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関連審決 異議1998-90638
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17ワ11663不正競争行為差止等請求事件 判例 商標
平成18ネ2387不正競争行為差止等請求控訴事件 判例 商標
平成12行ケ453商標登録取消決定取消請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  識別機能 /  使用事実 /  指定商品 /  普通名称(3条1項1号) /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項15号 /  顧客吸引力(グッドウィル) /  類似性(類否判断) /  結合商標 /  通常使用権 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  国内 /  使用許諾 /  継続 /  非類似 /  有名ブランド / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 90号 取消決定取消請求事件
原告 ユーロポート株式会社
訴訟代理人弁理士 高田修治
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 滝澤智夫
同 茂木静代
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/07/10
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成10年異議第90638号事件について平成13年1月18日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、欧文字「ROYAL QUEEN'S POLO TEAM」を横書きしてなり、平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表による第22類「はき物その他本類に属する商品」を指定商品とする登録第4081556号商標(平成3年4月9日商標登録出願、平成9年11月14日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
平成10年3月24日、本件商標について商標登録異議の申立てがあり、特許庁はこれを平成10年異議第90638号事件として審理した結果、平成13年1月18日、「登録第4081556号商標の商標登録を取り消す。」との決定をし、その謄本は平成13年2月7日に原告に送達された。
2 決定の理由 別紙決定書の理由の写しのとおり、ラルフ・ローレンのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字とともに「by Ralph Lauren」、「by RALPH LAUREN」の文字及び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形」の各標章(以下、「引用商標」という。)が使用され、これらは「Polo(ポロ)」の略称で呼ばれるようになっていたところ、本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、その構成中の「POLO」の文字に注目し、周知となっているラルフ・ローレンに係る引用商標を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく出所の混同を生ずるおそれがあるから、本件商標の登録は商標法4条1項15号の規定に違反してされたものであると認定判断した。
原告主張の決定取消事由の要点
決定の理由中、決定の理由1(本件商標)、同2(登録異議の申立て理由)、同3(本件商標に対する取消理由の要点)及び同4(商標権者の意見の要点)は認める。同5(当審の判断)のうち、6頁10行ないし19行は争い、その余は争わない。 商標法4条1項15号における「混同を生ずるおそれ」の有無は、「当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、
当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。」(最高裁判所 平成12年7月11日判決)ところ、決定は、本件商標の構成中に「POLO」の文字が含まれていることをもって直ちに本件商標とラルフ・ローレンに係る「POLO商標」とは商品の出所について混同を生ずるおそれがあると誤って判断したものであるから、違法として取り消されるべきである。
1 「POLO」「ポロ」の語について (1) 「POLO」「ポロ」は、ポロ競技を意味する語として我が国において広く知られている。
日本国内の辞書・辞典類(甲第2号証の1ないし35)には、「POLO」「ポロ」の語がポロ競技を意味する語であることが掲載されており、また、それらにはポロ競技の内容も簡潔に記載されている。これらの辞書・辞典類はいずれも発行部数が多く、家庭や学校などで幅広く用いられていることから、取引者・需要者が身近に接する機会の多いものである。したがって、「POLO」「ポロ」の語がポロ競技を意味する語であることは、我が国において広く一般に知られているというべきである。
また、「ポロシャツ/POLO SHIRTS」は、ポロ競技に由来するシャツの普通名称として広く知られていることから、「ポロシャツ/POLO SHIRTS」における「ポロ/POLO」の語がポロ競技を意味することについては、ファッション関連商品の取引者・需要者に広く知られており、したがって、このことからも「POLO」「ポロ」の語がポロ競技を意味する語としてファッション関連商品の取引者・需要者に広く知られていることは明らかである。
株式会社博報堂の作成に係る「ポロ」ブランド調査(甲第27号証)によれば、ファッションに関心のある10代から40代の男女280人にロゴマークS(馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形で「ポロ・ラルフローレン」ブランドのもの)とロゴマークT(馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形で「ポロ・クラブ」ブランドのもの)とが似ていると思う理由を自由回答方式で回答を求めたところ、多くの人が「両方ともポロをしている」「ポロを競技しているところ」「Poloの絵が同じ(ほぼ)である」「ポロというスポーツを扱ったロゴマーク」等と回答しており、このことから見ても「POLO」の語がポロ競技を意味する語として、ファッション関連商品の取引者・需要者に広く知られていることは明らかである。
ポロ競技は、我が国において実際に競技したり観戦したりする人の数は少ないが、そのことから直ちにポロ競技が我が国において広く知られていないということはできない。ポロ競技は、欧米の富裕層を中心として楽しまれる貴族趣味的なスポーツであることから、我が国の国民にとっては高嶺の花のスポーツとして、強い憧れの的となっているのであって、そのことがポロ競技の知名度を一層高いものにしているのである。
(2) 「POLO」「ポロ」は、ファッション関連商品である「POLO SHIRTS」「ポロシャツ」の略称として我が国で広く用いられている。
すなわち、ポロ競技においてプレイヤーが着用する衿つき半袖シャツは、
古くから「POLO SHIRTS/ポロシャツ」と称されており、現在では遊び着的な衿つきシャツを広く指称する普通名称になっている(甲第3号証)。そして、商品「POLO SHIRTS/ポロシャツ」は、本件商標の出願当時はもとより、その後も継続して、我が国の取引の実際において、「POLO」「ポロ」と略称され(甲第4号証ないし甲第7号証、甲第21号証、甲第28号証ないし甲第37号証、甲第40号証ないし甲第65号証)、また、「POLO」「ポロ」の文字は、商品「POLO SHIRTS」/ポロシャツ」の略称として、取引者・需要者間において広く用いられていた(甲第5号証ないし甲第7号証、甲第25号証、甲第28号証ないし甲第37号証)。「POLO/ポロ」の文字を一部に含む商標はファッション関連商品を指定商品として、過去において多数登録されており(甲第39号証)、「ポロ・ルック〔polo look〕」の語につき「ポロは乗馬競技の一種で、このスポーツ競技の選手たちが用いたスタイルをいう。」と記載し、ポロ・シャツを着た男性の写真を「ポロ・ルック」として掲載した書籍(甲第38号証)も昭和54年に出版されている。
したがって、ファッショ関連商品の分野における取引者・需要者が、「POLO」「ポロ」の文字に接したとしても直ちにラルフ・ローレンを想起するという関係にない。
(3) 以上のとおり、「POLO」「ポロ」の語は、それぞれ「ポロ競技」を意味する既存の英単語、外来語として我が国において広く知られており、また我が国において商品「被服」について自他商品の識別機能を果たし得ない普通名称であることから、ファッション関連商品である本件商標の指定商品について独創性のある語ではない。
(4) 商品「ポロシャツ」は、仏国及びラルフ・ローレンの本国である米国の取引の実情においても「POLO」と略称されている(甲第8号証、甲第9号証、甲第22号証、甲第23号証)。したがって、「POLO」の語は、米国及び仏国においても、商品「被服」について自他商品の識別機能を果たし得ない普通名称であり、近時、一般消費者自ら海外の流行に直接触れる機会が多いことからすれば、我が国でも同様に、「POLO」の語は自他商品の識別機能を果たし得ない普通名称と認めるべきものである。
(5) 被告は、「POLO」「ポロ」の語が「ポロ競技」を意味する語として我が国において広く知られていることを否定し、その根拠として、書籍「スポーツ用語」(乙第13号証)、「ニュースポーツ百科」(乙第14号証)、「NEW COLOR SPORTS 1995」(乙第15号証)を挙示するが、前記「スポーツ用語」は、被告も認めるとおりスポーツ競技の選択に片寄りがあるし、前記「ニュースポーツ百科」は題号、目次の項目からみて1995年(平成7年)頃における新しいスポーツを紹介することを目的とする事典であるから古い歴史をもつポロ競技が掲載されていないのは極めて当然であり、前記「NEW COLOR SPORTS 1995」は高等学校などの教材として使用することを目的として編集されたものであることが明らかであるから、これにポロ競技についての記述がないことも当然である。したがって、これらの証拠からポロ競技が我が国において広く知られていないということはできない。
本件商標「ROYAL QUEEN'S POLO TEAM」における「POLO」の文字は、前後に位置する英単語との関係から、「ポロ競技」を意味する語として理解される。このことは、我が国における英語の普及状況からみれば極めて自然なことというべきである。
そうとすれば、ラルフ・ローレンに係る「POLO商標」との関連性を考慮に入れたとしても、取引者・需要者の通常の注意力を基準に判断すれば、本願商標中の「POLO」の文字からラルフ・ローレンとの関連性を直ちに想起することは到底考えられない。
2 本件商標はラルフ・ローレンに係る「POLO商標」と非類似であることについて 本件商標が引用商標であるラルフ・ローレンに係る「POLO商標」と類似するか否かを判断するに当たっては、「POLO」の語の独創性の程度を勘案して、「POLO」の文字部分が独立して自他商品の識別機能を発揮する部分として認識される外観上、観念上あるいは称呼上の要素(分離抽出要素)があるか否かを判断すべきである。本件商標については、外観観念称呼のいずれの点でも「POLO」の文字部分が分離抽出されるということはできず、本件商標は、外観観念称呼のいずれにおいてもラルフ・ローレンに係る「POLO商標」とは非類似である。
(1) 外観上の要素について 本件商標は、日本人にとってなじみの深い簡潔な英単語である「ROYAL」、「QUEEN'S」、「POLO」、「TEAM」の各語を同書・同大の欧文字で表し、等間隔にて横書きした構成のものである。特に「POLO」の語は、ポロ競技を意味する既成の英単語として広く知られており、また、ポロシャツの略称(普通名称)としても広く一般に用いられていることから、独創性のない語であって、取引の実際上、「POLO」の文字部分が独立して自他商品の識別機能を発揮する部分として分離抽出される要素は全く存在しない。
(2) 観念上の要素について 本件商標は、欧米の富裕層が楽しむ貴族趣味的なスポーツとして高級イメージがある「ポロ競技」を意味する「POLO」の持つ高級イメージを利用したネーミングである。本件商標は、「女王の」を意味する「ROYAL QUEEN'S」の語と「ポロ競技のチーム」を意味する「POLO TEAM」の語とを結合した商標であって、観念的に密接な関連性を有している。また、本件商標を構成する「ROYAL」、「QUEEN'S」、「POLO」、「TEAM」の各語は、いずれも日本人にとってなじみの深い英単語である。しかも、「POLO」の語は、商品「ポロシャツ」の略称(普通名称)としても取引者・需要者に広く知られているから、独創性のない語である。したがって、観念上、本件商標中の「POLO」の文字部分が独立して自他識別機能を果たすと認識しなければならない要素は存在しない。
(3) 称呼上の要素について 前述のとおり、本件商標は外観構成上一体的に表示されていること、本件商標を構成する各語はいずれも日本人にとってなじみの深い簡潔な英単語であって、この四者が一体となったからといって全体の称呼が冗長になるものでもないこと、本件商標を構成する各語は観念的にも密接な関係を有していること、「POLO」の語はポロシャツの略称(普通名称)として広く知られ独創性がないことから、本件商標中の「POLO」の文字部分に相当する「ポロ」の称呼が独立して自他商品の識別機能を果たすと認識しなければならない理由はない。本件商標からは、「ロイヤルクィーンズポロチーム」の一連の称呼のみが生ずるとみるのが相当である。
(4) したがって、本件商標は、ラルフ・ローレンに係る「POLO商標」とは明らかに非類似である。
3 混同のおそれがないことについて 商標法4条1項15号の「混同を生ずるおそれ」の有無を、最高裁判所平成12年7月11日判決の趣旨に従って、「POLO商標」の独創性の程度や本件商標と「POLO商標」との類似性の程度、その他取引の実情等に照らし、本件商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意を基準として、総合的に判断すれば、出願時及び決定時において、本件商標は「POLO商標」と商品の出所について混同を生ずるおそれがないことは明らかである。
(1) 本件において、本件商標がラルフ・ローレンに係る「POLO商標」と出所混同のおそれがあるか否かを判断するに当たっては、「POLO」「ポロ」がポロ競技を意味する英単語、外来語として我が国において広く知られている事実、及び「POLO」「ポロ」が商品「ポロシャツ」の略称として我が国において広く知られている事実等の存在を考慮に入れて判断すべきである。
ラルフ・ローレンは、我が国において横長四角形中に記載された「Polo」の文字を「Polo by RALPH LAUREN」あるいは「POLO RALPH LAUREN」として、「RALPH LAUREN」の語と関連づけて長年に亘って商品「被服等」に使用することにより(甲第12号証)、「POLO」の文字とラルフ・ローレンとの関連性を一般に強くアピールしている。これは「常盤堂の雷おこし」あるいは「大幸薬品の正露丸」として長年にわたって使用し、その結果、取引者・需要者に「雷おこし」(普通名称)といえば常盤堂を、また「正露丸」(普通名称)といえば大幸薬品をまず想起させるという関係と何ら異なるところがなく、登録商標「雷おこし」あるいは登録商標「正露丸」の例と同様に、「RALPH LAUREN」の語の存在を抜きにして、「POLO」の語そのものには強い自他商品識別力を認めることはできない。
ポロ・ファッションズ社が、我が国において「POLO商標」を単独で使用することなく、常に「by Ralph Lauren」あるいは「Ralph Lauren」の語と組み合わせて使用してきた最大の理由は、「POLO(ポロ)」の語が単独では「ポロシャツ」をはじめとする「被服」について自他商品の識別機能を果たし得ないことにある(なお、第三者である公冠販売株式会社が商標「POLO」について保有する登録第1434359号商標権の存在はその理由ではない。なぜなら、公冠販売株式会社とラルフ・ローレンとの間には当該登録商標について昭和62年1月1日付けで使用許諾契約が締結されているからである(甲第20号証)。)。
また、「POLO(ポロ)」標章は、「SONY/ソニー」標章や「CHANEL/シャネル」標章とは同列に論じられない。「SONY/ソニー」は特定の意味を持たない創造語であり、「CHANEL/シャネル」は我が国では馴染みのない人名であって、いずれも独創性のある語であるから、これらの語が商標の一部を構成する場合、取引者・需要者がこれらの語に注目するのは極めて自然なことである。これに対し、「POLO」「ポロ」の語は商品「POLO SHIRTS」「ポロシャツ」の略称として取引者・需要者間において広く用いられており、また、「ポロ競技」を意味する語としても取引者・需要者に広く知られているものである。しかも、スポーツ競技の名称は、被服をはじめとするファッション関連商品に好んで用いられる傾向にある。したがって、本件商標に接した取引者・需要者は、「POLO」の語だけに注目することなく、その前後を構成する他の語「ROYAL」「QUEEN'S」「TEAM」との関係を考慮に入れて全体として認識・理解し、ラルフ・ローレンとの関連性を想起することはないというべきである。
そうとすれば、「POLO」の語が商標の一部に含まれていることをもって、
取引者・需要者が直ちにラルフ・ローレンに係る「POLO商標」を想起すると結論づけることはできないというべきである。
(2) 現在、我が国において、「POLO」及び「POLO」の語を含む結合商標「POLO CLUB」「BEVERLY HILLS POLO CLUB」「WORLD POLO CHAMPIONSHIPS」が、
それぞれ第三者によって商品「被服等」に出願・登録され(甲第14号証ないし甲第18号証)、かつ、使用されており、ラルフ・ローレンに係る「POLO商標」とは明確に区別して取引されている(甲第13号証)。その他にも「POLO」の語を一部に含む商標が商品「被服」等について多数出願・登録されている(甲第19号証)。
また、本件商標の出願時、商標「POLO」については、公冠販売株式会社が「被服」等を指定商品とする商標権を保有しており(甲第14号証、甲第15号証)、同社は自ら上記商標を使用するとともに昭和62年1月1日、ラルフ・ローレンに対し上記商標権について通常使用権を許諾して使用させている(甲第20号証)。
さらに、米国法人 ビーエイチピーシー マーケティング インコーポレイテッドは、商標「Beverly Hills Polo Club」について「被服」等を指定商品とする商標権を保有しており(甲第17号証)、ラルフ・ローレンとの間で上記商標の使用について異議を申し立てないという実質的な許諾によって和解をしている。
これらのことからみて、ファッション関連商品の取引者・需要者は、「POLO」の文字が商標の一部に含まれていることをもって直ちにラルフ・ローレンの商品であると認識することはないとみるのが妥当である。
(3) 使用主義法制を採る米国においても「POLO」を含む商標が「被服」「時計」「眼鏡」等を指定商品として、複数の第三者によって多数登録されている(甲第11号証)。使用主義法制を採る米国では、使用事実がなければ商標登録が認められないのであるから、米国において「POLO」の文字を一部に含む商標が「被服」「時計」「眼鏡」等を指定商品として多数登録を認められているということは、ラルフ・ローレンの本国である米国において、「POLO」の文字が商標の一部に含まれていることをもって直ちにラルフ・ローレンに係る「POLO商標」との出所混同を生ずるおそれがあると認定されていないことを意味する。このことも、ラルフ・ローレンに係る「POLO商標」の我が国商標法に基づく保護の軽重を判断する上で考慮すべき取引の実情の一つというべきである。
(4) 以上のとおり、本件商標は、ラルフ・ローレンに係る「POLO商標」と商品の出所について混同を生ずるおそれがないものであるから、本件決定の認定・判断は誤りである。
被告の反論の要点
決定は、引用商標である「POLO商標」が各種の雑誌及び新聞記事に掲載された事実等を挙げ、「POLO商標」はラルフ・ローレンのデザインに係る被服や眼鏡等の商品に付される商標として本件商標の登録出願前より現在に至るまで継続して周知、著名であると認定し、取引の実情を勘案した結果、「POLO」の文字を含む本件商標をその指定商品である「はき物、その他本類に属する商品」に使用するときには、これに接する取引者、需要者が「POLO」の文字に注目して、ラルフ・ローレンに係る「POLO商標」を連想、想起し、その商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断したものであり、本件商標の構成中に「POLO」の文字が含まれていることのみをもって混同を生ずるおそれがあると判断したのではない。決定の認定・判断は正当であって、取り消すべき理由はない。
1 「POLO」「ポロ」の語は本件商標の指定商品について自他商品の識別機能を果たし得ない普通名称であるとの主張に対して 原告の主張は、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服、眼鏡等について使用される「POLO商標」の著名性及びファッション関連業界の取引の実情を全 く無視したものであって、失当である。
(1) アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは、1967年(昭和42年)に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、かばんなどのデザインをはじめ、紳士物全般に拡大し、1971年には婦人服の分野にも進出した。1970年と1973年に服飾業界で最も権威のある「コティ賞」を受賞し、1974年に、映画「華麗なるギャツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことからアメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した(乙第1、第2号証)。
ラルフ・ローレンのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字とともに「by Ralph Lauren」の文字及び「馬に乗ったポロ競技のプレイヤーの図形」の各標章が使用され、これらの各標章は、「ポロ」と略称されている。
我が国においては、西武百貨店が昭和51年にポロ・ファッションズ社から使用許諾を受け、同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の取り扱いを、同53年から婦人服の輸入、販売を開始した(乙第3号証ないし乙第5号証)。
また、ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士用品は、各種書籍において「POLO」、「ポロ」、「polo」、「ポロ(アメリカ )」 等の表題のもとに紹介され、新聞記事においても、単に「ポロ」、「ポロのマーク」等として掲載されている(乙第6号証ないし乙第10号証、乙第11号証の1,2)。
加えて、新聞には、ラルフ・ローレンの「POLO商標」を模倣した偽物ブランド商品が市場に出回っている事実が報道されている(乙第12号証の1ないし5)。これらの記事によれば、昭和63年には既に我が国において「Polo」の文字などを使用した偽物ブランド商品が出回っていた事実があり、その後も同様な事例が後を絶たないことがわかる。そして、これらの報道ではラルフ・ローレンに係る標章が「ポロ」「POLO(ポロ)」と称されているのである。
上記の各事実を総合すると、我が国において、ラルフ・ローレンの商品に使用される標章は、「POLO(ポロ)」と略称され、遅くとも本件商標の出願時までに、取引者、需要者の間に広く認識されるに至っており、その認識の度合いは現在においても継続しているというべきである。
(2) 一方、ポロ競技は、我が国においては、その愛好者は極めて少なく、一般になじみの薄いスポーツであって、一般世人が購読すると認められる「スポーツ用語」(株式会社教育社平成4年11月25日発行、乙第13号証)、「ニュースポーツ百科」(株式会社大修館書店平成7年9月20日発行、乙第14号証)及び高等学校などの教材に使用される「NEW COLORSPORTS1995」(一橋出版株式会社平成7年4月1日発行、乙第15号証)にも「ポロ競技」 は掲載されていない。
また、平成10年1月17日付の読売新聞(東京夕刊6頁、乙第16号証)には、
「『ポロ』の国内初の競技場が、福岡県粕屋町に建設されることになった」ことに関する記事において、ポロ競技は「日本では競技人ロ約30人の超マイナースポーツ。」と記載されている。
ポロ競技を表す「POLO(ポロ)」の語が国語辞典、外来語辞典等に記載されていること(甲第2号証の1ないし35)は、「POLO」が一般に広く知られているということの証左にはならない。
(3) 上記(1)及び(2)のとおり、「POLO商標」はファッション関連分野においてラルフ・ローレンのデザインに係る被服、眼鏡等について使用される標章として取引者、需要者間に広く認識されているものであり、我が国において「POLO」、「Polo」、「ポロ」をはじめ、「by Ralph Lauren」の文字及び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形」などの各標章をまねた偽物を「ラルフ・ローレンのデザインに係る商品」などと販売している事実があること、及び我が国においてポロ競技がなじみの薄いスポーツであることなどを総合すれば、被服や眼鏡等のファッション関連の商品に「POLO」「Polo」「ポロ」の文字を使用した場合には、
これに接する取引者、需要者は、スポーツ競技の名称を表したと理解するというより、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品であると認識することになるというべきである。したがって、「POLO」には自他商品の識別力がないという原告の主張は理由がないばかりでなく、むしろ頻繁に模倣品が出回るほど、強い識別力顧客吸引力を有しているというべきである。
(4) 原告は、「POLO」「ポロ」の語が「ポロシャツ」の略称として使用されていると主張するが、その主張は当たらない。
商品「ポロシャツ」が「POLO」「ポロ」と略称されている事実を示すものとして原告が提出した甲第4号証ないし第7号証、第21号証、第25号証、第28号証ないし第37号証は、その多くが、ラルフ・ローレンの「POLO商標」の著名性が確立された以降の平成7年から平成12年にかけて発行されたものであり、ラルフ・ローレンの「POLO商標」に引きずられたものと見る余地がある。事実、ラルフ・ローレンの「POLO商標」の著名性が確立される前に発行された、例えば、同文書院(1979年(昭和54年)7月5日増補第10刷)発行「田中千代 服飾事典」(乙第17号証)、文化出版局(昭和54年4月13日第2刷)発行「服飾辞典」(乙第18号証)、株式会社洋品界(昭和53年1月10日重版)発行「現代衣料事典」(乙第19号証)には、「POLO」「ポロ」の語が「ポロシャツ」の略称であることについての記載は見当たらない。また、原告の提出に係る甲第28号証及び同第29号証には、「POLO COAT」、「ポロ・コート」及び「ポロ・カラー」の記載はあるものの、「POLO」「ポロ」の語が「ポロシャツ」の略称として使用されていることを示す記述はない。米国及び仏国において「POLO」の語が「ポロシャツ」の略称とされているかどうかは、我が国における取引の実情とは直接関係がない。
また、仮に、原告主張のように「POLO」「ポロ」の語が「ポロシャツ」の略称であったとしても、それは、「POLO」「ポロ」の語が「ポロシャツ」の略称として用いられる場合に限られるのであって、ポロシャツとは異なる本件商標の指定商品について当てはまるものでないことは明らかである。
2 非類似の主張に対して 原告は、本件商標中の「POLO」の文字部分には、独立して自他商品の識別機能を発揮する部分として認識される外観上、観念上あるいは称呼上の要素(分離抽出要素)がないから本件商標とラルフ・ローレンに係る「POLO商標」とは非類似であると主張するが、この主張は、ラルフ・ローレンの「POLO商標」が「POLO(ポロ)」と呼ばれて著名であったことを無視して商標の類否を論じるものであって、
全く失当である。
3 混同のおそれがないとの主張に対して (1) 前記1のとおり、「POLO商標」は、我が国において、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等について使用される標章を総称するものとして、取引者・需要者の間に広く認識されているものであり、その認識の度合いは、本件商標の出願時、決定時のみならず、現在においても継続している。
被服、眼鏡等のファッション関連商品分野において、「POLO」(ポロ)といえば、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服、眼鏡等について使用される標章を直ちに想起させるものである。我が国において、「POLO」をはじめ、ラルフ・ローレンの使用する標章を真似た偽物が多数出回っている事実は、「POLO商標」が極めて強い自他商品の識別力顧客吸引力を有していることを示すものである。
一方、本件商標は、「ROYAL QUEEN'S POLO TEAM」の欧文字を書してなるものであるところ、全体として、親しまれた熟語的意味合い、もしくは団体名称を表すものとして我が国の一般世人によく知られているものとは認め難く、これを常に一体不可分のものとしてのみ把握しなければならない特段の事情はない。しかも、
本件商標は、19文字といった極めて多い文字を一様な大きさで書してなるものであり、これより生ずる「ロイヤルクイーンズポロチーム」の称呼も、14音より構成されているものであるから、外観及び称呼上冗長といえるものである。上記構成態様よりなる本件商標にあって、これに接する取引者、需要者は、前記の事情よりすれば、その構成中の、著名標章と同一の綴りよりなる「POLO」の文字部分に強く印象付けられ、ラルフ・ローレンに係る著名標章である「POLO商標」を連想・想起すると考えるのが自然である。
してみれば、本件商標を、ファッション関連商品であるその指定商品について使用した場合は、取引者、需要者をしてラルフ・ローレン又は同人と何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品との間に、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべきである。 (2) 原告は、我が国において、「POLO」及び「POLO」の語を含む結合商標が、
第三者によって商品「被服等」に出願・登録され、かつ使用されており、ラルフ・ローレンに係る「POLO商標」とは明確に区別して取引されていること等を指摘し、取引者・需要者は、「POLO」の文字が商標の一部に含まれていることをもって直ちにラルフ・ローレンの商品であると認識することはないと主張する。
しかし、原告がその主張の根拠とする「'98ブランド&キャラクター調査」(甲第13号証)は、それぞれのブランド相互の関係についての認識が記載されていないから、調査の対象となった消費者が「ポロ」の文字を含むブランドをラルフ・ローレンの著名な「POLO商標」と何らかの関係があるものと誤解している可能性を否定することができない。また、「POLO」及びそれを含む登録商標が、第三者によって商品「被服等」に多数出願・登録されていることや使用許諾を受けている事実等は、商品「被服、眼鏡」等に使用するラルフ・ローレンに係る「POLO商標」が著名であることを直ちに否定するものではない。「POLO」の文字を含む商標がラルフ・ローレンの「POLO商標」と区別して認識されるというのは、当該商標がラルフ・ローレンとは関係のないものとしてよく知られるに至っている等の特段の事情がある場合にいえることであるが、本件商標については、そのような特段の事情が存するともいえない。
(3) 米国において「POLO」を含む商標が「被服」「時計」「眼鏡」等を指定商品として複数の第三者によって多数登録されている事実があっても、米国の商標法による商標の保護制度と日本のそれとは、両国間に国情の相違があるように法制度が異なるのであるから、我が国におけるラルフ・ローレンの「POLO商標」の保護の軽重を判断するうえで、米国と同一の解釈をとらなければならない理由はない。
当裁判所の判断
1 乙第1ないし第12号証(枝番を含む。以下、同じ)の書籍及び新聞によれば、次の事実が認められる。
(1) ラルフ・ローレンは、ニュー・トラディッショナル・ファッションの旗手として、アメリカのファッション界を代表する著名なデザイナーであり、同人のデザインに係る紳士服、婦人服、眼鏡等の一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字とともに、「by RALPH LAUREN」あるいは「by RALPH LAUREN」の文字及びヨーロッパ上流階級のスポーツであるポロ競技をデザイン化した「馬に乗ったポロ競技のプレイヤーの図形」の各標章が使用されている。我が国においては、昭和52年から昭和53年にかけて、西武百貨店がラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス、婦人服の販売を本格的に開始した(乙第1号証ないし乙第5号証)。
(2) 昭和53年から昭和60年頃にかけて発行されたファッション関係の書籍・雑誌「男の一流品大図鑑」(昭和53年7月発行、乙第1号証)、「舶来ブランド事典 '81 THE BRAND」(乙第2号証)、「男の一流品大図鑑」('81年版及び'80年版)(乙第6号証、第7号証)、「世界の一流品大図鑑'81年版」(乙第8号証)、「別冊チャネラー ファションブランド年鑑'80年版」(乙第9号証)、
「流行ブランド図鑑」(昭和60年5月発行、乙第10号証)には、ラルフ・ローレンに係る商品が「Polo」、「POLO」、「ポロ」、「ポロ(アメリカ)」などの表題の下に一流ブランドないし有名ブランドとして紹介されており、それらの中には「ポロはアメリカのデザイナーの第一人者、ラルフ・ローレンの商標」と記載するもの(乙第9号証)もある。
また、平成元年前後には、若い世代のブランドブームが報じられるようになり、新聞記事の中で、「いまどきのクリスマス・・・プレゼントの単価が上がり、ポロやアルマーニ、ルイフェロー、ソニアなどの輸入ブランドに人気があるという。女性から男性へは、ポロのセーター(1万4000円)」(平成2年11月27日付け朝日新聞東京地方版及び栃木版記事、乙第11号証の1)、「ポロの靴下 ブランド世代が高感度消費者に・・・白い靴下、足元は申し合わせたようにラルフローレンのポロのマーク」(平成3年12月5日付け朝日新聞大阪・京都版記事、同号証の2)などのように、ラルフ・ローレンの商品ないしブランドが「ポロ」の名で取り上げられるようになった。
(3) さらに、平成元年には、ラルフ・ローレンの商品に使用されている標章を模倣した偽ブランド商品の摘発が報道され(平成元年5月19日付け朝日新聞夕刊、乙第12号証の1)、その後も同様の偽ブランド事件が後を絶たないことが窺われる(乙第12号証の2ないし5)。そして、これらの新聞報道においては、
「「ポロ」の偽 大量販売 警視庁 通信販売会社を摘発・・・「Polo(ポロ)」の商標で知られるラルフローレンブランドのにせポロシャツ」(乙第12号証の1)、「コピー商品取り締まり強化へ ・・・今年は5月に、アメリカの人気ブランド「ポロ」(本社・ニューヨーク)のロゴ「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」に酷似したマークのTシャツを販売していた大阪の業者が・・・逮捕、罰金刑に処せられた。」(平成4年9月23日付け読売新聞東京朝刊記事、同号証の2)、「偽「ポロ」眼鏡枠を摘発・・・ポロ競技のマークで知られる米国のファッションブランド「POLO(ポロ)」の製品に見せかけた眼鏡枠」(平成5年10月13日付け読売新聞大阪朝刊記事、同号証の3)、「米国ブランド「ポロ」などのマークが入った偽物のセーターやポロシャツ」(平成11年6月8日付け朝日新聞西部朝刊記事同号証の4)、「ラルフローレン偽物衣類を販売・・・・米国の衣料品ブランド「ポロ・ラルフ・ローレン」の偽物セーターを販売したなどとして・・・販売商標法違反などの疑いで逮捕した。・・・・・・「ポロ」ブランドの偽物セーターを販売」(平成11年9月9日付け日本経済新聞記事、同号証の5)などに見られるように、ラルフ・ローレンの商品ないしそのブランドが「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と称されている。
(4) 上記認定事実に照らすと、本件商標の商標登録出願(平成3年4月9日)よりも前に、ラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連の商品は、我が国において、「ポロ」、「POLO」、「Polo」のブランド名で広く知られ、また、これらの商品に使用されている「Polo」の文字を含む標章もラルフ・ローレンのデザインに係る商品を示すものとして、著名といい得る状態に至っており、「ポロ」「POLO」の語は、それ自体として、強い自他商品識別力顧客吸引力を有し、
その状態は、決定時においても変わっていないことが認められる。
2 ところで、本件商標は、「ROYAL QUEEN'S POLO TEAM」の欧文字列からなるものであるところ、本件全証拠によっても、その全体が一つの熟語として、あるいは特定の団体名称を表すものとして、我が国においてよく知られているものとは認めることはできず、他に、これを常に一体不可分の一連のものとしてのみ把握しなければならない特段の事情も認められない。かえって、本件商標は、19文字を一様な大きさで書してなり、これにより生ずる「ロイヤルクイーンズポロチーム」の称呼は14音より構成されるものであって、その外観称呼のいずれにおいても冗長であるところから、これに接する需要者は、その構成中の「POLO」の文字部分に印象付けられ、著名なラルフ・ローレンの「ポロ(Polo)」ブランドを連想・想起する可能性が高い。
そうすると、ラルフ・ローレンの商品が「Polo」の文字を含む標章を付して一連のファッション商品群に展開されているという事情の下で、本件商標をその指定商品(「はき物 その他本類に属する商品」)について使用した場合は、需要者をして、ラルフ・ローレン又は同人と何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品との間に、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべきである。 近年、いわゆるブランド品が有名店のみならず、ディスカウントショップや大衆的なファッション関連ショップで扱われる傾向にあることは当裁判所に顕著な事実であり、ブランド品の大衆化現象と相まって、需要者の中には、各種のブランドについて詳しい知識を持たない者も多数含まれているのであるから、これらの需要者の注意力を考慮して判断すると、本件商標が「履き物 その他本類の商品」に使用された場合、
著名なラルフ・ローレンの「ポロ(Polo)」が連想・想起され、ラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関連がある者の商品であるかのように誤解される蓋然性があるといわざるを得ない。
3 原告は、本件商標が「POLO」の語を含むというだけでラルフ・ローレンに係る「POLO商標」と出所混同が生じるとはいえないと主張し、その理由として、
@「POLO」「ポロ」の語は、我が国においてはポロ競技を意味する語として広く知られており、また、衿付き半袖シャツである商品「ポロシャツ」の略称(普通名称)としても広く用いられているから、自他商品識別力がなく、本件商標の構成中で着目される部分ではなく、「POLO」の語は、米国や仏国の取引の実情においても識別力のない普通名称である、A本件商標については、外観観念称呼のいずれの点においても「POLO」の文字部分が独立して自他商品の識別機能を発揮する部分として抽出される要素はなく、本件商標とラルフ・ローレンに係る「POLO商標」とは非類似である、Bラルフ・ローレンの「POLO商標」は、「RALPH LAUREN」の語と関連づけて使用されており、「RALPH LAUREN」を抜きにした単独の「POLO」の語そのものに強い自他商品識別力を認めることはできないうえ、我が国においては「POLO」及び「POLO」の語を含む結合商標が第三者によって商標出願登録されて被服等の商品に使用され、ラルフ・ローレンに係る「POLO商標」とは明確に区別して取引されている、などと主張する。しかし、原告の主張は、本件商標について商品の出所混同のおそれがあるとの認定(前記2)を左右するに足りない。
(1) 主張@について 甲第2号証の各種国語辞典、外来語辞典等には、「ポロ」の語をポロ競技の意味として簡単な説明が記載されており、我が国においても、「ポロ」の語がポロ競技を指すものであること自体は知られているものと認められる。しかしながら、乙第13ないし第16号証及び弁論の全趣旨によれば、ポロ競技は、我が国においてはほとんど普及していないスポーツであり、競技者は極めて少ないのであって、ポロ競技を現実に観戦したり、テレビ等を通して見るという機会もほとんどないことから、具体的にルールや競技内容を知る人も少なく、我が国においては極めてなじみの薄いスポーツであることが認められる。また、我が国でポロ競技の特定の団体、クラブ、チーム等が広く知られていることを認め得る証拠もない。したがって、一般に「ポロ」の語は直ちにポロ競技を想起させるものとはいい難く、むしろ、前記1で認定したとおり、ファッション関連分野でラルフ・ローレンの商品に使用される「Polo」「POLO」の文字を含む標章が著名となっており、「ポロ」(POLO)の偽ブランド品の摘発が新聞記事になることもあるという事情の下では、本件商標中の「POLO」の文字部分は、ラルフ・ローレンのブランドとして著名な「ポロ」(Polo)を連想、想起させる蓋然性が高いというべきである。また、
「ポロ」「POLO」の語がポロシャツの略称として使用されることがあるとしても、
本件商標がその指定商品である「履き物 その他本類の商品」に使用された場合に、本件商標中の「POLO」の文字がポロシャツの略称であると理解されることはあり得ない。原告主張の米国及び仏国における取引の実情は、我が国の取引の実情において「POLO」「ポロ」に強い自他商品識別力顧客吸引力があるとの前記1の認定を左右するに足りない。
したがって、「POLO」が自他商品識別力を有せず、本件商標の構成中で着目される部分でないという原告の主張は採用することができない。
(2) 主張Aについて 原告は、本件商標の構成中の「POLO」の文字部分は、外観観念称呼のいずれにおいても、独立して自他商品の識別機能を発揮する部分ということはできないと主張する。しかし、本件商標である「ROYAL QUEEN'S POLO TEAM」が外観観念及び称呼において常に一連不可分のものとしてのみ把握されるものといえないことは前記2に認定したとおりであり、このことと前記1で認定したラルフ・ローレンのブランドとしての「ポロ」「POLO」の我が国における著名性とを考慮すると、
本件商標の構成中の「POLO」の文字部分は、独立して注目されやすい部分ということができる。したがって、「POLO」が独立して注目される部分でないことを理由に混同のおそれがないとする原告の主張は、その前提を欠くものであり、採用できない。
(3) 主張Bについて 原告は、「RALPH LAUREN」を抜きにした単独の「POLO」の語そのものに強い自他商品識別力は認められないと主張するが、「POLO」の語は単独でも強い自他商品識別力を有すると認められることは前示のとおりである。そして、我が国において、「POLO」及び「POLO」の語を含む結合商標が第三者によって商標出願登録されて被服等の商品に使用されていることは原告主張のとおりとしても、それらの第三者の商標が取引者・需要者においてラルフ・ローレンの「POLO」と明確に区別され、当該第三者の商標を付した商品がラルフ・ローレンとは関係がないものとの認識の下に取引されているものであるか否かは本件全証拠によるも明らかでない。仮に、明確に区別されているとしても、その区別の基礎となっている事情は当該商品に固有のものであって、本件商標を使用する商品に当てはまるものではなく、本件商標については、前記2のとおり、混同のおそれがあるというべきである。
(4) したがって、原告主張の点はいずれも本件商標について商品の出所混同のおそれがあるとの前記認定を左右するものではない。
4 以上の通りであるから、原告主張の取消事由は理由がなく、その他決定を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 古城春実
裁判官 橋本英史