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事件 平成 17年 (ワ) 5588号 商標権侵害差止等請求事件
原告株 式会社パソック
訴訟代理人弁護士櫻林正己
同 森隆行
訴訟代理人弁理士中村敬
被告株 式会社風船工房匠
訴訟代理人弁護士赤尾直人
同 岩本洋子
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2006/12/21
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1被告は,別紙被告標章目録記載(1)及び(2)の標章を,送風式バルーン着ぐるみ商品に付して譲渡し,貸し渡し,譲渡又は貸渡しのため展示し,同商品に関する広告,価格表若しくは取引書類に付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に別紙被告標章目録記載(1)及び(2)の標章を付して電磁的方法により提供してはならない。
2被告は,別紙被告標章目録記載(1)及び(2)記載の標章を付した送風式バルーン着ぐるみ商品に関する広告を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,356万8832円及び内金349万3209円に対する平成17年6月16日から,内金2万6571円に対する平成17年6月30日から,内金2万6714円に対する平成17年7月20日から,内金3600円に対する平成17年7月31日から,- 2 -内金3438円に対する平成17年8月31日から,内金1万5300円に対する平成17年10月22日から,それぞれ支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
4原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5訴訟費用はこれを3分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
6この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
第1請求1主文第1項と同旨2被告は,別紙被告標章目録記載(1)及び(2)の標章(以下「被告標章1」,「被告標章2」といい,両者を併せて「被告標章」という。)を付した送風式バルーン着ぐるみ商品及び同商品に関する広告を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,2000万円及びこれに対する平成17年6月16日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
第2事案の概要本件は,登録商標「ウォークバルーン」に係る商標権者である原告が,送風式バルーン着ぐるみ商品に被告標章を付して販売等する被告の行為は原告の商標権を侵害すると主張して,被告に対し,@商標法36条1項に基づき,被告標章を付した送風式バルーン着ぐるみ商品の譲渡等の差止めを求め,A商標法36条2項に基づき,被告標章を付した送風式バルーン着ぐるみ商品等の廃棄を求めるとともに,B平成14年6月12日から口頭弁論終結時までの間の被告標章の使用について,民法709条,商標法38条2項又は3項に基づき,損害金の一部として,平成14年6月11日以前の被告標章の使用について,民法704条に基づき,利得金の一部として,合計2000万円及びこれに対する訴状送達の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金ないし利息金の支払いを求めている事案である。
1争いのない事実(1)原告の商標権原告は,別紙原告登録商標目録記載の商標権を有している(以下,「原告登録商標権」といい,その登録商標を「原告登録商標」という。)。
(2)被告標章の使用被告は,送風式バルーン着ぐるみ商品(以下「被告商品」という。)を譲渡し,貸し渡し,譲渡又は貸渡しのため展示している。そして,被告は,被告商品に関する広告,価格表若しくは取引書類に被告標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に被告標章を付して電磁的方法により提供している。被告商品は,商品区分第25類の「仮装用衣裳として用いられる衣服」に該当する。
2争点(1)被告標章は,原告登録商標に類似するか。(争点1)(2)原告登録商標は,商標法4条1項11号に該当し,原告の請求は権利の濫用に当たるか。(争点2)(3)原告登録商標は,商標法4条1項16号に該当し,原告の請求は権利の濫用に当たるか。(争点3)(4)被告標章は,商標法26条1項2号に該当するか。(争点4)(5)原告の損害等ア商標法38条2項の適用の有無(争点5)イ平成14年6月12日以降の被告標章の使用による原告の損害(争点6)ウ平成14年6月11日以前の被告標章の使用による被告の利得と原告の損失(争点7)第3争点に対する当事者の主張1争点1(原告登録商標と被告標章の類否)について【原告の主張】原告登録商標は「ウォークバルーン」なる称呼を生じ,被告標章はいずれも「ウォーキングバルーン」なる称呼を生じるが,両者間には「ウォーク」と「ウォーキング」の相違しかなく,両者は類似する。
原告登録商標は「歩く風船」なる観念を生じ,被告標章はいずれも「歩いている風船」なる観念を生じるが,両者間には,「歩く」という動作を表現する部分が現在形(ウォーク)か進行形(Walking,ウォーキング)かの相違しかなく,両者は類似する。
よって、原告登録商標と被告標章は類似する。
【被告の主張】原告登録商標には,後記のとおり無効事由が存在する。無効事由を有する商標権に基づく権利主張が行われた場合,これによる権利範囲については可能な限り限定解釈を行うべきであり,その場合の権利範囲とは,同一の称呼,外観及び観念を呈する場合に限定されるというべきである。
被告標章は,呼称,外観及び観念のいずれにおいても原告登録商標と同一ではないから,原告登録商標に類似しない。
2争点2(原告登録商標の商標法4条1項11号該当性)について【被告の主張】(1)原告登録商標の構成原告登録商標は,「ウォークバルーン」によって構成されているが,「ウォーク」は「歩く」の観念を有し,「バルーン」は「気球又は風船」の観念を有している。原告登録商標は,上記各観念を有している「ウォーク」及び「バルーン」による結合商標である。
(2)先願登録商標の存在別紙先願登録商標目録記載1の登録商標(以下「先願商標1」という。)は,「ウォーク」及び「WALK」を標章とし,同目録記載2の登録商標(以下「先願商標2」という。)は,「バルーン」及び「BALLOON」を標章とするものであり,いずれも原告登録商標の登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標に該当する。
先願商標1の指定商品の一部は,原告登録商標の指定商品と同一であり,先願商標2の指定商品のうち,洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽などは,原告登録商標の指定商品に類似する。
(3)先願登録商標と原告登録商標の類否特許庁の審査基準によれば,商品の品質,原材料,使用方法などの形容詞的文字部分を有する結合商標は,当該文字部分が結合されていない商標と類似関係にある。
原告登録商標が登録査定を受けた平成8年7月当時,仮装用被服として内部に空気を充満させたことによるバルーン構造の衣服は公然と採用されていた。
したがって,原告登録商標のうちの「バルーン」の部分は,商品の品質を表示している。かくして,原告登録商標は,「ウォーク」及び「WALK」を標章とする先願商標1に類似する。
仮装用衣服は,仮装行列などのデモンストレーションにおいて歩行によって使用されている。したがって,原告登録商標のうちの「ウォーク」の部分は,商品の使用方法又は用途を表示している。よって,原告登録商標は,「バルーン」及び「BALLOON」を標章とする先願商標2に類似する。
仮に,「ウォーク」の部分が商品の使用方法又は用途を表示していないとしても,「バルーン」の部分が商品の品質を表示することに変わりはなく,この場合,原告登録商標における要部は「ウォーク」の部分に存在することになるが,このように解したとしても,原告登録商標は,先願商標1に類似する。
仮に,原告登録商標が,「ウォーク」と「バルーン」の一体化によって「歩行によって使用するバルーン構造の衣服」又は「歩いた状態のバルーン状態を示す衣服」という趣旨に解したとしても,「ウォーク」の部分が使用方法又は用途を示していること,及び「バルーン」の部分が商品の品質を表示していることに変わりはない。
(4)したがって,原告登録商標は,商標法4条1項11号に該当し,無効理由が存在することが明らかであるから,原告の請求は権利の濫用に当たる。
【原告の主張】(1)除斥期間経過商標法39条は,特許法104条の3を準用しているところ,商標法39条の抗弁が成立するためには,「当該商標登録が商標登録無効審判により無効にされるべきものと認められる」ことが要件とされる。
商標法4条1項11号に基づく無効審判については,商標法47条により登録の日から5年の除斥期間が定められているところ,原告商標権は平成8年12月25日に登録されているので,除斥期間を経過している。よって,被告の主張は理由がない。
(2)商標法4条1項11号非該当ア原告登録商標原告登録商標「ウォークバルーン」は,「ウォーク」と「バルーン」とが連続して表示されており双方が分離されていない。
また,指定商品「仮装用衣裳として用いられる被服」との関係において,「ウォーク」や「バルーン」がその品質,原材料等を表示することはなく,これらの一方は他方に対して形容詞的文字ではない。
原告登録商標「ウォークバルーン」は,「ウォーク」と「バルーン」とが分離されない結合商標であり,「ウォークバルーン」と一体不可分に称呼される一種の造語である。
原告登録商標の取引者が「ウォークバルーン」の「ウォーク」は「walk(歩く)」であり,「バルーン」は「balloon(風船)」であると認識し,「ウォークバルーン」が「歩く風船」なる観念が生じるとしても,これによって「ウォークバルーン」から「ウォーク」と「バルーン」とに分離される理由にはならない。
イ先願登録商標と原告登録商標の類否(ア)商標原告登録商標は「ウォークバルーン」と一体不可分に称呼される造語であり,原告登録商標は「ウォークバルーン」全体によって,先願商標1,2との類否が判断される。
まず,原告登録商標「ウォークバルーン」と先願商標1「ウォーク」又は先願商標2「バルーン」とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相違する。
また,出願時バルーン式着ぐるみが市場に出現していたとしても,当時「バルーン」あるいは「ウォーク」という言葉がバルーン式着ぐるみの品質を表示するものとして業界で慣用されていたという事実はなく,称呼はもとより,外観及び観念においても,個々の「ウォーク」ないし「バルーン」と造語である「ウォークバルーン」が類似するとは認められない。
(イ)指定商品先願商標1「ウォーク」の指定商品に含まれている「仮装用衣服」はそもそもは昭和34年分類の第24類「人形」(現行分類の第28類「がん具,遊技用具及び運動用具」)に基づいている(甲5の1・2)。すなわち,先願商標1の指定商品は元々は「人形に着用させるもの」だったのであり,これが第25類に分類されるようになったとしても,もともと「人が着用するもの」ではなかったものなのだから,「人形用の衣服」であると解される。
他方,原告登録商標は第25類であるといっても,「仮装用衣装として用いられる被服」として商標登録がなされており,類似群コードも「17A01,17A02,17A03,17A04,17A07」であって,先願商標1の「仮装用衣服」の類似群コードである「24A03」と相違しており,審査実務上も,両者は類似するものとは扱われていない。
また,原告登録商標「ウォークバルーン」の類似群コードとして上記のとおり「17A01,17A02,17A03,17A04,17A07」があげられており,その中に先願商標2「バルーン」の一部の指定商品「洋服」が含まれるといっても,取引の実情においては,生産部門,販売部門,原材料,品質,用途,需要者等の点で一致せず,非類似商品であることは明らかである。
(ウ)したがって,原告登録商標と先願商標1及び2は,類似しない。
3争点3(原告登録商標の商標法4条1項16号該当性)について【被告の主張】(1)バルーン構造の仮装用衣服は,原告登録商標の登録査定が行われた平成8年7月25日よりも前に既に公然と知られており,バルーン構造の仮装用衣服の公知性は,その後更に拡大している。
バルーン構造の仮装用衣服の名称として,「バルーン」の表示は,原告登録商標の登録査定より前には,原告及び株式会社イベントサービスしか採用していなかったようであるが,登録査定後は,他の第三者も使用するに至っている。
このように「バルーン」の表示を使用する業者が順次拡大していることは,当該表示が仮装用衣服における造語ではなく,仮装用衣服の構造と密接不可分の関係にあり,商品の品質を表しているからに他ならない。
前記登録査定段階においてさえ,「バルーン」の表示が仮装用衣服の品質を表示するものと理解し得た以上,その後において,バルーン構造の仮装用衣服の取引,及び当該取引を伴う「バルーン」の表示を含む商標の使用が拡大し,バルーン構造の仮装用衣服の品質としての表示が更に顕著となることは十分予測し得る。
とすれば,前記登録査定段階において,原告登録商標が近い将来において,取引業者を含む需要者をして,バルーン構造の仮装用衣服を想定させ,ひいてはバルーン構造以外の仮装用衣服に使用された場合における商品の品質誤認を生ずる恐れが生ずることについても,十分予測し得る。
現に,「バルーン」の表示を採用する業者が拡大していることは,事後の遡及によって,審査段階において,前記誤認を生ずる恐れを予測することが十分可能であり,かつ予想すべきであったことの明瞭な証左である。
また,仮装用衣服は,歩行状態で使用されることを反映して,原告登録商標では「ウォーク」の表示が採用されているが,「ウォーク」が「バルーン」と結合した場合には,あたかもバルーンによるコミカルな形態が歩いたような印象を与えるという効能に関する表示機能をも発揮する。
「ウォーク」と「バルーン」が結合することによって効能を表示するに至ることは,即「バルーン」の部分が仮装用衣服としての特徴を裏付ける特定の品質を表していることを大前提としている。
すなわち,原告登録商標において「ウォーク」と「バルーン」とが結合していることは,当該結合による商品の効能を表示する前提として,後者の部分が商品の品質を表すことを端的に証明している。
(2)したがって,原告登録商標は,商標法4条1項16号に該当し,無効理由が存在することが明らかであるから,原告の請求は権利の濫用に当たる。
【原告の主張】(1)「ウォークバルーン」なる言葉(商標)は原告によって創作された全くの造語であり,原告登録商標の登録出願時まで,業界においても,業界外においても原告を除く第三者によって使用されていた事実はない。
原告登録商標の登録出願時に,「風船式の仮装用衣服」が存在したとしても,そこから直ちに取引者,需要者の認識において,「ウォークバルーン」が「風船式の仮装用衣服」を指すものと認められる状況などどこにもなく,取引の実情において,「ウォークバルーン」なる商標が「風船式でない仮装用衣服」に使用されたとしても,取引者,需要者が品質を誤認することなどない。
(2)また,そもそも,「ウォークバルーン」どころか「バルーン」という言葉自体,原告登録商標の登録出願時も,今日においても,「仮装用衣服」業界において,「風船式着ぐるみ」を文字どおり意味するものと受け止められている状況にはない。被告提出証拠には,「風船式の仮装用衣服」において「バルーン」なる用語が使用されている事例もあるが,いずれも「風船式」であることから,わかりやすいように「バルーン」という言葉を使用しているという実態が示されているだけであり,それ以上に「バルーン」すなわち「風船式着ぐるみ」という状況が存在していることまで認めるに足りるものではない。
4争点4(被告標章の商標法26条1項2号該当性)について【被告の主張】(1)被告商品が「送風式バルーン着ぐるみ商品」であることを考慮すると,被告標章の「Balloon」及び「バルーン」の部分は,いずれも商品の品質を表示している。
(2)被告標章において,「Walking」ないし「ウォーキング」の部分が採用されているのは,各種イベントにおいて,デモンストレーションのために使用されている被告商品においては,通常歩行状態で使用され,かつ当該使用に伴い,あたかもバルーンが歩いたような印象を与えることができることに由来していることを考慮すると,被告標章の「Walking」及び「ウォーキング」の部分は,いずれも使用方法又は用途及び商品の効能を表示している。
(3)したがって,被告標章は,いずれも商標法26条1項2号に該当し,被告標章には原告登録商標権の効力は及ばない。
【原告の主張】「Balloon」又は「バルーン」は単なる風船を意味し,「Walking」又は「ウォーキング」は歩いていることを意味するものの,「WalkingBalloon」又は「ウォーキングバルーン」が「仮装用衣装として用いられる被服」の品質を表示したり,使用方法を表示したり,効能を表示したりする事実もなく,そのことを示す証拠もない。本件指定商品は,「歩く風船」ないし「歩いている風船」ではない。
なお,商標法26条1項2号では,「普通に用いられる方法で表示する商標」であることを要件とされている。ところが,被告の「WalkingBalloon」又は「ウォーキングバルーン」の使用態様は,ホームページの最初のページのよく目立つ中央部分に,大きく,着色して行う等,もっぱら自他商品を識別するために使用されているものとしてしか認められないものであり,普通に用いられる方法で表示するものではない。
5争点5(商標法38条2項適用の有無)について【被告の主張】商標法38条2項を適用するためには,被告商品の販売なかりせば原告商品が販売可能であったという客観的推定が成立することが前提となる。しかし,原告登録商標の登録前及び後の両時期において,バルーン構造の仮装用衣服の販売及びレンタルを行っている第三者企業は多数存在している。したがって,被告商品の販売が行われなかった場合には,第三者企業による競合品が参入された可能性は極めて高く,原告商品が販売可能であったなどという客観的推定が成立する余地はない。
原告は,原告登録商標には顧客吸引力があると主張するが,「ウォーキングバルーン」,すなわち歩いた状態を示すバルーン構造の仮装用衣服という商品の機能及び構造を説明しているに過ぎない被告標章が,ネーミング故に販売実績に寄与するなどということは,基本的性格からしてもあり得ない。
被告商品のレンタル及び販売が所定の実績を挙げた基本的原因は,デザインの奇抜性及び迅速かつ良好なアフターサービスにあり,被告と取引に至った第三者企業は,被告標章のネーミングに着目して被告商品のレンタル又は購入に至ったわけではない。被告商品の請求書には,被告標章以外の標章が多数使用されているが,いずれも固有の販売実績を上げており,被告標章を使用している商品だけが,ネーミング故に格別の販売実績が得られたという状況は生じていない。
したがって,本件において商標法38条2項を適用することはできない。
【原告の主張】被告は,本件において商標法38条2項は適用できないと主張するが,被告は推定覆滅事由の存在について何ら具体的な主張立証をしていない。
かえって,原告商品と被告商品は共に風船式着ぐるみ商品であり,市場において競合している。他方,被告のいう第三者企業は,被告標章のように原告登録商標と酷似した標章を使用しているわけではない。原告登録商標は,業界においてそれ自体として強い出所識別機能と強力な顧客吸引力を備えたものということができる。被告は,原告登録商標には顧客吸引力が存在しないと主張するが,そうだとすれば何故,被告は原告登録商標と酷似する被告標章を採用し,それを前面に打ち出して宣伝広告しているのか説明できない。また,原告登録商標を使用した原告商品が業界において注目され,それゆえ好評を博して販売されてきたことは,甲6の新聞記事などから明らかである。
したがって,むしろ原告登録商標と酷似した被告標章に接して購入を決定した取引者・需要者は,もし被告標章が使用されていなければ,原告商品を購入したものと考えられ,正に本推定規定が働くべき状況が認められる。
6争点6(平成14年6月12日以降の被告標章の使用による原告の損害)について【原告の主張】(1)被告の得た利益(商標法38条2項)ア被告の売上げ(ア)被告は,平成14年6月12日以降のレンタルに伴う売上げが138万7500円,販売による売上げが3676万2704円であることを自認している。
しかし,@上記の数字には,合計3931万6297円,消費税抜きの金額として3744万4092円の計上落ちがある。これらを合計すると,(138万7500円+3676万2704円)+3744万4092円=7559万4296円となる。
A平成17年6月末日決算の売上げについて,被告から任意に提出された請求書の請求金額の合計が,決算報告書中の損益計算書記載の売上合計よりも約8000万円少ない。相当数の請求書が欠落しているのではないかとの疑いを免れない。
B平成12年の売上げについて,納品番号が同じ請求書が2枚提出されているものが全部で37枚確認されたが,重複にかかわらず,合計したところ合計額は4679万0448円となり,税務申告書である乙26に添付された損益計算書による売上金額合計4708万8034円とほぼ一致する。重複している請求書があるのに,どうしてこのような現象が起こるのか全く不明である。
以上の点を考慮すると,被告商品の売上げは,被告の自認額に原告指摘の欠落分を加えた合計7559万4296円の2倍程度,すなわち1億5118万円程度はあるものと推測される。
(イ)被告の主張についてa(請求書)被告は,請求書に被告標章が表示されていない場合は,被告標章の使用があったということはできないと主張するが,請求書に被告標章が使用されていないとしても,被告標章を前面に打ち出した被告商品の宣伝広告態様に照らし,関係取引当事者間で「ウォーキングバルーン」の販売,レンタルがなされていたことは明らかであり,「請求書に記載しておかなければ商標の使用に該当しない」などという被告の見解は採用できるものではない。
b(メンテナンス及び部品の販売)被告は,メンテナンス及び部品の販売による売上げは,被告商品の売上げには含まれないと主張するが,メンテナンス及び部品の販売も被告標章の使用と因果関係のある売上げであり,原告の損害であることは明らかである。
c(寄与度)被告は,被告作成の請求書に記載された名称だけに基づき,しかもこれを分割して寄与度とすべき旨を主張するが,全く被告独自の論法であるとともに,実際の被告標章の使用態様等にも合致していない。
被告が平成17年10月上旬に中止するまで被告のホームページ(甲3)では,被告標章すなわち「WalkingBalloon」の文字記載は,カタカナの「ウォーキングバルーン」の振り仮名付きで,ホームページ冒頭の一番目立つ部分に2色で大きくなされていて,被告の上記宣伝広告態様はまさに被告標章を前面に打ち出すものである。なお,被告が平成11年以降使用していることがわかっているパンフレット(甲20の1〜4はその写し)においても,「ウォーキングバルーン」という表示は,冒頭の目立つ部分になされている。
しかも,甲3にも示されているとおり,被告は,実際に七福神をモデルにした風船式のぬいぐるみを賃貸していたのであるから,レンタル(賃貸)についていえば,「七福神」という表記部分など,それこそ単に被告商品の内容,性質等を表示しているにすぎず,識別機能などないことはいうまでもない。
だからこそ,識別力がある原告登録商標に酷似した被告標章「WalkingBalloon」が前面に打ち出されて広告に使用されているのである。
原告登録商標が被告全標章の3分の1(レンタルの場合)ないし2分の1(販売の場合)の寄与割合であるとする被告の主張は全く根拠がなく,被告商品の広告の前面に打ち出された被告標章部分こそ,まさに需要者に対する強い出所表示機能,識別機能,品質保証機能を有する原告登録商標権にただ乗りし,被告商品の販売に貢献している部分であり,寄与度についての被告主張が採用できないことは明らかである。
イ被告の利益率(ア)被告の粗利益率は5割強である。被告商品は高い利益率が見込まれる商品であるのに対し,一般の風船商品等,被告が扱うその他多数の商品は,利益率はあまり高くないと思われるところ,それでも5割以上の粗利益率を取得できていることからすると,被告商品の利益率は5割以上であることは明らかである。
(イ)被告は,全体の売上金額について限界利益率を算定する手法を用いるべきであると主張するが,不相当である。本件の風船式着ぐるみ商品は,商品単価自体高額な商品であり,市場での人気も高いことから,高い利益率が見込まれる商品であり,それを他の比較的低価格の商品も含めて議論するのは相当でない。
(ウ)被告は,売上げから控除すべき費目について主張するが,役員報酬,給料手当,雑給は,控除すべき変動費用には該当しない。旅費交通費,通信費,接待交通費,修繕費,水道光熱費,燃料費,事務用消耗品費,広告宣伝費,雑費については,いずれも販売量によって変動するものではなく,これらを控除するのは不相当であるか,或いはごく一部のみが控除されるにすぎないというべきである。
ウしたがって,原告が平成14年6月12日以降受けた損害の額は,優に2000万円を超えている。
(2)使用料相当額(商標法38条3項)平成14年6月12日以降における被告商品の売上げは,1億5118万円程度,或いは,少なくとも7559万4296円はあり,その使用料は売上額の10%を下らないから,使用料相当額は,1511万円,或いは,少なくとも755万円となる。
したがって,原告が平成14年6月12日以降受けた損害の額として請求できる金額は,同額を下回るものではない。
【被告の主張】(1)被告の得た利益についての原告の主張は,争う。
ア被告商品の売上げ(ア)平成14年6月12日以降のレンタルに伴う売上げは,138万7500円,販売による売上げは3736万2704円である(なお,販売による売上げについて,被告は,第9準備書面において,3676万2704円であると主張していたが,第13準備書面において,前記のとおり訂正した。)(イ)(請求書)被告の製造販売に係るバルーン構造の仮装用衣服には,商品名を表す標章は掲載されておらず,包装用ケースにおいても同様である。被告標章は専ら請求書において表示されており,請求書に被告標章が記載されていない場合は,被告標章の使用が行われていないことを意味する。
原告は,請求書において被告標章が掲載されていない場合であっても,被告におけるバルーン構造の仮装用衣服に関する宣伝広告の態様を考慮する場合には,当該仮装用衣服の販売の全てについて被告標章の使用が伴っていると解すべきであると主張するが,不特定多数の者を相手方としている宣伝広告と,特定の取引当事者を相手方としている販売とは,商標の使用態様において明らかに次元が相違しており,対象商品について宣伝広告が行われたことが即,その後の販売についても商標の使用が伴ったものとみなすことは不可能である。例えば,被告が設定したホームページにおいて,被告標章のみならず特定のキャラクターに基づくバルーン構造の仮装用衣服が掲載される一方,実際の取引においては,請求書において被告標章は記載されずにキャラクターに対応したネーミング(例えば「ムーミン」,「きらら」のみ)が記載されている場合を想定すると,顧客はキャラクターに対等した名称(ネーミング)に着目したうえで取引を行ったことを意味しており,被告標章は何ら取引における内容及び動機付けとして本来の機能を発揮していない。したがって,たとえ顧客がホームページを参照したうえで前記請求書のような取引に及んだとしても,その場合には,当該請求書に係る取引は金額の算定の対象とはなり得ない。実際には,被告商品の販売取引の成立は,ホームページを参照することによって顧客が売買契約の申込を行うことはまれでこれまでに一度足りともなく,須く被告営業マンの勧誘に由来している。すなわち,被告商品の売上実績は,他の全被告商品と同様に,汗と労力の結晶であって,ホームページの掲載から直ちに売上実績が得られるような甘い状況にはなく,結局前記売上実績とホームページ掲載との間には客観的な因果関係が存在しない。
(ウ)(メンテナンス及び部品の販売)a本来修繕は,商標法2条3項の標章の「使用」に該当しない。修繕に伴って,その請求書に被告標章が記載されたとしても,被告標章の出所表示機能,識別機能及び品質保証機能は,既に修繕より前の販売の段階において発揮されており,修繕段階において請求書に標章が記載されたとしても,既に当該標章の商標としての機能は消尽されているのである。
したがって,修繕に関する請求書に記載された金額は,本来損害の算定の対象とはなり得ない。
また,既に納品された商品につき,被告が顧客の要請によって必要な修繕作業を行い,当該作業の対価として請求書に被告標章を表示した場合を想定すると,前記作業は精々第40類の布地,被服等の加工処理による役務に該当し得るが,第25類の仮装用衣服の売買には該当しない。
したがって,メンテナンスにおいては,第25類に区分されるはずの被告商品自体に対する商標法2条3項が規定する「使用」は存在しない。
b部品の販売既に被告商品を購入した顧客において,被告商品の使用に伴ってバッテリーの交換が必要となり,被告が改めて当該顧客に販売し,その際被告標章を表示した場合を想定すると,前記販売の対象物はあくまでバッテリーであって商品分類としては第9類の「他の電池」に該当し,原告登録商標が使用している第25類には該当しない。
(エ)売上げの倍額推定の根拠についてa(約8000万円の相違)各請求書の請求金額は,5%の消費税を加算した金額が計上されているのに対し,各決算報告書の売上金額は,消費税は加算されていない。
前記請求書の合計金額から消費税を除外した本来の金額は,1億3808万4164円である(1億4498万8372円/1.05)。したがって,決算報告書と請求書の合計金額との差は,8093万2573円となる(2億1901万6737円-1億3808万4164円)。
乙31は,被告と株式会社イー・ワークスとの間にて「バルーンビークルランド」に係るバルーンなどの製作・設営業務に対する請負契約書であり,請負代金は合計8400万円であるが,このうちの400万円は消費税分であって,本来の請負代金は8000万円である(第3条)。
前記契約における業務完了期は,平成16年5月7日であるが(第2条),実際に業務を完了したのは,平成16年9月であるが故に,前記請負業務に基づく売上金額の計上及びこれに要する経費は,いずれも第13期の売上金として計上されている(乙22)。
前記の8093万2573円の相違のほとんどすべては,前記8000万円の売上金が占めているが,被告においては,乙31の契約書をもって請求書に代えており,株式会社イー・ワークスに対し,当該契約に基づく業務を完了した段階において改めて請求書を発行していない。無論,乙31の契約における対象商品は,いずれも被告商標を使用しておらず,本来被告商品に該当しない。
被告においては,バルーン構造のデモンストレーション製品について,発注を受けた段階にて前受金が交付される場合があり,その場合には,納品段階において改めて請求書を作成していない(作成する必要がない。)。
前記差額である8093万2573円から乙31の8000万円を差し引いた約93万円は,そのような売上金の作成を伴っていない販売金額であって,これまた問題とするに値しない。
b(請求書の重複)被告においては,取引先如何によっては各月の末日とは異なる締め日(大抵の場合20日)を設定しており,その場合の請求書は,当該締め日を基準とする期間の単位によって発行されている。これに対し,売上金の計上は,必ず各月を単位として計上されている。被告においては,請求書によって売上処理を行っていたことから,各月の売上を計上するために締め日を単位とする請求書を2枚作成し(実際には1枚余分にコピーし),請求書の金額を分割することによって(例えば,1月21日から2月20日までの請求書の金額が100万円の場合には,1月21日から1月末日までの30万円と2月1日から2月20日までの70万円とに分割することによって),2枚の請求書に各分割金を記載することによって売上伝票に代えていたのである。上記のように,重複した2枚の請求書が作成されるも,実際には分割した金額による計上が行われている以上,重複した累計など行われる余地はない。
重複を伴っていない累計が行われた場合には,乙26に計上されている合計売上金額である4708万8034円との間に差額が生ずる。しかし,このような差額は,被告の中国現地出資会社に対する技術指導料に基づく入金を売上金として計上したことに由来しているのである(当該計上は,会計事務所からの指摘による。)。前記技術指導料については,乙24のような商品毎に対応した請求書は作成されていないが,そのこと自体は被告内部における会計処理方法に関する事項であって,被告商品の販売とは無関係である。
(オ)寄与度aレンタルの対象である被告商品は,「ウォーキングバルーン七福神…」又は「七福神ウォーキングバルーン…」の名称(以下,この項において,これらの名称による標章を「被告全標章」という。)によって取引が行われており,被告標章単独の表示で取引が行われている訳ではない。
レンタルにおける被告全標章のうち,「七福神」の部分をA,「ウォーキングバルーン」の部分をB,その余の部分をCとした場合,構成要素Aは取引の種類がレンタルであることを示し,構成要素Cは商品の種類を特定しており,構成要素Bは,レンタルの対象たる被告商品が被告に帰属することを示している。
被告において,被告商品をレンタルすることによって所定の利益を得るためには,顧客において,@取引の相手として被告を選択すること,A取引の種類としてレンタルを選択すること,Bレンタルの対象品を選択すること,の要因を必要としており,前記構成要素B,A,Cはそれぞれ,@,A,Bの選択の過程に対応している。
したがって,前記構成要素A,B,Cは,いずれもレンタルにおける前記各選択に寄与しており,ロイヤルティーベースによる算定において,被告全標章中,被告標章が占める割合,すなわち寄与度は1/3とするのが相当である。
b販売の対象である被告商品は,「…ウォーキングバルーン」の名称(以下,この項において,当該名称による標章を「被告全標章」という。)によって取引が行われており,被告標章のみで取引が行われている訳ではない。
販売における被告全標章のうち,「…」の部分をA,「ウォーキングバルーン」の部分をBとした場合,構成要素Aは,商品の種類を特定するとともに,当該商品が販売の対象であることを示し,構成要素Bは,販売の対象たる被告商品が被告に帰属することを示している。
被告において,被告商品を販売することによって所定の利益を得るためには,顧客において,@取引の相手として被告を選択すること,A取引の種類として販売を選択すること,B販売の対象品を選択すること,の要因を必要としており,前記構成要素B,Aはそれぞれ,@,A,Bの選択の過程に対応している。
したがって,前記構成要素A,Bは,いずれも販売における前記各選択に寄与しており,ロイヤルティーベースによる算定において,被告全標章中,被告標章が占める割合,すなわち寄与度は1/2とするのが相当である。
c原告は,甲3において被告標章部分が冒頭の最も目立つ位置に2色において表示されていることをもって自らの主張を裏付けようとしているが,寄与度の存否及びその程度は,被告標章の使用態様によって判断すべきであって,甲3のような広告の態様から一律に断定することはできない。甲3に着目した場合,「七福神」の表示部分はホームページの上側の図面(写真)と相まって需要者をして極めて注目し易いような状態で表示されており,冒頭の被告標章部分と協働状態で宣伝機能を発揮しているのである。したがって,双方の宣伝広告機能は相互に補完し合う関係にあるものである。
また,原告は,甲3の「七福神」の表示部分は商品の内容,性質を表示するにすぎない以上,識別機能等存在しないと主張するが,被告全商品のうちには,「七福神」のみの表示によって取引が行われる場合があるのに対し,被告標章のみによる取引は行われていない。このような状況は,「七福神」の名称がコミカルな形状と相まって出所表示機能,識別機能,品質保証機能を有していることを意味している。
原告は,甲20の1〜3に示すような被告標章の宣伝パンフレットが平成11年以降使用されていることをもって,自らの主張を裏付けようとしているが,甲20の如き宣伝パンフレットをもって被告標章の寄与分の存否及びその程度を一律に断定することは不可能である。個別の被告商品は,「愛ちゃん」,「ムーミン」,「つぼっち」等の他の標章との結合によって請求書に表示されるも,被告標章のみによる表示は行われていない。これに対し,前記他の標章は,単独で表示される場合もあり,このような状況は,前記他の標章が被告標章以上に,前記各機能を発揮し,かつ顧客吸引力を有していることの明瞭な証左である。
イ被告の利益率(ア)レンタルについては,その原価は毎会計年度ごとに,被告全商品について算出されており,個別の商品に関する集計は行われていない。販売については,平成16年4月以降は中国から仕入れているが,同年3月以前は自ら製造を行っていた。また,販売費及び一般管理費のうちの各項目は,全て被告全商品を基準として算定されており,しかも,レンタル費用と販売費用とが混在した状態にある。このような場合,被告商品に即した限界利益率を算定することは不可能であり,レンタル及び販売を含めた被告全商品を基準として算出する以外にない。
(イ)限界利益率の算定に当たっては,売上原価のほか,販売費及び一般管理費のうち,役員報酬,給料手当,雑給,旅費交通費,通信費,接待交際費,修繕費,水道光熱費,燃料費,荷造運賃発送費,事務用消耗品費,広告宣伝費,雑費を控除すべきである。
(2)使用料相当額についての原告の主張は,争う。
被告商品のレンタル及び販売が所定の実績を挙げ得た基本的原因は,デザインの奇抜性及び迅速かつ良好なアフターサービスにあり,被告と取引に至った第三者企業は,被告標章のネーミングに着目して,被告商品のレンタル及び購入に至った訳ではない。したがって,レンタル及び販売において,被告全標章による使用料率は,精々1%に過ぎない。
7争点7(平成14年6月11日以前の被告標章の使用による被告の利得と原告の損失)【原告の主張】(1)被告は,平成9年ころの販売等の開始から平成14年6月11日までの間におけるレンタルによる売上げが114万円,販売による売上げが2090万2500円であることを自認している。この数字には,合計2422万1390円,消費税抜きの金額として2306万7990円の計上落ちがある。これらを合計すると,(114万円+2090万2500円)+2306万7990円=4511万0490円となるところ,被告は,この金額の2倍に当たる合計9022万円余りの売上げを上げているものと推測される。
被告標章の使用料は売上額の10%が相当であり,被告の利得額は,902万円,或いは,少なくとも451万円となる。
(2)したがって,原告が平成14年6月11日以前に受けた損失の額として請求できる金額は,同額を下回るものではない。
【被告の主張】争う。
平成14年6月11日以前のレンタルによる売上げは114万円,販売による売上げは2090万2500円である。
被告全標章の使用料は,精々売上げの1%程度であり,このうち被告標章の寄与度は,レンタルにおいて3分の1,販売において2分の1である。
第4争点に対する判断1争点1(原告登録商標と被告標章の類否)について(1)原告登録商標ア原告登録商標は,「ウォークバルーン」という文字を横書きにしたものである。
イ「ウォーク」と「バルーン」は連続して表示されている。「ウォーク」は「歩く」を意味する語であり,「バルーン」は「風船」を意味する語であって,両者の間に主従,軽重の関係はない。「ウォーク」も「バルーン」も,いずれも平易かつ日常見られる語であって,「ウォークバルーン」は,自然に「うぉーくばるーん」と称呼できるから,原告登録商標は,不可分一体の商標と認められる。
ウしたがって,原告登録商標は,その全体により「うぉーくばるーん」と称呼され,「歩く風船」という観念を生じるものと認められる。
(2)被告標章1ア被告標章1は,「WalkingBalloon」という文字を横書きにしたものである。
イ「Walking」と「Balloon」は,その間に大きな間隔がなく,連続して表示されている。「Walking」は「歩いている」を意味する英語であり,「Balloon」は「風船」を意味する英語であって,両者の間に主従,軽重の関係はない。「Walking」も「Balloon」も,いずれも比較的平易かつ日常見られる英語であり,「WalkingBalloon」は,自然に「うぉーきんぐばるーん」と称呼できるから,被告標章1は,不可分一体の商標と認められる。
ウしたがって,被告標章1は,その全体により「うぉーきんぐばるーん」と称呼され,「歩いている風船」という観念を生じるものと認められる。
(3)被告標章2ア被告標章2は,「ウォーキングバルーン」という文字を横書きにしたものである。
イ「ウォーキング」と「バルーン」は連続して表示されている。「ウォーキング」は「歩いている」を意味する語であり,「バルーン」は「風船」を意味する語であって,両者の間に主従,軽重の関係はない。「ウォーキング」も「バルーン」も,いずれも平易かつ日常見られる語であって,「ウォーキングバルーン」は,自然に「うぉーきんぐばるーん」と称呼できるから,被告標章2は,不可分一体の商標と認められる。
ウしたがって,被告標章2は,その全体により「うぉーきんぐばるーん」と称呼され,「歩いている風船」という観念を生じるものと認められる。
(4)原告登録商標と被告標章の類否ア原告登録商標は,「うぉーくばるーん」と称呼されるのに対し,被告標章は,いずれも「うぉーきんぐばるーん」と称呼されるところ,両者の間には,語末の弱音の相違があるのみであり,両者は類似する。
また,原告登録商標は,「歩く風船」という観念を生じるのに対し,被告標章は,いずれも「歩いている風船」という観念を生じるところ,両者の間には,動詞の時制が現在形か現在進行形かの相違があるのみであり,両者は類似する。
したがって,被告標章は,いずれも原告登録商標に類似するものと認められる。
イ被告は,原告登録商標には無効事由が存在し,無効事由を有する登録商標に基づいて権利主張がなされた場合には,これによる権利範囲は,同一の称呼,外観及び観念を呈する場合に限定されるべきであると主張する。
しかし,後記のとおり,原告登録商標には被告主張の無効事由が存在するとは認められないから,被告の上記主張は採用できない。
2争点2(商標法4条1項11号該当性)について(1)先願登録商標1ア先願登録商標1は,「WALK」という文字を横書きにし,その下に「ウォーク」という文字を横書きにしたものである。
イ「WALK」は「ウォーク」よりもやや大きめの文字で,両者は上下2段に表示されている。両者はいずれも「歩く」を意味し,「うぉーく」という称呼を生じる。
(2)先願登録商標2ア先願登録商標2は,「BALLOON」という文字を横書きにし,その下に「バルーン」という文字を横書きにしたものである。
イ「BALLOON」は「バルーン」よりもやや大きめの文字で,両者は上下2段に表示されている。両者はいずれも「風船」を意味し,「ばるーん」という称呼を生じる。
(3)先願登録商標と原告登録商標の類否ア原告登録商標が「ウォークバルーン」という文字を連続して横書きにしたものであるのに対し,先願登録商標1は「WALK」と「ウォーク」を,先願登録商標2は「BALLOON」と「バルーン」を,いずれも上下2段に表示したものであり,原告登録商標と先願登録商標1及び2は,外観において相違する。
また,原告登録商標が「うぉーくばるーん」と称呼されるのに対し,先願登録商標1は「うぉーく」,先願登録商標2は「ばるーん」と称呼され,原告登録商標と先願登録商標1及び2は,称呼において相違する。
さらに,原告登録商標が「歩く風船」という観念を生じるのに対し,先願登録商標1は「歩く」,先願登録商標2は「風船」という観念を生じ,原告登録商標と先願登録商標1及び2は,観念において相違する。
したがって,原告登録商標は,先願登録商標1及び2のいずれにも類似しない。
イ被告は,原告登録商標の登録時点において既に,バルーン構造の仮装用衣服が公然と採用されていたとして,原告登録商標のうちの「バルーン」の部分は商品の品質を表示し,「ウォーク」の部分は商品の使用方法又は用途を表示しているということを前提に,原告登録商標は先願登録商標と類似すると主張する。
しかし,原告登録商標の登録時点において,バルーン構造の仮装用衣服を取り扱っていた業者は,被告によっても,原告外1社を指摘し得るにとどまり,バルーン構造の仮装用衣服自体,仮装用衣服の業界においてどの程度認識されていたか疑問である。まして,原告登録商標の登録時点において,「バルーン」がバルーン構造の仮装用衣服の品質を表示し,「ウォーク」がバルーン構造の仮装用衣服の使用方法又は用途を表示するものとして,仮装用衣服の業界において認識されていたものとは到底認められない。
(4)したがって,原告登録商標は,商標法4条1項11号には該当しない。
3争点3(商標法4条1項16号該当性)について(1)被告は,原告登録商標の登録時点において,「バルーン」の表示が取引者ないし需要者にバルーン構造の仮装用衣服の品質を指す表示として認識され,バルーン構造以外の仮装用衣服に使用された場合に商品の品質誤認を生ずるおそれがあることは十分に予測し得たとして,原告登録商標は商標法4条1項16号に該当すると主張する。
(2)そこで,「バルーン」の語が仮装用衣服を取り扱う業界においてどのように使用されているかを見てみると,各項末尾記載の証拠によれば,次の事実が認められる。
ア「着ぐるみバルーン」という商品を取り扱う会社のホームページ(2005年8月17日付け)に,その説明として,「バッテリーとファンを内蔵した,空気でふくらむバルーンの着ぐるみです。」との記載がある。(乙9の1)イ「バルーン式着ぐるみ」という商品を取り扱う会社のホームページ(2005年8月17日付け)に,その説明として,「内部に小型の送風機と専用のバッテリーが内蔵された着ぐるみです。」との記載がある。(乙9の2)ウ「バルーンコスチューム」という商品を取り扱う会社のホームページ(2005年8月17日付け)に,その説明として,「専用のバッテリーと小型ファンで膨らませて形状を保つ新タイプの着ぐるみです。」との記載がある。
(乙9の3)エ「ウォークアラウンドボールマン」という商品を取り扱う会社のホームページ(2005年9月26日付け)に,その説明として,「ブロワーで空気を送り込むタイプの着ぐるみです。」との記載がある。(乙13の1)オ送風式の着ぐるみを扱う会社のホームページ(2005年8月17日付け)に「エアー着ぐるみ」の表示がある。(乙13の2)カ送風式の着ぐるみを扱う会社のホームページ(2005年9月26日付け)に「インフレータブルバルーン」,「エアバルーン」の表示がある。
(乙13の3)キ送風式の着ぐるみ商品を取り扱う会社のホームページ(2005年9月26日付け)に「歩くバルーンぬいぐるみウォークバルーン」の表示がある。
(乙13の4)ク送風式バルーン式着ぐるみ商品を取り扱う会社の商品案内等に「インフレータブルバルーン」,「バルーンコスチューム」の表示がある。(乙14の1〜6)ケ送風式バルーン式着ぐるみ商品を取り扱う会社のホームページ(2005年9月28日付け)に「エアーウォークバルーン」の表示がある。(乙15)(3)上記事実によれば,現在(口頭弁論終結時),仮装用衣服に関して,風船状のものを表す場合に「バルーン」の語を使用する場合があることが認められるが,同じく風船状に膨らんだ着ぐるみを表示する場合でも,「ウォークアラウンドボールマン」や「エアー着ぐるみ」のように,「バルーン」の文字を含まない表示もある。また,「バルーン」の文字を含む表示であっても,その商品について「バッテリーとファンを内蔵した,空気でふくらむバルーンの着ぐるみです。」のように,商品の説明を記載しているものもある。
このような事実からすると,現在,「バルーン」の語は,風船状のものを表すために用いられていることがあるものの,「バルーン」の語のみでは,例えば,送風式で膨らませて使用する(バルーン構造)商品というような,特定の商品を表示するものとして,取引者ないし需要者一般に認識されているものとは認められず,その他,「バルーン」の語が,バルーン構造の仮装用衣服ないしその品質を表示するものとして取引者ないし需要者に一般に認識される可能性があることを認めるに足りる証拠はない。
(4)そうすると,「バルーン」は,バルーン構造の仮装用衣服ないしその品質としては取引者ないし需要者に認識されていないから,これをその指定商品に使用したとしても,これに接した取引者ないし需要者が,バルーン構造の仮装用衣服であると誤認するおそれがあるとは認められない。
(5)したがって,原告登録商標は,現在,商標法4条1項16号には該当しないし,また,以上の事実に照らし,原告登録商標の登録査定時においても,同号に該当したとすることはできない。
4争点4(商標法26条1項2号該当性)について(1)被告は,被告標章1の「Balloon」及び被告標章2の「バルーン」は,商品の品質を表示し,被告標章1の「Walking」及び被告標章2の「ウォーキング」は,商品の使用方法又は用途及び商品の効能を表示するとして,被告標章が商標法26条1項2号に該当すると主張する。
(2)しかし,商標法26条1項2号は,「当該指定商品若しくはこれに類似する商品の・・・品質,・・・効能,用途,・・・使用の方法・・・を普通に用いられる方法で表示する商標」と規定しており,原告登録商標の指定商品は「仮装用衣裳として用いられる被服」であるところ,被告標章1の「Balloon」及び被告標章2の「バルーン」が「仮装用衣裳として用いられる被服」又はこれに類似する商品の品質を表示し,被告標章1の「Walking」及び被告標章2の「ウォーキング」は,「仮装用衣裳として用いられる被服」又はこれに類似する商品の使用方法又は用途及び効能を表示している事実は,認められない。
(3)したがって,被告標章はいずれも商標法26条1項2号には該当しない。
5争点5(商標法38条2項適用の有無)について(1)被告は,バルーン構造の仮装用衣服を取り扱っている業者は多数存在し,被告商品の売上実績は,専ら被告の営業努力によって獲得されており,被告標章がそのネーミング故に売上実績に寄与することはあり得ない,などとして,本件において商標法38条2項の適用はできないと主張する。
(2)しかし,証拠(甲7の1〜4)によれば,原告は,被告商品と同種の商品であるバルーン構造の仮装用衣服を販売・レンタルしており,市場において競合していることが認められるから,商標法38条2項を適用する基礎はある。
被告の主張する点は,被告商品の売上実績に対する被告標章の寄与度として考慮し得ることは別として,商標法38条2項の適用を否定するには足りない。
6争点6(平成14年6月12日以降の被告標章の使用による原告の損害)について(1)被告の売上げ証拠(乙20〜22,25〜28)及び弁論の全趣旨によれば,被告商品の売上げは,レンタルと販売を合計して,平成9年から平成14年6月11日以前の分が4598万6500円,平成14年6月12日以降の分が7297万4585円,合計1億1896万1085円であると認められる。この算定の過程は,各別表のとおりであり,被告の自認分【別表1-1(被告第13準備書面の表1-1(レンタル分),別表1-2(被告第13準備書面の表1-2(販売分)】に,原告指摘の欠落分【別表2-1(原告準備書面6。平成14年6月11日以前分),別表2-2(原告準備書面6。平成14年6月12日以降分),別表3-1(原告準備書面7。平成12年1月1日ないし6月30日分),別表3-2(原告準備書面7。その他)】を加え,両者の合計額から消費税分を控除した【別表4】。これを,平成14年6月11日以前分と平成14年6月12日以降分に分けて整理したのが【別表5-1】である。
(2)倍額売上げの推定についてア原告は,@被告の自認する売上げに相当金額の計上落ちがあることに加えて,A平成17年6月末日決算の売上げについて,被告から任意に提出された請求書の請求金額の合計が,決算報告書中の損益計算書記載の売上合計よりも約8000万円少ないこと,B平成12年の売上げについて,納品番号が同じ請求書が2枚提出されているものが全部で37件あるが,重複分も含めた請求金額の合計が,税務申告書に添付された損益計算書記載の売上金額とほぼ一致すること等を指摘して,被告の売上げは,被告の自認額に原告指摘の欠落分を加えた合計の2倍程度はあるはずであるとして,これを前提に損害額の算定をすべきであると主張するので検討する。
イ(ア)@の被告自認額に計上落ちがある点について弁論の全趣旨によれば,被告は,被告標章を使用した売上げに含まれるのは,請求書に被告標章の記載があるものだけに限るとの見解に立ち,それ以外のものは請求書を原告に開示しながら敢えて自認額に計上しないという態度をとっており,上記計上落ちの大半は,このことによるものと認められる。かかる被告の見解を採用し得るか否かはさて措き,上記事実に照らせば,上記計上落ちは,被告が売上げを隠匿していることを窺わせるものではない。
(イ)Aの約8000万円について証拠(乙22,31の1,49の1・2,50の1〜3)及び弁論の全趣旨によれば,被告が株式会社イー・ワークスとの間にて「バルーンビークルランド」に係るバルーンなどの製作・設営業務について,代金8000万円(消費税400万円),平成16年5月7日業務完了との約定で請負契約を締結したものの,実際に業務を完了したのが平成16年9月にずれ込んだことから,同契約に基づく売上金額の計上等が第12期(平成16年5月を含む決算期)ではなく,翌第13期に計上されたこと,請負代金の請求について,被告は契約書をもって請求書に代えており,改めて請求書を発行していないこと,被告は請負代金の支払いを現に受けていること,以上の事実が認められる。したがって,Aの約8000万円の差額は,この分について請求書が発行されていないことによると認められる。
(ウ)Bの請求書の重複について証拠(乙26)及び弁論の全趣旨によれば,上記重複ある期間(平成12年1月〜6月)において,重複分も含めた請求金額の合計(約4679万円)が税務申告書に添付された損益計算書記載の売上金額(約4708万円)とほぼ一致することが認められ,上記事実によれば,この期間中に通常ではない何らかの会計処理(例えば売上げの二重計上による過大算定等)が行われた可能性はあるものの,売上げが過小に算定されたものとは認められない。
ウ以上のとおり,上記@ないしBは,いずれも,被告の売上げが被告の自認額に原告指摘の欠落分を加えた合計の2倍程度あることを推認させる事情とはいえず,その他に,被告の売上げが被告の自認額に原告指摘の欠落分を加えた合計の2倍程度あることを推認させる事情は見当たらない。
(3)請求書ア被告は,被告商品及びその包装用ケースに被告標章は付されておらず,被告標章は専ら請求書に表示されているから,請求書に被告標章が表示されていない場合は,被告標章の使用があったということはできないとして,請求書に被告標章の表示のない売上げについては,原告の損害額の算定に当たり,被告商品の売上げには含まれないと主張する。
イしかし,証拠(甲3)によれば,被告は,そのホームページに被告標章を付して被告商品の宣伝広告を行っていたことが認められる。
被告のかかる行為は,商標法2条3項8号に該当し,被告商品全体についての被告標章の「使用」に当たると認められる。
ウしたがって,被告の上記主張は採用できない。
(4)メンテナンスア原告は,被告商品のメンテナンスに伴う売上げも,原告の損害額の算定に当たり,被告商品の売上げとして計上されるべきであると主張する。
イしかし,被告標章の自他識別機能は,被告商品の販売によって発揮されるものである。これに対して,被告商品のメンテナンスは,論理必然的に販売者である被告がしなければならないというものではない。むしろ,バルーン構造の仮装用衣服のメンテナンスの発注に当たっては,商品を購入して所有権を得た需要者が,被告標章の自他識別機能とは関係なく,同種商品の維持管理に関する知識と技術を有していることに着目して依頼するものと認められる。
ウしたがって,被告商品のメンテナンスに伴う売上げは,原告の損害額の算定に当たり,被告標章の使用によって得た利益に含まれるものとは認められない。
(5)部品の販売ア被告は,被告商品の部品の販売による売上げは,原告の損害額の算定に当たり,被告商品の売上げの対象には含まれないと主張する。
イ確かに,過去に被告商品を購入した者に対して,その後別の時期にその部品を販売する場合は,当該部品が原告登録商標の指定商品又はこれに類似する商品でなければ,原告の商標権を侵害したとはいえない。
しかし,被告商品を購入する者に対して,併せてその部品を販売する場合は,一括して被告商品の販売に附随したものと目することができるから,当該部品が原告登録商標の指定商品又はこれに類似する商品であるか否かを問わず,原告の商標権を侵害する行為によって得た利益ということができる。
ウそして,被告商品の部品の販売が,被告商品の販売と併せてなされたものであるか否かは,被告が最もよく把握しているものであるにもかかわらず,被告は,被告商品の部品の販売が,被告商品の販売と併せてなされたものでないことについて,個別に主張立証しない。
そうすると,弁論の全趣旨によれば,被告商品の部品の販売は,被告商品の販売と併せてなされたものとして,被告商品の販売と認められる。
エなお,別表2-2において,原告が計上落ちであることを指摘した売上げのうち,その名目が「機材販売」,「その他」及び「不明」となっているものについても,上記と同様の理由により,被告商品の販売と認められる。
(6)被告の得た利益(商標法38条2項)平成14年6月12日以降の被告商品の売上げは7297万4585円である。証拠(乙20ないし22)によって認められる被告会社の粗利益率(年度により約39ないし51%),販管費の状況に弁論の全趣旨を総合して,被告商品の売上げにより被告が得た利益は,売上げの3割と認める。また,証拠(乙30の1〜7)によって認められる被告の顧客側の認識,弁論の全趣旨によって認められる,請求書等にも被告標章が記載されていない売上げが相当数あることを始めとする被告標章の使用の程度及び被告商品の性質を考慮して,被告商品の売上げに対する被告標章の寄与度は1割をもって相当と認める。したがって,上記期間における被告商品の売上げによって被告の得た利益は,218万9238円(7297万4585円×0.3×0.1=218万9238円)であると認められる。
(7)使用料相当額(商標法38条3項)本件全証拠によっても,平成14年6月12日以降の被告商品の売上げに対する使用料相当額が,前記(6)認定の金額を超えると認めることはできない。
7争点7(平成14年6月11日以前の被告標章の使用による被告の利得と原告の損失)について平成9年から平成14年6月11日までの被告商品の売上げは4598万6500円であり,前記6(6)認定に係る被告の顧客側の認識,被告標章の使用の程度,被告商品の性質を考慮すれば,原告登録商標の使用料相当額は,売上げの3%をもって相当と認められるから,上記期間における被告の利得及び原告の損失は,137万9595円(4598万6500円×0.03=137万9595円)であると認められる。
8遅延損害金の起算日について(1)上記6より認められる損害金218万9238円のうち,訴状送達の日である平成17年6月16日以前の売上げに対応する211万3614円(別表6のb欄参照)及び上記7の利得金137万9595円の合計349万3209円については,訴状送達の日である平成17年6月16日が遅延損害金の起算日となる。
(2)上記6より認められる損害金のうち,平成17年6月17日以降の売上げに対応するものについては,不法行為の日以後の日であると認められる請求書の日付が遅延損害金の起算日となる(別表6のc欄参照)。
9差止めの必要性(1)被告は,被告商品に関する広告及び取引書類に被告標章を付して譲渡等していたものであり,本訴訟において被告標章の使用が原告の商標権を侵害することを争っており,今後とも被告標章を使用するおそれがあるから,その差止めと被告標章を付した広告の廃棄を命ずる必要がある。
(2)被告が被告商品自体に被告標章を付して譲渡等をしていたと認めるに足りる的確な証拠はない。しかし,被告は,被告商品に関する広告及び取引書類には被告標章を付して譲渡等していたものであるところ,被告は,被告標章を被告商品に付して,譲渡し,貸し渡し,譲渡又は貸渡しのため展示したことを当初認めていたことがある(答弁書2頁)。このことからすれば,被告は,被告商品に被告標章を付すことを意識的に避けていたのではないと認められる。そうすると,被告が将来,広告や取引書類だけではなく,被告商品にも被告標章を付して譲渡等をするおそれはあるものと認められるから,その差止めを命ずる必要がある。
もっとも,前示のとおり,被告が被告商品自体に被告標章を付して譲渡等をしていたという的確な証拠はなく,現在,被告標章が付された商品が存在するとも認められないから,その廃棄請求は理由がない。
10結論よって,原告の請求は,被告に対し,@商標法36条1項に基づき,被告標章を,被告商品に付して譲渡等をし,被告商品に関する広告等に付して展示等することの差止めを求め,A商標法36条2項に基づき,送風式バルーン着ぐるみ商品に関する広告に被告標章を付したものの廃棄を求め,B民法709条,商標法38条2項に基づき損害金218万9238円及び民法704条に基づき利得金137万9595円の合計356万8832円及び内金349万3209円に対する訴状送達の日である平成17年6月16日から,内金2万6571円に対する不法行為の日以後の日である平成17年6月30日から,内金2万6714円に対する同じく平成17年7月20日から,内金3600円に対する同じく平成17年7月31日から,内金3438円に対する同じく平成17年8月31日から,内金1万5300円に対する同じく平成17年10月22日から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金(損害賠償金について)ないし利息金(不当利得金について)の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し,その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文を,仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山田知司
裁判官 西理香
裁判官 村上誠子
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