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事件 平成 26年 (ネ) 426号 商標権侵害差止等請求控訴事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2014/10/03
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成26年10月3日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

平成26年 第426号 商標権侵害差止等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成

第12386号)

口頭弁論終結日 平成26年5月16日

判 決

控訴人(一審原告) ディー・エヌ・エー株式会社

同訴訟代理人弁護士 岩 坪 哲

同 速 見 禎

同訴訟代理人弁理士 上 羽 秀 敏

同補佐人弁理士 坂 根 剛

被控訴人(一審被告) 株式会社横浜DeNAベイスターズ

同訴訟代理人弁護士 上 田 雅 大

同 横 山 経 通

主 文

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2 被控訴人は,控訴人に対し,5000万円及びこれに対する平成24年11月3

0日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

4 仮執行宣言

第2 事案の概要

1 本件は,被控訴人が原判決別紙被告標章目録2から20までの各標章(以下,こ

れらを総称して「被告標章」といい,個別の標章を同目録記載の番号に従って「被




告標章2」などという。)を原判決別紙被告商品目録1から33までの商品(以下,

これらを総称して「被告商品」といい,個別の商品を同目録記載の番号に従って「被

告商品1」などという。)に付し,又は被告標章を付した被告商品を販売するなど

して被告標章を使用することが控訴人の有する商標権の侵害に当たるとして,控訴

人が被控訴人に対し,@商標法36条1項及び2項に基づき,被告標章の使用の差

止め及び侵害の予防に必要な行為を求めるとともに,A不法行為による損害賠償と

して,1億1000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成24年1

1月30日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案

である。

2 原審は,被告標章は,控訴人の登録商標に類似しないから,商標権侵害は認めら

れないとして,控訴人の請求をいずれも棄却したところ,控訴人が前記1Aの請求

に対する判断を不服として控訴した。

3 控訴人は,当審において,前記1@の請求全部並びに同Aの請求うち5000万

円及びこれに対する平成24年11月30日から支払済みまで年5分の割合によ

る金員を超える金員の支払請求に関する部分についての訴えを取り下げる旨の書

面を提出したところ,被控訴人は,同書面の送達を受けた日から2週間以内に,前

記1@の請求全部についての訴えの取下げに異議を述べた。

したがって,前記1Aの請求のうち5000万円及びこれに対する平成24年1

1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を超える支払請求に関する

部分についての訴えは,取下げにより終了したが,前記1@の請求全部についての

訴えの取下げは効力が生じない。

ただし,前記のとおり,控訴人は,前記1@の請求に対する判断を不服申立ての

対象としていないから,同請求は,当審における審理の対象とならない。

4 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,以下のとおり原判決を補正し,

後記5のとおり,当審における当事者の補充主張を付加するほかは,原判決「事実

及び理由」中の第2の1及び2並びに第3に記載のとおりであるからこれを引用す




る。

原判決2頁23行目の「以下まとめて「原告商標」といい。」を「以下,両商

標を併せて「原告商標」といい,」と改める。

原判決3頁末行の「使用し」を「付し」と,4頁1行目の「若しくは」を「及

び」とそれぞれ改め,2行目から3行目にかけての「電気通信回線を通じて」を

削除する。

? 原判決6頁21行目の「が同字体であること」を「の文字の大きさ及び字体が

同じであること」と改める。

? 原判決7頁11行目の「Yokohama」 「YOKOHAMA」
を と改める。

原判決8頁9行目の「被告標章2,ないし3から20」を「被告標章」と改め

る。

原判決9頁4行目の「また,本件球団は,」から7行目末尾までを次のとおり

改める。

「改称時には改称後の球団名が大大的に報道されたから,被告商品の一部の販

売を開始した平成24年1月29日に先立つ平成23年12月2日の改称時に

おいて,既に本件球団は,「横浜DeNAベイスターズ」として著名であり,同

名称は,不正競争防止法2条1項2号の著名表示に当たるほどの著名性を獲得し

ていた。」

原判決10頁3行目から4行目にかけての「被告の誕生以降は」を「平成23

年12月の本件球団の改称以後は」と改める。

原判決11頁18行目の「被告標章14は」を「被告標章14もまた」と改め

る。

原判決13頁7行目から8行目にかけての「被告標章2から20まで」を「被

告標章」と,9行目の「被告各標章」を「被告標章」とそれぞれ改める。

原判決13頁26行目の「当該費用は1000万円を下らない。」を「当該費

用に1000万円を要した。」と改める。




原判決14頁6行目及び7行目の「被告ら」をいずれも「被控訴人」と改め,

12行目の「一般需要者が」を削除する。

5 当審における当事者の補充主張

控訴人

ア 商標の類否判断は,出所識別力のある部分(要部)の外観称呼観念を比

較して行うべきである。

被告標章のうち「DeNA」の部分は,他の部分から分離して観察すること

ができ,出所識別力を有する要部に当たるところ,同部分の称呼は「ディーエ

ヌエー」である。したがって,被告商標の要部と原告商標は,称呼が同一であ

る。

また,
「DeNA」は,控訴人の親会社のDeNA社の略称であるから,De

NA社を想起させ得るが,DeNA社と控訴人とは社名の称呼が同一であるた

め,取引者,需要者において,緊密な営業上の関係又は同一の商品化事業を営

むグループに属する関係が存すると誤信するおそれがあること,DeNA社の

社名は遺伝子のDNAとeコマースのeを組み合わせたものであり,DeNA」


の部分からデオキシリボ核酸が想起されるのは不可避であることから,被告標

章2の要部と原告商標は,観念も同一である。

したがって,両者は類似しているというべきである。

イ 原判決は,被告標章20の類否判断に当たって,被控訴人が同標章の上に「Y

OKOHAMA DeNA BAYSTARS」の文字を付記したものを商品

に付しているとして,被告標章20と上記英文字表記を一体的に観察している

が,控訴人は,被告標章20の使用による商標権侵害に基づく請求をしている

のであって,当事者の意思を確認することなく,証拠に基づき侵害行為の内容

を変更することは,処分権主義に反し,違法である。

? 被控訴人

ア 被告標章から「DeNA」が分離して認識されたとしても,同部分から一般




需要者が想起するのは著名なDeNA社又は本件球団であり,被告標章と世間

に全く知られていない原告商標とでは,広義の混同を含め,出所の誤認混同が

生ずることはない。また,「DeNA」は,大文字の「D」と「NA」の間に

小文字の「e」が配置されており,原告商標とは観念外観が類似しない。
「D

eNA」から「ディーエヌエー」の称呼が生ずるとしても,出所の誤認混同を

生ずるものでないことは原審において主張したとおりであり,被告標章と原告

商標とは類似しない。

イ 被告標章20について,原判決は,控訴人が特定した訴訟物たる請求権の存

否に対する判断を示しており,何ら処分権主義違反はない。

第3 当裁判所の判断

1 当裁判所も,被告標章はいずれも原告商標と類似せず,控訴人の不法行為に

基づく損害賠償請求は理由がないから棄却すべきであると判断するが,その理

由は,以下のとおり付加,訂正するほかは,原判決「事実及び理由」中の第4

の1ないし12(原判決14頁18行目から30頁15行目まで)に記載のと

おりであるから,これを引用する。

原判決15頁7行目の「43の1から35まで,」の次に「46の54から

56・58・60から83・85から112,120から122・128・

129,」を加える。

原判決16頁2行目の「株式会社東京放送」を「株式会社東京放送ホール

ディングス」と改める。

原判決16頁5行目の末尾の次に,行を改め,次のとおり加える。

「本件球団は,そのいずれもが著名なプロ野球球団の一つであり,オーナ

ー企業がDeNA社に変更したことに伴い球団名が変更された時も大大的に

報道され,被告標章を付した被告商品の販売が開始された平成24年1月2

9日の時点で,「横浜DeNAベイスターズ」(よこはまディーエヌエーベイ

スターズ)の名称もプロ野球に関心を有する者を中心に広く浸透していた。」




原判決16頁10行目から18頁19行目までを次のとおり改める。

「3 被告標章2と原告商標との類否判断

? 被告標章2の構成

外観

被告標章2は,漢字の「横浜」,アルファベットの「DeNA」,カ

タカナの「ベイスターズ」を,ゴチック体様の同じ大きさの文字で横

一列に表記するものであり,いずれかの部分が特に目を引く構成には

なっていない。

称呼及び観念

被告標章2は,我が国において著名なプロ野球球団である本件球

団の名称を表記したものであるから,本件球団を直接観念させ,本

件球団の名称と同じ「よこはまディーエヌエーベイスターズ」の称

呼を生ずる。

また,報道等においてプロ野球球団(チーム)を表現する場合,チ

ームの愛称だけで表現する場合(例えば,「北海道日本ハムファイタ

ーズ」 「ファイターズ」と表現する場合)
を や,オーナー企業の名称,

通称等で表現する場合(例えば「埼玉西武ライオンズ」を「西武」と

表現する場合)がみられるほか,本拠地名で表現する場合(例えば「広

島東洋カープ」を「広島」と表現する場合)があることは,公知の事

実である。本件球団は,「横浜ベイスターズ」がその名称として長年

にわたり使用された後,オーナー企業を示すものとして「DeNA」

が挿入され,これが著名なものとなったのであるから,被告標章2か

らは,本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」「ベイ

スターズ」などの称呼も生ずる。現実に,プロ野球の報道等におい

て,本件球団が「ディーエヌエー」と称呼されていることは,証拠

(乙43の38,40,42,43,47,54)からも明らかで




ある。

? ところで,商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商

品又は役務に使用された場合に,商品又は役務の出所につき誤認混

同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであり,商標の類

否の判断に当たっては,同一又は類似の商品又は役務に使用された

商標が,その外観観念称呼等によって取引者,需要者に与える

印象,記憶,連想等を総合して,かつ,その商品又は役務に係る取

引の実情を踏まえた上で全体的に考察すべきものである 。そして,

商標の外観観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品又は

役務につき出所を誤認混同するおそれを推測させる一応の基準にす

ぎず,上記三点のうち類似する点があるとしても,他の点において

著しく相違するか,又は取引の実情等によって,何ら商品又は役務

の出所を誤認混同させるおそれが認められないものについては,こ

れを類似商標と解することはできない(最高裁昭和39年(行ツ)

第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号3

99頁,最高裁平成6年(オ)第1102号同9年3月11日第三

小法廷判決・民集51巻3号1055頁参照)。本件における原告商

標と被告標章の類否の判断においても,上記の観点から検討すべき

である。

そこで検討すると,上記のとおり,被告標章2から生ずる複数の

称呼のうちの一つである「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同

一であるものの,原告商標と被告標章2とでは,他の称呼並びに外

観及び観念は全く異なり,類似しないことが明らかである。そして,

被告標章2の称呼のうち「ディーエヌエー」はそれが本件球団の略

称又は本件球団のオーナー企業の社名であるが故に生ずるものであ

り,本件球団又はそのオーナー企業の観念と不可分に結びついてい




ることからすると,被告標章2から「ディーエヌエー」の称呼が 生

ずる場合においても,被告商標2を付した商品と原告商標を付した

商品との間で出所の誤認混同のおそれはないというべきである。

したがって,被告商標2が原告商標に類似するということはでき

ない。

? これに対し,控訴人は,被告標章2のうち「DeNA」の部分は,

他の部分から分離して観察することが可能な要部に当たり,被告標章2

の要部の称呼と原告商標の称呼が同一である以上,両者は類似している

と主張する。

被告標章2は,「横浜」「DeNA」「ベイスターズ」の3つの文字部

分を組み合わせた結合商標であるところ,複数の構成部分を組み合わせ

結合商標については,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけ

を他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部

分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配

的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識

別標識としての称呼観念が生じないと認められる場合などを除き許さ

れない(最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小

法廷判決・裁判集民事第228号561頁参照)。

控訴人の主張は,被告標章2のうち「DeNA」の部分のみを抽出し,

同部分だけを原告商標と比較して,被告標章2と原告商標の類否を判断

すべきというものである。確かに,被告標章2から本件球団の略称であ

る「ディーエヌエー」の称呼も生じることは前示のとおりである。しか

し,被告標章2において「DeNA」の部分が取引者,需要者に対し商

品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは認められな

い。また,被告標章2は,全体として出所識別標識としての称呼及び観

念を生ずるほか,造語であり,本件球団の略称として著名な「ベイスタ




ーズ」の部分だけでも出所識別標識としての称呼及び観念を生ずるので

あり,それにもかかわらず,被告標章2のうち「DeNA」の部分のみ

を抽出して原告標章との類否判断をすることを相当とする事情も見当た

らない(控訴人は,DeNA社と控訴人とは社名の称呼「ディーエヌエ

ー」が同じであるから,両者が同一のグループ企業に属する関係がある

との誤信を招くおそれがあると主張するが,被告標章2に接した者が控

訴人を想起するとは認められないから,失当である。。したがって,控


訴人の上記主張は採用することができない。


原判決19頁7行目(なお,原判決の行数については,被告標章の図柄を表示

した部分を独立した1行と数える。以下同じ。)の「文字全体に着目すれば,」の

次に「本件球団の名称である」を,8行目の「生ずる」の次に「ほか,本件球団

の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」「ベイスターズ」などの称呼

生ずる」をそれぞれ加える。

原判決19頁17行目から22行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章3及び10から生ずる複数の称呼のうちの一つである「デ

ィーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観

及び観念は類似せず,出所の誤認混同のおそれはないから,被告標章3及び

10は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章3及び10のうち「DeNA」の部分を要部として抽

出し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張す

る。しかし,被告標章3及び10は,「BAYSTARS」の文字をかなり大き

く配置しており,看者の注意は同部分に向けられることに加え,前記3

補正後のもの。以下同じ。)で述べたところからすると,上記主張は採用するこ

とができない。」

原判決20頁12行目の「文字の全体に着目すれば,」の次に「本件球団の名

称である」を,13行目の「生ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である「よ




こはま」「ディーエヌエー」「ベイスターズ」などの称呼を生ずる」をそれぞ

れ加える。

原判決20頁22末行から同21頁5行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章4及び7から生ずる複数の称呼のうちの一つである「デ

ィーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観

及び観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認混同の

おそれはないから,被告標章4及び7は,原告商標に類似しているとはいえ

ない。

控訴人は,被告標章4及び7のうち「DeNA」の部分を要部として抽出

し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。

しかし,被告標章4及び7は,星形の背景と文字とが一体的にデザインされてお

り,「DeNA」の文字が占める割合は小さいことに加え,前記3?で述べたと

ころからすると,上記主張は採用することができない。

原判決22頁3行目から4行目にかけての「マスコット(スターマン)を右上

に,」を「マスコット(スターマン)を,左上に」と改め,13行目から14行

目にかけての「文字部分に着目したときには,」の次に「本件球団の名称である」

を,15行目の「生ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」

「ディーエヌエー」 ベイスターズ」
「 などの称呼を生ずる」をそれぞれ加える。

原判決23頁7行目から15行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章5,15及び16から生ずる複数の称呼のうちの一つで

ある「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼

びに外観及び観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤

認混同のおそれはないから,被告標章5,15及び16は,原告商標に類似

しているとはいえない。

控訴人は,被告標章5,15及び16のうち「DeNA」の部分を要部と

して抽出し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきである




と主張する。しかし,被告標章5,15及び16は,本件球団のマスコットであ

るスターマンを中心に,ユニフォーム,文字等と一体にデザインされており,
「D

eNA」は,「YOKOHAMA DeNA BAYSTARS」の一連のまと

まりの一部にすぎない上,当該文字が同標章に占める割合は小さく,「BAYS

TARS」の文字が相対的に大きく配置されており,看者の注意は,これらの部

分に向けられることに加え,前記3?で述べたところからすると,上記主張は採

用することができない。」

原判決24頁12行目(下から5行目)の「生ずる」の次に「ほか,本件球団

の略称である「よこはま」
「ディーエヌエー」などの称呼を生ずる」を加える。

原判決25頁3行目の「登録5574567号」を「登録5536436

号」と改める。

原判決25頁9行目から14行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章6,8及び9から生ずる複数の称呼のうちの一つである

「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに

外観及び観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認混

同のおそれはないから,被告標章6,8及び9は,原告商標に類似している

とはいえない。

控訴人は,被告標章6,8及び9のうち「DeNA」の部分を要部として

抽出し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張

する。しかし,被告標章6,8及び9は,本件球団のマスコットであるスターマ

ンを描くものであり,文字としては,マスコットが着用するユニフォームの胸部

に被告標章3と同じ物が記されているにすぎないことに加え,前記3?で述べた

ところからすると,上記主張は採用することができない。」

原判決25頁15行目冒頭の「7」を「8」と改め,21行目の「被告標章1

1ないし13は,」の次に「本件球団の名称である」を,22行目の「生ずる」

の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」
「ディーエヌエー」
「ベイス




ターズ」などの称呼を生ずる」をそれぞれ加える。

原判決26頁1行目から6行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章11ないし13から生ずる複数の称呼のうちの一つであ

る「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並び

外観及び観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認

混同のおそれはないから,被告標章11ないし13は,原告商標に類似して

いるとはいえない。

控訴人は,被告標章11ないし13のうち「DeNA」の部分を要部とし

て抽出し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主

張する。しかし,被告標章11ないし13のうち「DeNA」の文字は,他の文

字と字体・大きさが同じであり,同部分が他と異なる特徴を有するものではない

ことに加え,前記3?で述べたところからすると,上記主張は採用することがで

きない。」

原判決26頁7行目冒頭の「7」を「9」と改め,14行目の「被告標章14

は,」の次に「本件球団の名称である」を,15行目の「生ずる」の次に「ほか,

本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」「ベイスターズ」など

称呼を生ずる」をそれぞれ加える。

原判決26頁20行目から25行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章14から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディー

エヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び

観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認混同のおそ

れはないから,被告標章14は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章14のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,

同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。し

かし,被告標章14の外観上,「DeNA」と「BAYSTARS」の文字はほ

ぼ同じ大きさであり,同部分が他と異なる特徴を有するものではないことに加え,




前記3?で述べたところからすると,上記主張は採用することができない。」

原判決26頁26行目冒頭の「8」を「10」と改め,27頁11行目の「生

ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」

などの称呼を生ずる」を加える。

原判決27頁16行目から22行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章17から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディー

エヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び

観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認混同のおそ

れはないから,被告標章17は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章17のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,

同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。し

かし,被告標章17は,文字,横線,星が一体としてデザインされており,「D

eNA」の文字が同標章に占める割合は小さく,看者の注意は,相対的に大きい

「BAYSTARS」の部分に向けられることに加え,前記3?で述べたところ

からすると,上記主張は採用することができない。」

原判決27頁23行目冒頭の「9」を「11」と,同28頁2行目の「YOK

OHAMA」を「Yokohama」と,3行目の「BAYSTARS」を「B

ayStars」とそれぞれ改める。

原判決28頁5行目の「被告標章18は,」の次に「本件球団の名称である」

を,6行目の「生ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」
「デ

ィーエヌエー」「ベイスターズ」などの称呼を生ずる」をそれぞれ加える。

原判決28頁11行目から17行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章18から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディー

エヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び

観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認混同のおそ

れはないから,被告標章18は,原告商標に類似しているとはいえない。




控訴人は,被告標章18のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,

同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。し

かし,被告標章18は,三段に分けた文字が同種の字体で構成されており,その

中で,「DeNA」の文字は他の字と同じ大きさであり,同部分が他と異なる特

徴を有するものではないことに加え,前記3 すると,上記主

張は採用することができない。」

原判決28頁の18行目冒頭の「10」を「12」と改め,26行目の「生ず

る」の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」な

どの称呼を生ずる」を加える。

原判決29頁5行目から10行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章19から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディー

エヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び

観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認混同のおそ

れはないから,被告標章19は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章19のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,

同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。し

かし,被告標章19の外観上,「DeNA」の文字が占める割合は小さく,看者

の注意は,相対的に大きい「BAYSTARS」の部分に向けられることに加え,

すると,上記主張は採用することができない。」

原判決29頁11行目冒頭の「11」を「13」と,18行目から19行目に

かけての「同標章と」を「同標章中の文字と」とそれぞれ改める。

原判決29頁20行目の末尾の次に,行を改め,次のとおり加える。

「被告標章20と上記英文字は,その位置関係,外観等から,一体として出所

識別機能を有する表示として用いられているものと認められる。」

原判決29頁26行目の「英文字一体でみた場合,」の次に「本件球団の名称

である」を,30頁1行目の「生ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である




「よこはま」「ディーエヌエー」「ベイスターズ」などの称呼を生ずる」をそ

れぞれ加える。

原判決30頁6行目から13行目までを次のとおり改める。

「被告標章20は,実際の被告商品(被告商品33)での使用においては,

上記英文字と一体となって自他識別機能を有する標章として使用されている

から,類否判断に当たっては,上記英文字を含む全体を考察の対象とすべき

ところ,上記標章全体から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディーエ

ヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び観

念は類似せず,出所の誤認混同のおそれはないから,被告標章20を含む上

記標章は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章20のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,

同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。し

かし,被告標章20の外観上,「横浜」と「DeNA」の文字は字体,大きさが

同じであり,上記英文字と一体として見た場合,「DeNA」の部分が特に看者

の注意を引くものではないことに加え, すると,上記

主張は採用することができない。

控訴人は,被控訴人が被告標章20を使用したことを商標権侵害に当たるとし

て損害賠償請求をしているのに,被告標章20と上記英文字表記を一体として観

察して商標権侵害の有無を判断することは処分権主義に反すると主張する。しか

し,被告標章20の使用が商標権侵害に当たるか否かを判断するに当たって,被

告標章20と一体として使用され,自他識別機能を発揮している英文字表記の存

在を考慮しているにすぎず,控訴人が申し立てていない事項を判断したものでは

ないから,何ら処分権主義に反するものではなく,上記主張は失当である。」

2 以上によれば,控訴人の不法行為に基づく損害賠償請求を棄却した原判決は相当

であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決す

る。




大阪高等裁判所第8民事部



裁判長裁判官 小 松 一 雄




裁判官 松 宏 之




裁判官 寺 本 佳 子