審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成23ネ10046商標権侵害差止等請求控訴事件 | 判例 | 商標 |
平成21ワ24207不当利得返還請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 指定商品 / 類似性(類否判断) / 損害額 / 差止 / 使用許諾 / ハウスマーク / 利益額 / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
22年
(ワ)
11862号
商標権侵害差止等請求事件
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裁判所のデータが存在しません。 | |
裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2011/12/15 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
判例全文 | |
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判例全文
平成23年12月15日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官 平成22年(ワ)第11862号 商標権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日 平成23年10月3日 判 決 原 告 ニューメディカ・テック 株式会社 同訴訟代理人弁護士 小 松 陽 一 郎 同 辻 村 和 彦 同 井 口 喜 久 治 同 川 端 さ と み 同 森 本 純 同 中 村 理 紗 同 山 崎 道 雄 同 辻 淳 子 同 藤 野 睦 子 被 告 ニューメディカ・テック 販売株式会社 (以下「被告NMT販売」という。) 被 告 株式会社 大 倉 (以下「被告大倉」という。) 被告ら訴訟代理人弁護士 川 下 清 同 今 田 晋 一 同 高 橋 幸 平 主 文 1 被告NMT販売は,別紙商品目録記載1の商品に別紙被告標章目録記載 1 1−1,同2−1及び2−2の各標章を,別紙商品目録記載2の商品に別 紙被告標章目録記載1−2,同2−1及び2−2の各標章を,別紙商品目 録記載3の商品に別紙被告標章目録記載1−3及び同3の各標章をそれぞ れ付し,又は同各標章を付した同各商品を販売し,販売のために展示して はならない。 2 被告大倉は,別紙商品目録記載1の商品に別紙被告標章目録記載1−1, 同2−1及び2−2の各標章を,別紙商品目録記載2の商品に別紙被告標 章目録記載1−2,同2−1及び2−2の各標章を,別紙商品目録記載3 の商品に別紙被告標章目録記載1−3及び同3の各標章をそれぞれ付し, 又は同各標章を付した同各商品を販売し,販売のために展示し,貸し渡し, 貸渡しのために展示してはならない。 3 被告らは,別紙商品目録記載1ないし3の各商品に関する宣伝用のカタ ログ,パンフレットに別紙被告標章目録記載1−1ないし1−3,同2− 1,同2−2及び同3の各標章を付して頒布してはならない。 4 被告らは,その本店,事務所,及び倉庫に存在する別紙商品目録記載1 ないし3の各商品及びこれらに関する宣伝用のカタログ,パンフレットか ら別紙被告標章目録記載1−1ないし1−3,同2−1,同2−2及び同 3の各標章を削除せよ。 5 被告大倉は,インターネット上のアドレス「http://www.grandwater.jp/」 において開設するウェブサイトから,別紙被告標章目録記載3の標章を抹 消せよ。 6 被告NMT販売は,原告に対し,1742万9553円及びこれに対す る平成22年9月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 7 被告大倉は,原告に対し,518万7654円及びこれに対する平成2 2年9月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 8 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 2 9 訴訟費用は,被告NMT販売に生じた費用の5分の3と原告に生じた費 用の5分の2を被告NMT販売の負担とし,被告大倉に生じた費用の2分 の1と原告に生じた費用の20分の3を被告大倉の負担とし,その余を原 告の負担とする。 10 この判決は,1項ないし7項に限り,仮に執行することができる。 事 実 及 び 理 由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告 (1) 被告らは,別紙商品目録記載1ないし3の各商品(以下,個別に「被告 商品1」などといい,併せて「被告各商品」という。)に別紙被告標章目録 記載1−1ないし1−3の各標章(以下,個別に「被告標章1−1」など といい,併せて「被告標章1」という。 ,同目録記載2−1及び2−2の ) 各標章(以下,個別に「被告標章2−1」などといい,併せて「被告標章 2」という。 ,及び同目録記載3の標章(以下「被告標章3」といい,被 ) 告標章1ないし3を併せて「被告各標章」という。)を付し,又は被告各標 章を付した被告各商品を販売し,販売のために展示し,貸し渡し,貸渡し のために展示してはならない。 (2) 主文3ないし5項同旨 (3) 被告NMT販売は,原告に対し,3389万円及びこれに対する平成2 2年9月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (4) 被告大倉は,原告に対し,1432万2000円及びこれに対する平成 22年9月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (5) 訴訟費用は,被告らの負担とする。 (6) 仮執行宣言 2 被告ら 3 (1) 原告の請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は,原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 前提事実(いずれも当事者間に争いがない。) (1) 当事者 ア 原告 原告は,浄水器・浄水装置等の輸入,製造,販売,設計及び取付工事 並びに保守点検等を目的とする株式会社である。 イ 被告ら 被告NMT販売は,浄水器・浄水装置等の輸出入,販売及び取付工事 並びに保守点検等を目的とする株式会社である。 被告大倉は,建設業,宅地造成業の外,浄水器のレンタル及び販売等 を目的とする株式会社である。 (2) 本件各商標権 原告は,次の各商標(以下,個別に「本件商標1」などといい,併せて 「本件各商標」という。)について,それぞれ商標権(以下,個別に「本 件商標権1」などといい,併せて「本件各商標権」という。)を有してい る。 ア 本件商標1 登録番号 第4054568号 出 願 日 平成7年6月2日 登 録 日 平成9年9月12日 商品及び役務の区分 第11類 指定商品 家庭用浄水器,浄水装置,浴槽類 登録商標 別紙本件商標目録記載1のとおり イ 本件商標2 4 登録番号 第4539857号 出 願 日 平成12年11月22日 登 録 日 平成14年2月1日 商品及び役務の区分 第11類 指定商品 家庭用浄水器,浄水装置,浴槽類 登録商標 別紙本件商標目録記載2のとおり ウ 本件商標3 登録番号 第4054569号 出 願 日 平成7年6月2日 登 録 日 平成9年9月12日 商品及び役務の区分 第11類 指定商品 家庭用浄水器,浄水装置,浴槽類 登録商標 別紙本件商標目録記載3のとおり (3) 被告らの行為 ア 被告商品1関係 被告NMT販売は,被告標章1−1又は被告標章2を付した被告商品 1(以下「本件フィルター1」という。)を使用した浄水器を販売してい る。 被告大倉は,本件フィルター1を使用した浄水器を販売ないし貸与し ている。 イ 被告商品2関係 被告NMT販売は,被告標章1−2及び被告標章2を付した被告商品 2(以下「本件フィルター2」という。)を使用した浄水器(被告商品3) を販売した。 被告大倉は,本件フィルター2を使用した浄水器(被告商品3)を販 売ないし貸与した。 5 ウ 被告商品3関係 被告NMT販売は,被告標章1−3及び被告標章3を付した被告商品 3(以下「本件浄水器3」という。)を販売した。 被告大倉は,本件浄水器3を販売ないし貸与したほか,自社ホームペー ジにおいて,被告商品3の宣伝広告に関し,被告標章3を使用した。 (4) 総販売代理店契約 被告NMT販売は,原告との間で,平成19年6月29日,原告商品を 販売するための総販売代理店契約を締結し(甲13) 本件各商標を付した , 原告商品を販売していたが(上記契約の帰趨については争いがある。 ,そ ) の後,上記(3)のとおり,被告各商品を販売するようになった。被告各商 品はいずれも,原告が製造した商品ではなく,被告NMT販売が製造した 商品である。 (5) 本件各商標及び指定商品との類似性 被告標章1は本件商標1と,被告標章2は本件商標2と,被告標章3は 本件商標3と,それぞれ類似する。 また,被告各商品は,本件各商標権の指定商品と同一ないし類似する。 2 原告の請求 原告は,被告各商品に関し被告各標章を使用する行為が,本件各商標権を 侵害するものであるとして,@ 被告らに対し,商標法36条に基づき,被 告各商品に係る被告各標章の使用の差止め及び抹消を,A 被告NMT販売 に対し,不法行為に基づき,損害の一部である3389万円の賠償及びこれ に対する平成22年9月2日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの遅 延損害金の支払を,B 被告大倉に対し,不法行為に基づき,損害の一部で ある1432万2000円の賠償及びこれに対する平成22年9月2日(訴 状送達の日の翌日)から支払済みまでの遅延損害金の支払を,それぞれ求め ている。 6 3 争点 (1) 使用許諾の有無(争点1) (2) 原告の損害(争点2) 第3 争点に関する当事者の主張 1 使用許諾の有無(争点1)について 【被告らの主張】 被告NMT販売は,原告商品の販売事業を行うために設立された会社であ り,設立後,直ちに原告商品を原告から購入して販売活動を開始した。 その際,原告は,被告NMT販売に対し,被告各標章の使用を許諾した。 【原告の主張】 原告は,被告NMT販売に対し,原告の真正品を販売することを委託した ものであるが,被告各商品は,原告の真正品ではなく,被告らの主張は前提 を欠いている。 原告が,被告各商品に被告各標章の使用を許諾した事実はない。 また,原告と被告NMT販売間の総販売代理店契約は,平成20年7月9 日付の通知書により解除された。 2 原告の損害(争点2)について 【原告の主張】 (1) 被告NMT販売関係 被告NMT販売の行為により被った原告の損害は,以下のとおり,合計 1億4007万7009円を下らない(商標法38条2項)。 ア 被告商品1について (ア) 販売台数 被告NMT販売は,本件フィルター1を使用した浄水器を,113 1台販売した。 (イ) 販売価格 7 本件フィルター1を使用した浄水器の販売価格は税抜き15万円で ある(争いなし)。 (ウ) 利益率 本件フィルター1を使用した浄水器の原価は多くとも7万2356 円であるから,被告NMT販売の利益率は次の計算式による率を下ら ない。 〔計算式〕(150,000−72,356)÷150,000≒0.518 (エ) 利益額 浄水器全体におけるフィルターの寄与率は30%を下らないから, 上記(ア)ないし(ウ)によれば,原告の損害額は,少なくとも2634万 4609円となる。 〔計算式〕1,131×150,000×前記(ウ)の利益率×0.3=26,344,609 イ 被告商品2,3について (ア) 販売台数 被告NMT販売は,本件フィルター2を使用した本件浄水器3を, 600台販売した。 (イ) 販売価格 本件フィルター2を使用した本件浄水器3の販売価格は,税抜き2 7万2000円である。 (ウ) 利益率 本件フィルター2を使用した本件浄水器3の原価は8万2446円 であるから,被告NMT販売の利益率は次の計算式による利益率を下 らない。 〔計算式〕(272,000−82,446)÷272,000≒0.697 (エ) 利益額 本件フィルター2を使用した本件浄水器3における被告標章1−2, 8 同2,同3の寄与率は100%といえるから,上記(ア)ないし(ウ)によ れば,被告NMT販売の利益は,少なくとも1億1373万2400 円となる。 〔計算式〕600×272,000×前記(ウ)の利益率=113,732,400 (2) 被告大倉関係 被告大倉の行為により被った原告の損害は,以下のとおり,販売分につ いて4032万4000円(主位的に商標法38条2項,予備的に同条3 項),レンタル分について4452万円となる(商標法38条2項)。 ア 被告商品1について (ア) レンタル台数 被告大倉は,本件フィルター1を使用した浄水器を,少なくとも1 000台レンタルした。 (イ) レンタル価格 本件フィルター1を使用した浄水器のレンタル価格は月額6300 円である(争いなし)。 (ウ) レンタル期間 被告大倉は,平成20年9月からの36か月間,本件フィルター1 を使用した浄水器をレンタルしている。 (エ) 利益額 本件フィルター1を使用した浄水器の仕入価格が前記(1)ア(イ)と 同じ15万円であるとすれば,24か月経過により仕入代金の回収が 終わり,以後はレンタル代金が全て利益となる。 また,浄水器全体におけるフィルターの寄与率は30%を下らない から,前記(ア)ないし(ウ)によれば,被告大倉の利益は2268万円を 下らない。 〔計算式〕1,000×6,300×(36−24)×0.3=22,680,000 9 イ 被告商品2,3(販売による利益)について (ア) 販売台数 本件フィルター2を使用した本件浄水器3の販売台数は593台で ある(争いなし)。 (イ) 販売価格 本件フィルター2を使用した本件浄水器3の販売価格は,税抜き3 4万円である。 (ウ) 利益率 本件フィルター2を使用した本件浄水器3の仕入代金は27万20 00円であるから,被告大倉の利益率は20%を下らない。なお,本 件商標2,3に係る実施料率(商標法38条3項)も,同様に20% である。 〔計算式〕(340,000−272,000)÷340,000=0.20 (エ) 利益額 本件フィルター2を使用した本件浄水器3における被告標章2,3 の寄与率は100%といえるから,前記(ア)ないし(ウ)によれば,被告 大倉の利益は,少なくとも4032万4000円となる。 〔計算式〕593×340,000×0.2=40,324,000 ウ 被告商品2,3(レンタルによる利益)について (ア) レンタル台数 被告大倉は,本件フィルター2を使用した本件浄水器3を,100 台レンタルした。 (イ) レンタル単価 本件フィルター2を使用した本件浄水器3のレンタル価格は,月額 1万3650円である。 (ウ) レンタル期間 10 被告大倉は,平成20年9月からの36か月間,本件フィルター2 を使用した本件浄水器3をレンタルしている。 (エ) 利益額 本件フィルター2を使用した本件浄水器3の仕入価格が前記イ(ウ) と同じ27万2000円であるとすれば,20か月経過により仕入代 金の回収が終わり,以後はレンタル代金が全て利益となる。 したがって,前記(ア)ないし(ウ)によれば,被告大倉の利益は,21 84万円を下らない。 〔計算式〕100×13,650×(36−20)=21,840,000 円 【被告らの主張】 (1) 被告ら共通の主張 ア 損害の発生について 被告各商品について,原告の商品であるとの誤認混同が生じているこ とや,原告に損害が発生していることについては,何ら立証されていな い。 特に,本件フィルター1が使用された浄水器は,一貫して被告の商品 として販売されているし,本件フィルター1は外部から視認できない筐 体内部の部品であるから,消費者において原告の商品であるとの誤認・ 混同は生じる余地がなく,原告に損害は発生していない。 イ 損害の二重計上について 原告は,被告商品3の販売及びレンタルについて,別訴で意匠権侵害 を主張し,本訴と同様の算出方法により,本訴と同額の損害賠償を請求 している。 しかしながら,被告商品3の販売及びレンタルが,法的に複数の評価 を受け得るとしても,同一内容の損害が複数生じることはない。 したがって,損害額の認定にあたっては,別訴に係る損害額について 11 も考慮されるべきである。 ウ 寄与割合について 本件各商標権の侵害が問題となるのは,フィルターや筐体の一部など に限られるから,浄水器全体における寄与割合を乗じた額が,損害とし て認定されるべきである。 そして,被告各商品の売上げは被告らの営業努力に拠るところが大き いし,被告標章1及び2は外部から視認できない態様で使用されている から,その寄与はほとんどない。 (2) 被告NMT販売の主張 ア 被告商品1について (ア) 販売台数 本件フィルター1を使用した浄水器の販売台数は270台である。 (イ) 利益率 本件フィルター1を使用した浄水器に係る利益率は33%である。 イ 被告商品2,3について (ア) 販売台数 本件フィルター2を使用した本件浄水器3は,600台製造したが, 3台は廃棄しており,販売台数は597台である。 (イ) 販売価格 本件フィルター2を使用した本件浄水器3の販売価格は,税込み2 7万2000円である。 (ウ) 利益率 本件フィルター2を使用した本件浄水器3に係る利益率は50%で ある。 (3) 被告大倉の主張 ア 被告商品1について 12 (ア) レンタル台数 本件フィルター1を使用した浄水器のレンタル台数は270台であ る。 (イ) 利益額 レンタルによる利益が出るのは,設置後2年からである。 イ 被告商品2,3(販売による利益)について 被告大倉は,本件フィルター2を使用した本件浄水器3を,被告大倉 が分譲するマンション・住宅の標準装備品としており,かつこれを分譲 価格に反映させていないから,本件フィルター2を使用した本件浄水器 3の販売による利益はない。 ウ 被告商品2,3(レンタルによる利益)について (ア) レンタル台数 本件フィルター2を使用した本件浄水器3のレンタル台数は,4台 である。 (イ) レンタル価格 本件フィルター2を使用した本件浄水器3のレンタル価格は,月額 1万2600円(税込み)である。 (ウ) 利益額 レンタルによる利益が出るのは,設置後2年からである。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(使用許諾の有無)について 被告らは,被告NMT販売が,被告各商品に被告各標章を付することにつ いて,原告から許諾を得ていたと主張する。 しかし,証拠(甲13)及び弁論の全趣旨によると,原告としては,原告 商品の販売をするために,被告NMT販売との間で,総販売代理店契約を締 結したのであって,被告NMT販売が被告各商品を販売することや,同商品 13 に原告標章と類似する被告各標章を付することを許諾したとは,およそ考え られず,これを窺わせるような事情もない。 よって,被告らの上記主張は,理由がない。 2 争点2(原告の損害)について (1) 損害の発生 被告らは,被告各商品に関し,原告に損害は発生していないと主張する。 しかしながら,被告大倉は,従前は原告から浄水器を仕入れていたとこ ろ,被告NMT販売が,本件各商標権を侵害する被告各商品を販売するよ うになってからは,こちらを仕入れるようになったのであるから,原告に は損害の発生を認めることができる。 したがって,以下,商標法38条に基づく損害額の算定を行う。 (2) 被告NMT販売関係 ア 被告商品1について (ア) 販売台数 甲44によれば,本件フィルター1を使用した浄水器の販売台数は, 平成21年5月19日から,弁護士が送付した注意喚起文書の作成日 である同年9月15日までを出荷日とする293台と認められる。 なお,被告NMT販売は,販売台数は270台であると主張し,こ れに沿う証拠(乙9)を提出する。しかしながら,乙9には,平成2 1年9月24日までの間に出荷されたものとして,管理 NO(製造番 号と同一)の下3桁(以下,全て下3桁で表記する。)が001〜27 0の商品のみが記載されているところ,同日までには,弁護士による 注意喚起書が到達し,既に,被告標章1−1及び2を付したシールを 剥がした商品が存在することを否定できず,その一方で,甲44の資 料1によれば,製造番号はこれより後であるが,出荷は同日以前にさ れている商品(たとえば,製造番号304〜314の商品は,同年8 14 月13日から同月16日にかけて出荷されている。)も存在するから, 乙9は本件フィルター1を使用した浄水器の全てを計上しているもの とはいえず,採用できない。 (イ) 1台当たりの利益 本件フィルター1を使用した浄水器について,販売価格が税抜き1 5万円であることは当事者間に争いがなく,その原価は多くとも7万 2356円であると認められるところ(甲44) 他に限界利益の算定 , にあたって控除すべき経費は認められないから,1台当たりの利益は 7万7644円となる。 〔計算式〕150,000−72,356=77,644 (ウ) 被告NMT販売の受けた利益 前記(ア),(イ)によれば,被告NMT販売の受けた利益は2274万 9692円となる。 〔計算式〕77,644×293=22,749,692 (エ) 標章の寄与割合 a 被告標章1−1 被告標章1−1は,ハウスマークに係るものである。 そして,浄水器(フィルターを含む。)は,通常は,購入にあたり 製造・販売元が重視される商品といえる。被告大倉の分譲住宅の宣 伝広告によると,逆浸透膜浄水器(グラン ウォーター システムと いう表示が使用されている。 を標準装備していることが強調されて ) いるが,原告の商品であることを示す記載は見あたらず,被告大倉 が本件フィルター1を使用した浄水器(型番GW−1500EX) を購入したのは,逆浸透膜浄水器だったからと推測でき(甲33の 2,甲39の2) 被告標章1−1の使用の必要があったとはいえな , い。 15 しかも,被告標章1−1は,外部から視認できないフィルターに 付された標章である。 したがって,本件フィルター1を使用した浄水器自体の販売にあ たり,被告標章1−1の寄与は,小さいといえる。 b 被告標章2 被告標章2は,フィルターの名称(ミネマリンフィルター)に係 るものである。 そして,被告大倉は,逆浸透膜浄水器の説明や,これを標準装備 した分譲住宅の宣伝広告において,ミネマリンフィルターの使用を 謳っており(甲33の2,甲40の2) フィルターに , 「ミネマリン」 と表記する必要があったといえるから,外部から視認できないフィ ルターに付されていても,被告大倉に対する販売については,被告 標章2の寄与があると認められる。 もっとも,被告標章2は,浄水器全体に付された標章ではなく, 浄水器内部のフィルター4本のうち,ミネマリンフィルターである 1本のみに付された標章である(甲3の1〜6)。 c 寄与割合 以上のとおり,被告標章1−1,同2は,本件フィルター1に使 用されているに過ぎない。しかも,被告NMT販売が販売した相手 は,被告大倉1社であったことを考えると,上記フィルターを装備 した浄水器の被告大倉への販売による利益全体に対する,被告標章 1−1及び被告標章2の寄与した割合は,合計2%とみるのが相当 である。 (オ) 原告の損害 以上のとおりであるから,原告の損害額は,45万4993円(1 円未満切捨て)と認められる。 16 〔計算式〕22,749,692×0.02=454,993 イ 被告商品2,3について (ア) 販売台数 被告NMT販売は,本件フィルター2を使用した本件浄水器3を6 00台製造したことは認めるものの,うち3台は廃棄しており,販売 台数は597台であると主張している。 そして,甲44の資料2を見ても,表番号29,225,226の 3台について,本来であれば設置業者名が記載されるはずの「納品者」 欄に,被告NMT販売が引き取った旨の記載があり,かつ「設置先」 欄も空欄である。 したがって,上記3台は販売されなかったものと考えられるから, 販売台数は597台と認める。 (イ) 1台当たりの利益 本件フィルター2を使用した本件浄水器3は,全て被告大倉に販売 されているところ(甲47),甲44の資料3の1によれば,被告大倉 に対する販売価格は税抜き27万2000円と認められる。 本件フィルター2を使用した本件浄水器3に係る製造原価は8万2 446円であるところ(甲44) 他に限界利益の算定にあたって控除 , すべき経費は認められないから,1台当たりの利益は18万9554 円となる。 〔計算式〕272,000−82,446=189,554 (ウ) 被告NMT販売の受けた利益 前記(ア),(イ)によれば,被告NMT販売の受けた利益は1億131 6万3738円となる。 〔計算式〕189,544×597=113,163,738 (エ) 標章の寄与割合 17 a 被告標章1−2及び1−3 被告標章1−2及び1−3は,ハウスマーク及び社名に係るもの である。 そして,本件フィルター2を使用した本件浄水器3は,原告商品 (CVQ−2000)のコピー商品であるが,被告NMT販売がこ れを製造したのは,上記原告商品を分譲住宅に標準装備する予定で あった被告大倉に対し,同じサイズのものを納品する必要があった からであり(甲43) 原告商品として販売する必要がどの程度あっ , たかは不明である。 浄水器は,通常は,購入にあたり製造・販売元が重視される商品 といえる。もっとも,被告大倉の分譲住宅の宣伝広告によると,逆 浸透膜浄水器(グラン ウォーター システムという表示が使用され ている。 を標準装備していることが強調されているが, ) 原告の商品 であることを示す記載は見あたらず,被告大倉が本件浄水器3(本 件フィルター2を装備)を購入したのは,逆浸透膜浄水器だったか らと推測でき(甲33の2,甲39の2),被告標章1−2,同1− 3の使用の必要がどの程度あったかは不明である。 しかも,被告標章1−2については,外部から視認できないフィ ルターに付された標章である。 したがって,本件フィルター2を使用した本件浄水器3の被告大 倉への販売にあたり,被告標章1−2の寄与は小さく,被告標章1 −3の寄与も大きいとはいえない。 b 被告標章2 被告大倉は,逆浸透膜浄水器の説明や,これを標準装備した分譲 住宅の宣伝広告において,ミネマリンフィルターの使用を謳ってお り(甲33の2,甲40の2),フィルターに「ミネマリン」と表記 18 する必要があったといえるから,外部から視認できないフィルター に付されていても,被告大倉に対する販売については,被告標章2 の寄与があると認められる。 もっとも,被告標章2は,浄水器全体に付された標章ではなく, 浄水器内部のフィルター4本のうち,ミネマリンフィルターである 1本のみに付された標章である。 c 被告標章3 被告標章3は,逆浸透膜浄水器の名称に係るものである。 そして,被告大倉は,遅くとも平成21年7月14日までは,レ ンタルに供している逆浸透膜浄水器として,被告標章3が付された 浄水器(ただし,本件浄水器3ではない。 の写真を使用しており ) (甲 19),被告NMT販売も,平成22年12月15日時点において, 「クリスタル・ヴァレー」の導入企業として,被告大倉を紹介して いるから(甲26) 被告大倉に対する本件浄水器3の販売について , は,被告標章3の寄与があると認められる。 また,被告標章3は,本件浄水器3の正面上部中央に付されてお り,目につきやすい位置に付されているといえる(甲5の1)。 d 寄与割合 以上のとおり,被告標章1−2,同2は,本件フィルター2に使 用されているに過ぎないが,被告標章1−3,同3は,本件浄水器 3に使用され,被告標章3については,目立つ位置に付されている。 被告大倉としては,できるだけ原告商品と同様のものを分譲住宅に 装備する必要があり,その限度で,上記の被告標章を使用するメリッ トは否定できないが,それ以上に,どの程度,原告の商品にこだわ る必要があったかは不明であることなどの事情を総合すると,上記 各被告標章の使用による本件浄水器3(本件フィルター2を装備) 19 の被告大倉への販売による利益全体に対する,被告標章1−2,同 1−3,同2,同3の寄与割合は,合計15%とみるのが相当であ る。 (オ) 原告の損害 以上のとおりであるから,原告の損害額は,1697万4560円 (1円未満切捨て)と認められる。 〔計算式〕113,163,738×0.15=16,974,560 ウ まとめ 以上のとおりであるから,被告NMT販売の行為による原告の損害は, 前記ア(オ)の45万4993円と,前記イ(オ)の1697万4560円の 合計額である1742万9553円となる。 (3) 被告大倉関係 ア 被告商品1について (ア) レンタル台数 前記(2)ア(ア)のとおり,被告NMT販売は,本件フィルター1を使 用した浄水器を293台販売したと認められるところ,被告大倉は, これを全てレンタルに供したと認められる。 (イ) 1台当たりの利益 本件フィルター1を使用した浄水器のレンタル価格が月額6300 円であることは,当事者間に争いがないところ,上記金額は消費税込 みであることが窺える(甲11,12,19)。被告大倉は,これを1 5万円(税抜き)で仕入れていると認められる(前記(2)ア(イ))。 そして,原告は,24か月経過により仕入代金の回収が終わると主 張するが,消費税込みの仕入代金は15万7500円であるから,レ ンタル収入の合計額が仕入代金を超えるのは,25か月経過後である。 また,レンタル開始時期は,甲44の資料2に記載された出荷日頃 20 と認めるのが相当である。なお,乙4には,各商品に係る個別の納品 日・納品場所が記載されており,具体的なレンタル開始時期を示して いるとも思えるが,その正確性に疑問があるので(例えば,納品日に ついて,機械 NO(製造番号と同一)042の商品は,6月12日欄 と8月18日欄の双方に記載があり,同225の商品は,8月18日 欄と10月20日欄の双方に記載があり,同243の商品は,8月2 9日欄と9月30日欄の双方に記載がある等),採用できない。 したがって,正確なレンタル開始時期は不明であるところ,およそ のレンタル期間は,平成21年5月出荷分について28か月(39台), 同年6月出荷分について27か月(81台) 同年7月出荷分について , 26か月(75台)と認めるのが相当である(甲44の資料1) また, 。 同年8月以降の出荷分については,25か月を経過していないため, 利益が出ているとは認められない。 したがって,レンタルに係る利益は,212万4000円となる。 計算式:6,000×39×(28−25)=702,000 6,000×81×(27−25)=972,000 6,000×75×(26−25)=450,000 (ウ) 寄与割合 本件フィルター1を使用した浄水器がレンタルに供されるに当たり, 消費者が,浄水器の内部に装着された本件フィルター1を取り外して まで確認することは考えにくく(装着されたままでは,本件フィルター に付された被告標章1−1,同2を確認しづらい場合がある〔甲3の 2〕 ) 。 ,被告大倉が,レンタルにあたり,フィルターの製造元を示して いることを窺わせる証拠はない(甲34は作成の目的も使用の事実も 明らかではないし,甲35はフィルターの製造元の表記ではない。 。 ) したがって,本件フィルター1を使用した浄水器のレンタルによる売 21 上げに対する,被告標章1−2の寄与の割合は低いといえる。 しかしながら,被告大倉は,逆浸透膜浄水器の説明において,浄水 器内部のフィルターの状況を明らかにした上で,ミネマリンフィル ターの使用を謳っているから(甲33の2。なお,表紙には「社内資 料」との表記があるが,後に公表されたと考えられる。 ,消費者への ) レンタルによる売上げに対する,被告標章2の寄与は否定できない。 そして,前記(2)ア(エ)と同様,被告標章1−1及び被告標章2の寄 与割合は,合計2%とみるのが相当である。 (エ) 原告の損害 以上のとおりであるから,原告の損害額は,4万2480円と認め られる。 〔計算式〕2,124,000×0.02=42,480 イ 被告商品2,3について (ア) 販売について a 販売台数 被告大倉が本件フィルター2を使用した本件浄水器3を593台 販売したことは,当事者間に争いがない。 b 原告の損害 (a) 商標法38条2項に基づく請求(主位的請求)について 原告は,被告大倉は,本件フィルター2を使用した本件浄水器 3を34万円以上で販売していると主張するが,これを認めるに 足りる証拠はない。 また,被告大倉は,本件フィルター2を使用した本件浄水器3 を,その分譲するマンションや戸建て住宅に標準装備して,浄水 器付き住宅として販売しているところ,住宅の販売価格や,販売 価格における浄水器の占める割合を認めるに足りる証拠もない。 22 したがって,商標法38条2項に基づく原告の請求は認められ ない。 (b) 商標法38条3項に基づく請求(予備的請求)について 前記(a)のとおり,本件フィルター2を使用した本件浄水器3の 販売により被告大倉が得た利益額は不明であるが,その売上額は, 仕入価格である税込み28万5600円に販売台数である593 台を乗じた1億6936万0800円を下回らないといえる。 そして,前記(2)イ(エ)の事情を考慮すれば,本件商標1−2, 同1−3,同2,同3の実施料率は,合計3%を相当と認める。 したがって,商標法38条3項により算定される原告の損害は, 508万0824円となる。 〔計算式〕169,360,800×0.03=5,080,824 (イ) レンタルについて a レンタル台数 甲44の資料2には,本件フィルター2を使用した本件浄水器3 のうち,表番号84,85,214,215の4台は「EX」であ る旨の記載があるところ,本件フィルター2を使用した本件浄水器 3のうち,CVQ−2000が販売用であり,CVQ−2000E Xがレンタル用であることは,当事者間に争いがない。 また,4台がレンタルされたとすれば,被告大倉の総仕入台数が 前記(2)イ(ア)のとおり597台であり,販売台数が前記(ア)aのと おり593台であることとも整合する。 したがって,被告大倉のレンタル台数は4台であると認められる。 b 利益額 被告大倉は,本件フィルター2を使用した本件浄水器3を,27 万2000円(税抜き)で仕入れ,月額1万3650円でレンタル 23 しているが,レンタル料は消費税込みの金額であることが窺われる (甲11)。 そして,原告は,20か月経過により仕入代金の回収が終わると 主張するが,消費税込みの仕入代金は28万5600円であるから, レンタル収入の合計額が仕入代金を超えるのは,21か月経過後で ある。 また,CVQ−2000EXの出荷日は,それぞれ,平成21年 2月9日(1台),同月19日(1台),同年4月6日(2台)であ るところ(甲44の資料2),乙3によれば,レンタル開始時期は, 同年2月12日,同月21日,同年4月27日,同年7月5日と認 められるから,レンタル期間は,31か月(2台) 29か月 , (1台), 26か月(1台)である。 したがって,レンタルに係る利益は,42万9000円となる。 〔計算式〕13,000×2×(31−21)=260,000 13,000×1×(29−21)=104,000 13,000×1×(26−21)=65,000 c 標章の寄与割合 (a) 本件フィルター2について 本件フィルター2を使用した本件浄水器3がレンタルに供され るに当たり,本件フィルター2が消費者の目に触れることはない と考えられるし,被告大倉が,レンタルにあたり,フィルターの 製造元を示していることを窺わせる証拠はない。したがって,被 告標章1−2の寄与はほとんどないと考えられる。 しかしながら,前記ア(ウ)で述べたとおり,被告大倉は,逆浸 透膜浄水器の説明において,浄水器内部のフィルターの状況を明 らかにした上,ミネマリンフィルターの使用を謳っているから, 24 消費者へのレンタルにあたっても,被告標章2の寄与があると認 められる。 (b) 本件浄水器3について 浄水器は,通常は,購入にあたり製造・販売元が重視される商 品といえるが,被告大倉が,レンタルにあたり,その製造元を示 していることを窺わせる証拠はない。また,被告標章1−3は, 本件浄水器3の背面下部に付されており(甲5の7) レンタル前 , には,消費者の目に触れることは少ないと考えられる。 他方,被告大倉は,遅くとも平成21年7月14日までは,レ ンタルに供している逆浸透膜浄水器として,被告標章3が付され た浄水器の写真を使用しており(甲19),被告NMT販売も,平 成22年12月15日時点において, 「クリスタル・ヴァレー」の 導入企業として被告大倉を紹介しているから(甲26) 本件浄水 , 器3のレンタルによる売上げにあたっては,被告標章3の寄与が あると認められる。 また,被告標章3は,本件浄水器3の正面上部中央に付されて おり,目につきやすい位置に付されているといえる(甲5の1)。 (c) 寄与割合 以上を総合すれば,本件フィルター2を使用した本件浄水器3 のレンタルによる売上げに対する被告標章1−2,同1−3,同 2,同3の寄与割合は,前記(2)イ(エ)と同様,合計15%とみる のが相当である。 d 原告の損害 以上のとおりであるから,原告の損害額は,6万4350円(1 円未満切捨て)と認められる。 〔計算式〕429,000×0.15=64,350 25 ウ まとめ 以上のとおりであるから,被告大倉の行為による原告の損害は,前記 ア(エ)の4万2480円,前記イ(ア)b(b)の508万0824円,前記 イ(イ)dの6万4350円の合計額である518万7654円となる。 3 差止請求について 被告らは,被告標章1−2,同2,同3について,過去に使用したことが あるとの限度で認めており,また,甲43の資料1によれば,本件フィルター 2を使用した本件浄水器3が製造されていたのは平成21年12月頃まで であると認められる。したがって,被告らは,現在は,被告商品2,3に被 告標章1−2,同2,同3を使用していないと考えられるが,将来における 商標権侵害のおそれまでは否定できないので,原告の差止請求を認めること とする。 もっとも,被告NMT販売が,被告各商品を貸し渡していた事実は認めら れないから,被告NMT販売に対する差止請求のうち貸渡しに係る部分には 理由がない。 第5 結論 以上のとおりであるから,原告の請求は,主文記載の限度において理由が ある。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁 判 長 裁 判 官 山 田 陽 三 裁 判 官 達 野 ゆ き 26 裁 判 官 西 田 昌 吾 27 (別紙) 商品目録 1 浄水器(型番GW−1500EX)内の浄水フィルター 2 浄水器(型番CVQ−2000,同EX)内の浄水フィルター 3 浄水器(型番CVQ−2000,同EX) 以 上 28 |