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関連審決 取消2001-31067
関連ワード 指定役務 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  外国 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 99号 審決取消請求事件
原告 株式会社モンテローザ
訴訟代理人弁理士 中畑孝
被告 有限会社めでたいや
訴訟代理人弁護士 及川昭二
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/08/07
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が,取消2001−31067号審判事件について平成15年2月5日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 主文と同旨 2 被告 (1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯等 原告は,登録第4166413号の商標(「めでたや」の文字を横書きして成り,第42類「飲食物の提供」を指定役務として,平成8年11月26日に登録出願され,平成10年7月10日に登録された。以下,「本件商標」といい,その登録を「本件登録」という。)の商標権者である。
2 被告は,平成13年9月25日,本件登録を商標法50条の規定により取り消すことについて審判を請求し,そのころ,この審判の請求の登録がなされた。特許庁は,これを取消2001-31067号事件として審理し,その結果,平成15年2月5日,「登録第4166413号商標の商標登録は取り消す。」との審決をし,その謄本を,同月17日原告に送達した。
3 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書の写しのとおりである。要するに,原告による,本件審判請求の登録前3年以内の本件商標の指定役務についての本件商標の使用に当たるものとして,原告の主張する具体的事実は,上記使用に当たらず,他にも上記使用に当たる事実は認められないから,本件登録を商標法50条の規定により取り消す,とするものである。
原告の主張の要点
審決は,原告による本件商標の使用に関する事実認定を誤ったものであり,取り消されるべきである。
1 「めでた家」の使用 (1) 原告は,平成10年9月22日,「寿司処 めでた家」の店名で飲食店を開き(以下「本件店舗」という。),この店名を,平成11年1月29日,「海鮮寿司 めちゃんこ」に改称するまで,「めでた家」の標章を飲食店の店舗名として使用していた(甲第14号証・審判乙第1号証)。
すなわち,原告は,本件審判請求の登録前3年以内が含まれる本件店舗開店のころから平成11年1月29日までの間,「めでた家」の店名を用いることにより,本件商標を使用していたことになる。
(2) 審決は,「めでた家」は,飲食店などの店名として看取され,祝い言葉である「めでたや」とは観念が異なり,したがって,たとい「メデタヤ」の称呼において共通するとしても,これと社会通念上同一の商標と認めることはできない,としている。
本件商標と「めでた家」とは,共通の文字「めでた」を有する。この「めでた」は,「めでたい」の語幹(国文法で,用言の活用語尾を取り除いた変化しない部分)であり,「めでた」をもって,「めでたい」の語意を表す単語として完結している。平均的な需要者は,「めでた家」に接するとき,この語幹に着目して,祝い言葉としての「めでたや」を想起する。
「めでた家」の語からは,通常,「めでたや」の称呼を生じる。状態を表現する語に付いて感動を表す終助詞として「や」が存在するから,「めでた家」を「めでたや」と称呼するときは,需要者は,「家」は,この終助詞「や」の当て字であり,「めでた」の語幹を強調するものと観念するのである。「家」が,店舗の観念のみを生じると断定することはできない。
「めでた家」と「めでたや」は,「めでた」の文字を共通に持つことから,外観も類似する。
2 「MEDETAYA」の使用 1で述べたとおり,原告は,平成10年9月22日に「めでた家」という店名の飲食店を開設した。その際,散らし等で,「めでた家」の標章とともに,「MEDETAYA」の標章も用いていた(甲第14号証ないし第19号証(審判乙第1号証ないし第6号証),甲第26号証,第29号証及び第32号証)。
商標法50条1項は,取消しの求められている登録商標と,「平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標」の関係にあるものの使用も,上記登録商標の使用になる,と定めている。したがって,上記「MEDETAYA」の使用は,本件商標の使用に該当する。
3 音声による本件商標の使用 原告は,来店した需要者や電話での予約申込者に対し,「めでた家」の店名として,「めでたや」と告げ,また,街頭で散らしを配る際にも,この店名を発声している。これらは,本件商標の使用に該当するというべきである。
被告の反論の要点
審決に,原告主張のような誤りはない。
1 原告は,「MEDETAYA」の使用を強調し,その立証として本訴において新たに甲第29号証ないし第32号証を提出する。
被告は,原告による「MEDETAYA」の使用の事実を否認する。甲第29号証ないし第32号証の成立は不知である。これらには証明力もない。
2 仮に,「MEDETAYA」の使用の事実が認められるとしても,これを本件商標の使用に当たるものとすることはできない。
商標法50条1項の,「平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標」とは,例えば「ちゃんぴおん」と「チャンピオン」,「ミュージック」と「MUSIC」のようなものである。本件商標「めでたや」と「MEDETAYA」では,同一の称呼及び観念を生ずる,とはいえない。
当裁判所の判断
1 前提事実 (1) 原告は,平成10年9月ころ,横浜市西区南幸2丁目10-5に,「寿司処 めでた家」を店名として,飲食店(本件店舗)を開店した。
本件店舗のメニュー(お品書き)には,「MEDETAYA」の文字が,見開き2頁目に印刷されている。本件店舗の宣伝のために作成された散らしには,「めでた家」の文字の下に,「MEDETAYA」の文字が印刷されている。本件店舗玄関口にも,「MEDETAYA」の文字が印刷されているドアマットが置かれていた。
これらのお品書き,散らし,ドアマットにおける「MEDETAYA」の表示は,少なくとも,原告が本件店舗を開店した平成10年9月ころから,その名称を「海鮮寿司 めちゃんこ」に改称した平成11年1月29日ころまで使われていた,と認めることができる。
原告は,株式会社オリエントコーポレーションと提携して「モンテローザカード」を発行していた。このカードを使用すると,原告が経営するチェーン店(「寿司処 めでた家」も含まれている。)の飲食代金が5パーセント割引になる,とされており,このカードの会員に加入することを勧誘するリーフレットが,原告の店舗内等に置かれていた。
このリーフレットにも,「めでた家」の店名とともに,「MEDETAYA」の文字が印刷されている。このリーフレットは,料金受取人払でそのまま郵送できるようになっているものであり,その差出有効期間は,平成12年11月30日となっている。したがって,そのころまで,原告が経営する飲食店において,備え置かれ,顧客の自由な閲覧に供されていたと認めることができる。これも,本件商標の指定役務である「飲食物の提供」についての「MEDETAYA」の使用ということができる。
(甲第14号証ないし第17号証,第26号証,甲第30号証,第31号証,弁論の全趣旨) (2) 被告は,甲第30号証及び第31号証の成立を不知とする。しかし,これらの証拠の原本の使用素材,印刷の品質,印刷内容に弁論の全趣旨を併せ考慮すると,これらは,真正に成立したものと認めることができる。
被告は,これらの証明力を争う,とする。しかし,これらの証拠の状態や記載内容等からは,これらは,本件店舗の名称が「寿司処 めでた家」であった時に使用されていたものと優に認めることができる。これらを,最近作成されたものではないかと疑うべき事情はない。
2 「めでたや」と「MEDETAYA」の関係 (1) 「MEDETAYA」から,ローマ字読みにより,「めでたや」の称呼が生じることは明らかである。「MEDETAYA」から,ローマ字読みによる「メデタヤ」以外の称呼が一般的なものとして生じることは,考え難い。したがって,「MEDETAYA」は,本件商標と称呼を同一にする。
本件商標を構成する「めでたや」は,その文字もその称呼も,「めでたい」場面,すなわち,祝うべきである場面,喜ばしい場面において,それを祝い,喜ぶ気持ち,あるいはそれに感動した気持を表すために用いられる語である。本件商標「めでたや」からは,これに応じて「めでたい」という観念が生じる。「MEDETAYA」の語が,その称呼「メデタヤ」を通じて,本件商標「めでたや」と同じく,「めでたい」の観念を生じさせることは,明らかである。「MEDETAYA」の語が,日本語としても,英語等の外国語の単語等としても,上記「めでたい」とは別の観念を一般的に生じさせるとは,本件全証拠によっても認めることができない。したがって,「MEDETAYA」は,本件商標と観念を同一にする。
このように,本件商標と「MEDETAYA」とは,同一の称呼及び観念を生じるものと認めることができる。
(2) そうすると,原告は,本件審判請求の登録前3年以内を含む平成10年9月ころから平成11年1月29日までの間,本件商標を単にローマ字に変更するものであって,同一の称呼及び観念を生ずる商標である「MEDETAYA」を使用していたものと認められるから,本件登録の取消審判請求は,商標法50条1項の要件を満たしていないことになる。
3 結論 以上によれば,審決の取消しを求める原告の本訴請求は,その余にふれるまでもなく,理由があることが明らかである。そこで,これを認容して審決を取り消すこととし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 阿部正幸
裁判官 高瀬順久