関連審決 | 取消2002-30666 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成17行ケ10826審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 包装 / 指定商品 / 指定役務 / 立体的形状 / 不使用 / 通常使用権 / 専用使用権 / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 取引の実情 / 国内 / 使用許諾 / 正当な理由 / 外国 / 継続 / |
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事件 |
平成
15年
(行ケ)
488号
審決取消請求事件
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原告A 同訴訟代理人弁護士 鈴木勝利 同 丸山 恵一郎 同 大野徹也 同 佐野知子 同 崔宗樹 同訴訟代理人弁理士 河野昭 同訴訟復代理人弁理士 穂坂道子 被告 帝人ファイバー株式会社 同訴訟代理人弁理士 三原秀子 同 鈴木雅彦 同 尾仲理香 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2004/01/28 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が取消2002-30666号事件について平成15年6月30日にした審決を取り消す。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告 主文第1,2項と同旨 |
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前提となる事実(証拠を掲記したもの以外は当事者に争いがない。)
1 特許庁における手続の経緯 (1)ア 帝人株式会社(以下「帝人」という。)は,「メンデル」の片仮名文字と「MENDEL」の欧文字を上下2段に横書きしてなり,商標法施行令1条別表第25類の「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,靴下,スカーフ,手袋,ネクタイ,ずきん,帽子,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品とする登録第3232197号商標(平成5年9月20日登録出願。平成8年12月25日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者であった。 イ 帝人は,カーク株式会社(以下「カーク社」という。)との間で「商標使用における契約」(以下「本件契約」という。)を締結し,カーク社に対し,平成13年3月1日から平成16年2月末日まで,本件商標の通常使用権を許諾した。被告は,平成14年4月1日,帝人のポリエステル衣料繊維事業部門が分社化され発足した会社であるところ,帝人から本件商標権の譲渡を受け,同年4月8日,その旨の移転登録を受けるとともに,帝人とカーク社との間の本件契約における通常使用権許諾者の地位を承継した(甲1,2,乙1,2,3の(1),(2),4,弁論の全趣旨)。 (2) 原告は,平成14年6月11日,特許庁に対し,被告を被請求人として,本件商標の登録を商標法50条の規定により取り消すことについて審判を請求した。 そして,上記審判請求の予告登録が同年7月3日にされた(甲1)。 (3) 特許庁は,原告の上記請求を取消2002-30666号事件として審理を行った上,平成15年6月30日,「本件審判の請求は,成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は同年7月10日に原告に送達された。 2 本件審決の理由の要旨 (1) 通常使用権者による本件商標の使用の有無について 本件契約によれば,本件商標の使用は,カーク社が製造・加工し,日本国内で販売する「ドレスシャツ」(以下「本件使用商品」という。)に限るものとされている。 被告(被請求人)提出の証拠から認められる事実を総合すると,カーク社は,帝人との間で締結した本件契約に基づき,品番「ME3312503」の本件使用商品に関し,2001年(平成13年)2月5日に上海昭文工貿発展有限公司に対し,本件使用商品に付されるラベル,織りネーム等を各1万8480枚発注し,当該ラベル,織りネーム等を「錦超」に出荷させることを指示したこと,当該ラベルには別紙の(1)の商標(以下「ラベル商標」という。),織りネームには別紙の(2)の商標(以下「織りネーム商標」といい,ラベル商標と併せて「本件使用商標」という。)が表示されていること,一方で,カーク社は,同年2月2日ころ,「錦超」に対し,本件使用商品1万8480枚を加工指図書に基づいて製造するよう依頼したこと,そして,同年5月9日ころ,上記ラベル,織りネームを付し,本件使用商品の1万7632枚が,香港所在の「KIRK(H.K.)CO.,LTD.」(カーク(H.K.)カンパニー・リミテッド)を介してカーク社に引き渡されたことが推認される。そして,本件使用商品を包装するビニール製包装用袋には本件使用商標及び「形態安定シャツ」の文字が表示されている。 そうすると,本件商標の通常使用権者であるカーク社は,本件審判の請求の登録日(平成14年7月3日)前3年以内に日本国内の市場において取引する目的をもって,本件使用商品に本件使用商標を使用したものということができる。 (2) 本件使用商標が本件商標と社会通念上同一の商標であるか否かについて ア 本件商標は,前記のとおり,「メンデル」の片仮名文字と「MENDEL」の欧文字を上下2段に横書きしてなるものであり,その構成中の片仮名文字部分は,欧文字部分の読みを表したと理解される程度のものであって,これより「メンデル」の称呼が生ずることが明らかである。また,「MENDEL」の文字部分からは,「メンデルの法則」を発見したオーストリアの植物学者が想起されるものである。 イ 本件使用商標の要部は,ラベル商標及び織りネーム商標のいずれも「MENDEL」の文字部分であり,これにより「メンデル」の称呼が生ずるものであり,「メンデルの法則」を発見したオーストリアの植物学者が想起されるものといえる。 ウ したがって,本件使用商標は,本件商標と呼称,観念を同じくするものであるから,本件商標と社会通念上同一の範囲内の商標と認められる。 (3) 以上のとおりであるから,被告(被請求人)は,本件商標の通常使用権者であるカーク社が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件商標の指定商品中の本件使用商品に使用していたことを証明したというべきである。 したがって,本件商標は,商標法50条の規定により,その登録を取り消すことはできない。 |
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当事者の主張
1 原告の主張 (1) 本件商標の不使用 ア 通常使用権者は,商標の通常使用権の設定行為で定めた範囲内において,指定商品について登録商標を使用する権利を有するものであり,設定行為で定めた範囲外については,通常使用権に基づく使用とはいえない。商標法50条1項に基づく取消審判における「使用」の要件を満たす行為は,通常使用権者の使用については,その設定行為で定めた範囲内でのみ認められるべきものである。 イ 日本国内での販売の有無 本件契約において,カーク社の通常使用権の範囲は,カーク社が製造・加工し日本国内で販売する商品に限られている(2条)。 しかし,カーク社は,本件審決の認定するように,上海昭文工貿発展有限公司に対し,本件使用商品(ドレスシャツ)に付されるラベル,織りネーム等を各1万8480枚発注するなどしているが,本件使用商品を日本国内で販売した事実はない。 したがって,仮にカーク社が本件使用商標を使用したものとしても,本件契約に基づく通常使用権の範囲外であり,商標法50条1項にいう「使用」には当たらない。 ウ 本件使用商標の使用期間 また,本件契約において,カーク社の通常使用権の有効期間は,平成13年3月1日から平成16年2月末日までと限られている(10条)。 しかるに,本件審決の認定するとおり,カーク社が上海昭文工貿発展有限公司に対し,本件使用商品に付されるラベル,織りネーム等を各1万8480枚発注し,また,カーク社が「錦超」に対し,本件使用商品1万8480枚を加工指図書に基づいて製造するよう依頼したのは,いずれも2001年(平成13年)2月であり,したがって,かかる発注及び加工指示を行ったことについては,カーク社の上記通常使用権の有効期間外の行為であり,商標法50条1項に該当するかどうかの判断の対象外である。 (2) 本件使用商標が本件商標と社会通念上同一の商標といえるか否か ア 本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。 すなわち,本件商標は,「メンデル」の片仮名文字と「MENDEL」の欧文字を上下2段に横書きしてなるものである。 これに対し,本件使用商標は,@「MENDEL」の欧文字,Aこれらの文字の並ぶ方向と平行に文字の上下に1本ずつ合計2本記された細線であって,これらの文字の横幅よりも若干長い細線,及びBこれらの文字と重なる位置に前記細線と直交する方向に記された合計8本の太線であって,これらの文字の縦幅よりも長い太線によって構成されており,これらの文字と線から成る各構成要素は,まとまりよく配されており,全体が図案化した一つの商標として成立している。 このような図案化された本件使用商標は,本件商標と類似する商標ということはできても,外観上同一視することはできず,本件商標と「同一」ないし「社会通念上同一」の商標ということはできない。 イ したがって,カーク社が使用する本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。 (3) 以上より,本件においては,本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者又は通常使用権者等が本件商標をその指定商品のいずれかについて使用していたことの証明はなされていない。 2 被告の主張 本件商標については,本件審判の請求の登録前3年以内に,本件商標の通常使用権者がその指定商品について使用したことが被告により証明されており,したがって,本件商標は,商標法50条1項の要件に該当するものではない。 (1) 本件使用商標の使用について ア 本件商標権の通常使用権者であるカーク社が,本件使用商標を表示した「ラベル」,「織りネーム」が付され,本件使用商標が表示された「包装用袋」に包装された本件使用商品(ドレスシャツ)を,日本国内において,本件審判の請求の登録前3年以内に販売したことは合理的に認められ,本件審決のこの点に関する認定に誤りはない。 イ 通常使用権の有効期間内の使用について 原告は,上記ラベル,織りネーム等の発注の日付け及び加工指図書の発行の日付けが本件契約に基づく通常使用権の有効期間外であるから,カーク社がかかる発注及び加工指示を行ったことについては,商標法50条1項 にいう「使用」に該当するかどうかの判断の対象外である旨主張する。 しかし,本件審決の判断するとおり,一般的に,商標の使用許諾に関する契約を締結した場合に,商標使用者の取扱いに係る商品に使用許諾を受けた商標を使用するには,本件のように,当該商標を表示したラベル,織りネーム等の発注,使用に係る商品の生産等の依頼をし,その商品に当該商標を表示して販売するまでには相当に準備期間を要するものであるところ,上記有効期間前に上記ラベル等の発注や上記商品の製造をしたことをもって,上記判断の対象外であるとする原告(請求人)の主張は,取引の実情を無視したものであり,失当といわざるを得ない。 なお,カーク社が販売した本件使用商品(上記ラベル,織りネームが付されたもの)は2001年(平成13年)5月9日に輸入され,同年6月6日に出荷され,本件使用商品についての売上伝票は同年6月10日に発行されている。 よって,本件使用商標がカーク社により上記通常使用権の有効期間内に使用されたことは明白である。 (2) 本件使用商標と本件商標との社会通念上の同一性 本件使用商標は,「MENDEL」の文字と図形とからなるものであるが,図形部分は背景的なものであって,中央に大きく書された「MENDEL」の文字部分に比べ看者に強い印象を与えるものとはいえないから,本件使用商標の要部は「MENDEL」の文字部分にある。 そうすると,本件使用商標は,その要部である「MENDEL」の文字部分より「メンデル」の称呼が生ずるものであって,「メンデルの法則」を発見したオーストリアの植物学者が想起される。したがって,本件使用商標は,本件商標と称呼,観念を同じくするものであるから,たとえ多少の外観上の差異があるとしても,本件商標と社会通念上同一の範囲内の商標と認められる。 この点に関する本件審決の認定は正当である。 |
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当裁判所の判断
1 商標法50条によれば,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは,何人も,その指定商品等に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができ,同審判請求があった場合においては,その審判請求に係る指定商品等についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにした場合を除き,その請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者等のいずれかがその請求に係る指定商品等のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り,その指定商品等に係る登録商標は取消しを免れないとされている。そして,同条1項は,同条にいう「登録商標」の使用には,「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」の使用を含む旨規定している。 なお,商標とは,標章,すなわち文字,図形,記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩の結合であって,業として商品を生産し,証明し,又は譲渡する者がその商品について使用をするもの等をいい(商標法2条1項),また,商標法で標章について「使用」とは,商品又は商品の包装に標章を付する行為,商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,又は輸入する行為等をいう(同条3項(平成14年法律第24号による改正前のもの))とされている。 本件の争点は,本件商標の通常使用権者であるカーク社が,本件審判請求の登録(平成14年7月3日)前3年以内に本件商標の指定商品に該当すると認められる使用商品(ドレスシャツ)について,本件商標を使用していたと認められるか否かである。そこで,以下この点に関して判断する。 2 本件商標の使用の有無について (1) 証拠(甲2,4,5,6の(1),(2),乙2,5ないし10,11の(1)ないし(3),12の(1)ないし(3))及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア カーク社は帝人から本件商標の通常使用権の許諾を受け,被告は帝人から使用権許諾者としての地位を承継したものであるところ,本件契約において,その通常使用権の範囲は,カーク社が,製造,加工し日本国内で販売する本件使用商品(ドレスシャツ)に限るものとされている。 イ カーク社は,2001年(平成13年)2月2日付け加工指図書により,「錦超」に対し,品番「ME3312503」,ブランド「MENDEL」,混率「ポリエステル65 綿35」の本件使用商品を,納期を同年4月20日として,合計1万8480枚加工するよう依頼した。 ウ カーク社は,2001年(平成13年)2月5日付け発注書により,上海昭文工貿発展有限公司に対し,本件使用商品に付される,商標を「MENDEL」,品番を「ME3312503」とする「織りネーム」,「下げ札」(ラベルを意味するものと認められる。),「洗濯絵表示(2B-2)」等を,納期を同年3月10日(出荷),出荷先を「錦超」として,それぞれ1万8480pcs.ずつ発注した。 この「織りネーム」には織りネーム商標が表示され,「下げ札」(ラベル)にはラベル商標が表示されるものとされていた。 エ 「錦超」は,上記織りネーム及びラベルが付された品番「ME3312503」の本件使用商品(メンズシャツ(形態安定))を香港所在の「KIRK(H.K.)CO.,LTD.」(カーク(H.K.)カンパニー・リミテッド)に納品し,「KIRK(H.K.)CO.,LTD.」は,2001年(平成13年)5月5日,カーク社に対し,上記の品番「ME3312503」の本件使用商品1万7632枚を,中国上海から神戸に向けて船積みし輸出した。 オ カーク社は,2001年(平成13年)6月,株式会社ダイエーから品名「ME3312503」の本件使用商品の発注を受け,倉庫管理会社である株式会社エコーセンターを通じ,上記商品を株式会社ダイエーの各店舗に向け出荷した。その内訳は,同年6月6日に合計2640枚,同月7日に合計3456枚,同月8日に合計7248枚である。 カ カーク社は,品番「ME3312503」の本件使用商品について,ラベル商標が表示されたラベルと織りネーム商標が表示された織りネームを付し,これを本件使用商標が付されたビニール製包装用袋に包装して上記のとおり販売したものである。 (2) 前記(1)の認定事実によれば,本件商標の通常使用権者であるカーク社は,2001年(平成13年)6月,本件使用商品に本件商標を付して,これを日本国内で販売していたものと認められ,これに反する証拠はない。しかして,本件使用商品が本件商標の指定商品に属することは明らかである。 原告は,カーク社が上海昭文工貿発展有限公司に対し,本件使用商品に付される上記ラベル,織りネーム等を各1万8480枚発注し,また,カーク社が「錦超」に対し,本件使用商品1万8480枚を加工指図書に基づいて製造するよう依頼したのは,いずれも2001年(平成13年)2月であり,したがって,かかる行為は,本件契約に基づく通常使用権の有効期間外の行為であり,商標法50条1項にいう「使用」に該当するかどうかの判断の対象外である旨主張する。しかしながら,本件商標を表示したラベル,織りネームが付された本件使用商品が完成され,カーク社によりこれらが販売された時期は,上記通常使用権の有効期間内であるから,上記発注,加工指示の日が上記有効期間外の行為であったとしても,そのことは,本件商標がその通常実施権者であるカーク社により使用されたとの上記認定を左右するものではない。 3 本件使用商標と本件商標との社会通念上の同一性の有無 (1) 本件商標は,「メンデル」の片仮名文字と「MENDEL」の欧文字とを上下2段に横書きしてなるものであるが,その構成のうち欧文字の「MENDEL」の語は,英語読みで「メンデル」と発音するものと解されるところ,現在の我が国における外国語使用の実情にかんがみれば,商標が欧文字等外国語で表示されている場合,その外国語は通常英語風の発音により称呼されるものと認められるから,「MENDEL」の語も一般には「メンデル」と発音されるのが自然であると考えられる。 また,我が国において,「MENDEL」(メンデル)が,メンデルの法則を発見した植物学者として広く知られていることは公知の事実であり,「MENDEL」の語は上記植物学者を想起させるものである。 上記認定事実によれば,我が国において「MENDEL」の語は,一般の取引者及び需要者には,「メンデル」と称呼され,また,メンデルの法則を発見したオーストリアの植物学者を想起させるものである。そして,本件商標は,「MENDEL」の欧文字が一般的に上記のとおりの称呼,観念を生ずるものであることを前提に,「MENDEL」の語の上段にその一般的な称呼である「メンデル」の文字を付加したものと認めるのが相当である。 (2)ア 一方,本件使用商標のうちラベル商標は,別紙の(1)のとおり,「MENDEL」の文字,「YOUR FAVORITE ONE IN MATERIAL/AND DESIGN」の文字及び図形を組み合わせた構成よりなるものであるところ,本件審決の認定するとおり,その構成中の「YOUR FAVORITE ONE IN MATERIAL/AND DESIGN」の文字部分は,極めて小さな文字で書かれ,その内容も,商品の品質を一般的に表現するにとどまるものであり,また,その図形部分も単なる背景であって,中央に大きく記載された「MENDEL」の文字部分と対比して取引者及び需要者に強い印象を与えるものとはいえないから,ラベル商標の要部は「MENDEL」の文字部分にあると認めるのが相当である。 イ また,本件使用商標のうち織りネーム商標も,別紙の(2)のとおり,「MENDEL」の文字と図形を組み合わせた構成よりなるものであるところ,その図形部分は単なる背景的なものであって,中央に大きく記載された「MENDEL」の文字部分と対比して取引者及び需要者に強い印象を与えるものとはいえないから,その要部は「MENDEL」の文字部分にあると認めるのが相当である。 ウ そうすると,本件使用商標は,いずれもその要部である「MENDEL」の文字部分より,「メンデル」の称呼が生ずるものであって,「メンデルの法則」を発見したオーストリアの植物学者が想起されるものといえる。 (3) 前記(1),(2)の説示から明らかなとおり,「メンデル」の片仮名文字と「MENDEL」の欧文字とを上下2段に横書きしてなる本件商標と,本件使用商標の要部である「MENDEL」とは,称呼,観念を同じくするものであり,外観も類似していると認められるから,社会通念上,本件使用商標の使用は,本件商標の使用と同一視できるものと認めるのが相当である。 4 以上によれば,本件商標の通常使用権者であるカーク社は,本件審判請求の登録前3年以内に本件商標をその指定商品に属する本件使用商品に使用していたことを証明したものというべきである。 これと同旨の本件審決の判断は相当であり,原告が取消事由として主張するところは理由がない。 よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 北山元章 |
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裁判官 | 青蜉] |
裁判官 | 沖中康人 |