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事件 平成 24年 (行ケ) 10277号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2012/12/05
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成24年12月5日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官

平成24年(行ケ)第10277号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成24年11月21日

判 決

原 告 サ ボ イ 株 式 会 社

同訴訟代理人弁護士 田 中 克 郎

宮 川 美 津 子

同 弁理士 廣 中 健

太 田 雅 苗 子

被 告 Y

同訴訟代理人弁理士 長 門 侃 二

鳥 羽 み さ を

主 文

1 特許庁が取消2011−300871号事件につい

て平成24年6月19日にした審決を取り消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための

付加期間を30日と定める。

事実及び理由

第1 請求

主文1項と同旨

第2 事案の概要

本件は,原告が,原告の後記1の本件商標に係る商標登録の取消しを求める被告

の後記2の本件審判の請求について,特許庁が同請求を認めた別紙審決書(写し)

の本件審決(その理由の要旨は後記3のとおり)には,後記4のとおりの取消事由

があると主張して,原告が本件審決の取消しを求める事案である。
1 本件商標

本件商標は,別紙のとおりの構成からなり,平成13年4月11日に登録出願さ

れ,別紙のとおりの商品を指定商品として,平成14年4月19日に設定登録(登

録第4561902号)されたものである(甲1。以下,証拠には枝番を含む。。


2 特許庁における手続の経緯

被告は,平成23年9月20日,本件商標の指定商品のうち,第14類「身飾品,

宝玉及びその模造品,時計」(以下「対象指定商品」という。)について,不使用

消審判を請求し,本件審判の請求は,同年10月11日に登録された(甲29)。

特許庁は,これを取消2011−300871号事件として審理し,平成24年

6月19日,本件商標の指定商品中,対象指定商品については,その登録を取り消

す旨の本件審決をし,その審決書謄本は,同月28日,原告に送達された。

3 本件審決の理由の要旨

本件審決の理由は,本件商標の商標権者(原告)及び通常使用権者(山陽商事株

式会社)が,本件審判の請求の登録前3年以内に,日本国内において,対象指定商

品について本件商標を使用したといえず,不使用についての正当理由の主張立証は

ないから,対象指定商品に係る本件商標の登録を取り消すべきものである,という

ものである。

なお,本件審決は,本件商標を付した「ロゴチャーム( )」と称

する商品(以下「本件商品」という。 が,
) 「バッグの装飾品」であって,「チャーム(鎖

用宝飾品)」ということはできず,対象指定商品に当たらないと判断した。

4 取消事由

本件商品の認定判断の誤り

第3 当事者の主張

〔原告の主張〕

1 「身飾品」の意義と商品の認定方法

「身飾品」の定義
「身飾品」とは,おしゃれを目的として使用される装飾品であり,イヤリング,

ネックレス,ブレスレットなど,直接身体に付けて使用される商品のほか,ネクタ

イピンや貴金属製バッジ,宝石ブローチなど,直接身体に身に付けるものではない

が,衣服等に付けて使用することにより間接的に身体に付ける商品も含む概念であ

る。

商品の認定方法

本件商品が「身飾品」に該当するか否かは,単に,その名称,表示等の形式のみ

によって判断すべきでなく,本件商品の構成,表示,機能,用途,販売場所(態様),

本件商品及びこれと同種の同業他社の商品についての流通市場における認識等に照

らし,本件商品の取引者及び需要者の認識を基準として実質的に判断するべきであ

る。

商品が複数の機能・用途を有するという性格及び取引の実情を踏まえれば,1つ

の商品が,2つ以上の商品概念に該当するということはしばしばあることであり,

世の中に出現するあらゆる商品が,1つの商品区分中の1つの商品にしか属さない

と判断することは,画一的にすぎ,商品の実質に則した判断とはいえず,商標法の

趣旨に沿うものではない。

なお,国際的にも,ニース協定に基づく「商品及び役務の国際分類」によれば,

「完成品が複数の用途を有する複合物である場合には,各機能又は各用途に対応す

るいずれの類にも分類することができる」として,1つの商品が複数の分類に属す

ることがあり,そのような複合物は,複数の商品分類にまたがる可能性があること

が認められている。

誤認混同について

本件商標の登録が,対象指定商品について取り消された場合,
「身飾品」と「バッ

グの装飾品」を非類似の商品として扱っている特許庁の運用の下では,第三者が本

件商標と同一の商標について「身飾品」を指定商品とする商標登録を受けることが

可能になり,その場合には,本件商品と同一の商標が付された身飾品が,市場で流
通することになる。本件商品が「身飾品」としての機能・用途を有することからす

れば,同じ商標が付された本件商品と第三者の「身飾品」とが同一の流通経路や販

売場所で取引されることとなり,このような事態は,本件商品と当該第三者の商品

との間に誤認,混同を生じさせ,商標法の目的に反する結果を招来する。

本件審決の判断の誤り

不使用取消制度は,法が本来保護すべきものとして予定している商標に化体

した業務上の信用が存しない不使用状態の登録商標を個別的に整理することにあり,

逆にいえば,現に使用され,信用が蓄積している商標については,その信用を保護

することが本来の規定の趣旨である。かかる趣旨の下に設けられた不使用取消審判

において,商標権者が真に商標を使用している商品の概念をいたずらに狭く解釈し,

多少なりとも信用が化体している商標の登録を取り消すことは,上記制度の趣旨に

反するばかりでなく,我が国が採用する先願主義にもとるものである。

そもそも商標法における商品区分は,市場で流通する膨大な種類の商品を,商標

登録出願に際しての出願人の便宜及び審査の便宜を図るという見地から分類したも

のであり,全ての商品が明快に仕分けできるものではなく,いずれの分類に属する

か判断の極めて困難な商品も多数存在する。そのような商品について現実に市場で

使用され,信用が蓄積している登録商標について,当該登録商標の使用が指定商品

中のいずれの商品についての使用であるかを決するに当たっては,上記の商標法の

目的や不使用取消審判の制度趣旨に照らして解釈されるべきであり,2つの分類に

属する二面性を有するとされるべき商品があるのであれば,それを二者択一的に一

指定商品にのみ属するとすることは,商品の誤認,混同を避け,商取引の秩序を

維持するという商標法の趣旨に照らして妥当でない。

イ 本件商標は,少なくとも被告による不使用取消審判請求の登録日より2年以

上も前の,平成21年1月8日から継続して本件商品に使用され,現に信用が蓄積

しているのであり,本件商品が,複数の機能・用途を持ち,複数の商品概念に属し

得る二面性を持つものであるならば,かかる商品は,2つの商品概念に属するとみ
るべきであって,本件商品は,「バッグの装飾品」であるとしても,「身飾品」にも

該当するものである。

2 本件商品の「身飾品」該当性

構成

本件商品は,フック,リング,チェーン及びチェーンの先端に付いたチャームで

構成され,リングにフックとチェーンがつながれた態様である。また,リングにつ

ながれたフックとチェーンは,それぞれリングから容易に取り外すことが可能な構

造となっている。

表示

本件商品には,表面に本件商標が大きく表示され,裏面に商品を特定する文字等

が表示された下げ札が結び付けられているか,又は,本件商標が表面上部に大きく

表示され,バーコードが表示された紙片が下部に貼付されている台紙に本件商品が

取り付けられて販売されている。また,原告のホームページでは,本件商品が「キ

ラキラ☆ラインストーンが輝くチャーム」などという表示の下で販売されていた。

機能・用途

本件商品は,複数の用途を有する商品であり,以下のとおり,
「身飾品」としての

用途・機能も有している。

ア 本件商品は,フックの部分をバッグの金具等に飾りとして付けることができ

るほか,ズボン等のベルトループに通し,又はベルトの穴に付ける等して,腰元の

アクセサリー(身飾品)として使用することができる。また,リング部分に鍵を通

してキーホルダーとして使用すること,リングからフックを取り外した上でリング

部分にネックレスのチェーンを通してネックレスとして使用すること,チェーン部

分を取り外して携帯ストラップとして使用することも可能である。

このように,機能・用途の面からみると,本件商品は,特に用途を限定すること

なく,工夫次第で色々な用途に使用することが可能な商品として製造販売されてお

り,購入者によって様々な用途に使用され得る商品である。
原告のホームページにおいて,本件商品を「チャーム」と説明・紹介していると

ころ,
「チャーム」の語は,
「ネックレス・腕輪などに付ける小さな装飾品」
(以下「狭

義のチャーム」という。)という意味で用いられると同時に,バッグや衣服,カーテ

ン用のタッセル等に付ける飾りの小物等,何か別の商品に付けて使用する装飾品一

般(以下「広義のチャーム」という。)としても用いられている。

特に,本件商品を取り扱うファッション業界においては,バッグ,携帯電話,キ

ーホルダー等に付けて華やかに装う飾り物が「チャーム」と称されて,おしゃれに

関心の高い若い女性の間で人気を博している。
「チャーム」の語は,狭義の「チャー

ム」としてだけではなく,「バッグチャーム」 「キーチャーム」「ベルトチャーム」
, ,

等,衣服やバッグに付ける様々な装飾品を称する語として,ファッション業界で現

実に使用され,これらの装飾品が「チャーム」として,本件商品の需要者及び取引

者に理解されている。

そして,
「チャーム」と称され市場において取引されているこれらの商品は,例え

ば,バッグの金具や持ち手に付けてバッグの装飾品(バッグチャーム)として使用

できるほか,そのまま手首に巻いてブレスレットとして使用できるもの,ベルトル

ープに付けてズボンの飾りとして使用できるもの,携帯電話に付けて携帯ストラッ

プとして使用できるもの,鍵を付けてキーホルダーとして使用できるもの等,複数

の用途に使用可能な商品として企画され,販売されているものが多く存在する。

以上のとおりであって,本件商品のように,フック,リング,チェーン及び狭義

のチャーム等,あるいはそのうちの幾つかで構成される商品は,商品全体として「チ

ャーム」と呼ばれ,現実の取引市場において,バッグに付けたり,携帯電話に付け

たり,デニムパンツのベルトループに付ける等,複数の用途に使用可能な商品とし

て理解・認識され,販売されているものであり,デニムパンツのベルトループに付

けて使用する態様・用途や,ネックレスとして使用する態様・用途においては,商

品を身に付ける使用者の美しさを増すために用いられるものということができる。

イ おしゃれや流行に敏感な需要者の間では,近年では,腰元に小さな飾りやチ
ェーンを付けるスタイルが流行していることからすれば,本件商品や本件商品と同

種の商品が,かばんの装飾品としてのみならず,ズボンのベルトループに装着する

などして身を飾るものとしても使用されるものであることは,何ら不自然ではない。

販売場所

本件商品は,原告の店舗及びオンラインショッピングサイトで,バッグ,傘,財

布,スマートフォンケース等のいわゆるファッション雑貨と称される商品と並んで

販売されている。原告のこれらの商品と同種のファッション雑貨を取り扱う小売店

では,顧客が身なりや持ち物をトータルでコーディネートできるように,被服,帽

子,バッグ,傘,靴,ネックレスやピアス等のアクセサリー等のファッションに関

連する幅広い商品を同一の店舗内で販売することが一般的に行われている。また,

本件商品と同種の商品は,アクセサリーを主力商品とするオンライン店舗で販売さ

れているほか,ファッション雑貨一般を取り扱うオンライン店舗では,
「靴・バッグ・

アクセサリー・小物類・ジュエリー」等のカテゴリーに属する商品として販売され

ている。また,腰元を飾る商品が「ジュエリー」として扱われている。

このように,
「バッグ」 「アクセサリー」
と が,ファッション雑貨・小物類として,

同じカテゴリーに属する商品として取り扱われ,同一店舗内,同一エリアで一般的

に販売されており,本件商品と同種の商品が,
「アクセサリー」のカテゴリーに属す

る商品として取り扱われ,販売されている。したがって,
「バッグ」を主力商品とす

る原告の店舗において,
「アクセサリー」すなわち「身飾品」である本件商品が販売

されていることは何ら不自然ではなく,原告の主力商品が「バッグ」であり,原告

の店舗で「バッグ」が多く販売されているとしても,同一店舗内で販売しているバ

ッグ以外の全ての商品が,当然に「バッグの附属品」に限られるものではなく,本

件商品を「バッグの装飾品」であると認定すべき合理的根拠はない。

本件商品及びこれと同種の商品についての流通市場における認識

本件商品及び本件商品と同種の同業他社の商品は,本件商品を取り扱うファッシ

ョン業界において,
「チャーム」と称され,人の外観を華やかに装うことを目的とし
て,バッグに付けたり,携帯電話に付けたり,衣服に付ける等,様々な態様で,様々

な用途に使用される商品であることは,本件商品及び本件商品と同種の商品の需要

者に十分認識されている。

まとめ

以上のとおり,本件商品が,複数の用途に使用可能な商品として販売され,その

ような商品として取引者及び需要者に理解・認識されているものであるところ,腰

元を飾るためにベルトやベルトループに付けて使用される場合や,手や首元を飾る

ためにネックレスやブレスレットとして使用される場合には,正に身に飾ることに

より使用者の美しさを増す商品であり,「身飾品」に該当するものである。

よって,本件商標は,対象指定商品の1つである「身飾品」について使用されて

いたものであるから,本件審決の認定判断は,誤りである。

〔被告の主張〕

1 「身飾品」の意義と商品の認定方法について

「身飾品」の定義に係る原告の主張は,認める。

現物の確認

ア 本件商品と同様のロゴチャームの現物

商品の認定は,まず,本件商標を使用していると主張されている商品の現物を詳

細に観察する必要がある。原告の松坂屋銀座店で販売されていた本件商品と同様の

商品の現物(乙1)の構成は,フック,リング,チェーン及びそのチェーンに複数

のチャームが付けられて成り,そのチャームのうちの1つは,本件商標の図形部分

をロゴとするチャームである。上記商品は,キーホルダーとして使用され得るが,

併せて,
「身飾品」としておしゃれ小物の用途に使用される可能性があるとは思えな

い。

イ 原告の主要商品「かばん」の現物

この「 」に含まれる原告のロゴ飾りは,簡単に取り外し可能な細身

の鎖でバッグ(乙2)に当初から付されているが,これはバッグ製造後に簡単に取
り外せる鎖で取り付けられたものである。

商品の認定方法

一般的に,商品認定の方法について「本件商品の取引者及び需要者の認識を基準

として実質的に判断する」との原則を認めたとして,出発点として検討されるべき

なのは,取引者である原告の認識である。

ア 原告及び取引者の本件商品の用途の認識

原告は,本件商標の不使用による取消請求を受けた時点で,本件商品の商品名は

「チャーム」であるとし,その用途は,
「ネックレス又はバッグ等の飾り」であると

主張したが,提出された証拠の商品リストには,商品名「 」が記載さ

れていた(甲9,18)。商品販売当時の企画意図が何であったかが把握できなかっ

たのかもしれない。

原告は,審判においては,本件商品を「チャーム」又は「ロゴチャーム」といい,

準備書面においては,
「ロゴチャームと称するもの」又は「バッグチャーム」ともい

い,本件商品の名称についての認識は揺れ動いている。そこで,以下,これらの用

語について整理する。

イ 「チャーム」「 」「バッグチャーム」について

我が国の商標法下における指定商品の表示に使用される「チャーム」とは,ネッ

クレスとして下げる飾りの部分をいい,括弧書で(鎖用宝飾品)とされるとおりで

ある。したがって,狭義,広義というより,商標法上の指定商品表示に使用される

一種の専門用語と,社会で一般に使用される社会通念上の語の二種があると考えた

方が実情に合っていると思われる。

原告が商品リストに商品名として記載していた「 」は,英文字で書

かれていることからも示されるように,海外メーカーの商品を参考に作られたもの

と推測される。 は, の略語として,商標,社名,社標等のデザイ

ンされた文字又は図形を意味している。

これに対し,バッグチャームは,バッグの飾りであるとの機能に重点を置いて使
用されている言葉であり,チャームは「飾り小物」を意味する語で,社会通念上使

用される用法である。すなわち,現在,一般に,鎖の先に付いたような飾り小物が

「チャーム」と呼ばれており,
「飾り小物」の代替語として使われているのが現実で

あるが,そのような「チャーム」の用語法と,本件商品の用途の問題とは直接的に

関連しない。

本件商品の用途について

ア 原告による用途の認識

原告における本件商品の用途の認識は,審判時点において,
「ネックレス」 「バ
又は

ッグ等」に付ける飾り,というものであった。しかし,原告は,本訴において,本

件商品は,「フックの部分をバッグの金具等に飾りとして付けることができるほか,

ズボン等のベルトループに通す,ベルトの穴に付ける等して,腰元のアクセサリー

(身飾品)として使用することができる機能を有する」として,本件商品の用途を

追加する主張を行った。このように,商品を販売した時には販売者さえも認識して

いなかった用途を主張することで,本件商品の商標法上の商品の区分を拡大させて

認めさせようとすることが許されるものか,大いに疑問である。

イ 原告の主張について

ア 原 告は,本件商品が「腰元のアクセサリー」としても使用可能であると主

張して,
「チャーム」と名の付く商品が,ズボンのループに飾りとして使用されてい

ると主張する。つまり,需要者の認識として,本件商品のような「チャーム」には,

ズボンのループに付けて身を飾る機能・用途もあるとの主張と思われるが,本件商

品と「飾り小物」といった意味で使用される「チャーム」とを同種の商品であると

して概念を拡張し,その上で,そのチャームがズボンのループ等腰元に使用できる

と提案している取引者の宣伝・提案を,需要者の認識であるかのように主張してい

るもので,到底受け入れることはできない。

イ また,原告は,
「腰元にアクセサリーを飾るというファッション」が流行し

ているとして,雑誌記事を証拠として提出しているが,これも商品のメーカー・販
売者が宣伝のために先端的なファッションを,雑誌等を通じて提案しているもので

あり,取引者の提案にすぎない。さらに,提出されている雑誌には男性用雑誌が多

く含まれており,原告の主要商品である「かばん」が婦人物に限られることから,

二重の意味で関連は薄い。

ウ 以上のとおり,原告は,本件商品が「バッグの装飾品」であると同時に「身

飾品」でもあると主張して,
「チャーム」という言葉を介して,インターネット上の

広告及びファッション雑誌の記事を証拠として多数提出しているが,本件商品その

ものの用途というよりは,商品を購入した人の「工夫次第で広がる使用法」をも自

己の商品の用途に取り込もうとするものである。この論法によれば,スカーフは,

バッグの装飾としてバッグの持ち手等に結んでアクセントとすることは一般的に行

われているので,
「被服」
(第25類)であると同時に「かばんの装飾品」
(第18類)

と認定されなければならず,風呂敷のようにも使用されるので,「布製身の回り品」

(第24類)とも認定されることになり,あらゆる商品が,分類を超えて拡大して

行くことになり,不合理である。

混同の可能性

原告の主たる商品である「女性用かばん」の価格帯が3000円から5000円

で,本件商品の価格帯は,単価が264円から480円程度で,上代が800円で

ある。被告の商品は,現在インターネット上のサイト( )で
!"

販売されているが,男性用のスイス製の時計を中心として,その価格帯は,150

0米ドル(約1万3000円)程度で,現在ウェブサイトに掲載されている身飾品

である「カフスリング」は,110米ドル(約8800円)程度である。このよう

に,商品の種類も価格帯も原告の商品とは異なり,原告の商品との間に混同が生じ

ているという事実もない。

したがって,本件商標が「身飾品」について取り消され,被告の商標が登録され

ることにより,出所の混同が生じるおそれはない。

2 まとめ
被告は,本件商標に対して不使用取消審判を請求する前に,原告の松坂屋銀座店

を訪れ,そこに陳列されている商品について確認したが,陳列されていたのは婦人

用のバッグに限られていた。しかし,裁判書類を受領して,再び原告の松坂屋銀座

店を訪れたところ,「 」が商品として並んでおり,傘,靴下等の小物

も展示されていた。

このように,原告は,審判請求登録後に,審判請求登録前の事実の解釈を変える

べく様々な方策を遂行中である。

商標を使用していたとされる商品の分類の認定においても,審判請求登録前の事

実及び原告の認識を基準に認定することが,現在の商標権者である原告と,取消請

求をする被告との衡平の観点から制度趣旨に合致するものと思われる。市場に多機

能商品があふれていることは事実であるが,商品を購入した者の工夫による用途ま

でも取り込んで,それも審判請求予告登録時には原告が認識していなかった用途を

も取り込んで原告商品の分類を拡大解釈することは,商標権者の利益のみに過度な

配慮をするものであり,衡平とは思われない。

したがって,原告の主張は,認められない。

第4 当裁判所の判断

1 本件商標の使用状況について

認定事実

後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

ア 山陽商事株式会社は,原告の代表者が代表者を務める会社であり,本件商標

権の通常実施権者である(甲27,28,136)。

イ 山陽商事株式会社は,遅くとも平成21年1月8日から平成22年9月3日

にかけて,
「ロゴチャーム( ) と称する商品
」 (本件商品)を販売した。

本件商品の商品名及び商品番号は,
「 」,
「 #$%& '

」等である(甲9〜26,34〜42)。
(&

ウ 本件商品には,表面に本件商標が大きく表示された下げ札が結び付けられ,
又は,本件商標が表面上部に大きく表示されている台紙に本件商品が取り付けられ

た態様で販売されている(甲9〜15,18〜20,43,60)。

上記認定事実によれば,本件商標の通常使用権者である山陽商事株式会社は,

本件審判請求の登録前3年の間に,本件商標をその包装に付した本件商品を譲渡し

たものと認められる。

そこで,以下,本件商品が対象指定商品に係る「身飾品」に当たるか否かについ

て検討する。

2 本件商品の「身飾品」該当性について

「身飾品」の意義

商標法施行規則別表及び「商品及び役務の区分解説[国際分類第9版対応](甲


48)によれば,「身飾品」とは,おしゃれを目的として使用される装飾品であり,

イヤリング,ネックレス,ブレスレットなど,直接身体に付けて使用される商品の

ほか,ネクタイピンや貴金属製バッジ,宝石ブローチなど,直接身体に身に付ける

ものではないが,衣服等に付けて使用することにより間接的に身体に付ける商品も

含む概念であり,このことは,当事者間に争いがない。

認定事実

後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

ア 本件商品の商品名は,
「ロゴチャーム( ) であり,
」 その構成は,

フック,リング,チェーン及びチェーンの先端に付いたチャームで構成されており,

リングにフック及びチェーンがつながれているが,フック及びチェーンは,それぞ

れリングから容易に取り外すことが可能なものである(甲9〜15,18〜20)。

イ 本件商品は,原告のホームページにおいては,
「キラキラ☆ラインストーンが

輝くチャーム」「ハート型の赤いハートと鍵がポイントのアクセサリー」などと紹


介されている(甲43)。

ウ 本件商品の商品名は,「ロゴチャーム( )」であるところ,「ロ

ゴ( )」とは,商標等のデザインされた文字又は図形を意味している。また,
「チャーム( )」とは,
「お守り」又は「魅力」を意味し,時計やブレスレッ

ト,ネックレス等の装飾品の鎖部分などに付ける小さな飾りをいい,近年では,多

種多様なフックの普及に伴い,携帯電話やバッグのほか,直接洋服に付ける場合も

ある(甲30)。

なお,チャーム及び鎖用宝飾品( 〔) * 〕)は,いずれも,商標法施

行令別表第14類に属する(甲31,32)。

エ 山陽商事株式会社の取引先は,本件商品が,バッグ,携帯電話,キーホルダ

ー等の飾り物としての使用を含め,客の好みに応じていろいろな用途に使用される

ものと認識している(甲35,37)。

オ 本件商品と同種の商品は,フックの部分をバッグの金具等に飾りとして付け

ることができるほか(バッグチャーム) ズボン等のベルトループに通し又はベルト


の穴に付けたり(ベルトチャーム),キーホルダーに付けたり(キーチャーム),ブ

ラウスに付けたりして使用することができ,また,それ自体をブレスレットやネッ

クレスとして使用することもでき,ファッション雑誌等において上記のような使用

状況が掲載されている。そして,このようなものも「チャーム」とも呼ばれている

(甲91〜99,105,106,116,123,124,126,127。な

お,甲62ないし90は,平成24年8月又は9月に印刷したウェブページである

が,本件審判請求の登録の日である平成23年10月11日の前3年間においても,

同様であったものと推認することができる。 。


カ 本件商標を付した山陽商事株式会社の平成22年の商品カタログには,SA


VOY」ブランドのバッグが約860点掲載されているが,バッグ自体にチャーム

を取り付けることができるものは,そのうち約94点にすぎない(甲135,13

6)。

本件商品の「身飾品」該当性

前記 認定の本件商品の名称や構成,販売時の広告態様,本件商品及びこれと同

種の商品についての使用状況やこれから推認される取引者及び需要者の認識等に照
らせば,本件商品は,時計やブレスレット,ネックレス等の装飾品の鎖部分などに

付ける飾りであるが,バッグに取り付けて使用するのみならず,これを洋服に付け

たり,それ自体をブレスレットやネックレスとして,使用することもできるもので

あり,「アクセサリー」として紹介されているものということができる。

このように,本件商品は,洋服に付けたり,それ自体をブレスレットやネックレ

スとしても使用することができるものであるから,前記 認定の,おしゃれを目的

として使用される装飾品である「身飾品」にも該当するということができる。

よって,本件商品は,「バッグの装飾品」であって,「チャーム(鎖用宝飾品)」

ということはできず,対象指定商品に当たらないとした本件審決の認定判断には,

誤りがある。

3 被告の主張について

被 告は,本件商品は,キーホルダーとして使用され得るが,併せて,「身飾

品」としておしゃれ小物の用途に使用される可能性があるとはいえないと主張する。

しかしながら,1つの商品が複数の機能・用途を有することもあり得るのである

から,ある商品が常にいずれか1つの商品に属すべきものであって,他の用途に使

用されることがあり得ないとするのは相当でない。よって,キーホルダーとして使

用される商品が,異なる用途に使用される可能性がないということはできない。

被告は,取引者である原告の本件商品の名称についての認識は揺れ動いてお

り,本訴において,本件商品の用途を追加する主張を行ったとして問題視する。

しかし,本件においては,通常使用権者が本件審判請求の登録前3年間に本件商

標を包装に付して販売した本件商品が,客観的にみて対象指定商品に係る「身飾品」

に該当するか否かが問題になるのであり,原告の訴訟における主張や認識のみが問

題になるものではない。

被告は,
「チャーム」とは,ネックレスとして下げる飾りの部分をいい,
「飾

り小物」を意味する語で,社会通念上使用される用法であると主張する。

しかしながら,
「チャーム」は,鎖の先に付いたような飾り小物として使用される
のみならず,ネックレスやブレスレットとしての用途も有するものであり,そのよ

うな用途が広くファッション雑誌等に掲載されていることは,前記のとおりである。

被告は,原告が商品を購入した人の「工夫次第で広がる使用法」をも自己の

商品の用途に取り込もうとするものであると主張する。

しかしながら,現にファッション雑誌等に様々な使用方法が紹介されていること

に照らすと,おしゃれに敏感な需要者が,それと同様の使用を試みるであろうこと

が推認され,そのような用途のものとして商品を認定することに,何ら問題はない。

以上のとおり,被告の主張は,いずれも採用することができない。

4 結論

以上の次第であるから,原告の主張する取消事由には理由があり,本件審決は,

取り消されるべきものである。

知的財産高等裁判所第4部



裁判長裁判官 土 肥 章 大




裁判官 部 眞 規 子




裁判官 齋 藤 巌
(別紙)

〔本件商標〕




指定商品

第9類 理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電池,電

気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,

眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。 ,救命用具,電気通信機械器具,電子応


用機械器具及びその部品,オゾン発生器,電解槽,ロケット,遊園地用機械器具,

運動技能訓練用シミュレーター,乗物運転技能訓練用シミュレーター,回転変流機,

調相機,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,鉄道用信号機,乗物の

故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,火災報知機,ガス漏れ警

報器,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,消防車,消防艇,スプリンクラー消

火装置,盗難警報器,保安用ヘルメット,磁心,自動車用シガーライター,抵抗線,

電極,ガソリンステーション用装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,金

銭登録機,計算尺,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手

動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,電

気計算機,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手の

はり付けチェック装置,潜水用機械器具,アーク溶接機,金属溶断機,検卵器,電

気溶接装置,電動式扉自動開閉装置

第14類 貴金属,貴金属製の花瓶・水盤・宝石箱,貴金属製のがま口・靴飾り・
コンパクト及び財布,貴金属製喫煙用具,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の

模造品,時計,記念カップ,記念たて

第16類 紙類,紙製包装用容器,紙製テーブルクロス,紙製ブラインド,文房具

類,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,青写真複写機,あて名印刷機,印刷用イ

ンテル,印字用インクリボン,活字,こんにゃく版複写機,自動印紙はり付け機,

事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,

チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,封ろう,マーキング用孔開

型板,郵便料金計器,輪転謄写機

第34類 たばこ,紙巻きたばこ用紙,喫煙用具(貴金属製のものを除く。,マッ




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