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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成23行ケ10252審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  包装 /  指定商品 /  普通名称(3条1項1号) /  普通に用いられる方法 /  4条1項11号 /  類似性(類否判断) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 / 
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事件 平成 23年 (行ケ) 10174号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2011/10/11
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成23年10月11日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官

平成23年(行ケ)第10174号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成23年9月20日

判 決

原 告 X
訴訟代理人弁理士 三 浦 誠 一

被 告 特 許 庁 長 官
指 定 代 理 人 松 田 訓 子

芦 葉 松 美
田 村 正 明



主 文
特許庁が不服2010−14311号事件について平成23年3月23

日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。



事 実 及 び 理 由
第1 原告が求めた判決

主文同旨



第2 事案の概要
本件訴訟は,商標登録出願の拒絶査定を不服とする審判請求を成り立たないとし

た審決の取消訴訟である。
争点は,本願商標が引用商標と類似するか否かである。
【本願商標】 【引用商標(登録第5149010号)】





指定商品
第30類「茶,菓子及びパン,調味料,香辛料,穀物

の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,す
し,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,

べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,米,
脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類」
指定商品

第30類「饅頭」



1 特許庁における手続の経緯
原告は,平成21年7月1日,指定商品を第30類「饅頭」として本願商標の登
録出願をしたが(商願2009−53927号),平成22年3月30日,本願商標

は引用商標と類似するとの理由で拒絶査定を受けた。
そこで,原告は,平成22年6月29日,上記拒絶査定につき不服審判請求をし

たところ(不服2010−14311号),特許庁は,平成23年3月23日,「本
件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年4月29日に送達

された。
2 審決の理由の要点
「本願商標は,
『炭都饅頭』の文字を書してなるところ,その構成中『饅頭』の文

字は,本願の指定商品普通名称を表示するものであって,自他商品の識別標識と




しての機能を有しない語である。

してみれば,本願商標において自他役務の識別標識としての機能を果たす部分は,

『炭都』の文字部分にあるといえるものであるから,該文字部分に着目し,取引に

資する場合も決して少なくないというのが相当である。

そうとすれば,本願商標は,その構成文字全体から『タントマンジュウ』の称呼
を生ずるほかに,
『炭都』の文字部分に相応して『タント』の称呼をも生ずるもので

ある。そして,該文字は,
『石炭鉱業で栄えたまち』程の意味合いを有するものであ
るとしても,一般に使用され親しまれている語ではないことから,特定の観念を生

ずるとはいい難いものである。
一方,引用商標は,
『TANTO』の欧文字と『タント』の片仮名文字よりなると

ころ,その構成文字に相応して『タント』の称呼を生じ,特定の観念は生じないも
のである。
してみれば,本願商標と引用商標とは,外観において相違し,観念においては比

較できないとしても,『タント』の称呼を共通にする類似の商標といわざるを得ず,
かつ,本願商標の指定商品は,引用商標の指定商品と同一又は類似するものである。

したがって,本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒
絶した原査定は,妥当であって,取り消すことはできない。」



第3 原告主張の審決取消事由(類否判断の誤り)
本願商標は,いずれも漢字の「炭都饅頭」を江戸文字で縦1行書きしてなるもの

であって,千客万来の願いを込めて意匠的な外観を有するものである。「炭都饅頭」
の4字は,等間隔でまとまりよく表記されており,4字全部があいまってその外観

とともに需要者,取引者の印象に残るものである。
他方,引用商標は,欧文字からなる「TANTO」と片仮名からなる「タント」
とを横2段書きして成るものであって,本願商標の外観と引用商標の外観とは明ら

かに異なる。




また,本願商標は,ほぼ同じ文字の大きさかつ同じ書体で,縦1行にまとまりよ

く記して成るものであり,格別に「炭都」の部分のみが需要者等の注意を惹くよう

外観を有するものではない。そうすると,本願商標の「炭都」の部分のみが需要

者等に印象付けられるものではなく,本願商標からは「タントマンジュウ」との称

呼が生じる。なお,
「炭都」の部分に着目して取引に資する場合が少なくないとの審
決の認定には根拠がないし,
「饅頭」と他の単語の組合せによる商標の使用の実情に

かんがみると,かかる場合が少なくないことは,商標の類否判断において意味を有
しない。

そして,わが国の歴史にかんがみれば,
「炭都」の文字をみれば「石炭産業で栄え
たまち」程度の観念が生じるから,本願商標からは特定の観念が生じ,特定の観念

を生じない引用商標とは観念が相違する。
したがって,本願商標と引用商標とは外観が明らかに異なるのみならず,両商標
から生じる称呼観念も異なるから,両商標は類似しない。そうすると,両商標が

類似するとした審決の判断には誤りがある。



第4 取消事由に関する被告の反論
1 そもそも,本願商標の指定商品「饅頭」は,わが国で広く親しまれる菓子の
一つで,日常的に手軽に取引され,その需要者は広く一般消費者を含み,子供等も

需要者になるものであるから,取引をするに際して払われる注意力はさほど高いも
のではない。

2 本願商標は「炭都饅頭」の4文字(漢字)を普通に用いられる方法で筆書き
風に同一の書体,同一の文字の大きさで縦書きして成るものであるが,引用商標と

同様にありふれた書体による文字のみからなるものにすぎない。江戸文字は,パー
ソナルコンピュータの文書作成ソフト等において書体(フォント)として広く一般
に使用されており,決して特殊なデザインのものではないから,取引者や需要者は

単に筆書き風の書体で記したものと認識するに止まる。加えて,
「饅頭」を取り扱う




業界では,商品名にローマ字を並記して表示することも普通に行なわれているし,

後記のとおり本願商標の要部が「炭都」であり,そのローマ字表記が引用商標の一

部と同様の「TANTO」,その片仮名表記が引用商標の一部と同様の「タント」に

なることも踏まえれば,本願商標と引用商標の外観の相違は大きなものではない。

3 「○○饅頭」と表記される饅頭については,
「○○」の部分が饅頭の素材を表
したり(例えば「栗」饅頭),饅頭の産地を表したにすぎない場合でない限り,「饅

頭」の部分以外の「○○」の部分に強い識別力があると理解され,
「饅頭」自体やそ
包装に「○○」との表示が付されているだけで,需要者,取引者は当該商品(饅

頭)の名称を「○○饅頭」として理解する蓋然性が高い。また,
「饅頭」は普通名称
にすぎず,「饅頭」の部分には識別力がない。そして,「饅頭」の商品においては,

商品名全体や商品名から「饅頭,まんじゅう」を除いた部分をローマ字表記や片仮
名表記にした表示を商品名と並記することが少なくない。そうすると,本願商標の
要部は「炭都」の部分であって,本願商標からは「タント」の称呼を生じる。

他方,引用商標は欧文字の「TANTO」及び片仮名の「タント」を横2段書き
して成るもので,その構成文字に相応して「タント」との称呼を生ずる。

したがって,本願商標と引用商標とは共通の称呼を生じる。
4 「炭都」の語は特定の意味合いをもって一般に知られ馴染まれている語では
ないから,本願商標に接する需要者,取引者は,
「炭都という饅頭」程度の認識をす

るに止まり,本願商標から特定の観念は生じない。
他方,引用商標の構成文字も特定の意義を有しない造語であって,特定の観念

生じない。
したがって,両商標から生じる観念においては比較することができない。

5 結局,本願商標と引用商標とは,外観が大きく相違せず,共通の称呼を生じ
るから,
「饅頭」の取引においてローマ字表記等が併記されるという取引の実情も勘
案すれば,需要者,取引者に与える印象,記憶,連想等において両商標は格別の差

異を有するものではなく,「饅頭」の需要者,取引者の注意力の程度も勘案すれば,




両商標は類似するというべきである。したがって,審決がした両商標の類否判断

誤りはない。

そして,本願商標の指定商品は引用商標の指定商品に含まれるから,審決の商標

4条1項11号の判断に誤りはない。


第5 当裁判所の判断

1 本願商標は漢字である「炭都饅頭」の4文字を江戸文字の書体で縦1行にま
とまりよく記して成る外観を有する一方,引用商標は大文字の欧文字である「TA

NTO」の5文字と片仮名である「タント」の3文字とを,ゴシック体ないしこれ
に類する書体で,横2段書きして成る外観を有するから,両商標の外観は大きく異

なる。
被告は本願商標に使用されている文字の書体はありふれたものであり,取引者や
需要者は筆書き風の書体で記したものと認識するに止まる旨を主張するが,江戸文

字は,骨太で威勢のいい江戸歌舞伎の感性を意匠化すべく考案され,千客万来を願
って,内へと入る運筆で枠一杯に隙間なく書かれることを特徴とするもので(書体

作成会社である株式会社モリサワのホームページにおける解説,甲13) 書体自体

が見る者に強い印象を与えるためにデザインされたものである。そうすると,さほ
ど注意力が高くない需要者や取引者にとっても,本願商標が通常の筆書きによって

記すよりも強い印象を与えるということができ,被告の上記主張を採用して,両商
標の外観の相違を小さく評価することはできない。なお,パーソナルコンピュータ

の普及に伴って江戸文字のフォントが広く使用されるようになってきているとして
も,本願商標自体の外観における書体の特徴に照らせば,上記判断は左右されるも

のではない。
2 本願商標の構成のうち「饅頭」の部分は,和菓子の一種を示す普通名称であ
って,「饅頭」の文字だけでは自他商品識別力が希薄であることは否定できないが,

前記1のとおり,本願商標は縦1行にまとまりよく記して成る外観を有し,本願商




標を構成する文字の書体も,文字の大きさも相互にほぼ同一であって,例えば「炭

都」の部分が特に強調された体裁を有するものではない。

そうすると,本願商標からはまず「タントマンジュウ」との称呼が生じるという

べきである。

被告は,本願商標の「饅頭」以外の部分,すなわち「炭都」の部分が本願商標の
要部であるから,本願商標からは「タント」との称呼が生じると主張する。しかし

ながら,前記のとおり,本願商標は縦1行にまとまりよく記して成る外観を有し,
「炭都」の部分が特に強調された外観のものではないから,
「饅頭」の語の自他商品

識別力が希薄であるとしても,
「炭都」の部分が直ちに要部となるとはいえず,原則
として「タントマンジュウ」との称呼が生じるとの上記認定に変わりはない。また,

需要者や取引者が本願商標の「炭都」の部分に着目し,「炭都饅頭」(タントマンジ
ュウ)の略称の一つとして「タント」と称呼する可能性があるとしても,本願商標
から「タントマンジュウ」との称呼が生じることを否定できるものではなく,また,

「饅頭」において,商品名から「饅頭,まんじゅう」を除いた部分をローマ字や片
仮名で並記することが少なくないとしても,本願商標における4文字を一連にして

成る江戸文字書体の強い外観の印象に照らせば,
「タント」の称呼を持つ「炭都」の
部分が要部となるとすることはできない。
他方,引用商標からは,その構成文字,とりわけ片仮名部分に相応して,
「タント」

との称呼が生じる。
そうすると,本願商標と引用商標とは,生じる称呼が異なるということができる。

なお,本願商標の漢字を「タントマンジュウ」と読むのに,高い読解能力は不要
であるから,上記結論は識別力の相当低い子供等でも異なるものではない。

本願商標は,原告が代表を務める任意団体大牟田菓子組合青年部「大牟田菓青ク
ラブ」の組合員が平成20年10月から使用している(甲21)。これに伴い,福岡
県大牟田市の菓子業者が饅頭の上部に「炭都」と焼き印している例がある(乙11)

ので検討するに,本願商標から「タント」の称呼が生じる場合があるとしても,例




外的な場合であるし,前記1のとおり本願商標は引用商標と外観が大きく異なり,

後記3のとおり観念も異なることに照らせば,この称呼共通の点から,本願商標と

引用商標が類似するとの判断に直ちに至るものではない。

3 前記2のとおり,
「炭都」の部分のみが本願商標の要部ではないところ,福岡

県田川市のホームページ等では炭鉱で栄えた都市を意味する語として「炭都」が使
用されていること(甲36)に照らすと,本願商標からは「炭鉱で栄えた都市にち

なんだ饅頭」程度の観念が生じるし,仮に九州の三池炭鉱付近の都市が石炭の産出
で繁栄した歴史を知らない者であったとしても,石炭を産出する都市にちなんだ饅


頭」や少なくとも「炭の生産をする都市にちなんだ饅頭」程度の観念は生じると認
められる。加えて,原告は饅頭の皮の材料に竹炭を加え,皮を意図的に黒くして,

石炭を連想させる外観の饅頭に「炭都饅頭」の商標を付して販売しており(甲23),
その場合には尚更,原告の上記商品に接した需要者ないし取引者は,
「炭鉱で栄えた
都市にちなんだ饅頭」程度の観念を生じると容易に認めることができる。

他方,引用商標からは,沢山の意味を持つ俗語「たぁんと」「たんと」から来る

観念が生じるか,あるいはイタリア語を知っている需要者,取引者にとってはその

欧文字から「沢山の」という観念が生じると認められる。
そうすると,本願商標から生じる観念と引用商標から生じる観念は明らかに異な
る。

4 結局,本願商標と引用商標とは,その外観も大きく異なり,両商標から生じ
称呼観念も異なる(あるいは,称呼が共通する場合があるとしても,外観,観

念の違いが称呼の共通を大きく凌駕する。)から,両商標は類似しない。
そうすると,審決がした両商標の類否判断は誤りであり,指定商品の類否を判断

するまでもなく,本願商標は商標法4条1項11号に当たらない。


第6 結論

以上によれば,原告が主張する取消事由は理由があるから,主文のとおり判決す




る。



知的財産高等裁判所第2部




裁判長裁判官

塩 月 秀 平




裁判官

古 谷 健 二 郎




裁判官
田 邉 実






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