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審判番号(事件番号) データベース 権利
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事件 平成 24年 (行ケ) 10066号 審決取消請求事件
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裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2012/11/15
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成24年11月15日 判決言渡
平成24年(行ケ)第10066号 審決取消請求事件

平成24年8月28日 口頭弁論終結

判 決



原 告 株 式会 社 オ ーク



訴訟代理人弁護士 佐 藤 歳 二

同 菱 田 健 次

同 菱 田 基和 代

同 松 村 信 夫

同 塩 田 千恵 子

同 坂 本 優
同 藤 原 正 樹

同 永 田 貴 久



被 告 財団法人日本漢字能力検定協会



訴訟代理人弁護士 中 務 尚 子
同 山 田 威一 郎

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求
特許庁が無効2010−890024号事件について平成24年1月19日にし

1
た審決を取り消す。
第2 当事者間において争いのない事実

1 特許庁における手続の経緯

原告は,別紙商標目録記載のとおり,
「漢検」「漢字検定」の文字を上下二段に横


書きに表してなる商標(以下「本件商標」という。
)の商標権者である。被告は,平

成22年3月31日,特許庁に対し,本件商標登録の無効審判(無効2010−8

90024号事件)を請求した。特許庁は,平成24年1月19日,
「登録第421

9721号の登録を無効とする。 との審決をし,
」 その謄本は同月26日に原告に送

達された。

2 審決の理由

審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件商標は,商標法

4条1項7号に違反して設定登録されたものとは認められないが,原告から審判請

求時の商標権者であるA,B及びC(以下,3名を併せて「Aら」ということがあ
る。
)に対し,移転登録がされた平成21年11月16日,同条項に該当するものと

なったものであり,同法46条1項5号により無効とすべきものである,というも

のである。

第3 当事者の主張

1 審決の取消事由に関する原告の主張

本件商標には,以下のとおり,
後発的無効事由としての公序良俗違反は存在せず,
審決は取り消されるべきである。

(1) 商標法4条1項7号は,
社会公共の利益又は一般的道徳観念を害するおそれ

のある商標の登録を阻止することを目的としているところ,商標の構成自体に公序

良俗違反のない商標が同条項に該当するのは,その登録出願の経緯に著しく社会的

妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するもの

として到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。また,商標
46条1項5号は,商標登録後といえども,当該商標が同法4条1項7号に掲げ

2
る事由に該当する場合には,当該商標を無効とすることができると規定していると
ころ,商標法4条1項6号,19号が後発的無効事由とされていないことに照らす

と,後発的無効事由としての公序良俗違反は,商標の構成自体に公序良俗違反があ

る場合に限られるか, なくとも査定時の判断基準より限定して解釈すべきであり,


同法4条1項19号の「不正の目的」 不正の利益を得る目的,他人に損害を加える


目的,その他の不正の目的)より高い悪性が商標権者に存し,登録を維持すること

が著しく社会的妥当性を欠き,商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認

し得ないような場合,又は,新たな法令や条約に基づく規制等ないしこれと同視で

きる社会状況の変化により,公益に反することとなった場合に限られるというべき

である。

なお,商標法46条1項5号については,過去の一時期において当該無効事由に

該当する事実が存在したとしても,審判手続における審理終結通知までに当該無効

事由が消滅した場合には,
当該商標を無効とすることはできないというべきである。
(2) 本件商標の後発的無効を基礎付ける事情の不存在

審決は,原告が,@被告の運営に関し,マスコミからの指摘や文部科学省からの

行政指導などを受け,公的資格を利用する受検者やその受け入れ先となる学校や企

業などに対し,社会的混乱を生じさせたこと,A本件商標を被告と無関係の第三者

に譲渡し,被告の漢字能力検定に係る円滑な事業の遂行に支障を来すおそれを誘発

させたこと,B将来的に本件商標を使用する意思があるとして,被告への譲渡を考
えていないことなどは,社会通念に照らして著しく妥当性を欠き,公益を害すると

認定,判断する。しかし,審決には,以下のとおり,事実誤認ないし評価の誤りが

ある。

ア 信用の失墜及びこれに伴う社会的混乱

漢字能力検定事業に関して被告に多額の利益が生じていること,これに関して被

告に対して文部科学省から改善指導があったこと,漢字能力検定に関する商標を原
告が有することなどの報道はあったが,原告が漢字能力検定に関する商標を有する

3
ことを非難するような報道はなされていない。また,原告とD及びEとは別人格で
あり,同人らが起訴されたことにより被告に悪印象が生じたとしても,原告はその

責めを負わない。

したがって,被告の運営に関し,マスコミからの指摘や文部科学省からの行政指

導などを受けたことは,後発的無効事由としての公序良俗違反の理由とはならない。

イ 本件商標の第三者への譲渡

原告は,被告による仮差押え,賃料や売掛金の不払い,損害賠償請求訴訟の提起

により,資金繰りに窮して,Aらから合計1000万円を借り入れ,その債務を担

保するため,本件商標等を再売買の予約付きで譲渡したものであるが,上記譲渡は

報道がされていない上,原告とAらとの間では,弁済の有無にかかわらず,本件商

標等を買戻し(再売買)することができるとの特約がされていた。

したがって,原告が本件商標等をAらへ譲渡したことは,後発的無効事由として

公序良俗違反の理由とはならない。
仮に,上記譲渡が後発的無効事由に当たるとしても,本件商標は,平成22年7

月26日,Aらから原告に対し再度移転登録がされており,審理終結通知時には,

無効事由が消滅していたといえる。

ウ 被告に対する商標権譲渡の意思

被告は,原告に対し,本件商標を含む45件の商標について,権利の取得・維持

に要した実費相当額として,1346万3799円で譲渡を申し入れた。しかし,
被告から原告に対し,本件商標等の譲渡の申入れがされた当時,原告の当時の代表

取締役D及び当時の取締役Eは,逮捕勾留中であった。また,被告は,原告やDら

の財産に対して仮差押えをし,原告に賃料及び書籍の売掛金を支払わず,原告らに

対して合計27億円の損害賠償請求訴訟を提起した。このような状況において,原

告は,上記譲渡金額の算定根拠が不明確であることから,本件商標等の被告への譲

渡を拒絶したものである。
さらに,原告は,本件訴訟を含む原被告間で係属する紛争全体の解決の中で,被

4
告に対し,本件商標を含む漢字検定事業に関連する商標権を譲渡することも検討す
る意思があり,被告に対する本件商標の譲渡を一切拒絶するものではない。

なお,原告が本件商標の登録を有していることによって,被告が行っている漢字

検定事業に影響を与えたり,当該事業の同一性等に多少の誤認混同が生ずるおそれ

があるとしても,参加者から対価を得て行っている検定事業や出版教育事業は,私

的な経済活動にすぎず,商標法4条1項7号所定の公序良俗違反には当たらない。

(3) 以上のとおり,審決には,後発的無効事由としての公序良俗違反の認定,判

断に誤りがあり,商標法46条1項5号の適用を誤った違法がある。

2 被告の反論

本件商標には,
以下のとおり,
後発的無効事由としての公序良俗違反が存在する。

(1) 商標登録後に周知著名となった商標について,
その登録後の事情いかんによ

り,特定の者に独占させることが好ましくなくなった商標は,社会通念に照らして

著しく妥当性を欠き,国家・社会の利益,すなわち公益を害すると評価し得る場合
に限り,商標法4条1項7号に該当する後発的無効事由が存在するというべきであ

る。

また,商標法4条1項6号は,悪意なく商標の使用を開始した商標権者を保護す

るため,同項19号は,商標登録時の不正目的を対象にした規定であることから,

それぞれ後発的無効事由とされなかったにすぎず,又,登録主義と後発的無効事由

の適用範囲の問題は無関係であるから,後発的無効事由としての公序良俗違反は,
商標の構成自体に公序良俗違反がある場合に限られるか,少なくとも査定時の判断

基準より限定して解釈すべきであるとの原告の主張には理由がない。

本件商標は,以下のとおり,その登録を維持することが,社会通念に照らして著

しく妥当性を欠き,公益を害すると評価し得るから,これを無効とすべきとした審

決の認定,判断に誤りはない。

(2) 本件商標の後発的無効を基礎付ける事情
ア 信用の失墜及びこれに伴う社会的混乱について

5
被告は,税制上の優遇措置を受ける公益法人であり,文部科学省が漢字能力検定
に認定試験として公的な資格を与えたことにより,受検者数が飛躍的に伸びたので

あり,被告の行っている検定事業や出版教育事業は,公益性を有する。また,本件

商標等は,被告の設立後の活動によって,取引者・需要者に広く知られるようにな

ったといえる。

ところが,本件商標を被告が保有していないことが,文部科学省からの行政指導

やマスコミなどの批判報道により,全国に知れ渡った。本件商標の帰属の問題は,

D及びEによる公益法人である被告の私物化の象徴的存在であり,両名による不透

明な利益の還流の問題と相俟って,社会的な批判を浴びることとなった。これに伴

って,公的資格である漢字検定を利用する受検者やその受け入れ先となる学校ない

し企業などにおいて,社会的混乱が生じている上,文部科学省は,被告の検定事業

に対する社会的な信用を損なう事態が生じているとして,
「日本漢字能力検定」に対

する後援を取り消した。なお,本件商標が原告名義で登録されたのは,原告が,被
告と関連会社とを峻別していなかったことによるものであり,被告が適切な手段を

怠っていたからではない。

以上のとおり,本件商標に関して,被告の信用の失墜及びこれに伴う社会的混乱

が生じている。

イ 本件商標の第三者への譲渡

原告は,本件商標等について,仮差押え等を免れる目的で,第三者であるAらに
譲渡した。原告の上記行為は,本件商標を保有することを奇貨として,被告による

円滑な業務遂行を妨げる意図,あるいは,自らの責任を免れようとする権利濫用

な意図によるものである。

なお,審決は,上記のとおり,原告が被告からの商標権の譲渡申入れに応じず,

これをAらに譲渡した一連の行為等をもって,本件商標が公序良俗違反に当たると

判断したものであり,原告が被告からの強い要請によって本件商標をAらから取り
戻したとしても,上記判断が覆るものではない。

6
ウ 被告に対する商標権譲渡の意思について
被告は,文部科学省から厳正な行政指導を受けたことから,原告に対し,本件商

標を含む45件の商標について,原告が要した実費相当額での譲渡を申し入れ,そ

の算定根拠を表にして送付したが,原告はこれを拒絶した。のみならず,本件審判

の口頭審尋期日において,当時原告の取締役であったEは,本件商標を今後原告自

ら使用することも計画しており,被告に譲渡する意思はない旨述べていた。このこ

とからすれば,原告が,被告の業務にとって極めて重要な本件商標について,被告

と競合するか,あるいは被告の業務遂行を妨げるように濫用的に行使する意図を有

していることは明らかである。

また,D及びEは,利益相反取引がマスコミに取り上げられ,文部科学省から厳

しい追及を受けている最中にも,被告名義の他の商標権を原告に移転することを画

策していたのであり,このことからも,原告が本件商標を被告に譲渡する意思はな

く,濫用的に行使する意図を有していることは明らかである。
(3) 以上のとおり,
本件商標の登録を維持することが公序良俗を害するとした審

決の認定,判断には誤りがない。

当裁判所の判断
第4

「公の秩序又は 善良の風俗を害するおそれがある商
1 商標法4条1項7号は,

標」について,不登録事由としているところ,
「公の秩序又は善良の風俗を害するお

それがある商標」とは,当該商標の構成に,非道徳的,卑わい差別的,矯激若し
くは他人に不快な印象を与えるような文字,図形等を含む場合のほか,そうでない

場合であっても,当該商標を指定商品又は指定役務について使用することが,法律

によって禁止されていたり,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳的観念に反

していたり,特定の国若しくはその国民を侮辱したり,国際信義に反することにな

るなど特段の事情が存在するときには,当該商標は同法4条1項7号に該当すると

解すべき余地がある。そして,商標法46条1項5号は,商標登録がされた後,当
該登録商標が同法4条1項7号に掲げる商標に該当するものとなったことを登録無

7
効事由として規定しているところ,商標登録後であっても,当該商標を指定商品
指定役務について使用することが,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳的

観念に反するなどの特段の事情が生じた場合には,当該商標は同法4条1項7号

該当すると解すべき余地があるといえる。

上記観点から,以下,本件商標が,登録後に商標法4条1項7号に該当するもの

となったか否かについて検討する。

2 事実認定

当事者間において争いのない事実,証拠(主要なものは各項末尾に掲記)及び弁

論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

原告等
(1)

ア 原告は,昭和46年1月20日に設立された,教材の開発,製作,出版及び

販売等を目的とする会社であり,設立から平成24年4月15日まではDが,その

後はEが代表取締役を務めている。
イ 株式会社オーク・フードは,昭和46年12月17日に設立された会社であ

り,設立から平成7年12月1日まではDが,その後はEが代表取締役を務めてい

る。株式会社オーク・フードは,平成7年12月1日,株式会社日本統計事務セン

ター(以下「日本統計事務センター」という。
)に商号変更した。

ウ 株式会社大久保商事は,Dの父が昭和20年代に設立した,新聞販売業,広

告代理業務等を目的とする会社であり,現在は,Dが代表取締役を務めている。株
式会社大久保商事は, 株式会社メディアボックス
平成10年1月14日, (以下 メ


ディアボックス」という。
)に商号変更した。

エ Dは,平成10年ころ,株式会社文章工学研究所(以下「文章工学研究所」

といい,原告,日本統計事務センター,メディアボックス及び文章工学研究所を併

せて「原告関連4社」ということがある。
)を買い取り,代表取締役に就任した。

(甲4〜7,81)
(2) 原告による漢字検定試験創設の経緯

8
原告は,設立後,不動産賃貸業を営むと共に,学習塾「オーク学習教室」を開設
していたところ,昭和47年ころ,漢字教室を開設し,漢字学習に特化した授業を

始めた。その後,原告は, ステップ式漢字学習法」と称する,学習難易度別に級を


設定するなどした学習法及び「級別ステップ式漢字学習シート」と称する教材を開

発した。原告は,上記教材を利用する漢字教室をフランチャイズ展開し,昭和49

年に「漢字教室チェーン」を全国に組織し,昭和60年代には,その教室数が約1

100箇所となった。

また,原告は,上記漢字教室で行っていた漢字テストについて,教室外部からも

受験希望があったため,これを教室外部でも実施することとし,昭和50年ころか

ら「日本漢字能力検定」と称して,漢字検定試験を始めた。原告は,昭和50年4

月ころ,漢字能力検定試験等を行う内部組織である「日本漢字能力検定協会」
(以下

)と,漢字教室の運営,教材開発・運営,図書出版等を行う内部
「旧協会」という。

組織である「日本漢字教育振興会」 )を設立した。
(以下「振興会」という。
(甲81,104)

(3) 被告設立の経緯等

ア 被告は,漢字に関する検定試験の実施,技能度の登録及びその証明書の発行

等を業とする,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律に基づく特例財団法人

である。被告は,平成4年5月14日,Dが設立代表者となって,文部大臣(当時)

に対する設立許可申請がされ,同年6月16日に,平成16年法律第147号によ
る改正前の民法34条に基づき,公益法人として設立された。

イ Dは,被告設立に当たり,1億円を寄付し,被告設立当初から理事長を務め

ていたが,後述のとおり,平成21年4月16日に理事長を辞任した。

ウ 被告は,
「日本漢字能力検定」について,文部省(現・文部科学省)から民間

技能審査事業認定制度に基づく認定を受け,平成4年11月以降,これを実施する

ようになった。なお,小学校1年ないし3年生を対象とした漢字能力検定について
は,平成18年ころまで, 児童漢検」と称して振興会が主催者とされていた。


9
「日本漢字能力検定」について,民間技能審査事業認定制度の廃止
また,被告は,
に伴い,平成17年8月以降,文部科学省から同省後援名義の使用及び文部科学大

臣賞の交付の許可を受けていたが,後述のとおり,平成21年4月20日に同許可

を取り消された。

エ 「日本漢字能力検定」の志願者の推移は,以下のとおりである。

昭和50年度 672人

昭和51年度 1238人

昭和52年度 2331人

昭和53年度 5044人

昭和54年度 1万1421人

昭和55年度 1万8654人

昭和56年度 2万5882人

昭和57年度 3万0880人
昭和58年度 3万8565人

昭和59年度 4万4182人

昭和60年度 4万9375人

昭和61年度 5万3341人

昭和62年度 5万7693人

昭和63年度 6万2834人
平成元年度 6万9799人

平成2年度 8万7211人

平成3年度 9万3021人

平成4年度 12万1924人(このうち被告設立後の志願者は約8万人)

平成5年度 24万0036人

平成6年度 42万5974人
平成7年度 59万2512人

10
平成8年度 85万4607人
平成9年度 105万5710人

平成10年度 117万8228人

平成11年度 130万0052人

平成12年度 157万6959人

平成13年度 179万7608人

平成14年度 204万4170人

平成15年度 219万5208人

平成20年度 約289万人

平成22年度 約232万人

平成23年度 約229万人

(甲3,38,43,44,48〜50,81,90,102,104, 3 3,
乙【

4,27〜29頁】 乙5〜9)

(4) 原告による商標出願

Dは,被告設立から平成12年ころまでの間,本件商標のほか,
「日本漢字能力検

日本漢字検定協会」等の,被告の名称ないし「日本漢字
定協会」「漢検」「漢検
, ,

能力検定」に係わる商標登録を,被告理事会の承認等を得ることなく原告名義で出

願し,原告が上記商標の商標権者となっていた。被告の名称ないし「日本漢字能力

検定」に係わる商標について,原告名義で出願することは,特許庁の査定審査にお
いて問題となったため,平成13年ころから,それ以降の商標の出願については被

告が出願人となり,商標登録されるようになった。なお,被告名義で平成13年2

月28日に出願された「 」
(商願2001−17603号)「
, 」
(商願20
01−17604号)「
, 」
(商願2001−17605号)については,平成1

4年5月1日出願人名義が原告に変更された後,登録されている。

(甲17,19,乙3【9〜11頁】

(5) 被告に対する行政指導等

11
ア 被告は,公益法人でありながら多額の利益が生じていることが問題となり,
文部科学省から数回にわたり,検定料の引下げを含めた公益事業における利益削減

の改善指導を受けていたところ,平成21年2月9日,文部科学省生涯学習政策局

による実地検査を受けた。文部科学省生涯学習政策局は,上記実地検査に基づき,

平成21年3月10日,被告に対し,多額の利益が生じていること,理事が役員で

ある企業との取引の必要性等が不明瞭であること,適切な使用がされていない土地

建物が存在することなどについて,管理運営・チェック体制の抜本的改善策を検討

し,文書で報告するよう行政指導を行った。

イ 文部科学省生涯学習政策局は,上記行政指導に基づき,平成21年4月15

日付けで,被告(当時の理事長D)から報告書の提出を受けたが,その内容が不十

分であるとして,同月24日,被告に対し,役員人事の刷新等を求めるとともに,

利益相反取引について,メディアボックス及び文章工学研究所に対する損害賠償請

求,原告及び日本統計事務センターとの取引解消等を検討するよう通知した。
ウ 平成21年4月16日,Dが被告の理事長を,Eが被告の理事をそれぞれ辞

任し,F弁護士が被告の理事長に就任した。

エ 文部科学省は,平成21年4月20日,
「日本漢字能力検定」について同省後

援名義の使用及び文部科学大臣賞の交付の許可を取り消した。

(甲3,9の1〜3,甲34,35,乙9)

(6) 新聞報道等
被告の運営については,平成21年1月22日ころから,公益法人には認められ

ていない多額の利益が生じている,DやEらの関連企業との間で利益相反取引や実

態のない取引が行われている,公益事業に不要な不動産を購入しているなどの新聞

報道等がされた。また,平成21年3月11日,被告が文部科学省から上記行政指

導を受けたことが新聞報道され,このような状況の下,漢字検定を活用している学

校や漢字検定取得者の間に,戸惑いや怒りが広がっているとの記事が掲載された。
「日本漢字能力検定」の通称「漢検」
さらに,平成21年5月から6月にかけて,

12
の主たる商標権を,被告の前理事長であるDが代表を務める原告が所有しているこ
とが判明したとの報道がされた。一連の報道においては,被告が原告に対して商標

権の一括譲渡を求めていく考えであること,商標権の譲渡交渉が難航すれば,これ

まで親しまれてきた「漢検」の語が使用できなくなる可能性があることなどが報道

された。

(甲8,10,乙3【12〜13頁】


(7) Dらの起訴及び同人らに対する損害賠償請求訴訟

京都地方検察庁は,被告に対する背任罪(「自らの利得を図り,協会に損害を与え

る目的をもって,任務に背き,財産上の損害を与えた」旨の公訴事実)で,D及び

Eを平成21年6月8日に起訴し,同月29日に追起訴した。

また,被告は,平成21年8月31日,D及びEが,被告理事会の承認を経ない

まま,原告関連4社との間で利益相反取引を行ったなどと主張して,D,E及び原

告関連4社に対して,約27億4333万円の損害賠償等請求訴訟を提起した(京
都地方裁判所平成21年(ワ)第3166号)


(甲11,12)

(8) 本件商標及び本件無効審判請求に至る経緯

ア 本件商標は,別紙商標目録記載のとおり,
「漢検」「漢字検定」の文字を上下


二段に横書きに表してなる商標であり,その指定役務は,第41類「技芸・スポー

ツ又は知識の教授」である。
原告は,平成9年1月23日に本件商標の登録出願をし,平成10年12月11

日に設定登録を受け,平成20年9月2日に存続期間更新登録を受けた。なお,

本件商標は,平成22年10月28日,商標法50条1項不使用取消審判)によ

り抹消登録された。

本件商標は,平成12年8月25日から平成20年12月11日までの間,専用

使用権者を被告とする専用使用権(対価の額・無償)の設定登録がされた。
イ Dは,平成21年3月17日ころ,被告が所有する「漢検」に係る商標権を

13
原告に移転登録することが可能か否かについて,弁理士に相談していた。
他方,被告は,平成21年6月1日付け「申入書」により,原告に対し,原告が

所有する本件商標を含む45件の商標を,権利の取得・維持に要した実費相当額と

して,1346万3799円で譲渡するよう申し入れたが,拒否された。

ウ 本件商標を含む,
「日本漢字能力検定協会」や「漢検」に係わる商標9件につ

いて,平成21年11月16日,原告からAらに移転登録された。その後,平成2

2年7月9日,原告と被告間の賃料仮払い仮処分命令申立事件(京都地裁平成22

年(ヨ)第194号)において和解が成立し,本件商標を含む上記9件の商標は,

同和解に基づき,同月26日にAらから原告に再度移転登録がされた。なお, (甲


)は,上記新聞報道等がされた後に結成された
30,75では「B」となっている。

「Dを支援する会」の創設者であり,Aは同会の設立趣旨に賛同する者である。

エ 被告は,平成22年3月31日,特許庁に対し,本件商標登録の無効審判

請求した。
オ 原告は,平成23年1月17日付け内容証明郵便により,被告に対し,原告

が著作権を有する書籍の販売中止,及び原告が所有する,被告の名称や「日本漢字

能力検定」に係わる3件の商標の使用中止を求める通知をした。さらに,原告は,

平成23年3月17日,被告に対し,上記3件の商標の使用差止請求訴訟を提起し

た(大阪地方裁判所平成23年(ワ)第3460号)。

カ 原告は,本件無効審判請求に係る第1回口頭審尋(平成23年10月11日
実施)において,Aらからは1000万円を借り入れただけであり,平成22年6

月30日付け答弁書において主張した
「株式会社オークに対する共同出資者であり」

との主張は撤回すること,被告が譲渡を申し入れている商標権については,今後,

漢字検定事業を再開する構想もあるので,被告への譲渡は考えていないこと,など

を陳述した。

(甲1,2,18〜20,30,62,63,75,76,86,97,乙3【9
〜12頁】 乙10,14)


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判断

上記認定事実によれば,
(1) 「日本漢字能力検定」は,もともと原告によって創

設され,その内部機関である旧協会によって実施されていたものであるが,原告の

代表取締役であったD自身が設立代表者となって,
公益法人である被告が設立され,

その後,被告が「日本漢字能力検定」の実施の主体となったこと,
「日本漢字能力検

定」は,被告設立と共に,文部省(現・文部科学省)の認定(民間技能審査事業認

定制度廃止後は後援)を受け,公的資格と見なされるようになったことなどから,

志願者数が急増し,平成5年度には約24万人,平成9年度には約106万人,平

成14年度には約204万人,平成20年度には約289万人に達し,我が国有数

の検定試験になったことが認められる。また,
「日本漢字能力検定」の志願者が増加

するのに伴い,被告の名称の一部である「日本漢字能力検定協会」や,
「日本漢字能

力検定」の略称である「漢検」は,被告ないし被告の提供する役務を表すものとし

て,社会一般に広く知れ渡っているものと認められる。
他方,原告は,被告設立後,
「日本漢字能力検定」の主体ではなくなっていたにも

かかわらず,平成12年ころまで,被告の名称や「日本漢字能力検定」に係わる商

標(本件商標を含む。
)を出願し,その後も,被告名義で出願した商標について出願

人名義を原告に変更するなどして,
商標権者となっていたことが認められる
(なお,

平成18年ころまで,原告の内部組織である振興会が,小学校1年ないし3年生を

対象とした漢字能力検定の主催者とされていたことは認められるものの,乙1,3
,11によれば,実際に上記検定に係る業務を行っていたのは被告の職
【6,7頁】

員であり,振興会は名目上の主催者にすぎなかったものといえる。。


上記のとおり,被告は,文部大臣(当時)による許可を受けて設立された公益法

人であり,文部省(現・文部科学省)の認定ないし後援を受けて「日本漢字能力検

定」を実施していたのであるから,これに係わる商標の登録出願も自ら行うべきも

のであったといえる。にもかかわらず,当時原告の代表取締役であり,被告の理事
長でもあったDは,被告理事会の承認等を得ることなく,本件商標を含む,被告の

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名称ないし「日本漢字能力検定」に係わる商標を,原告名義で出願したり,出願人
名義を被告から原告に変更するなどしていたものであって,そのこと自体,著しく

妥当性を欠き,社会公共の利益を害すると評価する余地もある(この点,原告は,

被告の資産が乏しかったため,原告名義で上記商標登録出願をしたと主張するが,

被告設立当時, に
既 「日本漢字能力検定」 相当数の受検者がおり,
上記のとおり, は

受検料等による収入が見込まれていたこと,Dは,被告設立直後のみならず,平成

12年ころまで,被告の名称ないし「日本漢字能力検定」に係わる商標を原告名義

で出願し続けていたことなどからすれば,上記主張は採用することができない。ま

た,被告の名称や「日本漢字能力検定」に係わる商標権自体が,相当な財産的価値

を有するものといえるから,原告が被告に対して無償の商標使用を許諾していたこ

とや,商標権の取得・維持費用を負担していたことがあるとしても,そのことをも

って,上記行為を正当化することはできない。。


このような経緯に加えて,Dは,被告に対して文部科学省による行政指導がなさ
れ,新聞報道等で被告と原告関連4社との利益相反取引等が糾弾され,Eと共に背

任罪で起訴された上,被告から多額の損害賠償請求訴訟が提起された後,本件商標

の登録名義を原告からAらに移転したり,被告に対して被告の名称や「日本漢字能

力検定」 係わる商標等の使用差止請求訴訟を提起したりするに至ったものである。


さらに,DないしEは,本件商標等について,権利の取得・維持の実費相当額での

被告への譲渡を拒み,これらを原告自ら使用する可能性に言及するなどしている。
上記事情に照らすと,原告の前代表取締役D及び現代表取締役Eは,商標権者等

の業務上の信用の維持や需要者の利益保護という商標法の目的に反して,自らの保

身を図るため,原告が有する被告の名称ないし「日本漢字能力検定」に係わる商標

を利用しているにすぎず,原告が,本件商標を指定役務について使用することは,

被告による「日本漢字能力検定」の実施及びその受検者に対し,混乱を生じさせる

ものであり,社会通念に照らして著しく妥当性を欠き,社会公共の利益を害すると
いうべきである。

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(2) 原告の主張について
これに対し,原告は,本件商標をAらに譲渡したのは,Aらからの借入金の担保

のためであるし,審理終結通知時には原告に再び移転登録がされている,被告に対

する本件商標の譲渡を一切拒絶するものではないし,検定事業等は私的な経済活動

にすぎないとして,本件商標に後発的無効事由としての公序良俗違反はない,と主

張する。しかし,原告の上記主張は,失当である。

すなわち,原告とAらとの間の本件商標の譲渡契約は,原告から買戻しの申入れ

があった場合,Aらは,原告からの譲渡代金の返済の有無にかかわらず,直ちに名

義変更に応ずるというものであり 甲86) 債権担保としては不可解なものである
( ,

上,実際,別件保全事件の和解条項に基づき,速やかに原告に名義変更がされてい

ること,Bは,Dを援護するため, Dを支援する会」を創設した者であり,Aもこ


れに賛同する者であること,原告は,本件無効審判請求に係る審理において,上記

譲渡に関し,当初,Aらを「株式会社オークに対する共同出資者である」などと現
在とは異なる主張をしていたことなどに照らすと,上記譲渡が借入金の担保目的に

すぎないとの原告の主張は, 信し難い。 しろ,
措 む 上記譲渡は,上記事実に加えて,

原告らに対する上記損害賠償等請求訴訟が提起された直後に(甲86によれば平成

21年10月付け)行われたものであることを考慮すると,被告による差押え等を

免れるためになされたものと推認され,原告に本件商標の登録名義があることが社

会通念上妥当性を欠くことを基礎づける事情といえる。なお,審理終結通知前に本
件商標の登録名義が原告に戻されたとしても,上記譲渡行為の不当性が否定される

ものではなく,これをもって,上記判断を覆すことはできない。

また,上記のとおり,被告は,文部省(現・文部科学省)による許可を受けて設

立された公益法人であること,
「日本漢字能力検定」は,長年にわたり,同省による

認定ないし後援を受けて公的資格と見なされるようになったものであり,これによ

り多数の受検者を獲得し,我が国有数の検定試験となっていることに照らすと,被
告及び「日本漢字能力検定」に係わる商標の帰属に関することが,単なる私人間の

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経済活動にすぎないということはできない。
なお,上記のとおり,不当な方法で被告の名称や「日本漢字能力検定」に係わる

商標の登録名義人となった原告が,その権利に基づき,被告に対し,商標使用差止

請求等をすることは,権利の濫用に当たる上,被告による「日本漢字能力検定」の

実施及びその受検者に対し,混乱を生じさせるものといえる。

(3) 小括

以上によれば,原告の上記主張は失当であって,本件商標は,商標登録後に,商

標法4条1項7号に該当するものとなったと認められる。

4 結論

以上によれば,原告の主張する取消事由には理由がなく,審決にはこれを取り消

すべき違法はない。原告はその他縷々主張するが,いずれも理由がない。よって,

主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第3部




裁判長裁判官
芝 田 俊 文




裁判官
西 理 香



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裁判官
知 明





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(別紙)
商標 目 録



商標登録番号:第4219721号

商標の構成:




出願日:平成9年1月23日

設定登録日:平成10年12月11日

存続期間更新登録:平成20年9月2日
指定役務:第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授」




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