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関連ワード 指定役務 /  先使用(32条) /  警告 /  差止 /  使用許諾 /  継続 /  商号 /  著名人 / 
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事件 平成 14年 (ワ) 15435号 損害賠償等請求事件
原告 特定非営利活動法人家庭教師派遣業自主規制委員会
原告 株式会社日本家庭教師センター学院
被告 株式会社校外教育研究会
同訴訟代理人弁護士 松岡宏
同 森本 耕太郎
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2003/07/11
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
請求の趣旨
〔原告特定非営利活動法人家庭教師派遣業自主規制委員会(以下「原告委員会」という。)〕 1 被告は,原告委員会に対し,金296万1111円及びこれに対する平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,「AAAの優良業者です。NPO家庭教師派遣業自主規制委員会認定」と表示してはならない。
被告は,上記広告の掲載を自粛し,謝罪広告を掲載せよ。
3 被告は,「家庭教師優良業者全国ネットワーク」名称中の「優良業者」を削除し,同ネットワークを解散せよ。
4 被告は,「静岡県家庭教師センター」名称中の「県」の削除又は社名の変更をせよ。
被告は,上記社名の使用に関し,謝罪広告を掲載せよ。
〔原告株式会社日本家庭教師センター学院(以下「原告会社」という。)〕 5 被告は,原告会社に対し,金200万円及びこれに対する平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告は,別紙標章目録記載(1)の標章(以下「本件標章(1)」という。)を使用してはならない。
被告は,本件標章(1)の使用に関し,謝罪広告を掲載せよ。
〔原告委員会及び原告会社〕 7 被告は,原告らに対し,金70万円及びこれに対する平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8 被告は,別紙標章目録記載(2)の標章(以下「本件標章(2)」という。)を使用してはならない。
被告は,本件標章(2)を付した印刷物を提出し,謝罪広告を掲載せよ。
被告は,本件標章(2)を使用してはならない旨を通知せよ。
9 被告は,「写真(パネル)」,「委任状」,「認定書」及び「原告の推薦文がある印刷物」を使用してはならない。
被告は,上記写真及び各書面を提出し,原告らに対し,返還せよ。
事案の概要等
1 前提となる事実(証拠を示した事実以外は,当事者間に争いがない。) (1) 原告委員会は,平成5年,原告ら代表者Aが中心となって家庭教師派遣業者により設立された団体であり,平成12年12月28日,特定非営利活動法人となった(甲1,乙9,13,弁論の全趣旨)。
被告は,「平成学院スパルタ塾」及び「静岡県家庭教師センター」という商号で家庭教師派遣業等を営む株式会社であり,原告委員会の会員である。なお,被告代表者Bは,家庭教師優良業者全国ネットワークの会長である(乙13)。
(2) 原告会社は,別紙商標権目録記載の各商標権(以下,同目録記載(1)の商標権を「本件商標権(1)」,同目録記載(2)の商標権を「本件商標権(2)」といい,その登録商標を「本件商標(1)」,「本件商標(2)」という。)の商標権者である(甲13の1ないし3,15の1及び2)。
(3) 原告委員会は,平成11年10月ころ,家庭教師派遣業者のサービス評価をして格付けを行い,優良業者を「AAA」と認定する制度(以下「AAA認定制度」という。なお,本件において「AAA審査」とは,AAA認定制度における審査を意味する。)の運営の準備を始め,同原告に「AAA審査委員会」を設け,同原告副理事長のC(以下「C」という。)をAAA審査委員会の委員長とした(甲42,43,乙13,弁論の全趣旨)。
(4) 被告は,平成13年9月8日,原告委員会のAAA審査委員会から,第一次審査に合格した旨の通知書(以下「第一次審査合格通知書」という。甲31)の送付を受けた。同通知書には,第二次審査に合格した業者を「優良業者AAA」と認定すること,第二次審査を希望する場合には,審査料・認定料2万円を同月30日までに指定の口座に振込送金する必要があり,第二次審査の結果は,同年10月末に連絡することなどが記載されていた。
被告は,原告委員会に対し,上記AAA審査の審査料・認定料として2万円を支払った(甲31,乙13)。
(5) 原告委員会は,被告に対し,平成13年12月20日付け「『サービス評価』審査結果通知状(C)」と題する書面により,同月5日に開催された家庭教師派遣業者・個別指導教室「サービス評価」認定審査委員会・第三次認定審査会(最終審査会)の結果,被告が不合格となった旨を通知した(甲12)。
2 原告らの主張 (1) 請求の趣旨1項について ア 名誉毀損料及び信用回復対策費用273万2686円 (ア) 原告委員会は,被告に対し,平成13年12月20日,AAA審査の最終審査会の結果,被告が不合格となった旨通知したが,被告は,最終審査会が開かれる前から,また,最終審査の結果,AAA審査に不合格となったにもかかわらず,被告の営む平成学院スパルタ塾の静岡新聞(甲4)及びタウンページ(甲5)の広告において,被告が「AAAの優良業者です。NPO家庭教師派遣業自主規制委員会認定」との虚偽広告を掲載した。
(イ) 被告による上記行為は,原告委員会のNPO活動を妨害し,同原告の信用を失墜させるものであり,同原告は100万円の損害を被った。
また,被告による上記行為は,原告委員会の信用を失墜させるものであり,同原告は,信用を回復するために,AAA評価認定審査案内書,サービス評価のための評価ガイドライン,サービス評価認定審査委員会規約,サービス評価アンケート調査票,サービス評価調査内容表及びAAA評価認定証を作成し,合計173万2686円を支出し,同額の損害を被った。
イ 原稿作成料等10万2600円 被告は,被告が原告委員会の会長に就任した際,教育報道新聞のコラム「論壇」(甲24)の原稿作成を依頼し,同原告との間で,同原告に対し,原稿作成料3万6000円,原稿企画コンサルタント料3万円,新聞100部の購入費用3万6600円の合計10万2600円を支払う旨を合意した。
ウ 理事負担金12万5825円 原告委員会は,平成13年11月8日の第4回理事会及び同年12月20日の第3回臨時総会において,同原告の理事が12万5825円を負担すべき旨の決議を行った。上記決議は被告が原告委員会の理事に在任中行われたものである。
エ 原告委員会は,被告に対し,以上のアないしウの合計296万1111円及びこれに対する平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(2) 請求の趣旨2項について ア 被告による前記(1)ア(ア)の虚偽広告は,特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)43条に違反し,47条に該当する疑いがある。
イ 原告委員会は,被告に対し,「AAAの優良業者です。NPO家庭教師派遣業自主規制委員会認定」との表示の禁止を求めるとともに,広告掲載の自粛及び謝罪広告の掲載を求める。
(3) 請求の趣旨3項について ア 被告代表者が会長を務める「家庭教師優良業者全国ネットワーク」の名称は,特定商取引法43条に違反し,47条に該当する疑いがあり,家庭教師派遣業自主規制規約に違反している。
イ 原告委員会は,被告に対し,上記名称中の「優良業者」部分の削除,同ネットワークの解散を求める。
(4) 請求の趣旨4項について ア 「静岡県家庭教師センター」の名称は,消費者に,県が運営する家庭教師派遣機関である旨誤認混同させるおそれがあり,特定商取引法違反の疑いがあるとともに,家庭教師派遣業自主規制規約及び家庭教師派遣業広告倫理綱領に違反する。
イ 原告委員会は,被告に対し,上記名称中の「県」部分の削除又は社名の変更を求めるとともに,謝罪広告の掲載を求める。
(5) 請求の趣旨5項,同6項及び同8項について ア 本件標章(1)の使用について(請求の趣旨5項のうち100万円の支払請求及び同6項) (ア) 原告会社は,本件商標権(1)を有しているところ,被告は,本件商標(1)と同一の本件標章(1)を,被告の社屋の玄関上の看板(甲3の2,33の6及び7)において使用している。
(イ) 被告の本件標章(1)の使用は,本件商標権(1)を侵害するものであり,原告会社は,被告の上記行為により100万円の損害を被った。
(ウ) 原告会社は,被告に対し,100万円及びこれに対する平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払,本件標章(1)の使用禁止及び謝罪広告の掲載を求める。 イ 本件標章(2)の使用について(請求の趣旨5項のうち100万円の支払請求及び同8項) (ア) 原告会社は,本件商標権(2)を有しているところ,被告は,本件商標(2)と同一の本件標章(2)を,インターネットのホームページ(甲3の1),静岡新聞(甲4)及びタウンページ(甲5)の広告,「今の自主規制委員会を支えて下さるのは優良業者全国ネットワークの皆様方です」と題する書面(甲21)並びに被告代表者の名刺(乙14)において使用している。
(イ) 被告の本件標章(2)の使用は,本件商標権(2)を侵害するものであり,原告会社は,被告の上記行為により100万円の損害を被った。
(ウ) 原告会社は,被告に対し,100万円及びこれに対する平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,原告らは,被告に対し,本件標章(2)の使用禁止,同標章を付した印刷物の提出,謝罪広告の掲載及び同標章を使用してはならない旨の通知をそれぞれ求める。
(6) 請求の趣旨7項について ア 肖像権侵害料20万円 (ア) 被告は,原告ら代表者が著名人とともに写っている「写真(パネル)」を被告社屋内に展示している。
(イ) 被告による上記行為は,肖像権の侵害に当たり,原告らは20万円の損害を被った。
イ 慰謝料50万円 (ア) 被告は,平成13年11月29日から平成14年1月24日までの間,家庭教師優良業者全国ネットワーク副会長のE,C及び同ネットワーク会員とともに,インターネット[www.aozora.com/kzi]上で,不特定多数を対象として,77回にわたり原告委員会を誹謗中傷した。
(イ) また,被告は,Eが原告委員会を誹謗中傷する目的で,第三次最終認定審査会審査委員らに対し,同原告の顧問でない者が顧問であるという,事実と異なる内容の文書を送付するために,住所,電話番号,ファックス番号等の情報を提供し,協力した。
(ウ) 被告による上記各行為は,原告らの名誉を毀損し,営業を妨害し,信用を失墜させるものであり,原告らが上記各行為により被った精神的な苦痛に対する慰謝料としては50万円が相当である。
ウ 原告らは,被告に対し,以上のア及びイの合計70万円及びこれに対する平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(7) 請求の趣旨9項について 原告らは,被告に対し,原告ら代表者が著名人とともに写っている「写真(パネル)」,被告に授与した有効期限が切れた「委任状」及び「認定書」並びに被告に対する「原告の推薦文がある印刷物」について,使用の禁止,提出及び原告らに対する返還を求める。
3 被告の主張 (1) 請求の趣旨1項について ア 名誉毀損料及び信用回復対策費用について 被告は,原告委員会から,平成13年9月8日,第一次審査合格通知書の送付を受けた。同通知書には,被告が第一次審査に合格したこと,AAA審査の第二次審査の審査料・認定料として2万円の支払が必要であること,合格した業者を「優良業者AAA」と認定することが記載されていたため,被告は,第二次審査の審査料・認定料として2万円を支払った。被告は,第一次審査も第二次審査も,審査内容は同じであると知らされていたため,第二次審査も合格すると見込み,同年11月初めころ,インターネットのホームページ上において,原告委員会が主張する内容の掲載をしたが,上記掲載の点は,同月8日に開催された同原告の第4回理事会において協議された結果,被告がその場で掲載を中止するなどして決着している。したがって,被告の行為は,何ら違法なものではない。
イ 原稿作成料等について 被告は,原告委員会との間で,同原告が主張する合意をしていない。
ウ 理事負担金について (ア) 平成13年11月8日の第4回理事会において,原告委員会が主張する決議はされていない。
(イ) また,被告は,平成13年12月20日の第3回臨時総会において,理事辞任届を提出した。
(2) 請求の趣旨2項について 被告の行為は,何ら違法なものではない。
(3) 請求の趣旨3項について ア 特定商取引法43条,47条は,業者と消費者との間の円滑な取引のための規制であるが,家庭教師優良業者全国ネットワークは何ら消費者と取引を行っていないので,同法の規制は受けない。
イ また,家庭教師優良業者全国ネットワークは,優良業者の集まりであり,虚偽・誇張の表示を行っていない。
(4) 請求の趣旨4項について 「静岡県家庭教師センター」との商号中の「県」の部分が関係法令に触れることはない。
(5) 請求の趣旨5項,同6項及び同8項について ア 本件標章(1)の使用について (ア) 使用許諾の抗弁 被告は,昭和63年夏ころ,原告会社の代表者であるAから被告の社屋の玄関上に「全日本家庭教師センター連盟」の看板を掲げるよう勧められ,そのころ,同看板を設置した。また,本件訴訟係属に至るまで,原告会社の代表者は,被告社屋を訪れ,同看板を見ることはあっても,被告に対し,看板についての苦情を言うことはなかった。
被告は,原告会社から本件商標(1)の使用に関する許諾を得ていた。
(イ) 先使用の抗弁 被告は,本件商標権(1)が出願された平成9年6月13日以前から,本件標章(1)を継続して使用しており,同標章を使用する権利を有している。
イ 本件標章(2)の使用について (ア) 被告は,「家庭教師派遣業自主規制委員会」と記載したことはあるが,これは,実際に,被告代表者が原告委員会の副理事長又は副会長であったときに,名刺の肩書にその旨表示したのであり,商標法上の使用には当たらない。
(イ) また,原告会社は,原告委員会に対し,本件商標(2)の使用を許諾しており,同原告の会員であり,かつ,役員である被告が同商標を使用することも許諾していた。
(6) 請求の趣旨7項について ア 肖像権侵害料について 被告は,被告社屋内に原告ら代表者の写真を展示していない。
イ 慰謝料について 被告は,原告らが主張する行為を行ったことはない。
(7) 請求の趣旨9項について 被告は,原告ら代表者の「写真」を展示しておらず,「委任状」は所持していない。
当裁判所の判断
1 請求の趣旨1項について (1) 名誉毀損料及び信用回復対策費用について 被告の営む平成学院スパルタ塾の静岡新聞及びタウンページの広告において,被告が「AAAの優良業者です。NPO家庭教師派遣業自主規制委員会認定」と掲載した行為により,原告委員会のNPO活動が妨害され,同原告の信用が失墜したとの事実を認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告委員会の上記請求は理由がない。
(2) 原稿作成料等について 被告が,原告委員会との間で,教育報道新聞の「論壇」の原稿作成料等として,10万2600円を支払う旨の合意をしたことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告委員会の上記請求は理由がない。
(3) 理事負担金について 原告委員会は,被告が同原告の理事であることを前提として,理事会及び臨時総会の決議に基づく理事負担金12万5825円の支払を求めている。
しかしながら,原告委員会作成の「ご入会案内」(甲1)における役員名簿には「副理事長 B(静岡県家庭教師センター学長)」と記載され,同原告作成の「委嘱状」(乙10)には,同原告の会長に委嘱された者として,「静岡県家庭教師センター所長 B」と記載されており,被告ではなく被告代表者個人の名前が理事とされていることが認められる。
したがって,被告が原告委員会の理事であることを前提とする同原告の上記請求は,理由がない。
2 請求の趣旨2項ないし同4項について (1) 原告委員会は,「AAAの優良業者です。NPO家庭教師派遣業自主規制委員会認定」との表示並びに「家庭教師優良業者全国ネットワーク」及び「静岡県家庭教師センター」の名称が特定商取引法43条に違反し,47条に当たる旨主張する。
特定商取引法は,43条で役務提供業者等の誇大広告等を禁止する旨規定し,47条で主務大臣の業務停止権限等を規定しているが,役務提供業者等に同法43条に違反する行為があったとしても,私人が同法の規定に基づき当該役務提供業者等に対して業務の停止や違反行為の差止め等の措置を求める権利を有することを規定したものではない。
(2) また,原告委員会は,「家庭教師優良業者全国ネットワーク」及び「静岡県家庭教師センター」の名称が家庭教師派遣業自主規制規約に違反し,「静岡県家庭教師センター」の名称が家庭教師派遣業広告倫理綱領に違反する旨主張する。
しかしながら,家庭教師派遣業自主規制規約及び家庭教師派遣業広告倫理綱領は,家庭教師派遣業者において,業務が適正に行われるようその行動準則を規定したものであって,私人が同規約の違反行為の差止め等の措置を求め得る法律上の根拠となるものではない。
(3) したがって,原告委員会の上記請求は理由がない。
3 請求の趣旨5項,同6項及び同8項について (1) 本件標章(1)の使用について ア 証拠(甲3の2,15の1及び2,33の6及び7)によれば,原告会社は,本件商標権(1)を有すること,被告が,被告社屋の正面右側上に,「全日本家庭教師センター連盟」の看板を設置していることが認められる。
イ 証拠(甲6の1及び2,15の1及び2,乙6,7,13)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
(ア) 全日本家庭教師センター連盟は,昭和57年,原告ら代表者Aが中心となって家庭教師派遣業者により設立された団体であり,同連盟の会長は同人である。
(イ) 被告は,昭和61年ころ,全日本家庭教師センター連盟に加入し,被告代表者は,昭和63年5月,同連盟の理事となり,平成2年11月から平成4年11月までの間,同連盟の副会長を務めた。
(ウ) 被告は,全日本家庭教師センター連盟の会長であり,原告ら代表者であるAから,昭和63年夏ころ,被告社屋に「全日本家庭教師センター連盟」の看板を掲げるよう勧められ,そのころ,前記アのとおり被告社屋の正面右側の上に看板を設置した。
(エ) 原告会社は,本件商標(1)について,平成9年6月13日,商標登録を出願し,平成11年4月9日,本件商標権(1)の登録を受けた。
(オ) Aは,平成14年6月8日,「警告書」と題する書面により,被告代表者に対し,「全日本家庭教師センター連盟」の使用を止めるよう求め,原告らは,同年7月17日,被告に対する本件訴訟を提起した。
(カ) 被告が上記看板を設置した以降,Aが被告社屋を訪れ,同看板を見ることはあったが,被告は,上記(オ)に至るまでは,同人及び原告会社から,同看板の設置を止めるよう求められたことはなかった。
ウ 以上の事実によれば,被告が上記看板を設置したのは,原告会社の代表者であるAに勧められたためであり,また,原告会社は,平成11年4月9日,本件商標権(1)の登録を受け,被告が同看板を設置していることを知りながら,同看板の設置を止めるよう求めたことはないのであるから,被告は,同日ころ,原告会社から,同看板を設置することにつき,許諾を受けていたというべきである。
エ したがって,商標権侵害を理由とする原告会社の100万円の損害賠償請求及び使用禁止等の請求は,いずれも理由がない。
(2) 本件標章(2)の使用について ア 証拠(甲13の1ないし3)によれば,原告会社は,本件商標権(2)を有することが認められる。
イ 被告の営む平成学院スパルタ塾のインターネットのホームページ上の「ご挨拶」と題するページ(甲3の1)には,被告代表者の挨拶文及び被告代表者の写真を掲載した下の部分において,最下段に太字で「B」と記載した上に,「通産省家庭教師自主規制委員会委員」と記載されていること,被告代表者の名刺(乙14)には,被告代表者の写真の下に「NPO家庭教師派遣業自主規制委員会(副理事長)」と記載されていることが認められる。しかし,上記の各記載は,いずれも,同人の役職を示す記載であって,被告の標章として使用されたものではないことは明らかである。
また,平成13年11月ころの静岡新聞(甲4)には,被告の営む平成学院スパルタ塾の広告において,「平成学院スパルタ塾」の表示の下に小さく〈NPO法人家庭教師派遣業自主規制委員会認可,AAAの優良業者です〉と記載されていること,同月ころのタウンページ(甲5)には,同塾の広告において,「平成学院スパルタ塾」の表示の下に小さく「AAAの優良業者です。(NPO家庭教師派遣業自主規制委員会認定)」と記載されていることが認められる。しかし,上記の各記載は,いずれも,被告が家庭教師派遣業自主規制委員会からAAAの優良業者であるとの認定を受けたことを説明的に記述したものであって,被告の商標として使用されたものでないことは明らかである。
「今の自主規制委員会を支えて下さるのは優良業者全国ネットワークの皆様方です」と題する書面(甲21)には,「家庭教師派遣業自主規制委員会」と表示されているが,同書面と被告との関わりは全く不明であり,これにより被告が本件標章(2)を使用しているとの事実を認めることはできない。
ウ 以上のとおり,被告が本件標章(2)を商標として使用しているとの事実を認めるに足りる証拠はないから,商標権侵害を理由とする原告会社の100万円の損害賠償請求及び原告らの使用禁止等の請求は,いずれも理由がない。
4 請求の趣旨7項について (1) 肖像権侵害料について 被告が,被告社屋内に原告ら代表者が著名人とともに写っている「写真(パネル)」を展示しているとの事実を認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告らの上記請求は理由がない。
(2) 慰謝料について ア 被告が,Eらとともに,インターネット[www.aozora.com/kzi]上で,77回にわたり原告委員会に対する誹謗中傷行為を行ったとの事実を認めるに足りる証拠はない。なお,ウエブページ(HTTP.//www.aozora.com/kzi)の写し(甲17の1ないし3,17の1の4の1及び2,17の5ないし14)には,原告委員会に関する書込みがあることが認められるが,これらの書込みが被告によって行われたことを認めるに足りる証拠はない。
イ また,被告が原告委員会を誹謗中傷するために作成された文書の送付に協力したとの事実を認めるに足りる証拠はない。なお,証拠(甲19)によれば,「家庭教師派遣業自主規制委員会・入会案内」と題する書面に「顧問」と表示されていたD弁護士が,原告委員会に対し,同人を顧問として表示することの削除を求めた書面を送付したことはうかがわれるものの,上記書面の送付に被告が協力したことを認めるに足りる証拠はない。
ウ したがって,原告らの上記請求は理由がない。
5 請求の趣旨9項について 原告らは,原告ら代表者が著名人とともに写っている「写真(パネル)」,被告に授与した有効期限が切れた「委任状」及び「認定書」並びに被告に対する「原告の推薦文がある印刷物」について,使用の禁止等を求める根拠を主張しない。
なお,被告が,原告らが主張する上記写真(パネル)及び各文書を使用し,又は,所持しているとの事実を認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告らの上記請求は理由がない。
6 結論 以上のとおりであるから,原告らの請求はいずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。
追加
(別紙)標章目録(1)全日本家庭教師センター連盟(2)家庭教師派遣業自主規制委員会(別紙)商標権目録(1)登録番号第4261239号出願日平成9年6月13日登録日平成11年4月9日指定役務第35類職業のあっせん第41類技芸・スポーツ又は知識の教授,研究用教材に関する情報の提供及びその仲介,セミナーの企画・運営又は開催,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)登録商標全日本家庭教師センター連盟(2)登録番号第3366762号出願日平成6年6月7日登録日平成9年12月19日指定役務第41類技芸・スポーツ又は知識の教授登録商標家庭教師派遣業自主規制委員会
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 上田洋幸
裁判官 浅香幹子