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審判番号(事件番号) データベース 権利
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平成17行ケ10840審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 識別機能 /  指定商品 /  4条1項11号 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  警告 /  無効審判 /  非類似 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10532号 審決取消請求事件

原告 ソースネクスト株式会社代表者代表取締役
訴訟代理人弁護士藤勝辰博
同 弁理士鈴木直郁
被告 株式会社エス・エス・アイ代表者代表取締役
訴訟代理人弁理士稲垣仁義
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2005/10/12
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2004-35125号事件について平成17年5月10日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は,「携帯接楽」の文字(標準文字)を横書きしてなり,指定商品を第9類「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の記憶媒体,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),救命用具,電気通信機械器具,録音済み磁気カード・磁気シート及び磁気テープ,録音済みのコンパクトディスク,EPレコード,LPレコード,その他のレコード,電子出版物,オゾン発生器,電解槽,ロケット,スロットマシン,回転変流機,調相機,運動技能訓練用シミュレーター,乗物運転技能訓練用シミュレーター,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,火災報知機,ガス漏れ警報器,事故防護用手袋,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,消防車,スプリンクラー消火装置,消防艇,盗難警報器,保安用ヘルメット,防火被服,防じんマスク,防毒マスク,磁心,自動車用シガーライター,抵抗線,電極,溶接マスク,映写フイルム,スライドフイルム,スライドフイルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,ガソリンステーション用装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,金銭登録機,計算尺,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,電気計算機,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,潜水用機械器具,レギュレーター,アーク溶接機,犬笛,家庭用テレビゲームおもちゃ,金属溶断機,検卵器,電気溶接装置,電動式扉自動開閉装置,メトロノーム,耳栓」とする登録第4590941号商標(平成14年3月28日出願,同年8月2日設定登録,以下「本件商標」という。)の商標権者である。
原告は,本件商標の登録(以下「本件登録」という。)を無効とすることについて審判を請求し,特許庁は,これを無効2004-35125号事件として審理した結果,平成17年5月10日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を同月20日に原告に送達した。
2 審決の理由 審決の理由は,別添審決謄本写記載のとおりであり,本件商標と登録第4554771号商標(以下「引用商標」という。)とは,「接楽」の文字が同じであっても,外観,称呼及び観念のいずれにおいても紛らわしいところがないから,両者は,非類似の商標であり,したがって,本件商標は,商標法4条1項11号に違反して登録されたものでないから,その商標登録を同法46条1項の規定により無効とすることはできないとした。
3 引用商標 引用商標である登録第4554771号商標は,「常時接楽」の文字(標準文字)を横書きしてなる,指定商品を第9類「電子計算機用プログラムを記憶した磁気ディスク・CD-ROM・DVD-ROM及びその他の記録媒体,その他の電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,電気計算機」とするもので,原告が平成13年2月22日に登録出願し,平成14年3月22日に設定登録を受けた。
原告主張の審決取消事由
審決は,本件商標と引用商標とが非類似の商標であると誤った判断をし,その結果,本件登録を無効にすることはできないとの結論を導いたものであって,違法であるから,取り消されるべきである。
1 本件商標と引用商標との類否 審決は,「本件商標と引用商標を比較すると,両者は,その構成前半の『携帯』と『常時』の漢字が相違しており,後半の『接楽』の漢字が同一であるところ,『携帯』と『常時』はそれぞれ,その意味がよく知られている語であり,後半の『接楽』の漢字に相当する語は知られていないから,『接楽』は造語というべきものと認められる。」(審決謄本4頁下から第4段落)と認定した上,「本件商標と引用商標は,いずれも同じ書体の漢字をもって一連一体に表されているものであり,構成文字数も4文字であり冗長なものではないから,それぞれその構成全体がひとまとまりのものとして認識されやすいといえる。」(同頁下から第3段落)と判断し,これを前提として外観,称呼及び観念において類似しないとの結論を導いた。
しかし,「携帯」と「常時」は,それぞれ,その意味がよく知られている語,すなわち,一般的によく使用される語であり,この一般的な語と造語である「接楽」が結合された本件商標「携帯接楽」と引用商標「常時接楽」は,自他商品識別機能について,一般的な語である「携帯」と「常時」よりも造語である「接楽」によって,より大きく発揮されるのである。
したがって,審決の「構成全体がひとまとまりのものとして認識されやすい」との判断が誤っていることは,明らかである。
2 出所の混同 原告は,「接楽」の文字からなる登録商標(以下「接楽商標」という。)を有するが,引用商標「常時接楽」と接楽商標とを付したそれぞれの商品があった場合,両商品は「接楽」の語を共通にする商標であるから,出所を同一にするものと認識されることは明白である。このとき,被告から,本件商標「携帯接楽」を付した商品が販売されると,「常時接楽」,「接楽」,「携帯接楽」の商標を付した商品が同時に取引市場で流通するから,これらの商品の出所の混同を生じる蓋然性が非常に高い。したがって,被告が,商品に「携帯接楽」の商標を付することは,原告の引用商標「常時接楽」との間で,出所の混同を生じさせるおそれがある。
審決は,「請求人(注,原告)は,被請求人(注,被告)が商標登録無効審判請求(注,接楽商標に対する無効審判請求)・・・において,本件商標『携帯接楽』は『接楽』の文字部分に着目して取引に供されるので,自他商品識別機能は,主に『接楽』の文字部分で発揮されることになる旨述べている点をとらえて,被請求人の主張は整合性や一貫性がないものと主張する。そして,この点の被請求人の主張は本件審判における主張と矛盾していることは認められる」(審決謄本5頁第3段落)と説示している。
審決のいう商標登録無効審判請求事件(以下「別件審判請求事件」という。)は,被告が,原告の有する「接楽」の文字からなる登録商標に対して無効審判を請求しているものであるが,そこで,被告は,審決が説示するように述べているのであり,これは,被告が「本件商標及び引用商標ともに,自他商品識別機能は『接楽』で発揮される」と認識していること,また,本件商標及び引用商標の自他商品識別機能が主として「接楽」の文字部分で発揮されるものと認識していることを示すものである。
審決は,被告の主張の矛盾について検討していないから,審理が不十分といわざるを得ない。
被告の主張
審決の認定判断は正当であって,原告主張の取消事由は理由がない。
1 本件商標と引用商標との類否について 本件商標「携帯接楽」は,漢字4文字を標準文字により一連に表してなるものであり,これより生じる「ケイタイセツラク」の称呼もよどみなく一気一連に無理なく称呼し得るものであり,また,本件商標中の「携帯」の文字は,これに続く「接楽」の文字との関連で認識されるものである。一方,本件商標「携帯接楽」が「接楽」の文字部分のみをもって取引に資されると認められるような格別の事情はない。したがって,本件商標「携帯接楽」は,一体として熟語的意味合いを形成し,全体をもって一体不可分の構成よりなると認識,把握されるとみるのが自然である。
2 出所の混同について 原告は,「請求人(注,原告)は,被請求人(注,被告)が商標登録無効審判請求(注,接楽商標に対する無効審判請求)・・・において,本件商標『携帯接楽』は『接楽』の文字部分に着目して取引に供されるので,自他商品識別機能は,主に『接楽』の文字部分で発揮されることになる旨述べている」との前提で,審決の判断を論難するが,誤りである。
「接楽」は造語であるとしても,引用商標「常時接楽」も造語であり,上記したように一体として熟語的意味合いを形成するものであるから,自他商品識別機能は,「常時接楽」の全体で発揮されることが明らかである。被告が,「携帯接楽」なり「常時接楽」なりの自他商品識別機能が主として「接楽」の部分で発揮される等と認識するはずがない。
当裁判所の判断
1 本件商標と引用商標との類否について (1) 「携帯接楽」の文字からなる本件商標は,「携」,「帯」,「接」,「楽」の四つの標準文字の漢字を同じ大きさで一列に等間隔で横書きしたものである。一方,「常時接楽」の文字からなる引用商標は,「常」,「時」,「接」,「楽」の四つの標準文字の漢字を同じ大きさで一列に等間隔で横書きしたものである。
外観について,本件商標と引用商標とを比較すると,いずれも「接楽」の文字部分を含んでいるが,前者は,「接楽」の前に「携帯」の文字部分を配置しているのに対して,後者は「接楽」の前に「常時」の文字部分を配置しているから,構成を全体的に観察すると,両者が外観において相違していることは明らかである。
称呼についてみると,4文字熟語様の構成であることから,自然に発する称呼は,本件商標が「ケイタイセツラク」,引用商標が「ジョウジセツラク」であると認められるところ,いずれも,全体として統一のとれたバランスのよい比較的短いものであり,その全体から生ずる称呼は冗長なものでなく,一気に称呼しやすいものであると認められる。上記称呼を比較すると,それぞれの称呼の前半部分が全く異なっており,類似しないことは明らかである。
(2) 観念の類否について ア 一般的な用語例に従うと,「携帯」の語が「たずさえ持つこと。身につけて持つこと。」等を意味し,「接」の語が「つぐこと。つなぐこと。ふれること。」等を意味し,「楽」の語が「心身が安らかでたのしいこと。たやすいこと。
やさしいこと。」を意味するものであることは,当裁判所に顕著である(広辞苑第5版参照)。
「接楽」が「接」と「楽」とを結合した新たな造語であることは,明らかであるが,「接楽」の文字から,一般人において,上記「接」の語の意味と「楽」の語の意味を併せた印象を抱くことはともかく,一般的な用語として社会的に認知されているとはいえない造語であって,意味不明といわざるを得ず,記号と同程度の意味しか有しないものというべきであり,需要者及び取引者にとって,「接楽」の語が格別の観念を生じさせるものとはいえない。
「携帯」の語は,例えば「携帯電話」,「携帯テレビ」等というように,これに続く商品等と結び付いて,「携帯性の〜」といった使用形態等を表すものである。
本件商標において「携帯」と「接楽」とが結合していることから,「携帯性の『接楽』」という一体のまとまった観念(「接楽」についての格別の観念は生じない。)のものとして把握することができ,このことに,本件商標が,外観において,4文字熟語様の体裁のなじみやすい語句となっており,上記(1)のとおり,全体として統一のとれたバランスのよい比較的短いものであり,その全体から生ずる称呼は冗長なものでなく,一気に称呼しやすいものであることをも考慮すると,「携帯接楽」の語の全体が不可分一体として認識されるものであるというべきである。
なお,本件全証拠及び弁論の全趣旨を検討しても,取引において,商品に「携帯接楽」の商標を付すべきところ,「接楽」の文字部分のみを分離して商標として付しているといった事情があることを認めるに足りない。
イ 「常時」が,「いつも。平生。ふだん。」等の意味を有し,例えば「常時試合に出る」などというように,これに続く語と結び付いて,状態等を表す語として使われることが多いことは,当裁判所に顕著である(広辞苑第5版参照)。
引用商標において「常時」と「接楽」とが結合していることから,「常時の『接楽』」という一体のまとまった観念(「接楽」についての格別の観念は生じない。)のものとして把握することができ,このことに,本件商標が,外観において,4文字熟語様の体裁のなじみやすい語句となっており,上記のとおり,全体として統一のとれたバランスのよい比較的短いものであり,その全体から生ずる称呼は冗長なものでなく,一気に称呼しやすいものであることをも考慮すると,「常時接楽」の語の全部が一体として認識されるものである。
ウ 以上のとおり,本件商標「携帯接楽」及び引用商標「常時接楽」は,いずれも,全体として,不可分一体のものとして認識されるものであり,前者からは「携帯性の『接楽』」,後者からは「常時の『接楽』」という観念(「接楽」についての格別の観念は生じない。)が生じるから,両者は,観念において相違していることが明らかである。
(3) 原告は,「携帯」と「常時」は,それぞれ,その意味がよく知られている語,すなわち,一般的によく使用される語であり,この一般的な語と造語である「接楽」が結合された本件商標「携帯接楽」と引用商標「常時接楽」においては,自他商品識別機能は,一般的な語である「携帯」と「常時」よりも造語である「接楽」によってより大きく発揮される旨主張する。
しかしながら,上記(2)アのとおり,「接楽」は,いまだ記号と同程度の意味しか有しないものであり,需要者及び取引者の注意を引く程度は低く,したがって,造語であるからといって,「接楽」の語が独立して自他商品識別機能を発揮するものとはいい難い。
結局,需要者及び取引者の注意を引くのは,本件商標及び引用商標の全体であり,言い換えると,造語である「携帯接楽」,「常時接楽」が不可分一体として認識されるものというべきであり,自他商品識別機能が主として「接楽」にあるとする原告の主張は,採用することができない。
(4) そうすると,本件商標と引用商標とは,観念においても,類似しているとはいえないものである。
2 出所の混同 (1) 原告は,引用商標「常時接楽」と「接楽」を付したそれぞれの商品があった場合,両商品は「接楽」を共通にする商標であるから,出所を同一にするものと認識されることは明白であるとし,このとき,本件商標「携帯接楽」を付した商品が販売されると,「常時接楽」,「接楽」,「携帯接楽」の商品が同時に取引市場で流通するから,これらの商品の出所の混同を生じる蓋然性が非常に高く,したがって,商品に「携帯接楽」と「常時接楽」との商標を付することは,出所の混同を生じさせるおそれがある旨主張する。
弁論の全趣旨によると,原告のいう引用商標「常時接楽」及び「接楽」は,いずれも原告の有する登録商標であることが認められるところ,原告が「常時接楽」及び「接楽」を別の商標として登録出願したのであれば,原告自身も両者が類似し,出所が混同するとは考えていなかったものと推察される。また,「常時接楽」と「接楽」とがいずれも設定登録されているとすれば,特許庁は,「常時接楽」と「接楽」とは非類似で混同のおそれがないと判断していたことになる。これらの事情について,原告は,格別の立証をしていないから,出願の経過,指定商品の分類,取引の実情など多々不明なところがあり,必ずしも明らかなものとはいえないが,少なくとも,原告の上記主張は,自己の有する「常時接楽」及び「接楽」の登録商標について混同のおそれがあることを前提としている点で,失当というほかない。
(2) 原告は,被告が別件審判事件において,本件商標が「接楽」の文字部分に着目して取引に供されるので,自他商品識別機能は,主に「接楽」の文字部分で発揮されることになる旨述べたことを理由に,審決がこの点を十分に検討していないと論難する。
しかしながら,審決は,「請求人は,被請求人が商標登録無効審判請求(無効2003-35483)において,本件商標『携帯接楽』は『接楽』の文字部分に着目して取引に供されるので,自他商品識別機能は,主に『接楽』の文字部分で発揮されることになる旨述べている点をとらえて,被請求人の主張は整合性や一貫性がないものと主張する。そして,この点の被請求人の主張は本件審判における主張と矛盾していることは認められるが,それによって本件商標の自他商品識別機能が主として『接楽』の文字部分で発揮されるものと直ちに判断すべき性質のものでないことは明らかである。」(審決謄本5頁第3段落)と明確に説示しており,「それによって本件商標の自他商品識別機能が主として『接楽』の文字部分で発揮されるものと直ちに判断すべき性質のものでないことは明らかである。」との説示から,審決が原告指摘の点を検討したことは明らかである。したがって,原告の論難は失当である。
(3) そうすると,審決が,「本件商標は,これを構成する『携帯接楽』,引用商標は,これを構成する『常時接楽』のいずれも文字全体をもって取引され,その『接楽』の文字部分のみに着目して取引に資されることはないものというのが相当であるから,本件商標と引用商標とは『接楽』の文字が同じであっても,外観,称呼及び観念のいずれにおいても紛らわしいところがないものというべきであって,両者は,非類似の商標といわなければならない。」(審決謄本5頁第4段落)と判断したことに誤りはない。
3 以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 青柳馨
裁判官 宍戸充