運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 不服2007-19264
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20行ケ10439審決取消請求事件 判例 商標
平成18行ケ10233審決取消請求事件 判例 商標
平成18行ケ10280審決取消請求事件 判例 商標
平成20行ケ10258審決取消請求事件 判例 商標
平成20行ケ10442審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  識別機能 /  指定商品 /  指定役務 /  周知性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項11号 /  不正目的(不正の目的) /  類似性(類否判断) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  補正 /  警告 /  判定 /  ドメイン /  継続 /  非類似 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 20年 (行ケ) 10295号 審決取消請求事件
原告株式会社SPORTS LABORATORY
訴訟代理人弁理 士香原修也
同 藤田雅彦
被告特許庁長官
指定代理人石田清
同 酒井福造
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/01/29
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2007-19264号事件について平成20年6月12日にした審決を取り消す。
第2事案の概要1本件は,株式会社スポーツマン(以下「訴外会社」という。)が後記商標登録出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,これに対し不服の審判請求をし,その後原告が訴外会社から商標登録出願により生じた権利の譲渡を受けたが,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,原告がその取消しを求めた事案である。
2争点は,上記出願に係る下記(1)の本願商標が,下記(2)の各引用商標と類似するか(商標法4条1項11号),である。
(1) 本願商標・商標・指定商品第9類「耳栓,救命用具,運動技能訓練用シミュレーター,写真機械器具,光学機械器具,測定機械器具,眼鏡,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,レコード,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」第14類「キーホルダー,記念カップ,記念たて,身飾品,時計」第18類「かばん金具,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」第28類「スキーワックス,愛玩動物用おもちゃ,おもちゃ,人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具」(2) 引用商標ア引用商標1(登録第153376号)・商標 ・指定商品第24類「布製身の回り品」第25類「被服(頭から冠る防虫網・あみ笠・すげ笠・ナイトキャップを除く。),運動用特殊衣・出願年月日大正11年7月30日服,マラソン足袋,地下足・登録年月日 大正12年6月8日袋」(平成16年9月29日書換登・商標権者美津濃株式会社録後のもの)イ 引用商標2(登録第665104号)・商標 ・指定商品第25類「短靴,長靴,編上靴,雨靴,防寒靴,作業靴,木綿・出願年月日昭和38年2月26日製靴,メリヤス製靴,サン・登録年月日昭和40年1月29日ダル靴,幼児靴,婦人靴,・商標権者オカモト株式会社オーバーシューズ,地下足袋,地下足袋底,靴中敷き,かかと,半張り底,内底,げた,草履類」(平成16年8月25日書換登録後のもの)ウ 引用商標3(登録第2627139号)・商標 ・指定商品第28類「釣り具」(平成16年2月12日書換登・出願年月日平成3年10月7日録後のもの)・登録年月日平成6年2月28日・商標権者株式会社シマノエ 引用商標4(登録第3332636号)・商標 ・指定商品第14類 「時計」・出願年月日 平成6年4月27日・登録年月日 平成9年7月18日・商標権者 セイコーホールディングス株式会社オ 引用商標5(登録第4225145号)・商標 ・出願年月日平成6年2月21日・登録年月日平成10年12月25日・商標権者キヤノン株式会社・指定商品第9類「理化学機械器具,測定機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),救命用具,オゾン発生器,電解槽,遊園地用機械器具,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,火災報知機,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,盗難警報器,保安用ヘルメット,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,ガソリンステーション用装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,金銭登録機,計算尺,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,電気計算機,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮き袋,エアタンク,水泳用浮き板,潜水用機械器具,レギュレーター,アーク溶接機,犬笛,金属溶断機,検卵器,電気溶接装置,電動式扉自動開閉装置」第3当事者の主張1請求の原因(1) 特許庁における手続の経緯ア訴外会社は,平成18年8月10日,前記第2,2(1)に記載の本願商標につき,指定商品及び役務を第3類・第4類・第6類・第8類・第9類・第11類・第12類・第14類・第16類・第18類・第20類・第21類・第22類・第25類・第28類・第29類・第30類・第32類・第34類・第35類・第41類・第45類として(詳細は省略),商標登録出願をし,平成19年2月28日には原指定商品及び役務から第35類・第41類・第45類の三つの役務区分を本願の指定役務から除く補正(第1次補正,甲6)をしたが,特許庁は,平成19年5月22日,拒絶査定(甲8)をした。
イそこで,訴外会社は,平成19年7月9日付けで不服の審判請求をするとともに,指定商品を前記第2,2(1)のとおり(第9類・第14類・第18類・第25類・第28類)とする補正(第2次補正,甲9の3)をした。
上記審判請求は不服2007-19264号事件として審理され,その間の平成20年2月21日には,訴外会社が本願により生じた権利を原告に譲渡し,平成20年3月28日付けで特許庁にその旨の届け出がなされた(甲10,11)が,特許庁は,平成20年6月12日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成20年7月2日原告に送達された。
(2) 審決の内容審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本願商標は引用商標と類似し指定商品においても同一又は類似のものを含むから商標法4条1項11号により商標登録を受けることができない,というものである。
(3) 審決の取消事由しかしながら,審決は,次のとおり違法なものであるから,取り消されるべきである。
ア 本願商標の構成態様及び本願商標から生じる称呼について(ア)本願商標は,上段に欧文字にて「SPORTSLABORATORY」と,下段に上段の文字の約2倍の高さの太字で「sportsman.jp」と二段横書きして成る。また,上段・下段の文字は,いずれも同じ青色で着色されている。
(イ)本願商標からは「スポーツラボラトリースポーツマンドットジェイピー」との一連の称呼が生じるが,これが冗長であること,本願商標は二段にわたって書されたものであり,上段・下段はそれぞれ一つのまとまりとして理解し得ること,さらには,上段の文字と下段の文字とが,文字の大きさや太さにおいて顕著な違いを有していること等を勘案すると,「スポーツラボラトリー」,「スポーツマンドットジェイピー」,「スポーツマンジェイピー」の称呼を生じるとする方がむしろ自然である。その意味では,審決が「上段と下段の文字が常に不可分一体のものとして看取されるとすべき理由もみいだせない。」(3頁下4行〜下3行)とするのもうなずける(もっとも,このことは,本願商標に接する者が,字の大きさや太さから上下を「分けて考える」[つまり頭で考える際に分離してしまう]というにすぎず,「SPORTSLABORATORY」の部分が「見えていない」わけではない。)。
(ウ)しかし,審決は,ここから更に進んで,本願商標から「スポーツマン」のみの称呼が生じるとするが,これには論理の飛躍がある。
本願商標から「スポーツマン」のみの称呼が生じる理由として審決は,その4頁1行で突如「上記実情」なる判断要素を掲げ,本願商標の下段にある「sportsman.jp」は,「容易に『sportsman』と『.jp』とが結合したものとして,両者を分離して看取」(4頁1行〜2行)されると結論付けるが,そもそもこのような結論に至る「上記実情」とは何を指すのか明らかでない。この部分に至るまでに審決が述べていることといえば,?@電子商取引の場面でドメイン名が採択される際は,取引者を特定するための各種文字列と,カントリーコード(cc)ほかのトップレベルドメイン(TLD)とを結合させたものが一般に広く用いられる傾向にあること,?A「sportsman」の語義及び?B本願商標の構成態様だけである。これらのどこから,「sportsman.jp」のうちの「sportsman」だけが「自他商品識別標識としての機能を果たす」との結論を導き出しているのか明らかでない。
本願商標は「SPORTSLABORATORY」と「sportsman.jp」とを二段にわたってまとまりよくロゴ調に書した態様なのであって,「SPORTSLABORATORY/sportsman」という商標ではない。したがって,「sportsman.jp」の綴りが何ゆえ「スポーツマン」と称呼されねばならないのかという点につき実質的な根拠が示されない限り,審決は取消しを免れない。
(エ)審決は,本願商標中の「sportsman.jp」は「容易に『sportsman』と『.jp』とが結合したもの」(4頁1行〜2行)と看取できるとしているが,そもそも「結合」とは「結び合うこと。結び合せて一つにすること。」をいう。すなわち,本願商標中の「sportsman.jp」を「sportsman」と「.jp」の「結合したもの」として看取するということは,これらが簡単には離ればなれにならないことを意味するのであり,「結合したもの」であることが容易に理解できるものについて,これを「直ちに」「分離して理解」する必要などどこにもない。
(オ)本願商標中の「sportsman.jp」を「sportsman」と「.jp」に分ける必要がないこと上述のとおりであるが,この誤った認識を前提とした上で,さらに審決は,「『sportsman』の文字部分が取引者を特定するための文字,すなわち,自他商品の識別標識としての機能を果たすものとみて,これより生ずる称呼観念をもって,簡易迅速を旨とする取引に資する場合も,決して少なくないとみるのが相当である。」(4頁2行〜6行)とする。しかし,本願商標の態様につき,何ゆえ「『sportsman』の文字部分」だけに限定した特定がされねばならないのか,その理由は明らかでない。
本願商標に接する需要者が通常行うであろう商標の特定は,「.jp」を含めた「sportsman.jp」についてされるとするのが自然である。その上で,もし「.jp」を除くべき特段の理由があるのなら,その事情が本願商標の称呼認定に影響を及ぼすこともあるだろうが,審決は,ただ「『sportsman』の文字部分が…自他商品の識別標識としての機能を果たす」(4頁2行〜4行)と述べるばかりであって,「sportsman.jp」が,それ自体で一体的に識別標識として機能している可能性については何一つ触れていない。本願商標の表現態様をして,「sportsman」の文字列だけが識別標識として理解されるというのは不自然極まりない。「.jp」という文字列だけが単独で識別力を発揮することはないという話と,「sportsman.jp」というドメイン名を称呼するとき,どう読まれるかという話とは全く別の問題である。「.jp」それ自体は識別力を欠くとしても,「sportsman.jp」を称呼するとき,意図的にトップレベルドメイン(TLD)に当たる「.jp」に相当する部分を除外するわけがない。ドメイン名の世界ではトップレベルドメイン(TLD)が異なれば別のドメイン名として併存するのだから,トップレベルドメイン(TLD)が何であるかということはドメイン名にとって「不可欠な文字列」である。すなわち,インターネット上にあるコンピュータの識別のために極めて有用な部分を,国名を含む商標についての類否判断手法に倣って一律に排除することには合理性がない。本願商標は「(ドット)ジェイピー」の部分を含めて,自然に「スポーツマン(ドット)ジェイピー」と称呼されると解するのが相当である。
(カ)また,審決の「『sportsman』の文字部分が取引者を特定するための文字,すなわち,自他商品の識別標識としての機能を果たす」(4頁2行〜4行)との評価が,「sportsman」という「取引者」の存在を前提としているのだとしたら不当である。ここでいう「取引者」が特定の法人や事業者を指している記述とは思えないが,そのような者がいることについては審決中に何ら情報が開示されていない。「sportsman」という名の「取引者の存在」を前提にする必要などない。
(キ)以上述べたように,本願商標(の下段部)からは「スポーツマンドットジェイピー」,「スポーツマンジェイピー」の称呼が生じると考えておけば十分なのであって,これから「スポーツマン」の称呼が生じることを前提にしている審決はその点において失当である。
(ク)なお,審決は,本願商標から「運動競技選手」や「スポーツの得意な人」の如き「観念」まで生じるとしているが,本願商標中の「sportsman」の文字列についてそのような意味合いの連想がされることはあるにせよ,「.jp」を含めた「sportsman.jp」につき,ドメイン名としての理解を超え,これから「運動競技選手」や「スポーツの得意な人」の如き観念が直接感得されるかといえば,そのようなことまで考慮する意味はないというべきである。本願商標は,「スポーツマンドットジェイピー」,「スポーツマンジェイピー」という称呼を対象として類否判断すれば足り,これにつき殊更「観念の異同」を問う必要はない。もっとも,本願商標からは「運動(若しくは運動用具)に関する工房“sportsman.jp”」(「スポーツマン[ドット]ジェイピー」という名の運動研究所・運動具工房)の如き一連の意味合いを引き出すことも可能である。
イ引用商標から生じる称呼と本願商標のそれとの比較・類否判断について(ア)引用商標は,総じて「SPORTSMAN」「sportsman」若しくは「スポーツマン」の欧文字又は片仮名文字により成るものであり,そのいずれからも「スポーツマン」の称呼のみが生じると解される。また,引用商標は,「SPORTSMAN」や「スポーツマン」の単語のみから成るので,本願商標と異なり,これからは「運動競技選手」や「スポーツの得意な人」の如き観念が生じるかもしれない。
しかし,既に述べたところから明らかなように,本願商標と引用商標が「スポーツマン」の称呼観念を共通にする類似の商標であるということはない。本願商標から生じる「スポーツマンドットジェイピー」,「スポーツマンジェイピー」と,引用商標から生じる「スポーツマン」とは,「ジェイピー」,「ドットジェイピー」の称呼の有無により,あるいは本願商標が直ちにドメイン名として理解されること等の意味合い(観念)の相違により,区別できることが明らかである。
(イ)審決は,まず両商標の外観を捉え,その色彩の違い・全体構成の違いを認めつつも,両者の「要部となる欧文字」は「『sportsman』と『SPORTSMAN』」であるとし,これにつき「同じ構成配列の欧文字綴りという近似性を有するものである。」(4頁23行〜24行)と決め付けている。しかるに,純粋に外観態様を問題とするのなら,本願商標の「要部となる欧文字」を「sportsman」の部分に限定する必要はない。審決がしているのは,外観的要素を考慮した商標主要部の認定ではなく,識別力を有する文字列の部分的な抽出でしかない。外観を考慮して本願商標の主要部を決めるというのなら,その中心は太字でロゴ化された「sportsman.jp」でしかあり得えない。すなわち,「sportsman.jp」から「.jp」を捨象すべき「外観上の理由」などない。本願商標から「sportsman」の文字列だけを恣意的に取り出し,引用商標との「近似性」を説いてみても無意味というべきである。
それでは何故,「外観上の違い」を考慮していながら,このように恣意的な部分的抽出がされるに至るのか。それは審決が,本願商標下段にある「.jp」が称呼されないことを「前提として」両商標の類否を論じているからである。これは,結論の先取りに外ならない。
審決は,本願商標から「スポーツマン」の称呼が生じることを前提に,「時と処を異にする取引の実際にあっては,これらを同一又は類似の商品に使用すれば,その出所について誤認混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ない」(4頁27行〜29行)とするが,この考え方は,「称呼上類似する商標を同一又は類似の商品について使用すれば出所の混同が生じる」という当然のことを確認しているにすぎず,本願商標と引用商標が何故「類似するのか」という点については正答してないというべきである。重要なのは,「何故本願商標からスポーツマンのみの称呼が生じるのか」という「前提自体」のはずであるが,これに対して,「sportsmanの部分だけが識別標識として機能するからである」という理由を充てるのは背理である。審決は,本願商標と引用商標との一般的な混同可能性についての立証を尽くしておらず失当である。
(ウ)本願商標について審決が行っている類否判断が,いわゆる3点観察手法(外観称呼観念の3点による観察)によるのかどうか明らかではないが,外観上,本願商標と引用商標とが非類似であることはいうまでもないし,その外観上の差異をして,両者の称呼上の非類似性も十分裏付け得る。審決は,あたかも3点の内の1点(本件の場合は称呼)が類似すると認められる場合には直ちに「商標が類似する」としてしまってよいかの如き判断をしているが,このような姿勢は商標法の予定するところではない。ドメイン名に由来するロゴ調の本願商標と,英単語あるいは外来語として完結している引用商標とを,その構成態様に照らし全体的・自然的に対比すれば,これらの間に類似する要素など皆無である。
(エ)本願商標の「sportsman」の部分に当たるセカンド・レベル・ドメインと他人の商標との間に抵触が生じる場合もあるだろうが,それは当該他人の商標が周知性を獲得している等の事情がある場合に限っても不合理ではない。引用商標にそのような事情があるかどうか,原告のできる範囲で精査を試みたが,そのような事情の存在は確認できなかった。
実際,登録商標「○○」の存在にもかかわらず,「○○jp」という構成の商標が相抵触する商品について併存登録されている。
(オ)原告及び本件商標登録出願の出願人である訴外会社(株式会社スポーツマン)は,本願商標の構成中にある「sportsman.jp」の文字列を平成13年にドメイン名登録し,かつ,屋号を「sportsman.jp」とするインターネットショッピングサイトを平成14年12月より開設し,現在に至っている。その間,本願商標に引用商標の商標権者から,本願商標や「sportsman.jp」の使用について苦情が寄せられたことは一度もない。本願商標及び「sportsman.jp」は,数年間にわたり平穏かつ公然と使用が継続されているのであり,このことは,本願商標と引用商標との抵触を問題とする必要がないことの一証左である。
また,世界最大級かつ最も検索確度の高い検索エンジン「Google」で欧文字列「sportsman」を検索語に指定すると,何万とある世界中のサイトの中から,原告が開設するサイト「SPORTSLABORATORY/sportsman.jp」がトップ表示される。「Google」は特別な技術を用いたリンク構造の分析に基づき表示順位を決めているので,当該ホームページの重要度(有名度)は表示順序に直結するといえる。このように,本願商標により表象されるサイトが最上位に表示されているということは,本願商標が重要なホームページであることを意味し,また,上記のとおり周知性のない引用発明とは異なって,本願商標が需要者の間である程度の周知性を獲得しているであろうことをうかがわせるに十分である。
(カ)日本知的財産仲裁センターにおける「JPドメイン名紛争処理」では,本願商標の「sportsman」の部分に当たるセカンド・レベル・ドメインを構成する文字列について商標権その他の正当権原を有している者が申し立てて,当該ドメイン名の移転・取消しに至っている事例が散見されている。その意味で,商標として出願されたドメイン名の審査においても,セカンド・レベル・ドメインに当たる部分と,当該セカンド・レベル・ドメインと同一の文字列より成る他人の商標との抵触を事前に審査し,「ドメイン名由来の商標について権利を付与しない」という必要性を認めるべき場合があることを否定しない。
しかし,上記「JPドメイン名紛争処理」において,ドメイン名の移転・取消しという結論は,セカンド・レベル・ドメインの文字列と登録商標との単なる「同一・類似」だけでなく,当該ドメイン名を所有することに「正当権原のないこと」,そのドメイン名の所有が「不正目的であること」の全てを,紛争処理申立人が立証して初めて得られる。本願商標を拒絶するのは,原告が「sportsman.jp」という文字列を含む商標を取得することについて正当な権原がなく,かつ,それが不正目的である場合に限れば十分である。
2請求原因に対する認否請求原因(1)(2)の各事実は認めるが,(3)は争う。
3被告の反論(1) 本願商標の構成態様本願商標は,上段に「SPORTSLABORATORY」の文字,下段に「sportsman.jp」の文字をいずれも青色で表してなるものであるところ,下段の「sportsman.jp」は,上段の文字に比して,略4倍ほどの大きさで,かつ,圧倒的に太い線で表されているものである。
(2) 引用商標の構成態様引用商標1(登録第153376号)は,「SPORTSMAN」の文字を横書きし,その下に「スポーツマン」の文字を縦書した構成からなるものである。
引用商標2(登録第665104号)は,「SPORTSMAN」及び「スポーツマン」の文字を上下二段に横書きしてなるものである。
引用商標3(登録第2627139号)及び引用商標5(登録第4225145号)は,いずれも「SPORTSMAN」の文字を横書きしてなるものである。
引用商標4(登録第3332636号)は,「SPORTSMAN」の文字を横書きしてなるものである。
(3) 本願商標と引用商標との類否についてア本願商標は,上記(1)のとおりの構成よりなるところ,上段の「SPORTSLABORATORY」と下段の「sportsman.jp」とは,下段の「sportsman.jp」は上段の文字に比して略4倍ほどの大きさで,かつ,圧倒的に太い線で表されているものであることからすれば,視覚的に分離されるものであり,全体として特定の観念を生ずるものでもないから,常に不可分一体のものとしてのみ認識されるものでなく,下段の「sportsman.jp」の文字部分も自他商品の識別標識としての機能を有するものである。
そして,下段の「sportsman.jp」についてみると,構成中の「sportsman」の文字は,「スポーツマン。運動好きの人」を意味する英語(乙1[「リーダーズ英和辞典第1版第2刷」2002年(平成14年)7月株式会社研究社発行])として我が国において親しまれ,同語に由来する外来語(スポーツマン)が「スポーツマン(運動競技の選手。スポーツの得意な人。)」を意味する語(乙2[「広辞苑第六版第一刷」2008年(平成20年)1月11日株式会社岩波書店発行])として広く一般に親しまれ用いられており,また,「.jp」の文字部分は,インターネットにおける国別コードトップ・レベル・ドメイン名(以下,「ccTLD」という。)を表すコード(ドメイン名で「.jp」は,日本国のネットワーク事業者の意を表す。)を意味するための一般的な表示として知られているものであって,全体として,ドメイン名の形式によるものと理解される。
ところで,ドメイン名は,ccTLD等の国別や組織別を表す部分とそれ以外の部分によって構成されるところ,国別や組織別を表す部分は,多くのドメイン名に共通して用いられるものであるから,ドメイン名においては,上記部分以外の部分が,主として注目され,識別力を有する部分として認識される。
そうすると,本願商標構成中の「sportsman.jp」の部分は,ドメイン名の形式であることから,本願商標に接する取引者,需要者は,ドメイン名の場合と同様に「.jp」の部分をccTLDの表示であると理解し,「sportsman」の文字部分が見る人の注意を惹く部分であるというべきである。
加えて,「sportsman.jp」の文字部分は,外観上も中間に「.」を有することにより,「sportsman」の文字と「jp」の文字とが分離して看取されるものであり,「sportsman.jp」の文字全体から生ずる「スポーツマンドットジェイピー」の称呼も13音と冗長である。また,観念についてみると,「sportsman」の文字は「スポーツマン(運動競技の選手。スポーツの得意なひと。)」を意味する語として知られているものであり,「sportsman.jp」の文字全体からは,ドメイン名として理解される場合があるとしても,それ以上に特定の意味を有するものではない。
そうすると,「sportsman.jp」の部分は,常に一体不可分として認識されるものとはいえず,本願商標は,その構成中の「sportsman」の文字部分も自他商品の識別標識としての機能を有するというべきである。
イ以上のとおり,本願商標は,「sportsman」の文字部分も自他商品の識別機能を果たすものであるから,その構成文字に相応して「スポーツマン」の称呼及び「スポーツマン(運動競技の選手。スポーツの得意なひと。)」の観念を生ずるものである。
これに対し,引用商標は,上記(2)のとおり,「SPORTSMAN」「SPORTSMAN」「スポーツマン」の文字よりなるから,その構成文字に相応して,「スポーツマン」の称呼及び「スポーツマン(運動競技の選手。スポーツの得意なひと。)」の観念を生ずるものである。
したがって,本願商標と引用商標とは,称呼及び観念を共通にする商標であって,時と処を異にする取引の実際にあっては,これを同一又は類似の商品に使用すれば,その出所について誤認混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ないものである。
第4当裁判所の判断1請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。
2取消事由の有無(1) 本願商標と引用商標の構成態様についてア本願商標は,上段に「SPORTSLABORATORY」の文字,下段に「sportsman.jp」の文字をいずれも青色で表してなるものであるところ,下段の「sportsman.jp」は,上段の文字に比して,略4倍ほどの大きさで,かつ,かなり太い線で表されている。
イ引用商標1(登録第153376号)は,「SPORTSMAN」の文字を横書きし,その下に「スポーツマン」の文字を縦書した構成からなるものである。
引用商標2(登録第665104号)は,「SPORTSMAN」及び「スポーツマン」の文字を上下二段に横書きしてなるものである。
引用商標3(登録第2627139号)及び引用商標5(登録第4225145号)は,「SPORTSMAN」の文字を横書きしてなるものである。
引用商標4(登録第3332636号)は,「SPORTSMAN」の文字を横書きしてなるものである。
(2) 本願商標と引用商標の類否についてア商標法4条1項11号に係る商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に,商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品又は役務に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎりその具体的取引状況に基づいて判断すべきものである(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。そして,商標は,その構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから,みだりに,商標構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定することは許されないが,他方,簡易,迅速をたっとぶ取引の実際においては,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は,常に必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼,観念されず,その一部だけによって簡略に称呼,観念され,1個の商標から2個以上の称呼,観念が生ずることがあるのは,経験則の教えるところであり,複数の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分を他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することができるというべきである(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。
SPORTSLABORATORイ本願商標は,前記(1)アのとおり,上段の「」の文字と下段の「 」の文字からなっYsportsman.jpているが,これらの文字は,上段と下段に明確に区別して配置されている上,上段は16文字,下段は12文字と文字数も少なくなく,しかも,下段の文字は上段の文字に比して,略4倍ほどの大きさで,かつ,かなり太い線で表されているから,上段の「」の文字SPORTSLABORATORYと下段の「 」の文字は,取引において分sportsman.jp離して観察され,しかも,下段の文字が上段の文字に比べてかなり目立ち,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということができる。
そうすると,本願商標の下段の「 」のsportsman.jp文字と引用商標を対比してそれらが類似しているときには,本願商標と引用商標は類似するというべきである。
ウそこで,本願商標の下段の「 」の文字sportsman.jpと引用商標が類似するかどうかについて判断する。
(ア)証拠(乙3,7)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
aインターネットにおけるドメイン名は,末尾の国,組織などを表す部分(トップ・レベル・ドメイン)とそれ以外の部分(セカンド・レベル・ドメイン以下の部分)によって構成されるところ,国別コードトップ・レベル・ドメイン(ccTLD)は,国別コードに基づくトップ・レベル・ドメインであって,日本の場合は,「.jp」である。
b国別コードトップ・レベル・ドメイン(ccTLD)は,それぞれの国ごとに存する機関によって管理されており,その国に存在(在住)する団体又は個人でないとそれを取得することができないという制限がある。したがって,「.jp」によって,そのドメイン名を取得した主体が日本に存在(在住)する団体又は個人であるということは明らかになるが,それ以上に主体が特定されるものではなく,末尾に「.jp」を付した多くのドメイン名がある。
c多くの企業が,自社名や自社のブランド名をセカンド・レベル・ドメイン以下の部分に付したドメイン名を取得している。
d末尾に「.jp」を付したドメイン名に関する紛争については,日本知的財産仲裁センターにおいて「JPドメイン名紛争処理」が行われている。
e平成18年2月の時点における調査では,インターネットの世帯浸透率(インターネットを利用している人がいる世帯の割合)は,85.4%であった。
(イ)上記(ア)e認定のとおりインターネットが広く普及している状況の下では,本願商標の下段の「 」の文字sportsman.jpは,国別コードトップ・レベル・ドメイン(ccTLD)の「.jp」と「sportsman」が結合したドメイン名を想起させることは明らかである。そして,その場合,上記(ア)b認定のとおり,「.jp」は,その使用主体を,日本に存在(在住)する団体又は個人であるといsportsmaう以上に特定するものではない。そうすると,「」の文字が商標として使用された場合でも,取引者,需要者n.jpが出所識別機能を有するものとして認識するのは,「sportsman」の部分であって,「.jp」の部分からは,出所識別標識としてのs称呼,観念が生じるということはできないから,本願商標の下段の「」の文字の要部は,「sportsmaportsman.jpn」の部分であるというべきである。
確かに,本願商標の下段の「 」の文sportsman.jp字は,一連に同じ大きさの文字で記載されており,全体として上記のとおりドメイン名として認識されるものであって,「.jp」の部分はインターネット上にあるコンピュータの識別のために有用な部分であるが,上記(ア)a,b認定のドメイン名の構成や「.jp」が有する意義からすると,それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているということはできず,「sportsman」の部分と「.jp」の部分は分離して観察することができるとsportいうべきであって,上記のとおり,本願商標の下段の「」の文字の要部は「sportsman」の部分でsman.jpあるということができる。
なお,原告は,本願商標から,「運動(若しくは運動用具)に関する工房“sportsman.jp”」(「スポーツマン[ドット]ジェイピー」という名の運動研究所・運動具工房)の如き一連の意味合いを引き出すことも可能であると主張するが,本願商標の下段の「sportsman.jp」の文字は,上記のとおりドメイン名と認識されるものであって,原告が主張するような一連の意味合いを有するものとして認識されるとは認められない。
(ウ)そして,本願商標の下段の「sportsman」の部分と引用商標とを対比すると,次のようにいうことができる。
a本願商標の下段の「sportsman」の部分からは,「スポーツマン」の称呼が生ずるほか,乙1(「リーダーズ英和辞典第1版第2刷」2002年[平成14年]7月株式会社研究社発行])及び乙2(「広辞苑第六版第一刷」2008年[平成20年]1月11日株式会社岩波書店発行)によれば,「運動競技の選手,スポーツの得意な人」といった観念が生ずるものと認められる。
b引用商標は,前記(1)イのとおりのものであって,いずれからも「スポーツマン」の称呼が生ずるほか,「運動競技の選手,スポーツの得意な人」といった観念が生ずるものと認められる。
cしたがって,本願商標の下段の「sportsman」の部分と引用商標とは,称呼及び観念が同一である。
dまた,引用商標は,「SPORTSMAN」又は「SPORTSMAN」の文字を含んでいるから,本願商標の下段の「sportsman.jp」の文字の「sportsman」の部分とは,外観においても類似する。
e以上のとおり,本願商標の下段の「sportsman」の部分と引用商標とを対比すると,称呼及び観念が同一であり,外観においても類似するということができる。
(エ)よって,本願商標の下段の「sportsman.jp」の文字と引用商標は類似し,本願商標と引用商標は商標法4条1項11号にいう「類似する商標」と認められる。
エなお,原告は,?@セカンド・レベル・ドメインと他人の商標との間に抵触が生じる場合もあるだろうが,それは当該他人の商標が周知性を獲得している等の事情がある場合に限っても不合理ではないところ,引用商標にそのような事情があるかどうか,原告のできる範囲で精査を試みたが,そのような事情の存在は確認できなかった,?A登録商標「○○」の存在にも拘らず,「○○jp」という構成の商標が相抵触する商品について併存登録されている,と主張する。
しかし,本願商標と引用商標が商標法上類似するとの上記判断は,引用商標の周知性いかんにかかわりないというべきものである。また,証拠(甲2,3の各1・2)によれば,「ANNA」と「アンナ」を2段に表記した商標と,「ANNAJP」(標準文字)という商標,「ミュージック」(標準文字)という商標と,「MUSIC.JP」と「ミュージックジェーピー」を2段に表記した商標がそれぞれ登録されており,それらの商標権者は異なることが認められるが,これらは,本願商標とは異なる商標に関する登録例にすぎず,上記判断を左右するものではない。
オまた,原告は,?@原告及び訴外会社(株式会社スポーツマン)は,本願商標の構成中にある「sportsman.jp」の文字列を平成13年にドメイン名登録し,かつ,屋号を「sportsman.jp」とするインターネットショッピングサイトを平成14年12月より開設しているが,その間,上記引用商標の商標権者から,本願商標や「sportsman.jp」の使用について苦情が寄せられたことは一度もない,?A検索エンジン「Google」で欧文字列「sportsman」を検索語に指定すると,原告が開設するサイト「SPORTSLABORATORY/sportsman.jp」が最上位に表示されると主張し,また,甲1(検索エンジン「Google」において検索語を「スポーツマン」として検索した場合の検索結果リスト)及び弁論の全趣旨によれば,検索エンジン「Google」で検索語を「スポーツマン」として検索した場合,原告の開設するスポーツ総合コミュニティ・通販サイトが最上位に表示されることが認められる。
しかし,以上のような事実があるとしても,上記ウのとおり本願商標の下段の「 」の文字と引用商標が類似するsportsman.jp以上,本願商標と引用商標は商標法上類似するというべきである。
カさらに,原告は,上記(ア)d認定の日本知的財産仲裁センターにおける「JPドメイン名紛争処理」においてドメイン名の移転・取消しが認められる要件についても主張するが,上記「JPドメイン名紛争処理」と商標登録は異なる制度であって,それぞれの要件に従って判断されるべきものである。
(3)以上のとおりであるから,原告主張の取消事由の主張はいずれも理由がない。
3結論よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 今井弘晃