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関連審決 無効2014-890032
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201514100 審決 商標
取消2011300881 審決 商標
無効2015890092 審決 商標
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事件 平成 27年 (行ケ) 10073号 審決取消請求事件

原告株式会社佐藤園
訴訟代理人弁理士入江一郎
被告養命酒製造株式会社
訴訟代理人弁理士松原伸之 橋本千賀子 塚田美佳子 長谷玲子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2015/10/29
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
特許庁が無効2014-890032号事件について平成27年3月27日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,商標登録無効審判請求に基づいて商標登録を無効とした審決の取消訴訟 である。争点は,商標法4条1項15号該当性の有無である。
1 特許庁における手続の経緯 原告は, 「養命茶」の文字を標準文字により表して成る商標(以下「本件商標」という。)について,指定商品を,第30類「茶飲料,粉末茶,植物を主原料とする混合茶,穀物を主原料とする混合茶,植物と穀物を主原料とする混合茶,その他の混合茶,その他の茶,茶を加味した菓子,茶を加味したパン,茶を主原料とするブロック状・顆粒状・粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状又はゼリー状の加工食品,茶エキスを主原料とするブロック状・顆粒状・粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状又はゼリー状の加工食品,穀物を主原料とするブロック状・顆粒状・粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状又はゼリー状の加工食品,穀物エキスを主原料とするブロック状・顆粒状・粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状又はゼリー状の加工食品,茶を加味した穀物の加工品」として商標登録(出願日:平成23年12月12日,登録査定日:平成25年12月6日,登録日:平成26年1月17日。登録第5643664号。以下「本件商標登録」という。甲1)を受けた商標権者である。
被告は,平成26年5月7日,本件商標登録が,被告の下記の商標(以下「引用商標」という。)との出所の誤認混同を生ずる等として,本件商標登録につき無効審判の請求をした(無効2014-890032号)ところ,特許庁は,平成27年3月27日,「登録第5643664号の登録を無効とする。」との審決をし,その謄本は,同年4月4日,原告に送達された。
(引用商標) 2 審決の理由の要点 審決は,次のとおり,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するとして,本件商標登録を無効とした。
(1) 引用商標の構成中の「酒」の部分は,被告の製造・販売に係る薬草を原料とする薬用酒(以下「被告商品」という。)を表す普通名称といえるものであり,それのみでは自他商品の識別標識として機能することができないものであるから, 養 「命」の文字が,基幹部分として記憶されるものである。そうすると,引用商標は,「養命」の文字と商品の普通名称によって構成されるものとして把握されるのであって,たとえ,全体として使用され,著名になったものであったとしても,これに接する取引者,需要者は,前半部の「養命」の文字部分にも着目して,引用商標を被告商品を表すものとして認識しているとみるのが相当である。
一方,本件商標は, 「養命」の文字と商品の普通名称等「茶」の文字によって構成されるものとして把握されるのであって,このような商標に接する取引者,需要者は,本件商標の全体をもって取引に資するほか,前半部の「養命」の文字部分にも着目することが少なくない。
そして,引用商標は,本件商標の登録出願前から,被告商品に使用されて,取引者,需要者の間において著名なものとなっており,それが本件商標の登録査定時においても継続している。
本件商標と引用商標は,上記のとおり,いずれも「養命」の文字と商品の普通名称の文字によって構成されていると把握されるものであって,しかも,商品の出所を識別する場合には,構成中の「養命」の文字部分に取引者,需要者が着目することが少なくないといえる。
(2) また,本件商標の指定商品は,前記1のとおり,茶を原料とする加工食品を含むものであり,他方,被告商品は,薬草等を原料とするいわゆる薬用酒であり,いずれも健康の維持や回復を目的とする商品であり,本件商標の指定商品と被告商 品は,健康の維持という用途又は目的において関連性があるといえる。そして,双方の商品とも,昨今の健康志向ブームに伴って,健康維持に関心のある者を需要者層とするものであり,これらの商品は,薬局や,薬品を中心に雑貨などを取り扱うドラッグストアにおいて取り扱われる商品であるから,販売店,すなわち取引者層を共通にするものであり,本件商標の指定商品と被告商品とは密接な関係を有するといえる。
(3) そうすると,本件商標をその指定商品に使用した場合,それに接する取引者,需要者は,本件商標があたかも,被告等の業務に係る商品であるかのように誤認,混同し,その出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(引用商標及び本件商標から「養命」部分を分離抽出した認定の誤り) (1) 引用商標について 審決は,引用商標から,構成中の「養命」の文字が,基幹部分として記憶されると認定したが,引用商標は,以下のとおり,外観,称呼及び観念のいずれからみても一体のものとしてのみ認識されるものであり,誤りである。
ア 審決は,引用商標を「ややデザイン化した」書体であると認定したが,以下の図から明らかなように,ややデザイン化したといった程度ではなく,長年の使用による著名性も相まって,一種独特の筆文字で書された一連一体の「養命酒」を成している。すなわち,引用商標の書体は,本来「とめ」る部位を「払う(流す)」ように書し(下図○印参照),本来「払う(流す)」部位を「はね」るように書し(下図△印参照),本来「払う(流す)」部位を「とめ」るように書し(下図□印参照),横線をややいびつに書し,全体として,震えるように描かれ,弱々しさ感を持った一種独特の筆文字で書した意匠的な外観を有する一連一体の「養命酒」である。
また,外観上「養命」と「酒」の文字から成るといえるが, 「養命」という成語はなく,「養命」部分が特に強調されたものでもない。
「養命酒」の3字は,3字全部が相まってその外観とともに需要者,取引者の印象に残るものであるから, 「養命」を恣意的に基幹部分などと称して抽出できるようなものではない(外観上の一体性)。
イ 引用商標の「酒」の部分を省略して使用する特別の事情もないばかりか,引用商標から生ずる称呼も4音と少なく,一種独特の統一感のある筆文字で書された外観の強い印象と長年の使用による著名性も相まって,淀みなく一連に「ヨーメイシュ」と称呼されるから, 「酒(シュ)」の部分を分離して, 「養命」のみを抽出した称呼はなされず,一連一体の「ヨーメイシュ」との称呼のみが生ずる(称呼上の一体性)。
ウ 引用商標は,長年の使用による著名性により, 「命を養うお酒」≒「被告の『薬用酒,薬味酒』のブランドである養命酒」≒「商標権者の業務に係る商品『薬用酒』の商標としての『養命酒』」の観念を獲得しているのであり,長年の使用による著名性により,「命を養うお酒(命を養う生薬が溶け込んだお酒)」の意味合いを想起させ, 「命を養う酒」として常に一連一体の「養命酒」のみが観念される(観念上の一体性)。
エ 被告商品は, 「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬事法」という。)」の適用対象となる第2類医薬品(類似群コ ードは 01B01)であり,日本酒,人を酔わせる飲料の総称としての「酒(類似群コードは 28A01〜28A04)」ではないから,引用商標の構成中後半の「酒」が被告商品の普通名称ということはできない。
オ 被告商品の類似群コード 01B01 において,養命製薬株式会社(以下「養命製薬」という。)と被告との共有,又は,養命製薬の「養命」との登録商標(甲93,94,114)が存在すること,また,引用商標と同一商標の「養命酒」の防護商標(登録第800892号防護第02号。甲95)の登録後,養命製薬又は養命製薬・被告の共有に係る「養命」 (甲94,114)が商標法4条1項11号及び15号の適用を受けずに登録されていることから,引用商標は,一連一体の一つにまとまった商標として不可分であり,引用商標から「養命」を抽出してこれを基幹部分とすることは,矛盾である。
カ 本件商標の登録査定時において,引用商標の権利者と,この権利者と異なる第三者との間で,「養命」の語を含む商標が,薬剤(類似群コード 01B01),薬用入力剤(類似群コード 01B01),もぐさ(類似群コード 01B01)等の商品に多数使用され,流通しており,また, 「養命」 (甲93,94,114)「養命」 , (甲77),「養命ふとん」(甲78)「養命泉」 , (甲79)「養命わた」 , (甲80)「ようめい」 ,(甲81)等のように,併存登録されていることからしても,引用商標は,不可分一体であり,ここから「養命」を分離することはできない。
キ 引用商標は, 「養命酒」に独創性があるのであって,構成中の「養命」の文字は,例えば,大永3年(1523)開創の「養命寺」 (静岡県藤枝市所在。甲100),天正年(1573〜1592 年)創建の「養命寺」(神奈川県藤沢市所在。甲101)において,引用商標が使用された400年前よりも古い時期から使用されており,目新しくなく独創性もない。また,本件商標登録出願時及び登録査定時において,例えば, 「字通」 (1996 年 10 月 14 日 株式会社平凡社発行 白川静著。甲121)「大 ,漢和辞典巻十二」(平成2年 3 月 10 日 株式会社大修館書店発行 諸橋轍次著。甲122)「学研 , 漢和大辞典」(1995 年 4 月 1 日 株式会社学習研究社発行 藤堂 明保編。甲123)「広説佛教語大辞典 , 下巻」 (平成 14 年 9 月 30 日 東京書籍株式会社発行 中村元著。甲124)に示すように, 「養命」の文字は,辞書に掲載されているものでもあり,引用商標の構成中の後半部の「酒」の文字部分が,被告商品を表す普通名称といえる理由により,引用商標の構成中から「酒」を分離することはできない。
(2) 本件商標について 審決は,本件商標の構成中「養命」の文字部分は,特定の意味を有する既成語とは認められないものであり,その全体として特定の熟語的意味合いを看取させるような事情は見出し得ない一方で,その構成中の後半部の「茶」の文字部分が普通名称として親しまれたものであり,その指定商品は,第30類に属する前記第2,1のとおりの商品であるところ,本件商標において「茶」の文字部分は,商品の普通名称や,品質(原材料)を想起させる場合が少なくない語であることから,自他商品の識別標識として強力に機能するということはできないと認定したが,以下のとおり誤りである。
ア 審決が述べるように, 「養命」が「特定の意味を有する既成語と認められないもの」であれば, 「養命」と「茶」を分離して考察すべき合理的理由はなく,むしろ「養命茶」と一連一体不可分の標章としてみるのが自然であり,合理的である。
本件商標は, 「養命」と「茶」の文字を含むが,厳密には標準文字の漢字「養」と同書体同大の標準文字の漢字「命」と同書体同大の標準文字の漢字「茶」の3文字を,横一行に一連一体に書して成る外観を有し,つまり,同じ書体,同じ大きさ,等間隔で書された漢字3文字をもって,外観上まとまりよく一体的に表されている(外観構成上の一体性)。
また,本件商標から生ずる称呼も4音と少なく,淀みなく一連に「ヨーメイチャ」と称呼されるものである(称呼上の一体性)。
さらに,本件商標「養命茶」の各文字部分は,それぞれが一体不可分のものと認識され, 「命を養うお茶」の意味合いを想起させる観念(観念上の一体性)を生じさ せるものであり,本件商標は一気一連に「ヨーメイチャ」とのみ称呼され, 「養命茶」は,自他商品の識別標識として強力に機能するものである。
イ 以下の登録例によれば,本件商標は,一連一体の「養命茶」として不可分であるといえる。
すなわち,本件商標の登録後,本件商標の類似群コードと同じ 29A01 30A01 において,「養命」(商願2012-63898。甲26)は,本件商標が拒絶理由の引用商標(商願2011-89144)として挙げられていた(甲27)にもかかわらず, 「茶」の有無により非類似商標と認定されて登録に至っている(登録第5676474号。甲125)。また,本件商標の類似群コードと同じ 29A01 30A0 32F15において, 「養命茶」 (登録第5643664号。甲116)と「養命」 (登録第5682287号。甲117)とが,併存登録されている。これは,先願である本件登録出願(甲1,116)が,一連一体の「養命茶」であり,後願の「養命」 (甲125)と差別化されるからである。
ウ 「養命茶」における「茶」の部分に「茶の若葉を採取して製した飲料」の意味があるとしても,本件商標は,上記のように一連一体不可分のものであるから,茶の部分のみの識別力を考察する意義はなく「養命茶」全体の識別力を考察すべきである。このことは, 「快び(称呼 カイビ)」などの登録の後に, 「快美茶(称呼 カイビチャ)」などが登録されているなど,その構成中に「茶」を有していたとしても,構成中に茶を含まないものと併存して登録された例があるなど,非類似商標と扱われている登録例や審決例が複数存在していることからも明らかである。
エ また,本件商標の構成と同様に「養命」の文字の後に「普通名詞の一語」を有する商標又は標章は,「ルチン養命丸,快通養命丸,養命丸」(甲63)「養命 ,散」(甲64)「マヤ養命錠」 , (甲65)「養命印」 , (甲66)「養命泉」 , (甲67,79)「養命ふとん」 , (甲68,78)「養命そば,養命うどん」 , (甲69,97),「養命わた」(甲80)「養命球」 , (甲99)に加え,前記した養命寺のほか,佐賀県唐津市,岡山県新見市,島根県出雲市,和歌山県田辺市,静岡県島田市,愛知県 豊川市に所在する「養命寺」 (甲102)「養命堂」 , (甲103)「養命の里」 , (甲104)「養命の滝」 , (甲105)等と多方面において数多く使用され,これらのいずれもが「養命云々」と一連不可分に称呼,認識されていることに鑑みると,本件商標は,常に「養命茶」のみを以て取引に資するものであって, 「養命」部分のみが取引において着目されることはない。
2 取消事由2(混同を生ずるおそれの判断の誤り) (1) 前記1に述べたように,本件商標と引用商標とは,識別力を発揮する部分は,「養命」ではなく,「養命茶」と「養命酒」であり,通常の取引者,需要者が,上記指定商品を購入するに当たり払う注意力の程度等から見て,差別化でき,両商標は,相紛れるおそれのない非類似の商標であって,出所の混同のおそれのない別異の商標として容易に看取,認識されるものである。
(2) 被告商品と本件商標の指定商品である「茶を原料とする加工食品を含むもの」とが同一ドラッグストアにおいて取り扱われる商品であるとしても,被告商品は,「薬用養命酒(第2類医薬品)」で,薬事法が適用される商品であり,薬事法57条の2第1項「薬局開設者又は医薬品の販売業者は,医薬品を他の物と区別して貯蔵し,又は陳列しなければならない。,同条第3項「薬局開設者,店舗販売業者 」又は配置販売業者は,一般用医薬品を陳列する場合には,厚生労働省令で定めるところにより,第1類医薬品,第2類医薬品又は第3類医薬品の区分ごとに,陳列しなければならない。」との規定の適用を受けるものである。
したがって,上記のように,本件商標の指定商品と被告商品は,同一ドラッグストアで販売されるとしても,分離した陳列状態(異なる陳列棚に陳列)において需要者が接するから,密接な関係があるとはいえない。
(3) また,取引の実情をみると,被告商品は,いわゆる薬用酒として,赤い箱に入った瓶で漢方的意味合いを持たせて販売されている。しかも,被告商品は,胃腸虚弱 ,食欲不振,血色不良,冷え症,肉体疲労,虚弱体質,病中病後に対する効 能を有する薬として服用するものであって,アルコールを含む商品である。これに対して,本件商標の指定商品は,薬事法が適用される医薬品ではなく,アルコールを含まない「茶飲料,粉末茶等のアルコールを含まない嗜好品としての茶そのもの,茶を主原料とするブロック状・顆粒状・粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状又はゼリー状の加工食品等の効能をうたえない健康補助食品,茶を加味した菓子,パン等の食材」である。
上記のように,被告商品と本件商標の指定商品「茶を原料とする加工食品を含むもの」とは,法律により区別して販売することが義務付けられているだけでなく,被告商品は,400年以上に渡る「養命酒」での使用により,漢方薬をイメージする赤い箱に入った瓶商品のイメージが定着している。
そのような商品同士を同じ陳列棚に並べて配することは,法律上も常識的にもあり得ないものである。しかも, 「第一類医薬品以外で,副作用等によって,日常生活に支障をきたすほどの健康被害が生じるおそれがある医薬品である被告商品の第2類医薬品」は,健康に影響を及ぼす商品であるため,需要者は慎重に商品を吟味して購入するものである。
加えて,被告商品は,アルコールを含む商品であり,アルコールを受け付ける体質の成人に限る特殊性を有する商品でもあり,需要者を共通にしない。
したがって,商品を購入するに当たって,購入者が,アルコールを含む被告商品とアルコール全く含まない本件商標の指定商品とを間違えるおそれは皆無というべきである。
以上のような取引の実情を勘案すれば,両者は,ドラッグストアにおいて取り扱われている商品ではあるが,密接な関係を有するとはいえないものである。
(4) 以上によれば,取引者,需要者は,その出所について混同を生ずるおそれはない。
被告の反論
1 取消事由1に対し (1) 原告の主張1(1)に対し ア 商標法4条1項15号は,同号該当の条件として「類似」の観念は全く必要とされておらず,ここで問題となるのは,「混同を生ずるか否か」である。
よって,引用商標及び本件商標において,「養命」がそれぞれ「酒」「茶」と一連一体に結合するか否かという技術的な問題は最重要とはいえず,むしろ, 「養命」の部分が,商標全体に対して支配的な印象を与えるか否かという点を重視すべきである。
イ 引用商標は,特に変わった書体,図案化を施した商標ではなく,通常の毛筆体で書されたものであるから,外観構成一体であるとはいえない。
また,引用商標は,Aが独自に創造し,採択したユニークな造語であって,既存の語ではなく,このことは,東京都立中央図書館所蔵の辞書に関する字句調査(以下「本件調査」という。)の結果(乙96,97,117)からも明らかである。したがって,被告が出所表示のために使用している造語商標である「養命」からは,一定の観念を生じるものではない。
ウ また,一般消費者に対するアンケート(以下「本件アンケート」という。
)の結果(乙131)からも,消費者は, 「養命酒」の中で「養命」の部分から強い印象を受けており, 「養命」と聞けば「養命酒」を思い出すことが明らかである。そうすると,本件商標を見聞きする需要者は,その構成中「養命」の部分から被告を思い浮かべ,本件商標を付した商品が被告と何らかの関係があるものと誤認するものである。
エ 原告は,被告と養命製薬の共有に係る「養命」 (登録第466463号及び登録第4865159号。甲93,94)が,被告の「養命酒」「養命」と併存 ,登録されている事例をもって,引用商標の要部は「養命」ではないと述べる。
しかし,上記「養命」 (登録第466463号)は,昭和30年に養命製薬が登録した商標であり,被告は,その後,「養命酒」(登録第836699号)を昭和44 年に登録した。養命製薬と被告との間では,出所の混同を防ぐよう互いに協力する旨の合意がされている。
また,商標が併存しているということは,特許庁の審査基準上においては非類似と判断されたことかもしれないが,商標に蓄積する信用,イメージは実際の取引社会において商標が使用されていくうちに刻々と変化していくものである。昭和44年の時点においては,上記2商標は特許庁の審査という限定された場所では非類似と判断されたかもしれないが,その後,引用商標は著名性を獲得し,類似範囲を超えて混同を生じるほど認知度を広げたことから,当事者間の合意により,相互に出所の混同を生じないようにしたものである。このことは,特に手当をしないならば,「養命」 「養命酒」 と との間では出所の混同が生じるということを示すものである。
よって,古い商標登録が特許庁の原簿において併存しているということのみをもって,「養命」と「養命酒」との間で出所の混同が生じないということはいえない。
また,上記併存例から直ちに「養命酒」のうち「養命」が基幹部分ではないということもいえない。
オ 原告は,第三者が「養命」を含む語を登録している例を挙げる。
しかし,被告は,これら第三者による「養命」を含む商標の使用に対し,特にその商品が薬品,食品関連である場合には,必ず警告等の対応を行い,それらの商品が市場において被告商品との間で出所の混同を生じることがないように対処している。被告が絶えずその商標「養命酒」「養命」を守るために行っている努力の結果,取引社会において出所の混同が生じていないのである。
(2) 原告の主張1(2)に対し 原告は, 「○○茶」から成る商標と「○○」とが併存している例についてるる述べている。しかし,これらのいずれにおいても「○○」の部分は特に周知・著名なものではなく,本件とは事例を異にするものである。
本件の場合, 「その部分が取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合」に該当する。本件商標及び 引用商標のいずれにおいても,引用商標の基幹部分である「養命」があまりに強い印象を与え,支配的であるから,全体として一体に見ることはできない。
2 取消事由2に対し 本件商標を実際に指定商品に使用した場合には,引用商標を使用した商品との間で出所の混同が生じる蓋然性が極めて高い。このことは,本件アンケートの結果から明らかである。
特に,被告は, 「養命酒」のほか「養命水」の商標を使用したミネラルウォーターも販売しており,また,被告の運営するオンラインショップである「Yomeishuオンラインショップ」において,サプリメントをはじめ,調味料,加工食品,飲料等の広い範囲の飲食料品を販売している。さらに,被告の製品である「ハーブの恵み」にも, 「養命酒製造株式会社」の表示をしている。このような状況からすれば, 「養命」の語を含む商標を商品に使用した場合,被告が需要者によく知られていることから,被告が多角経営の一環として新製品を発売したと誤認され,出所について混同を生じる。
また,本件商標の指定商品である「茶を原料とする加工食品等」と「薬用酒」とは,いずれも広い意味でセルフメディケーションの用途で飲用される商品であり,需要者層が重なる。また,本件においては,引用商標が被告の社標であることもあって,いわゆる広義の混同が生じるかどうかが問題であるが,広義の混同の有無を判断する場合には時と所を別にする離隔的観察を行う。よって,販売地において同じ陳列棚で販売されないからといって,混同が生じないとはいえない。
さらに,原告が認めるとおり,これらの商品は同一のドラッグストアで販売されることがあり,販売地,需要者を共通にするものであるから,両者の間で混同は生じやすい。
以上により,審決の判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という。)に使用したときに,当該商品等が他人の商品又は役務(以下「商品等」という。)に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品等が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(以下「広義の混同を生ずるおそれ」という。)がある商標を含むものと解するのが相当である。そして, 「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知・著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである(最高裁平成12年7月11日判決・民集54巻6号1848頁)。
そこで,本件においても,上記の見解に立って,商標法4条1項15号該当性につき判断することとする。
(1) 引用商標は,本件商標の登録出願時及び査定時において,被告の製造・販売に係る「養命酒」との薬用酒として著名であり,長期間,日本全国において,広く一般大衆に認識されていたことについて,当事者間に争いはない。証拠(甲14〜16,20,21)によれば,1603年,信州伊那のAが,被告商品の起源となる薬用酒を創造し,これを「養命酒」と名付け,以来,その製造販売が継続されてきたものであるところ,同人の事業を継承する被告は,大正12年から全国に「養命酒」の名称で被告商品の販路を広げ,昭和27年からラジオによる広告宣伝を行い,昭和39年以降は,ゴールデンタイムに放映されるテレビ番組に著名人を使用したコマーシャルを提供し,各種雑誌,新聞記事,著書にも多数採り上げられ,そ の結果,テレビコマーシャルによる宣伝を中心に高い知名度を獲得し,平成24年8月に被告が実施した調査によれば,被告商品に対する一般需要者の認知率は95.5%であり,その著名性の程度は極めて高いものであったと認められる。
引用商標の外観は,前記第2,1のとおり, 「養命酒」を漢字で横書きにしたややデザイン化された毛筆体から成るものであるが,一語一語は同じ大きさの同一書体である。この構成中の「酒」は,普通名称としての酒(薬用のものを含む。)を示すものとして認識され,この「酒」部分の自他商品の出所識別力は乏しく,出所識別標識として支配的な印象を与えるものではない。一方,引用商標中の「養命」の部分は,その漢字の意義から, 「命を養う」との意味合いを生じさせるものであり, 「養命酒」が薬用酒の中でも極めて著名なブランドとして通用していたことに照らすと,引用商標中の「養命」部分は,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。そうすると,引用商標が, 「養命酒」として著名であって, 「養命」として著名性を獲得しているものでないとしても,引用商標が一連一体の「養命酒」(ヨウメイシュ)としてのみ観念されるとはいえず,「養命」部分を基幹部分として認識するものと認められる。したがって, 「ヨウメイシュ」のほかに「ヨウメイ」との称呼も生じる。
他方,本件商標について見ると,漢字横書きの標準文字から成るものであって,本件商標中の「茶」の部分は,指定商品である茶飲料や茶を加味した加工品等において使用される際には,単に,指定商品そのものか,その加工品等の品質,性状を示すものと捉えられるのであるから,普通名称,あるいは,商品の品質,性状を示すにすぎないものであって,自他商品の出所識別力は乏しく,出所識別標識として支配的な印象を与えるものではない。また,簡易迅速性を重んずる商品取引の実際においては,その商品に付された商標の一部分だけによって簡略に呼称,観念することがあるから,本件商標においても, 「養命」部分を呼称,観念することもあり得るものである。
そうすると,本件商標は, 「養命」の文字と商品の普通名称の文字によって構成さ れるものとして把握され,このような商標に接する取引者,需要者は,本件商標の全体をもって取引に資するほか,前半の「養命」の文字部分に着目することが少なくない。したがって,「ヨウメイチャ」のほか,「ヨウメイ」との称呼も生じる。
そうすると,本件商標と引用商標とは,その基幹部分である「養命」において,外観上実質的に同一であり,称呼「ヨウメイ」においても同一の商標であるといえる。そして,「養命」の観念においては,「養生」や「健康」を連想させる「命を養う」との観念が生ずるほか,後記のとおり,被告商品と関連性のある指定商品に用いられた場合には,極めて著名な薬用酒である「養命酒」と同一又は緊密な関係にある営業主の業務に係る商品との観念も生ずるものと解される。
以上によれば,引用商標及び本件商標は,冒頭の2文字を上記のとおり基幹部分といえる「養命」が占めるものであり,末尾に漢字1文字が付されたものである点で,外観上の類似性がある。また,称呼について, 「ヨウメイ」部分の称呼が共通しており,末尾に付された語も「シュ」と「チャ」で類似しており,全体としても近似した印象を与える。さらに,引用商標は「命を養う酒」,本件商標は「命を養う茶」という観念が生じ,両商標とも「命を養う」飲料のイメージで共通し,上記のとおり,極めて著名な引用商標の基幹部分を含んでいることから,本件商標について,「養命酒」と同一又は緊密な関係にある事業主の製造販売に係る茶,あるいは茶風味のものといった観念が生じ,観念においても近似するといえる。
したがって,引用商標と本件商標は,類似しているといえる。
(2) 本件商標の指定商品等には,茶飲料,植物・穀物等を主原料とする混合茶などの飲料となるものが含まれる一方,被告商品は,薬草等を原料とする薬用酒であり,健康志向の飲料という点において共通しており,また,本件商標の指定商品のうちには茶を原料とする加工品が含まれ,健康維持に関心のある者を需要者層とするものであって,これらの商品は,薬局や,薬品を中心に雑貨などを取り扱うドラッグストアにおいて取り扱われる商品であるから,取引者層を共通にするものであって,本件商標の指定商品と被告商品とは密接な関係を有するといえる。
そして,これらの商品の購入者が,特別な専門的知識経験を有しない一般消費者であることからすると,当該商品を購入するに際して払われる注意力は,さほど高いものではない。
以上のとおり,本件商標は,引用商標の基幹部分である「養命」をその構成の一部に含むものであり,当該部分の自他商品識別機能が高いと認められる一方,養命」 「部分の末尾に普通名称が付加されたにすぎないことに照らすと,前記のとおり,原告が取引者及び需用者を被告商品と共通する本件商標を指定商品に使用した場合,これに接した取引者,需要者は,極めて高い著名性を有する「養命酒」の表示を連想し, 「茶」という飲料と合わせて用いられる「養命茶」とは,養命酒の姉妹商品として,被告の出所に係るものと誤認するか,あるいは,当該商品が被告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され,商品の出所につき誤認を生じさせるものと認められる。
そうすると,本件商標は,商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に当たると解するのが相当である。
2 取消事由1(引用商標及び本件商標から「養命」部分を分離抽出した認定の誤り)について (1) 原告は,引用商標及び本件商標から「養命」部分を分離抽出したことについて,審決の判断は誤りであると主張する。
しかし,本件において判断の対象となるのは,商標法4条1項15号の「混同を生ずるおそれ」の有無であり,前記1に述べたとおり, 「当該商標と他人の表示との類似性の程度」のほか, 「他人の表示の周知・著名性及び独創性の程度」等の種々の事情に照らし,総合的に判断されるものであるから,商標法4条1項11号の判断に当たっては,必ずしも類似性が明白でない商標であっても,同項15号に該当することが十分にあり得るものである。
本件において,審決は, 「養命」を分離して,本件商標と引用商標とを対比したわけではなく,「混同を生ずるおそれ」の有無を判断するに当たっての一要素として,取引者,需要者が「養命」に着目することを参酌したものであるから,原告が,商標法4条1項11号における商標の類否判断を前提に,この判断と異なる審決の判断の誤りを述べたものであるとすれば,上記主張は,そもそも失当である。
(2)ア 原告は,引用商標が,一種独特の筆文字の同じ書体,同じ大きさ,等間隔で書された漢字3文字をもって,外観上,まとまりよく一体的に表されているものであるから,「養命」部分を抽出することはできない旨主張する。
しかし,引用商標は, 「養命酒」を漢字で横書きにしたややデザイン化された毛筆体から成るもので,一語一語は同じ大きさの同一書体であり,意匠的な図案として,3文字の配列の中から一部を取り出すことができないような特殊なものではない。
そもそも,引用商標は,被告商品の名称として永年使用された結果,高い著名性を獲得したものであり(この点は当事者間にも争いがない。,そのデザインや書体の )独自性に着目する原告の主張は失当である。
イ また,原告は,被告の長年の使用による著名性により,引用商標が「命を養うお酒」の意味合いを想起させ,この観念から「酒」を分離して「養命」のみが考察されることはなく,常に一連一体の「養命酒」のみが観念されると主張する。
しかし,原告は,上記の主張をする一方,周知性を獲得していない本件商標について,「命を養うお茶」を想起させるものであると主張しており,原告自身が,「養命」の末尾に「茶」などの飲料等が付加された場合に, 「命を養う○○」といった程度の観念が生じることを自認しているといえる。
したがって,引用商標が一連一体の「養命酒」であって初めて何らかの観念を生じるというものとはいえず, 「養命」及び「養命酒」との観念が生じるものと解される。
ウ 原告は,被告商品は,薬事法の適用対象の第2類医薬品(類似群コードは 01B01)であり,日本酒,人を酔わせる飲料の総称としての「酒(類似群コード は 28A01〜28A04)」ではないから,引用商標の構成中後半の「酒」が被告商品の普通名称ということはできないと主張する。
しかし,厳密には,薬用酒と嗜好品としての「酒」が異なるとしても,薬用酒についても,アルコールに薬用成分が含有されているだけであり,一般消費者には,「酒」の一種として捉えられるものであるから,引用商標の構成中「酒」部分は,被告商品の普通名称として,自他商品識別力が乏しいと判断することに問題はない。
エ 被告商品の類似群コード 01B01 において,養命製薬の,又は被告と養命製薬の共有の「養命」との登録商標が存在すること,引用商標と同一商標の「養命酒」の防護商標の登録(登録第800892号防護第02号)の登録後, 「養命」が商標法4条1項11号及び15号の適用を受けずに登録されていること,本件商標の登録査定時において,引用商標の権利者と,この権利者と異なる第三者との間で,「養命」の語を含む商標が,薬剤(類似群コード 01B01),薬用入力剤(類似群コード 01B01) もぐさ , (類似群コード 01B01)等の商品に多数使用され,流通しており,その他「養命」を含む語が複数登録されていることなどを挙げ,引用商標は,一連一体の商標で不可分であり,引用商標から「養命」を抽出してこれを基幹部分とすることは矛盾であると主張する。
しかし, 「混同の生ずるおそれ」は,前記1のとおり,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知・著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきものであって,過去の特許庁の取扱事例が必ずしもそのまま現在における法的判断の基準となり得るものではない。また,原告の指摘する上記防護商標の指定商品は,「薬剤(薬用酒を除く),医療用腕環,失禁用おしめ…」等であって, 「酒」や「薬用酒」を指定商品とするものではないことからすれば,構成中「酒」の部分を普通名称とは捉えられないものである点において,本件とは事 案を異にするものである。
したがって,上記主張は採用できない。
オ 原告は,構成中の「養命」の文字が,引用商標の使用よりも前に, 「養命寺」において使用されていた事実や,大漢和辞典,広説佛教語大辞典等において,「養命」が示されている事実等から,引用商標の構成中の後半部の「酒」の文字部分が,被告商品を表す普通名称といえる理由により,引用商標の構成中から「酒」を分離することはできないと主張する。
しかし,東京都立中央図書館における本件調査結果(乙96,97,117)によれば,平成5年5月,同図書館に所蔵される国語辞典76点,漢和辞典40点を調査したうち,「養命」の語が項目として記載されていたものは,「養命寺」を含み4点であり,平成27年2月において,同じく国語辞典17点,漢和辞典6点について調査したところ, 「養命」の語が記載されている辞典は,1点のみであったことに照らすと, 「養命」の語が,少なくとも一般消費者において,既成語として通用した結果,識別力を欠いていたということはできない。その漢字の並びから「命を養う」との観念をイメージすると解されるとしても,引用商標の構成中の「酒」と同程度に一般的な語句であって自他商品識別性を発揮し得ないものではなく, 「酒」以外の「養命」部分が自他識別性を有する部分と認定したことに誤りはない。
(3)ア 原告は,外観上の一体性,称呼上の一体性,観念上の一体性から,本件商標の構成から, 「養命」を分離することはできないと主張するが,前記(1),(2)ア,イと同様に,採用することはできない。
イ また,原告は, 「快び(称呼 カイビ)」などの登録の後に, 「快美茶(称呼 カイビチャ)」などが登録されている併存登録事例や審決例を挙げ,「茶」部分のみの識別力を考察する意味はなく, 「養命茶」全体の識別力を問題とすべき旨を主張する。
しかし,前記のとおり,そもそも,過去の特許庁の取扱事例が必ずしもそのまま現在における法的判断の基準となり得るものではない上,原告が指摘する併存登録 事例は,いずれも「茶」を含まない商標が周知著名であるか否かが明らかではないものであり,原告の主張を根拠付けるものとはいえない。また,原告の指摘する審決例は,商標法4条1項11号との関係が問題となった事例であり,本件において参考とされるべきものではない。
(4) 以上から,原告の取消事由1には理由がない。
3 取消事由2(混同を生ずるおそれの判断の誤り)について (1) 原告は,識別力を有する部分が「養命」ではないことを根拠に,混同を生ずるおそれがないと主張するが,上記1,2に述べたとおり,採用できない。
(2)ア 原告は,薬事法の点から,本件商標の指定商品と被告商品は,同一ドラッグストアで販売されるとしても,分離した陳列状態(異なる陳列棚に陳列)において需要者が接するから,密接な関係があるとはいえないと主張する。
しかし,被告商品は,薬事法の適用があるものではあるが,第2類医薬品であり,一般家庭用医薬品として,医師による処方箋や,薬剤師による説明を要せずに購入できるものであり,ドラッグストアなどにおいて,他の日用品や食品,飲料等と共に販売されており,消費者が自らの選択によって手にとって直接購入することができるのであるから,陳列棚が異なるとしても,出所の混同の生ずるおそれがあるというべきである。
イ また,原告は,被告商品は,「第一類医薬品以外で,副作用等によって,日常生活に支障をきたすほどの健康被害が生じるおそれがある医薬品」である第2類医薬品に当たり,健康に影響を及ぼす商品であるため,需要者は,特に慎重に商品を吟味して購入するものであると主張する。
しかし,前記のとおり,被告商品は処方箋や薬剤師による説明なしに,一般消費者が手にとって購入できるものであり,ドラッグストアなどにおいて,他の日用品や食品,飲料等と共に販売されるものであるから,このような商品を購入する需要者である一般消費者に要求される注意力の程度がさほど高いということはできない。
ウ 原告は,被告商品は,アルコールを含む商品であり,アルコールを受け付ける体質の成人に限る特殊性を有する商品であり,商品を購入するに当たって,購入者が,アルコールを含む被告商品とアルコール全く含まない本件商標の指定商品とを間違えるおそれは皆無というべきであると主張する。
しかし,本件で問題とするのは,出所の混同のおそれであって,商品自体を誤認して購入するか否かを問題としているものではなく,失当である。
エ 原告は,本件商標の指定商品と被告商品とが相違する点をるる述べるが,前記1で述べたとおり,被告商品と原告の指定商品とが一定の関連性を有することからすれば,広義の混同のおそれを生じることが左右されるものではない。
本件商標は,自他識別性を有し,最も注目される「養命」部分が商標の冒頭に付されており,この「養命」とは,「命を養う」との観念を生じ,「養生」や「健康」を連想させるものであるから,このような連想と結び付くような普通名称等が末尾に付加された場合には, 「養命酒」の姉妹品であるなどとして,被告あるいは被告と緊密な関係にあるグループ会社の出所によるものであると誤認するおそれが高いといえる。
(3) したがって,原告の取消事由2にも理由がない。
結論
以上によれば,審決のした商標法4条1項15号の判断に誤りはないから,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 清水節
裁判官 中村恭
裁判官 中武由紀