審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成23行ケ10309審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成23行ケ10311 | 判例 | 商標 |
平成23行ケ10310審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成23行ケ10287審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成22ワ10785商標権侵害差止請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 識別力 / 指定役務 / 記述的商標(3条1項3号) / 普通に用いられる方法 / 品質誤認(4条1項16号) / 外観(外観類似) / 取引の実情 / 補正 / 社団法人 / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
23年
(行ケ)
10223号
審決取消請求事件
|
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裁判所のデータが存在しません。 | |
裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2012/02/09 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
判例全文 | |
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判例全文
平成24年2月9日 判決言渡 平成23年(行ケ)第10223号 審決取消請求事件(商標) 口頭弁論終結日 平成23年11月28日 判 決 原 告 株式会社秋月事務所 訴訟代理人弁理士 加 藤 久 同 田 代 茂 夫 被 告 特 許 庁 長 官 指 定 代 理 人 大 橋 良 成 同 小 林 由 美 子 同 田 村 正 明 主 文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 特許庁が不服2010−12400号事件について平成23年5月30日 にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が下記商標(本願商標)につき商標登録出願したところ,拒絶 査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をしたが,特許庁から請求不 成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事案である。 記 ・商標<標準文字> 戸建マンション ・指定役務 第35類 「賃貸住宅・駐車場の経営の診断及び指導,賃貸住宅・駐車場事業の経 営の代行」 第36類 「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買, 建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土 地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理 又は媒介,建物又は土地の情報の提供」 第37類 「建設工事,建築工事に関する助言,建築物の外壁の清掃,窓の清掃, 床敷物の清掃,床磨き,有害動物の防除(農業・園芸又は林業に関する ものを除く。)」 第42類 「建築物の設計,測量,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研 究,土木に関する試験又は研究」 2 争点は,本願商標が,@ 商標法3条1項3号が規定する「その役務の質を普 通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するか, 商標 A 法4条1項16号が規定する「役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」に 該当するか,である。 第3 当事者の主張 1 請求の原因 (1) 特許庁における手続の経緯 原告は,平成20年7月2日,指定役務を第35・36・37・42類(詳 細は省略)として商標登録出願(商願2008−53190号)をし,平成 21年5月25日付けで指定役務を前記第2,1記載の内容に変更する手続 補正をしたが,平成22年3月9日付けで拒絶査定を受けたので,これに対 する不服の審判請求をした。 特許庁は,上記請求を不服2010−12400号事件として審理した 上,平成23年5月30日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審 決をし,その謄本は同年6月14日原告に送達された。 (2) 審決の内容 審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,@ 本 願商標は,これをその指定役務中建物に関連する役務に使用しても,単に役 務の質(内容)等を表示するにすぎないから商標法3条1項3号に該当する, A 前記役務以外の役務に本願商標を使用するときは役務の質について誤認 を生じさせるおそれがあるから同法4条1項16号に該当する,というもの である。 (3) 審決の取消事由 しかしながら,審決には,以下のような誤りがあるから,違法として取り 消されるべきである。 ア 本願商標は商標法3条1項3号に該当しない (ア) 本願商標は原告による造語である 本願商標「戸建マンション」の語は,既成語ではなく,辞典類及び各 種データベースを調査しても,これを使用している例はない。 そして,本願商標中の「戸建」の語は,「戸建住宅。独立住宅。」等 の意味合いを有する語であり,他方「マンション」の語は,「集合住宅。 共同住宅。」等の意味合いを有する語である。つまり,両語は,住宅に ついて全く正反対の意味合いを有する語であることから,本願商標のよ うに「戸建マンション」というように組み合わせた場合,特定の意味合 いを有するとはいえない。 他方,原告は,マンションの「快適性」と「管理」のよさ,そして, 戸建ての「独立性」と「広い敷地空間」など,「マンション」と「戸建 て」の双方のよさを複合させ,快適で新しい住宅と住環境を提供するた めに業務を行い,その商標として本願商標「戸建マンション」を採用し たものである。 すなわち,原告は,グループ企業である有限会社羽田エンタープライ ズ及びラッツ・アーキテクツ株式会社と協力して,設計事務所,建設会 社及び管理会社がコラボレートした企画として,マンション管理方式を 戸建賃貸に応用し,居住者は内部空間のみを専有し,躯体及び外壁以降 の空間は共用部分として管理会社が管理を行うという方式で,デザイン 性の高い建築物を複数棟建て,上記の管理システムにより街並の形成に 寄与できる「総合的なシステム」という「戸建マンションによるまちづ くり」を実施している。これは,例えば住宅地のため規制により高い建 物が建てられない広い土地や,分譲地としては売却しづらい土地などの 有効利用を図るという観点から,建築基準法86条1項に基づく特定行 政庁の認定を受けて,まち全体で社会貢献をすることを1つのテーマと して,まちづくりを行う事業である。この事業において建築された複数 の建物は,マンションでも一戸建て住宅でもなく,一戸ごとにそれぞれ が独立した住宅でありながら,全ての住宅につき全体として管理を行う ことにより新たな住み方を提供するものであって,その概念を取引者や 需要者に分かりやすく伝えるために「戸建マンション」という商標を原 告が独自に考えたものである。 なお,原告は,上記「戸建マンションによるまちづくり」を受賞対象 として,2008年度グッドデザイン賞を受賞している。 以上のとおり,本願商標は,原告によって創作された造語である。 (イ) 審決において掲示された新聞記事及びインターネット情報について 審決においては,戸建て感覚のマンションが多数取引されている実情 にあること,及び「戸建(て)マンション」あるいは「戸建型マンショ ン」の語が戸建住宅とマンションの特長とを併せ持ったマンションの一 建築形態を表すものとして実際に使用されている事実があることを示 すために,新聞記事及びインターネット情報が示されている。 しかし,それらの記事には本願商標「戸建マンション」という語は使 用されていないし,各記事の中には「戸建て感覚マンション」,「マン ションで戸建感覚の独立性を追求し」,「戸建て感覚」,「戸建てマン ション」,「戸建型マンション」,「『新・戸建型』マンション」,「分 譲戸建てマンション」という語は使用されているが,その内容について 説明のない記事もあり,また,その意味するところは明確でないか異な る意味合いで使用されているものばかりである。 以上によれば,マンションに一戸建ての特長をいろいろ工夫した住宅 が建築され取引されている事実があったとしても,その「一戸建ての特 長」という内容は一定かつ明確ではなく,それぞれ感覚的な表現で「戸 建て」という語を使用しているにすぎないものであるから,「マンショ ン」について「戸建て」あるいは「戸建型」の語を組み合わせて使用し ても,直接的に「マンション」(集合住宅)の具体的な質(内容)を表す とはいえないものである。 (ウ) 本願商標は「役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみ からなる商標」とはいえない 上記(イ)のとおり,「戸建て感覚マンション」,「戸建てマンション」 あるいは「戸建型マンション」の語を使用している複数の語はそれぞれ 独自の意味合いで使用されており,しかも本願商標とは異なる態様で使 用されている事実に基づけば,本願商標をその指定役務について使用し た場合に,その役務のある特定の質を認識させるとはいえないから, 「その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる 商標」ということは到底できないものである。 したがって,本願商標を,その指定役務中の建物関連役務に使用して も,単に役務の質(内容)等を表示するにすぎず,自他役務の識別標識 としての機能を果たさないものということはできないから,商標法3条 1項3号に該当するものでない。 イ 本願商標は商標法4条1項16号に該当しない 本願商標は,前記アのとおり,建物関連役務に使用しても,直接的にマ ンションの特定の質(内容)を表示しているとはいえないから,これを建 物関連役務以外の役務に使用しても,役務の質について誤認を生じさせる おそれがあるとはいえない。 したがって,本願商標は,商標法4条1項16号にも該当するものでは ない。 2 請求原因に対する認否 請求原因(1)及び(2)の各事実は認めるが,(3)は争う。 3 被告の反論 審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 (1) 本願商標は商標法3条1項3号に該当する ア 本願商標は,「戸建マンション」の文字を標準文字で表してなるもので あり,その文字の種類の相違から「戸建」の漢字と「マンション」の片仮 名文字とを結合した構成からなることは明らかである。 そして,「戸建」が「(集合住宅に対して)独立した一戸の住宅。一戸 建て住宅。」を意味する語であるのに対し,「マンション」は「中高層の 集合住宅」を意味する語であるから(乙1,2),一般的な解釈からすれ ば,両語は,住宅の種類を表す語の中でも,正反対の意味を表す語として 理解されているというのは,正に原告の主張するとおりである。 しかし,そうであるからといって,正反対の語である「戸建」と「マン ション」とを用いて一連に「戸建マンション」と表記したならば,常に特 定の意味合いを生じさせない造語としてしか認識されないとはいえない のであって,指定役務における具体的な取引の実情いかんによっては,そ のような「戸建」と「マンション」との組合せであっても,有機的な関連 性をもって使用され,特定の意味合いを表すようになっている場合には, 「戸建マンション」自体もそれに相当する表記として同様の意味合いで理 解されることも十分あり得るのである。 また,原告は,2008年度に「戸建マンションによるまちづくり」で グッドデザイン賞を受賞したことや,「戸建マンション」とは,マンショ ン管理方式を戸建賃貸に応用していることを意味しており,原告が考案し た造語であるなどと主張するが,たとえ原告が本願商標「戸建マンション」 を独自の意味で使用しているとしても,2008年度にグッドデザイン賞 を受賞したというだけでは,本願商標が,建物関連役務との関係では,取 引者,需要者に「戸建て住宅の機能,特長を併せ持ったマンション」程の 意味合いで,その役務の質(内容)等を表すものと認識,理解されること を否定することはできないものである。 したがって,本願商標が原告による造語であるとの原告の主張は失当で ある。 イ 建築関連役務における取引の実情 本願の指定役務中には,「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建 物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定 評価,建物又は土地の情報の提供,建設工事,建築工事に関する助言,建 築物の設計」等の建物に関連する役務が含まれている。 上記の建物関連役務を提供する業界においては,「戸建」及び「マンシ ョン」の語自体は,前記アのとおり,住宅の種類を表す語として使用され ているものであるから,当該役務との関係では自他識別力を何ら有しない ものである。そして,前記アのとおり,「戸建」と「マンション」は,通 常,住宅の種類を表す語の中でも対義語として扱われ,取引されている。 しかし,その一方で,「メゾネット」という「中高層の集合住宅の 1 戸 で,二つの階にまたがる住宅。」(乙3)も広く知られており,マンショ ン(中高層の集合住宅)でありながら,一戸建てのように二つの階にまた がる住戸形式もある。 また,住戸の独立性を高めたり,専用の庭や門扉を設置したりするなど, 戸建てに近い居住性,建築形態を採る戸建て感覚のマンションも多数取引 されている(乙7〜13)。 さらに,「戸建てマンション」及び「戸建型マンション」の語が,戸建 住宅とマンションの特長とを併せ持ったマンションの一建築形態を表す ものとして使用されているし(乙14〜19),その他にも同種の表記と して「戸建て感覚マンション」,「戸建て風マンション」等のように使用 されている(乙20〜乙26)。 以上によれば,建物関連役務を提供する業界においては,「マンション」 でありながら,「一戸建て」(戸建)と関連付けた説明がなされているほ か,「戸建て住宅の機能,特長を併せ持ったマンション」程の意味合いで, 互いに正反対の語である「戸建」と「マンション」とを用いて,「戸建て マンション」,「戸建型マンション」,「戸建て感覚マンション」及び「戸 建て風マンション」等のように表記しているのが実情である。 ウ 前記取引の実情を踏まえるならば,本願商標「戸建マンション」に接す る建物関連役務の取引者,需要者は,その表記から「戸建てマンション」, 「戸建型マンション」,「戸建て感覚マンション」及び「戸建て風マンシ ョン」等を連想,想起し,本願商標もまた,それらに相当する表記として 「戸建て住宅の機能,特長を併せ持ったマンション」程の意味合いで,そ の役務の質(内容)等を表すものと認識,理解される蓋然性が極めて高い というべきである。 そうすると,本願商標は,これを建物関連役務に使用しても,単に役務 の質(内容)等を表示したものと認識されるにすぎず,自他役務の識別標 識としての機能を果たさないものというべきであるから,商標法3条1項 3号に該当する。 (2) 本願商標は商標法4条1項16号に該当する 前記(1)ウのとおり,本願商標は,建物関連役務との関係では,取引者, 需要者に「戸建て住宅の機能,特長を併せ持ったマンション」程の意味合い で,その役務の質(内容)等を表すものと認識,理解される蓋然性が極めて 高いというべきであるから,そのような「戸建マンション」に係る建物関連 役務以外の役務に使用するときは,役務の質について誤認を生じさせるおそ れがあることは明らかである。 したがって,本願商標は,商標法4条1項16号にも該当する。 第4 当裁判所の判断 1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実は, 当事者間に争いがない。 2 本願商標の商標法3条1項3号及び同法4条1項16号該当性の有無 (1) 事実関係 証拠(甲7,8,9,10,13,乙7〜26)及び弁論の全趣旨によれ ば,次の事実が認められる。 ア 戸建て感覚のマンションが取引されている実情につき,インターネット 及び新聞には次の内容の記事が存在する。 (ア) 「goo住宅・不動産」のサイト内「戸建て感覚マンションはプラ イバシーが高い」の項に,「マンションは,多くの世帯が共同生活を送 る形式なので,とかくプライバシーが問題になりやすい。いかに1つ1 つの住戸の独立性を高めて,戸建て感覚を採り入れるかが重要になる。」 と記載されている(甲7,乙7)。 (http://house.goo.ne.jp/useful/knowledge/M00001.html) (イ) 「ValuePress!」のサイト内「プレスリリース要約(全 角150文字以内)」の項に,「株式会社環商事は,京都市上京区に建 設中のマンション『コンフォール円町』の事前案内会を9月上旬より開 始します。『住まいにおける高い独立性と快適性』をコンセプトに,戸 建感覚の住居配置で優れた独立性と採光・通風を確保し,68の間取り と4種類のカラーコーディネイトプランで,唯一の住まいづくりを実現 します。」と記載されている(甲8,乙8)。 (http://www.value-press.com/pressrelease.php?article_id=28214&m edium_id=1143) (ウ) 2004年6月29日付け読売新聞(東京夕刊5頁)には,「[今 どき消費事情]マンション “高さ”だけじゃない」の見出しのもと, 「マンションの付加価値競争が過熱している。景観などを売り物に二十 階建て以上の超高層物件などが急増しているほか,専用の庭に“離れ” を設けるといった戸建て感覚を強調したマンションも登場しており,好 みや用途によって,様々なスタイルのマンションを選べる時代が到来し ている。」と記載されている(乙9)。 (エ) 2010年6月10日付け毎日新聞(東京朝刊15頁)には,「役 立つ住宅情報:三菱地所『パークハウス蕨市民公園』安心で上質な暮ら し」の見出しのもと,「三菱地所の分譲マンション『パークハウス蕨市 民公園』(埼玉県蕨市)=外観イメージ=が好評分譲中だ。・・・ 全 81戸が南東向きで,プライベート駐車場など戸建て感覚を楽しめる1 階部分や,土手を残した小川の前に用意した子供広場なども特徴の一 つ。」と記載されている(乙10)。 (オ) 「日神パレステージ 籠原」のウェブサイトには,「戸建感覚の門 扉付ポーチ/玄関ポーチには,戸建て感覚を演出する門扉を設置。また, 独立性を高めた玄関ポーチは,ドアが廊下に直接面していないためご家 族のプライバシーも守られます。」及び「爽やかな緑がうれしい専用庭 (1 階住戸のみ)/芝貼りの緑が美しい,テラスのある戸建て感覚の専 用庭。」との記載がある(乙11)。 (http://www.ricordo.co.jp/kagohara/model_room.html) (カ) 「社団法人全日本不動産協会 全日本不動産関東流通センター」の ウェブサイトには,「戸建て感覚の専用庭付ビッグヴァン京王橋本マン ション」の見出しのもと,「マンションなのに奥行き3M幅8Mの広い 専用庭が付いた物件!ガーデニングにも菜園にも使える戸建て感覚の マンションです」との記載がある(乙12)。 (http://www.zennichi.net/b/livinghome/index.asp?id=9425&act_lst =detail&page=1) (キ) 2000年3月7日付けの日刊工業新聞(19頁)には,「新日軽, マンション用エクステリア製品を強化。ビル建材本部でも積極営業」の 見出しのもと,「戸建て感覚のマンション設計が増え,玄関前に門扉な ど設置する物件が増加している。同社の調べでは全国の新築物件の45 %が設置しているという。」との記載がある(乙13)。 イ 「戸建マンション」及びこれに類似する語に関し,インターネット及び 新聞には次の内容の記事が存在する。 (ア) 「横浜空間」のサイト内「物件紹介」の項に,「【戸建てマンショ ン】126m2の広さを,余す事なくふんだんに使った造りは,一度室 内に入ってしまうとマンションという事忘れ,ごくごく普通の一戸建て 2階家のような空間で来客者を魅了します。」と記載されている(甲9, 乙14)。 (http://www.yokohama-kukan.com/msys/contents/preview/detail.php ?id=69) (イ) 「セキスイハイム住宅ブログ」のサイト内「リス子のもぐもぐ日記 セキスイハイム東海」(2010年10月22日)の項に,「その 4 『究 極の戸建てマンション』/大きな音で映画を見たい。/庭でバイクをい じりたい。/子供たちと大声で歌いたい。/ペットと自由に暮らしたい。 /友達とガーデンパーティーをしたい。/二人で静かに暮らしたい。/ ・・・究極の戸建てマンションだからあなたの夢を叶えます。」と記載 されている(甲10,乙15)。 (http://www.blog816t.com/2010/10/%E5%B9%B3%E5%B1%8B%E3%81%A7%E6 %9A%AE%E3%82%89%E3%81%99.html) (ウ) 「21Style byCENTURY21」のサイト内「マンシ ョン」の項に,「戸建型マンション 売買マンション物件情報」と記載 されている(乙16)。 (http://bukken.century21.jp/mansion/%E6%98%A5%E6%B1%9F%E7%94%BA %20%E6%88%B8%E5%BB%BA%E5%9E%8B%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83 %A7%E3%83%B3/) (エ) 「セイワハウジング株式会社」のサイト内「セイワグループ沿革 2 003年(平成15年)1月」の項に,「相模原駅徒歩5分の恵まれた 立地に誕生した『新・戸建型』マンション,ロアーブル・ビュー相模原。 ビューの名前にふさわしい地上13階の豊かな眺望が眼下に広がりま す。」と記載されている(乙17)。 (http://www.seiwagp.co.jp/company/index.html) (オ) 「HOMEPLAZA」のサイト内「特集企画」の項に,「関連特 集情報『東小金井戸建てマンション』に関連するマンション・住宅情報」 と記載されている(甲13,乙18)。 (http://www.home-plaza.jp/realestate/t/%E6%9D%B1%E5%B0%8F%E9%87 %91%E4%BA%95%E6%88%B8%E5%BB%BA%E3%81%A6%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82 %B7%E3%83%A7%E3%83%B3/1) (カ) 2009年3月31日 日刊工業新聞31頁 「第21回中小企業優 秀新技術・新製品賞(1)」の見出しのもと,「《中小企業庁長官賞》 ・・・【オプナス】・・・入居のたびに必要だったシリンダー交換を不 要にし,費用や手間を大幅に削減。分譲戸建てマンションでのキー紛失 時などにもすばやく対応できる。」と記載されている(乙19)。 (キ) 1999年3月19日付けの住宅新報(2面)には,「扶桑レクセ ル 都下中心 設備含む注文方式も /「新・戸建て感覚」軸に210 0戸供給」の見出しのもと,「扶桑レクセル(本社・東京・・・)は東 京の多摩地区(都下)を中心に,『環境創造型の戸建て感覚マンション』 を本格供給する。昨年,『レクセルガーデン志津』(千葉県佐倉市,二 百四戸)を販売以来,戸建て感覚マンションを相次ぎ早期完売させてき たが,この二月には同シリーズを一歩進めた新・戸建て感覚マンション 『レクセルガーデン新八柱』(同県松戸市,五十八戸)を即日完売させ た」との記載がある(乙20)。 (ク) 2003年4月27日付けの産経新聞(東京朝刊 27頁 住宅特 集)には,「【快適すまい】『レクセルマンション北千住』第1期受け 付け」の見出しのもと,「■オール電化仕様の“戸建て感覚”/・・・ 東京・足立区に扶桑レクセルが建設中の『レクセルマンション北千住』 が第一期の先着順受け付けを行っている。特徴は,オール電化仕様の戸 建て感覚マンション。」との記載がある(乙21)。 (ケ) 「専用庭付きの戸建て感覚マンション|賃貸・売買・管理・リロケ ーション(川口市) - Lococom」のウェブサイトには,「専用庭付きの 戸建て感覚マンション」との記載がある(乙22)。 (http://www.lococom.jp/mblist/33120/105505) (コ) 「家探しのポイント」のウェブサイトには,「戸建て感覚マンショ ンを選ぶ」の見出しのもと,「…マンションの場合集合住宅の体裁をし ているので,プライバシーの保持で問題が生じる可能性がある。そこで もしマンション購入を検討しているのであれば,戸建て感覚マンション を探すようにするといいだろう。戸建て感覚マンションとは,マンショ ンでありながら,一戸建てのプライバシーが保持されるタイプのマンシ ョンを指す。マンションのそれぞれの部屋の独立性が高いので,よりプ ライバシーを守りやすいというのが特徴だ。 との記載がある 」 (乙23)。 (http://apartments-for-rent-in-nashville.com/single_house.html) (サ) 1999年10月19日付けの住宅新報(2面)には,「扶桑レク セル 戸建て風マンション 底層のゆとり強調 /一種住専で独自企 画」の見出しのもと,「…フロアごとの特性を生かした企画や全プラン が異なる個性を持つものなど,低層ならではの,ゆとり・開放感の演出 にこだわり,オリジナリティーに富む戸建て感覚を徹底追求しているの が特徴だ。」との記載がある(乙24)。 (シ) 「中古マンション(グラン・コート籠原)」のウェブサイトには, 「○専用庭付きの戸建風マンション」との記載がある(乙25)。 (http://www.baibai-cms.com/house/dat/0064084/20100328224853.htm l) (ス) 「原田不動産株式会社」のウェブサイトには,「エステート小松 一 室が完全独立の1戸建て風マンション。」との記載がある(乙26)。 (http://harada-f.co.jp/gallery/gallery_estate.html) (2) 前記(1)認定の事実に基づき,本願商標の商標法3条1項3号及び同法4 条1項16号該当性につき判断する。 本願商標は,前記第2,1のとおり,「戸建マンション」の標準文字より なるところ,乙1及び乙2(いずれも「広辞苑第6版」)によれば,その構 成中「戸建」の文字は,「独立した一戸の住宅。一戸建て住宅。」を意味し, また,「マンション」の文字は,「中高層の集合住宅」を意味するものと認 められ,いずれも建物・住宅関連の用語として広く知られた語である。 ところで,前記(1)アの新聞記事及びインターネット情報によれば,本願 の指定役務である建物に関連する役務を提供する業界においては,プライバ シーを確保する目的で住戸の独立性を高めたり,戸建のような住居配置で優 れた独立性と採光・通風を確保し,また専用の庭,駐車場及び門扉を設置す るなどの工夫を施すことによって,戸建てに近い居住性,建築形態を採るマ ンションが多数取引されている実情にあることが認められる。 また,前記(1)イの新聞記事及びインターネット情報によれば,「戸建て マンション」,「戸建型マンション」,「戸建て感覚マンション」及び「戸 建て風マンション」の語が,建物に関連する役務を提供する業界において実 際に使用されていることが認められる。 上記事実によれば,本願商標「戸建マンション」は,上記「戸建てマンシ ョン」,「戸建型マンション」,「戸建て感覚マンション」及び「戸建て風 マンション」と実質的に同一の語であると認められ,また,戸建てに近い居 住性,建築形態を採る戸建てのようなマンションが多数取引されている実情 をも併せ考慮すると,それらの語は,「戸建て住宅の機能・特長を併せ持っ たマンション」という意味合いを有すると認められる。 そうすると,本願商標は,これに接する取引者・需要者をして,「戸建て 住宅の機能・特長を併せ持ったマンション」という意味合いを有する合成語 として容易に認識,理解させるとみるのが相当である。 したがって,本願商標は,これをその指定役務である建物に関連する役務 に使用しても,単に役務の質(内容)等を表示するにすぎず,自他役務の識 別標識としての機能を果たさないものであり,また,前記「戸建マンション」 に係る建物に関連する役務以外の役務に使用するときは,役務の質について 誤認を生じさせるおそれがあるといわざるを得ない。 以上のとおり,結局,本願商標は自他役務識別標識としての機能を果たし 得ないものというべきであって,商標法3条1項3号の「その役務の質を普 通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当し,また,本 願商標を前記役務以外の役務に使用するときは,役務の質について誤認を生 じさせるおそれがあるから,同法4条1項16号の「役務の質の誤認を生じ るおそれがある商標」に該当するといわざるを得ない。 (3) 原告の主張に対する判断 ア 原告は,本願商標「戸建マンション」の語は,既成語ではなく,辞典類 及び各種データベースを調査してもこれを使用している例はないこと, 「戸建」という語と「マンション」という語は,住宅について全く正反対 の意味合いを有する語であることから,これらを本願商標のように「戸建 マンション」というように組み合わせた場合,特定の意味合いを有すると いうことができないと主張する。 確かに,「戸建マンション」の語は既成語とはいえず,前記のとおり, 「戸建」とは (集合住宅に対して) 「 独立した一戸の住宅。一戸建て住宅。」 を意味する語であるのに対し,「マンション」とは「中高層の集合住宅」 を意味する語と認められるから,それらの一般的な意味からすれば,両者 は,住宅の種類を表す語としては正反対の意味を表す語と理解される。 しかし,正反対の意味を表す語であるからといって,それらの語を結合 して使用されることはあり得ないということはできず,結合されるそれぞ れの語の意味及び両者の関連性から,正反対の意味を表す語を結合するこ とによって特定の意味合いを持つ語として使用されることは一般的にあ り得ることであって,実際,前記認定のとおり,本願の指定役務である建 築に関連する役務を提供する業界において,「戸建てマンション」,「戸 建型マンション」,「戸建て感覚マンション」及び「戸建て風マンション」 等という語が使用されているのであるから,それらの語と実質的に同一の 標章であると認められる本願商標の「戸建マンション」をもって,その合 成語としての構成から直ちに造語と認めることはできない。 イ また,原告は,「戸建マンション」とは,自らが展開する「戸建マンシ ョンによるまちづくり」という事業との関連において,マンションでも一 戸建て住宅でもなく,一戸ごとにそれぞれが独立した住宅でありながら, 全ての住宅につき全体として管理を行うことにより新たな住み方を提供 する住宅であって,その概念を取引者や需要者に分かりやすく伝えるため に,原告が独自に考えたものであると主張する。 しかし,仮に,原告がその事業との関連において,「戸建マンション」 という合成語に,マンションでも一戸建て住宅でもない新たな住宅として の意味付けを与えたものであるとしても,それはあくまで原告の主観的な 意味付けにすぎず,そのような意味付けが取引者・需要者において周知と なっているような事情は窺えないし,前記の業界において使用されている 「戸建てマンション」,「戸建型マンション」,「戸建て感覚マンション」 及び「戸建て風マンション」という語の使用の実情に照らせば,取引者・ 需要者が「戸建マンション」という語に接したときには,むしろ,これを 「戸建て住宅の機能,特長を併せ持ったマンション」という意味合いで理 解するものと認めるのが相当であるから,原告の主張する上記事実をもっ て,本願商標「戸建マンション」が原告の独自の考案による独特の意味合 いを持った造語であると認めることはできない。 そして,以上の点からすれば,原告が「戸建マンションによるまちづく り」を受賞対象として2008年度グッドデザイン賞を受賞したという事 実をもって,本願商標「戸建マンション」が原告の独自の考案による造語 であることを裏付けられているといえないことは明らかである。 ウ さらに,原告は,「戸建てマンション」,「戸建型マンション」,「戸 建て感覚マンション」及び「戸建て風マンション」の語はそれぞれ独自の 意味合いで使用されており,しかも本願商標とは異なる態様で使用されて いる事実に基づけば,本願商標をその指定役務について使用した場合に, その役務のある特定の質を認識させるということはできないと主張する。 しかし,前記認定のとおり,「戸建感覚のマンション」とは,住戸の独 立性を高めたり,専用の庭や門扉を設置したりするなど,戸建てに近い居 住性,建築形態を採るマンションを意味し,「戸建てマンション」,「戸 建型マンション」及び「戸建て風マンション」の語が,それと同様の意味 合いで,戸建住宅とマンションの特長とを併せ持ったマンションの一建築 形態を表す語として使用されていることは明らかである。そうすると, 「戸建てマンション」,「戸建型マンション」,「戸建て感覚マンション」 及び「戸建て風マンション」等という語は,本願の指定役務である建築に 関連する役務を提供する業界において,「戸建て住宅の機能,特長を併せ 持ったマンション」という意味合いで一般的に使用されているものと認め られるから,単に役務の質(内容)等を表示したものと認識されるにすぎ ないというべきである。 そうすると,本願商標「戸建マンション」は,これを建物に関連する役 務に使用しても,単に「戸建て住宅の機能,特長を併せ持ったマンション」 という役務の質(内容)等を表示したものと認識されるにすぎず,自他役 務の識別標識としての機能を果たさないものというべきであるから,原告 の上記主張は採用することができない。 3 結論 以上のとおりであるから,本願商標につき商標法3条1項3号及び同法4条 1項16号に該当するとした審決に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれ も理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所 第1部 裁判長裁判官 中 野 哲 弘 裁判官 東 海 林 保 裁判官 矢 口 俊 哉 |