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関連審決 審判1999-10611 審判1983-23042
審判1973-7310
審判1982-14114
審判1965-3250
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成11行ケ261審決取消請求事件 判例 商標
平成20行ケ10042審決取消請求事件 判例 商標
平成17行ケ10213審決取消請求事件 判例 商標
平成18行ケ10280審決取消請求事件 判例 商標
平成19行ケ10172審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 指定商品 /  指定役務 /  4条1項11号 /  類似性(類否判断) /  結合商標 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  補正 /  非類似 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 505号 審決取消請求事件
原告 株式会社イーファッション(審決上の表示) 株式会社オフィス・アイ
訴訟代理人弁理士 大竹正悟
同 武田寧司
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 酒井福造
同 茂木静代
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/04/24
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が平成11年審判第10611号事件について平成12年11月8日にした審決を取り消す。
前提となる事実(争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成7年8月25日、別紙審決書の写し記載の「本願商標」のとおりの構成(下線を施した「LEAF」の欧文字、及びその「E」の文字と、「A」の文字の上部との間に書された「葉」形と見ることができる図形)よりなる商標(以下「本願商標」という。)について、指定商品を商品及び役務の区分第25類の「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽、エプロン、えり巻き、靴下、ゲートル、毛皮製ストール、ショール、スカーフ、足袋、
足袋カバー、手袋、布製幼児用おしめ、ネクタイ、ネッカチーフ、マフラー、耳覆い、ずきん、すげがさ、ナイトキャップ、ヘルメット、帽子、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)、靴合わせくぎ、靴くぎ、靴の引き手、靴びょう、靴保護金具、げた、草履類」として商標登録出願(平成7年商標登録願第86839号)をし、その後、指定商品について、平成9年4月28日付け手続補正書により「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽、エプロン、えり巻き、靴下、ゲートル、毛皮製ストール、ショール、スカーフ、足袋、足袋カバー、手袋、布製幼児用おしめ、ネクタイ、ネッカチーフ、マフラー、耳覆い、ずきん、すげがさ、ナイトキャップ、ヘルメット、帽子、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト」と補正したが、拒絶査定(平成11年6月4日発送)を受けたので、平成11年7月1日、拒絶査定不服の審判を請求した。
特許庁は、同請求を平成11年審判第10611号事件として審理した結果、平成12年11月8日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同月27日に原告に送達された。
2 審決の理由 別紙審決書の写しのとおり、
「本願商標は、その構成中の「LEAF」の文字部分に相応して「リーフ」の称呼を生ずることが明らかである。他方、別紙審決書の写し記載の「引用商標」のとおりの構成(「REEF」の欧文字を書したもの)よりなり、指定商品を第25類「被服(但し、和服を除く)、履物」とする平成7年3月7日商標登録出願に係る商標(平成11年10月22日登録、登録第4327539号、以下「引用商標」という。)は、該構成文字に相応して「リーフ」の称呼を生ずることが明らかである。したがって、本願商標と引用発明とは、外観において相違し、観念上相紛れるおそれがないとしても、それぞれから生ずる「リーフ」の称呼を共通にする類似の商標と認められ、かつ、その指定商品も、同一又は類似のものであるから、本願商標は、商標法4条1項11号に該当し、登録することができない。」旨認定、判断した。
原告主張の審決取消事由の要点
審決は、本願商標と引用商標の類否判断を誤ったものであるから違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(本願商標の称呼の認定の誤り) (1) 審決は、本願商標は「LEAF」の文字に相応して「リーフ」の称呼を生ずることが明らかであるとしているが、これでは本願商標の称呼が正しく認定されていない。
本願商標は、英文字「LEAF」の部分から無理なく自然に「リーフ」の称呼が生じることは明らかであるが、それだけでなく、その構成態様からすれば、図形部分からも「ハ(ジルシ(印)ないしマーク)」といった称呼が生じると考えるのが正しい。なぜなら、当該図形は、本願商標の中央やや上部に表示されており着目されやすく、その図形自体一目見ればその形状を認識することが可能であり、誰にでも親しみのある「葉」形であって、こうした親しみのある図形の持つ情報伝達力、
すなわち商品表象力の高さ、早さ、分かり易さが、簡易迅速を旨とする取引の実際に即しているからである。とすれば、本願商標の図形部分からは「ハ(ジルシ(印)ないしマーク)」といった称呼を認めることができる。この結果、本願商標の構成態様に基づいて忠実に称呼を認定すれば、本願商標からは全体として「ハ(ジルシ又はマーク)リーフ」ないし「リーフハ(ジルシ又はマーク)」といった称呼が生じる。
参考までに過去の審決例を見ても、こうした考え方と同様の考え方のものが多数見受けられる(昭和57年審判第14114号審決では、黒塗り星形図形の内部中央がアルファベットの「N」の文字により白抜きしてなる商標から発生する称呼が、該図形に相応して「ホシエヌ」のみであるとしている(甲第4号証)。また、
昭和48年審判第7310号審決では、五稜星の図形を3個、品字形に表示した部分を含む商標から「スリースター」(三ツ星)の称呼が生じるとしている(甲第5号証)。また昭和58年審判第23042号審決では、太線の円輪郭の中に「米」の漢字を毛筆体の楷書で肉太に書した図形部分を含む商標から、その図形部分より「マルコメ」の称呼が生じるとしている(甲第6号証)。さらに昭和40年審判第3250号審決では、菱形の図形内に「KEL」の文字が表された商標全体から「ヒシケーイーエル」の称呼が生じるとしている(甲第7号証)。)。
したがって、本願商標からは「リーフ」の称呼以外にも「ハ(ジルシ又はマーク)リーフ」ないし「リーフハ(ジルシ又はマーク)」といった称呼が生じるのであり、このことを看過した審決は事実認定に明らかに誤りがあったものと認められる。 (2) 被告の主張に対する反論 ア 被告は、本願商標の図形部分は付記的図形と理解されるにすぎないと主張する。
しかし、本願商標の図形部分は、被告が主張するような付記的部分などではない。当該図形は、本願商標の中央やや上部に表示されており、本願商標の中心部分を占めるものである。そして、文字部分と図形部分の観念上の一体性が強いと被告も主張するように、図形部分は誰でも親しみのある「葉」であると容易に認識することができるほど特徴のある図形である。したがって、この特徴ある図形部分から自然に「ハ(ジルシ又はマーク)」の称呼が生じ得るのである。
イ 被告は、本願商標の図形部分が文字部分に融合されて「リーフ」と称呼されると主張する。
しかし、被告の主張には、文字部分から「葉」を観念し、図形部分から「葉」を観念し、両者とも「葉」で同一だから、図形部分と文字部分を融合させて「葉」を認識し、そこからまた文字部分に戻って「リーフ」と称呼するという、自然というよりもむしろ作為的なプロセスが存在する。すなわち、被告の主張する称呼の発生は、本願商標から生じる観念を前提にしたむしろ不自然な称呼であるということができる。
しかしながら、本願商標は願書に添付された商標見本に記載の商標であり、そこには文字部分と図形部分が存在し、その構成態様に忠実に従えば、文字部分及び図形部分から「リーフハ(ジルシ又はマーク)」又は「ハ(ジルシ又はマーク)リーフ」と称呼されるのである。あくまで商標見本に基づいて忠実に称呼を認定するのが基本中の基本である。簡易迅速を旨とする商取引を考慮しても「リーフハ(ジルシ又はマーク)」又は「ハ(ジルシ又はマーク)リーフ」から発生する4音又は7音からなる称呼は決して冗長ではなく、「リーフハジルシ」などの称呼は決してい称呼しづらいということはない。
よって、本願商標からは「リーフハ(ジルシ又はマーク)」又は「ハ(ジルシ又はマーク)リーフ」の称呼が生じることは明らかであり、単に「リーフ」の称呼しか生じないとする被告の主張は誤っている。
2 取消事由2(引用商標の称呼の認定の誤り) (1) 審決は、引用商標は「REEF」の文字を書してなるものであるから、
該構成文字に相応して「リーフ」の称呼を生ずることが明らかであるとしているが、こうした引用商標の称呼の認定は不十分である。
なぜなら、引用商標からは、「リーフ」、「リエフ」、「レーフ」又は「レエフ」の4つの称呼が生じると考えられる。しかし、審決は、「リーフ」の称呼を生じる理由について、「該構成文字に相応して」と記載するだけで何も明らかにしていない。引用商標の称呼を正しく認定すると、上記4つの称呼のうち、最も自然に発声される特定の称呼はないと考える。英和辞典によれば「REEF」は「礁、岩礁」等を意味する英単語であり、日本語でその発音を表記すれば、「リーフ」となると考えられるが、「REEF」の語自体が、我が国における本願商標の指定商品の取引者等の間でよく知られた単語であるといった事実は見当たらない。そうであれば、「REEF」から「リーフ」の称呼のみが生じるとはいいきれない。すなわち、意味の分からない単語に接した者は、通常ローマ字読みすると思われ、そうとすると、「レエフ」の称呼が生じるものと思われる。また、「REEF」のうち「RE-」の部分を、「再び、新たに」を意味する接頭語であるととらえると、
「REEF」を「RE」と「EF」に分断して、「リエフ」と称呼することも考えられる。また、「E」音は「エ」と称呼しうる点から、「レーフ」又は「レエフ」とも読むことができる。
したがって、引用商標からは「リーフ」の称呼以外にも、「リエフ」、「レーフ」又は「レエフ」の称呼が、いずれも自然に発生する。その結果、引用商標から生じる特定の称呼はないと考えるのが相当である。したがって、この点を看過した審決には事実認定に誤りがある。
(2) 被告の主張に対する反論 被告は、英単語において、「ee」を「i:」(イー)と発音するように、引用商標にあっても全体として「リーフ」と称呼することについては、何ら困難が伴うわけではなく、むしろ極めて自然に称呼されるというべきであると主張する。
確かに、引用商標から「リーフ」の称呼が生じる場合も全く無いとはいえない。
しかしながら、被告は「REEF」の英語がよく知られていない英語であるとしているにもかかわらず、何故「ee」から「イー」と発音し得るという点のみをもって「リーフ」が自然の称呼であると特定しているのか全く不可解である。
被告の判断には、原告が指摘する他の観点、すなわち、英語をよく知らない者が通常採用するローマ字読みをした場合に「レエフ」と自然に称呼される点や、「REEF」のうち「RE-」の部分を「再び、新たに」を意味する接頭語であると捉えて「リエフ」と称呼し得る点、また、「E」音は「エ」と称呼することができるから「レーフ」又は「レエフ」とも称呼し得る点を看過している。したがって、
「REEF」の英語がよく知られていない英語であるとしているにもかかわらず、
引用商標から生じる自然な称呼が「リーフ」であるとする被告の前記主張は全く理由がない。「REEF」の英語がよく知られていない英単語であるからこそ、原告が主張するように引用商標から生じる特定の称呼はないのである。
3 取消事由3(類否判断の誤り) (1) 審決は、本願商標と引用商標は、外観において相違し、観念上相紛れるおそれがないとしても、それぞれから生ずる「リーフ」の称呼を共通にする類似の商標と認められ、かつ、その指定商品も同一又は類似のものであるので、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当すると判断する。しかしながら、これは商標法4条1項11号の適用を誤って判断したものである。
(2) まず、本願商標からも引用商標からも「リーフ」の称呼が生じるとしても、本願商標も引用商標も、「リーフ」の称呼が通常用いられる称呼とは限らないと考えられる。したがって、この称呼の同一性のみをもって本願商標と引用商標が類似であるとすることはできない。
(3) 次に、本願商標と引用商標の両商標から生じる「リーフ」の称呼が仮に同一であったとしても、外観観念を含めた全体として商標の類否を判断せずに、
本願商標と引用商標が類似するとした審決の判断は誤っている。
ア 商標の類似を認定する際の判断要素である「外観」、「称呼」、「観念」の何れか一つにおいて同一又は類似であったとしても、「外観」、「称呼」、
観念」の全ての要素を総合的に判断すれば、比較する商標は類似しない場合があり得る。
本願商標について検討すれば、外観観念については引用商標と完全に相違しており、たとえ称呼が同一になる場合があったとしても、両商標が混同されることは絶対にあり得ることではない。本願商品の指定商品は、総じて、その取引に当たって商品のブランドを特に強く意識して売買されるものである。なぜなら、本願商標の指定商品の分野では、類似品が多く存在し、また、一見同一の名称であると思える場合でも、商品の出所が異なることが多いからである。そして、そのことをよく知っている需要者、取引者は、商標をよく確認して商品の購入を決めるものだからである。
例えば、「VALENTINO」と一口に言っても「VALENTINO CHRISTY/バレンチノ クリスティ」(登録第3370271号、商公平8-6408号)(甲第8号証)と「VALENTINO JOURDAN/バレンチノジョルダン」(登録第3370904号、商公平8-133631号)(甲第9号証)は異なる商標である。つまり、最も重要なのは外観である。したがって、万一称呼が同一であるとしても、本願商標の指定商品の関係まで考慮して、外観称呼観念を総合的に判断すれば、本願商標と引用商標とは非類似である。
付言すると、裁判例においては、通常は、外観称呼観念のうちいずれか一つにおいて相紛らわしい場合は類似とされるものの、一方で、特別の事情がある場合には、外観称呼観念のいずれか一つが類似であっても、全体として見ると非類似である、と結論づけた判例も多く見受けられるのである。
例えば、最判昭和43年2月27日(「氷山印」事件)では、比較する商標からそれぞれ生じる「ひょうざん」と「しょうざん」という称呼が類似するにもかかわらず、商標を称呼のみによって識別することがほとんどないという実情を参酌して、比較する商標の類似性を否定している。
さらに、東京高判昭和60年10月15日(「TAKARA」事件)においては、比較する両商標から互いに「タカラ」の称呼が生じていることを認めながら、
結論として比較する両商標は非類似であるとしている。
このように、商標法4条1項11号の商標の類否判断は、取引の実情を参酌して類否が判断され、外観称呼観念のうちいずれかが、同一又は類似であっても、
比較する商標が全体的に非類似であると結論づけることに何ら違法性はないと考えられる。
イ 以上のとおり、仮に本願商標と引用商標の称呼が同一であったとしても、外観観念の相違をも含めて総合的に判断されるべきであるので、以下、両商標について、外観観念を比較する。
(ア) 外観について 本願商標は、一見すると、英文字「LEAF」を横一列に並べた中央に、葉の形の図形を施したもので、文字を基調にした中に図形をあしらった結合商標である。
しかし、本願商標を説明するために無理に本願商標を分解すると、横方向に引かれた一本の直線の上に「LEAF」の文字が配置され、「LEAF」を構成する文字の内、中央の「E」と「A」の2文字は、両側にある「L」と「F」の各文字よりも小さく描かれ、そしてこの小さく描かれた「E」と「A」の文字の上に、これらの文字よりも大きな葉図形が乗っているように構成されている。また、「E」、
「A」と葉図形を両側から包み込むように「L」、「F」が大きな書体で表記されている。そして、商標全体として見ると、地面の上に置かれた「L」、「E」、
「A」、「F」という形のものの上に一葉の葉が降り落ちて、ちょこんと乗っているようにイメージさせるものである。
このように本願商標は、「LEAF」の英文字、葉図形及び横方向の一本の直線が、全体として極めて高度にまとまりよく配置されて構成されている商標である。
そこで、法の規定に従って本願商標の外観を願書の記載に基づいて忠実に認定すると(商標法27条1項)、本願商標の外観における要部は、「LEAF」の英文字、葉図形及び横方向の一本の直線から構成された本願商標の構成態様の全体にある。
これに対して、引用商標は、「REEF」の英文字を横一連に表した単なる文字商標である。
そこで本願商標の外観を引用商標の外観と対比すると、本願商標は、「LEAF」の英文字だけでなく葉図形を有する結合商標であるのに対し、引用商標は「REEF」の英文字だけからなる単なる文字商標である。つまり、まず指摘したいのは、引用商標には、本願商標に特徴的な図形部分が存在しない、ということである。本願商標の葉図形は、「LEAF」と一体的に表示されることで、本願商標の外観から「葉のイメージ」を強烈に取引者、需要者に印象付けるものである。ところが、引用商標の外観には、これと共通する「葉のイメージ」を表象して取引者、
需要者に印象付ける要素がどこにも無い。こうした図形を含む商標の外観が与える印象は、本願商標の指定商品に係る分野であるファッション業界では、特に重要である。つまり、この分野では宣伝広告の手段として、取引者、需要者の視覚に直感的に訴える「図形」が常套手段として多用されて、意図するブランドイメージを取引者、需要者の脳裏に植え付けるようにしている。
したがって、本願商標は、外観上、本願商標のような「葉のイメージ」を発揮することがない引用商標とは非類似である。 また、仮に、本願商標の「LEAF」と引用商標の「REEF」との文字構成だけに着目して対比してみても、双方とも全文字数が4文字であり一見すれば全体が目に留まるほど文字数が少ない。この少ない文字数の中で、1文字目と3文字目の2箇所もの違いがあり、両文字は完全に識別可能である。
以上の通り、本願商標は、図形の有無と文字構成について引用商標とは、混同の余地が全くないほど外観上相違しており、しかも上述のような本願商標の指定商品に係る業界の商標の使われ方も併せて考えれば、もはや称呼にかかわらず、この外観非類似によって引用商標とは完全に非類似であると考える。
(イ) 観念について 本願商標は、「LEAF」の英文字とそれに組み合わせた図形が「葉」の形状であることから、「葉」の観念を想起するものである。すなわち、本願商標には、
「LEAF」だけでなく「葉」形の図形が含まれており、それを見れば「LEAF」が「葉」を意味するものと誰でも直感的に連想することが可能だからである。
一方、引用商標から生じる観念は、「岩礁、礁」であるか、又は何の観念も生じないものと思われる。「REEF」は「岩礁、礁」を意味する英単語であるが、一般的には特定の語義を想起させるほどなじみのある英単語ではない。したがって、
「REEF」全体として何の意味もない造語ととらえることも、自然であると考えられるからである。
したがって、本願商標の観念を引用商標の観念と対比すると、両観念は意味的に完全に相違しており、近接した意味合いを持っている訳でもないか、比較すべきもないものである。よって、本願商標は、観念についても引用商標と非類似である。
ウ このように、本願商標と引用商標とは、称呼が同一であったとしても、
外観観念において明らかに全く相違するので、本願商標と引用商標は互いに非類似の商標というべきである。
なお、商標の登録例においても、称呼が同一でありながら、観念が全く異なる商標が互いに登録されている事実が存在するので、ここに取り上げる。
(ア) 「ATE/エイト」対「(図形)+EIGHT」 上記の各構成からなる商公平9-40537号(甲第10号証)と商公平8-20569号(甲第11号証)とが登録されている。
(イ) 「KNIGHT+(図形)」対「one a / Night」 同じく、商公昭23-1468号(甲第12号証)と商公平8-100925号(甲第13号証)とが登録されている。
(ウ) 「LINKS/リンクス」対「MINESOTA/LINX/(図形)」 同じく、商公平6-100233号(甲第14号証)と商公平10-98902号(甲第15号証)とが登録されている。
(4) 被告の主張に対する反論 ア 被告は、本願商標と引用商標は、「リーフ」の称呼を同一にするものであり、それがために、観念上の錯誤が生じやすいものであり、両商標は観念上も互いに紛れるおそれがあると主張する。
しかし、この主張は、そもそも引用商標が「リーフ」と称呼されるという前提にたったものであり、「レエフ」、「リエフ」等とも称呼されうる本願商標に対しては全く的はずれな主張である。つまり、被告の主張は、引用商標から特定の観念が生じないにもかかわらず、「リーフ」と称呼した場合を仮定して論理を進めた結果生じた観念に基づくものであり、全く根拠がないものである。
イ 被告は、本願商標と引用商標は、「リーフ」の称呼を共通にするが故に、時と所を異にしてそれぞれに接した場合には、外観上相紛れるおそれがあると主張する。
しかし、これも称呼上の類否と混同した議論となっている。特徴のある図形部分を有する本願商標が図形部分を全く有さない引用商標と外観上相紛れるおそれなど全くない。
以上のように被告の主張は仮定の上に積み重ねられた議論であり本願商標及び引用商標の現状を正確に認識した上での議論であるとは到底言い難い。
ウ 被告は、原告が指摘する最判昭和43年2月27日判決(「氷山」事件)及び東京高判昭和60年10月15日(「TAKARA」事件)の事例について、具体的な特殊事情が存在する事例における商標の類否の判断が、直ちに本件における両商標類否判断に当てはまるものではないと主張する。
しかし、原告の主張は、このような事例の具体的な特殊事情をそのまま本件に適用されるべきというのではなく、あくまで本件における特殊事情が考慮されるべきであることを主張しているにすぎない。
そして、本願商標の指定商品の「被服」等の分野であるであるファッション業界では、宣伝広告の手段として、取引者、需要者の視覚に直感的に訴える「図形」が常套手段として多用されて、意図するブランドイメージを取引者、需要者の脳裏に植え付けるようにしている事情がある。また、取引者、需要者も、ブランド商品に似せた「まがい物」が横行することを十分承知しているため、商標における少しの違いをも区別する識別眼は他の分野に係る取引者、需要者よりも優れているということができる。そうとすると、かかる分野における商標は、その外観が重要視されることは間違いなく、商標の少しの違いも区別し得る場合が少なくないものと考えられる。
被告の反論の要点
審決の認定、判断は正当であり、審決に原告主張の違法はない。 1 本願商標及び引用商標より生ずる称呼及び観念について (1) 本願商標について 本願商標は、「LEAF」の文字(アンダーラインが引かれている。)と図形との組合せよりなるものであるところ、その構成中大きく書された「LEAF」の文字部分は、「リーフ」と発音し、「葉」などを意味する英単語として我が国において定着しているものである。
一方、本願商標中の図形部分についてみれば、該図形は、「LEAF」の文字部分中の「E」と「F」との間にやや小さく描かれているものであり、「LEAF」の文字部分が、上記したとおり、「葉」などを意味する英語としてよく知られているものであるところから、「葉」を表したと容易に理解し得るものである。
要するに、本願商標中の図形部分は、「LEAF」という文字があってはじめて「葉」を表したと理解されるといった、「LEAF」の文字部分に対して従属的な関係にあり、また、文字部分と図形部分との商標中に占める割合から考えても、いわば付記的な図形を表したと理解されるというべきである。
してみれば、本願商標中の図形部分は、文字部分「LEAF」と観念上の一体性が強いうえ、全体の構成からみても、付記的図形と理解されるにすぎないものであるから、称呼する場合においても、図形部分それ自体が独立して称呼されることは極めて少なく、むしろ文字部分「LEAF」に融合されて、本願商標全体として「リーフ」と称呼されて、商品の取引に資される場合が多いというべきである。また、簡易迅速を旨とする商取引の実際において、あえて称呼しづらい「ハ(ジルシ又はマーク)リーフ」、「リーフハ(ジルシ又はマーク)」などの称呼が自然に採択されるとすることは考えにくいところでもある。
したがって、本願商標は、その構成中の「LEAF」文字部分より生ずる「リーフ」の称呼が自然の称呼というべきであり、かつ、構成全体として「葉」の観念を生ずるものというべきである。
以上のとおりであるから、本願商標の称呼に関する原告の主張は理由がないものである。
(2) 引用商標について 引用商標は、「REEF」の文字を書してなるものであるところ、「reef」の英単語は、原告が主張するように「我が国における本願商品の指定商品の取引者等の間でよく知られた単語であるといった事実は見当たらない」ことは、被告もあえて否定しないところであり、後記のとおり、本願商標及び引用商標が使用される「被服」等の分野における主たる需要者層の英語に関する知識などを考慮すると、
「reef」の英単語そのものの我が国における定着度は、「leaf」の英単語から直ちに「葉」など意味が想起されるというような関係になく、「leaf」の英単語ほどには、その意味が知られていないものといわざるを得ない。
したがって、引用商標「REEF」の観念は、明確には特定し難いものである。
しかしながら、「reef」の英語がよく知られていない英語であって、引用商標から直ちに特定の観念が生じないものであるとしても、「REEF」の称呼についていえば、例えば、我が国おいても親しまれている、「beef」、「cheese」、「green」、「keep」、「week」などの英単語において、
「ee」を「i:」(イー)と発音するように、引用商標にあっても全体として「リーフ」と称呼することについては、何ら困難が伴うわけではなく、むしろ極めて自然に称呼されるというべきである。
したがって、引用商標は、これより生ずる自然の称呼は「リーフ」であり、観念については、明確な特定の観念が生ずるものではない。
2 両商標の称呼及び観念についての対比 (1) 前記のとおり、本願商標及び引用商標より生ずる自然の称呼は、いずれも「リーフ」であるから、両商標は「リーフ」の称呼を共通にするものである。
また、本願商標は「葉」の観念を生ずるものであり、他方、引用商標は特定の観念が生ずるものではないから、その限りにおいては、両者は観念上類似するということはできない。
しかしながら、本願商標及び引用商標が使用される指定商品の分野における取引の実情に照らし、両商標の類否について検討した場合、以下に述べるように、両商標は観念上においても、商標自体において互いに紛れるおそれが十分にあるのである。
(2) 取引の実情について 本願商標及び引用商標が使用される商品「被服」等の商品分野においては、その主たる需要者は、老人から若者までを含む一般的な消費者であり、我が国において、いかに英語教育が発達したとはいえ、これら一般的な消費者の多くが必ずしも英語に堪能な者ばかりであるとはいえないこと、また、これら一般的な消費者が商品を購入する類型には、行き当たりばったりに、商標をよく検討しないまま商品を購入する場合も決して少なくないこと、さらに、本願商標と引用商標の指定商品の取引の形態の中には製造業者から卸問屋との取引も存在し、遠隔地における取引にあっては、電話などによる注文が主としてなされる場合も少なくないこと、街頭放送、ラジオ等のコマーシャルのように専ら称呼による商品の宣伝広告などなされる場合があること等の実情にある。
そして、本願商標及び引用商標の類否の判断に当たっては、上記取引の実情及び両商標が使用される商品における需要者の注意力を考慮して判断されるべきである。
(3) 両商標の類似性について 本願商標及び引用商標より生ずる称呼がいずれも「リーフ」であるところ、該称呼をもって商品の取引がなされる場合、前記したとおり、「reef」の英単語がその主たる需要者によく知られておらず、一方「leaf」の英単語が「葉」などを意味するものとして定着していることからすると、主たる需要者は「リーフ」の称呼から、馴染みの深い英単語の「leaf」を直ちに想起し、「葉」を観念する場合が極めて多いというべきである。
その結果、例えば、一方が引用商標を特定する意図をもって「リーフ」と称呼したにもかかわらず、他方は「葉」の観念を有する本願商標を特定したものと誤認する蓋然性が極めて高いというべきである。
さらには、主たる需要者である一般の消費者が引用商標「REEF」に接したときに、その称呼が「リーフ」であるが故に「葉」の観念を想起する場合が全くないということもできない。
してみると、本願商標と引用商標は、「リーフ」の称呼を同一にするものであり、それがために、観念上の錯誤が生じやすいものであり、両商標は観念上も互いに紛れるおそれがあるものといわざるを得ない。
3 両商標の外観について 上記取引の実際において、本願商標と引用商標の外観についてみるに、本願商標は、「LEAF」の文字と図形との組合せよりなるものであるのに対し、引用商標は「REEF」の文字よりなるものであるから、両者を対比観察した場合には、外観上相違することは否定し得ないところである。
しかしながら、両商標より生ずる「リーフ」の称呼が簡潔で称呼しやすく、かつ、記憶にとどめやすいものであるところから、一般の消費者が自己の求める商品を識別するに際し、商標の称呼に頼る場合も少なくないものと考えられ、時と所を異にしてそれぞれの商標に接した場合、「LEAF」、「REEF」の欧文字より、いずれも「リ一フ」の称呼が生ずるものであり、前記のとおり観念上相紛らわしいものであるところから、一見して両商標を判別し難く、誤認混同するおそれがないということはできない。
したがって、本願商標と引用商標は、「リーフ」の称呼を共通にするが故に、時と所を異にしてそれぞれに接した場合には、外観上相紛れるおそれがあるものといわざるを得ない。
4 結論 以上1ないし3のとおり、本願商標及び引用商標は、その称呼が同一であるために、その観念外観において相紛らわしいものであり、したがって、両商標の称呼観念及び外観によって両商標の需要者に与える印象、記憶、連想等を、取引の実情を併せて総合して考察すれば、両商標をその指定商品について使用した場合は、商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれが十分にあるものというべきである。 したがって、本願商標と引用商標は、商標において類似するものであり、かつ、その指定商品も同一又は類似のものであるから、本願商標が商標法4条1項11号に該当するとして、登録することができないとした審決の判断に何ら誤りはないものであり、取り消されるべき理由はない。
5 原告の主張に対する反論 原告は、@最判昭和43年2月27日判決(「氷山」事件)、及びA東京高判昭和60年10月15日判決(「TAKARA」事件)を引用し、これらの事例は、
称呼が類似又は同一であるにもかかわらず、比較する二つの商標は非類似としていることからも、仮に、本願商標と引用商標とが称呼において同一であるとしても、
外観観念の相違をも含めて総合的に判断すれば、両商標は非類似であると主張する。
しかしながら、原告が引用した@の事例は、商品「硝子繊維糸」といった極めて特殊な商品分野における取引の実情を考慮したうえで、商標の類否判断がなされた事例であり、また、Aの事例は、出願に係る商標が食料品の分野において極めて著名であるといった特別の事情があることを考慮したうえで、商標の類否判断がなされた事例であって、このように具体的な特殊事情が存在する事例における商標の類否の判断が、直ちに本件における両商標の類否判断に当てはまるものではないし、
本件においては、本願商標及び引用商標の称呼観念外観によって両商標の需要者に与える印象、記憶、連想等を、取引の実情を併せて総合すれば、両商標は類似するものであることは、前記のとおりである。
また、原告は、過去の登録例においても、称呼が同一でありながら、観念が異なる商標が互いに登録されている事例が存在するとして、甲第10号証ないし甲第15号証を挙げているが、これらの登録例における指定商品ないし指定役務は、本件における指定商品とは、その取引形態が異なる分野のものであり、したがって、商品等の取引における取引者、需要者の注意力等も自ずと異なるものであることはいうまでもない。また、本件においては、本願商標と引用商標との類否のみを判断すれば足りるのであるから、その判断に当たって、過去の登録例が存在することをもって、本願商標と引用商標との類似性が左右されるものではない。 理 由1 本願商標及び引用商標の構成及び指定商品について 本願商標は、別紙審決書の写しのとおりの構成(下線を施した「LEAF」の欧文字、及びその「E」の文字と、「A」の文字の上部との間に書された「葉」形と見ることができる図形)からなり、その指定商品を商品及び役務の区分第25類の「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽、
エプロン、えり巻き、靴下、ゲートル、毛皮製ストール、ショール、スカーフ、足袋、足袋カバー、手袋、布製幼児用おしめ、ネクタイ、ネッカチーフ、マフラー、
耳覆い、ずきん、すげがさ、ナイトキャップ、ヘルメット、帽子、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト」とするもの(平成9年4月28日付け手続補正書による補正後のもの)であること、他方、引用商標は、別紙審決書の写しのとおりの構成(「REEF」の欧文字を書したもの)からなり、指定商品を第25類「被服(但し、和服を除く)、履物」とするものであることは争いがない。
2 本願商標から生ずる称呼(取消事由1)について 本願商標は、上記のとおり、下線が付された「LEAF」の欧文字と図形との組合せよりなるものであるところ、その構成中大きく書された「LEAF」の文字部分が、「リーフ」と発音し、「葉」を意味する英単語(「leaf」)として、我が国における一般的な国民の間に定着していることは明らかであり、該文字部分より「リーフ」という称呼が生ずることは、原告においても争っていない。
他方、本願商標中の図形部分についてみると、該図形部分は、「LEAF」の文字部分の略中央部に位置し、「E」の文字と、「A」の文字の上部との間に、やや小さく、該両文字とまとまりよく書されていると認められ、「LEAF」の文字部分が上記のとおり、「葉」を意味する英語として一般に定着していることから、
「葉」の形を表現した図形であると容易に理解し得るものであると認められる。
以上のとおり、本願商標中の図形部分は、「LEAF」の文字部分と観念において、「葉」を表すものとして一致しており、かつ、商標全体の構成からみて「LEAF」の文字部分とまとまりよく、一体的に書されていることからすると、本願商標の指定商品の一般的な取引者、需要者が本願商標を称呼する場合に、図形部分を文字部分と切り離して、これと別個に称呼することなく、商標全体として、「リーフ」と称呼する場合が多いであろうことは容易に推認し得るところである。
したがって、本願商標に接する取引者、需要者が「LEAF」の文字部分から「リーフ」の称呼をもって取引に資される場合が決して少なくないとした審決の認定に誤りはない。
原告は、本願商標からは「リーフ」の称呼以外にも「ハ(ジルシ又はマーク)リーフ」、「リーフハ(ジルシ又はマーク)」といった称呼が生じると主張しているが、上記認定の本願商標の全体の構成及び「LEAF」の英単語に対する我が国の国民一般の理解度からすると、本願商標の指定商品の一般的な取引者、需要者が、
本願商標中の図形部分を「LEAF」の文字部分と独立して、「ハ(ジルシ又はマーク)」と称呼し、これと同じ意味を持つ文字部分「LEAF」の「リーフ」の称呼と連呼して、「ハ(ジルシ又はマーク)リーフ」、「リーフハ(ジルシ又はマーク)」などと称呼することが通常であるとは考え難いというべきである。
このように、原告が主張する上記各称呼が本願商標から生ずる一般的な称呼であるとは到底認めることができず、原告主張の取消事由1は理由がない。
3 引用商標から生ずる称呼(取消事由2)について 引用商標は、「REEF」の欧文字を書してなるものであるところ、原告が主張するとおり、「reef」は「礁、岩礁」等を意味する英単語であるものの、この英語の意味は、我が国の国民一般や本願商品の指定商品の取引者、需要者の間にいまだよく知られてはおらず、「reef」の文字が定着した英単語であるとは認めることができない。
しかしながら、「reef」の英語がよく知られていない英単語ではあっても、
引用商標「REEF」の称呼についてみると、被告が指摘するとおり、「beef」、「cheese」、「green」、「keep」、「week」などの他の英単語にみられるとおり、子音に挟まれた「ee」の文字を、「i:」(イー)と発音することは、我が国の国民一般によく知られており、定着した方法となっていることは明らかであるから、引用商標の「REEF」の文字についても、これを「リーフ」と称呼することについて困難はなく、むしろ一般的に、自然に称呼されるというべきである。
したがって、引用商標から通常生じる称呼は「リーフ」であると認められるのであり、これと同旨の審決の認定に誤りがなく、引用商標からは「リーフ」の称呼以外にも「リエフ」、「レーエフ」又は「レエフ」の称呼が自然に生じ、特定の称呼は生じないとする原告の主張は採用することができない。
このように、原告主張の取消事由2も理由がない。
4 本願商標と引用商標との類否判断(取消事由3)について (1) 両商標の称呼の同一性について 前判示のとおり、本願商標及び引用商標より通常生ずる称呼は、いずれも「リーフ」であり、両商標は「リーフ」の称呼を共通にするものである。
そして、両商標の共通する指定商品である「被服」の商品分野における主たる需要者は、老人から若者までを含む一般的な消費者であり、我が国において、これらの一般的な消費者の多くが必ずしも英語に堪能な者ばかりであるとはいえないこと、これらの商品分野においては、口頭による取引がされることも多く、また、一般的な消費者が自己の求める商品を識別して購入する際に、テレビ、ラジオ等のコマーシャルにおける称呼による商品の宣伝を記憶して、これを頼りに取引に当たる場合も多く、特に、本願商標及び引用商標より生ずる「リーフ」の称呼の場合のように、該商標より生ずる称呼が簡潔で、馴染みやすく、記憶にとどめやすいものである場合には、この傾向が強いものであることは、当裁判所に顕著である。
これらの取引の実情によれば、本願商標と引用商標は、その称呼が同一であるために、以下に判示するとおり、両商標から生ずる観念や両商標の外観を総合して考慮しても、その主たる需要者である一般的な消費者の間において、互いに混同されるおそれが高いものと認められる。
(2) 両商標の観念類似性について ア 前判示のとおり、本願商標からは、その文字部分及び図形部分の構成に即して「葉」の観念を生ずるものであり、他方、引用商標の「REEF」の文字からなる英単語は、「LEAF」と比較すると、我が国の国民一般や本願商品の指定商品の取引者、需要者の間でいまだよく知られておらず、引用商標からは、特定の観念が通常生ずるものとは認めることができない。したがって、本願商標と引用商標とは、観念上直ちに類似するということはできない。
イ しかしながら、上記(1)の取引の実情を考慮して、本願商標及び引用商標より生ずる観念類似性について検討を加えると、本願商標及び引用商標より生ずる称呼がいずれも「リーフ」であることから、両商標が称呼をもって商品の取引がされる場合に、前判示のとおり、「reef」の英単語が需要者の間でよく知られておらず、他方「leaf」の英単語が、「リーフ」と発音されて、「葉」を意味するものとして定着していることからすると、主たる需要者である一般的な消費者は、両称呼の「リーフ」との称呼から、その日本語の意味として「葉」を想起し、観念する場合が少なくないものというべきである。
その結果、被告が指摘するとおり、一方が引用商標を特定する意図をもって「リーフ」と称呼した場合であっても、他方は「葉」の観念を有する本願商標を特定したものと誤認する蓋然性が高いというべきである。また、主たる需要者である一般的な消費者が引用商標「REEF」に接したときに、その英単語がよく知られておらず、他方、その称呼が「リーフ」であるために、「リーフ」の日本語の意味として「葉」の観念を想起する場合も否定し難いものである。
このように、本願商標と引用商標は、指定商品における取引の実情を考慮した場合、「リーフ」の称呼を同一にするために、その主たる需要者の間で、観念上の錯誤が生じやすいものであり、両商標は、観念上も相紛れるおそれを否定することはできないものである。
(3) 両商標の外観の相違点について ア 本願商標は、「LEAF」の文字と図形との組合せよりなるものであるのに対し、引用商標は「REEF」の文字よりなるものであるから、両者を対比して観察した場合には、外観上は相違することが認められる。
ただし、本願商標中の図形部分は、前判示のとおり、「LEAF」の文字部分の略中央部に位置し、「E」の文字と、「A」の文字の上部との間に、やや小さく、
該両文字とまとまりよく書されていることから、該図形部分は、独立して称呼されるものではなく、商標全体として、「リーフ」と称呼されることが多いと認められるのであり、また、この図形部分は、「LEAF」の文字部分と合わせてみれば「葉」形を表したものと看取することができるものであって、その図形自体としてみれば、格別に記憶に残るような、鮮明で、特徴のあるデザインを採用したものとは認めることができないものである。
したがって、本願商標の図形部分は、その指定商品の取引者、需要者に対して、
本願商標の文字部分から独立して際だった印象を与え、記憶にとどめさせるに足りるものであるとは認め難い。
イ そして、上記(1)の取引の実情を考慮して、本願商標及び引用商標の外観の相違点について検討を加えると、前判示のとおり、両商標より生ずる「リーフ」の称呼が簡潔で馴染みやすく、記憶にとどめやすいものであるところから、その指定商品における主たる需要者である一般の消費者が取引するに当たり、商標の称呼に頼る場合が少なくないものと認められるから、時と所を異にしてそれぞれの商標に接した場合、両商標の外観上の上記アの程度の相違点は、上記(1)のとおり、両商標の称呼が同一であり、相紛らわしいものであることを凌駕して、これらを明らかに識別することができるものであると評することはできない。
したがって、本願商標と引用商標の外観上の相違点が両商標の類否を検討するうえで大きな影響を及ぼすものとみることはできず、この相違点をもって、両商標の称呼の同一によって生ずる混同のおそれを否定する要素として重視することはできない。
(4) 両商標の類否の総合判断 以上(1)ないし(3)によれば、本願商標及び引用商標につき、両商標の指定商品における取引の実情を考慮して、その称呼観念及び外観を総合して考察すれば、両商標の称呼は同一であり、観念上も相紛れるおそれを否定することができず、また、外観上の相違点も微弱であると認められるから、本願商標を指定商品について使用した場合、商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれが十分にあるものと認めることができる。 原告が主張する他の登録例や裁判例は、いずれも本願商標及び本件の引用商標とは構成及び指定商品を異にするものであって、上記判断を左右するものではない。
したがって、本願商標と引用商標とは、類似する商標であり、かつ、その指定商品も同一又は類似のものであるから、本願商標は、商標法4条1項11号に該当し登録することができないとした審決の判断に誤りはなく、原告主張の取消事由3も理由がない。
5 結論 以上のとおり、原告主張の審決取消事由はすべて理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 橋本英史