運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成26ワ29617 商標権侵害行為差止等請求事件 判例 商標
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙1PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙2PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙3PDFを見る pdf
事件 平成 28年 (ワ) 9753号 商標権侵害差止等請求事件
5原告 シーシーエス株式会社
同訴訟代理人弁護士 小松陽一郎
同 大住洋
被告 日進電子工業株式会社
同訴訟代理人弁護士 石下雅樹 10 同江間由実子
同 渡辺知博
同 永野真理子
同 益弘圭
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2018/08/28
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 15 1 被告は,LED照明器具に関する広告及び取引書類に,別紙被告標章目録1記載の標章を付し,又は,別紙被告標章目録1記載の標章を付したLED照明器具の広告を展示し,あるいは頒布してはならない。
2 被告は,LED照明器具に関する広告を内容とする情報に,別紙被告標章目録1記載の標章を付して,電磁的方法により表示してはならない。
20 3 被告は,被告が製造,販売する画像処理用LED照明装置の商品カタログから,別紙被告標章目録1記載の標章を削除せよ。
4 被告は,原告に対し,148万7377円及びこれに対する平成30年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
25 6 訴訟費用は,これを5分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。
17 この判決は,第4項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
5 1 主文第1項同旨 2 被告は,LED照明器具又はその包装に,別紙被告標章目録2記載の各標章 を付してはならない。
3 被告は,別紙被告標章目録2記載の各標章を付したLED照明器具又はその 包装に同標章を付したLED照明器具を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しの10 ために展示し,輸出してはならない。
4 被告は,別紙被告商品目録記載の各商品を廃棄せよ。
5 被告は,LED照明器具に関する広告を内容とする情報に,別紙被告標章目 録1及び2記載の各標章を付して,電磁的方法により表示してはならない。
6 被告は,LED照明器具に関する広告,取引書類及びインターネット上のウ15 ェブサイトから,別紙被告標章目録1及び2記載の各標章を削除せよ。
7 被告は,原告に対し,5856万3079円及びうち1006万3230円 に対する訴状送達の日の翌日から,うち4849万9849円に対する平成30年 1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
20 本件は,原告が商標権を有している各登録商標について,被告が,これらと同一 又は類似する標章を商標として使用しており,これは原告の商標権の侵害にあたる と主張して,商標法36条1項及び2項,同法38条2項及び3項並びに民法70 3条に基づき,その使用の差止め等を求め,損害賠償及び不当利得の返還を請求し た事案である。
25 なお,原告は,@別紙登録商標目録1記載の商標(以下「本件商標1」という。) の使用につき,平成23年9月1日から平成25年10月31日までの期間の不当 2 利得の返還及び同年11月1日から平成29年7月31日までの期間の不法行為に 基づく損害賠償(商標法38条3項)並びにこれらに対する平成30年1月23日 (原告第5準備書面を陳述した第8回弁論準備手続期日)から支払済みまでの遅延 損害金の支払を,A別紙登録商標目録2の1ないし6記載の各商標(以下,同目録 5 の記載に従いそれぞれ「本件商標2の1」等といい,総称として「本件商標2」と いう。)の使用につき,平成18年11月1日から平成25年10月31日までの 期間の不当利得の返還及びこれに対する平成30年1月23日から支払済みまでの 遅延損害金の支払並びに平成25年11月1日から平成29年7月31日までの期 間の不法行為に基づく損害賠償(商標法38条2項)及びこれに対する訴状送達の10 日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求めるものである。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨に より容易に認められる事実) ? 当事者(甲1,乙4。書証は枝番を含む。以下同じ。) 原告は,平成5年10月に設立された,製造物の生産・検査・観察用途の照明機15 器の開発,製造及び販売等を目的とする株式会社である。
被告は,昭和40年4月に設立され,昭和50年5月に株式会社に改組された, 一般電子通信用計測器の製造及び販売等を目的とする株式会社である。
? 原告の登録商標(甲3,4) 原告は,本件商標1及び本件商標2の登録商標権者である。本件商標1及び2の20 出願日,登録日,指定商品等は,前記登録商標目録各記載のとおりである。
? 被告の使用する標章(甲5,6) 被告は,別紙被告標章目録1記載の標章(以下「被告標章1」という。)を,被 告が製造,販売する画像処理用LED照明装置(以下「被告商品」という。)の平 成27年12月版商品カタログの表紙及び裏表紙に付して使用している。
25 被告は,その製造,販売する被告商品の一部の型式に,別紙被告標章目録2の1 -1-1ないし1-1-6記載の標章(「LDR」で始まるもの。以下「被告標章 3 2の1」という。),同じく2-1-1-1ないし2-2-4記載の標章(「LD L」で始まるもの。以下「被告標章2の2」という。),同じく3-1-1ないし 3-2-4記載の標章 「LFR」 ( で始まるもの。 「被告標章2の3」 以下 という。 , ) 同じく4-1ないし4-4記載の標章(「LFL」で始まるもの。以下「被告標章 5 2の4」という。),同じく5-1ないし5-11記載の標章(「LFV」で始ま るもの。以下「被告標章2の5」という。)及び同じく6記載の標章(LDM-7 0RS-RGB。以下「被告標章2の6」という。)を使用し,被告商品を案内, 宣伝するカタログ及びウェブサイトに,これを掲載している。
2 争点10 ? 被告標章1は本件商標1と類似するか ? 被告標章1は,商標として使用されていないと認められるか ? 被告標章2は本件商標2と類似するか ? 被告標章2は,商標として使用されていないと認められるか ? 原告による本件商標1及び2に係る商標権の行使は権利濫用にあたるか15 ? 損害及び不当利得の額(以下,合わせて「損害額」という。) 3 争点に関する当事者の主張 ? 争点?(被告標章1は本件商標1と類似するか)について 【原告の主張】 ア 被告標章1の要部及び呼称・観念外観の同一性20 本件商標1は,「LIGHTING SOLUTION」との文字列からなり, 顧客ごとに最適な照明環境とそのための照明装置を提案するという原告の理念を表 す造語である。
被告標章1は,「LED」という文字列の右横に,「画像処理用LED照明装置」 との文字列が上段に,「LIGHTING SOLUTION」との文字列が下段25 に配置された標章である。このうち,「LED」や「画像処理用LED照明装置」 は普通名詞に過ぎず,何ら出所識別標識としての呼称や観念を生じないから,本件 4 商標1との類否判断の対象となるのは,出所識別力の強い「LIGHTING S OLUTION」の部分(要部)のみである。
本件商標1と被告標章1のうち上記部分は,いずれも「ライティングソリューシ ョン」との同一の呼称が生じ,直訳すれば「照明の解決」という同一の観念が生じ 5 る。また,外観はいずれもゴシック体の欧文字であり,需要者・取引者に与える印 象は同一である。
指定商品及び役務の類似性 本件商標1の指定商品は「発光ダイオードを用いた照明器具」等であるところ, 被告は被告標章1をこれと同一又は類似するLED照明装置の広告のために使用し10 ている。また,本件商標1の指定役務は,「光の当て方に関する技術又は知識の教 授」等であり,人や企業に対する「知識の教授」が広く含まれる。被告は,「顧客 のニーズに合わせて最適な照明環境と,そのための照明装置を提案する。」という 役務の広告のために被告標章1を展示・頒布するなどしているところ,この役務は 上記本件標章1の指定役務と同一または類似である。
15 【被告の主張】 ア 被告標章1の一体性及び呼称・観念外観が異なること 被告標章1のうち「画像処理用LED照明装置」及び「LIGHTING SO LUTION」は視覚的にまとまりのよい一体として表示されており,意味として も関連性が強いから,これを一連一体のものとしてみるべきである。そうすると,20 被告標章1から生じる呼称は,「ガゾウショリヨウエルイーディショウメイソウチ ライティングソリューション」である。他方,本件商標1の呼称は「ライティング ソリューション」であり,明らかに異なる。
また,被告標章1からは単なる「照明の解決」ではなく,「画像処理用LED照 明装置であり,照明に関する顧客のニーズや課題を解決する。」という観念が生じ25 るので,本件商標1から生じる観念とは明らかに異なる。
また,被告標章1のうち「LIGHTING SOLUTION」の部分のみを 5 分離して観察したとしても,本件商標1は色彩があり文字に装飾があり,デザイン 性のある特殊な文字である一方,被告標章1の上記部分は陰影があるものの一般的 なゴシック体の黒字の文字列であり,外観が大きく異なる。
イ 出所混同の余地がないこと 5 本件商標1は,顧客にとっては「発光ダイオードを用いた照明器具」という指定 商品及び役務をそのまま表現したものと認識される。また,これに類する言葉は同 業他社によっても多数使用されている。したがって,本件商標1の識別力は極めて 乏しい。さらに,被告標章1の掲載されたカタログの表紙及び裏表紙下部には,出 所を明確に表示する,被告のURL,名称及びロゴが掲載されている。
10 したがって,被告標章1に接した需要者・取引者が特定の出所を想起することは なく,本件商標1と被告標章1との間で,需要者において出所の混同が生じる余地 はない。
指定商品及び役務の類似性についての反論 後記?【被告の主張】のとおり,被告は,被告標章1を商標として使用していな15 いから,指定商品ないし役務の類似性についての原告の主張は前提を欠く。仮に, 被告標章1の使用が商標的使用に該当するとしても,被告標章1は被告商品に付さ れていない。加えて,「顧客のニーズに合わせて最適な照明環境と,そのための照 明装置を提案する」という行為は被告の販促行為であって独立した役務ではない。
仮に独立した役務だとしても,上記の行為は主として知能を開発するためのサービ20 スではないから,本件商標1の指定役務である「光の当て方に関する技術又は知識 の教授」とは異なる。
エ まとめ 以上によれば,被告標章1は本件商標1に類似せず,商標権侵害は成立しない。
? 争点?(被告標章1は,商標として使用されていないと認められるか)につ25 いて(商標法26条1項6号の抗弁) 【被告の主張】 6 ア 被告標章1の使用箇所 被告は,被告が現在発行するカタログ(甲5。以下「本件カタログ」という。) の表紙の上部に,被告のウェブサイトのURLと被告標章1を表示した上,ほぼ全 面に被告商品の一部の写真を掲載し,右下に被告の名称とロゴマークを掲載してい 5 る。また,裏表紙の上部に被告標章1を掲載し,下部に被告の名称とロゴマークを 掲載している。すなわち,被告標章1は,通常,カタログにおいて題号や副題が掲 載される個所にのみ使用されている。
被告は,被告標章1を被告商品には付しておらず,独自に商取引の対象として流 通するものではない本件カタログの上記個所にのみ使用しているから,需要者はこ10 れを本件カタログの題号又は副題と理解するものである。
イ 被告標章1の識別力 被告標章1のうち,左側の「LED」及び右側上段の「画像処理用LED照明装 置」は,被告商品の光源や種類の記述に過ぎず,右側下段の「LIGHTING S OLUTION」を構成する「LIGHTING」及び「SOLUTION」は,15 両単語とも日本語として定着しており,合わせて「照明に関する問題の解決」,「照 明に関する解決法」という意味を生じ,需要者もそのように認識する。そして,こ の観念は,本件カタログの内容である被告商品の内容と性質をそのまま記述したと いうことができる。
また,「LIGHTING SOLUTION」という文字列は,原告及び被告20 以外の多くの照明装置メーカーが使用しており,ありふれたものである。
ウ まとめ したがって,本件カタログを見た需要者が,被告標章1を,独立の出所表示機 能を持つ標章と認識することはなく,被告標章1の識別力はないか,仮にあったと しても極めて乏しいから,被告による被告標章1の使用は商標的使用に当たらず,25 被告標章1は,「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識する ことができる態様により使用されていない商標」(商標法26条1項6号)に該当 7 する。
【原告の主張】 ア 本件商標1の識別力 本件商標1の「LIGHTING SOLUTION」という文言は,商品の内 5 容や性質をそのまま記述するありふれたものではなく,原告が,自己の販売する商 品ないし役務に最適な標章として自ら創作した特徴的な造語であり,十分な識別力 を有する。被告の主張する,同様の言葉を使用する他のメーカーは,いずれも民生 用の照明装置メーカーであって産業用LED照明装置メーカーにおいて同様の標章 が使用されているものではない。
10 また,原告は,遅くとも平成16年ころから,カタログやホームページ,新商品 の発表会や展示会における配布資料に本件商標1を付して使用してきたのであるか ら,遅くとも本件商標1が登録された平成23年7月までには,本件商標1は産業 用LED照明装置の分野で原告の商品ないし役務を示す標識として周知・著名にな っていた。
15 イ 被告標章1の使用態様 カタログは,「商品に関する取引書類」(商標法2条3項8号)に該当する。ま た,商標としての使用があるというためには,必ずしも指定商品そのものに付され て使用されることは必要でなく,商品との具体的関係において使用されていれば足 りるから,本件カタログの表紙及び裏表紙に被告標章1を付する行為は,当然に被20 告標章1を商標として使用する行為に当たる。
そして,被告商品の内容は産業用LED照明装置であるから,被告商品の内容と 性質をそのまま記述するのであれば「産業用LED照明装置」と記述すれば足り, 被告商品の内容や性質を表現する表記としては種々の言葉が考えられるから,「L IGHTING SOLUTION」という記述が,被告商品の内容や性質をその25 まま記述するものとはいえない。
さらに,被告標章1は,被告標章2と合わせて使用されているところ,これだけ 8 多数の商標が全く無関係の会社間で偶然に一致することは考え難いことから,需要 者・取引者において原告と被告の商品について何らかの関係があるものと誤認する おそれが十分に認められる。
ウ まとめ 5 したがって,被告による被告標章1の使用は,十分な識別力を有する本件商標1 の付された原告の商品と被告商品との誤認混同を生じさせるものであり,商標的使 用に当たる。
? 争点?(被告標章2は本件商標2と類似するか)について 【原告の主張】10 ア 被告標章2の要部 本件商標2は,それぞれ3個の欧文字からなる文字列であり,原告が製造販売す るLED照明装置の商品名であって,いずれも原告が創作した造語である。本件商 標2は,画像処理用LED照明装置の分野でトップシェアを誇る原告の商標として 需要者・取引者にとって周知され,著名であるため,強い識別力を有する。
15 一方,被告標章2は,上記各3個の欧文字(以下,それぞれ「語頭部分」という。) と,別の欧文字や数字の列が,「-」(ハイフン)により結合された文字列である。
このうち,各語頭部分は上記のとおり原告の商標として強い識別力があるが, 「-」 以下の部分は装置の外径値を示す数字や形を示す符号等でしかなく,出所識別標識 としての呼称・観念を生じない。また,「-」の前後に一体不可分の意味連関はな20 い。
さらに,被告標章2の1ないし5の各語頭部分(LDR,LDL,LFR,LF L,LFV)は,被告のウェブサイト(甲6),被告の製品価格表(乙14,甲2 8),被告が過去に使用していたカタログ(乙2,13,15,甲25)に直接表 示されている。また,本件カタログでは前記各語頭部分は直接表示されていないが,25 赤色光の商品について,型式名の冒頭に「L」を付すことにより,前記語頭部分に 当たる文字列を認識することに特に困難はない。なお,被告標章2の6の語頭部分 9 である「LDM」は,本件カタログ上においても直接表示されている。
したがって,需要者・取引者が,被告標章2の各語頭部分を他の文字列から分離 して認識することは容易であり,被告標章2については,各語頭部分を要部とし, この部分と本件商標2との類否を判断すべきである。
5 イ 本件商標2と被告標章2の要部との類似 被告標章2の要部である各語頭部分と本件商標2とは,外観及び呼称がいずれも 共通する。また,これらはいずれも造語であるため観念は生じない。したがって, 両者は類似する。
【被告の主張】10 複数の構成部分を組み合わせた結合商標について,一部を抽出して類否を判断す ることは,その部分が需要者・取引者に対し商品又は役務の出所識別標識として強 く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標 識としての呼称,観念が生じないと認められる場合を除き,原則として許されない。
被告標章2について,各語頭部分のみを抽出して類否判断の対象とすることが許さ15 れる上記のような例外的な事情は存在しない。
すなわち,被告標章2のうち各語頭部分は,本件カタログに直接表示されていな い。本件カタログを見る者は,「型式の読み方」という欄の記載に沿って「型式」 列に記載された文字列の冒頭に「L」を当てはめることにより初めて「LDR」等 の各語頭部分を認識するのであって,一連の型式表示から語頭部分を分離してこれ20 が強く支配的な印象を持つものと認識することはない。仮に,本件カタログに出所 識別機能を有する表示があるとすれば,発光色を示す文字を除いた,各語頭部分の うちシリーズ名を表す2文字目以降(DR等)である。
加えて,下記?【被告の主張】ウのとおり,被告商品の需要者・取引者の多くは 被告商品の種類と機能に着目するのであって,ブランドへの関心は乏しいから,型25 式の文字列のうち語頭部分を分離して認識し,かつこれが出所表示機能を有すると 認識することはない。
10 さらに,本件商標2に類似した文字列は,ほかのメーカーによっても産業用LE D照明装置の型式記号の一部として用いられており,識別力に乏しい。
以上より,被告標章2の各語頭部分は,需要者に出所識別標識として強く支配的 な印象を与えるものではないから,本件商標2との類否判断の対象となるのは被告 5 標章2全体であるべきところ,両者は類似しない。
? 争点?(被告標章2は,商標として使用されていないと認められるか)につ いて(商標法26条1項6号の抗弁) 【被告の主張】 ア 被告標章2は多数ある型式名の一部であること10 被告商品の型式記号の表記には,以下のとおり十分な根拠と必然性がある。
そして,被告標章2は,膨大な種類の型式記号のうちのほんの一部に含まれる文字 列に過ぎない。
被告標章2の1は,「DRシリーズ」,「DR-FAシリーズ」,「DR- FH」シリーズ,「DR-LAシリーズ」,「DR-UA」シリーズ,「三色混合15 シリーズ」というシリーズ名のもと販売されている合計300種類以上の商品の中 の一部の商品を表す型式である。これらはいずれも直接照射式のリング状の照明装 置であり,「DRシリーズ」中の「D」は「DIRECT」(直接),「R」は「R ING」(リング)を意味する。そして,同シリーズには,発光色,形状や機能に よる違いから多数のバリエーションがあり, 「DR」の直前の文字が発光色を 「L」 (20 は赤色を示すため,赤色を選択すると語頭部分が「LDR」となる。),「DR」 の次の「-」の後ろの数字が外径値/外径近似値を示す。また, 「DR」の次の「-」 の後ろに欧文字が続く場合は,形状の機能や特徴を示す文字列,例えば,「フラッ トアングル」を意味する「FA」等が付される。この具体的な記述ルールは,本件 カタログ中に「型式の読み方」として示されている。
25 なお,被告は,平成8年ころから産業用LED照明シリーズの販売を開始したと ころ,当時,「DR」が型式に含まれる「直接照明リング型」の商品の発光色は赤 11 色と白色しかなかった。そこで,被告は,LEDの色として古くから存在し,かつ 一般的であった赤色の製品の型式に「LED DIRECT RING」の略称と して「LDR」を採用し,他方,白色の製品の型式には「WDR」を採用した。そ の後,被告商品のカラーバリエーションが増えるにつれ,「G」,「B」等を1文 5 字目とする型式が採用された。
被告標章2の2は,「DLシリーズ」,「DL-Sシリーズ」というシリー ズ名のもと販売されている500種類以上の商品の中の一部の商品を表す型式であ る。これらはいずれも直接照射式のバー型又はスクエア型の照明装置であり,「D Lシリーズ」中の「D」は「DIRECT」(直接),「L」は「LINE」(ラ10 イン)を意味する。そして,同シリーズには,発光色,形状や機能による違いから 多数のバリエーションがあり,「DL」の直前の文字が発光色を(赤色を選択する と語頭部分が「LDL」となる。),「DL」の次の「-」の後ろの数字が発光部 の縦横寸法を示す。被告は,平成8年ころからこれらのシリーズの販売を開始した。
被告標章2の3は,「FRシリーズ」,「FR-LAシリーズ」というシリ15 ーズ名のもと販売されている約50種類の商品の中の一部の商品を表す型式である。
これらはいずれも無影フラットリング型又は無影フラットリングローアングル型の 照明装置であり,「FRシリーズ」,「FR-LAシリーズ」中の「F」は「無影 フラット」,「R」は「リング」,「LA」は「ローアングル」を意味する。そし て,同シリーズには,発光色,形状や機能による違いから多数のバリエーションが20 あり,「FR」の直前の文字が発光色を(赤色を選択すると語頭部分が「LFR」 となる。),「FR」の次の「-」の後ろの数字が発光部の外径寸法を示す。被告 は,これらの型式の文字列を,遅くとも平成11年から使用していた。
被告標章2の4-1ないし4-4は,「FL-SHシリーズ」というシリー ズ名のもと販売されている合計16種類の商品の中の一部の商品を表す型式である。
25 これらはいずれも無影角形照射型の照明装置であり,「FL-SHシリーズ」中の 「F」は「無影フラット」,「L」は「ライン」,「SH」は「スクエア型・ハイ 12 パワー(高輝度)」を意味する。そして,「FL」の直前の文字が発光色を(赤色 を選択すると語頭部分が「LFL」となる。),「SH」の後ろの数字がケース外 形のサイズを示す。被告は,これらの型式の文字列を平成15年6月から使用して いた。
5 また,原告の商品のうちLFLシリーズはフラットな発光面から拡散光を照射す る「透過照明」タイプの製品であるのに対し,被告の上記FL-SHシリーズは, 導光拡散材の上部からLED光を投入し,無影照明となって側面や斜め上方から対 象物を照らすものであり,商品の形状やカテゴリーが全く異なる。
被告標章2の5は,「FVシリーズ」というシリーズ名のもと販売されてい10 る商品の中の一部の商品を表す型式である。「FVシリーズ」中の「F」は「ハー フ(halF)ミラー」,「V」は「同軸 Vertical」を意味し,「FV」 の直前の文字が発光色を示す(赤色を選択すると,語頭部分が「LFV」となる。 。
) なお,ハーフについて「H」ではなく「F」を使用したのは,既に被告商品として 「LH」で始まる型式の製品が存在したので混乱を避けるためである。被告は,こ15 れらの型式の文字列を遅くとも平成11年から使用していた。
被告標章2の6中の「LDM」は,「赤色のドーム」照明を意味する。被告 は,この文字列を遅くとも平成11年から使用していた。
イ 被告標章2の使用態様 被告標章2は明示的に型式名として使用されており,以下のとおり,その使20 用されている態様からすれば,被告標章2が掲載された本件カタログ等に接した 被 告商品の需要者・取引者が,被告標章2を出所表示機能を有する商標とみる余地は ない。
本件カタログにおいて,被告標章2の1,2の2,2の3,2の4及び2の 5の各語頭部分は,実際には表記されておらず,「外形寸法・仕様」という見出し25 の下,「型式の読み方」という欄の記載に沿って「型式」列に記載された文字列の 冒頭に「L」を加えることにより,初めて全体が認識されるにすぎない。また,同 13 じページの目立つところに,被告標章2の一部分であるシリーズ名(冒頭に「L」 を付さないもの)が大きく表示され,本件カタログには,前記?【被告の主張】ア のとおり,別に出所表示機能を有する被告のロゴマーク及び名称も明記されている。
被告のウェブサイト(甲6)では,「仕様」欄の「型式」の列に,被告標章2の 5 一部が小さな文字で表示されているが,同ページのヘッダー部分には被告のロゴマ ークと名称が明記されており,目立つところにシリーズ名が記されている。
同様に,被告の製品価格表(乙14,甲28)や被告が過去に使用していたカタ ログ(乙2,13,15,甲25)にも被告標章2の一部が表示されているが,こ れらの表紙等にも被告のロゴマークと名称が明記されており,需要者・取引者は出10 所を容易に認識できる。
以上より,需要者が,ことさらに被告標章2の各語頭部分に着目し,出所表示機 能を持つ標章と認識するとは考えられない。
ウ 需要者・取引者の認識 産業用LED照明の主な需要者・取引者は,製造工場や生産事業所などの事業者15 であり,自己の製品の外観から不備や瑕疵の有無を検査するための画像検査処理シ ステムと共にLED照明装置を使用する。製品の用途は産業用に特化しており,単 価も数万円から数十万円と高額である。そのため,産業用LED照明装置のための 広告宣伝及び営業活動は,テレビや一般紙といった大衆向けの宣伝広告ではなく, 画像検査処理システムのメーカーの紹介,展示会への出品,業界誌への出稿等であ20 り,ここではブランドよりも自社の商品の内容,性能や機能に重点が置かれる。そ して,被告の需要者・取引者の大半は,画像検査処理システムのメーカーからの紹 介か,以前に被告製品を購入したことのある顧客である。これらの需要者・取引者 は,「自社の製造する製品の検査のために最も適切なLED照明装置の種類,発行 色,サイズは何か」ということに関心を持ち,ブランドや,型式の文字列及び数字25 の組み合わせには関心を持たない。
さらに,原告及び被告以外の複数の産業用LED照明装置メーカーも,本件商標 14 2や被告標章2に類似するシリーズ名や文字列を型式に取り入れている。
エ まとめ したがって,上記の需要者・取引者の性質や取引態様から,被告商品の需要者・ 取引者が,被告標章2を出所表示機能を有するものとして認識することはないから, 5 被告による被告標章2の使用は商標的使用に当たらず,被告標章2は,「需要者が 何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使 用されていない商標」(商標法26条1項6号)に該当する。
【原告の主張】 ア 本件商標2の創作性及び識別性10 本件商標2の1の「LDR」は,原告の造語である「LEDダイレクトリング照 明」を英語に置き換え(LED DIRECT RING LIGHT),その最 初の3つの単語の頭文字をとったものである。本件商標2の2以下も同様に,原告 の造語を英語に置き換え,それぞれその中の文字をとって作成したものである。
原告は,平成6年ころからLED照明装置の販売を開始し,本件商標2の1,同15 2の3ないし5につき同年から,同2の2につき平成7年ころから,同2の6につ き遅くとも平成10年ころから,一貫して原告の商品を示す識別標識として使用し てきた。これらはすべて被告が被告標章2の1ないし6の使用を開始したと主張す る時期よりも前である。加えて,原告は,個別の商品について本件商標2を大きく 目立つ態様で付し,カタログ,ホームページ,新商品の発表会や展示会,プレスリ20 リース,取引書類や日々の営業活動等を通じて,本件商標2を付した原告の商品が 認知されるよう使用している。
また,原告は,白色LEDが実用化されたころから一貫して産業用LED照明装 置の商品分野においてトップシェアを維持してきたのであるから,本件商標2の1 ないし6は,遅くともこれらが商標登録された平成16年4月ころまでには,産業25 用LED照明装置の分野で周知・著名となっていた。
以上より,本件商標2は原告の創作した特徴的な商標であり,原告の商品である 15 ことを示す識別標識として十分な識別力を有する。
イ 被告標章2の使用態様 被告標章2が型式名として使用されていたとしても,使用態様・使用状況, 当該商品・役務の性質,取引の実情等から,需要者に被告商品ないし被告の役務の 5 商標と認識される限り,商標としての使用であることは否定されない。
被告は,被告標章2を単なる型式名の一部と主張するが,被告標章2の各文 字列はそれぞれが付された商品の種類と整合していない。例えば,被告標章2の2 につき,対象となる商品は「直接照射バー型」,「直接照射スクエア型」等である が,型式名に「バー」や「スクエア」を表す文字は使用されていない。
10 また,被告は,被告標章2の1ないし5に含まれる「L」という文字につき, 赤色の発光色を表す表示に過ぎないと主張する。しかし,被告の平成8年当時のカ タログ(乙2)においては,発光色赤色の商品のみが「直接照射リング型(LDR)」 等と紹介されており,平成16年当時のカタログ(甲25)には,白色や青色の商 品を含めて被告標章2を付して表示されている。そうすると,被告標章2は,単に15 多数ある被告商品のうち特定の発光色の製品を表す型式名の一つとして使用されて いるのではなく,各標章の付された被告商品の系列を代表する標章として使用され ているものといえる。
さらに,被告は,被告標章2を,原告の商品と酷似するタイプの被告商品に ついて使用しており,その数は「直接照射照明」では11タイプのうち8タイプ,20 「間接照射照明」では3タイプすべて,「同軸照明」では2タイプのうち1タイプ, 「RGB3色照明」については5タイプのうち2タイプである。また,商社を通じ て被告商品を購入した際の現品票及び請求書には,原告の商品でないことを示す表 示が全くない。
ウ 需要者・取引者の認識25 産業用LED照明装置の分野でも,顧客は当然に商品の出所やブランドに関心を 有する。そのため,各社は自社の商品と他社の商品を識別し得るよう,それぞれ異 16 なる標章を付して販売しており,本件商標2の1ないし6の指定商品につき,本件 商標2と全く同一の標章を付すのは被告のみである。また,インターネット上の通 信販売サイト「モノタロウ」内において,商品の形態と商品名(「LDR」等)の キーワードを入力すると,当該形態にかかる原告の商品と被告商品が並列して表記 5 される。このような状況下においては,被告標章2に接した需要者・取引者におい て,出所を混同するおそれが十分に認められる。
被告は,カタログやウェブサイトには被告標章2だけではなく被告のロゴマーク や名称が表示されていることから需要者・取引者は被告標章2を出所を表示するも のとして認識しないと主張するが,別途出所表示が施されているというだけで商標10 権侵害が否定されるのは,そもそも被告標章2が出所識別機能を一切発揮していな いような場合に限定される。
したがって,被告標章の使用態様2に鑑みれば,原告の商品と被告商品との間に 誤認混同が生じるおそれは十分に認められる。
エ 被告が本件商標2の信用にフリーライドしていること15 前記アのとおり,被告が被告標章2の使用を開始したのは原告が本件商標2の使 用を開始してから相当期間が経過してからであり,産業用LED照明装置の商品分 野において本件商標2と同一の文字列を型式名として使用しているメーカーは被告 のみである。
そうすると,被告は産業用LED照明装置の商品分野における第一人者である原20 告の信用にフリーライドするため,故意に,本件商標2と類似する本件標章2を被 告商品に付して使用しているものと考えざるを得ない。
オ 小括 以上より,被告は,被告標章2を商標として使用している。
【原告の主張に対する反論】25 ア 本件商標2には周知・著名性がないこと 原告は,平成6年3月ころから画像処理用のLED照明装置の受注を開始したと 17 ころ,当時は極めて小規模な企業にすぎず,市場において「トップシェア」となっ たのは早くても平成14年以降である。そして,原告が平成6年から使用していた 商標は,本件商標2の1,同4及び5のみである。加えて,前記【被告の主張】ウ のとおり,産業用LED照明装置の取引の実情に照らせば,被告が被告標章2を付 5 して産業用LED照明装置の販売を開始した平成8年において,本件商標2が,原 告の商品ないし役務を示す標識として周知・著名となっていたことはあり得ない 。
イ 被告が原告の信用にフリーライドする必要がないこと 被告は,昭和43年ころから,ストロボスコープの製造販売の専業メーカーとし て発展し,産業用照明装置の関連分野としてLED照明の可能性に着目した。そし10 て,平成8年10月,他社に先駆けて画像処理を目的としたLED照明装置シリー ズの開発販売を開始し,「LDR」等という文字列も当時から型式として使用して いた。このように,被告は,独自の技術と信用により業界での一定のプレゼンスを 確立してきたのであり,原告の信用にフリーライドする必要も理由もない。
ウ 現品票及び請求書の記載について15 原告が商社を通じて被告商品を購入した際の現品票及び請求書であるとして示 す物は,被告が発行したり発行を指示したりしたものではなく,被告とは無関係の 商社が無断で発行したものである。むしろ,被告製品を出荷する際に梱包する箱に は会社名が明示された注意書きが同包され,製品自体に貼付されるラベルには型式 の表示および被告を示すロゴが明示される。したがって,需要者が商品の出所につ20 いて誤解することはない。
? 争点?(原告による本件商標1及び2に係る商標権の行使は権利濫用にあた るか)について 【被告の主張】 ア 本件商標1に係る商標権の行使25 本件商標1は,指定商品指定役務をそのまま表現したと評価することができ る内容である上,原告や被告以外の第三者により多数使用されているありふれた言 18 葉であって,これを見た需要者が出所を認識できるものとはいえないから,商標法 3条1項6号に定める無効事由がある。したがって,原告が被告に対し本件商標1 に基づき権利行使を行うことは権利の濫用であって許されない。
イ 本件商標2に係る商標権の行使 5 本件商標2は,いずれも「L」で始まる欧文字3文字からなる商標であるところ, 「L」はLEDを想起させる文字であり,これに続く2文字はいずれも産業用LE D照明装置の商品の種類をそのまま表した言葉の略称に過ぎない。また,これら2 文字の組み合わせは原告や被告以外の第三者によって商品の型式等として使用され ている。そうすると,本件商標2を見た需要者は,これをもって特定の出所を認識10 することはないというべきであるから,商標法3条1項6号に定める無効事由があ る。また,被告は,LED照明シリーズの販売とほぼ同じ時期である平成8年から 本件標章2を型式名として採用して使用していた。
したがって,原告が被告に対し本件商標2に基づき権利行使を行うことは権利の 濫用であって許されない。
15 【原告の主張】 本件商標1及び2は十分な出所識別力を有しており,商標法3条1項6号の無効 事由は認められず,権利濫用の抗弁は成立しない。
? 争点?(損害額)について 【原告の主張】20 ア 本件標章2の使用による損害 被告は,平成18年11月1日から平成25年10月31日までの間に,被 告標章2を付した被告商品を,4848万1830円分販売した。
原告は画像処理用LED照明装置の分野でトップシェアを誇る企業であり,本件 商標2は周知・著名なものであること,原告と被告は競業関係にあること,情報処25 理用の機械器具や光学式の機械器具等の分野では商標権について4〜5%以上のロ イヤルティ料が合意されているものも多いことなどから,原告の損害となる使用料 19 相当額は少なくとも売上高の8%と認定されるべきである。
したがって,同期間における被告の不当利得に基づく返還請求権の額は,387 万8546円となる。
(計算式)48,481,830×8%=3,878,546円 5 また,被告は,これに対し,催告の後である平成30年1月23日から支払済み まで年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
被告は,平成25年11月1日から平成29年7月31日までの間に,被告 標章2を付した被告商品を,2012万6460円分販売した。
これら被告商品の限界利益率は明らかに50%を下らない。
10 したがって,同期間における被告の不法行為に基づく損害賠償額(商標法38条 2項)は,1006万3230円となる。
(計算式)20,126,460円×50%=1006万3230円 また,被告は,これに対し,不法行為の後である訴状送達の日の翌日から支払済 みまで年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
15 イ 本件標章1の使用による損害 被告は,平成23年9月1日から平成25年10月31日までの間に,被告商品 を3億0191万5347円分販売した。
また,被告は,同年11月1日から平成29年7月31日までの間に,被告商品 を12億5406万9731円分販売した。
20 これらの販売額合計(15億5598万5078円)から,平成18年11月 11日から平成29年7月31日までの間の本件商標2に関する販売額合計(68 60万8290円。上記ア参照。)を除外した14億8737万6788円を,平 成23年9月1日から平成25年10月31日までの間の被告標章1に係る固有の 販売額と考えることができる。
25 (計算式)301,915,347円+1,254,069,731円-(48, 481,830円+20,126,460円)=1,487,376,788円 20 被告標章1は,被告商品に付されているのではなくカタログに使用されているの で,これによる個別の損害額を算定することは困難であるが,商標の自他識別機能 を害する形態で使用されているので,不法行為に基づく損害賠償として使用料相当 額の請求が認められるべきである(商標法38条3項)。また,不当利得返還請求 5 としても使用料相当額が認められるのが相当である。
本件商標1は周知・著名性を有していることから,使用料相当額としては売上高 の3%を下らない。
したがって,平成23年9月1日から平成29年7月31日までの間の損害額は, 4462万1303円となる。
10 (計算式)1,487,376,788×3%=44,621,303円 また,被告は,これに対し,平成30年1月23日から支払済みまで年5分の割 合による遅延損害金の支払義務を負う。
なお,平成23年9月1日から平成25年10月31日までの間の損害は不当利 得金返還請求,同年11月1日から平成29年7月31日までの間の損害は不法行15 為に基づく損害賠償(商標法38条3項)として請求するものである。
【被告の主張】 ア 原告の主張する販売額については争わない。
イ 原告の損害の不発生(商標法38条2項の関係) 被告による被告標章2の使用により,原告には何らの損害も発生していない。
20 前記??【被告の主張】のとおり,被告標章2は商標として使用されておらず, 仮に商標的使用であるとしても,その本来の意味や使用態様などに照らせば,識別 力・出所表示機能は極めて乏しい。
また,前記?【被告の主張】ウのとおり,産業用LED照明装置の需要者は企業 や団体であり,用途は産業用に限られる。製品の単価は数万円から数十万円と高額25 であり,大量に導入する需要者にとっては大規模な設備投資となることもある。こ のような取引の実情から,需要者の関心は製品の性能にあり,ブランドや製品名に 21 はない。さらに,産業用LED照明装置は基本的にすべて受注生産であり,事前に 入念な打ち合わせや実証実験,納期や価格の交渉を経て契約締結に至る。したがっ て,需要者が商品名やブランドのみを見て購入を決定するということは起こり得な い。
5 以上の事実に照らせば,被告が被告標章2を使用していなければ,原告が利益を 得られたであろうという関係は存在しない。
ウ 推定覆滅事由 仮に,本件において損害等の発生の基礎となる事情が存在するとしても,被告製 品の売上に対する被告標章2の寄与度は全く存在せず,商標法38条2項の適用に10 当たり100%,仮にそれが認められないとしても少なくとも95%以上の推定覆 滅が認められるべきである。
すなわち,需要者が被告製品を選択する理由としては,被告製品の性能(輝度・ 照度・照射面の均一性・照射角度・照射距離・照射範囲・集光性・発光時間・発光 の応答性・発光の安定性)や,機種・サイズ・発光色などの諸条件が需要者の目的15 に合致するか否か,現実の使用環境や使用条件において需要者の検査目的に合致す るか,さらには価格や納期などの取引条件がすべてであり,商標が判断材料となる ことはない。
被告が行った顧客アンケートの結果(乙62)及び顧客とのメールのやり取り(乙 63,64)によれば,被告商品の購入動機において考慮されたのは,選択式の回20 答の多い順から製品スペック,製品の価格,商談時対応,納期,アフターサービス の良さ,メーカーが被告であること等であり,「メーカー名ではなく製品名や製品 の型式(例LDR,LFR)から信頼できると思った」という回答は皆無であった。
また,被告標章2はカタログの仕様表に埋没してしまっている一部に過ぎない。
仮に被告が被告標章2を使用しなければ需要者が原告の商品を選択したはずである25 という推定が成り立つ可能性は全くない。
エ 限界利益率 22 被告標章2を付した被告商品について,限界利益率が50%であることは争わな い。
オ 本件商標2に関する使用料相当額(不当利得の関係) 前記?【原告の主張に対する反論】アのとおり,本件商標2は周知・著名とはい 5 えず,識別力の乏しいものであるから,これ自体に顧客吸引力も宣伝効果もない。
また,産業用LED照明装置は,同種の形状・機能・用途の製品は,どのメーカー のものも外観,機能や形状が酷似するものであるから,ことさらに被告商品が原告 の商品と酷似するとはいえない。
したがって,使用料相当額はゼロか,多くとも売上高の0.2%を上回ることは10 ない。
カ 本件商標1に関する使用料相当額(商標法38条3項の関係) 前記?【被告の主張】イのとおり,本件商標1は周知・著名とはいえない。また, 単なる普通名詞の組み合わせに過ぎず,原告又は被告の商品の特徴をほぼそのまま 表現したものであって,コーポレートロゴとして認識されることも考えられないの15 で識別力に乏しい。
したがって,使用料相当額はゼロか,多くとも売上高の0.02%を上回ること はない。
【被告の主張に対する反論】 ア 商標法38条2項の適用20 本件商標2の商標権者である原告は,これらの商標を使用して市場において被告 商品と競合する商品を販売している。これは,商標権者に侵害者によると商標権侵 害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存する場合の典型で ある。
被告が主張する,被告標章2は識別力が弱い等の点は商標法38条2項の適用を25 否定する理由にならない。
イ 推定覆滅事由の不存在 23 商標法38条2項の推定を覆滅するためには,侵害行為と商標権者の売上減少と の間の相当因果関係を阻害する理由,例えば,市場の非同一性,他の競合品の存在, 侵害者の営業努力や侵害品の性能などが具体的に主張 立証されなければならない。
・ ところが,被告は,被告標章の識別力が弱いとか,需要者がブランドよりも機能 5 や性能に注目するなどという一般論を繰り返すのみであり,具体的な被告商品の優 越性や顧客吸引力についての具体的な主張立証をしない。
なお,被告は,原告が本件商標2を付して販売している商品と外観,機能,形状 等がいずれも酷似する商品に被告標章2を付して全国で販売しているのであり,こ れは本件商標2に顧客吸引力があることの証左である。
10 また,産業用LED照明装置の商品分野においても,当然に顧客はブランドに関 心を有する。仮に,需要者が商品の性能や機能に着目するとしても,被告は,顧客 が被告商品のいかなる機能や性能に他社製品と比較した優位性があるのかという点 について何ら具体的に主張立証しない。実際には,被告は,原告が本件商標2を付 して販売している商品と外観,機能が酷似する商品に被告標章2を付して原告より15 も安価で販売することにより顧客に訴求しているのであり,このような被告の侵害 行為がなければ,その需要が原告の商品に向いていたことは明らかである。
なお,被告が顧客に対して行ったアンケート結果や顧客とのメールのやり取りは, 被告商品の購入が前提になっていること,母集団の適切性や母集団からの標本の抽 出の適切性等アンケート調査の基本的な前提条件を備えず,質問方法や内容も恣意20 的であることなどから,証拠としての適格性を欠く。
当裁判所の判断
1 当事者等(前記第2の1前提事実,甲1,2,20〜22,乙4,46,弁 論の全趣旨) ? 原告25 原告は,平成5年10月6日に設立された,画像処理用LED照明装置及び制御 装置の開発,製造,販売等を事業内容とする,資本金4億6215万円の株式会社 24 である。原告は,平成6年に超高輝度LEDフラット照明装置及び超高輝度LED リング照明装置の開発,販売を行い,平成7年に,LED白色照明装置の開発を行 った。
原告は,遅くとも平成14年以降,画像処理用LED照明装置の国内市場におい 5 て,一位のシェアを占めており,平成24年,平成26年の統計では,同装置の世 界市場,国内市場において,数量ベース,金額ベースの双方で,一位のシェアを占 めている(同年の国内売り上げは約43億5000万円)。
? 被告 被告は,昭和40年4月に日新電子研究所の名で設立され,昭和43年に有限会10 社に,昭和50年5月に株式会社に改組された,計測用・工業用ストロボ装置,工 業用照明装置の製造販売を事業内容とする資本金3500万円の株式会社である。
被告は,昭和45年にデジタル表示式ストロボスコープを開発するなど,工業用ス トロボ装置の開発,製造を当初の主たる事業としていたが,平成8年10月より画 像処理用LED照明装置の製造・販売を行うようになった。被告は,現在も,LE15 D照明装置以外に,ストロボ装置,ストロボスコープ等の製造,販売を行っている。
? 画像処理用LED照明装置 原告,被告が製造,販売する画像処理用LED照明装置は,製造業等の事業者が 製品等の外観や瑕疵の検査,印字の検査等を行う画像検査処理システムに光源とし て用いるものであり,一個数万円ないし数十万円の価格設定がされており,電源装20 置,コントローラー等も併せ販売されていることから,一般家庭で購入,使用する ことは予定されていない。
2 争点?(被告標章1は本件商標1と類似するか)について ? 外観・呼称・観念の類似 本件商標1は,「LIGHTING SOLUTION」という文字列が横並び25 に配置されており,これから生ずる呼称は「ライティングソリューション」である。
また,本件商標1に使用されている欧文字はすべて大文字の活字体で,薄い水色に 25 濃い青色の縁取りがある。
一方,被告標章1は,「LED」という文字の右横の上段に「画像処理用LED 照明装置」,下段に「LIGHTING SOLUTION」という文字列が配置 されており,これらから生ずる呼称は「エルイーディ ガゾウショリヨウエルイー 5 ディショウメイソウチ ライティングソリューション」である。また,被告標章1 に使われている欧文字はすべて大文字の黒色の活字体で,文字の下に反転する形で 薄い青系統の影の装飾が施されている。
ここで,被告標章1のうち,「LED」及び「画像処理用LED照明装置」とい う部分は,製品の種類を表す一般名称であって独自性がなく,本件カタログの内容10 を記載するものにすぎず,特に特徴のある字体や装飾もないため,出所識別機能が あるとはいえない。
他方,「LIGHTING SOLUTION」の部分については,後述のとお り,ありふれた用語とはいえず,「照明に関する課題の解決方法」との観念を生じ させることから,本件カタログを目にした需要者は,この部分に注目すると考えら15 れる。
そうすると,本件商標1は,被告標章1の「LIGHTING SOLUTIO N」の部分と対比すべきところ,両者は,同じ英単語の組み合わせであって,字体, 色の系統も同一であるから外観は類似し,呼称も同一であり,一般に知られた「L IGHTING」,「SOLUTION」の英単語から生じる「照明に関する課題20 の解決方法」との観念を生じさせる点でも同一というべきである。
? 出所混同のおそれ 被告は,「LIGHTING SOLUTION」と同一又は極めて類似した表 現をコピー又は惹句として使用している照明メーカーが複数あることを理由に, L 「 IGHTING SOLUTION」はありふれた表現であって,出所識別力は弱25 く,被告の名称等を併せて表示する以上,被告標章1を使用しても,出所混同のお それは生じないと主張する。
26 しかしながら,「LIGHTING」あるいは「SOLUTION」という英単 語の意味内容自体は一般的に知られているところであっても,両単語を組み合わせ ることが一般的であるとまではいえず,本件標章1には一定の創作性が認められる し,前記照明メーカーは,いずれも一般的な照明器具のメーカーであって,産業上 5 利用されるLED照明装置のメーカーは含まれていない(乙16〜25)。
また,原告が,遅くとも平成14年以降,画像処理用LED照明装置のトップメ ーカーであることは既に認定したとおりであるし,原告は,平成16年に発行し た カタログ(甲24)の表紙及び本文中に,また平成20年から平成25年に作成し た広告物(甲11)の表紙右上に,さらに平成28年版カタログ(甲7)の表紙中10 央部に,いずれも本件商標1と同一又は類似の文字列を使用しており,平成28年 版カタログの本文中には「ライティングソリューション」とのカタカナ表記も記載 している。
そうすると,画像処理用LED照明装置を案内する本件カタログに被告標章1を 記載した場合,たとえ被告の名称等が併記されており,これを見る需要者が同装置15 を産業上利用することを予定するものであったとしても,需要者としては,登録さ れた本件商標1との関係で,被告商品が原告に由来する,あるいは原告と被告との 間に何らかのつながりがあると誤認する可能性はあるものといわざるを得ない。
? 指定商品役務の類似性 被告標章1が付されたカタログやウェブサイトは,「発光ダイオードを用いた照20 明器具」である被告商品に関連する物であるから,被告標章1は本件商標1の指定 商品について使用されていると認められる。また,被告の「顧客のニーズに合わせ て最適な照明環境と,そのための照明装置を提案する」という行為は,後記5?ア の取引態様及び被告の顧客対応に鑑みれば被告の役務と捉えられるところ,これは 「光の当て方に関する技術又は知識の教授」という本件商標1の指定役務と類似す25 ると認められる。
? 争点?の結論 27 以上によれば,被告標章1は,本件商標1に類似するというべきである。
3 争点?(被告標章1は,商標として使用されていないと認められるか)につ いて(商標法26条1項6号の抗弁) 被告は,被告標章1は,本件カタログに掲載された商品が照明に関する顧客の課 5 題を解決するものであることを記述したものにすぎず,本件カタログの題号又は 副 題として使用されたものであって,被告商品の出所を認識し得る態様により使用さ れるものではないから,商標として使用するものではないとして,商標法26条1 項6号の抗弁を主張する。
しかしながら,被告標章1のうち「LIGHTING SOLUTION」の部10 分については,前述のとおり,ありふれたものということはできず,一定の創作性 が認められるコピー又は惹句であって,「照明に関する顧客の課題を解決する」と の観念を生じさせることから,一定の顧客吸引力,品質保持機能を有すると認めら れるし,被告標章1の前記部分の記載の態様や内容から,これが本件カタログの内 容を記述的に説明するにすぎないということもできない。
15 また,前記認定のとおり,本件商標1については,画像処理用LED照明装置の トップメーカーである原告が,一定期間カタログの表紙等に使用しているのである から,少なくとも当業者の間では,原告の商品を示すものとして,一定の周知性を 獲得したものと認められる。
以上によれば,被告標章1が,およそ出所を表示することのない態様で使用され20 ていると認めることはできず,この点についての被告の主張は採用できない。
4 争点?(原告による本件標章1に係る商標権の行使は権利濫用にあたるか) について 本件商標1に出所識別機能が認められることは,前記2及び3で検討したとおり であり,商標法3条1項6号の無効事由は存在しない。
25 したがって,本件商標1の無効を理由に,原告の権利行使が権利濫用であって許 されないとする被告の主張は,理由がない。
28 5 争点?(被告標章2は,商標として使用されていないと認められるか)につ いて(商標法26条1項6号の抗弁) 被告は,被告標章2の各号は,商品の型式を示すものにすぎず,自他識別機能, 出所表示機能を有しないから,商標として使用するものではない旨を主張するのに 5 対し,原告はこれを争い,被告は先行する原告の商品に依拠して型番名を付してお り,これに接した需要者が原告の商品と誤認するおそれがあるなど,被告標章2は, 商標として使用されている旨主張するので,争点?について,まず判断する。
? 被告標章2の使用態様 ア 平成8年の被告カタログ(乙2)10 被告が当初工業用ストロボ装置の開発,製造を主たる事業としていたが,平成8 年10月に画像処理用LED照明装置の製造,販売を行うようになったことについ ては既に認定したとおりであり,この時点では赤色と白色の2つの発光色しかなく, 同年12月の被告のカタログでは,赤色のものにはLで始まる以下の語頭部分が, 白色のものにはWで始まる以下の語頭部分が使用され,これに外寸等を示す数字を15 加えたものが型式名として記載されたため,後の本件商標2の1(LDR),同2 の2(LDL),同2の3(LFR)に相当する語頭部分が,既に使用されていた ことになる。
LEDストロボ照明LSシリーズ 赤色ストロボリング型 LSR20 白色ストロボリング型 WSR 赤色ストロボライン型 LSB 白色ストロボライン型 WSB LEDストロボフラッシュ 赤色ストロボ直下式透過型 LST25 白色ストロボ直下式透過型 WST LED連続照明ライン照明シリーズ 29 赤色直接照射ライン型 LDL 赤色角形斜光照射型 LDL-Q LED連続照明リング照明シリーズ 白色直接照射リング型 WDR 5 赤色直接照射リング型 LDR 赤色ロウ・アングルリング型 LDR-LA 赤色無影フラットリング型 LFR 赤色小型リング型 LDR LED連続照明透過照明シリーズ10 白色エッジライト式透過型 WTE 赤色エッジライト式透過型 LTE 白色直下式透過型 WTD 赤色直下式透過型 LTD イ 平成11年の被告カタログ(乙13)15 平成11年11月の被告カタログでは,前記平成8年のカタログでは赤色の ものしか存在しなかった型式(LDL,LDL-Q,LDR-LA,LFR)に白 色のものが加えられ(WDL,WDL-Q,WDR-LA,WFR),平成8年の カタログでは存在しなかった型式として,新たに面発光落射型(LFV,WFV), ドーム・面発光落射一体型(LMV,WMV),赤色薄型面発光透過照明型(LT20 U),無影ドーム型(LFM,WFM),直接ドーム型(LDM,WDM),RB G3色照明シリーズ(LDR,RBGR-LA,LDM)が加えられ(LDB,W DBの型式名はLSL,WSLに変更された。),後の本件商標2の5(LFV) 及び同2の6(LDM)に相当する語頭部分が使用されている。
また,平成8年のカタログで存在したもの,及び平成11年で新たに加えら25 れたものいずれについても,白色発光を示す語頭部分のWを,G,B又はIRに変 更することで,発光色として緑色,青色,赤外850ナノメートルを選択できる旨 30 が記載されている。
このため,一例として直接照射リング型(DR)の場合,発光色によりLD R,WDR,GDR,BDR及びIRDRの語頭部分が存在し,34ミリから14 0ミリまで6種類の外径寸法が存在して,これだけでも多数の型式が存在すること 5 から,平成11年の被告のカタログでは,直接照射リング型は,ローアングル・リ ング型及び無影フラットリング型と共にリング照明シリーズに属するものとして紹 介され,直接照射リング型としての特長は記載されるものの,LDR,あるいはW DRを語頭部分に持つ個別の型式については,特長等を宣伝されることなく,仕様 の説明を示す一覧表の中に記載されるにとどまる。
10 ウ 平成15年16年の被告カタログ(乙15,甲25) 平成15年の被告カタログでは,従前にはなかった型式として,直接照射フ ラットリング型(LDR-FA,本項では便宜,赤色光を選択した場合の語頭部分 のみを示す。),水平照射リング型(LDR-UA),角形斜光照射型(LDL- S),無影ローアングル・リング型(LFR-LA),無影角形照射型(LFL-15 S),間接照射ドーム型(LKM),スポット照射型(LSP),小型スポット照 射型(LMP),LEDファイバー照明(LFP)といったものが加えられ,発光 形式としてストロボが選択できるようになっている。
平成16年の被告のカタログは,紫外発光が選択できるようになった点を除 けば,平成15年のカタログとほぼ同じである。
20 平成15年,16年の被告のカタログでは,冒頭に,カタログ内における各 商品の参照ページを示すインデックスページがあり(2ページ),ここには,赤色 を選択した場合のLから始まる語頭部分を含むシリーズ名(リング型LDRシリー ズ,ライン型LDLシリーズ等)16種が記載されている(電源装置は除く。)。
他方,個々の商品の詳細を説明する参照ページでは,直接照射リング型を例25 にとると,参照ページの冒頭に,「画像処理用LED照明 直接照射照明 直接照 射リング型」との日本語の名称が記載され,これについて商品の特長,機能等が紹 31 介されており,語頭部分を含む型式名(LDR-40等)については,一覧表の中 に記載されるにとどまる。また,平成15年,16年のカタログでは,赤以外の発 光色(白,緑,青,赤外,紫外)については,語頭部分の冒頭を記号又は空白とし た型式名が一覧表に記載され,需要者において,記号又は空白部分に発光色を示す 5 記号(W,G,B,IR,UV)を補って型式名を完成する体裁となっている。
このため,平成15年,16年の被告のカタログにおいて,本件商標2の1 ないし6に相当する記載は,カタログ冒頭のインデックスページと,発光色が赤色 である商品を列挙した一覧表部分に存在するのみで,商品のシリーズの特長,機能 等を説明する個所には使用されていない。
10 エ 本件カタログ(甲5) 本件カタログは平成27年12月に作成され,被告が現在も使用しているも のである。
本件カタログの冒頭(2ページ以下)はインデックスページとなっており, 被告商品を機能又は構造で大別し(直接照射照明以下の9グループ),総計47の15 シリーズに区分して,内容の詳細を示す参照ページの個所を示しているが,各シリ ーズの欄にはシリーズ名の日本語表記と欧文字によるシリーズ表記,及び商品の写 真のみを記載している。
シリーズ名の日本語表記については,従前のカタログで使用されていたものを基 本的に踏襲しており,欧文字によるシリーズ表記には,従前の型式名に使用されて20 いた語頭部分から,発光色を示す文字を除いたものが使用されているため(DRシ リーズ,DLシリーズ,FRシリーズ,FL-SHシリーズ,FVシリーズ等) 従前のカタログとは異なり,インデックスページにおけるシリーズ名の欧文字表記 には,本件標章2に相当する記載は原則として使用されていない(三色混合シリー ズについては,発光色の選択ということがないため,型式名がそのままインデック25 スページにも使用され,被告標章2の1-6-1,同1-6-2,同6が記載され ている。)。
32 個々の商品の詳細を説明する参照ページでは,最上部にいくつかのシリーズ をまとめたグループ名(例「直接照射照明」)の記載があり,その下にシリーズ名 の日本語(例「直接照射リング型」)とその特徴を表した英語(例「Ring T ype」)が並び,その下にシリーズ名(例「DR SERIES」)が比較的大 5 きな文字で表示されるが,ここでも,インデックスページと同様,語頭部分から発 光色を除いたもの(例「DR」)が使用され,その下にシリーズの特長,照射構造 が記載されている。
次に,同シリーズに属する個々の型式の仕様書を示すページに移り,「外形 寸法・仕様」という見出しの下に,シリーズの型式の読み方の説明があり,シリー10 ズ名及びその次の「-」に続く数字(外径値等の例示)のみを表記した一般式が記 載され,冒頭の空白に発光色を示す文字(L,W,G,B等)が入り,末尾に赤外 線の波長等が入ることが説明されている。
その次の型式の仕様の一覧表には,左から「発光色」,「型式」,「消費電力」 の列のほか,シリーズにより「傾斜角」「LED数」等の列があり,型式名は,冒15 頭の1文字目を空白(□)にした一般式として記載されている。型式名の冒頭の空 白に,赤色を示す「L」を挿入すると,本件カタログでは被告標章2の1-1-1 ないし1-5-6,同2-1-1-1ないし2-1-1-22,同2-1-1-2 4ないし5-11が形成されるが,その実際の記載は存在せず,寸法図も,発光色 が付加されない型式名で特定されている。
20 発光色の選択のない三色混合シリーズについては,空白のない型式名が参照 ページにも記載され,その結果,インデックスページと同様,被告標章2の1-6 -1,同1-6-2,同6が実際に記載されている。
本件カタログにおいては,被告の製造,販売するLED照明装置が,総計4 7の型又はシリーズに分けて紹介されており,その大部分において,発光色や寸法25 によってさらに細分化されることから,実際の型式名は極めて多数に上るが,従前 のカタログとは異なり,赤色を選択した場合の「L」から始まる型式名は,本件カ 33 載されている。
オ ウェブサイトの表示(甲6) 被告のウェブサイトは,製品情報のページの左上には,被告の名称及びロゴ 5 マークが表示され,「製品情報 詳細」の見出しのもとに,シリーズ名が「直接照 射照明 リング型 DRシリーズ」のように表示され,その下にそのシリーズの特 長や用途の説明が記載されている。
特長等の説明の下には,「仕様」という欄があり,「※ご希望の発光色をク リックしてください。型式が表示されます。」という説明の下に,6色の発光色を10 示す「タブ」が用意されており,「赤色」の「タブ」をクリックすると,「型式」 列に,1文字目に「L」を加えた型式名(例「LDR-40」)及び外径,内径, 消費電力等の仕様の詳細が表示されるため,DRシリーズ,DR-FAシリーズ, DR-FHシリーズ,DR-LAシリーズ,DR-UAシリーズ,DLシリーズ, DLシリーズスクエア型,DL-Sシリーズ,FRシリーズ,FR-LAシリーズ,15 FL-SHシリーズ,FVシリーズを表示するページで,仕様欄の「赤色」の「タ ブ」を選択すると,「型式」の列に,被告標章2の1-1-1ないし1-5-6, 2-1-1-1ないし5-11が表示される。
また,「RGB3色照明 RGBシリーズ」の「仕様」欄のうち「3色リング型」 のタブをクリックすると,被告標章の2の1-6-1及び同1-6-2が表示され,20 「3色ドーム型」のタブをクリックすると,被告標章2の6が表示される。
以上のとおり,被告のウェブサイトにおいて,被告標章2が表示されるのは, するそれ以外の「タブ」を選択した場合に被告標章2が表示されることはないし,25 ブ」の選択に関わりなく,被告標章2が表示されることはない。
カ 製品価格表 34 被告が平成11年に発行した製品価格表(甲28)には,シリーズごとに被 告製品の「型式」,「製品名」,「特徴」,「価格」が記載され,型式名として, 赤色のものは「L」で始まる語頭部分が,白色のものは「W」で始まる語頭部分が 使用されていたことから,「型式」欄の一部に,被告標章2の1-1-1,1-1 5 -3ないし1-1-6,1-4-4,1-4-6ないし1-4-9,1-6-2, 2-1-1-11,2-1-1-20,3-1-1,3-1-2,5-1ないし5 -5,6が記載されている。
被告が平成15年に発行した製品価格表(乙14)には,シリーズ名ごとに 被告製品の名称や価格が記載され,「型式」欄の一部に,被告標章2の3-1-110 ないし3-1-3,5-1ないし5-5が記載されている。
? 原告における標章の使用(甲22,24) ア 平成6年の価格表 原告が,平成6年に超高輝度LEDフラット照明装置等の開発,製造を行い, 平成7年に白色LED照明装置の開発を行ったことは既に認定したとおりであるが,15 原告の平成6年8月20日付け価格表(甲22資料1)では,以下のグループ名ご とに製品をまとめ,グループごとに共通する以下の語頭部分を含む型式名を使用し ている(以下,LEDを使用した照明装置のみ記載する。)。
超高輝度LEDフラット照明 LFL LEDフラットリング照明 LFR20 LEDリング無影照明 LKR LEDダイレクトリング照明 LDR LED.Jリング照明 LJR LED顕微鏡用リング照明 LMR LEDストロボリング照明 LSR25 LED同軸照明 LV LED同軸落射面照明 LFV 35 上述のとおり,平成6年の時点で,後の本件商標2の1,2の3,2の4及 び2の5に相当する語頭部分が型式名として使用されているが,後記平成7年以降 のカタログにあるような発光色の区別が一切存在しないことから,この時点では原 告の製品の発光色はすべて赤であったと考えられ,語頭部分冒頭の「L」は,原告 5 製品中の他の発光形式(冷陰極管,熱陰極管)と区別し,LEDによることを示す ために付されたものと考えられる。
イ 平成7年の価格表 原告の平成7年11月1日付け価格表(甲22資料2)には,前記平成6年 の価格表には存在しなかった語頭部分を有する製品として,LEDストロボ面照明10 (LDS),LEDダイレクト照明(LDL)及びLED四方向斜光照明(LDQ) が加わったほか,LEDダイレクトリング照明の製品の1つに,型式の末尾に「W」 が加えられたものが登場し,これについては白色であることが明記されており,L ED同軸照明の型式の末尾に「R」が加えられたものについては,赤色であること が明記されている。
15 上述のとおり,平成7年の時点で,原告の価格表では,後の本件商標2の2 に相当する語頭部分が使用される一方,発光色の違いは,語頭部分の文字ではなく, 型式末尾の文字で表されていた。
ウ 平成10年の価格表 原告の平成10年12月1日付け価格表(甲22資料3)では,従前の価格20 表には存在しなかった語頭部分を有する製品として,LEDドーム照明(LDM), LED全方向照明(LAV)及びラインセンサー用均一照明(LND)が加わって, 後に本件商標2の6に相当する語頭部分が使用されたほか,従前の価格表と異なり, 語頭部分の冒頭が「L」ではない型式名を有する製品として,正方形型リング照明 (SQR),ロウアングルフラットリング照明(FPR)及びLED四方向面照明25 (FPQ)が加えられた。
また,平成10年の価格表では,従前の価格表に較べて,発光色の多様化, 36 サイズの多様化がすすめられており,発光色として,基本の赤以外に,白,青,緑, 赤外を選択できるシリーズが増えたが,上述のとおり,これらは型式名末尾のアル ファベットにより区別された。
エ その後の使用,商標登録 5 原告は,平成11年3月ころの製品ダイジェスト(甲22の資料5-1), 原告のウェブサイトにおける商品写真(甲10),商品シリーズ別のパンフレット (甲11),プレスリリース(甲12),平成28年のカタログ(甲7)では,商 品シリーズの日本語表記(リング照明等)や,型式名の語頭部分を中心とするシリ ーズ名の欧文字表記(LDR2等)を強調する形で,原告の商品の案内を行ってい10 る。
原告は,平成16年4月12日に本件商標2の出願を行い,平成17年3月 4日までに登録がなされ,同年4月5日までに公報の発行がなされた(甲4)。
原告の平成28年のカタログには,LED照明装置として53のシリーズが 掲載されているが,本件商標2を介して被告標章2と抵触する関係にあるのは,そ15 のうち10シリーズにとどまる。
? 同業他社の型式名(甲14〜19,乙7〜12) ア 産業用LED照明装置を製造,販売する者は,原告,被告以外にも多数存在 するが,これら同業他社においても,多数のシリーズ,発光色,及び寸法等を区別 するため,日本語表記及び欧文字表記によるシリーズ名,発光色や寸法等を加えた20 型式名が使用されている。
イ 上記同業他社における欧文字表記によるシリーズ名及び型式名の作り方は, 当然ながらそれぞれに異なっているが,一般的な傾向としては,各商品またはシリ ーズの特長,構造,機能を略記する日本語表記を考え,これに対応する英単語の頭 文字(LEDはL,リングはR,ダイレクトはD,フラットはF,ローアングルは25 LA,ラインはL等)や会社名の頭文字を組み合わせて欧文字表記のシリーズ名を 考え,これに発光色,寸法等を示す文字,数字を加えて型式名とすることが多い。
37 ウ なお,カタログ等において,型式名の一部に空欄を設けることでそのシリー ズの型式名の一般式を示し,需要者が,その空白部に発光色や寸法等を示す文字, 数字を補充して型式名を完成するという手法については,被告以外に少なくとも3 社がこれを行っている(乙7,8,12)。
5 ? 画像処理用LED照明装置の取引(甲22,29,乙46,63) ア 画像処理用LED照明装置は,事業所において,製品の外観から状態を検査 したり寸法を計測したりするための画像検査処理システムの一部品として使用する ものであり,その主な需要者・取引者は,製造業を中心とした企業や研究機関等の 団体(エンドユーザー)あるいはこれらエンドユーザーへの販売者である商社や画10 像処理システムのメーカー等であり,単価も数万円から数十万円であって,一般家 庭で購入するようなものではない。
イ 各メーカーは,顧客に自らの商品の特徴や優位性を認知させるために,新商 品の発表会,展示会への出展,業界誌への出稿,プレスリリース,ウェブサイト等 において自己の商品の宣伝・広告を行うが,一般的なテレビや新聞等への広告出稿15 を行うことはしない(乙29〜34)。
ウ 以上より,需要者において,画像処理用LED照明装置を購入するにあたっ て重視するのは,当該装置の機能,性能,仕様等が,自己が使用する画像処理装置 に適合するか,画像検査の目的とする最適な画像を取得できるかであって,原告, 被告共に機器の無料貸出しを行っていることから(甲24,26),実際に売買契20 約を締結するまでの間,テスト使用も含め,慎重な検討がなされるものと思われる。
? 被告標章2の識別力 上記?ないし?を前提に,被告標章2が自他識別力,出所識別力を有する態様で 使用されているかにつき検討する。
ア 原告は,長年にわたり,本件商標2を,自らの商品のシリーズ名(全部もし25 くは一部)及び型式の一部として用い,カタログ(甲7)やウェブサイト(甲10), パンフレット(甲11)ではシリーズ名を目立つ位置に表示し,さらにこれと関連 38 付けるように,商品の機能や特長を記載している。また,プレスリリース(甲12), 取引先宛の送付書(甲13),納品書や請求書等においても同シリーズ名を使用し ているから(甲22),これに接する需要者は,本件商標2について,一定の顧客 吸引力,出所表示力があるものとして認識すると解される。
5 しかしながら,被告標章2は,このような形では使用されていない。すなわち, 被告が現在使用する本件カタログにおいて,被告標章2はそもそも表示されていな いし,本件カタログ及びそれ以前のカタログを通覧しても,被告は,被告商品のシ リーズの日本語表記(直接照射リング型等)と語頭部分から発光力を示す文字を除 いたシリーズ名の欧文字表記(DRシリーズ等)を記載した上で,これに関連付け10 る形で当該シリーズの特長や利点を記載しているものであって,発光色を示す文字 を付加した被告標章2に相当する記載については,製品の仕様の詳細を示す一覧表 における型式名の一部として,あるいは製品の仕様及び価格を列挙した価格表にお ける型式名の一部として表示されるにとどまる。
イ 上述したところによれば,被告標章2は,極めて多数の型式が存する被告商15 品の中にあって,基本となる型式,発光色,寸法等を間違いなく発注,納品等し得 るようにする型式名の一部として用いられていると解するのが相当であって,商品 の出所を表示したり,顧客を吸引したりする機能は,基本的に有しないと考えられ る。
また,三色混合シリーズに属する商品については,被告標章2の1-6-1,同20 1-6-2及び同6(LDR-130RGB-T,LDR-120RGB,LDM -70RS-RGB)が,カタログのインデックスページや詳細ページに直接記載 されているが,これは同シリーズにおいては発光色の選択がなく,型式の種類自体 が少ないことによるものであり,その長さや体裁から,型式名が記載されているも のと理解し得る。
25 ウ 原告は,被告標章2に接した需要者は,それが付された商品を原告の商品と 誤認するおそれがあり,被告標章2には,自他識別機能,出所識別機能があると主 39 張する。
しかしながら,前記取引の実情に照らせば,被告商品の購入を検討する者は,カ タログでもウェブサイトでも,シリーズ名の日本語表記や欧文字表記を参照しつつ, その機能や仕様について検討するところ,被告商品の特定の商品の購入を決め,発 5 光色として赤色を選択した後に初めて,被告標章2を含む型式名に接するのである から,この段階に至って商品が原告の物であると認識することは考えにくいし,赤 色以外の発光色を選択して「W」「B」「G」等から始まる型式名に接すれば,原 告の商品とは認識せず,赤色を選択して「L」から始まる型式名でに接すれば,原 告の商品と認識するというのも不合理な考えである。
10 エ 原告は,インターネット上の通信販売サイトにおける検索の結果に原告の商 品と被告商品とが並んで表示されるため,出所混同のおそれがあると主張し,これ を裏付ける証拠を提出する(甲29資料2-1〜3)。
しかし,上記のような取引形態を考慮すれば,産業用LED照明の需要者が,イ ンターネット上の通信販売サイトにおける特定の商品の型式名のみから出所を認識15 し,直ちに商品を購入するとは考えられない。
オ 原告は,原告の商品に付した本件商標2と,被告商品に付した被告標章2が 多数一致するところ,同業他社との関係ではこのようなことは起こっておらず,被 告が,本件商標2の顧客吸引力を利用するために,意図的にまねたとしか考えられ ないと主張する。
20 しかしながら,被告標章2における文字の使用は,Lが赤を表すことは特異であ るものの,Rがリング,Dがダイレクト,Lがラインといった,原告や同業他社が 採用するのと大差ない方法であるし,原告も被告も多数の商品シリーズ,型式を有 しているところ,本訴訟の対象となったのはそのごく一部であって,原告の型式名 の大部分を,被告が模倣したというような関係にはない。
25 前記認定したとおり,原告が若干先行するとはいえ,LED照明装置が開発され た当初から,原告と被告は,相前後するように,順次型式を増やしてきており,被 40 告標章2のうちの最も古いものは,原告が本件商標2を出願する相当以前から,現 在まで約20年間にわたって使用されているものであり,被告に,原告が主張する ような不正な意図があったと考えることは困難である。
? まとめ 5 以上検討したところを総合すると,被告標章2は,被告商品の内部でこれを区別 するための型式名の一部として用いられており,商品の出所を識別し得る態様では 使用されておらず,商標としては使用されていないと認められるから,商標法26 条1項6号の抗弁が成立するので,他の争点について検討するまでもなく,本件商 標2に基づく原告の請求は,理由がないということになる。
10 6 争点?(損害額)について 被告が被告標章1を使用したことによる原告の損害額,被告の不当利得について 検討する。なお,本件商標1登録後の平成23年9月1日から平成29年7月31 日までの被告の売上を算定の基礎とすることに争いはない。
? 損害の基礎となる金額15 ア 被告商品の売上総額 被告における平成24年12月1日から平成25年10月31日までの被告商品 の売上高は3億0191万5347円,同年11月1日から平成29年7月31日 までの売上高は12億5406万9731円,合計15億5598万5078円で あった(争いなし)。
20 (計算式)301,915,347円+1,254,069,731円=1,5 55,985,078円 なお,原告は,平成23年9月1日から平成25年10月31日の間について不 当利得の返還を請求するが,被告は,平成24年12月1日から平成25年10月 31日までの間の売上高を開示し,その額は上記のとおり3億0191万534725 円である。原告は,同額を平成23年9月1日から平成25年10月31日までの 算定の基礎として認めた。
41 イ 被告標章2を付した商品の売上額 一方,被告商品のうち,被告標章2を付した被告商品1-1-1ないし6の,平 成18年11月1日から平成25年10月31日までの売上高は4848万183 0円,同年11月1日から平成29年7月31日までの売上高は2012万646 5 0円,合計6860万8290円であった(争いなし)。
(計算式)48,481,830円+20,126,460円=68,608, 290円 ウ 算定の基礎となる金額 そうすると,原告が算定の基礎として主張する,平成23年9月1日から平成210 9年7月31日までの「被告標章1固有の販売額」は,それぞれの期間につき上記 アの額から上記イの額を控除し,平成23年9月1日から平成25年10月31日 まで(不当利得返還請求がなされている期間)は2億5343万3517円,同年 11月1日から平成29年7月31日まで(不法行為に基づく損害賠償請求がなさ れている期間)は12億3394万3271円,合計14億8737万6788円15 となる。 (計算式)301,915,347円-48,481,830円=25 3,433,517円 1,254,069,731円-20,126,460円=1,233,943, 271円 253,433,517円+1,233,943,271円=1,487,3720 6,788円 ? 使用料相当額 被告標章1は,本件カタログの比較的目立つ位置に掲載されているところ,顧客 がこれに目にする可能性は高く,「照明の解決」という意味内容は,被告商品及び 役務の特長を直接的に表すものであり,一定の顧客吸引力を有すると認められるが,25 照明装置のカタログに付すものとしては,常識的な発想の範囲内の言葉である。
一方で,前記5?のとおり,画像処理用LED照明装置の需要者・取引者が商品 42 に求めるものは特定の機能や性能であり,一定期間の検討を経て購入の決定に至る のが一般的と考えられ,一般家庭用の商品でもないから,カタログに記載された文 言が顧客を強く吸引したり,購入の有無に強く影響するということも考え難い。ま た,被告標章1は,平成27年の本件カタログには使用されているものの,従前の 5 カタログ(平成8年,11年,15年,16年)には使用されておらず,価格表や ウェブサイト,あるいは被告商品自体に付された事実もなく,被告標章1が,被告 商品に関する惹句として,あるいは企業としての被告自体を需要者に印象付ける語 句として,継続的に,あるいは広範囲に使用されたとの事実を認めることはできな い。
10 よって,上記認定した被告標章1の顧客吸引力の程度,被告標章1使用の態様を 総合すると,被告標章1が被告の取引に影響した程度はゼロに近いというべきであ るが,最低限商標権侵害を免れるために支払うべき許諾料相当額は,不法行為及び 不当利得に基づく請求のいずれの期間においても,算定の基礎となる被告の売上高 の0.1%と認めることが相当であるから,その額は148万7377円となる。
15 (計算式)1,487,376,788円×0.1%=1,487,377円 7 差止めの必要性 被告は,本件カタログに被告標章1を付して頒布しているところ,これが商標権 侵害であることを争っており,今後も被告標章1を付したカタログ等の広告や取引 書類を展示・頒布したり,被告商品の広告を内容とする情報に被告標章1を付して20 電磁的方法により表示したりするおそれがあるから,その差止めと,本件カタログ からの被告標章1の削除を命ずる必要がある。
8 結論 以上によれば,原告の本件商標1に基づく請求は,商標法36条1項,同条2項 に基づき,被告標章1を付した広告の展示等の差止め及び取引書類からの同標章の25 削除を求め,並びに,@民法703条に基づき,不当利得金25万3434円及び これに対する請求(被告が原告第5準備書面を受領した平成30年1月16日)の 43 後の日である同月23日から,A民法709条,商標法38条3項に基づき,損害 賠償金123万3943円(@との合計148万7377円)及びこれに対する不 法行為後の日である同日から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合によ る遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余の請求は理由が 5 ないから棄却し,本件商標2に基づく請求は,その余の点について検討するまでも なく,いずれも理由がないから棄却する。なお,主文第1項ないし第3項について の仮執行宣言は相当でないから,これを付さない。
よって,主文のとおり判決する。
追加
20裁判官野上誠一2544 裁判官島村陽子45 別紙登録商標目録51登録商標1登録番号第5424038号登録商標出願日平成23年1月27日登録日平成23年7月8日10商品及び役務の区分第11類,第41類等指定商品及び役務発光ダイオードを用いた照明器具等(第11類),光の当て方に関する技術又は知識の教授等(第41類)等152(1)登録商標2の1登録番号第4843550号登録商標「LDR」(標準文字)出願日平成16年4月12日登録日平成17年3月4日20商品の区分第11類指定商品発光ダイオードを用いた照明器具等(2)登録商標2の225登録番号第4826334号46 登録商標「LDL」(標準文字)出願日平成16年4月12日登録日平成16年12月17日商品の区分第11類5指定商品発光ダイオードを用いた照明器具等(3)登録商標2の3登録番号第4843551号登録商標「LFR」(標準文字)10出願日平成16年4月12日登録日平成17年3月4日商品の区分第11類指定商品発光ダイオードを用いた照明器具等15(4)登録商標2の4登録番号第4826335号登録商標「LFL」(標準文字)出願日平成16年4月12日登録日平成16年12月17日20商品の区分第11類指定商品発光ダイオードを用いた照明器具等(5)登録商標2の5登録番号第4826336号25登録商標「LFV」(標準文字)出願日平成16年4月12日47 登録日平成16年12月17日商品の区分第11類指定商品発光ダイオードを用いた照明器具等5(6)登録商標2の6登録番号第4843552号登録商標「LDM」(標準文字)出願日平成16年4月12日登録日平成17年3月4日10商品の区分第11類指定商品発光ダイオードを用いた照明器具等以上48 別紙被告標章目録15以上49 別紙被告標章目録21-1-1LDR-4051-1-2LDR-501-1-3LDR-701-1-4LDR-901-1-5LDR-1101-1-6LDR-140101-1-7LDR-1801-1-8LDR-2201-1-9LDR-2501-1-10LDR-2901-2-1LDR-FA34151-2-2LDR-FA501-2-3LDR-FA701-2-4LDR-FA901-2-5LDR-FA1101-2-6LDR-FA140201-2-7LDR-FA2201-3-1LDR-FH851-3-2LDR-FH1241-3-3LDR-FH1541-3-4LDR-FH223251-3-5LDR-FH2731-3-6LDR-FH35350 1-4-1LDR-LA501-4-2LDR-LA50B1-4-3LDR-LA741-4-4LDR-LA10051-4-5LDR-LA120N1-4-6LDR-LA1401-4-7LDR-LA1801-4-8LDR-LA2001-4-9LDR-LA220101-5-1LDR-UA501-5-2LDR-UA751-5-3LDR-UA961-5-4LDR-UA1221-5-5LDR-UA152151-5-6LDR-UA2061-6-1LDR-130RGB-T1-6-2LDR-120RGB2-1-1-1LDL-12122-1-1-2LDL-2710202-1-1-3LDL-50092-1-1-4LDL-100092-1-1-5LDL-25152-1-1-6LDL-40152-1-1-7LDL-5015252-1-1-8LDL-60152-1-1-9LDL-841551 2-1-1-10LDL-100152-1-1-11LDL-132152-1-1-12LDL-200152-1-1-13LDL-2601552-1-1-14LDL-300152-1-1-15LDL-350152-1-1-16LDL-400152-1-1-17LDL-50272-1-1-18LDL-7227102-1-1-19LDL-100272-1-1-20LDL-146272-1-1-21LDL-200272-1-1-22LDL-300272-1-1-23LDL-35627152-1-1-24LDL-400272-1-1-25LDL-500272-1-1-26LDL-600272-1-1-27LDL-700272-1-1-28LDL-10050202-1-1-29LDL-150502-1-1-30LDL-200502-1-1-31LDL-300502-1-1-32LDL-400502-1-1-33LDL-50050252-1-1-34LDL-600502-1-2-1LDL-252552 2-1-2-2LDL-50502-1-2-3LDL-70752-1-2-4LDL-70952-1-2-5LDL-6012052-1-2-6LDL-601502-1-2-7LDL-80802-1-2-8LDL-C08122-1-2-9LDL-C10122-1-2-10LDL-C1212102-1-2-11LDL-C10182-1-2-12LDL-C10222-1-2-13LDL-C10302-1-2-14LDL-C10602-1-2-15LDL-C1434152-1-2-16LDL-C15152-1-2-17LDL-C15212-1-2-18LDL-C20202-1-2-19LDL-C20302-1-2-20LDL-C2426202-1-2-21LDL-C30302-1-2-22LDL-C30502-2-1LDL-S27102-2-2LDL-S50152-2-3LDL-S7227252-2-4LDL-S146273-1-1LFR-100-253 3-1-2LFR-130-23-1-3LFR-150-23-1-4LFR-200-23-2-1LFR-LA10053-2-2LFR-LA1403-2-3LFR-LA1803-2-4LFR-LA2004-1LFL-SH354-2LFL-SH51104-3LFL-SH784-4LFL-SH995-1LFV-205-2LFV-405-3LFV-50155-4LFV-705-5LFV-1005-6LFV-1305-7LFV-1805-8LFV-230205-9LFV-50405-10LFV-150505-11LFV-150706LDM-70RS-RGB以上2554 別紙被告商品目録商品名を下記とする発光ダイオードを用いた照明器具5記【1-1直接照射リング型DRSERIESのうち発光色赤色の商品】1-1-1LDR-401-1-2LDR-501-1-3LDR-70101-1-4LDR-901-1-5LDR-1101-1-6LDR-1401-1-7LDR-1801-1-8LDR-220151-1-9LDR-2501-1-10LDR-290【1-2直接照射フラットリング型DR-FASERIESのうち発光色赤色の商品】201-2-1LDR-FA341-2-2LDR-FA501-2-3LDR-FA701-2-4LDR-FA901-2-5LDR-FA110251-2-6LDR-FA1401-2-7LDR-FA22055 【1-3ハイパワーフラットリング型DR-FHSERIESのうち発光色赤色の商品】1-3-1LDR-FH8551-3-2LDR-FH1241-3-3LDR-FH1541-3-4LDR-FH2231-3-5LDR-FH2731-3-6LDR-FH35310【1-4直接照射ローアングルリング型DR-LASERIESのうち発光色赤色の商品】1-4-1LDR-LA501-4-2LDR-LA50B151-4-3LDR-LA741-4-4LDR-LA1001-4-5LDR-LA120N1-4-6LDR-LA1401-4-7LDR-LA180201-4-8LDR-LA2001-4-9LDR-LA220【1-5水平照射リング型DR-UASERIESのうち発光色赤色の商品】251-5-1LDR-UA501-5-2LDR-UA7556 1-5-3LDR-UA961-5-4LDR-UA1221-5-5LDR-UA1521-5-6LDR-UA2065【1-63色混合シリーズRGBSERIES3色リング型】1-6-1LDR-130RGB-T1-6-2LDR-120RGB10【2-1-1直接照射バー型DLSERIESのうち発光色赤色の商品】2-1-1-1LDL-12122-1-1-2LDL-27102-1-1-3LDL-5009152-1-1-4LDL-100092-1-1-5LDL-25152-1-1-6LDL-40152-1-1-7LDL-50152-1-1-8LDL-6015202-1-1-9LDL-84152-1-1-10LDL-100152-1-1-11LDL-132152-1-1-12LDL-200152-1-1-13LDL-26015252-1-1-14LDL-300152-1-1-15LDL-3501557 2-1-1-16LDL-400152-1-1-17LDL-50272-1-1-18LDL-72272-1-1-19LDL-1002752-1-1-20LDL-146272-1-1-21LDL-200272-1-1-22LDL-300272-1-1-23LDL-356272-1-1-24LDL-40027102-1-1-25LDL-500272-1-1-26LDL-600272-1-1-27LDL-700272-1-1-28LDL-100502-1-1-29LDL-15050152-1-1-30LDL-200502-1-1-31LDL-300502-1-1-32LDL-400502-1-1-33LDL-500502-1-1-34LDL-6005020【2-1-2直接照射スクエア型DLSERIESのうち発光色赤色の商品】2-1-2-1LDL-25252-1-2-2LDL-5050252-1-2-3LDL-70752-1-2-4LDL-709558 2-1-2-5LDL-601202-1-2-6LDL-601502-1-2-7LDL-80802-1-2-8LDL-C081252-1-2-9LDL-C10122-1-2-10LDL-C12122-1-2-11LDL-C10182-1-2-12LDL-C10222-1-2-13LDL-C1030102-1-2-14LDL-C10602-1-2-15LDL-C14342-1-2-16LDL-C15152-1-2-17LDL-C15212-1-2-18LDL-C2020152-1-2-19LDL-C20302-1-2-20LDL-C24262-1-2-21LDL-C30302-1-2-22LDL-C305020【2-2角形斜光照射型DL-SSERIESのうち発光色赤色の商品】2-2-1LDL-S27102-2-2LDL-S50152-2-3LDL-S7227252-2-4LDL-S1462759 【3-1無影フラットリング型FRSERIESのうち発光色赤色の商品】3-1-1LFR-100-23-1-2LFR-130-253-1-3LFR-150-23-1-4LFR-200-2【3-2無影ローアングルリング型FR-LASERIESのうち発光色赤色の商品】103-2-1LFR-LA1003-2-2LFR-LA1403-2-3LFR-LA1803-2-4LFR-LA20015【4無影角形照射型FL-SHSERIESのうち発光色赤色の商品】4-1LFL-SH354-2LFL-SH514-3LFL-SH784-4LFL-SH9920【5同軸落射型FVSERIESのうち発光色赤色の商品】5-1LFV-205-2LFV-405-3LFV-50255-4LFV-705-5LFV-10060 5-6LFV-1305-7LFV-1805-8LFV-2305-9LFV-504055-10LFV-150505-11LFV-15070【63色混合シリーズRGBSERIES3色ドーム型】6LDM-70RS-RGB10以上61
裁判長裁判官 15谷有恒