びユニク2ロららぽーと横浜店(同(ケ))において,上記aないしeの構成要素をすべて備える店舗壁面の商品陳列デザインが使用されており,メガマート一宮店(同(ア))においては,上記aないしc及びdの構成要素を組み合わせた店舗壁面の商品陳列デザインが使用されているのであって,上記aないしeの各構成要素を組み合わせること自体も普通に行われていたものと認められる。
もっとも,以上の組み合わせに,さらに「f来店者の使用に供するための商品取り棒を,一壁面に少なくとも1本設置する 」という構成。
要素を組み合わせた商品陳列デザインは,他店舗においては見られないから,その限度で原告商品陳列デザイン1は,全体として既存店にはない原告独自の商品陳列デザインであるということができる。
(イ)原告商品陳列デザイン2について原告商品陳列デザイン2は 「a商品を,全てハンガー掛けの状態 ,で陳列する「b床面から少なくとも210?の高さにまで陳列す 。」,る「cひな壇状ではなく陳列面を連続して陳列する「d少な 。」, 。」,くとも最上段はフェースアウトの状態で陳列する「e各陳列フッ。」,クに複数枚陳列する「f副通路を形成するゴンドラ(ゴンドラア 。」,イル)を切れ目無く店舗奥まで連なって設置する 」及び「g来店者。
の使用に供するための商品取り棒を,少なくともゴンドラ群の一面に1本設置する 」という構成要素に分説することができるが,上記( )キに 。 2よれば,各構成要素のうちaないしfについては,それぞれの構成要素を個別に見れば,原告と同種の衣料品を販売する多数の店舗のゴンドラ群長手方向の陳列デザインとして普通に用いられているありふれたものと認められる。また,これらの構成要素の組合せという点で見ても,カルフール幕張店(上記( )キ(ウ))において,上記aないしeの構成要2素を組み合わせたゴンドラ群長手方向の陳列デザインが,メガマート東浦店(同(エ))において,上記a,b及びdないしfの構成要素を組み合わせたゴンドラ群長手方向の陳列デザインが,トライアル八千代店(同(カ) ,西友新習志野店(同(キ))及びザ・プライス五香店(同 )(ク))において,上記a,c,d及びeの構成要素を組み合わせたゴンドラ群長手方向の陳列デザインがそれぞれ使用されており,上記aないしfの構成要素を組み合わせることも同種店舗で普通に行われていたものと認められる。
もっとも,以上の組み合わせに,さらに「g来店者の使用に供するための商品取り棒を,少なくともゴンドラ群の一面に1本設置する 」。
という構成要素を組み合わせた商品陳列デザインは,他店舗においては見られないから,原告商品陳列デザイン2も,その限度で全体として既存店にはない原告独自の商品陳列デザインであるということができる。
(ウ)原告商品陳列デザイン3について原告商品陳列デザイン3は 「a商品を,全てハンガー掛けの状態 ,で陳列する「b床面から少なくとも210?の高さにまで陳列す 。」,る「cひな壇状ではなく陳列面を連続して陳列する「d少な 。」, 。」,くとも陳列面の3分の2はフェースアウトの状態で陳列する「e。」,各陳列フックに複数枚陳列する 」及び「f上部に反転フラップ方式 。
。 , の値段表示板を設置する 」という構成要素に分説することができるが上記( )キによれば,上記aないしfの各構成要素については,それぞ2れの構成要素を個別に見れば,原告と同種の衣料品を販売する多数の店舗のゴンドラエンドの商品陳列デザインとして普通に用いられているありふれたものであると認められる。また,これらの構成要素の組合せという点で見ても,上記( )キで認定したとおり,メガマート東浦店(上2記( )キ(エ))において,上記aないしfの全ての構成要素を備えるゴ 2ンドラエンドの商品陳列デザインが,カルフール幕張店(同(ウ))においては,上記aないしeの構成要素を組み合わせた商品陳列デザインがそれぞれ使用されており,上記aないしfの構成要素を組み合わせることも同種店舗で普通に行われていたものと認められる。
イ(ア)以上の比較によると,原告商品陳列デザインのうち,原告商品陳列デザイン3は,その全ての構成要素を組み合わせた商品陳列デザインが同種店舗で使用されており,同種店舗と比べて特別な特徴があるとはいえないし,原告商品陳列デザイン1,2についても,その構成要素の大部分(原告商品陳列デザイン1の構成要素aないしe,原告商品陳列デザイン2の構成要素aないしf)を組み合わせた商品陳列デザインが同種店舗で使用されており,商品取り棒を設置する(原告商品陳列デザイン1の構成要素 ,同2の構成要素g)という要素を組み合わせた限度fにおいて,同種店舗の商品陳列デザインと比較した場合において特徴があるといえるにすぎないものである。
なお原告は,原告商品陳列デザイン1については,その構成要素aないしeを組み合わせた商品陳列デザインが店舗壁面で,原告商品陳列デザイン2については,その構成要素aないしfを組み合わせた商品陳列デザインがゴンドラ群長手方向で,いずれもその全体に使用されていることも,その特徴であると主張するが,上記のとおり,これらの要素を組み合わせた商品陳列デザインそのものは同種店舗で普通に使用されているのであるから,その使用についての長さ方向の差が,原告商品陳列デザイン1,2に同種他店舗とは異なる特別な特徴をもたらすものとは認められない(仮に商品陳列デザインが使用される長さに特徴があるとするなら,その特徴は,原告店舗の売場の空間的広がりとの関連で認識記憶されるはずであるから,そのことは,むしろ原告商品陳列デザインは,売場内の他の構成要素から切り離されて認識記憶されないとする結論を支持するものとなると考えられる。。)また,原告店舗独自の特徴をもたらす要素となり得る商品取り棒を置いている点についても,それ自体は,現実の商品陳列状態のもとでは視覚的に大きな構成要素とはいえないから,需要者に認識記憶されるような場合があるとするなら,それは視覚的に認識記憶されるというより,むしろ,現実にこれを使用することによって,当該店舗は,営業方法として取りにくい高さにある商品も顧客自らが取るという一種のセルフサービスを採用していると認識され記憶されるものというべきである。
そうすると,原告商品陳列デザイン1,2には,原告独自の特徴が認められないわけではないが,それだけでは,顧客にさほど強い印象をもたらすものではないというべきである。
(イ)その上,原告商品陳列デザインは,後記検討するように機能的要素を組み合わせたものであって,視覚的にもすっきりとした印象を顧客に与えるものであることからすると,むしろそれは,広い通路が設けられて天井も高く視覚的な広がりがあること,その中で稼働する店員は少人数であること,マネキンによる展示やPOPなどの装飾的な要素もないこと,ストックの段ボール箱が陳列棚の上の目に付くところに置かれていることなど,店舗の運営管理コストを低減するため効率を追求した機能的な原告店舗の売場の他の特徴と調和して「味も素っ気もない無骨 (乙39)とも表現され得る原告店舗の売場のイメージを作り出す 」一要素になっているものというべきである。
(ウ)したがって,原告商品陳列デザイン1ないし3が顧客に認識記憶されるとしても,それは,売場全体に及んでいる原告店舗の特徴に調和し,売場全体のイメージを構成する要素の一つとして認識記憶されるものにとどまると見るのが相当であり,顧客が,これらだけを売場の他の構成要素から切り離して看板ないしサインマークのような本来的な営業表示(原告における「西松屋」の文字看板や,デザインされた兎のマーク)と同様に捉えて認識記憶するとは認め難いから,原告商品陳列デザイン1ないし3が,いずれもそれだけで独立して営業表示性を取得するという原告の主張は採用できないといわなければならない。
またしたがって,この原告商品陳列デザイン1ないし3を,いくら組み合わせてみたとしても,同様のことがいえるから,原告商品陳列デザイン1及び2を組み合わせた商品陳列デザイン及び原告商品陳列デザイン1ないし3を全て組み合わせた商品陳列デザインについても,営業表示性を取得することはないというべきである。
ウ(ア)なお,上記( )カのアンケート結果によれば,原告が営業表示であ2ると主張している商品陳列デザインが用いられた売場における商品陳列状態の写真を見たアンケート回答者が,原告店舗の売場については原告であると回答する率はかなり高率にのぼることはもとより,被告店舗の売場であっても,原告であるとするアンケート回答者が相当数にのぼることが認められるから,この結果は,原告が主張する商品陳列デザインが,それだけをもって営業主体を表示しているかのごとくである。
(イ)しかしながら,回答者に示された写真を個別に見てみると,同じ壁面部分の商品陳列状態を撮影した写真?(原告店舗)と写真?(被告店舗)については,壁面陳列状態はよく似た印象を与えるが,後者の写真には商品陳列部分の直ぐ上に天井が写り込んでいて,そのため高さ方向での広がりについて前者とは明らかに異なる印象が与えられることが指摘できる。そして,これらの写真を原告と回答する回答者の率は,後者が前者の半分以下となっているというのであるから,これらの限られた情報しか与えない写真を比較してみても,売場の様子から営業主体を想起する上で,上記( )の原告の店内の特徴,すなわち「・5mと高い天2井を活用した陳列方法(3段,4段掛けと立体的に陳列したボリューム感を演出しています(上記( )オ(ウ))という点の有無が影響してい 。)」2ることが推認される。
(ウ)次いでゴンドラ群長手方向の商品陳列状態を撮影した写真?(原告店舗)と写真?(被告店舗)については,ゴンドラ群長手方向の商品陳列状態はよく似た印象を与えるが,前者の写真のゴンドラ群長手方向に奥行きがあることは一見して明らかであり,またその前面の通路の幅方向はもとより,高さ方向においても,前者の写真の方が広がりを感じさせ,また天井部分には照明設備が多く写り込んで店内に明るい印象を与え,これらの点で後者とは異なる印象が与えられることが指摘できる。
そして,これらの写真を原告と回答する回答者の率は,後者が前者の3分の1以下となっているというのであるから,これらの限られた情報しか与えない写真を比較してみても,売場の様子から営業主体を想起する上で,上記( )の原告の店内の特徴,すなわち「・2 5mから2 7m確2 ..保した広い通路(ベビーカーやショッピングカート同士が楽にすれ違いできる余裕の広さです「・5mと高い天井を活用した陳列方法(3 。)」,段,4段掛けと立体的に陳列したボリューム感を演出しています,。)」「・白を基調とした配色と明るい照明(清潔感と商品を引き立たせる役目(上記( )オ(ウ))という点の有無が影響していることが推認され )」2る(なお,後者の写真には壁面の棚に原告の店舗にはない子供のイメージ写真であるとかマネキンが置かれていることが指摘でき,その点が回答者の回答に影響した可能性も考えられる。。)(エ)最後にゴンドラエンドの商品陳列状態を撮影した写真?(原告店舗)と写真?(被告店舗)については,ゴンドラエンドの商品陳列状態はよく似た印象を与えるが,後者の写真の右端には,赤っぽい柱部分が写り込んでいることが見て取れ,売場全体に白っぽい印象が与えられる前者と異なる。またゴンドラエンドの上部に設置された値段表示は,前者は「299円 ,後者は「280円」と似たような価格帯であるが, 」両者とも通常の売場で見られる低価格商品の価格設定としては特徴的なものであることが指摘でき,需要者でもある回答者はこの部分に注目することが考えられる。そして,これらの写真を原告と回答する回答者の率は,前者は8割以上に及び,また後者は前者の2分の1となっているというのであるから,これらの限られた情報しか与えない写真を比較してみても,売場の様子から営業主体を想起する上で 「・白を基調とし,た配色と明るい照明(清潔感と商品を引き立たせる役目(上記( )オ)」2(ウ))という点の有無が影響していることが推認されるし,またアンケート回答者の多くは原告で商品購入の経験を有するものと推認されることからすると,この写真を見て営業主体を想起する上で 「299円」,という値段表示そのものが大きく影響していることが推認される。
(オ)上記(イ)ないし(エ)で検討してきたところによれば,アンケート調査で回答者に示された写真は,被写体を売場の一部に限定したものであって,そのためアンケート回答者は店舗を現実に訪れたときとは全く異なる方法で売場内を認識し,その限られた情報に基づいて売場の他の視覚的構成要素を記憶ないし想像で補って当該店舗の営業主体を選択することを余儀なくされるため,その回答結果の信頼性には一定の限界があることは否定できないが,少なくとも,原告が主張する商品陳列デザインが,原告という営業主体を想起する上で一定の役割を果たしていることは否定できないと思われる。しかしながら,指摘した写真の被写体の違いとなって表れているそれ以外の売場の特徴,とりわけ原告が会社案内に店内の特徴として掲げている特徴(上記( )オ(ウ))のみならず,2マネキンや子供のイメージ写真などの装飾的要素が存在しないことも原告の売場を想起させる上で一定の役割を果たしていることも明らかに認められるということができる(また,上記(エ)の検討結果からは,低価格帯の商品を提供する原告においては,下二桁を「99円」とする特徴的な価格設定が営業主体としての原告との関係で顧客に強く印象づけられている様子もうかがえるところである。。)そうすると,このアンケート結果からは,原告店舗を訪れる顧客が売場の様子から原告を想起することができるようになっていたとしても,それは商品陳列デザインだけではなく売場内の他の構成要素も一体のものと認識して,そこから空間的広がりや色合い明るさなども含めて顧客が原告独自の売場全体のイメージを記憶している結果を示していると見る余地さえあるということができる。
したがって,このアンケート結果に基づいて,原告商品陳列デザイン1ないし3だけが売場内の他の視覚的要素から切り離され,本来的営業表示である看板やサインマーク同様の営業表示性を取得していると判断することはできないといわなければならない(なお,このアンケート(甲47)の調査目的は 「消費者がベビー・子供服売場から想起するチ ,ェーン店名を調査する 」というものであって,商品陳列デザインに限 。
っての消費者の認知の程度を特に調査対象としたものではなく,現に示された各写真は上記のとおりであるから,そもそもこのアンケート結果から,消費者がチェーンごとに,その商品陳列デザインをどのように認識し記憶しているかを分析検討するには無理があるといわなければならない。。)エなお仮に,原告商品陳列デザインが,それ自体で売場の他の構成要素から切り離されて認識記憶される対象であると認められる余地があったとしても,原告商品陳列デザインは,以下に述べるような観点に照らし,不正競争防止法による保護が与えられるべきものではないというべきである。
すなわち,上記( )エ認定の事実によれば,原告において売上増大を目2的としてされた商品陳列デザイン変更の到達点として確立した原告商品陳列デザインは,商品の陳列が容易となるとともに,顧客が一度手にとった商品を畳み直す必要がなくなり,見やすさから顧客自らが商品を探し出し,それだけでなく高いところの商品であっても顧客自らが取る作業をするので,そのための店員の対応は不要となり,結果として少人数の店員だけで店舗運営が可能となって,店舗運営管理コストを削減する効果を原告にもたらし,原告事業の著しい成長にも貢献しているものと認められるのであるから,原告商品陳列デザインは,原告独自の営業方法ないしノウハウの一端が具体化したものとして見るべきものである。
そうすると,上記性質を有する原告商品陳列デザインを不正競争防止法によって保護するということは,その実質において,原告の営業方法ないしアイデアそのものを原告に独占させる結果を生じさせることになりかねないのであって,そのような結果は,公正な競争を確保するという不正競争防止法の立法目的に照らして相当でないといわなければならない。
したがって,原告商品陳列デザインは,仮にそれ自体で売場の他の視覚的構成要素から切り離されて認識記憶される対象であると認められたとしても,営業表示であるとして,不正競争防止法による保護を与えることは相当ではないということになる。
( )以上によれば,原告商品陳列デザインが営業表示に当たることを前提と4する原告の被告に対する不正競争防止法に基づく請求は,その余の判断に及ぶまでもなく理由がないというべきである。
2争点4(被告の行為が不法行為を構成するか)について( )原告は,原告の営業資産である商品陳列デザインを模倣する被告の行為1は,不正競争行為といえないとしても,不法行為に該当する旨主張をする。
上記1( )エのとおり,原告商品陳列デザインは,それが確立されるまで2に6年間の期間にわたり合計5回に及ぶ試行錯誤を経てきたものであり,証拠(甲3の1,甲46)によれば,そのために合計1億1878万円の費用を要したことも認められる。そして,そのような投資の結果得られた商品陳列デザインは,原告において店舗運営管理コストの低減をもたらし,原告事業の著しい成長に貢献している(上記1( )エ)というのであるから,原告3が,原告商品陳列デザインをもって原告の営業資産であると主張することは十分理解できることである。
また,本件で問題とされている被告の店舗における商品陳列デザインが原告商品陳列デザインに一部類似している部分があることは,被告の売場における商品陳列デザインの写真を見て原告の店舗と回答するアンケート回答結果が相当数に及ぶことから否定できない事実であり(上記1( )カ ,現に被2 )告自身,被告において低価格帯の子供服販売を展開するに当たり,原告店舗における商品陳列デザインを参考にしたこと自体を否定していない。
, ( )しかしながら,上記1で検討してきたとおり,原告商品陳列デザインは2店舗の運営管理コストを低減させるという営業方法ないしノウハウが化体したものと見るべきものであって,そもそも特定の事業者によって独占されるべきものではないのであるし,被告が原告商品陳列デザインと一部類似したような商品陳列を行っている事実は否定できないけれども,証拠(甲1の1ないし5,乙36)及び弁論の全趣旨によれば,被告がそのような商品陳列デザインを採用した目的は,主としてコスト削減という営業方法として採用したものであって,またその限度で原告商品陳列デザインを参考にしたものと認められる。さらに,そもそもその参考の程度は模倣という程度に至っているわけではない。
したがって,被告の行為をもって著しく不公正であり,公正かつ自由な競争原理によって成り立つ取引社会において許されないとの原告の批判は当たっているということはできず,被告の行為が不法行為を構成するということはできない。
( )なお原告は,被告が運営するショッピングセンターであるジャスコ六日3町店の一区画を賃借して出店していた原告店舗における問題をとりあげ,賃貸人である被告が同一ショッピングモール内に原告商品陳列デザインを模倣したベビー・子供服売場を開設したことが賃貸借契約に基づく信頼関係を裏切る行為であることから同店舗における模倣行為が違法である旨も主張している。しかしながら,主張に係る事情のもとで,具体的賃貸借契約の付随的条件として出店時の商品陳列デザインについて特別の取り決めがされていたのなら,賃貸借契約の債務不履行を問題にする余地があるが,そうでないのなら,同一ショッピングセンター内の競合店間で起きている事であるとしても,これをもって不法行為を構成する行為ということができないことは上述したところと変わりはない。
( )以上によれば,原告商品陳列デザインそのものが法律上保護に値する利4益であることを前提とする原告の被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求も,その余の判断に及ぶまでもなく理由がないというべきである。
3結語以上によれば,原告の被告に対する請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 森崎英二
裁判官 達野ゆき
裁判官 山下隼人