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関連審決 不服2000-790
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事件 平成 14年 (行ケ) 224号 審決取消請求事件
原告 モリンダ・インコーポレーテッド
同訴訟代理人弁護士 小泉淑子
同 鳥海哲郎
同 菅尋史
同 鈴木学
同 弁理士 小林ゆか
被告 特許庁長官太田信一郎
同指定代理人 大島護
同 大橋良三
同 林栄二
同 涌井幸一
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/11/25
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
原告の請求
特許庁が不服2000-790号事件について平成13年12月17日にした審決を取り消す。
前提となる事実(争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯 原告は、1996年(平成8年)11月1日付けアメリカ合衆国を第一国出願とする商標登録出願を基礎としたパリ条約に基づく優先権を主張して平成9年4月15日に商標登録出願された平成9年商標登録願第106794号を原登録出願とする商標法10条1項の規定による商標登録出願として、平成10年12月9日、別紙審決書の写し(以下「審決書」という)の後記「本願商標」のとおり、図形とその中に「Tahitian」及び「NONI」の文字を二段に併記する構成からなる商標(以下「本願商標」という)について、指定商品を商品及び役務の区分第32類の「果実飲料」として、商標登録出願(平成10年商標登録願第105000号)をしたところ、特許庁は、平成11年10月22日に拒絶査定をした。
そこで、原告は、平成12年1月20日、拒絶査定不服審判の請求をして(不服2000-790号事件)、本願商標の指定商品について、「タヒチ島産の果実を原料として含む果実飲料」と減縮する補正をしたところ、特許庁は、平成13年12月17日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とし、出訴期間として90日を附加する審決をし、その謄本は平成14年1月15日に原告に送達された。
2 審決の理由 審決書に記載のとおり、審決は、「本願商標は、その構成中に「タヒチ産の植物ノニの果実」の意味合いを認識させる「TAHITIAN NONI」の文字を有してなるものであるから、「タヒチ産の植物ノニの果実を原料とする果実飲料」以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法4条1項16号に該当するものであり、これと同旨の原査定は取り消すべき限りでない」旨認定、判断した。
原告主張の審決取消事由の要点
審決は、本願商標がその構成中に「タヒチ産の植物ノニの果実」の意味合いを認識させる「TAHITIAN NONI」の文字を有してなるものである旨誤って認定し(取消事由1)、また、本願商標を「タヒチ産の植物ノニの果実を原料とする果実飲料」以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある旨誤って認定、判断したものである(取消事由2)。審決は、これらの結果、本願商標が商標法4条1項16号に該当すると誤って判断したものであり、違法であるから、取り消されるべきである。 1 取消事由1(本願商標の構成中の「Tahitian NONI」標章の意義についての認定の誤り) (1) 原告による「Tahitian NONI」標章等の採択について 本願商標の構成中の「Tahitian NONI」の文字(以下「「Tahitian NONI」標章」という。)又は「NONI」の文字は、原告が創作した造語であり、これらを商標として指定商品に初めて使用したのも原告である。
すなわち、原告は、「モリンダ・シトリフォリア」という果実のタヒチ産のものを原料として含む果実飲料の商品を「TAHITIAN NONI(Tahitian NONI)」との商標を付して製造、販売するために1996年に設立された米国の会社であり、原告の上記の商品(以下「原告商品」という。)の1年目の売上げは、6.28百万米ドル、2年目は、64.12百万米ドル、3年目は、125.79百万米ドルに達している。このように、原告会社は、原告商品の高い品質が消費者の潜在的需要を掘り起こした結果、年々急成長を遂げている企業である。
また、このような米国における成功の下で、世界中において原告商品のマーケットの拠点が設置されており、日本マーケットにおける拠点である原告の日本支社も1999年(平成11年)に設立された。
(2) 原告による原告商品の宣伝、販売活動について 原告は、他の商品開発を行わずに、「モリンダ・シトリフォリア」を原料として含む果実飲料「TAHITIAN NONI」を主力商品として、その販売促進に全力を傾けており、この原告商品の独自性及び有用性を一般消費者に理解、浸透させるため、原告及び原告の日本支社は、本願商標ないし「TAHITIAN NONI」、「タヒチアン ノニ」又は「NONI」、「ノニ」の商標(以下「本願商標等」という。)を付して、原告商品の大々的な宣伝広告活動を行なっている。
すなわち、「モリンダ・シトリフォリア」を原料として含む果実飲料は、原告が製造販売するまでは日本の市場には全く存在しなかったため、より多くの人に原告商品を知ってもらう必要があった。そのために、原告の日本支社は、日本における設立から現在までに、本願商標等を付して、原告商品の宣伝広告を行なうために、
平成11年(1999年)は、約2億3400万円、平成12年(2000年)は、約2億3000万円、平成13年(2001年)は、約3億3800万円という費用を投じている。
原告は、このような莫大な宣伝広告費をかけて、多数の人が行き交う新幹線、私鉄、地下鉄、JR等の路線の主要な駅で、本願商標等を使用した原告商品を紹介する看板、ポスターを貼付した(甲第2号証ないし第51号証参照。なお、書証番号の枝番については省略することがある。)。
また、原告は、原告商品を雑誌等の印刷媒体においても、本願商標等を付して積極的に宣伝広告している。すなわち、原告は、本願商標等を使用する原告商品の宣伝広告を、平成11年(1999年)から平成14年(2002年)にかけて、1回の発行部数が約72万部に達する「週刊新潮」や発行部数が約50万部に達する「an・an」等多数の雑誌において、継続的に行なっている(甲第59号証ないし第94号証参照)。
以上の原告による本願商標等を使用する原告商品の宣伝広告では、原告商品の原料が「モリンダ・シトリフォリア」という果実であることを説明している(甲第50号証の1ないし3、第60号証ないし第62号証、第65、第66号証、第69号証ないし第71号証、第74号証、第76、第77号証、第80号証、第92号証)。また、原告商品に関する説明的な語句を伴って「TAHITIAN NONI」、「タヒチアン ノニ」の標章を使用する場合には、「TM」又は「」の表示を「NONI」又は「ノニ」の文字に併記し、これが普通名称ではなく、原告の登録商標であることを明示し(甲第65、第66号証、第69号証ないし第71号証)、他方、原告商品の製造販売の主体として原告の名称を明記しているために(甲第50号証の1ないし3、第60号証ないし第62号証、第65、第66号証、第69号証ないし第71号証、第78号証、第81号証ないし第91号証、第93、第94号証)、本願商標の構成中の「Tahitian NONI」標章が、原告の業務に係る商品を表示するものであることは、一般の需要者が容易に理解することができるものであった。
そして、上記のとおり、原告及び原告の日本支社が、本願商標等を使用した原告商品をより多くの人に知らしめるために、積極的に電車、地下鉄、新幹線等不特定多数の人が目にする広告スペースを利用して継続的に宣伝広告を行い、また、雑誌等の印刷媒体においても積極的に広告を掲載したことに加え、原告商品が従来市場に存在しなかった斬新なものであり、潜在的需要を掘り起こすに足りる非常に高い品質を持っていたことなどから、本願商標等が使用された原告商品は、市場において高い評価が与えられ、その結果、原告及び原告の日本支社の日本における本願商標等を使用した商品の売上げは、平成11年度(1999年度)は、約88億円、
平成12年度(2000年度)は、約156億円、平成13年度(2001年度)は、約164億円と急激に増加しており、その約85%は、果実飲料である原告商品が占めている(甲第99号証ないし第101号証)。
上記の原告商品の売上げは、主として日本におけるディストリビュータに対する販売によるものであるが、日本の新規のディストリビュータの数も毎月約4000人づつ増加し、平成11年2月の日本での営業開始直後は約10,000人であった登録ディストリビュータの数が、平成12年度は115,610人、平成13年には155,005人にまで達しており、原告の日本におけるビジネスが非常に成功を収めていることがわかる(甲第102号証の1、2)。また、甲第254号証ないし第267号証は、原告がディストリビュータに配布した本願商標を付した指定商品「タヒチ島産の果実を原料として含む果実飲料」についてのカタログ、パンフレットの一例であるが、これらのカタログ、パンフレットのうち、例えば、甲第255号証のカタログは、甲第253号証の2に示すように、17万部、甲第256号証のカタログは同じく14万3千部印刷されて配布されていることから、これらのカタログ、パンフレットは、多数のディストリビュータ及びかかるディストリビュータから購入する一般消費者の目に触れる機会があったものである。
また、世界における「モリンダ・シトリフォリア」を原料として含む果実飲料の原告のマーケットシェアは95%以上である(甲第103号証の1の44頁)。既に確立していたトマトジュース系野菜飲料の市場全体の売上が約500億円(平成11年)、果汁ミックス野菜ジュースの市場全体の売上が約780億円(平成11年)であったこと(甲第103号証の2)と比較すると、原告1社の単体の商品の売上げがいかに巨額で、かつ爆発的な伸びであるかは一目瞭然である。
以上のように、原告が莫大な費用をかけて行った宣伝広告及び販売活動によって、本願商標等を使用した原告商品は、東京を中心に爆発的な人気を得ることができ、また、近年の健康食品ブームの中において、原告商品は、食生活の乱れやストレスに悩む現代人に必要な栄養素を含むという点からも、一般的な消費者の圧倒的な支持を得ている。
したがって、原告商品に付された本願商標等について、一般需要者が原告商品の原材料であると認識する可能性や原材料の普通名称であると認識する可能性、及び他の多くの同業者が提供する同種製品をも表示するものであると認識する可能性は、いずれも全く存在しないのであって、原告による原告商品の宣伝広告によって、本願商標等は、自他商品識別機能を特別顕著性を有するに至るほど強力に取得し、「NONI」又は「ノニ」の商標は、原告商品を表示するものとして一般消費者の間で周知となっていたのである。
(3) 競合他社の「NONI」標章の使用について しかしながら、他方、競合他社が、原告商品に付された「Tahitian NONI」標章や「NONI」、「ノニ」の文字に化体したグッドウィルフリーライドして自己の商品を販売すべく、これらの文字商標を含む名称を自己の商品に付して、あたかも原告商品と類似する商品であるかのごとく販売を行うような事態が発生してしまった。
すなわち、本願商標等を使用した「モリンダ・シトリフォリア」を原材料とする原告商品は、原告の登録商標「NONI」(登録第4347138号)の出願を行なった平成11年1月28日の時点及び本願商標の出願を行なった平成9年(1997年)4月15日の時点においては、日本の市場に全く存在せず、米国においても、平成9年(1997年)に原告が「NONI」を原告商品についての商標として採択するに際し、インターネットにおいて検索を行なったが、その当時から原告のディストリビュータであった者のホームページが検索されただけであった(甲第104、第105号証)。このように、原告が米国及び日本において会社を設立し、原告商品の販売を開始したころは、競合他社が「モリンダ・シトリフォリア」を原料とする果実飲料について「NONI」と表示していた事実は全く存在せず、
またはかかる果実飲料の原料その他その品質を示すものとして「ノニ」という言葉が通常に用いられていたという事実は全く存在しなかった。
しかるに、審決は、原告及びその日本支社が、米国及び日本においてそれまで市場に全く存在しなかった斬新な原告商品を販売するために多額の宣伝広告費用を費やし、新商品の普及に努力したという事情を全く考慮せず、原告及びその日本支社が確立した信用に只乗りしようと試みる会社が原告に無断で「NONI」又は「ノニ」の商標を使用している事実のみをとらえて、「NONI」又は「ノニ」の商標は、原告商品を示すものではなく、「植物ノニ」の意味合いを認識させるという誤った認定をしたものである。
しかしながら、本願商標中の「Tahitian NONI」標章又は「NONI」若しくは「ノニ」の文字標章が原告の果実飲料商品を示す周知な商標となった結果、「ノニ」という言葉により取引者及び需要者が想起する概念は、「モリンダ・シトリフォリア」と称される植物ではなく、まさに「原告商品」そのものとなっているのである。このように、取引者・需要者にとっての「ノニ」と「モリンダ・シトリフォリアという植物」との概念の結びつきは、原告商品がモリンダ・シトリフォリアを原料とする飲料等のほぼ唯一の商品であるという事実に起因する間接的なものにすぎないことに留意すべきである。
(4) 以上のとおり、本願商標の出願時のみならず本件の審決時においても、本願商標の指定商品の需要者及び取引者が「モリンダ・シトリフォリア」について「NONI」又は「ノニ」と認識していた事実はなく、「NONI」の文字をもって構成される本願商標は、指定商品に使用された場合であっても、自他商品の識別機能を果たし、商品の品質を示す語ということはできない。
したがって、本願商標をその指定商品のうちの「タヒチ産の果実」である「モリンダ・シトリフォリア」以外の果実を原料として含む果実飲料に使用しても、本願商標は、商標法4条1項16号には該当しない。
2 取消事由2(商品の品質について誤認を生じると判断した点の誤り) (1) 本願商標の全体の構成について 上記1のとおり、本願商標の本件の審決時においても、本願商標の指定商品の需要者及び取引者が「モリンダ・シトリフォリア」について「NONI」又は「ノニ」と認識していた事実はないのであるから、本願商標中の「Tahitian NONI」の文字がタヒチ島産の果実である「モリンダ・シトリフォリア」を示すことにはならず、もちろん「植物ノニの果実」を示すことにもならないため、本願商標中の「Tahitian NONI」の文字部分は自他商品の識別機能を果たし、単に商品の品質を示すものと認識されることはないが、この点に加え、本願商標中の「Tahitian NONI」の文字部分は、特徴のある記載がなされており、流れるような筆記体で書かれた「Tahitian」の「h」の上にはタヒチの花を思わせる花のモチーフが施され、やわらかなイメージで記載されている一方、「NONI」は太くどっしりとした字体で記載されており、しかも最初の「N」はその後に続く「ONI」より少し大きく書かれ、夫々の「N」の文字の右下がり部分には溝をつけて「NONI」の文字を印象づけている。
したがって、本願商標中の「Tahitian NONI」の文字部分は、その特徴ゆえに、自他商品の識別機能を果たすことは明らかであり、これが単に商品の品質を示している文字であると需要者及び取引者が認識するとは到底考えられない。
(2) さらに、本願商標は、上記(1)の構成文字のみならず、タヒチの男性をイメージさせる男の人がほら貝で作った笛を吹いている図形と、その背景には、タヒチをイメージさせる南国の海と島の図形とから構成されている。そして、
特にこのタヒチの男性をイメージさせる男の人が、ほら貝で作った笛を吹いている図形は、原告商品に対する思いが込められているのである。すなわち、タヒチ島においては元来、大切な情報をいち早く知らせるため、ほら貝を吹いて島民に情報を伝える習慣があったため、原告は、本願商標にほら貝を吹いている男の人の図形を使用することにより、「モリンダ・シトリフォリア」の果実のすばらしさを世界中の多くの人々に伝えていくという原告の決意を表しているのである。また、原告はこのタヒチの男性をイメージさせる男の人に「フレッド」という愛称をつけているが、これも、原告が本願商標の構成中において特にこの図形を重要な部分であると考えているからである。
また、前記1の(2)のとおり、原告による原告商品の宣伝、販売活動の結果、本願商標は全体として、その指定商品である「タヒチ島産の果実を原料として含む果実飲料」を示す原告の商標として、東京を中心に全国にわたって取引者及び需要者の間に広く知られることとなったものであるから、現実の取引においても、
本願商標のうちの上記文字部分のみをことさら抜き出して、需要者及び取引者が商品の品質を誤認することはないというべきである。 (3) したがって、審決が本願商標の全体の構成を一切考慮せずに、単に本願商標の「Tahitian NONI」の文字部分のみにことさら注目して、これが単に商品の品質を示している文字であると判断したことは誤りである。すなわち、本願商標の全体の構成から需要者及び取引者に商品の品質誤認を生ずるか又は生ずるおそれがあるか否かを判断すべきであり、本願商標においては、上記のとおり、「Tahitian NONI」の文字部分のみならず、図形部分からも、指定商品との関連において、商品の品質誤認を生じさせることにはならない。
被告の反論の要点
審決の認定・判断は、正当であり、審決に原告主張の違法はない。
1 本願商標は、文字と図形によって構成されているところ、その文字部分は、
「Tahitian」と「NONI」の文字と容易に認識し得るものである。そして、該文字は、「タヒチ産の植物ノニの果実」の意味合いを認識させるものであるから、特許庁では、指定商品である「タヒチ島産の果実を原料として含む果実飲料」の中でも、「「タヒチ島産の植物ノニの果実を原料とする果実飲料」以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある」として、商標法4条1項16号に該当する旨の拒絶理由を通知した。
これに対して、原告は、「「ノニ」と呼ばれているのはほんの少しの地域にすぎず、我が国においても別な呼び名が存在する」、「「NONI」という文字を含む商標を見ても、この言葉が商品の原材料を表しているとは認識しない」との意見書を提出して、本願商標の指定商品を「タヒチ島産の植物ノニの果実を原料とする果実飲料」に相応する商品に補正することをしなかったために、本件の審決に至ったものである。
2 審決は、我が国でも、「NONI」あるいは「ノニ」の語が指定商品の原材料である果実の普通名称として使用されていることを示すことで、この言葉が商品の原材料を表すものとして認識されることを明らかにしている。
具体的には、まず、「パイナップル果汁、梨果汁、葡萄果汁」とともに「ノニ果汁」を原料とした瓶入りジュース「ハワイアン アイランド ノニジュース」が、
輸入元として有限会社ノニノニインターナショナルによって取引されている事例を示している。
次に、審決は、6件のインターネットのホームページ情報を示している。乙第1号証の2ないし7は、その写しであり、それぞれの右下にある年月日と時刻は、同情報をコンピュータから出力した時期を示すものであり、審決時の前に、これらの情報がインターネットのホームページに掲載されていたことは明らかである。
これらは、ノニのジュースやエキスに関するものであり、上記各乙号証には、原料の果実を「ノニ」と称している審決説示の表示が掲載されているほか、瓶のラベルに大きく「NONI」の文字が表示された商品の写真も多く表示されている。
3 「NONI」あるいは「ノニ」の語に関しては、上記に加え、以下のように、「ノニ」の情報が掲載され、果実の名称として「ノニ」の語が用いられており、これをみても、「NONI」あるいは「ノニ」の語が商品の原材料を表すものとして認識されることは明らかである。
(1) 審決前の情報としては、以下の事実が認められる。
ア 株式会社主婦の友社発行「健康」平成13年7月号(乙第2号証)では、「「ノニ」で血糖値が下がった、不眠症が治った」と題する記事が掲載され、「みなさんは「ノニ」という名前の果物をご存じでしょうか。ノニは・・・万病に効果があると、現在各方面で最も注目されている果物です。」と記載されている。
イ 株式会社わかさ出版発行「わかさ」平成13年10月号(乙第3号証)では、「脂肪減らしの強力な酵素の働きで月に10キロ15キロやせる人が続出する南国の果実[ノニ]ジュース」と題する記事が掲載され、「「ノニ」は、インドネシアをはじめとする東南アジアや、グアム島、タヒチなどの太平洋に広がる熱帯の島々に自生する植物です」と記載されている。
ウ 株式会社小学館発行「女性セブン」平成13年10月18日号(乙第4号証)では、「話題のミラクルフルーツ「NONI」の実力」と題する記事が掲載され、「万病に効くほか、美肌やダイエットにも効果抜群といわれる南国産フルーツ「ノニ」。5年ほど前から米国で大ブームになり、日本でもいま脚光を浴びている。・・・ノニは、学名「モリンダシトリフォリア」というアカネ科の熱帯性植物」と記載されている。
エ 乙第5号証1、2のインターネットのホームページ情報においても、「ノニ」の情報が掲載されており、いずれにおいても、果実の名称として「ノニ」の語が用いられている。
(2) さらに、審決後の情報(作成時期が不明のものを含む。)ではあるが、以下の事実が認められる。
ア 「現代用語の基礎知識2002」(乙第6号証)には、「ノニ(noni) 南太平洋の島々やマレーシア、インドなどに生育する果物。血圧降下作用・・・」と記載されている。
イ 平成14年6月20日付け「健康産業流通新聞」(乙第7号証)には、「参入相次ぐモリンダC.市場」の見出しの下、「業界を牽引する大型素材として期待されているモリンダ・シトリフォリア(以下モリンダC.)。「ノニ」の通称で広く親しまれ・・・」とはじまる記事が記載されているとともに、該記事の下には、「ノニ」を扱う各社の広告が掲載され、それらには、「・・・利用されてきたノニ果実(モリンダシトリフォリア)は、過酷な熱帯地方の人々の健康、活力を支えてきた貴重なフルーツ。・・・」、「ノニはサモアやタヒチなどのポリネシアの島々で「奇跡のフルーツ」と呼ばれ、古来より飲用されている果物。」、「当社のタヒチ産のノニ(原料)は、一滴の水も加えない独特の製法で・・・」、「マレーシアの大自然に育まれた驚異の果実、ノニ。」などと記載されている。
ウ 「南太平洋の希少な薬用植物 POLYNESIAN NONI ポリネシア産ノニ」(乙第8号証)では、果実を「ノニ」として、該果実に関して紹介している。
エ 乙第9号証の1ないし4のインターネットのホームページ情報においても、「ノニ」の情報が掲載されており、いずれにおいても、果実の名称として「ノニ」の語が用いられている。
以上のアないしエは、審決後のものであるが、これらによっても、「NONI」「ノニ」の語が学術名では「モリンダ・シトリフォリア」という植物の果実を意味する語として、現在でも日本国内において広く使用されているということができ、
上記(1)の事実を補完する事実といって差し支えないものである。
(3) 以上によれば、本願商標中の「NONI」の文字は、指定商品の原材料となっている果実の普通名称であって、取引者、需要者をして、商品の原材料を表示するものと認識せしめること明らかであり、上段の「Tahitian」の文字と合わせれば、「タヒチ島産の植物ノニの果実」の意味合いを認識せしめるから、本願商標は、指定商品中、「タヒチ島産の植物ノニの果実を原料とする果実飲料」以外の商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、該商品がタヒチ島産の植物ノニの果実を原料とする果実飲料であるかの如く、商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。
4 なお、原告は、本願商標とほぼ同一の商標について、第5類の商品を指定商品として商標登録出願しているが、当該案件において、特許庁は、「「タヒチなどのポリネシア諸島に育つハーブの一種で、鎮痛・鎮静等作用のある成分が含まれている植物のノニ(学名:モリンダ・シトリフォリア)」の意味合いを認識させる「TAHITIAN NONI」の文字を有してなるものであるから、これをその指定商品中、「タヒチ産のノニを原材料として含む食餌療法用飲料,タヒチ産のノニを原材料として含む食餌療法用食品」以外の「タヒチ産の果物を原材料として含む食餌療法用飲料,タヒチ産の果物を原材料として含む食餌療法用食品」について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある」として、商標法4条1項16号に該当する旨の拒絶理由を通知した。
そして、出願人である原告は、指定商品を「タヒチ産のノニを原材料として含む食餌療法用飲料,タヒチ産のノニを原材料として含む食餌療法用食品」と補正し、
拒絶理由通知に応じたために、該商標を登録すべき旨の審決があり、登録第4544295号として商標登録されている(乙第10号証の1ないし5)。
当裁判所の判断
1 本願商標の構成及び指定商品について 本願商標は、審決書の後記の「本願商標」のとおり、図形とその中に「Tahitian」及び「NONI」の文字を二段に併記する構成からなるものであり、その指定商品を「タヒチ島産の果実を原料として含む果実飲料」とするものである。
本願商標の構成において、その構成中の図形部分は、南洋の海及び島と見られる場所を背景として、上半身裸の男子がほら貝で製作した笛を吹いている姿が大きく表記されており、また、その構成中の文字部分は、上段には、筆記体で書された「Tahitian」の文字が表記され、「h」の文字の上には花がデザインされ、その下段には、「NONI」の文字が太い書体で、かつ、最初の「N」の文字が、それに続く「ONI」の文字より少し大きく書され、また、それぞれの「N」の文字の右下がり部分には溝が付されて表記されている。
しかして、上記の「Tahitian」及び「NONI」の文字部分は、上記図形標章の上部に、上記笛を吹く男性の絵とほぼ重なることなく、大きく表記されているものであるから、本願商標の指定商品の取引者、需要者において、この文字標章を独立して看取することは極めて容易であると認められ、また、この文字標章を「Tahitian」及び「NONI」の欧文字が表記されたものと直ちに認識し、観念することができるものと認められる。
そして、本願商標の文字標章のうち、上段の「Tahitian」の文字部分が「タヒチ(タヒチ島)産の」という意味を表す英語であり、本願商標の指定商品の取引者、需要者において、このことを当然に認識することができることは、明らかである。 2 本願商標の構成中の「NONI」の語の意義について (1) 「NONI」の語の由来について(甲第124、第125号証、乙第2、第3号証、第5号証の2、第6号証、第8号証及び弁論の全趣旨) 学術名「モリンダ・シトリフォリア」は、植物分類でアカネ科のモリンダ属に属する植物であり、フランス領ソシエテ諸島のタヒチ島、ハワイ諸島をはじめとするポリネシアの島々に生育している。この植物の名称として、「NONI(ノニ)」という語は、タヒチ人の多いフランス領マルケサス諸島及びハワイ諸島で使用されており、この名前は、よく知られている(乙第8号証及び当裁判所に顕著な「広辞苑」の「マルケサス諸島」の用語参照)。その果実には、血圧降下作用、抗がん作用等があり、また更年期障害にも効果があるといわれており(以下、この果実を「NONI」果実という。)、現地では、「魔法のフルーツ」、「奇跡のフルーツ」などと呼ばれ、古来から、その果実、樹皮、根等を自然薬として利用している。この植物は、上記の地域のほかにも、オーストラリア、マレーシア、インド、
中国、沖縄などに生育しており、各地で別名で呼ばれ、日本では、従来から「ヤエヤマアオキ」と呼ばれている。
なお、原告は、「Tahitian NONI」又は「NONI(ノニ)」の語は、原告の創作による造語である旨主張しているが、上記掲記の各証拠によれば、
「モリンダ・シトリフォリア」は、タヒチ島、ハワイ諸島をはじめとするポリネシアの地域で生育する植物であり、これは「NONI(ノニ)」という名前でよく知られていることを優に認定することができ、原告の上記主張は、到底採用することができない。
(2) 我が国における「NONI」の語ないし「NONI」果実を紹介する書籍、雑誌記事等の状況 ア 久郷晴彦著「奇跡の鎮痛即効フルーツ」(平成11年8月7日発行、甲第125号証の10頁、11頁)は、「タヒチ島は、フレンチ・ポリネシア最大の島ですが、今、この島は、驚異的な治療効果で学会からも注目される奇跡の自然薬「モリンダ・シトリフォリア(Morinda Citrifolia)」の生育地として脚光を浴びはじめています。モリンダ・シトリフォリアというのは植物学上の名前ですが、現地では昔から「ノニ」(ポリネシア語)と呼ばれて親しまれてきました。」、「モリンダ・シトリフォリアという植物はアカネ科に分類されますが、タヒチ島をはじめとするポリネシアの島々だけでなく、広く中国やインド、ハワイや沖縄にいたる地域にも自生していて、その果実や樹皮や根は、二千年以上も前から現地の人々に自然薬として使用されてきたと言われています。」と記載した上で、モリンダ・シトリフォリアの効用、治療効果について紹介しており、
末尾に参考文献として、「ニール・ソロモン「驚異の自然薬 ノニ」(クロスワールト)、「タヒチアンジュース ノニ」(クロスワールト)、「ノニ・あなたの体をめぐる旅」(クロスワールト)」等を掲記している。なお、同書はその後発行を重ねており、平成13年6月27日に第13刷を発行している。
イ 久郷晴彦監修「神様からのフルーツ 驚異の体験集」(平成12年3月31日発行、甲第124号証の13頁)は、「モリンダ・シトリフォリアってなに?」との小見出しの下に、「モリンダ・シトリフォリアとは、タヒチやハワイなどのポリネシアに群生するフルーツです。これまで日本人には、まったくなじみがありませんでしたが、現地では「魔法のフルーツ」「奇跡のフルーツ」などと呼ばれ、2千年以上も前から「自然薬」として珍重されているフルーツなのです。モリンダ・シトリフォリアは学術名で、現地では「ノニ」と呼ばれています。モリンダ・シトリフォリアは、タヒチ島をはじめとするポリネシアの島だけでなく、広く中国、インド、ハワイ、オーストラリアなどに群生しています。」と記載した上で、モリンダ・シトリフォリアの効用、治療効果について紹介している。
ウ 株式会社主婦の友社発行「健康」平成13年7月号(乙第2号証)は、「「ノニ」で血糖値が下がった!、不眠症が治った!」と題する記事を掲載し、「ノニフルーツが治りにくい病気にも速攻効果」、「活性酸素を除去して、免疫力を高め糖尿病、高血圧、ガン予防など万病に効果を発揮するノニフルーツのパワー」、「万病に効く南国の不思議な果実ノニ」との見出しをつけて、「みなさんは「ノニ」という名前の果物をご存じでしょうか。ノニは・・・万病に効果があると、現在各方面で最も注目されている果物です。」、「日本では最近になってノニを利用したジュースなどの製品が普通に手に入るようになりました。そして、その高い効果がいまたいへんな注目を集めているのです。」と記載した上で、ノニの効果について紹介し、また、ノニジュースを飲むことによって治療効果があったという複数の体験記事を載せている。
エ 株式会社わかさ出版発行「わかさ」平成13年10月号(乙第3号証)は、「脂肪減らしの強力な酵素の働きで月に10キロ15キロやせる人が続出する」「南国の果実[ノニ]ジュース」と題する記事を掲載し、「「ノニ」は、インドネシアをはじめとする東南アジアや、グアム島、タヒチなどの太平洋に広がる熱帯の島々に自生する植物です。この植物の果実はこれらの島々では「神様の贈り物」と呼ばれ、大昔からケガ、やけど、赤痢、カゼ、痛み、発熱、便秘などあらゆる病気の治療に用いられてきたといいます。近年、ノニについての研究が盛んに進められた結果、ノニにはガンや高血圧、糖尿病などに対する治療効果もあることが認められてきました。そうした治療効果とともに最近注目されているのが、すばらしいダイエット効果なのです。果物には多くの酵素が含まれていることが知られていますが、ノニには格段に豊富に含まれています。」と記載し、その摂取の方法としてノニジュースを飲むことが紹介され、また、「わかさ医学研究班」として、ノニジュースを飲んだ場合のダイエット効果を紹介し、複数の体験談を載せている。
オ 株式会社小学館発行「女性セブン」平成13年10月18日号(乙第4号証)は、「話題のミラクルフルーツ「NONI」の実力」と題する記事が掲載され、「南国ポリネシアで、2000年も前から伝統医療薬として使われてきた「NONI(ノニ)」。青汁も真っ青のまずさだが、「そんなに体にいいなら我慢する」と大ブーム。このミラクル果実、とにかくすごい!」、「万病に効くほか、
美肌やダイエットにも効果抜群といわれる南国産のフルーツ「ノニ」。5年ほど前から米国で大ブームになり、日本でもいま脚光を浴びている。」、「ノニは、学名「モリンダシトリフォリア」というアカネ科の熱帯性植物。」と記載した上で、ノニジュースを飲んだ複数の者の治療効果の体験談を紹介している。
カ インターネットのホームページの情報において、医学・生理学博士ニール・ソロモンが「101の医療的用途をもつトロピカルフルーツ タヒチアンノニジュース」と題して、「ノニ(モリンダ・シトリフォリア)は、北アメリカ大陸の人々の間ではまだほとんど知られていない、非常に優れた治癒力を持つ果実である。ノニはポリネシア、中国、インド、その他の地域で2000年以上にわたって用いられ、その効果を発揮してきた。」、「合衆国では、ノニフルーツは栄養補助食品としてジュースの形で提供されている。ノニの実はたいへん苦く癖のある臭いがするが、栄養補助食品としてのジュースには天然のグレープジュース及びブルーベリージュースが加えられているため、その味や香りはともにたいへん心地のよいものとなっている。」と記載した上で、「タヒチアンフルーツのノニ」の治療効果等を記載した文章を紹介している(乙第5号証の2)。
キ なお、我が国における翻訳本の発行年月日は不明であるが、リタ・エルキンス著「ポリネシア産ノニ 南太平洋の希少な薬用植物」(ウッドランド印刷、2000年(平成12年)発行、乙第8号証)では、学術名「モリンダ・シトリフォリア」について「タヒチの人々はノノと呼びます。ノニというよく知られた名前はマルケサス諸島およびハワイで使用されます。」と記載し、「ノニ」の果実について、「今日の世界ではノニはどこで栽培されていますか?」との小見出しの下で、「今日、ノニは気候が最適なポリネシア諸島の多くで生育しています。タヒチ、ハワイ、およびフランス領ポリネシアのマルケサス諸島はノニ栽培で最もよく知られています」と記載した上で、「ノニ」の治療効果等を詳しく紹介している。
ク 以上のとおり、本件の審決(平成13年12月17日)の以前において、我が国においても、学術名「モリンダ・シトリフォリア」の植物ないしその果実について、「ノニ(NONI)」の名称のものとして、書籍、雑誌、インターネットのホームページ情報において広く紹介されてきており、我が国における一般的な用語事典である「現代用語の基礎知識」の2002年(平成14年)版(株式会社自由国民社、平成14年1月1日発行、乙第6号証)にも、「ノニ(noni)」の用語について、「南太平洋の島々やマレーシア、インドなどに生育する果物。血圧降下作用、抗ガン作用があり更年期障害にも効果があるといわれる。」と記載され、登載されるに至っている。
ケ なお、本件の審決の以降においても、次のとおり、新聞記事、インターネットにおいて、「NONI」果実について紹介されている。
(ア) 平成14年6月20日付け「健康産業流通新聞」(乙第7号証)には、「参入相次ぐモリンダC.市場」の見出しの下に、「業界を牽引する大型素材として期待されているモリンダ・シトリフォリア(以下モリンダC.)。
「ノニ」の通称で広く親しまれ、TV、雑誌、電車の中吊り広告などメディアの露出も目立つようになった。」とはじまる記事が記載されている。なお、この記事の下には、「ノニ」を原材料とする果実飲料を発売する原告以外の業者の広告も掲載されており、それらには、「ノニ果実(モリンダシトリフォリア)は、過酷な熱帯地方の人々の健康、活力を支えてきた貴重なフルーツ。」、「ノニはサモアやタヒチなどのポリネシアの島々で「奇跡のフルーツ」と呼ばれ、古来より飲用されている果物。」、「当社のタヒチ産のノニ(原料)は、一滴の水も加えない独特の製法」、「マレーシアの大自然に育まれた驚異の果実、ノニ。」などと記載されている。
(イ) インターネットのホームページ情報においても、「ノニ」の情報が記載され、「ノニ」の果実等の治療効果等を紹介している(乙第9号証の1ないし4)。
(3) 我が国における「NONI」果実を原料として使用した商品(果実飲料)の販売状況 ア 原告による販売状況(甲第99号証ないし第101号証、第102号証の1、2、第103号証の1、2、第284号証及び弁論の全趣旨) 原告は、タヒチ産の「モリンダ・シトリフォリア」の果実を原料として含む果実飲料の商品を「TAHITIAN NONI(Tahitian NONI)」との文字標章を付して製造、販売している1996年(平成8年)に設立された米国の会社であり、世界における「モリンダ・シトリフォリア」(「NONI」果実)を原料として含む果実飲料の原告のマーケットシェアは95%以上である。原告の日本支社は、1999年(平成11年)に設立された。
原告及び原告の日本支社の商品の売上げは、平成11年度(1999年度)は、
約88億円、平成12年度(2000年度)は、約156億円、平成13年度(2001年度)は、約172億円と増加しており、その約85%は、本願商標が付された原告商品(果実飲料)が占めている。
上記の原告商品の売上げは、主として日本におけるディストリビュータ(販売店)に対する販売によるものであるが、平成11年2月の日本での営業開始直後は約10,000人であった登録ディストリビュータの数が、平成12年度は115,610人、平成13年には155,005人となっている。
イ 原告と競合する会社による販売状況について 他方、我が国において本件審決の以前に、以下のとおり、原告以外の業者が「NONI」果実を原材料として使用する果実飲料の商品について、「NONI(ノニ)」の文字標章を付して販売していることが認められる。
(ア) 「ノニ果汁、パイナップル果汁、梨果汁、葡萄果汁」を原材料とした瓶入りジュースとして「ハワイアン アイランド ノニジュース」が、輸入元として「有限会社ノニノニインターナショナル」によって販売されている。その販売パンフレットには、「ノニとは学名モリンダシュトリフォリアという植物で、2000年前よりハワイを中心に驚異の果実、不思議の木の実、奇跡のフルーツとして珍重されてきました」と記載され、瓶のラベルに大きく「NONI」の文字が表示された商品の写真が掲載されている(乙第1号証の1)。
(イ) 審決が引用するとおり、6件のインターネットのホームページ情報において、「NONI」果実を原材料として使用する果実飲料(果実エキスを含む。)の商品について、「NONI」ないし「ノニ」の文字を含む標章が使用されて販売されている(乙第1号証の2ないし7)。
これらのインターネット情報には、審決書3頁に記載されているように、「ノニとは学名モリンダシトリフォリアという植物で、南太平洋の島々で「奇跡のフルーツ」「驚異の果実」として2000年前より健康維持のために珍重されてきました。」(同号証の2)、「大自然がくれた驚異のパワーを実感!タヒチの奇跡のフルーツ「ノニ」」(同号証の3)、「天国に一番近い島タヒチから届いた「奇跡のフルーツ」ノニが、現代人の栄養バランスと健康維持をサポートします。」(同号証の4)、「「ノニ」はアカネ科の植物で、南太平洋の島々で「奇跡のフルーツ」と呼ばれ2000年前より健康維持のために珍重されてきました。」(同号証の5)、「ノニは、ポリネシア地方に自生するフルーツハーブの一種で、2000年以上も諸島の人々に利用されてきました。」(同号証の6)、「ノニは、ポリネシア地方に自生するフルーツハーブの一種で、2、000年以上も諸島の人々に薬として利用されてきました。」(同号証の7)と、それぞれ「ノニ」についての情報が記載されているほか、瓶のラベルに大きく「NONI」の文字が表示された複数の果実飲料商品の写真が表示されている。
この他にも、インターネット情報として、「南国の果実ノニはインドネシア諸島をはじめさまざまな国で「神の薬」と呼ばれてきました。」などと記載して、「果実ノニ」を原料とした「ノニジュース」として、バリアンズ社の発売する「バリノニジュース」が宣伝広告されている(乙第5号証の1)。
(ウ) 株式会社主婦の友社発行「健康」平成13年7月号(乙第2号証)は、商品として「ノニジュース」が発売されているとして、インドネシア産のノニを使用した果実飲料として、「100%バリノニジュース」(バリアンズ、
健康プラザ・パル)、タヒチ産のノニを使用した果実飲料として、「100%ピュアノニエキス」、(まるも食品、健康プラザ・パル)、ノニ果汁にブルーベリー果汁等を配合した果実飲料として、「ロイヤルノニ」(パトス、健康プラザ・パル)、ハワイ産のノニ果汁にパイナップル果汁等を加えた果実飲料として、「ハワイアンノニミックスジュース」(ノニノニインターナショナル)、ハワイ産のノニ果汁にブルーベリー果汁等を配合した果実飲料として、「マウナノニジュース」(マウナウエスト)の各商品を紹介し、上記の各括弧内の発売先の電話番号を記載している。
ウ ディストリビュータ(販売店)によるインターネットを利用した原告商品の販売状況について 前記のとおり、原告商品の売上げは、主として日本におけるディストリビュータ(販売店)に対する販売によるものであるが、本件の審決前に、ディストリビュータ(販売店)によるインターネットを利用した原告商品の宣伝広告において、次の記載がされており、原告商品の消費者に対する販売活動において、原告商品の原材料である果実の名称として「ノニ」の語が用いられることがあったことが認められる(乙第11号証ないし第13号証及び弁論の全趣旨)。
(ア) 乙第11号証のインターネットのホームページ情報は、「フレンチ・ポリネシア諸島とノニの独占輸出販売契約を獲得しました。」、「ノニは、「ハーブの女王」「神からの贈り物」として2000年以上も昔からタヒチの人々に使われ親しまれています。」などと記載した上で、「ノニの内容成分とその効用」が記載され、「モリンダ日本支社からのメッセージ」の見出しの下に、「モリンダはノニそのものの成分を生かし、研究し、商品化して市場に出した最初の会社です。」と記載している。また、「ノニの果実」として「NONI」果実の写真を紹介している。
(イ) 乙第12号証のインターネットのホームページ情報は、「2000年以上も昔、現在のフランス領ポリネシア諸島に住んでいた人々は、この地で豊富に収穫できるある果実が健康増進に役立つことを発見しました。それがモリンダシトリフォリアと呼ばれる果実です。現地では昔から「ノニ」と呼ばれ、老若男女を問わず健康の源として親しまれてきました。」、「フレンチポリネシア諸島で民族伝承され「ハーブの女王」といわれるノニの果汁」、「モリンダ社はフレンチポリネシア諸島とノニの友好関係を築いています。」などと記載している。
(ウ) 乙第13号証のインターネットのホームページ情報は、「タヒチアン・ノニTMとは?」の見出しの下に、「タヒチアンノニTMジュースの主原料であるノニの実は学術名、モリンダ・シトリフォリアといい、タヒチでは「ハーブの女王」「神からの贈り物」と呼ばれて2000年以上昔から現地の人々のあいだで健康を維持する為に欠かせない伝統的なハーブです。」、「ノニは「捨てるところがない」といわれ、実はもちろん、根、皮、葉、種のどこをとっても利用できます。」などと記載し、また、「ノニの実」として「NONI」果実の写真を紹介している。
(エ) なお、本件審決後の乙第14号証のインターネットのホームページ情報においても、「ノニジュースと呼べるのは、モリンダのタヒチアンノニジュースだけです。最高品質のノニ(モリンダシトリフォリア)を使用し、モリンダ独自の特許製法により世界で初めて商品化された」、「タヒチアンノニ?ジュースの原料である、モリンダシトリフォリアは、一般的に、“NONI(R)”という名で多く知られ、日本名:ヤエヤマアオキと呼ばれる、アカネ科モリンダ属に属する、熱帯性植物です。」などと記載されている。
(4) 上記(1)ないし(3)に認定の各事実によれば、学術名「モリンダ・シトリフォリア」は、フランス領ソシエテ諸島のタヒチ島、ハワイ諸島をはじめとするポリネシアの島々に生育している植物であり、「NONI(ノニ)」という名前は、タヒチ人の多いフランス領マルケサス諸島及びハワイ諸島で使用されるものとして、よく知られていること、その果実(「NONI」果実)には、血圧降下作用、抗がん作用等があり、また更年期障害にも効果があるといわれており、現地では、「魔法のフルーツ」、「奇跡のフルーツ」などと呼ばれ、古来から、その果実、樹皮、根等を自然薬として利用されていたこと、我が国では、本件審決(平成13年12月17日)の以前においても、上記の「NONI」果実に関して、
「「モリンダ・シトリフォリア」は、タヒチやハワイなどのポリネシアに群生する植物であり、これは現地では「ノニ」と呼ばれていること、ノニの果実は、様々な治療効果やダイエット効果を発揮するものであり、ノニの果実を原料とするジュースが発売されていること」等について、書籍、健康雑誌、一般女性向け週刊誌及びインターネットのホームページの情報において、広く紹介されてきていること、そして、本件審決がされた翌年の平成14年1月1日に発行された我が国における一般的な用語事典である「現代用語の基礎知識」の2002年(平成14年)版にも、「ノニ(noni)」の用語が登載されるに至っていることが認められる。
また、我が国では、本件審決の以前において、「NONI」果実を原料として使用した果実飲料について、「NONI」、「ノニ」の文字標章を使用した商品が原告以外にも複数の業者によって販売されており、この販売活動において、「ノニ」は、南太平洋の島々で「奇跡のフルーツ」、「驚異の果実」として2000年前より健康維持のために用いられており、その商品は、ノニの果実を原材料とする果実飲料(果実エキス)であることなどが広く宣伝されていたことが認められる。
さらに、原告商品の売上げは、主として日本におけるディストリビュータ(販売店)に対する販売によるものであるところ、ディストリビュータによる原告商品の販売活動においても、原告商品について、「ノニは、「ハーブの女王」「神からの贈り物」として2000年以上も昔からタヒチの人々に使われ親しまれています。」などと記載した上で、原告商品が「ノニの果実」を原材料とするものであると紹介するものがあることが認められる。
(5) 上記(4)の諸事情を総合すれば、我が国では、本件の審決の以前において、「NONI」、「ノニ」の語は、タヒチ島を含むポリネシア諸島に生育し、数々の薬効を有する植物ないしその果実の普通名称として一般的に使用されてきていること、及び「NONI(ノニ)」果実は、果実飲料(果実エキス)の原材料として利用され、商品化されていることが広く宣伝され、「NONI」、「ノニ」の文字標章を使用した商品が広く販売されていることを推認することができ、
果実飲料(果実エキス)の商品の取引者及び需要者、特に健康維持、ダイエットに興味のある需要者層において、これらのことを一般的に認識することができたものと認められる。
したがって、本願商標の指定商品である「タヒチ島産の果実を原料として含む果実飲料」の取引者、需要者は、「NONI」の語について、果実の普通名称であると理解し、認識し得るものと認めることができる。
(6) 以上によれば、我が国において「NONI(ノニ)」の語は、果実の普通名称として使用されていない旨の原告の主張は、採用することができず、原告の取消事由1(本願商標の構成中の「Tahitian NONI」標章の意義についての認定の誤り)の主張は、その前提において失当であり、理由がない。
3 本願商標の商標法4条1項16号の該当性について (1) 本願商標の構成は、前記1のとおりであり、本願商標の指定商品の取引者、需要者において、本願商標の構成における「Tahitian」及び「NONI」の文字標章を独立して看取することは極めて容易であるものと認められ、また、この文字標章を「Tahitian」及び「NONI」の欧文字が表記されたものと直ちに認識し、観念することができるものと認められる。
そして、本願商標の文字標章のうち、上段の「Tahitian」の語が「タヒチ(タヒチ島)産の」という意味を表す英語であることは、明らかであり、下段の「NONI」の語は、前記2のとおり、我が国では、本件の審決の以前において、
タヒチ島を含むポリネシア諸島に生育し、数々の薬効を有する植物ないしその果実の普通名称として一般的に使用されており、本願商標の指定商品の取引者、需要者においても、そのように認識し得るものであることが認められるから、「NONI」の語が「Tahitian」の語と共に「Tahitian NONI」として、本願商標の指定商品に使用された場合には、その取引者、需要者において、
「タヒチ島産の植物ノニの果実」という原材料を表すものとして認識する可能性が高いものと認められ、原告が取消事由2として主張している本願商標の図形部分及び文字部分の全体的な構成を総合して考慮しても、このことを否定することはできない。
したがって、本願商標を「タヒチ島産の植物ノニの果実を原料とする果実飲料」以外の商品に使用するときは、その取引者、需要者の間において、商品の品質について、誤認を生じさせるおそれがあると認められるから、本願商標は、商標法4条1項16号に該当するものというべきである。
よって、これと同旨の審決の認定、判断に、誤りはない。
(2)ア 原告は、「原告による原告商品の宣伝広告によって、本願商標等は、自他商品識別機能を特別顕著性を有するに至るほど強力に取得し、「NONI」又は「ノニ」の商標は、原告商品を表示するものとして一般消費者の間で周知となっていた」旨を主張しているが、原告の主張を認めるに足りる的確な証拠はなく、かえって、前記2に認定の各事実に照らせば、原告の上記主張は、到底認めることができない。 イ また、原告は、「原告は、莫大な宣伝広告費をかけて、多数の人が行き交う私鉄、地下鉄、JR等の路線の主要な駅で、本願商標等を付して原告商品を紹介する看板、ポスターを貼付し(甲第2号証ないし第51号証参照)、また、
原告は、原告商品を雑誌等の印刷媒体において、本願商標等を付して積極的に宣伝広告しており(甲第59号証ないし第94号証参照)、これらの原告による本願商標等を使用した原告商品の宣伝広告では、原告商品の原料が「モリンダ・シトリフォリア」という果実であることを説明し(甲第50号証の1ないし3、第60号証ないし第62号証、第65、第66号証、第69号証ないし第71号証、第74号証、第76、第77号証、第80号証、第92号証)、さらに、原告商品に関する説明的な語句を伴って「TAHITIAN NONI」、「タヒチアン ノニ」の標章を使用する場合には、「TM」又は「」の表示を「NONI」又は「ノニ」の文字に併記し、これが普通名称ではなく、原告の登録商標であることを明示しており(甲第65、第66号証、第69号証ないし第71号証)、本願商標の構成中の「Tahitian NONI」標章が、原告の業務に係る商品を表示するものであることは、一般の需要者が容易に理解することができるものであった」旨主張し、それに沿うものとして、上記括弧内の各証拠のほか、原告の宣伝広告の実例等として、甲第254号証ないし第267号証、第269号証ないし第286号証を提出している。
ウ しかしながら、原告が原告商品の宣伝広告において、原告商品の原料につき「モリンダ・シトリフォリア」という果実であることを説明していても、
前記認定のとおり、我が国では、「モリンダ・シトリフォリア」が「NONI」と呼ばれていることが広く紹介され、「NONI(ノニ)」の語は、タヒチ島を含むポリネシア諸島に生育し、数々の薬効を有する植物ないしその果実の普通名称として一般的に使用されてきているものと認められるのであるから、本願商標に接する本願商標の指定商品の取引者、需要者は、本願商標の構成中の「Tahitian NONI」の文字部分については、原告主張の字体等の特徴にはそれほど高度の創作性を認めることはできないことから、本願商標の構成中の特徴のある図形部分とは異なり、自他商品の識別標識として出所表示機能を備えるものではないものと理解し、「タヒチ島産の植物ノニの果実」という原告商品の原材料を表すものであると認識することが多いものと容易に推認することができる。
また、原告が主張するように、原告が原告商品の宣伝広告において「TAHITIAN NONI」、「タヒチアン ノニ」の文字標章を使用する場合に「TM」又は「」の表示を「NONI」又は「ノニ」の文字に併記していても、この点に係る原告提出の前掲各証拠(甲第65、第66号証、第69号証ないし第71号証、
第254号証ないし第263号証、第265号証ないし第267号証、第269号証ないし第281号証、第283号証、第285、第286号証)によれば、「TM」又は「」の表記は、「TAHITIAN NONI」、「タヒチアン ノニ」の表記と比較して非常に小さいものであると認められ、本願商標の指定商品の取引者、需要者は、その「TM」又は「」の表示に特に留意することなく、「TAHITIAN(Tahitian)」及び「NONI」の用語が本来備えている前判示の意義を直ちに想起して、本願商標の構成中の「Tahitian NONI」の文字部分は、「タヒチ島産の植物ノニの果実」という商品の原材料を表示するものであると即断することが決して少なくないものと推認することができる。
したがって、原告の上記イの主張及び立証は、上記(1)の本願商標が商標法4条1項16号に該当する旨の認定、判断を左右するものではない。
(3) 以上のとおり、原告の取消事由2(商品の品質について誤認を生じると判断した点の誤り)の主張も、理由がない。
4 結論 以上のとおり、原告主張の審決取消事由はすべて理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 青柳馨
裁判官 橋本英史