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関連ワード 識別力 /  取引対象 /  包装 /  出所表示機能 /  識別機能 /  指定商品 /  記述的商標(3条1項3号) /  ありふれた標章 /  3条1項5号 /  不正競争の目的 /  損害額 /  権利濫用(権利の濫用) /  先使用(32条) /  国内 /  差止 /  使用許諾 /  無効審判 /  先使用権 /  同業者 / 
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事件 平成 16年 (ワ) 8276号 商標権侵害差止等請求事件
原告 株式会社シンコー
原告 大晃機械工業株式会社
原告 株式会社帝国機械製作所
原告 株式会社石井工作所
原告 兵神機械工業株式会社
原告ら訴訟代理人弁護士 松本司
同 田上洋平
被告 株式会社松栄
訴訟代理人弁護士 阪口春男
同 今川忠
同 岩井泉
同 原戸稲男
同 阪口祐康
同 豊浦伸隆
同 西山宏昭
同 山岸正和
同 嵩原安三郎
同 寺田明日香
同 木村智彦
同 白木裕一
同 中澤構
補佐人弁理士 尾関弘
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2005/07/25
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告株式会社シンコーに対し、
(1) 被告は、別紙物件目録記載の物件又はその包装に、別紙標章目録1記載の標章を付してはならない。
(2) 被告は、別紙標章目録1記載の標章を付した別紙物件目録記載の物件又はその包装を、譲渡し、もしくは譲渡のために展示しもしくは所持してはならない。
(3) 被告は、その取引書類に別紙標章目録1記載の標章を付して展示し、又は頒布してはならない。
(4) 被告は、その占有にかかる、別紙標章目録1記載の標章を付した別紙物件目録記載の物件及びその包装並びに取引書類をそれぞれ廃棄せよ。
(5) 被告は、333万円及びこれに対する平成16年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告大晃機械工業株式会社に対し、
(1) 被告は、別紙物件目録記載の物件又はその包装に、別紙標章目録2記載の標章を付してはならない。
(2) 被告は、別紙標章目録2記載の標章を付した別紙物件目録記載の物件又はその包装を、譲渡し、もしくは譲渡のために展示しもしくは所持してはならない。
(3) 被告は、その取引書類に別紙標章目録2記載の標章を付して展示し、又は頒布してはならない。
(4) 被告は、その占有にかかる、別紙標章目録2記載の標章を付した別紙物件目録記載の物件及びその包装並びに取引書類をそれぞれ廃棄せよ。
(5) 被告は、137万円及びこれに対する平成16年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告株式会社帝国機械製作所に対し、
(1) 被告は、別紙物件目録記載の物件又はその包装に、別紙標章目録3記載の標章を付してはならない。
(2) 被告は、別紙標章目録3記載の標章を付した別紙物件目録記載の物件又はその包装を、譲渡し、もしくは譲渡のために展示しもしくは所持してはならない。
(3) 被告は、その取引書類に別紙標章目録3記載の標章を付して展示し、又は頒布してはならない。
(4) 被告は、その占有にかかる、別紙標章目録3記載の標章を付した別紙物件目録記載の物件及びその包装並びに取引書類をそれぞれ廃棄せよ。
(5) 被告は、41万円及びこれに対する平成16年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告株式会社石井工作所に対し、
(1) 被告は、別紙物件目録記載の物件又はその包装に、別紙標章目録4記載の標章を付してはならない。
(2) 被告は、別紙標章目録4記載の標章を付した別紙物件目録記載の物件又はその包装を、譲渡し、もしくは譲渡のために展示しもしくは所持してはならない。
(3) 被告は、その取引書類に別紙標章目録4記載の標章を付して展示し、又は頒布してはならない。
(4) 被告は、その占有にかかる、別紙標章目録4記載の標章を付した別紙物件目録記載の物件及びその包装並びに取引書類をそれぞれ廃棄せよ。
(5) 被告は、22万円及びこれに対する平成16年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 原告兵神機械工業株式会社に対し、
(1) 被告は、別紙物件目録記載の物件又はその包装に、別紙標章目録5記載の標章を付してはならない。
(2) 被告は、別紙標章目録5記載の標章を付した別紙物件目録記載の物件又はその包装を、譲渡し、もしくは譲渡のために展示しもしくは所持してはならない。
(3) 被告は、その取引書類に別紙標章目録5記載の標章を付して展示し、又は頒布してはならない。
(4) 被告は、その占有にかかる、別紙標章目録5記載の標章を付した別紙物件目録記載の物件及びその包装並びに取引書類をそれぞれ廃棄せよ。
(5) 被告は、131万円及びこれに対する平成16年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 訴訟費用は被告の負担とする。
7 この判決は、第1項ないし第5項の各(4)を除き、仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
主文同旨。なお、原告らは、損害賠償金に対する遅延損害金を訴状送達の日の翌日から請求しているところ、訴状送達の日の翌日は平成16年8月5日である。
事案の概要
本件は、原告らがそれぞれ商標権を有している登録商標について、被告が、
これらと同一の標章を商標として使用しており、これは原告らの商標権の侵害にあたると主張して、その使用行為の差止め等及び損害賠償を請求した事案である。
1 前提となる事実(いずれも争いがない。) (1)ア 原告株式会社シンコー(以下「原告シンコー」という。)は、別紙登録商標目録1記載の商標(以下「本件商標1」という。)の登録商標権者である。
イ 原告大晃機械工業株式会社(以下「原告大晃機械」という。)は、別紙登録商標目録2記載の商標(以下「本件商標2」という。)の登録商標権者である。
ウ 原告株式会社帝国機械製作所(以下「原告帝国機械」という。)は、別紙登録商標目録3記載の商標(以下「本件商標3」という。)の登録商標権者である。
エ 原告株式会社石井工作所(以下「原告石井工作所」という。)は、別紙登録商標目録4記載の商標(以下「本件商標4」という。)の登録商標権者である。
オ 原告兵神機械工業株式会社(以下「原告兵神機械」という。)は、別紙登録商標目録5記載の商標(以下「本件商標5」という。また、本件商標1ないし5をまとめて以下「本件各商標」という。)の登録商標権者である。
(2) 被告は、別紙標章目録1ないし5記載の各標章(それぞれ以下「被告標章1」ないし「被告標章5」といい、これらをまとめて「被告各標章」という。)を、別紙物件目録記載の物件の包装に付し、これを譲渡し、また、納品書又は請求明細書に付して使用している。
2 争点及び当事者の主張 (1) 被告による被告各標章の使用は、商標としての使用にあたるか 〔原告らの主張〕 被告による被告各標章の使用は、被告が製造販売する部品の名称としての使用であって、商標としての使用そのものである。
被告は、被告各標章の使用がポンプの型式を示すものであると主張するが、型式としての使用が商標としての使用にあたらないとする理由はない。
しかも、被告による被告各標章の使用態様は、被告製品が使用されるべきポンプが当該型式の機種であることを示すための表記であるとはいえない。
被告が援用する東京地方裁判所平成16年6月23日判決における標章の使用態様は、「ブラザー用」、「For brother」との表記をし、対応表を記載するなどしており、被告による被告各標章の使用態様とは異なる。
〔被告の主張〕 本件各商標は、製品の出所を表示するものではなく、ポンプの規格(型式)を表示するものである。
一般にも、異なるメーカーが、アルファベット2文字ないし3文字からなる同一の組合せを、それぞれが製造するポンプの型式として使用していることに照らせば、同様にアルファベット3文字ないし4文字の組合せからなる本件各商標についても、自他商品を識別する標識ないし出所を表示する標識として使用されておらず、原告らもそのように使用していないことが明らかである。
被告も、被告各標章を、被告が製造販売する部品が用いられるべきポンプの規格(型式)を示すものとして、すなわち、部品の用途を示すものとして使用しているのであって、部品の出所を表示するものとして使用しているものではない。
ファクシミリ用インクリボンの製造販売に際し、「ブラザー用」等と表示する行為について、そのインクリボンが使用できるファクシミリの機種を示すための表記であり、自他識別機能ないし出所表示機能を有する態様で使用する行為、すなわち商標としての使用行為ではないとされている(東京地方裁判所平成16年6月23日判決)ところ、被告による被告各標章の使用態様も、これと異なるものではない。
したがって、被告による被告各標章の使用は、商品の出所を示すような、
言い換えれば、自他商品識別標識としての機能を果たすような態様で用いたものではなく、商標としての使用にあたらない。
(2) 本件各商標登録は、登録無効審判により無効とされるべきものか 〔被告の主張〕 本件各商標登録には、以下のとおり、登録無効理由が存在し、登録無効審判により無効とされるべきものである。
ア 本件各商標は、船舶用ポンプの品質、効能、用途あるいは形状を意味するアルファベットを組み合わせたものにすぎず、商品の特性の記述的な表示である。
仮に、各々のアルファベットの文字に品質、形状等の意味がないとしても、本件各商標は、船舶用ポンプの型式を表示したにすぎず、記述的な表示である。
したがって、本件各商標は、商標法3条1項3号の、記述的商標にあたる。
イ 本件各商標は、アルファベット3文字ないし4文字を組み合わせただけであって、同項5号にいう、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標にあたる。
ウ 本件各商標は、型式表示として長年にわたって同業者間で使用されてきたものであるため、出所表示機能がない。
また、機械製品には、1つの製品名を持つ商品について、その中の大きさや細かな仕様の違いを区別するために、複数のアルファベットや数字を組み合わせて型式として表示することが一般的に行われているが、本件各商標もこの型式に他ならない。このような型式表示の種類は多数に上り、しかも単なるアルファベットや数字の組合せで顕著性もないため、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することは困難である。船舶用ポンプにおいても、極めて多種類の型式表示が存在するが、それらはいずれも、アルファベット1文字ないし4文字と数字やハイフンを組み合わせた単純な表示であって、互いに似通っているばかりか、複数のメーカーが同じ表示を用いているものも存在することから、需要者において、そのような型式表示が何人かの業務に係る商品であることを識別することは不可能である。
したがって、本件各商標は、同項6号にいう、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標にあたる。
〔原告らの主張〕 本件各商標登録には、被告が主張するような登録無効理由は存在せず、登録無効審判により無効とされるべきものではない。
ア 被告は本件各商標が記述的商標であると主張するが、本件各商標が船舶用ポンプのどのような品質、効能、用途あるいは形状を意味しているのか明らかではなく、型式としての表示がなぜ記述的な表示であるかも明らかではない。
イ 本件各商標は、アルファベット3文字ないし4文字を組み合わせたものであるところ、アルファベット3文字以上の組合せは、商標法3条1項5号にいう、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標にはあたらない。
ウ 本件各商標が同業者間で長年にわたって使用された事実はなく、また、
アルファベット3文字以上の組合せからなる本件各商標は、自他識別機能出所表示機能を有するものであるから、本件各商標は、同項6号の需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標ではない。
また、本件各商標が多数人に使用されているような事実はない。
(3) 原告らは、本件各商標の使用について、被告に黙示の許諾をしていたか 〔被告の主張〕 原告らは、被告が被告各標章を使用することに対して、長年にわたって異議を唱えることなく、むしろ容認してきた。すなわち、船舶修理の場面で、メーカーである原告らの部品納入が間に合わない場面で、沖修理業者が部品を製造して修理することを容認してきたものである。また、沖修理業者が部品にその規格の製品に対応することを表示するために被告各標章を付すことは、修理するにあたって必然である。
このような状況に照らせば、原告らは、被告を含む沖修理業者が修理ないしそれに必要な部品を製造する際に、被告各標章を使用することを黙示的に許諾していたというべきである。
〔原告らの主張〕 被告は沖修理業者ではない。
仮に、被告が沖修理業者であったとしても、原告らが、被告が製造販売する商品に、本件各商標を使用することを許諾したこともなければ、黙示の許諾を与えていたと評価すべき事情もない。
(4) 被告に、被告各標章の使用について、先使用権が成立するか 〔被告の主張〕 被告は、原告らの商標登録出願前から、日本国内において、不正競争の目的でなく、被告各標章を使用し、被告各標章は、被告商品を表示するものとして、
船主の間に広く認識されていたのであるから、被告各標章について先使用権を有する。
〔原告らの主張〕 仮に、被告が被告各標章を原告らの商標登録出願前から使用していたとしても、被告は、顧客に対して原告らの商品と出所を誤認させるために被告各標章を使用したのであるから、不正競争の目的があることは明らかである。
また、被告各標章が、被告の業務に係る商品を表示するものとして顧客の間に広く認識されている事実はない。
したがって、被告は、被告各標章について先使用権を有しない。
(5) 原告らによる本件各商標権の行使は、権利濫用にあたるか 〔被告の主張〕 原告らは、長年にわたって、沖修理業者らが被告各標章を使用してきたことに異議を唱えることもなく容認してきたにもかかわらず、突如として商標登録を受け、被告を相手として訴訟提起してきたものであり、原告らメーカーが結託して、これまで長年にわたって形成された市場から、沖修理業者を不当に排除しようとの意図から出たものであることが明らかである。
しかし、前記(1)及び(2)の各〔被告の主張〕のとおり、本件各商標は自他識別機能を有しておらず、被告による被告各標章の使用態様も自他識別機能出所表示機能を果たしているものではないから、被告がこれまで同様に被告各標章を使用しても、商標法が予定した原告らの利益は害されず、実害は生じない。
そもそも、部品を製造して販売することは何ら違法な行為ではなく、独立の取引対象となる部品を販売するにはポンプ本体との対応関係を説明する必要があるのに、そのような記載に対して、単なる型式表示を商標登録し、その商標権を行使して、排他的な商標の使用を許すことは、本来の商標の機能とは相容れない。
以上のような事情にもかかわらず、原告らが本件各商標権を行使し、本件請求をすることは、権利の濫用にあたる。
〔原告らの主張〕 原告らは、原告らの製造販売にかかるポンプ用部品と、模倣部品製造販売業者の製造販売にかかる模倣品であるポンプ用部品とを、顧客において識別できるようにするために、従前から使用していた本件各商標の商標登録を受け、被告が被告各標章を使用している事実を知ったために、本件請求を行ったものであって、権利の濫用にはあたらない。
(6) 損害額 〔原告らの主張〕 ア 被告は、平成15年9月20日から平成16年7月22日までの間に、
被告標章1を付した別紙物件目録記載の物件を少なくとも1333万円分製造販売し、これによって少なくとも333万円の利益を得た。
したがって、被告による被告標章1の使用により原告シンコーが被った損害額は、333万円である。
イ 被告は、平成15年8月16日から平成16年7月22日までの間に、
被告標章2を付した別紙物件目録記載の物件を少なくとも548万円分製造販売し、これによって少なくとも137万円の利益を得た。
したがって、被告による被告標章2の使用により原告大晃機械が被った損害額は、137万円である。
ウ 被告は、平成15年9月20日から平成16年7月22日までの間に、
被告標章3を付した別紙物件目録記載の物件を少なくとも164万円分製造販売し、これによって少なくとも41万円の利益を得た。
したがって、被告による被告標章3の使用により原告帝国機械が被った損害額は、41万円である。
エ 被告は、平成15年8月23日から平成16年7月22日までの間に、
被告標章4を付した別紙物件目録記載の物件を少なくとも88万円分製造販売し、
これによって少なくとも22万円の利益を得た。
したがって、被告による被告標章4の使用により原告石井工作所が被った損害額は、22万円である。
オ 被告は、平成15年10月11日から平成16年7月22日までの間に、被告標章5を付した別紙物件目録記載の物件を少なくとも524万円分製造販売し、これによって少なくとも131万円の利益を得た。
したがって、被告による被告標章5の使用により原告兵神機械が被った損害額は、131万円である。
〔被告の主張〕 被告による被告各標章の使用が原告らの本件各商標の商標権を侵害するものであるとした場合に、これにより原告らが被った損害が、原告シンコーにつき333万円、原告大晃機械につき137万円、原告帝国機械につき41万円、原告石井工作所につき22万円、原告兵神機械につき131万円であることは、争わない。
当裁判所の判断
1 争点(1)(被告各標章の使用は商標としての使用にあたるか)について (1)ア 乙第1ないし第4号証の各1ないし7、第5号証及び弁論の全趣旨によれば、被告は、別紙物件目録記載の物件の譲渡に関して、顧客に対する納品書、請求書に、「品名 FIRE,G.S.PUMP」「型式 VSK-120N」、商品を入れた袋に貼付するシールに「品名 01400 IMPELLER」「名称 MAIN.COOL’S.W.PUMP」「型式 SVA-200」のようにして、型式名として被告各標章を表示していることが認められる。
イ 一般に、商標が有する自他識別機能出所表示機能とは、その商標が付された商品・役務が、特定の事業者によって製造販売提供等されたものであると、
需要者に認識させる機能をいい、商標登録の制度は、登録された商標の使用権を商標権者に独占させることによって、商標権者の業務上の信用の維持と需要者の上記のような信頼を保護することを目的とするものというべきである。
したがって、ある商標が、商品の型式名として使用されている場合であっても、そのこと故に、これが自他識別機能出所表示機能を有しないというものではない。なぜならば、需要者が、当該型式名の商品について、特定の出所に係る商品であると認識するならば、その型式名すなわち商標が、出所を表示しているということになるのであって、このように、需要者において、型式名に基づいて、特定の出所を認識することは可能だからである。
そして、上記ア認定の事実によれば、被告は、本件各商標の指定商品について、被告各標章を、自他識別機能出所表示機能を有し得る態様で使用しているというべきである。
ウ 被告は、被告各標章を、被告が製造販売する部品が用いられるべきポンプの規格(型式)を示すものとして、すなわち、部品の用途を示すものとして使用しているのであって、部品の出所を表示するものとして使用しているものではないと主張する。
しかし、「型式」として、自他識別機能出所表示機能を果たし得るような標章がそのまま表示されている以上、これを商品の出所を表示するものとして使用しているものではないということはできない。
すなわち、部品の用途を示すものとして型式名を表記する場合に、例えば、型式名の前に「for」、あるいは型式名の後に「用」といった文字列を付し、これらを含めた全体的な表示態様からして、型式名に係る部分が、自他識別機能出所表示機能を発揮していない場合には、これを商標としての使用ではないということもできようが、前記ア認定に係る被告の使用方法は、これと同視できるものではないのである。
エ また、被告は、異なるメーカーが、アルファベット2文字ないし3文字からなる同一の組合せを、それぞれが製造するポンプの型式として使用していることに照らせば、同様にアルファベット3文字ないし4文字の組合せからなる本件各商標についても、自他商品を識別する標識ないし出所を表示する標識として使用されておらず、原告らもそのように使用していないことが明らかであると主張する。
しかし、本件の全証拠によっても、本件各商標について、これらをそれぞれの商標権者である原告ら以外の者が使用してポンプを製造販売しているとも、
原告らにおいて、本件各商標を、自他商品を識別する標識ないし出所を表示する標識として使用していないとも認めることはできない。
(2) 以上のとおり、被告による被告各標章の使用は、商標としての使用であるというべきところ、別紙登録商標目録と別紙標章目録から明らかなように、被告標章1ないし5は、それぞれ、本件商標1ないし5と同一であり、また、別紙物件目録記載の各物件は、いずれも船舶用ポンプの部品であって、本件各商標の指定商品と同一又は類似の商品であるということができるから、被告による被告各標章の使用は、本件各商標の、これらの指定商品又はこれに類似する商品への使用にあたるものということができる。
2 争点(2)(本件各商標登録は無効とされるべきものか)について (1) 記述的商標(商標法3条1項3号)の主張について 被告は、本件各商標は、船舶用ポンプの品質、効能、用途あるいは形状を意味するアルファベットを組み合わせたものにすぎず、商品の特性の記述的な表示であると主張する。しかし、本件各商標が、具体的に、船舶用ポンプのどのような品質、効能、用途あるいは形状を現しているか、直ちにこれを感得することはできないし、被告自身も、どのような品質、効能、用途あるいは形状を現すものか、具体的に主張しない。
また、被告は、各々のアルファベットの文字に品質、形状等の意味がないとしても、本件各商標は、船舶用ポンプの型式を表示したにすぎないから、記述的な表示であると主張する。しかし、本件各商標が、船舶用ポンプの型式を表示したものであるからといって、これを記述的な表示ということもできない。
したがって、いずれにしても、本件各商標が記述的商標であるということはできない。
(2) 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標(同項5号)の主張について 本件各商標は、アルファベット3文字ないし4文字の組合せであって、その組み合わせられた文字からしても、これを極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であるということはできない。
(3) 需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標(同項6号)の主張について 被告は、本件各商標が、型式表示として長年にわたって同業者間で使用されてきたものであるため、出所表示機能がないと主張する。しかし、商標が製品の型式を示すものとして使用されても、これと同一の型式名が使用許諾等の関係のない複数のメーカーにおいて製品に使用されている場合は別として、そうでない場合に、その商標が直ちに出所表示機能を失うものではない。そして、本件各商標が、
その商標権者である原告ら以外の者のポンプに用いられていると認められないことは、前記1のとおりであり、他に、本件各商標が、型式表示として使用されてきたことにより、出所表示機能を失ったことを認めるに足りる証拠はない。
また、被告は、機械製品には、1つの製品名を持つ商品について、その中の大きさや細かな仕様の違いを区別するために、複数のアルファベットや数字を組み合わせて型式として表示することが一般的に行われており、本件各商標もこの型式に他ならず、顕著性を欠くと主張する。しかし、機械製品について、1つの製品名を持つ商品の大きさや細かな仕様の違いを区別するために複数のアルファベットや数字を組み合わせて型式として表示することが一般的に行われているとしても、
そのことから直ちに、商標権者である原告ら以外の者のポンプに用いられていると認められない本件各商標が、識別力を欠くことにはならない。
さらに、被告は、船舶用ポンプにおいて、極めて多種類の型式表示が存在するが、それらはいずれも、アルファベット1文字ないし4文字と数字やハイフンを組み合わせた単純な表示であって、互いに似通っているばかりか、複数のメーカーが同じ表示を用いているものも存在することから、需要者において、そのような型式表示が何人かの業務に係る商品であることを識別することは不可能であるとも主張する。しかし、仮に、船舶用ポンプにおいて、アルファベット1文字ないし4文字と数字やハイフンを組み合わせた表示が他種類存在するとしても、そのことから直ちに、商標権者である原告ら以外の者のポンプに用いられていると認められない本件各商標において、何人かの業務に係る商品であることを識別することが不可能となるものではない。
以上のとおりであるから、本件各商標が、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であるということはできない。
3 争点(3)(本件各商標の使用についての黙示の許諾の有無)について 被告は、原告らが、被告が被告各標章を使用することに対して、長年にわたって異議を唱えることなく、むしろ容認してきたと主張するが、当該主張を認めるに足りる証拠はない。
また、被告は、原告らが、船舶修理の場面で、メーカーである原告らの部品納入が間に合わない場面で、沖修理業者が部品を製造して修理することを容認してきたと主張するが、仮にそうであるとしても、被告各標章に係る部分を、自他識別機能出所表示機能を発揮しない状態として、その部品が適合するポンプの型式を示すことは可能であると解されるから、上記事情は、原告らが、商標としての使用にあたる態様での被告各標章の使用を容認することを意味しない。
そして、他に、原告らが、被告による被告各標章の使用を黙示に許諾していたと認めるに足りる事情も証拠もない。
したがって、原告らが、被告による被告各標章の使用を黙示に許諾していたということはできない。
4 争点(4)(被告各標章の使用についての先使用権の成否)について 被告は、原告らの商標登録出願前から、日本国内において、不正競争の目的でなく、被告各標章を使用し、被告各標章は、被告商品を表示するものとして、船主の間に広く認識されていたと主張する。
しかしながら、被告各標章が、被告商品を表示するものとして船主の間に広く認識されていたことを認めるに足りる証拠はない。
したがって、その余の点について判断するまでもなく、被告に被告各標章の使用について先使用権を認めることはできない。
5 争点(5)(本件各商標権の行使は権利濫用にあたるか)について (1) 被告は、原告らが、長年にわたって、沖修理業者らが被告各標章を使用してきたことに異議を唱えることもなく容認してきたにもかかわらず、突如として商標登録を受け、被告を相手として訴訟提起してきたものであり、原告らメーカーが結託して、これまで長年にわたって形成された市場から、沖修理業者を不当に排除しようとの意図から出たものであることが明らかであると主張する。
しかしながら、原告らが、長年にわたって、沖修理業者らが被告各標章を使用してきたことに異議を唱えることもなく容認してきたことを認めるに足りる証拠はなく、原告らが本件各商標について商標登録を受け、被告を相手として本件訴訟を提起したからといって、直ちに、本件訴訟が、沖修理業者を不当に排除しようとの意図から出たものであるものと認めるには足りず、他に、本件訴訟が被告の主張するような原告らの意図によるものであることを認めるに足りる事情も証拠もない。
(2) 被告は、本件各商標は自他識別機能を有しておらず、被告による被告各標章の使用態様も自他識別機能出所表示機能を果たしているものではないから、被告がこれまで同様に被告各標章を使用しても、商標法が予定した原告らの利益は害されず、実害は生じないと主張するが、前記1で判示したところに照らして、被告のこの主張は採用することができない。
(3) また、被告は、部品を製造して販売することは何ら違法な行為ではなく、
独立の取引対象となる部品を販売するにはポンプ本体との対応関係を説明する必要があるのに、そのような記載に対して、単なる型式表示を商標登録し、その商標権を行使して、排他的な商標の使用を許すことは、本来の商標の機能とは相容れないとも主張する。しかし、前記3のとおり、被告各標章に係る部分を、自他識別機能出所表示機能を発揮しない状態として、その部品が適合するポンプの型式を示すことは可能であると解されるから、被告のこの主張も採用することができない。
(4) そして、他に、原告らによる本件各商標権の行使が、権利の濫用にあたると評価するに足りる事情は認められない。
したがって、原告らによる本件請求が、権利濫用にあたるということはできない。
6 損害額について 被告による被告各標章の使用により、原告らが被った損害が、原告シンコーにつき333万円、原告大晃機械につき137万円、原告帝国機械につき41万円、原告石井工作所につき22万円、原告兵神機械につき131万円であることについて、被告は争わない。
7 結論 以上のとおりであるから、原告の請求はいずれも理由がある。
なお、主文のうち、廃棄を命ずる部分である第1項ないし第5項の各(4)については、仮執行宣言は相当でないからこれを付さない。
よって、主文のとおり判決する。
追加
(別紙)物件目録船舶用ポンプに用いられる次の各物件1インペラ2マウスリング3シャフト4スリーブ以上標章目録1SVA2VSN3TVS4PCSL5VSK以上(別紙)登録商標目録1出願日平成15年2月3日(商願2003-7308号)登録日平成15年9月19日(商標登録第4710586号)商標SVA(標準文字)商品及び役務の区分並びに指定商品第7類・動力機械器具(陸上の乗物用のものを除く。)、風水力機械器具2出願日平成15年2月12日(商願2003-10026号)登録日平成15年8月15日(商標登録第4701498号)商標VSN(標準文字)商品及び役務の区分並びに指定商品第7類・動力機械器具(陸上の乗物用のものを除く。)、陸上の乗物用の動力機械の部品、風水力機械器具、動力伝導装置3出願日平成15年3月13日(商願2003-19920号)登録日平成15年9月19日(商標登録第4712024号)商標TVS(標準文字)商品及び役務の区分並びに指定商品第7類・風水力機械器具及びその部品4出願日平成15年1月23日(商願2003-4358号)登録日平成15年8月22日(商標登録第4703424号)商標PCSL(標準文字)商品及び役務の区分並びに指定商品第7類・ポンプ、その他の風水力機械器具5出願日平成15年2月24日(商願2003-14110号)登録日平成15年10月10日(商標登録第4716917号)商標VSK(標準文字)商品及び役務の区分並びに指定商品第7類・ポンプ、その他の風水力機械器具
裁判長裁判官 山田知司
裁判官 高松宏之
裁判官 守山修生
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