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関連審決 審判1999-18714
関連ワード 識別力 /  指定商品 /  4条1項11号 /  結合商標 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  補正 /  非類似 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 578号 審決取消請求事件
原告 シエンマヌファクチュリング カンパニ インコーポレイテツド
訴訟代理人弁理士 渡辺弥一、木村進一、木村俊之
被告 特許庁長官太田信一郎
指定代理人 柳原雪身、林栄二、宮川久成
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/06/26
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
特許庁が平成11年審判第18714号事件について平成14年7月16日にした審決を取り消す、との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成8年10月4日、別紙1に示すとおりの構成からなる商標(本願商標)につき、第24類、願書記載の商品を指定商品として、商標登録出願(平成8年商標登録願第112872号)をしたが、平成11年10月22日、拒絶査定(原査定)を受けたので、これに対する不服の審判を請求した(平成11年審判第18714号)。
その後、平成14年3月6日付け手続補正書により、指定商品が第24類「綿製タオル製ふきん、綿製ふきん、綿製なべつかみ、綿製天火用手袋、綿製エプロン、
綿製台所器具カバー、綿製プレースマット、綿製ナフキン、綿製テーブル掛け、綿製いす用座布団」と補正されたが、特許庁は、平成14年7月16日、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決をした(平成14年8月5日に審決謄本送達。
出訴期間として90日付加)。
原告は、本訴提起後の平成14年12月12日付けで本願商標の指定商品の一部(綿製天火用手袋、綿製エプロン、綿製いす用座布団)につき分割出願をし、これと同時に提出した手続補正書により、本願商標の指定商品を、上記分割出願に係る商品を除いた第24類「綿製タオル製ふきん、綿製ふきん、綿製なべつかみ、綿製台所器具カバー、綿製プレースマット、綿製ナフキン、綿製テーブル掛け」と補正した(甲19、20の1、2)。
2 審決の理由の要旨 審決の理由の要旨は、以下のとおりである(審決の理由欄の「4 当審の判断」を引用する。)。 本願商標は、後掲(本判決添付別紙1)のとおり、細線の縁取りを有する黒塗りの菱形内に白抜きでなる「RITZ」の欧文字を圧倒的顕著に表してなるものであるところ、顕著に表された該「RITZ」の文字のみにおいて、独立して取引に資される場合があるものというを相当とする。
してみれば、本願商標からは、該文字「RITZ」に相応する「リッツ」の称呼を生じるものというべきである。
他方引用A商標及び引用C商標は、「LE RITZ」の欧文字よりなるものであり、また、引用B商標は、「RITZ」の欧文字よりなるものである。 ところで、当審が職権をもって調査したところ、商標権一部取消し審判があった結果、引用A商標及び引用C商標については、本願商標と抵触する請求に係る指定商品について、その登録を取り消す旨の審決がなされているが、引用B商標については、請求に係る指定商品について、取り消さない旨の審決がなされ、商標登録原簿において、その確定登録が、平成14年4月10日になされたものである。
そして、引用B商標は、該構成に照らして、「リッツ」の称呼を生ずることが明らかである。
してみれば、本願商標と引用B商標とは、互いに「リッツ」の称呼を共通にする類似の商標であり、また、補正後の本願指定商品中の「綿製天火用手袋、綿製エプロン、綿製ナフキン、綿製いす用座布団」は、引用B商標の指定商品に包含されているものであるから、なお、指定商品における抵触を免れず、結局、本願商標は、
商標法4条1項11号に該当するものである。
したがって、原査定は、取り消すことができない。
3 引用商標 審決において引用された引用B商標(登録第2492400号、別紙2、甲3)は、「RITZ」の文字を横書きしてなり、平成2年6月8日に登録出願、旧第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、平成4年12月25日に設定登録されたものである。
(本判決中では、平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表を「商標法施行令(旧)別表」、平成3年通商産業省令第70号による改正前の商標法施行規則別表を「商標法施行規則(旧)別表」といい、これによる商品区分を「旧○類」と表示する。)
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(手続の瑕疵) 審判手続において、原告は、意見書提出の機会を与えられることなく拒絶審決を受けた。このような手続は、商標法55条の2第1項からみても違法なものである。
審決は、審査官の拒絶理由においては示されなかった「本願商標と引用B商標とは、互いにリッツの称呼を共通にする」、「本願指定商品中の「・・・綿製ナフキン」は引用B商標の指定商品に包含されている。」という新たな判断を加えており、審査官の拒絶理由とは形式的及び実質的に異なる拒絶の理由を発見した場合に該当する。したがって、審判手続において出願人(原告)に意見書提出の機会を与えなかったことは、手続的な瑕疵といわざるを得ない。
2 取消事由2(商標の類否についての判断の誤り) (1) 本願商標は、細線の縁取りを有する黒塗り菱形内に、白抜きで「RITZ」と「SINCE 1892」を顕著に表示している。
これに対し、引用B商標は、「RITZ」の黒色欧文字を単に横書きしたものである。
(2) 両商標は、外観及び観念を異にすることが明らかであるから、外観及び観念において非類似の商標である。
また、両商標は、称呼においても非類似である。
すなわち、本願商標は「リッツシンス1892」と称呼されるのに対し、引用B商標は「リッツ」としか称呼されないものであり、両商標の指定商品(本願商標は国際分類第24類の綿製ナフキンなど、引用B商標は旧第17類の被服など)において大きく異なっているため、取引における称呼の混同誤認が生じるおそれはない。本願商標は、「RITZ」と「SINCE 1892」の結合が自然であって、いずれにもウェイトがかたよらず、全体として1つの観念を生ずるものであるから、「RITZ」と「SINCE 1892」が分離して称呼されることはない。
(3) 原告は、米国において、@菱形の枠の中に「RITZ」の欧文字を表した商標(別紙3の1参照)を1918年4月から使用し、1983年3月22日に国際分類25類(被服履物)に商標登録し(米国登録第1231981号、甲14)、
A「RITZ」の欧文字を表してなる商標(別紙3の2参照)を1918年4月から使用し、1999年10月26日に国際分類第22類(ロープ製品、帆布製品、
詰物用の材料及び織物用の原料繊維)及び第24類(織物及び家庭用の織物製カバー)に商標登録し(米国商標登録第2288326号、甲15)、B黒線で表された菱形枠の中に「RITZ」の欧文字を表してなる商標(別紙3の3参照)を1918年4月から使用し、1999年10月26日に国際分類第21類(家庭用又は台所用の手動式の器具、化粧用具、ガラス製品及び磁気製品」に商標登録しているが、日本進出を企画して商標調査をしたところ、引用A商標(登録第2649723号、甲2)、引用B商標及び引用C商標(登録第2686308号、甲4)が存在していることを知った。
そこで、原告は、上記引用商標との抵触を避けるため、「RITZ」の文字の下に「SINCE 1892」を顕著に表した本願商標を出願したのであり、引用B商標が「リッツ」の称呼を生ずるとすれば、本願商標は、結合商標として、「リッツシンス1892」と称呼されるべきもので、自他商品の識別力があるものである。
3 取消事由3(商品の類否についての判断の誤り) (1) 審決は、本願商標の指定商品中の「綿製天火用手袋、綿製エプロン、綿製ナフキン、綿製いす用座布団」が引用B商標の指定商品に包含されているから、指定商品における抵触を免れないと判断したが、誤りである。
(2) 審決が引用B商標の指定商品に包含されるとした上記商品のうち、「綿製天火用手袋、綿製エプロン、綿製いす用座布団」は、平成14年12月12日付け手続補正書による補正によって、本願商標の指定商品に含まれないものとなっている。また、「綿製ナフキン」は、引用B商標の指定商品(旧第17類)に包含されるものではない。
すなわち、「綿製ナフキン」は、織物製ナプキン又は織物製テーブルナプキンの下位概念であるところ、織物製テーブルナプキンは、類似群コード19A05であって、旧第19類に属する。
したがって、本願商標と引用商標とが指定商品において抵触するとした審決の判断は誤りである。
被告の反論の要点
1 取消事由1(手続の瑕疵)に対して (1) 審決は、拒絶査定が引用した引用AないしC商標のうちの1つである引用B商標を引用して、本願商標が商標法4条1項11号に該当するとしたものであって、査定の理由と異なる拒絶理由を示したものではない。商標法55条の2第1項は、査定の理由と異なる拒絶の理由によって拒絶する場合に意見書提出の機会を与えるべきことを規定したものであり、本件はこれに当たるものではないから、審決における手続に違法はない。
(2) 実質的にみても、原告に意見書提出の機会が与えられなかったという原告の主張は失当である。
本願の経緯は、以下のとおりである。
平成8年10月4日 商標登録出願 平成10年6月26日 拒絶理由通知書(発送日) 平成10年9月30日 手続補正書及び意見書提出(甲23の1、2) 平成11年10月22日 拒絶査定(発送日) 平成11年11月22日 不服審判請求(乙1) 平成11年12月29日 引用商標AないしCにつき、商標権一部取消審判の請求 平成14年3月8日 引用B商標につき取消請求不成立審決確定 平成14年3月11日 手続補正書提出(乙10) 平成14年5月9日 引用A商標につき取消請求成立審決確定 平成14年6月10日 引用C商標につき取消請求成立審決確定 平成14年6月12日 審判請求の理由補充書提出(乙11) 平成14年7月5日 審理終結通知(発送日) 平成14年7月16日 本件審決 以上の経緯に照らすと、原告には、拒絶理由の通知から拒絶査定までの約1年4月以上の間、審判請求から審理終結までの約2年7月以上の間、いつでも反論のための意見書や補正書を提出する機会があった(補正につき、商標法68条の40第1項)。現に、原告は、意見書(甲23の1、2)、審判請求書(乙1)、手続補正書(乙10)、審判請求の理由補充書(11)を提出しており、その審判請求の理由補充書(乙11)は上記3件の取消審判の審決内容を踏まえたものとなっている。反論の機会が与えられなかったという原告の主張は失当である。
2 取消事由2(商標の類否についての判断の誤り)に対して 審決は、本願商標の全体的観察に基づいて、顕著に表された「RITZ」の文字から「リッツ」の称呼が生じるとしたものである(なお、審決は、本願商標から「リッツ シンス 1892」の称呼は生じないとしたものではない。)。
本願商標と引用商標Bとが称呼を共通にする類似の商標であるとした審決の判断に誤りはない 3 取消事由3(指定商品の抵触についての判断の誤り)に対して 「ナフキン」は、英語の「napkin」を語源とする「ナプキン」と同義語であり、人の肌やテーブルなどを拭う布製又は紙製のものを一般的に指す語である。
そして、引用B商標に適用される商標法施行令(旧)別表による商品区分において、旧第17類の商品として、商標法施行規則(旧)別表に「タオル」「ハンカチ」が例示されていることからも明らかなように、少なくとも「綿製ナフキン」の一部は、引用B商標に包含されているものである。
したがって、本願商標と引用B商標とが指定商品において抵触するとした審決の判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(手続の瑕疵)について (1) 商標法55条の2第1項は、「第15条の2及び第15条の3の規定は、第44条第1項の審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。」と規定し、拒絶査定不服審判を審理する審判合議体が査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合には、出願人に対し、「拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与える」ことを要求している。
本件においては、審査官は、引用A商標ないし引用C商標を引用して、本願商標は商標法4条1項11号に該当するとの拒絶理由を通知し、同拒絶理由により本願商標の登録出願を拒絶する査定(原査定)がされたこと、一方、審決も前記引用商標の1つである引用B商標を引用して、本願商標が商標法4条1項11号に該当するとの認定判断をし、これに基づき原査定を取り消すことはできないとしたものであることが証拠(甲1、21、22)により認められるところ、審決は、原査定が引用したのと同一の引用B商標を理由として本願商標が拒絶されるべきものであるとしたのであるから、その理由は、原査定と異なる拒絶の理由を構成するものではない。
したがって、審判手続において改めて意見書を提出する機会が原告に与えられなかったからといって、そこに商標法55条の2第1項違反の手続的瑕疵があるということはできない。
(2) 原告は、審決において示された「本願商標と引用B商標とは、互いにリッツの称呼を共通にする。」、「本願指定商品中の「・・・布製ナフキン」は引用B商標の指定商品に包含されている。」という認定判断は、原査定の理由には示されなかった理由であると主張する。しかし、審決の上記認定判断は、原査定と同じ引用商標に基づき、本願商標が4条1項11号に該当するとの認定判断をするに至った中間的な判断過程を明らかにしたものにすぎず、これを新たな拒絶の理由と評価することはできない。商標法52条の2第1項において準用する同法15条の2は、
そのような中間的な判断についてまで、あらかじめ出願人(原告)に通知すべき義務を定めたものではない。この義務があることを前提とする原告の主張は、採用することができない。
(3) 以上のとおりであるから、取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(商標の類否についての判断の誤り)について (1) 本願商標は、別紙1に示されるとおり、細線の縁取りを有する黒塗りの菱形内に白抜きで「RITZ」の欧文字を顕著に表し、その下に白抜きの小さな欧文字で「SINCE 1892」を表してなる構成であって、その顕著に表された「RITZ」の文字部分から、「リッツ」の称呼及び観念が生じるものと認められる。
一方、引用B商標の「RITZ」の文字からは、「リッツ」の称呼が生ずると認められる(争いがない。)。また、「RITZ」の文字からはその称呼に対応する「リッツ」の観念が生ずると認められる。
本願商標と引用B商標とを対比すると、両商標は、「RITZ」の文字から生ずる「リッツ」の称呼及び観念が共通しており、類似の商標というべきである。
(2) 原告は、本願商標からは「RITZ」の文字部分と「SINCE 1892」の文字部分とを結合した「リッツ シンス 1892」の称呼が生ずると主張する。しかし、本願商標の構成中、「RITZ」の文字部分は大きく白抜きで表されて最も顕著な部分であること、「SINCE 1892」は冗長であるうえ、
「RITZ」の文字の下に小さく表示されているにすぎず、語の意味からみても「RITZ」の由来を説明したものと受け取られる可能性が高いこと等を考慮すると、原告主張の「リッツ シンス 1892」の称呼が全く生じないとまではいえないものの、本願商標から生ずる称呼は、やはり「リッツ」であるというべきである。
称呼非類似をいう原告の主張は、本願商標からは「リッツ シンス 1892」の称呼のみが生じるとの前提に立ったもの解されるところ、本願商標から「リッツ」の称呼が生じることは、前示のとおりであるから、原告の主張は採用することができない。
(3) 以上のとおりであるから、取消事由2は理由がない。
3 取消事由3(指定商品の抵触についての判断の誤り)について (1) 本願商標の指定商品は、第24類「綿製タオル製ふきん、綿製ふきん、綿製なべつかみ、綿製台所器具カバー、綿製プレースマット、綿製ナフキン、綿製テーブル掛け」である。
そのうち、「綿製ナフキン」の「ナフキン」は、英語の「napkin」を語源とするもので「ナプキン」と同義語であるところ、「新英和大辞典第5版」(研究社、乙6)によれば、「napkin」は、(食卓用の)ナプキン、(リンネルや木綿の)小さなタオル、(育児用)おしめ、おむつ、ハンカチを意味するものとされ、コンサイスカタカナ語辞典(三省堂、乙7)によれば、「ナプキン」は、(洋食の席での)食事用ふきん、ひざにかける白い布、生理用品の1つ、紙ナプキン、
布製ナプキンの代用をする紙などを意味するものとされているから、「ナフキン」は、人の肌やテーブルなどを拭う布製又は紙製のものを一般的に指す語であると認められる。したがって、「綿製ナフキン」は、例えば、綿製の「タオル」、「ハンカチ」、「おしめ」を含むということができる。
(2) 一方、引用B商標の指定商品は、旧第17類の「被服、布製身回品、寝具類」であり、商標法施行規則(旧)別表には、旧第17類の「布製身回品」に属する商品として、「ハンカチ 手ぬぐい タオル ふろしき ふくさ」が例示されている。また、「商品区分に基づく類似商品審査基準〔改訂版〕」(昭和61年改訂第6版、乙12)によれば、「おしめ」は、旧第17類の「被服」の分類中に掲げられている。
(3) してみれば、平成14年12月12日付け手続補正書による補正後の本願商標の指定商品「綿製タオル製ふきん、綿製ふきん、綿製なべつかみ、綿製台所器具カバー、綿製プレースマット、綿製ナフキン、綿製テーブル掛け」のうちの一部は、上記補正がされた後も依然として引用B商標の指定商品に包含されているものであることは、明らかである。
したがって、本願商標と引用B商標とが指定商品において抵触するとした審決の判断に誤りがあるということはできない。
(4) 以上のとおりであるから、取消事由3は理由がない。
4 結論 原告主張の取消事由はいずれも理由がないから、原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実