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関連審決 不服2020-1707
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事件 令和 2年 (行ケ) 10086号 審決取消請求事件

原告 ウィルファーム株式会社
訴訟代理人弁理士 小林正樹
被告特許庁長官
指定代理人青野紀子 山田正樹 石塚利恵
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2020/12/23
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2020-1707号事件について令和2年6月8日にした審 決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(弁論の全趣旨) ? 原告は,平成29年11月22日,「AZURE」の文字を標準文字で表し てなる商標(以下「本願商標」という。)について,指定商品ないし指定役務 を第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料」,第5類「薬剤(農薬 に当たるものを除く。),サプリメント」,第35類「化粧品・歯磨き及びせ 1 っけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供, 香料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薫料 の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤及び 医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供, サプリメントの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提 供,飲食料品(酒類を除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対 する便益の提供」,第44類「美容,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプ ラクティック,きゅう,柔道整復,はり治療,医療情報の提供,健康診断,栄 養の指導,介護,医療用機械器具の貸与,美容院用または理髪店用の機械器具 の貸与」とする商標登録出願をした。
(2) 原告は,令和元年10月31日付けの拒絶査定を受けたため,令和2年2 月7日,拒絶査定不服審判を請求した。
特許庁は上記請求を不服2020-1707号事件として審理を行い,同 年6月8日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審 決」という。)をし,その謄本は,同月23日,原告に送達された。
(3) 原告は,令和2年7月21日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起 した。
2 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。
その要旨は,本願商標は,本願の出願日前の商標登録出願に係る「AZUL E」の文字を標準文字で表してなる登録商標(商標登録第5454302号。出 願日・平成22年9月30日,優先権主張・平成22年8月26日米国,登録日 ・平成23年12月2日,指定商品ないし指定役務・第10類「心臓カテーテ ル,血管カテーテル,カテーテル用ガイドワイヤ,カテーテル挿入用装置,ステ ント,その他の医療用機械器具」,第44類「医療情報の提供,医療用機械器具 の貸与」。以下「引用商標」という。乙1)と類似する商標であり,本願の指定 2 役務中の第44類「医療情報の提供,健康診断,医療用機械器具の貸与」は,引 用商標の指定役務中の第44類「医療情報の提供,医療用機械器具の貸与」と同 一又は類似の役務であるから,本願商標は,商標法4条1項11号に該当し,登 録することができないというものである。
3 取消事由 本願商標の商標法4条1項11号該当性の判断の誤り
当事者の主張
1 原告の主張 (1) 本願商標の称呼の認定の誤り 本件審決は,本願商標の称呼について,商標がそれ自体あまり知られてい ない欧文字からなる場合,英語風又はローマ字風の読み方に倣って称呼され るとみるのが自然であり,本願商標は,英語風の読み方に倣って「アジュア」 の称呼を生ずるほか,ローマ字風の読み方に倣って「アズレ」の称呼をも生ず るというのが相当であると判断した。
しかし,本願商標は,「pure」,「cure」,「secure」等の 語尾に「ure」を有する英単語と同様に英語として自然な文字の並びであ ることに加え,例えば広く知られているマイクロソフト社のクラウドプラッ トフォーム「Microsoft Azure」に使用されているように,我 が国において認知されている語といえるため,英語の読み方に倣って称呼さ れるとみるのが自然である。そうすると,本願商標は,英語の読み方に倣う と,語尾に「ure」を有する英単語の「pure(ピュア)」,「cure (キュア)」,「secure(セキュア)」等と同様に「アジュア」の称呼 か「アジュール」の称呼を生ずるのが自然である。
(2) 本願商標と引用商標の類否判断の誤り ア 外観について 本件審決は,本願商標と引用商標は,いずれも標準文字で表された欧文 3 字の5文字からなるものであって,語頭を含めた3文字目までの「AZU」 及び語尾の「E」のつづりを共通にする一方,異なるところは,4文字目の 「R」の文字と「L」の文字との差にすぎないから,全体の外観において類 似するものであると判断した。
しかしながら,本願商標と引用商標は,5文字という少ない文字構成か らなる商標において,4文字目の「L」と「R」において相違するものであ ることから,当該差異が全体に与える影響は大きい。本願商標と引用商標 の共通の指定役務である第44類「医療情報の提供,医療用機械器具の貸 与」という医療を扱う分野においては,人の命にも関わることであること から,常に細心の注意力が求められる。このような場面では, 「L」 「R」 と の相違は容易に判別できるもので,両商標は,外観上,区別し得るものであ る。
称呼について 本件審決は,本願商標と引用商標とは,「アズレ」の称呼を共通にするも のであると判断した。
しかし,前記(1)のとおり,本願商標は,「アジュア」あるいは「アジュ ール」と称呼されるのに対して,引用商標は,造語でありローマ字風の読み 方に倣って「アズレ」と称呼されるため,本願商標と引用商標とは,称呼が 相違する。
観念について 本件審決は,本願商標と引用商標とは,両者とも特定の観念を生じない から,観念については比較できないと判断した。
しかし,本願商標は,「空色,青空」の観念を有するのに対して,引用商 標は,造語であり特定の観念を生じないため,本願商標と引用商標とは,観 念が相違する。
エ 本願商標と引用商標の類否 4 アないしウによれば,本願商標と引用商標とは,外観,称呼,観念のいず れにおいても類似しない。
(3) 小括 以上によれば,本願商標は,引用商標に類似しないから,本願商標は,商標 法4条1項11号に該当しない。
したがって,本願商標の同号該当性を認めた本件審決の判断には誤りがあ る。
2 被告の主張 (1) 本願商標の称呼の認定について 「AZURE」の文字は,「空色,青空」の意味を有し,「アジュア」と発 音される英語(乙2)として辞書に載録された既成語ではあるが,我が国にお いて,中学校義務教育期間,あるいは高等学校における教育期間等に学ぶべ き必須の英単語には含まれておらず,比較的難しい英単語であること(乙3 ないし8),また,本願の指定役務の需要者には,一般の消費者も含まれるこ とから,これら取引者,需要者を基準にすると,上記辞書における語義が広く 一般に知られたものということはできない。さらに,本願の指定役務の分野 において,「AZURE」の文字が,特定の意味合いを有する語として知られ ているとの事情も見いだせない。
そうすると,「AZURE」の文字に接する取引者,需要者が,直ちに「空 色,青空」の意味を想起することが一般的であるとまではいい難いことから, 本願商標は特定の意味合いを想起させない一種の造語として看取されること も少なくないものといえる。一般に,欧文字で構成される馴染みのない語の 称呼を特定する場合,我が国におけるローマ字教育の状況及び英語の普及率 や使用頻度が他の外国語に比べて非常に高いことに照らせば,これに接する 取引者,需要者は,自己の有するローマ字及び英語の知識を基に,当該欧文字 の読みを特定して称呼する場合が多いということができる。そして,「AZU 5 RE」の文字は,母音と子音の規則的な並び方から,ローマ字表記を容易に想 起させ,その構成文字に相応して,ローマ字読みの「アズレ」との称呼が自然 に生じる。
また,「AZURE」の文字を英語読みする場合,その構成中の「URE」 を含む英単語として「sure」(シュア)や「cure」(キュア)が,我 が国においてよく知られた英単語であることから,それらの英語の発音に即 して,「アジュア」と称呼されるものといえる。
さらに,本願商標と同一のつづりからなる語を,特定の分野において,「ア ズール」と称呼している事例も見受けられ(乙9ないし22),そのような発 音に馴染みのある需要者が本願商標に接した場合,「アズール」の称呼をも生 じるといえる。
なお,原告が例示する「Microsoft Azure」と称するマイク ロソフト社のクラウドサービスの需要者は,主にIT業界の従業者が考えら れるところ,それらの需要者の間でも,当該「Azure」の文字について, 「アジュア」のほか,「アズレ」と称呼する者,「アズール」と称呼する者も 一定数いることが見受けられ(乙9ないし14,26) このことは, , 一般に, 欧文字で構成される馴染みのない語の称呼を特定する場合,需要者は,自己 の有するローマ字及び英語の知識や,自己の有する知見を基に,当該欧文字 の読みを特定して称呼するということを裏付けるものといえる。
以上によれば,本願商標は,構成文字に相応して,「アジュア」の称呼の他 に,「アズレ」又は「アズール」の称呼をも生じるというべきである。
したがって,原告の上記主張は,失当である。
(2) 本願商標と引用商標の類否判断について ア 外観について (ア) 本願商標及び引用商標は,いずれも標準文字で表された5文字のア ルファベットからなるものであり,4文字目を除いては,同じA, U, Z, 6 Eのアルファベットが,同じ順序で配され,使用される文字とその配列 が近似している。また,両商標は,等間隔のアルファベットにより,ひと かたまりでまとまりよく構成されている。
使用される文字とその配列が近似していることから,両商標は,外観 において,相紛らわしいものといえる。
(イ) 確かに,医療の現場においては,誤処方,誤調剤等のないように,医 師や薬剤師等には,高度の注意力が要求されている。しかし,だからとい って,およそ医療に関する指定役務の取引者,需要者である医師,薬剤師 等の医療関係者であれば,名称について混同するおそれはないというこ とはできないのであって,現に,厚生労働省の医療安全対策ネットワー ク事業の下で報告された「ヒヤリ・ハット事例収集・分析」(乙27)に おいては,例えば,名称について混同した事例として,薬剤名の称呼及び 外観が似ていたことを要因とする事例や,医療材料の名称確認が不十分 であったことを要因とする事例も報告されている(乙28ないし34)。
そうすると,医療の現場では,医療関係者が,一般に高度の注意力が要 求されていることを考慮しても,なお,本願商標と引用商標を時と所を 異にして離隔的に観察した場合,両商標は,外観において,相紛らわしい というべきである。
まして,役務の需要者には,医療患者や,病気の予防・健康の増進を求 める一般の消費者も含まれるため,これらの一般の消費者が通常有する 注意力を踏まえると,本願商標と引用商標とは,外観において,相紛らわ しいものである。
称呼について 前記?のとおり,本願商標からは, 「アジュア」の称呼の他に, 「アズレ」 又は「アズール」の称呼をも生じ,引用商標からは,ローマ字風の読み方に 倣って「アズレ」の称呼が生じるほか,「AZULE」の文字を英語読みす 7 る場合,その構成中の「ULE」を含む英単語として「rule」(ルー ル),「schedule」(スケジュール)や「module」(モジュ ール)が,我が国においてよく知られた英単語であることから,それらの英 語の発音に即して,「アズール」の称呼も生じる。そうすると,本願商標と 引用商標とは,「アズレ」又は「アズール」の称呼において,共通する。
よって,本願商標と引用商標とは,称呼においても類似するものである。
観念について 前記(1)のとおり,「AZURE」の文字は,我が国において,中学校義 務教育期間,あるいは高等学校における教育期間等に学ぶべき必須の英単 語には含まれておらず,比較的難しい英単語であること,また,本願の指定 役務(「健康診断」等)の需要者には,一般の消費者も含まれることから, これら取引者,需要者を基準にすると,上記辞書における語義が広く一般 に知られたものということはできない。そうすると,必ずしも,本願商標か ら特段の観念が生じるとはいえない。
よって,本願商標と引用商標とは,観念において比較できないものであ る。
エ 本願商標と引用商標の類否 前記アないしウによれば,本願商標と引用商標とは,観念において比較 できないものの,外観は紛らわしいものであり,共通の称呼を生じるもの である。
本願の指定役務と引用商標の指定役務の需要者である一般の消費者が通 常有する注意力を踏まえると,これらの一般の消費者が必ずしも商標の構 成を細部にわたって記憶して取引するとはいえないことから,本願商標と 引用商標を時と所を異にして離隔的に観察した場合,役務の出所の誤認混 同を生ずるおそれがあるといえる。
したがって,本願商標と引用商標とは,互いに相紛れるおそれのある類 8 似の商標というべきである。
(3) 本願の指定役務と引用商標の指定役務の類否について 本願の指定役務である第44類「医療情報の提供,健康診断,医療用機械器 具の貸与」は,引用商標の指定役務の第44類「医療情報の提供,医療用機械 器具の貸与」と同一又は類似する役務である。
(4) 小括 以上によれば,本願商標は,引用商標に類似する商標であり,かつ,引用商 標の指定役務と同一又は類似する役務について使用するものであるから,本 願商標は,商標法4条1項11号に該当する。
したがって,本願商標の同号該当性を認めた本件審決の判断には誤りはな い。
当裁判所の判断
1 本願商標の称呼の認定の誤りについて (1) 本願商標は,「AZURE」の欧文字を表してなる。「azure」は, 「空色,青空」の意味を有し,「アジュア」と発音される英単語として辞書 (乙2。ジーニアス英和辞典 第5版,2014年12月25日発行。)に掲 載されているが,中学生向け(乙2ないし6)や高校生向け(乙7)の学習書 で覚えておくべき単語として挙げられていないことはもちろん,TOEIC の制作機関が提供するボキャブラリーブック(乙8。国際的なビジネスの場 で一般的に使われる語彙を集めている。 でも取り扱われておらず, ) 我が国に おいてその意味が広く一般に知られている語とは認められず,また,本願商 標の指定商品指定役務の分野において,特定の意味合いを有する語として 知られているとの事情も見いだせない。そうすると,需要者から,一種の造語 として看取されることもあるものといえる。
それ自体あまり知られていない欧文字からなる商標は,一般的には,我が 国において広く親しまれている英語風又はローマ字風の読み方に倣って称呼 9 されるとみるのが自然であるから,本願商標は,英語風の読み方に倣って「ア ジュア」の称呼を生ずるほか,ローマ字風の読み方に倣って「アズレ」の称呼 をも生ずると認めるのが相当である。
(2) 原告は,本願商標は,「pure」,「cure」,「secure」等 の語尾に「ure」を有する英単語と同様に,英語として自然な文字の並びで あることに加え,広く知られているマイクロソフト社のクラウドプラットフ ォーム「Microsoft Azure」に使用されているように,我が国 において認知されている語といえるため,英語の読み方に倣って称呼される とみるのが自然であると主張する。
しかし,前記(1)で判断したところに照らせば,「azure」は,「pu re」,「cure」,「secure」等の英単語のように一般に知られて いるとは認められない。そして,マイクロソフト社のクラウドプラットフォ ーム「Microsoft Azure」については,一般のビジネスにおい て幅広く使われていると認めるに足りる証拠はない上,「Azure」の称呼 も,「アジュア」のほか「アズレ」とされる場合,「アズール」とされる場合 もあり(乙9ないし14,26),大手企業が上記クラウドプラットフォーム を採用する場合に「アズール」と呼んでいる場合もある(乙10,11)。
また,イギリスの自動車のブランド「AZURE」も「アズール」と称呼さ れ(乙15ないし19),ステッドマン医学大辞典第5版(乙21,2002 年2月20日)では一群の異染性塩基性青色メチルチオニン又はフェノチア ジン色素を示す用語「azure」を「アズール」と称呼し,南山堂医学大辞 典第20版(乙22,2015年4月1日)は,「アズール」の語を,英語a zureに由来し,アズール顆粒やギムザ染色を示すものとして挙げている。
したがって,引用商標から「アジュア」の称呼のみが生じるとはいえず,原 告の主張は採用できない。
2 本願商標と引用商標の類否判断の誤りについて 10 ? 外観について ア 本願商標は「AZURE」と,引用商標は「AZULE」と,いずれも標 準文字で表された欧文字の大文字の5文字からなる。
両者は,4文字目の「R」と「L」を除き一致するので,全体として類似 するというべきである。
イ 原告は,5文字という少ない文字構成からなる商標において,4文字目 の「L」と「R」において相違するものであることから,当該差異が全体に 与える影響は大きいと主張するが,表音文字である英文字において,当該 差異が大きいものとはいえない。
また,原告は,常に細心の注意力が求められる本願商標と引用商標に共 通する指定役務である第44類「医療情報の提供,医療用機械器具の貸与」 という医療を扱う分野においては,人の命にも関わることであることから, 「L」と「R」の相違は容易に判別できると主張する。しかし,同指定役務 の需要者である医療従事者でも,薬剤名の間違いによる投与ミス等が報告 されている(乙27ないし34)。また,前記指定役務の需要者には,医療 情報の提供や,医療用機械器具の貸与を受ける一般の消費者を含むもので あり,その場合は,両商標を注意深く観察して役務の出所を識別するとい うよりは,むしろ,商標全体から受ける印象ないし認識によって役務の出 所を識別する場合が少なくないものといえ,欧文字からなる一般に知られ ていない語相互の一文字の差異の判別が容易であるとはいえない。したが って,原告の主張は採用できない。
(2) 称呼について ア 前記1?のとおり,本願商標は,英語風の読み方に倣って「アジュア」の 称呼を生ずるほか,ローマ字風の読み方に倣って「アズレ」の称呼をも生ず る。また,イギリスの自動車のブランドや,医学用語に由来して,「アズー ル」の称呼が生じる場合もあるといえる。
11 引用商標は,辞書等に掲載のない語であり,また,本願商標の指定商品指定役務の分野において,特定の意味合いを有する語として知られている との事情も見いだせないから,一種の造語として看取されるものであると ころ,前記1(1)のとおり,それ自体あまり知られていない欧文字からなる 商標は,一般的には,英語風又はローマ字風の読み方に倣って称呼される とみるのが自然であるから,引用商標は,ローマ字風の読み方に倣って, 「アズレ」の称呼が生じる。
よって,本願商標と引用商標とは,「アズレ」の称呼を共通にし,称呼に おいて類似するものであるということができる。
イ 原告は,本願商標は,「アジュア」あるいは「アジュール」と称呼される (なお,「アジュール」との称呼を生ずる根拠については何らの説明もな い。)のに対して,引用商標は,造語でありローマ字風の読み方に倣って 「アズレ」と称呼されるため,本願商標と引用商標とは,称呼が相違すると 主張するが,本願商標においてローマ字風の読み方に倣って「アズレ」の称 呼をも生じることは前示のとおりであって,採用できない。
(3) 観念について ア 本願商標に係る「AZURE」が英語として我が国で広く認識されてい るとはいえないことは前記1?認定のとおりであり,引用商標が一種の造 語として認識されることは前記?アのとおりであるから,本願商標と引用 商標は,いずれも特定の観念を生じない。
そうすると,本願商標と引用商標は観念において比較できない。
イ 原告は,本願商標は,「空色,青空」の観念を有するのに対して,引用商 標は,造語であり特定の観念を生じないため,本願商標と引用商標とは,観 念が相違すると主張するが,本願商標に係る「AZURE」が英語として我 が国で広く認識されているとはいえないことは前示のとおりであるから, 「空色,青空」の観念が生ずるとはいえず,採用できない。
12 ? 本願商標と引用商標の類否について 本願商標と引用商標とは,観念において比較できないとしても,外観にお いて類似し,「アズレ」の称呼を共通にするものであり,これらを総合すれ ば,互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
3 本願の指定役務と引用商標の指定役務の類否について 本願の指定役務のうち,第44類「医療情報の提供,健康診断,医療用機械器 具の貸与」は,引用商標の指定役務のうち,第44類「医療情報の提供,医療用 機械器具の貸与」と同一又は類似の役務である。
4 結論 以上によれば,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした本件審決 の判断に誤りはない。そうすると,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審決 にこれを取り消すべき違法は認められない。
したがって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 菅野雅之
裁判官 本吉弘行
裁判官 岡山忠広