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審判番号(事件番号) データベース 権利
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関連ワード 識別力 /  指定商品 /  商品の同一性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項11号 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  非類似 / 
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事件 平成 23年 (行ケ) 10252号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2012/01/30
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成24年1月30日判決言渡

平成23年(行ケ)第10252号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成23年12月15日

判 決



原 告 株 式 会 社 白 謙 蒲 鉾 店



訴訟代理人弁理士 佐 藤 英 昭

丸 山 亮



被 告 特 許 庁 長 官
指 定 代 理 人 前 山 る り 子

板 谷 玲 子

田 村 正 明



主 文

特許庁が不服2010−7005号事件について平成23年6月17日
にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。



事 実 及 び 理 由

第1 原告の求めた判決

主文同旨



第2 事案の概要

1 本件訴訟は,商標登録出願の拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取




消訴訟である。争点は,引用商標との類否(商標法4条1項11号)である。

2 特許庁における手続の経緯

原告は,平成21年3月11日,下記本願商標につき,商標登録出願(商願20

09−17427号)をしたが,拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判

請求をした(不服2010−7005号)。
【本願商標】

海葉(標準文字)

指定商品

第29類

かまぼこ,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・と

ろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。 ,

肉製品,かつお節,寒天,削り節,食用魚粉,とろろ昆布,干しのり,

干しひじき,干しわかめ,焼きのり

特許庁は,平成23年6月17日,同請求につき「本件審判の請求は,成り立た

ない。」との審決をし,その謄本は同年7月5日,原告に送達された。

3 審決の理由の要点

本願商標は下記引用商標と類似の商標であって,本願商標の指定商品は引用商標
指定商品に包含されるものであるから,商標法4条1項11号に該当する。

【引用商標】(商標登録第472111号)

指定商品(平成18年3月22日の書換え後のもの)

第29類 食肉,卵,かまぼこ,ちくわ,はんぺん,塩辛,うに

(塩辛魚介類),このわた,肉のつくだに,水産物のつくだに,寒天,

かつお節,干しのり,焼きのり,とろろ昆布,干しわかめ,干しあら

め,ジャム,野菜のつくだに,果実の漬物,野菜の漬物,なめ物

・出願 昭和30年2月15日 ・登録 昭和30年10月27日

・商標権者 株式会社杉本利兵衛本店




第3 原告主張の審決取消事由(商標法4条1項11号の解釈適用の違法性)

1 本願商標の外観観念称呼

本願商標は,「海葉」の漢字を標準文字で横書きしてなるものである。

本願商標を構成する「海葉」の文字は,成語としては各種国語辞典に掲載されて
いないが,これを構成する文字である漢字は,我が国においては表意文字として使

用されており,漢字1文字1文字が意味を有することは公知の事実である。本願商

標に使用されている「海」の漢字は「地球上の陸地以外の部分で,塩水をたたえた

所」を意味し,「葉」の漢字は「ハ」と読む場合は「植物の栄養器官の1つ」を意

味し,「ヨウ」と読む場合は「木の葉の先や縁のようにとがっているところ。葉の

ように薄く平たいもの」を意味する。そして,これら「海」と「葉」の文字は,小

学校で教えられるごく平易な漢字であり,その意味もさして難しいものではない。

したがって,本願商標に接した一般の需要者・取引者は,即座に特定の観念を想起

するとはいえないが,構成文字に相応して「海の葉っぱ」程度の観念を想起する。

これに加えて,原告は,海産物を原材料として植物の葉の形状に似せて形成し,一

般に「笹かまぼこ」と呼ばれる,「海の葉っぱ」を連想させる外観のかまぼこに「海

葉」の商標を付して販売しており,この商品に接した需要者・取引者は,「海の葉
っぱのような笹かまぼこ」程度の観念を想起する。

本願商標からは,構成文字に応じて,「カイヨウ」又は「ウミハ」の称呼が生じ

る。

2 引用商標の外観観念称呼

引用商標は,「海陽」の文字をあたかも石碑の拓本のような様態において縦書き

し,「海」の文字は「毎」の部分を「 」と表すものであり,「陽」の文字は「昜」
の部分を「易」のごとく横画を省略したもので,あたかも中国唐代の九成宮醴泉銘

のようにピンと張りつめた緊張感や厳しさが感じられる書体で表されており,書道

に詳しくない一般の需要者・取引者であっても「日本若しくは東洋的な,長い歴史




・伝統がありそうな」印象を受ける。

引用商標に使用されている「海」の漢字は本願商標と共通であり,「陽」の漢字

は「日に向かっている方。日の当たっている側。」を意味するところ,「陽」の文

字も平易な漢字であり,その意味もさして難しいものではない。したがって,引用

商標に接した一般の需要者・取引者は,即座に特定の観念を想起するとはいえない
が,構成文字に相応して「海から昇る陽(ひ)」,「日の当たっている明るい海」,

「海の日が当たっている方」程度の観念を想起する。これに加えて,被告は,引用

商標を使用した商品について「大海原からのぼる朝日をかたどった色鮮やかな高級

紅蒲鉾“海陽”」と説明しており,この商品に接した需要者・取引者は,「海から

昇る陽(ひ)のようなかまぼこ」程度の観念を想起する。

「海陽」の文字からなる引用商標からは,「カイヨウ」,「ウミヒ」等の称呼

生じる。

3 原告主張の対比判断

(1) 外観

本願商標と引用商標とは,「海」の文字が共通し,「葉」と「陽」の文字が相違

しているが,多数の文字からなる語句のうちの一語が相違するのとは異なり,2文

字のうちの1文字(文字標章の半分)が相違するのであって,外観の相違を過小評
価することはできない。そして,「葉」の文字は「くさかんむり」を部首とする「上

と下とに分けられる漢字」の外観を有するのに対して,「陽」の文字は「こざとへ

ん」を部首とする「右と左に分けられる漢字」の外観を有するものであり,外観

の類似点は一切ない。

加えて,本願商標は「海葉」の標準文字を普通に横書きしてなるのに対し,引用

商標は「海陽」の文字をあたかも石碑の拓本のような様態において縦書きし,さら
に「海」の文字は「毎」の部分を「 」と表すなどの相違がある。

したがって,本願商標と引用商標との間には,無視することができない外観上の

相違がある。




(2) 観念

本願商標及び引用商標は,いずれも辞書に記載のあるような成語ではないが,上

記のとおりいずれも平易な漢字からなり,「葉」と「陽」との漢字が有する意味(字

義)が異なる。そして,漢字を母国語として普通に使用し,同音異義語を日常的に

使い分けている一般の需要者・取引者において,「海葉」と「海陽」とを同義と捉
えることは考えらない。

したがって,本願商標と引用商標との間には,無視することができない観念上の

相違がある。

(3) 称呼

本願商標及び引用商標からは,「カイヨウ」の称呼が生じる場合があるから,そ

の限りにおいて,称呼が類似する場合がある。

(4) 取引の実情

本願指定商品に含まれる「かまぼこ」については,「海宝」という商標を用いた

商品と,「海峰」という商標を用いた商品との間で,出所について誤認混同を生じ

ることなく各商標が使用されている。

また,本願指定商品と同一又は類似する商品を指定商品とする商標に関して,「海

精」と「海匠」,「海華」と「海香/うみか」のような併存登録例がある。
なお,被告は,口頭取引が増加していることをもって,称呼が特に重要であると

主張する。しかし,電話等の口頭取引が増加しているとしても,現在の商取引のす

べてが口頭取引になっているのではなく,称呼を頼りとする口頭取引はあくまで商

取引の一形態にすぎない。また,被告が主張する口頭取引について,被告提出の証

拠には,カタログ・チラシや,ウェブサイト上の商品のパッケージ写真を見て注文

する旨の記載があり,商標は視覚に訴える態様で機能しているのであって,称呼
頼りとする取引であるとはいえない。

(5) 小括

上記の観念及び外観の相違は,「カイヨウ」との称呼の共通性を優に凌駕するも




のであるから,これらを総合して考察すれば,本願商標と引用商標とは商品の出所

について誤認混同を生じるおそれのない非類似の商標であり,これらを類似すると

した審決の判断は誤りである。



第4 被告の反論
1 本願商標の外観観念称呼

本願商標は,「海葉」の漢字を標準文字で表してなるものである。

本願商標は,広辞苑第6版,角川大字源,その他の一般の辞典にも掲載されてい

ないことからして,特定の意味を有する成語ではない。また,「海」の漢字と「葉」

の漢字とからなる「海葉」は,それ自体で熟語的な意味合いを認識させるものでも

ない。したがって,本願商標は,全体として特定の観念を生じないものである。

本願商標は,音読みした場合には「カイヨウ」であり,訓読みした場合には「ウ

ミハ」であって,いずれも特に不自然な称呼ではないから,本願商標の構成自体か

らは,通常,両称呼が生じる。ただし,原告は,指定商品のかまぼこに使用した本

願商標について「かいよう」の読み仮名を付しており,実際の取引における称呼

「カイヨウ」である。

2 引用商標の外観観念称呼
引用商標は,「海陽」の漢字を筆書き風に同書同大で縦書きした構成よりなる。

引用商標は,広辞苑第6版,角川大字源,その他の一般の辞典にも掲載されてい

ないことからして,特定の意味を有する成語ではない。また,「海」の漢字と「陽」

の漢字とからなる「海陽」は,それ自体で熟語的な意味合いを認識させるものでも

ない。したがって,引用商標も,全体として特定の観念を生じないものである。

引用商標は,音読みした場合には「カイヨウ」,訓読みした場合には「ウミヒ」
である。ただし,引用商標権者は,商品「かまぼこ」について,「かいよう」又は

「カイヨウ」の振り仮名を付した「海陽」の文字を商標として使用しており,実際

の取引における称呼は「カイヨウ」である。




3 被告主張の対比判断

(1) 外観

本願商標と引用商標の外観を対比した場合には,本願商標が「海葉」の漢字を標

準文字で横書きにて表してなるのに対し,引用商標が「海陽」の漢字を筆書き風に

縦書きにて表してなるものであるから,外観上類似するとまではいえない。
しかしながら,共に漢字2字のみから構成され,かつ,看者の注意をひきやすい

語頭の「海」の漢字を共通にするものである。

なお,一般に商標を使用するに際して,横書きを縦書きに,又はその逆に表示方

法を変えることや,楷書のみならず筆書き風の書体をも用いて表示することが,普

通に行われていること,また,「海」の文字の旁(つくり)についても,同じ文字

の異体字である上,子細に観察しなければ把握することができない程度の相違であ

るということから,横書きか縦書きか,標準文字か筆書き風か,「海」の文字の旁

(つくり)が「毎」か「 」かについては,その相違によって,需要者・取引者に

与える出所識別標識としての印象が大きく異なるとはいえない。

(2) 観念

本願商標と引用商標とは,共に特定の観念を生じさせない造語というべきである

から,観念において比較することはできず,観念をもって両商標を明確に区別する
ことはできない。

(3) 称呼

本願商標と引用商標の称呼は,「カイヨウ」で同一である。

(4) 取引の実情

ア 商品の購入にあたっては,目視によるものに限らず,商標から生ずる称

呼を手掛かりとした対面販売や電話注文のように,口頭で商品名を伝えて購入する
ことがしばしばある。そして,近年,高齢者など,日常の買物が困難な者が増えて

おり,これらの者に向けて,インターネットによる商品注文だけでなく,パソコン

を使えない者のためにFAXや電話によっても商品注文を受け付けており,これに




伴い,電話による口頭取引も増えているものと推測される。

本願商標及び引用商標で抵触する指定商品を取り扱う業界においても,複数のか

もぼこ店やスーパーマーケットのウェブサイトにおいて,電話で注文を受け付ける

旨の表示がされている。

イ 商品の宣伝・広告も,新聞・雑誌等の紙媒体を用いて視覚に訴えるもの
に限らず,テレビ・ラジオ等を用いて聴覚に働きかけるものもあるから,日常の買

物品などでは,需要者は,例えば,コマーシャルソング等に織り込まれた商品の名

称(商標の称呼)だけを記憶にとどめ,その記憶した商標の称呼を頼りに商品を選

択,購入することも,ごく普通にみられることである。

本願商標及び引用商標で抵触する指定商品「かまぼこ」についても,複数のCM

ソングが存在しており,テレビやラジオにより,商標を告知する広告が行われてい

ると推測される。

ウ 原告の商品「かまぼこ」の取扱い店舗は,本店所在の宮城県を主として,

13都道県(ただし,うち4県の店舗では,現在取り扱っていない。)に及んでい

る。引用商標権者の商品「かまぼこ」の取扱い店舗も,本店所在の山口県を主とし

て,9都府県に及んでいる。このように,互いの取扱い地域は広範囲に及び,重な

る地域も少なくない。
エ 本願商標及び引用商標で抵触する指定商品は,安価に購入でき,日常的

に消費されるものであって,その取引者・需要者には,買い物難民,家庭の主婦な

ど,広く一般消費者も含まれるものである。

オ 以上を総合的に勘案すると,本願商標及び引用商標で抵触する指定商品

の分野においては,その需要者が,商品の同一性を識別するに際して,商標から生

ずる称呼が極めて重要な要素となる。
(5) 指定商品

本願商標の指定商品と引用商標の指定商品には,「かまぼこ」等,同一又は類似

の商品が含まれている。




(6) 小括

上記(4)のとおり,本願商標及び引用商標で抵触する指定商品の分野では,商品の

同一性を識別するに際して称呼が極めて重要な要素となるから,本願商標と引用商

標との類否を判断するに当たっては,外観及び観念に比して称呼を重視すべきであ

る。また,本願商標の指定商品は,引用商標の指定商品と同一又は類似の商品であ
る。

そうすると,本願商標と引用商標とは,上記取引の実情を踏まえつつ総合勘案す

るならば,外観において類似せず,観念について比較できない(仮に,原告の主張

どおり,2文字目の漢字から生ずる観念が相違する)としても,称呼は「カイヨウ」

で同一であるから,両商標が同一又は類似の商品に使用された場合には,商品の出

所について誤認混同を生ずるおそれがある類似の商標というべきであり,本願商標

が商標法4条1項11号に該当するとした審決の認定,判断に誤りはない。



第5 当裁判所の判断

1 本願商標及び引用商標について

(1) 本願商標は,「海葉」の漢字を標準文字で表記したものである。

本願商標は,全証拠によっても辞書に収録された成語であるとは認められないも
のの,これを構成する「海」と「葉」の文字は,いずれも平易,常用,かつ一般人

にとって観念を容易に想起し得る漢字であり,また,2文字程度の漢字を組み合わ

せた単語について,これを構成する文字からその意味を理解することも通常のこと

であるから,本願商標からは,「海」と「葉」から生じる観念を組み合わせた,「海

草の葉っぱ」,「海に浮いた葉っぱ」程度の観念を生じるものと認められる。

また,本願商標からは,構成文字に応じて,「カイヨウ」,「ウミハ」の称呼
生じ得るところ,原告は,本願商標を指定商品に含まれるかまぼこに使用する際に,

「かいよう」の読み仮名を付しているから(甲18),本願商標からは基本的に「カ

イヨウ」の称呼が生じるものと認められる。




(2) 引用商標は,「海陽」の漢字を,行書体に近い筆書体により縦書きで表記

したものである。

引用商標も,本願商標と同様に,全証拠によっても辞書に収録された成語である

とは認められないが,平易,常用,かつ一般人にとって観念を容易に想起し得る漢

字を組み合わせたものであり,「陽」の文字からは「日の当たっている側」(甲1
0),「太陽」等の観念を生じるから,一般人にとって,構成文字である「海」と

「陽」から生じる観念を組み合わせた,「海に昇る太陽」,「海に沈む太陽」,「海

の日の当たる場所」程度の観念を生じるものと認められる。

また,引用商標からは,構成文字に応じて,「カイヨウ」,「ウミヒ」の称呼

生じ得るところ,引用商標権者は,引用商標を指定表品に含まれるかまぼこに使用

する際に,「かいよう」の読み仮名を付しているから(乙4の1),引用商標から

は基本的に「カイヨウ」の称呼が生じるものと認められる。

2 本願商標と引用商標との類否

(1) 類否の判断

外観について,本願商標と引用商標は,それぞれを構成する漢字2文字のうち,

先頭の1文字が「海」であって共通するものの,「海」ともう1文字の漢字を組み

合わせた単語は非常に多く存在するから(乙3),「海」と組み合わされる漢字の
外観上の相違を軽視することはできないというべきである。そして,本件において

は,「葉」と「陽」との間に旁(つくり)や偏(へん)の共通性はなく,その相違

は大きいから,全体として両者は外観が大きく異なる。

観念についても,本願商標からは「海草の葉っぱ」,「海に浮いた葉っぱ」程度

観念が生じるのに対し,引用商標からは,「海に昇る太陽」,「海に沈む太陽」,

「海の日の当たる場所」程度の観念が生じるから,両者は観念において大きく異な
る。

称呼について,本願商標と引用商標から生じる称呼は,いずれも基本的に「カイ

ヨウ」であり,基本的に同一である。




以上のとおり,本願商標と引用商標とは,その外観観念において大きく相違し,

称呼において基本的に同一であるところ,海の母音である「あい」も,葉や陽の母

音である「おう」も,漢字の音読みとしてありふれた読みであり,これに「K」と

「Y」の子音を組み合わせた「KあいYおう」との称呼は2文字の漢字のありふれ

た読みからくるもので,外観観念の相違に比較すると,識別力が弱いものである。
そして,本件において,この判断に反して特に考慮すべき取引の実情は認められな

いから,本件においては,外観観念の相違が称呼の共通を凌駕するものというべ

きであって,指定商品について共通するものがあるとしても,本願商標と引用商標

とは類似するものではないというべきである。

(2) 被告の主張に対する判断

被告は,本願商標と引用商標とで抵触する指定商品を取り扱う業界などにおける

取引の実情を考慮すると,称呼が極めて重要な要素となる旨主張する。

確かに,証拠(乙5の1〜6の6)によれば,日常の買い物が困難になっている

高齢者等に対応するため,本願指定商品に含まれるかまぼこ等を取り扱っている複

数のスーパーマーケット,インターネットを利用したネットスーパーにおいて電話

注文を受け付け,また,ウェブサイトを設けているかまぼこ店においても電話注文

を受け付けている事実が認められるものの,他方において,これらの電話注文の多
くは,事前に配布されたカタログや商品一覧のチラシの存在,ウェブサイト上の商

品情報や商品番号,さらには単価などの閲覧等を前提とするものと認められるから,

これらの電話注文に関して称呼のみで取引が特定されている実情にあるとはいえな

い。

また,CMソングについても,本願指定商品に含まれるかまぼこを取り扱ってい

る複数の業者がCMソングを作成している事実は認められるものの(乙7の1〜7
の5),CMソングの歌詞には取扱業者の名称も含まれるのが通常であろうから,

これにより称呼のみが特に重視される実情にあると認めることはできない。

そして,その他被告が主張するところによっても,上記判断は左右されず,被告




の主張は採用することができない。



第6 結論

以上のとおり,引用商標との対比において商標法4条1項11号該当性を肯定し

た審決の判断は誤りである。
よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第2部




裁判長裁判官
塩 月 秀 平




裁判官

真 辺 朋 子




裁判官

古 谷 健 二 郎