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関連審決 無効2000-35324
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成16行ケ56審決取消請求事件 判例 商標
平成15行ケ141審決取消請求事件 判例 商標
平成18行ケ10525審決取消請求事件 判例 商標
平成14行ケ508審決取消請求事件 判例 商標
平成12行ケ231審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 指定商品 /  著名な略称 /  4条1項8号 /  4条1項15号 /  専用使用権 /  補正 /  外国 /  継続 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 165号 審決取消請求事件
原告A
同訴訟代理人弁護士 藤井冨弘
同 山本卓也
同 鈴木雄一
同 大河内 將貴
被告 有限会社ほうえい堂
同訴訟代理人弁理士 河野茂夫
同 河野誠
同 中村照雄
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/08/28
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が無効2000-35324号事件について平成14年3月12日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いがない事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 被告は,「ひとつった」と「外郎」の文字を横書きして成り,商標法施行令1条別表の商品及び役務の区分第30類の「ういろう」を指定商品とする登録第4291052号商標(平成10年2月3日登録出願。平成11年7月9日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
(2) 原告は,平成12年6月16日,被告を被請求人として,本件商標を無効とすることを求めて特許庁に審判を請求した。
(3) 特許庁は,原告の請求を無効2000-35324号事件として審理を行った上,平成14年3月12日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,同年3月25日にその謄本を原告に送達した。
2 本件審決の理由の要点 本件審決の理由は,要するに,@本件商標の登録査定時である平成11年4月7日当時には,「ういろう」,「外郎」の語は,菓子の一種である「ういろう(外郎)」を意味する普通名詞になり,単に菓子の一種を示す語として取引者,需要に認識されるにとどまり,原告のA家の姓名を含むものと認識されるものではなくなっていたから,本件商標の登録は,商標法4条1項8号に違反してされたものとはいえない,A商標法4条1項15号違反の主張は,当初の請求書に記載されていなかったものであり,当該法条についての請求の理由に関する請求書の補正は,その要旨を変更するものであるから,商標法56条,特許法131条2項に違反し許されない,というものである。
当事者の主張の要点
1 原告の主張の要点 「外郎」の語は,著名な原告方の姓名(家名)であり,原告の家業(現在は法人化して「株式会社ういろう」となっている。以下同じ。)として製造販売してきた薬及び菓子の商品名,通称ともなっているものであるから,本件商標は商標法4条1項8号に該当するものであり,その登録は同号に違反するものとして無効である。したがって,本件審決は取り消されるべきである。その理由の要点は,次のとおりである。
(1) 「外郎」の語は,原告方A家が専用使用する著名な姓名(家名)であり,かつ,原告方A家が家業として製造販売する著名な薬又は菓子の固有名詞であって,普通名詞ではない。
ア 「外郎」の語は,原告方A家が専用使用する著名な姓名(家名)である。
(ア) 原告の名前であるAは,原告の家系において 代々襲名されてきたものである。原告の祖先である陳延祐(法諱を宗敬という。)は,元の順宗皇帝の礼部員外郎の役職にあった者であり,1368年,元が滅亡した際に日本に帰化し,その際に,元の時代に自らの官職名であった「礼部員外郎」の語の一部である「外郎(がいろう)」を,官職名と区別する趣旨で「外郎(ういろう)」(唐音又は唐宋音)と呼んで,「外郎(ういろう)」を原告家の姓とし,陳外郎(ういろう)と称した。原告方の姓が外郎となったのはここに始まるものである。なお,その後,外郎家第5代の外郎定治は,北条早雲に招かれて小田原に居所を移した。
(イ) 株式会社小学館発行の「日本国語大辞典」第二版第A巻には,ういろう【外郎】[名](外郎(がいろう)は中国の官名,定員外の職員の意。「うい」は唐宋音)@元の礼部員外郎で,室町時代日本に帰化した陳宗敬の子孫の立てた家名。代々医薬を業とした。」と記載されている。また,株式会社角川書店発行の「角川大字源」には,「【外郎】(ういろう),@元の礼部員外郎の陳宗敬が帰化して立てた家名。」と記載されている。この陳宗敬が立てた家名が原告方A家の姓名(家名)である。
このように「外郎(ういろう)」は,我が国の国語,漢字辞典にも明記されているとおり,原告方の姓名(家名)である。
(ウ) 上記のとおり,「外郎」を「ういろう」と読むのは,原告方の祖先陳延祐が陳外郎(ちんういろう)と名乗って原告方の姓としたことによるものであり,「ういろう」の語も,「外郎」と書いて「ういろう」と読む読み方も,原告方A家の姓以外にはない語であり,読み方である(我が国においては,本来,「外」の漢字には「ガイ」か「ゲ」の読みしかない。)。
(エ) 元来,人の氏名・名称を排他的,専属的に使用する権利は,憲法で保障された基本的人権の一つであり,また,それは個人の人格の象徴であって,人格権の一内容を構成するものである。「外郎」は原告方の著名な姓名(家名)であり,原告は「外郎」の専用使用権を有しているのである。
イ 仮に「ういろう」が菓子の一種を指す普通名詞であったとしても,「外郎」の語は,原告方A家の製造販売する著名な薬又は菓子の固有名詞である。
(ア) 陳延祐の子である大年宗奇は,明国の薬である「霊宝丹」を日本に伝えた。この薬は,効能顕著として時の天皇から「透頂香」の名を賜った。原告方A家は,室町時代に,家業として,透頂香の製造販売を始め,以来これを継続してきた。その後,原告方A家の上記家業は法人化されて「株式会社ういろう」が設立され,以後は,「株式会社ういろう」において,上記透頂香の製造販売を継続している。この透頂香は,薬の「外郎」,「ういろう」として著名である。そして,「外郎」が原告方A家の製造販売する薬の商品名,通称であることは,各辞典に記載されているところである。
薬の「外郎」は,日本の伝統芸能である歌舞伎においても取り上げられており,「外郎売」は,歌舞伎俳優の二代目市川団十郎が初演して以来,現在に至るまで,歌舞伎十八番の一つとして有名な演題であり,薬の「外郎」を早口言葉で宣伝するせりふは殊に有名であり,そのせりふに出てくる薬の「外郎」は,原告方A家の薬として話されているものである。
(イ) また,大年宗奇は,自らが創作した菓子を,外国信使接待の時に供したところ,評判となり,この菓子は,後に,原告方A家の菓子として「お菓子のういろう」と呼ばれるようになった。そして,原告方A家は,明治時代に,その製造する菓子を,「ういろう」の名の下に販売するようになり,以来,これを継続してきた。その後,上述のとおり,原告方A家の家業は法人化されて「株式会社ういろう」が設立され,以後は,同会社が上記菓子の製造販売を継続して行っている。
(ウ) 仮に,「ういろう」の語が菓子の一種を意味する普通名詞になったことが認められるとしても,「外郎」は,原告方の著名な姓名(家名)であって,原告が基本的人権の一つとしてその専用使用権を有することは前述したとおりであり,それらの語は,「外郎家のもの」,「外郎家の薬」,「外郎家の菓子」の意味を失っておらず,引き続き,原告方A家の菓子の固有名詞としての効力を有し続けている。
食べ物に関する古典的な書籍である「和漢三才図会」には,「外郎餅」の説明の中で,「外郎」の名は,著名な薬である「透頂香」を製造して有名になり,その薬の名にもなった原告方A家の姓名(家名)であり,菓子の「外郎」は,その菓子が薬の「外郎」に似ているので「外郎」と言われるようになった旨記載されている。このように「外郎」は,上記書籍が編纂された時代から,薬と菓子の名前になっている。上記の事実は,お茶の表千家編集の「茶と美第12号茶席の菓子」(昭和57年5月10日発行)に,「ういろう 小田原市のAの製品である。」との記載が,株式会社学研発行の「和菓子」(昭和51年6月10日発行)に,「ういろう 小田原市,Aの製品である。」との記載があり,また,各辞典にも,「ういろう」「外郎」の語の説明として,それが原告方A家が家業として製造販売している「薬のういろう」を意味する旨の記載があることからも明らかである。
ウ そもそも,普通名詞といえるためには,それが辞典等に記載されているだけでは足りず,取引者・需要者の間でそのように認識されていることが必要である。
(ア) 山口地方以外では,菓子家・需要者の間では,米粉等を原料とする蒸し菓子の名前を「ういろ」,「外良(ういろ)」とするのが主流である。名古屋,京都において一部に「ういろう」の語を使用する業者があるが,その漢字としては「外良」の文字が使用されており,「外郎」の文字は使用されていない。
特許庁への登録申請された商標を調査した結果によれば,昭和20年代から昭和40年代に,名古屋,岐阜,京都,神戸地方においてなされた次の商標登録申請については,いずれも,指定商品は「ういろ」とされ,商標名も「ういろ」とされており,「ういろう」を指定商品とし,商標名を「ういろう」とした申請例は見あたらない。
@ 「大須ういろ」(昭和25年11月16日出願。出願人・名古屋市のB) A 「五建ういろ」(昭和28年10月3日出願。出願人・京都市のC) B 「長田のういろや」(昭和35年6月9日出願。出願人・神戸市のD) C 「長良のういろ」(昭和40年12月12日出願。出願人・岐阜県高富町のE) また,名古屋で「大須ういろ」を製造販売している合資会社大須ういろは,いずれも「ういろ」を指定商品として,「風流元禄ういろ」(昭和63年4月2日出願。平成3年4月30日登録),「ドーム型ういろ」(平成7年8月23日出願。平成9年8月29日登録),「大須 ふかしういろ」(平成12年11月10日出願。平成13年11月9日登録)の商標登録を受けている。
さらに,小学館発行の雑誌「サライ」(1997年6月19日発行)中の,全国の「ういろう」菓子の記事中には,京都の老舗である京都五建外良屋について,「この店では「外郎」ではなく「外良」と書いて「ういろ」と呼ぶ。」との記載が,名古屋の老舗である合資会社餅文總本店について,「同店では京都同様「外良」と書いて「ういろ」と読む。」との記載がある。このように,名古屋,京都の老舗の菓子屋では,昔から,菓子の名前は,「外郎」ではなく,「外良」であり,「ういろう」ではなく,「ういろ」と呼ばれており,現在もそのように呼ばれていることが明らかである。なお,合資会社餅文總本店は,指定商品を「水分を多く含んだういろ」として,「水ういろ」の商標登録(平成9年10月30日出願。
平成12年1月26日登録)を受け,また,指定商品を「栗又は栗餡入りういろ」として,「栗ういろ」の商標登録(平成10年7月17日出願。平成11年10月8日登録)を受けている。
なお,名古屋の上記菓子の製造販売業者の株式会社青柳ういろうは,昭和48年5月12日に「青柳外良」と記載してその一部の「外良」に「ういろう」とふりがなをした商標を出願している。しかし,「外良」の語は通常は「ういろ」と読み,昭和40年代の中ごろまでは,そのように読まれていたものである。
「青柳ういろう」も,昭和6年に駅売りがされていた当時の菓子の巻紙には,「名古屋名物外良」(ういろ)と記載されており,当時,その菓子の名は,「ういろ」と呼ばれていた。現在でも,そのように読む業者が多いようである。
したがって,山口地方以外において,米粉等を原料とする蒸し菓子が,取引業者,需要者の間で,一般に,「ういろ」,「外良」として認識され販売,購入されていたことは明らかというべきである。
(イ) 山口地方では,菓子の一種が「外郎(ういろう)」と呼ばれており,同地方の風評によれば,この語は,礼部員外郎の役職にあった陳宗敬の官職名「外郎(ういろう)」に由来すると言われている。すなわち,山口市の昭和46年3月30日発行の「市史」には,山口地方の業者が製造販売する菓子の一種のいわゆる「外郎」について,「さて「外郎」というのは,もともとシナの昔の官職名で,「ういろう」という読み方も唐音によるものであるという。それは室町時代に来朝帰化した礼部員外郎陳宗敬という人が医薬として伝えたものを,その後大内氏の城下ではこの薬の風味と舌ざわりを生かして菓子につくったのが,山口の外郎の始まりということになっている。」と記載されており,また,山口地方の外郎屋の老舗と言われる御堀堂の宣伝パンフレットには,「懐古的な風味と雅趣豊かな「外郎」の起源は将軍義満の頃来朝した元の陳宗敬の伝えた霊方により,その子が作った「透頂香(とうちんこう)」という妙薬に始まると申します。これを一名「外郎薬(ういろうくすり)」と称えたのは其の父が礼部員外郎の職にあったからだと伝えてゐます。」と記載されている。このような風評は,山口地方のその他の外郎屋のパンフレットにも記載されている。
各辞典の記載から,薬の「外郎」が原告方A家の著名な薬の商品名,通称であることは顕著な事実であるところ,上記の市史や宣伝パンフレットによれば,山口地方のいわゆる「外郎」という菓子の製造販売業者は,原告方A家が家業として製造販売している(現在は,原告方A家の家業を法人化した「株式会社ういろう」で製造販売している。)薬の「外郎」として知られる透頂香の故事来歴を歪曲,盗用し,その薬から上記の菓子ができたと宣伝し,上記の菓子と薬の「外郎」との混同を画策するものといわなければならない。また,山口地方の「外郎」という菓子の名付けの基となった,礼部員外郎の役職にあった陳宗敬とは,前述したとおり,原告方A家の始祖である陳延祐にほかならず,したがって,上記業者は,原告方A家の始祖である陳宗敬の官職名の一部の「外郎」を,わざわざ唐音で「ういろう」と読んで,これを上記菓子の名前としたと喧伝して,原告方A家の家名の名付けの故事そのものを歪曲・盗用しているものといわなければならない。
このように,被告を含む山口地方の業者の「外郎」の語の使用・宣伝行為は,不正競争防止法2条1項1号に該当する不正競争行為であると同時に,原告方A家の氏名についての原告の人格権を侵害する行為であり,これらの違法な「外郎」の語の使用が何年継続してされたとしても,「外郎」の語が「ういろう」という菓子の普通名詞となるものではない。
(ウ) 本件審決は,広辞苑等に「ういろう」,「外郎」の説明として,「A菓子の名・・・山口・名古屋の名産」の記載等があることを根拠に,本件商標の登録時点では,「ういろう」の語は,菓子の普通名詞になっていたと判断した。
しかし,各辞典が,「ういろう」,「外郎」は「名古屋・山口の名産」などと記載し,「ういろう」,「外郎」は普通名詞になっていたと記載していたとしても,名古屋・近畿地方では,取引者・需要者の間に認識されている米粉等を原料とする蒸し菓子の名は,「ういろ」,「外良」であって,その名前として「ういろう」の語を使用する者は少数であり,「外郎」の語は使用されていないこと,また,山口地方の業者がその製造する菓子の一種に「ういろう」,「外郎」の語を使用しているのは,原告方A家が家業として製造販売する薬の「外郎」ないし原告方A家の姓名を盗用しているものであって,その使用により,「ういろう」,「外郎」の語が上記菓子を意味する普通名詞となり得ないものであることは,前述したとおりである。したがって,各辞典の上記のような記載は誤りである。
広辞苑第3版は,「ういろう」,「外郎」について,「A菓子の名。
米の粉を黄などに染め,砂糖を加えて蒸し,四角に切ったもの。形や色が@(薬のういろう)に似る。山口・名古屋の名産。」と記載しており,広辞苑第5版は,「菓子の名。米の粉・砂糖・葛粉などを混ぜて蒸したもの。もとは黒砂糖を使っており,色が@(薬,透頂香)に似る。山口・名古屋の名産。ういろうもち。」と記載している。上記の記載は,前記「和漢三才図会」の「外郎餅」の記事(現代語訳によれば,「外郎餅は羊羹の属で,外郎とは小田原の人の名である。透頂香を製造して売り,名をあげたので,ついにこの人の名は薬となった。黒色で香美なものである。ところでこの餅の色はややそれに似ている。それでこういう名がついたのである。」というものである。)及び大言海の「透頂香」についての記載(「今,小田原の宇野氏(虎屋)製して売る。黒褐色,方形なり,痰を治すとぞ」)に依っているものと思われる。しかし,薬の「ういろう」である透頂香の形状は,小さな銀色の丸薬であり(丸薬であることは,古文書に記載されており,銀色であることは,古文書に記載はないものの,原告方A家に一子相伝で伝えられてきた製法に合致する。),方形の黒褐色の薬ではないから,上記記載は菓子の「外郎」と薬の「外郎」とを混同しており,誤りである。
広辞苑等の上記のような説明は,古い時代の間違った情報による書物の記載を根拠にしたものであり,このような間違った記載を根拠にして,「ういろう」,「外郎」の語が菓子の一種を意味する普通名詞であると判断することは許されない。 (エ) 原告方A家の家業を法人化した「株式会社ういろう」は,指定商品を菓子全般として,「お菓子の「ういろう」」の文字から成る商標について,商標権(登録第0454581号。昭和28年9月30日出願。同29年10月28日登録。)を有し,同商標権は現に効力を有している。同商標は,「ういろう」の文字を中心にしており,「ういろう」の語が昭和29年当時において普通名詞化していれば,その登録は拒絶されていたはずであるのに,何の問題もなく登録されているところからみて,昭和29年当時には,「ういろう」の語が米粉等を原料とする蒸し菓子を表す普通名詞と考えられていなかったことは明白である。
(オ) そうすると,現在においても,名古屋等の名物で,米粉等を原料とする蒸し菓子の名前として普通名詞になっているのは,「ういろ」又は「外良」であって,「ういろう」や「外郎」ではないというべきである。
(2) 仮に,「ういろう」,「外郎」の語が「ういろう」と呼ばれる菓子を意味する普通名詞になっていることが認められるとしても,「外郎」の語は,辞典に記載されている著名な原告方A家の姓名(家名)であって,原告が基本的人権の一つとしてその専用使用権を有しているものであり,また,「ういろう」,「外郎」の語は,原告方A家が家業として製造販売する薬を意味する固有名詞でもあり,したがって,原告に無断で「外郎」の語を使用している本件商標の登録は,商標法4条1項8号の規定に違反するというべきである。
(3) したがって,「外郎」をその一部に含む本件商標は商標法4条1項8号に該当するというべきであり,本件審決は取り消されるべきである。
2 被告の主張の要点 本件審決の認定判断は正当であって,本件審決に原告主張のような違法はない。
当裁判所の判断
1 商標法4条は,同条各号に掲げる商標については,商標登録を受けることができないと規定し,その8号に「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号,芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」を掲げている。本件の争点は,本件商標の登録査定時である平成11年4月7日当時には,「ういろう」,「外郎」の語は,菓子の一種である「ういろう(外郎)」を意味する普通名詞になり,単に菓子の一種を示す語として取引者,需要者に認識されるにとどまり,原告のA家の姓名を含むものと認識されるものではなくなっていたから,本件商標の登録は商標法4条1項8号に違反してされたものとはいえないとした本件審決の判断の当否である。
そこで,以下,本件の争点について判断する。
2 証拠(甲1,4の(1),(2),6及び7の各(1)ないし(3),8ないし12,13の(1)ないし(5),乙1ないし5)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1) 国語辞典等には次のような記載がある。
ア 「広辞苑第四版」(株式会社岩波書店1991年11月15日第四版第一刷発行)には,「ういろう【外郎】」の語について,「@元(げん)の人,礼部員外郎陳宗敬が,応安(1368ー1375)年中,わが国に渡来し,博多に住んで創製した薬。」との記載とともに,「A菓子の名。米の粉を黄などに染め,砂糖を加えて蒸し,四角に切ったもの。形や色が1に似る。山口・名古屋の名産。ういろうもち。」との記載がある。
イ 「大辞林」(株式会社三省堂1993年12月25日第二四刷発行)には,「ういろう【外郎】」の語について,「@・・・薬の一種。痰をきり,口臭を除く丸薬。江戸時代,小田原の名物として有名。透頂香(とうちんこう)。外郎薬。」との記載とともに,「B・・・菓子の一種。米の粉に黒砂糖などで味つけした蒸し菓子。名古屋・山口などの名産。外郎餅。」との記載がある。
ウ 「日本語大辞典」(株式会社講談社1989年11月6日発行)には,「ういろう【外郎】」の語について,「@元(げん)の員外郎の職にあった陳宗敬(ちんそうけい)が鎌倉(かまくら)時代にわが国に渡来して伝えた痰(たん)切りの妙薬。」との記載とともに,「A米粉を原料としたようかん状の蒸し菓子。名古屋・山口の名物。」との記載がある。
エ 「国語大辞典」(株式会社小学館1982年2月12日第一版第七刷発行)には,「ういろう【外郎】」の語について,「@元の礼部員外郎で,室町時代日本に帰化した陳宗敬の子孫の立てた家名。代々医薬を業とした。A陳宗敬が創製したという薬。」の記載とともに,「B米の粉に,水,砂糖を加えてかきまわし,蒸籠で蒸しあげた菓子。・・・名古屋,山口,小田原の名物。」との記載がある。
オ 「大辞泉」(株式会社小学館1995年2月20日第一版第三刷発行)には,「ういろう【外郎】」の語について,「@江戸時代,小田原名産の去痰(きょたん)の丸薬。元(げん)の礼部(れいほう)員外郎(いんがいろう)陳宗敬が日本に帰化し,博多で創製。」の記載とともに,「A米の粉に黒砂糖などをまぜて蒸した菓子。名古屋・山口・小田原などの名物。ういろうもち。」との記載がある。
カ 「広辞林第六版」(株式会社三省堂1985年10月20日第九刷発行)には,「ういろう【外郎】」の語について,「@ういろうぐすり。Aういろうもち。」との記載があり,その後ろに,「ういろうぐすり【ういろう薬】」について,「(元(げん)の帰化人,礼部員外郎(いんがいろう)の官にあった陳宗敬の創製という)江戸時代,神奈川県小田原名産の売薬で,今の仁丹(じんたん)の類。痰(たん)の妙薬。・・・透頂香(とうちんこう)。」との記載がされるとともに,「ういろうもち【ういろう餅】について,「・・・米の粉を黄に染め,砂糖を加えて蒸し,四角に切った菓子。山口・名古屋の名産。」との記載がある。
キ 「日本国語大辞典」第二版第A巻(株式会社小学館2001年2月20日第二版第二巻第一刷発行)には,「ういろう【外郎】」の語について,「@元の礼部員外郎で,室町時代日本に帰化した陳宗敬の子孫の立てた家名。代々医薬を業とした。・・・A外郎家が北条氏綱に献じてから小田原の名物となった丸薬。」との記載とともに,「ういろうもち(外郎餅)の略。」との記載があり,さらに,ういろうもち【外郎餅】の語について,「米の粉と黒砂糖を使用した蒸しようかんの一種。名古屋,山口の名物。ういろう。」との記載がある。
ク 「角川大字源」(株式会社角川書店1992年2月10日発行)には,「【外郎】」の語について,「がいろう」と読む場合の意味として,「@漢代の官名。・・・A吏員。下級官吏。」との記載があり,「ういろう」と読む場合の意味として,「@元の礼部員外郎の陳宗敬が帰化して立てた家名。A外郎家が売り始めた薬。」との記載とともに,「B菓子の名。ういろうもち。」との記載がある。
(2) 一般向け定期刊行雑誌である「サライ」(株式会社小学館発行)の1997年6月19日号に「モノ語り 六百年前,京都で生まれた庶民の味 ういろう」の見出しで掲載された特集記事には,次のような記載がある。
すなわち,「「ういろう」「ういろ」「外郎」「外良」。呼び名も様々なら,味もそれぞれ個性的。室町時代に京都で生まれ,小田原や山口,名古屋で育って全国的な銘菓となった,単純にして奥の深い,蒸し菓子の物語をお届けします。」と記載した上で,「小田原 ういろう」,「京都 五建外良屋」,「名古屋 餅文總本店」,「名古屋 青柳ういろう」の各地のういろうを紹介している。そして,「小田原ういろう」の紹介記事においては,「″ういろう″とは,粳(うるち)粉,糯(もち)粉,小麦粉,葛(くず)粉などに砂糖を合わせて練り,蒸してつくった菓子の総称である。棹物(さおもの)に仕立てることが多く,別名はういろう餅。」と「ういろう」の語を定義した上で,「小田原,名古屋,京都,山口のものが著名だが,筆頭にういろうの語源となった小田原の外郎(ういろう)家の歴史を溯(さかのぼ)ることにしよう。」として,以下に外郎家の歴史を記載し,次いで,小田原ういろうの一般販売が始まったのは明治4年であること及び現在販売されている小田原ういろうの特徴を記載している。また,その他に,@京都の五建外良屋は,幕末の安政5年(1858年)の創業であり,現存するういろう店の中でも古い歴史を誇ること,同店はういろうの菓子のことを「外良」と書いて「ういろ」と呼んでいること,その家伝では,油屋の三男であった初代・谷川重蔵が六波羅密寺や清水詣でのお客のために街道沿いに茶店を構え,「ういろ」を出したのが始まりであるとされていること,A名古屋の餅文總本店は,万治2年(1659年)創業の老舗で,名古屋きっての古い歴史を誇ること,同店は京都と同様,ういろうの菓子のことを「外良」と書いて「ういろ」と呼んでいること,そのういろう製造の経緯は諸説があるが,尾張藩2代目藩主・徳川光友に仕えた陳元贇が同藩の御用商人であった初代の餅屋文蔵に製法を伝えたとの説が有力であること,B名古屋の青柳ういろうは,店の創業は明治12年であり,当初は蒸し羊羹を主に製造していたが,2代目の敬之助が明治32年に規模を拡張した頃から青柳ういろうが有名になっていったこと,同店は昭和初期から積極的にういろうの宣伝・販売に努め,ういろうの名を全国に広めることに成功したこと,全国区で最も名前が浸透しているのは,名古屋の「青柳ういろう」と考えられること,などを記載している。
(3) 山口市の「市史」(昭和46年3月30日発行)には,「大内人形と外郎」の表題の下に,「山口を代表する土産といえば,古い歴史と伝統をもつ「大内人形」と「外郎」を挙げなくてはならない。みやびやかな表情をもつ大内人形と,淡泊で素朴な味をもつ外郎は,おっとりした山口の土産として,いかにもふさわしいものがある。」,「・・・外郎というのは,もともとシナの昔の官職名で,「ういろう」という読み方も唐音によるものであるという。それは室町時代に来朝帰化した礼部員外郎陳宗敬という人が医薬として伝えたものを,その後,大内氏の城下ではこの薬の風味と舌ざわりを生かして菓子につくったのが,山口の外郎の始まりということになっている。外郎の材料は,古来小豆と砂糖のほかに「せん」という蕨の根からとる澱粉が用いられている。その製法は,この澱粉と小豆の漉餡とをだいたい一と三ぐらいの割合で水に溶き,これに砂糖を加え,どろどろしたものを木型に流し込んで蒸すという簡単なものであるが,その水加減と蒸し加減に年季をいれた職人の勘ひとつが微妙に働くという秘法があるという。」,「大内御堀の福田屋の外郎が山口外郎の元祖として古くから有名で,三百年もつづいた家とかいわれている。」などと記載されている。山口地方には,同地方の代表的な土産物としての外郎を製造販売する業者が福田屋以外にも少なくとも数業者いる。
3(1) 上記認定の事実によれば,「ういろう」,「外郎」の語は,遅くとも本件商標登録の査定時(甲1及び弁論の全趣旨により,平成11年4月7日と認められる。)には,米粉等を原料として製造される蒸し菓子の一種を一般的に意味する名称として取引者・需要者に認識される普通名詞となっていたものと認めることができる。
(2) 原告は,「外郎」の語は,原告方A家が専用使用する著名な姓名(家名)であり,かつ,原告方A家の製造販売する著名な薬又は菓子の固有名詞であって,普通名詞ではないとして,縷々主張する。
そこで,検討するに,証拠(甲2,3の(1)ないし(3),6及び7の各(1)ないし(3),8,9,13の(1),(2),24,25)及び弁論の全趣旨によれば,原告の祖先にあたる陳延祐(法諱を宗敬という。)は,元の順宗皇帝の礼部員外郎の役にあったが,元が滅亡した後の1368年,我が国の博多に渡来して帰化し,陳外郎と称したこと,その子の大年宗奇は,時の将軍足利義満の招きに応じて京都に移り,朝廷の典医及び外国信使の接待等に従事したこと,宗奇は明国の薬「霊宝丹」を我が国に伝え,この薬は効能顕著として時の天皇から「透頂香」の名を賜り,後に外郎の薬として「薬のういろう」と呼ばれるようになったこと,その後,外郎家の5代目定治は,北条早雲に招かれて小田原に移ったこと,菓子の「ういろう」は,外郎家二代目宗奇が外国使接待のとき自らつくって供したのが始まりで,たちまち評判となり,「外郎氏の菓子」と言われたが,後に略して「薬のういろう」と同様に「菓子のういろう」と呼ばれるようになったこと,外郎家では,室町時代から「薬のういろう」の製造を始めたが,江戸時代に入ると,東海道は諸国大名の参勤交代等のため往来する者が多く,諸大名を始め,一般民衆が小田原を通るときには,「薬のういろう」を求めて,道中の常備薬として,あるいは帰国のみやげ物としていたことから,「薬のういろう」は全国的に有名になったこと,また,小田原へ移った外郎家は「菓子のういろう」を毎年先祖祭りの日に租霊に供え,平素もこれをつくって客の接待に供し,多くの人々に喜ばれたこと,封建時代の慣習から外郎家では江戸時代までこれを商売とすることはなかったが,明治時代になって「お菓子のういろう」としてこれを商品化して製造販売するようになったこと,外郎家は,その後も,小田原等において薬の「ういろう」,菓子の「ういろう」の製造販売を継続し,その後家業を法人化し「株式会社ういろう」を設立してからは,同会社が薬の「ういろう」,菓子の「ういろう」を製造販売し,今日に至っていることが認められる。また,前記2に認定したとおり,各辞書においては,「ういろう【外郎】」は,原告方A家の家業として製造させる薬の意味も有する旨記載されている。
上記の事実によれば,「外郎」の語は,原告方A家が使用する姓名(家名)であり,かつ,原告方A家の製造販売する著名な薬の固有名詞であるとともに,かっては,外郎家が製造する菓子を示す固有名詞でもあったと認められる。しかしながら,特定の商品の名称として固有名詞であったものが,時代とともに次第に当該特定の商品と共通の性質を有する商品類を一般的に意味する普通名詞となることは決してまれなことではない。「外郎」,「ういろう」の語についてみるに,前記2に認定した事実によれば,それらの名称が様々な経緯,態様で京都,名古屋,山口などの菓子製造販売業者に伝承され,その製造販売業者が米粉等を原料として製造する蒸し菓子にその名称を冠して販売し,その宣伝,販売の努力が功を奏してそれらの菓子が全国的に知られるところとなり,このような歴史的な経緯を経て,当初は,原告方A家が家業として製造する菓子であることを示す固有名詞であったものが,次第に米粉等を原料とする蒸し菓子を一般的に意味する普通名詞となったものと推測することができる。したがって,「外郎」の語が原告方A家の製造する菓子の固有名詞であり,菓子の一種を意味する普通名詞ではないとする原告の主張は,採用することができない。
また,一つの語が異なる複数の対象を意味することも往々にしてあることと考えられ,また,一つの語が一方の対象を意味する場合には固有名詞となり,他方の対象を意味する場合には普通名詞となるとしても異とするに足りない。したがって,「外郎」の語が,原告方A家の使用する姓名(家名)であり,また,原告方A家が家業として製造する薬の意味を有する固有名詞であるとの点も,「外郎」,「ういろう」が菓子の一種を意味する普通名詞であると認定することの妨げとなるものではないというべきである。
原告は,山口地方以外では,菓子家・需要者の間では,米粉等を原料とする蒸し菓子の名前を「ういろ」,「外良(ういろ)」とするのが主流であり,名古屋,京都において一部に「ういろう」の語を使用する業者があるが,その漢字としては「外良」の文字が使用されており,「外郎」の文字は使用されていないとし,このことを理由に,「ういろう」,「外郎」の語は普通名詞とはなっていない旨主張する。しかしながら,「ういろ」,「外良」の語は米粉等を原料とする蒸し菓子を意味するものとして使用されているが,それが「ういろう」,「外郎」の語が示す菓子等とは別系統の菓子等の名称に由来するものであることを認めるに足りる証拠は存在しないところ,「ういろ」は「ういろう」の語の語尾を省略した形であり,発音が近似していること,「外良」は「外郎」の語の文字の一つを変えたもので,全体の字形は近似していることに前記2に認定した事実を併せてみれば,「ういろ」,「外良」の語は,小田原の原告方A家に発した「ういろう」,「外郎」の語が地方に伝承される過程で変形を来したものであり,それらは,一般の取引者及び需要者には,「ういろう」,「外郎」と呼ばれている菓子の別名として用いられ,認識されているものと認められる。したがって,この点に関する原告の主張も採用できない。
原告は,山口地方では,菓子の一種が「外郎(ういろう)」と呼ばれ,その製造販売業者が原告方A家の姓名(家名)の名付けの故事来歴,原告方A家が家業として製造販売する薬の故事来歴等を歪曲,盗用してその宣伝を行っているが,被告を含むこれらの山口地方の業者の「外郎」の語の使用・宣伝行為は,不正競争防止法2条1項1号に該当する不正競争行為であると同時に,原告方A家の姓名について原告が有する人格権を侵害する行為であり,これらの違法な「外郎」の語の使用が何年継続してされたとしても,「外郎」の語が「ういろう」という菓子の普通名詞となるものではない旨主張する。しかしながら,前記2(3)の認定によれば,山口の業者が「外郎」という名称を冠した菓子を製造販売し始めたのは,原告方A家において菓子の「ういろう」の製造販売を始める前の江戸時代に遡ることであり,「外郎」という名称は,室町時代に大内氏が山口地方を支配していた時代に伝承された原告方A家の薬の名称からとられたものと伝えられていることが認められるし,また,当初は上記宣伝販売行為も山口地方ないしその周辺に限定されていたものと推認される。このような経緯からすれば,江戸時代以降,山口地方の業者が「外郎」と呼ばれる菓子を製造販売し,その菓子の来歴を古い伝えに従い前記2(3)に認定したような説明をして販売行為を継続的に行ってきたとしも,これが法律に抵触する違法行為であるとか,原告方A家の姓名について原告が有する人格権を侵害するものであるとかいうことはできない。なお,「ういろう」,「外郎」が普通名詞化した後の山口地方の上記製造販売業者の宣伝販売行為が不正競争防止法等の法律に抵触しないことも明らかである。この点に関する原告の主張も採用できない。
原告は,「株式会社ういろう」(原告方の家業を法人化したもの)において現に有する,指定商品を菓子全般とする「お菓子の「ういろう」」の文字からなる商標が昭和29年10月28日に登録設定されていることを根拠に,昭和29年当時には「ういろう」の語は米粉等を原料とする蒸し菓子を表す普通名詞とは考えられていなかったことは明白である旨主張する。しかしながら,遅くとも,本件商標の登録査定時において,「ういろう」,「外郎」の語が普通名詞になっていたと認められることは前記説示のとおりであり,昭和29年当時に上記商標登録がされたとの点は,この認定を妨げるに足りないというべきである。
4 原告は,仮に,「ういろう」,「外郎」の語が「ういろう」と呼ばれる菓子を意味する普通名詞になったことが認められるとしても,「外郎」の語は,著名な原告方A家の姓名(家名)であって,原告が基本的人権の一つとしてその専用使用権を有しているものであり,また,「ういろう」,「外郎」の語は,原告方A家が家業として製造販売する薬を意味するものでもあり,したがって,原告に無断で「外郎」の語を使用している本件商標の登録は,商標法4条1項8号の規定に違反するというべきである旨主張する。
しかしながら,既に認定したとおり,「ういろう」,「外郎」の語は菓子の一種を意味する普通名詞であり,したがって,菓子の一種である「ういろう」を指定商品とする本件商標中に「外郎」の語が使用されているとしても,これに接した取引者・需要者は,当然,その語が菓子の一種である「外郎」,「ういろう」を示すものであると認識するはずであり,その語が原告方の姓名(家名)を示すものであり,あるいは,原告方A家が家業として製造する薬を示すものであると認識するとは考え難い。そうすると,「外郎」の語が菓子の一種を意味する普通名詞である以上,その語を一部に含む本件商標が取引者・需要者に原告方A家の姓名を想起させ,その専用使用権を侵害し,あるいは本件商標の指定商品である菓子の一種の「ういろう」と上記薬との混同を招く事態は考えられない。したがって,本件商標は原告の「氏名の著名な略称を含む商標」には該当しないから,商標法4条1項8号に違反するものということはできない。
5 以上のとおり,原告主張の本件審決の取消事由はいずれも理由がなく,その他本件審決にこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 青柳馨
裁判官 橋本英史
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