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事件 |
平成
23年
(行ケ)
10404号
審決取消請求事件
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裁判所のデータが存在しません。 | |
裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2012/07/26 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
判例全文 | |
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判例全文
平成24年7月26日判決言渡 平成23年(行ケ)第10404号 審決取消請求事件 口頭弁論終結日 平成24年5月15日 判 決 原 告 スリーエム カンパニー 訴訟代理人弁護士 岡 田 次 弘 訴訟代理人弁理士 中 山 健 一 同 廣 瀬 な つ 子 被 告 サンエムズ株式会社 訴訟代理人弁理士 小 林 良 平 同 中 村 泰 弘 同 市 岡 牧 子 同 谷 口 聡 主 文 1 特許庁が無効2011−890002号事件について平成23年7 月28日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 主文同旨 第2 争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯 被告は,別紙登録商標目録記載の登録商標(以下「本件商標」という。)につき, 平成19年11月16日に登録出願(以下「本件出願」という。)をし,平成20 年5月15日に第40類「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。), 裁縫,ししゅう,木材の加工,竹・木皮・とう・つる・その他の植物性基礎材料の 1 加工(食物原材料の加工を除く。),食料品の加工,廃棄物の再生,印刷」を指定 役務(以下「本件指定役務」という。)として登録査定を受け,同年6月20日に 設定登録(登録第5142201号。以下「本件商標登録」という。)を受けてい る商標権者である(甲1,乙1の1)。 原告は,平成23年1月4日,本件商標登録の無効審判(無効2011−890 002号事件)を請求し,特許庁は,同年7月28日,「本件審判の請求は,成り 立たない。」との審決をし,その謄本は,同年8月5日,原告に送達された(乙1 の2)。 2 審決の理由 審決の理由は別紙審決書写しに記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりで ある。 (1) 商標法4条1項15号について 本件商標は「スリーエムエス」又は「サンエムエス」の称呼を生じ,何ら特定の 意味合いを看取し得ない造語である。別紙引用商標目録記載の商標(以下「引用商 標1」という。)及び「スリーエム」の文字から成る商標(以下「引用商標2」と いい,引用商標1と併せて「引用商標」という。)は,いずれも「スリーエム」の 称呼を生じる。本件商標と引用商標とは,外観,称呼において区別し得る差異があ り,観念上は比較できず,非類似である。原告提出に係る証拠をもって,引用商標 が本件指定役務の分野においても周知著名になっているとは認め難い。したがって, 本件商標を本件指定役務について使用した場合,当該役務が原告又は原告と経済的, 組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,その出所に ついて混同を生ずるおそれはなく,本件商標は商標法4条1項15号には該当しな い。 (2) 商標法4条1項19号について 本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても類似しない別 異の商標であり,本件商標を本件指定役務に使用しても,これに接する取引者・需 2 要者が引用商標を連想,想起することはない。他に,本件商標が不正の目的をもっ て使用するものであることを認めるに足る具体的な証拠はない。したがって,本件 商標は商標法4条1項19号には該当しない。 取消事由に関する当事者の主張 第3 1 原告の主張 本件商標は,商標法4条1項15号,19号に該当し,本件商標登録は無効にす べきであるから,審決は,違法であるとして取り消されるべきである。 (1) 商標法4条1項15号該当性について ア 引用商標の周知著名性 (ア) 原告は,1902年(明治35年)にアメリカ合衆国で設立され,192 9年(昭和4年)以来アメリカ合衆国外でビジネスを展開し,現在では60か国以 上に139の工場を有するとともに系列会社を有し,189か国以上に販売拠点を 有し,200か国以上で活動している。これらの系列会社では,「3M」の名称を 冠し,引用商標1を使用して製品を販売している。 原告は,5万種類以上の商品を取り扱っており,その分野は,電気電子・電力・ 通信関連,建築・サイン・ディスプレイ関連,ヘルスケア関連,セーフティ・セキ ュリティ関連,自動車・交通関連,産業関連,オフィス関連,生活関連にわたって いる。 このように,原告は,国際的に周知著名な企業である。 (イ) 引用商標1は,原告の商号を 構 成する ハウ ス マ ー ク であり,1906年 (明治39年)以来使用されている。引用商標1は,世界約200か国で販売され ている原告の商品のほとんどに使用されており,その商品群は,上記のとおり5万 種類以上となる。原告は,150か国で引用商標1につき2000以上の商標登録 を有しており,日本においても多数の商標登録を有している。さらに,原告は,世 界中で,引用商標1を使用した商品について,新聞,雑誌,ラジオ,テレビ,ダイ レクトメール及びトレードショー等の媒体やウェブサイトにおいて,多額の費用を 3 かけて広告宣伝活動を行っている。 以上のように,引用商標1は国際的に周知著名な商標である。 (ウ) 日本では,平成17年から本件出願がされた平成19年までの間は,引用 商標1が付されたアパレル関連製品で毎年約70億円,引用商標1が付されたコン シュマー関連製品で毎年約130億円の売上げを計上しており,平成19年以降も, 同アパレル関連製品で毎年約50億円から55億円,同コンシュマー関連製品で毎 年約130億円の売上げを計上している。 また,平成16年から本件出願がされた平成19年までの間,日本における広告 宣伝費として,アパレル関連製品で毎年約800万円から1400万円,コンシュ マー関連製品で毎年約7億円から7億7000万円計上しており,平成19年以降 も,アパレル関連製品で毎年約400万円から800万円,コンシュマー関連製品 で毎年約6億7000万円から9億円計上している。これらの宣伝広告には,引用 商標1が使用されている。 このように,日本においても,原告は周知著名な企業であり,引用商標1は周知 著名な商標である。 イ 本件商標と引用商標の類似性 本件商標からは「スリーエムス」の称呼が生じ,引用商標からはいずれも「スリ ーエム」の称呼が生じる。本件商標と引用商標の称呼の差異は,語尾の「ス」の有 無のみである。語尾の「ス」は,それ自体響きの弱い音であり,かつ,比較的聴取 され難い語尾に位置することから,本件商標と引用商標は,全体としての語調,語 感が近似し,これらを互いに聞き誤るおそれがある。 さらに,本件商標と引用商標のいずれからも「3つの欧文字M」の同一の観念が 生じる。 したがって,本件商標は,引用商標のいずれとも,称呼及び観念において類似す る。 ウ 原告の業務の多様性・広汎性 4 原告は,広汎な分野で多岐にわたる商品を製造販売していることで有名な企業で ある。原告は,多種多様な分野に進出して,革新的な商品・役務を提供している。 エ 本件指定役務と引用商標に係る商品との関連性 本件指定役務は「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。)」等であ る。 原告は,「Thinsulate(シンサレート)」や「Gene−therm o NEO(ジェネサーモネオ)」との名称を付した高機能中綿素材を販売してお り,これらは被服の素材として使用され,これらの中綿素材を使用した被服には, 引用商標を使用した下げ札(タグ)又は織りネームが付される。 また,原告は,「Scotchlite(スコッチライト)」との名称を付した 反射布を製造販売しており,この反射布は被服に使用され,これを使用した被服に も,引用商標を使用したタグ又は織りネームが付される。 さらに,原告は,「Scotchgard(スコッチガード)」との名称を付し た布地・被服・革製品の撥水・防汚剤を製造販売しており,これを使用して撥水加 工したバッグ類,時計ベルト等には引用商標を使用したタグ又はシールが付される。 このように,原告は,布地や布地・被服の加工に使用する種々の製品を製造販売 している。布の開発から加工まで一貫して行う会社は多く存在し,これらの原告製 品と本件指定役務は,同一の者によって提供されることもある商品・役務であり, 取引者・需要者が共通することも多く,密接な関連性を有する。また,上記のとお り,引用商標は,原告の上記製品が使用された被服等のタグ等にも表示されており, 引用商標は上記製品の加工処理に関連して,取引者・需要者に認識されている。 オ 以上のような,引用商標の周知著名性,本願商標との類似性,原告の業務の 多様性・広汎性,原告の製品の一部と本件指定役務との密接な関連性等を斟酌する と,本件商標を本件指定役務に使用すると,取引者・需要者において,同役務が原 告又は原告と何らかの関係を有する者の提供する役務であると混同するおそれがあ り,本件商標は商標法4条1項15号に該当する。 5 (2) 商標法4条1項19号該当性について 引用商標は著名であるから,本件商標に接した取引者・需要者は引用商標を想起 する。被告は,著名な商標である引用商標1と社会通念上同一な「3m」を,注 意を引きやすい商標の語頭部に使っており,著名である引用商標1の顧客吸引力に ただ乗り(フリーライド)するという不正な目的で,本件商標を使用している。 したがって,本件商標は商標法4条1項19号に該当する。 2 被告の反論 (1) 商標法4条1項15号該当性に対して ア 本件商標からは「サンエムエス」又は「スリーエムエス」の称呼が生じる。 最後 の文字「 s 」が 複数を 示 す「 s 」であると 解する 余 地はなく,本件商標から 「スリーエムス」の称呼は生じない。引用商標からはいずれも「スリーエム」の称 呼が生じる。本件商標と引用商標とは,称呼において相違する。 本件商標からも引用商標からも,「3つの欧文字M」という観念は生じない。本 件商標は既成の観念を有する成語を表したものではないから,引用商標とは観念上 比較することはできない。 本件商標と引用商標は,外観において相違する。 よって,本件商標と引用商標は,いかなる点においても類似しない。 イ 引用商標が特定の商品分野において周知著名であることは認める。しかし, 原告は本件指定役務に関する業務を行っていない。 原告が,布地自体を製造販売するとともに,布地・被服の加工に使用する種々の 製品を製造販売していることは認める。しかし,原告が製造販売する布地等と本件 指定役務における「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。)」の役務 が,取引者・需要者の共通性から,密接な関連性を有すると認めるに足りる証拠は ない。加工処理には様々な工程が含まれており,それら加工処理の中の一工程であ る製品を用いたとしても,それは加工処理全体とは何ら関係がない。 引用商標が表示されたタグ等が加工品に付されているとしても,これらのタグ等 6 は使用素材又は加工に用いられた薬剤を示すものと看取され,加工業者を示すもの とは認識されない。したがって,被告が本件商標を本件指定役務に使用しても,取 引者・需要者において,同役務が原告又は原告と何らかの関連を有する者の提供す る役務であると混同するおそれはない。 (2) 商標法4条1項19号該当性に対して 前記のとおり,本件商標は引用商標と類似しておらず,被告が類似していない引 用商標の顧客吸引力にただ乗りすることはできない。したがって,本件商標は商標 法4条1項19号には該当しない。 当裁判所の判断 第4 当裁判所は,本件商標は商標法4条1項15号に該当するものであり,これと異 なる判断をした審決は取り消されるべきであると判断する。その理由は,以下のと おりである。 1 本件商標と引用商標の対比 (1) 本件商標 本件商標は,別紙登録商標目録記載のとおりであり,「3ms」の数字及び欧 文字を右方向に傾斜させて横書きしたものである。いずれも太めの文字で,文字の 大きさも同一であり,「m」と「s」は,離隔することなく,繋げて表記されてい る。 本件商標からは,「スリーエムズ」,「スリーエムエス」,「サンエムズ」又は 「サンエムエス」の称呼が生じ,特定の観念は生じない。 (2) 引用商標1 引用商標1は,別紙引用商標目録記載のとおりであり,「3M」を太いゴシック 体により横書きして表記された商標である。「3」と「M」とは,2箇所で接する よう表記されている。 引用商標1は,上記のとおりの外観を呈し,専ら「スリーエム」の称呼を生じ, 格別の観念は生じない(なお,付言すると,「3M」から「3番目の 自然数3と1 7 3番目のアルファベットであるMとの順列ないし組合せ」との観念を生じるとの解 釈があり得ないではないが,数字やアルファベットは,情報等を伝えるための記号 (手段)にすぎず,それだけでは特定の意味を有するものではないから,特定の数字, 文字のみを指すことをもって,「観念」が生じたと解することは相当でない。)。 (3) 類否についての判断 ア 称呼,外観及び観念について 本件商標からは,「スリーエムズ」,「スリーエムエス」,「サンエムズ」又は 「サンエムエス」の各称呼が生じ,引用商標1からは,「スリーエム」の称呼が生 じる。本件商標から生じ得る「スリーエムズ」の称呼は,引用商標1の「スリーエ ム」の称呼の末尾に「ズ」の1音が加わっているだけであり,本件商標の「スリー エムズ」の称呼と引用商標1の「スリーエム」の称呼とは類似するから,両商標は, 称呼において類似するといえる。また,本件商標と引用商標1は,いずれも,その 構成する各文字が,ほぼ同じ大きさ,高さ,太さで表記されていること,「3」及 び「M ないしm」が 共通するこ とに照 らすと,外観において類似するとい える。 本件商標も引用商標1も,特定の観念を生じることはないから,対比することはで きない。 イ 小括 以上を総合すると,本件商標と引用商標1とは,類似する商標であるといえる。 2 出所混同のおそれについて そこで,本件商標は,他人(原告)の業務に係る商品又は役務と出所混同のおそれ があるかについて,判断する。 (1) 引用商標1の周知著名性,本件指定役務に関する分野における使用状況等 ア 原告は,1902年(明治35年)に設立されたアメリカ合衆国の法人であ る。 現在 の社名は 英 語で表 記すると「3M C om p an y 」であり,日本では 「スリーエム」又は「スリーエム社」と称されている(甲3の1及び3の2,32 0の1ないし320の19,弁論の全趣旨)。なお,「3M」は,原告の旧会社名 8 である「Minnesota Mining & Manufacturing Co.」に由来する(甲320の14)。 原告は,昭和35年に,日本法人として日本ミネソタスリーエム株式会社を,昭 和36年に,住友電気工業株式会社及び日本電気株式会社との共同出資により,住 友ミネソタ株式会社を設立した。住友ミネソタ株式会社は,昭和37年に,日本ミ ネソタスリーエム株式会社を吸収合併して,住友スリーエム株式会社(以下「住友 スリーエム」という。)に商号を変更した。また,原告は,昭和51年に,住友ス リーエムとの共同出資により,スリーエム薬品株式会社を設立し,同社は,平成6 年に,スリーエムヘルスケア株式会社(以下「スリーエムヘルスケア」という。) に商号変更した。(甲398) 本件出願がされた平成19年11月16日以前から現在に至るまで,原告や住友 スリーエムに関する記事が新聞や雑誌に度々掲載されている。新聞や雑誌では,原 告は「3M」又は「米3M」と表記されることが多く,住友スリーエムも「住友3 M」と表記されることがある。(甲320の1ないし320の19) 平成19年7月4日付けのニューズウイーク日本版によると,「2007年版世 界企業ランキング500」で,原告は10位であり,同年6月25日付け日経産業 新聞 によ ると,日経リサー チ が実 施 した平成19年の「 企業ブラ ンド 知 覚 指 数調 査」の結果,住友スリーエムは35位であった(甲320の5)。 イ 原告及び住友スリーエムは,昭和36年以降,日本国内において,引用商標 を含む「3M」又は「スリーエム」の文字からなる商標及びこれらの文字を組み合 わせた商標につき,多数の指定商品及び指定役務に関して商標登録出願を行い,8 0以上の商標登録を受けている(甲2,4)。 ウ 住友スリーエムは,日本国内において,本件出願前から現在まで,「Pos t − it ( ポ ス ト ・ イット )」の名称を付 した 付せ んや 「 Scotch (ス コッ チ)」の名称を付したテープ,のり,修正用品等を中心とする文具製品及びオフィ ス製品を数多く販売している。これらのほとんどの製品には引用商標1が付されて おり,これらの製品のカタログや販売促進用品にも引用商標1が付されている(甲 9 6ないし18,22ないし35,38,39,49,50ないし59,66ないし 115,126ないし135,137,138,140ないし143,148ない し153,155ないし157,163ないし166,171,172,175な いし181,187ないし189,191,194ないし197,200ないし2 02,220,225,228,229の1及び229の2,230,231,2 34,235,237,239ないし245,247,253ないし255,26 0ないし262,268,270ないし281,283,285,286,291 ないし295,297ないし299,303,306ないし319,323ないし 325,351ないし353,355ないし357,361,362,364)。 また,住友スリーエムは,日本国内において,本件出願前から現在に至るまで, 文具製品以外にも,スポンジたわし(甲20,21,296,302),窓用透明 フィルム(甲63,193,252,258,284,290),車両用・建築用 テープ,すき間ふさぎ防水テープ,マスキングテープ,補修テープ,すべり止めテ ープ,その他各種用途用テープやはがせる両面粘着テープを使ったフック(甲60, 61,64,65,117,119ないし121,124,125,136,13 9,145,154,158ないし161,167,170,173,174,1 82ないし186,192,193,199,221ないし224,232,23 3,236,248,258,259,263ないし267,273,284ない し286,288,290,291,296,297,326ないし331,33 3ないし344,349,352,355),各種接着剤(甲116,122,1 23,139,146,162,168,169,190,193,249ないし 251,258,273,282,284,285,287,291,297,3 32,345,346,350),クッションゴム(甲139,144,193, 258,284,286),研磨材(甲139,198,238,258,268, 284),空気清浄フィルター(甲118,139,147,258,284), フィルターマスク(甲139,193,258,284,286),プロジェクタ 10 ー及びその関連製品(甲356),その他(甲62,284,286,296,3 52),多分野にわたる多種類の製品を販売しており,ほとんどの製品に引用商標 1が付されている。 遅くとも平成11年以降には,住友スリーエムが,朝日新聞,讀賣新聞等の新聞, 東京ウォーカー,週刊アスキー,日経トレンディー等の雑誌等に,引用商標1を使 用して,文具製品・オフィス製品を始めとする上記各製品に関する広告記事を掲載 したり,新聞,雑誌等に,上記各製品に関する紹介記事等が掲載されたりした(甲 6ないし10,12ないし18,22ないし35,38,39,49,50,30 2,303,306ないし318,320の1ないし320の19)。また,住友 スリーエムは,引用商標1を使用して,テレビを媒体とした宣伝や電車内での宣伝 も行った(甲51ないし54,58)。 さらに,住友スリーエムやスリーエムヘルスケアは,平成15年以降,「S エ cotchlite(スコッチライト)」という名称の,鞄,ヘルメット,フェン スのほか衣服にも使用可能な反射シート・反射テープ,衣服用の反射トランスファ ーフィルム・反射布(甲19,37,42,43,45,48,139,193, 226,227,246,257,258,269,284,289,300,3 01,347,348,388ないし390,405ないし407),「SCOT CHGARD(スコッチガード)」という名称の衣類・布製品,革用の防水スプレ ー(甲139,256,258,284,296,392)を,平成17年以降, 「Gene−thermo(ジュネサーモ)」「プレスサーモ」「Thinsul ate(シンサレート)」「Litebubble(ライトバブル)」という名称 の中綿素材(甲36,40,41,44,46,203ないし219,304,3 05,367の1ないし367の3,369ないし377),芯地素材(甲47, 321)を販売しており,その宣伝広告にも引用商標1が使用されている。 ジェネサーモ,シンサレート,ライトバブルが使用された衣服に付されているタ グには「Gene−thermo」「Thinsulate」「Litebubb 11 le」の名称のほか引用商標1が表示されており,また,織りネームにも引用商標 1が表示されているものがある(甲368,382,383,391)。これらの 引用商標1が表示された和文のタグ(甲368から引用商標1が表示されているこ とが確認可能なFIB−021−A,FIB−022−A,FIB−023−Aほ か)は本件出願がなされた前年である平成18年に合計153万枚以上,本件出願 がなされた年である平成19年に合計122万枚以上,引用商標1が表示された織 りネーム(甲368から引用商標1が表示されていることが確認可能なFIB−T H−TCL−21,FIB−TH−URW)は平成18年に合計18万枚以上,平 成19年に合計21万枚以上出荷されている(甲384,385)。 また,スコッチガードが使用された時計用ベルト,鞄,靴等の革製品には「SC OTCHGARD」の名称のほか引用商標1が表示されたタグが付されている(甲 393ないし397,408ないし412)。 オ 以上によると,本件出願前から,原告及び住友スリーエムの名称の一部であ る「スリーエム」は,世界的にも日本国内においても著名であるといえる。また, 引用商標1は,原告の会社名の一部でもある「3M」の数字及び欧文字からなる商 標であり,原告や関連会社のハウスマークとして使用されている。 原告は,昭和35年に日本法人を設立後現在に至るまで,関連会社を通じて日本 国内で原告の製品を販売しており,関連会社が日本国内において販売している製品 は,文具製品・オフィス製品に限られず,多分野,多品種に及んでおり,その中に は,衣服に使用される反射材製品,中綿素材,芯地素材や衣類・布製品,革用の防 水スプレーも含まれている。そして,これらの製品のほとんどには引用商標1が付 され,その販売や広告宣伝等に当たっても引用商標1が使用されている。 したがって,引用商標1は,本件出願がなされた平成19年11月16日時点に おいても,その後現在に至る間においても,文具製品・オフィス製品を始めとする 多くの分野において,原告や関連会社の業務に係る商品を表示する商標として著名 であると認められる。 12 (2) 小括 上記のとおり,@本件商標と引用商標1とは,外観及び称呼において類似し,類 似の商標であること,A本件出願前から,原告や住友スリーエムの商号中の「スリ ーエム」部分は,日本国内において著名であること,B原告の関連会社は,日本国 内において,引用商標1を使用して,文具製品・オフィス製品を始め,多分野,多 種類に及ぶ製品を販売し,原告の関連会社が販売する製品の中には,被服に使用さ れる中綿素材や反射材製品,衣類・布製品及び革に使用される防水スプレーも含ま れていること,C衣服等の布製品においては,素材の開発から加工技術の開発まで 同一の企業や関連会社が行う場合があり(甲401ないし404),上記中綿素材, 反射材製品及び防水スプレーは,本件指定役務に含まれる「布地・被服又は毛皮の 加工処理(乾燥処理を含む。)」と密接に関連するといえること,が認められる。 上記の事実を総合すると,本件商標を本件指定役務に使用すると,取引者・需要者 において,当該役務が原告又は原告と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の 業務に係る役務であると混同するおそれがあると認められ,本件商標は商標法4条 1項15号に該当する。 (3) 被告の主張に対して 被告は,原告は本件指定役務に関する業務は行っておらず,本件商標を本件指定 役務に使用しても,混同が生じるおそれはない,布地・被服等の加工品に引用商標 が表示されたタグ等が付されていても,これらのタグ等は加工業者を示すものとは 認識されないと主張する。 しかし,以下のとおり,被告の主張は失当である。 原告や引用商標1が著名であることに加え,原告の関連会社が販売する商品は, 多分野,多種類に及んでいること,引用商標1は原告や関連会社のハウスマークと して使用されていることからすると,たとえ,原告や関連会社が本件指定役務に含 まれる業務を実施していないとしても,取引者・需要者において,原告又は原告と 組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると混同するおそ 13 れがあるというべきである。 また,衣服等においては,素材の開発から加工技術の開発まで同一の企業や関連 会社が行う場合もあることからすると,布地・被服等の加工品に引用商標1が表示 されたタグ等が付されていれば,取引者・需要者が原告又は原告と何らかの関係を 有する者がこれらの加工を行ったと認識する可能性はある。 3 結論 以上のとおり,本件商標は商標法4条1項15号に該当し,これに基づく原告主 張の取消事由は理由があり,審決には,結論に影響を及ぼす誤りがある。 よって,その余の点を判断するまでもなく,審決は,違法であるとして取り消す べきであるから,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官 飯 敏 明 村 裁判官 八 貴 美 木 子 裁判官 真 治 小 田 14 別紙 登録 商 標 目録 15 別紙 引用 商 標 目録 (引用商標1) 16 |