関連審決 | 不服2000-4955 |
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関連ワード | 指定商品 / 3条2項 / 4条1項11号 / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 補正 / 遡及効 / 使用許諾 / 存続期間 / 更新登録 / 分離移転 / パリ条約 / 一般承継 / 継続 / |
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事件 |
平成
15年
(行ケ)
445号
審決取消請求事件
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原告 ユービック・インコーポレイテッド 同訴訟代理人弁理士 青山葆 同 河宮治 同 樋口豊治 同 西津千晶 被告 特許庁長官今井康夫 同指定代理人 宮川久成 同 平山啓子 同 大橋信彦 同 涌井幸一 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2004/01/26 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が不服2000―4955号事件について平成15年5月27日にした審決を取り消す。 |
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争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成8年8月20日,「UBIQ」の欧文字を横書きした構成からなる商標(以下「本願商標」という。)について,商標法施行令(平成13年政令第265号による改正前のもの,以下同じ)1条別表の第9類「コンピュータ用回路基板,集積回路,その他の電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。),電子計算機(中央処理装置,スマートカード発行者がスマートカードを初期化及び個人用に加工するために使用するプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ・磁気カード・光磁気ディスク,その他の電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ・磁気カード,光磁気ディスクその他の周辺機器を含む。),これらとセット販売されるマニュアル,その他の電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」を指定商品とし,同年2月20日アメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づくパリ条約4条による優先権を主張して,商標登録出願をした(平成8年商標登録願第93461号)ところ,特許庁は,これについて,拒絶査定をした。 そこで,原告は,平成12年4月6日,拒絶査定不服審判の請求をした(不服2000―4955号事件。以下「本件審判事件」という。)ところ,特許庁は,平成15年5月27日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は同年6月10日に原告に送達された。 2 本件審決の理由の要旨 (1) 引用商標 登録第1693728号商標は,「U-BIX」の欧文字を横書きした構成からなり,昭和45年7月31日に登録出願,第11類「電子写真複写機」を指定商品とし,同59年6月21日に設定登録,その後,平成6年11月29日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。 登録第2696371号商標は,「ユービックス」の片仮名文字及び「UBIX」の欧文字を上下二段に書した構成からなり,昭和59年6月28日に登録出願,第11類「電子応用機械器具,その他本類に属する商品」を指定商品として,平成6年9月30日に設定登録がされたものである。 登録第2696372号商標は,別紙に示すとおりの構成からなり,昭和59年7月26日に登録出願,第11類「電子応用機械器具,その他本類に属する商品」を指定商品として,平成6年9月30日に設定登録がされたものである(以下,これらをまとめて「引用各商標」という。)。 (2) 判断 本願商標と引用各商標とは,外観を考慮し,かつ,観念について比較することができないとしても,称呼において相紛らわしい類似する商標と判断するのが相当である。 また,本願商標の指定商品は,引用各商標の指定商品と同一又は類似するものと認められる。 したがって,本願商標は,商標法4条1項11号に該当する。 なお,審判請求人(原告)は,審判請求書において本願商標の引用各商標権者への名義変更交渉中である旨述べているが,その後,相当の期間を経過するもその手続はされておらず,当審においてその点の釈明を求める平成13年9月19日付審尋書を通知したところ,請求人は,同13年12月25日付回答書及び同14年5月15日付上申書において再度同様の内容を述べるのみで,何ら具体的な状況説明もない。そして,該上申書の提出より相当の期間を経過する現在に至るも,手続の進捗等に関し何ら応答するところがないから,これ以上本件の審理を遅滞させるべき事由はないものと判断し,結審した。 |
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原告主張に係る本件審決の取消事由の要点
本件審決は,以下のとおり,本願商標が商標法4条1項11号に該当すると誤って判断したものである。 1 原告は,引用各商標の商標権者であったコニカ株式会社との間で,本件審決がされる前である平成15年3月31日,本願商標登録出願により生じたすべての権利を譲渡する旨の契約(以下「本件契約」という。)を締結した(甲6)。したがって,特許庁長官に対する出願人名義変更の届出は未だされていなかったものの,本件契約の締結により,商標法4条1項11号所定の拒絶事由は,既に実質的に解消していた。それにもかかわらず,本件審決は,そのような事情を考慮せず,本願商標が同号に該当すると誤って判断したものである。 本件のような場合に違法性判断の基準時を審決時と考えると,出願人に出願手続のやり直しを要求することになるだけで無益である反面,徒らに後願者を利するばかりでなく,我が国も加盟する商標法条約におけるユーザー・フレンドリーの基本的理念にも反するものである。 2 特許庁長官に対する出願人名義変更の届出が遅れた事情は,次のとおりである。すなわち,本件契約に基づいて,平成15年7月18日,譲渡証書(甲7)が作成されたが,その後,上記書面において,出願番号が「平成8年商標登録願第093461号」と記載されるべきところ「商標登録願第093461号」と誤記され,かつ,譲渡人の住所も「East,Minneapolis」と記載されるべきところ「East Minneapolis」と誤記されていることが判明した。また,引用各商標の商標権者であったコニカ株式会社が,ミノルタ株式会社と経営統合することとなり,それに合わせて,引用各商標の商標権者の名義も,コニカミノルタホールディングス株式会社に変更されることになった。したがって,上記譲渡証書記載の譲受人の名義をコニカミノルタホールディングス株式会社に変更する必要が生じた。このように,企業合併等の不測の事態が生じたため,出願人名義変更の届出が遅れざるを得なかったにもかかわらず,そのような事情を考慮せずにされた本件審決は,出願人である原告にとって酷にすぎるものである。 |
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被告の反論の要点
本件審決の判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。 1 審決の違法性の有無を判断する基準時が審決時であることは明らかであるところ,本件審決時には,本願商標について出願人名義変更の届出はされておらず,原告の主張する権利承継の効力は生じていなかったのであるから,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした本件審決の判断に誤りはない。 商標登録出願の出願人名義変更の届出には遡及効がないところ,このような手続が後からされたことにより当初存在した拒絶理由が解消して商標権が発生するとすれば,むしろ,ユーザー・フレンドリーの理念に反することになる。 2 原告は,平成9年12月19日付け拒絶理由通知を受け,平成10年5月18日に上申書を提出して以来,本件審決までの5年以上の期間にわたり,本願商標を引用各商標権者に譲渡する方向であること及び本願商標登録後の取扱いに関して引用各商標権者との交渉を継続していることを理由として,手続の進行の猶予を求め続け,審査官及び審判合議体が一定期間の猶予を与えたにもかかわらず,本件審決がされるまでの間に出願人名義変更の手続を完了しなかった。また,本件契約締結の事実は,本件訴訟において初めて被告に知らされたものであり,本件審決以前には被告に伝えられなかった。このような事情に照らせば,本件審決をした被告の手続に何ら違法はない。 |
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当裁判所の判断
1 原告は,「原告は,引用各商標の商標権者であったコニカ株式会社との間で,本件審決がされる前である平成15年3月31日,本願商標登録出願により生じたすべての権利を譲渡する旨の本件契約を締結した。したがって,特許庁長官に対する出願人名義変更の届出は未だされていなかったものの,本件契約の締結により,商標法4条1項11号所定の拒絶事由は,既に実質的に解消していた。それにもかかわらず,本件審決は,そのような事情を考慮せず,本願商標が同号に該当すると誤って判断したものである。」旨主張する。 (1) しかしながら,審決取消訴訟は,既に行われた行政処分である審決が違法であるとしてその取消しを求めるものであるから,裁判所の判断対象は,審決が審決時において違法に行われたか否か,であると解すべきである。 そして,特許法34条4項は,「特許出願後における特許を受ける権利の承継は,相続その他の一般承継の場合を除き,特許庁長官に届け出なければ,その効力を生じない。」と規定し,商標法13条2項は,商標登録出願により生じた権利に上記規定を準用している。(なお,上記権利承継については,遡及効の定めはなく,その効力が審決時まで遡及する性質のものでもない。) これを本件についてみるに,本件審決がされた平成15年5月27日以前に,特許庁長官に対し,本願商標登録出願により生じた権利の譲渡の届出がされていないことは,当事者間に争いがないから,本件審決時において,上記譲渡の効力は未だ生じていないものである。 したがって,本件審決が,本願商標が商標法4条1項11号に該当すると判断するに際して,本願商標登録出願により生じた権利の譲渡に係る本件契約の締結の有無を考慮しなかったことは,相当であり,原告の上記主張は理由がない。 (2) これに対し,原告は,「本件のような場合に違法性判断の基準時を審決時と考えると,出願人に出願手続のやり直しを要求することになるだけで無益である反面,徒らに後願者を利するばかりでなく,我が国も加盟する商標法条約におけるユーザー・フレンドリーの基本的理念にも反する。」旨主張する。 しかしながら,本件のような事案において,後願の商標登録出願がある場合には,先願者が再び出願手続を行っても,同一の法的状態に戻らないことが明らかであるから,「出願人に出願手続のやり直しを要求することになるだけで無益である反面,徒らに後願者を利することになる。」ということはできない。また,商標法条約がユーザー・フレンドリーを基本的理念とするからといって,上記(1)記載の商標法等の解釈を変更すべき筋合いでもない。したがって,原告の上記主張は理由がない。 2 また,原告は,「企業合併等の不測の事態が生じたため,出願人名義変更の届出が遅れざるを得なかったにもかかわらず,そのような事情を考慮せずにされた本件審決は,出願人にとって酷にすぎる。」旨主張する。 (1) 争いのない事実並びに証拠(甲6,乙1ないし12)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア 原告は,平成8年8月20日,本願商標登録出願をしたところ,特許庁は,平成10年1月16日,原告に対し,引用各商標に基づき拒絶理由通知をした(乙2)。 そこで,原告は,同年5月19日,特許庁に対し,「本願商標を一旦引用商標権者に譲渡し,引用商標権者名義で登録した後に,本願出願人に分離移転することを希望し,引用商標権者と交渉をしております。当該交渉が成立すれば,今般の拒絶理由は解消されるものと存じます。」として,上記交渉の成否が判明するまで審査を猶予するよう求める上申書を提出した(乙3)。 その後,原告は,同年12月2日,再度特許庁に対し,「この度,本願商標について引用商標権者名義で登録を受けることに関して同意を得ることができましたが,本願商標の登録後の取扱いについて,引き続き交渉中です。」として,上記交渉が終結し名義変更手続が完了するまで審査を猶予するよう求める上申書を提出した(乙4)。 イ しかるに,特許庁は,平成11年12月15日,「出願人は,上申書において,引用商標権者と本願の譲渡等につき交渉中である旨述べているが,相当の期間を経過した現在に至るも,何も為されていない。」として,拒絶査定をした(乙5)。 ウ 原告は,平成12年4月6日,拒絶査定不服審判の請求をした(本件審判事件,乙6)後,同年7月13日,上記審判請求についての手続補正書を提出し,「請求人は,…引用商標権者と交渉し,本願を引用商標権者へ譲渡することで大筋の合意に至り,現在,当事者間で契約条項等につき最終的なつめを行っているところです。」として,上記交渉が終結し名義変更手続が完了するまで審理を猶予するよう求めた(乙7)。 特許庁は,平成13年9月25日,原告に対し,「現在に至るも,本願について,商標出願人名義変更届の手続がなされていない。よって,これらの点について釈明されたい。…なお,本件に対し,所定の期間内に回答がなされず,或いは審理進行を猶予し得る合理的理由が認められないときは,審理を終結する。」との審尋書を発送し,原告はこれを受領した(乙8)。 これに対し,原告は,同年12月25日,特許庁に対し,「出願人が…引用商標の商標権者(コニカ株式会社殿)と交渉しました結果,両者間にて本願商標をコニカ株式会社殿に譲渡し,本願商標の登録後,出願人が本願商標の使用につき許諾を受ける旨の合意がなされております。しかしながら,使用許諾契約の更新に関する細部について未だ協議中です。」として,上記交渉が終結し名義変更手続が完了するまで審理を猶予するよう求める回答書を提出した(乙9)。 また,原告は,平成14年5月15日,特許庁に対し,「引用商標の商標権者…との本願商標のライセンスバック交渉において,登録後の使用許諾契約の細部についての合意に至り,現在契約書作成に着手したところです。当該契約締結次第,本願のコニカ株式会社殿への名義変更手続を行う予定です。」として,名義変更手続が完了するまで審理を猶予するよう求める上申書を提出した(乙10)。 エ 原告は,ようやく平成15年3月31日にいたり,引用各商標の商標権者であるコニカ株式会社との間で,本願商標登録出願により生じたすべての権利を譲渡する旨の契約(本件契約)を締結した(甲6)。 オ 特許庁は,平成15年5月13日,原告に対し,本件審判事件の審理を終結した旨の通知をした(乙11)上,同月27日,本件審決をした。なお,本件審決以前に,原告が特許庁に対し,本件契約締結の事実を通知したことはない。 (2) 以上の事実によれば,原告が特許庁に対し,平成10年5月19日,引用各商標の商標権者との間において,本願商標登録出願により生じた権利の譲渡をめぐる交渉が行われていることを理由に,審査の猶予を求めてから,拒絶査定を経て本件審決に至るまでの約5年間もの長期間にわたり,原告には上記交渉及び名義変更手続のための期間が十二分に与えられたものというべきであり,しかも,本件審決に先立ち,原告は,平成15年5月13日には特許庁から本件審判事件の審理を終結した旨の通知を受けながら,これに対して,本件契約締結の事実を連絡した上で審理の再開を求める等の措置を何ら講じなかったものである。このような事情に鑑みれば,特許庁がこれ以上本件審判事件の審理を猶予することなく本件審決をしたことが,原告にとって酷にすぎるとは到底いうことができず,原告の上記主張は理由がない。 (なお,原告は,本願商標が引用各商標と類似することを自認しているばかりでなく,本願商標の指定商品が引用各商標の指定商品と同一又は類似することも認めていることは弁論の全趣旨により明らかである。) 3 以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がなく,他に本件審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 北山元章 |
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裁判官 | 清水節 |
裁判官 | 沖中康人 |