運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 無効2002-35289
関連ワード 出所表示機能 /  識別機能 /  指定商品 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  類似性(類否判断) /  中用件(33条) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  継続 /  非類似 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 17年 (行ケ) 10241号 審決取消請求事件
原告 株式会社インディアンモトサイクルカンパニージャパン
訴訟代理人弁護士 佐藤雅巳
同 古木睦美
被告 東洋エンタープライズ株式会社
訴訟代理人弁理士 野原利雄
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2005/09/14
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求める裁判
1 原告 (1) 特許庁が無効2002-35289号事件について平成16年11月17日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文同旨
当事者間に争いのない事実
1 手続の経緯 原告は,審決書別掲(1)のとおりの構成からなり,第25類「被服,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」を指定商品とする,商標登録第4022987号商標(平成7年11月2日登録出願,平成9年7月4日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
被告は,平成14年7月4日,本件商標の商標登録をすべての指定商品に関し無効にすることについて審判を請求し,特許庁は,これを無効2002-35289号事件として審理した結果,平成15年8月8日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「第1次審決」という。)をした。
被告は,第1次審決を不服として,東京高等裁判所に審決取消訴訟を提起し(東京高等裁判所平成15年(行ケ)第422号),同裁判所は,平成16年5月11日,第1次審決を取り消す旨の判決をした(以下「前訴判決」という。)。これに対し,原告は,上告及び上告受理の申立てをしたが,最高裁判所は,平成16年9月30日,同上告を棄却し同上告受理申立てを受理しない決定をし,前訴判決が確定した。
特許庁は,前訴判決の確定をうけて,さらに審理をした結果,平成16年11月17日,「登録第4022987号の登録を無効とする。」との審決をし(第2次審決。以下「本件審決」という。),同月29日,その謄本を原告に送達した。
2 本件審決の理由 別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件商標は,先願に係る審決書別掲(2)の平成6年商標登録願第95840号商標(平成6年9月21日出願,平成16年2月27日設定登録。指定商品・第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ショール,スカーフ,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,帽子,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」。以下「引用商標」という。)と類似の商標であって,指定商品も同一又は類似するものであるから,商標法8条1項に違反して登録されたものであり,無効であるとするものである。
原告主張の取消事由の要点
1 類否判断の誤り 商標の類否は,対比すべき両商標について,その称呼,外観,観念によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に観察し,具体的な取引の実情に基づいて,出所について誤認混同を生じるおそれがあるか否かによって判断すべきものである。しかるに,本件審決が,本件商標と引用商標とを全体として対比考察することを怠り,称呼及び観念について,引用商標中の一構成要素にすぎない「Indianロゴ」のみと本件商標とを対比し,しかも取引の実情を全く考慮せず,本件商標が引用商標と類似すると判断したのは誤りである。
本件商標と引用商標とは外観,称呼及び観念のいずれにおいても相違するものである。しかも,次の(1),(2)のような取引の実情を考慮すれば,本件商標と引用商標とは,同一又は類似の商品に使用しても,商品の出所について誤認混同を生じるおそれはないものである。したがって,本件商標と引用商標は非類似の商標であり,これを類似するとした本件審決の認定判断は誤りである。
(1) 本件商標の指定商品の取引者は,商品に付された商標の外観全体を見て当該商品が正規の商品であることを確かめた上で仕入れるか否かを決め,品番によって発注するのであり,また,消費者は,商品に付された商標の外観全体を見てブランドを確かめ,価格,品質,デザイン,素材等を確かめ,購入するか否かを決めるのである。すなわち,取引者・消費者は,商品の取引・購入において,商品に付された商標の外観全体には着目するが,その商標の称呼観念によって仕入れするしないを決めたり,購入するしないを決めたりするものではない。
(2) 原告は,平成5年以降,需要者に影響力のある雑誌等の媒体を通じ継続して積極的かつ濃い密度で本件商標を初めとする「Indian」商標及び原告を告知(広告,紹介)してきたものであり,本件商標は,原告の衣類等の商品に使用される商標として,本件商標の登録査定時(平成9年5月16日),あるいは遅くとも引用商標の登録査定時(平成16年2月3日)には需要者の間に周知であった。
2 商標法8条1項適用の誤り 上記のとおり,「Indianロゴ」は原告を出所とする商品を示すものとして周知であり,「Indian Motocycle」は原告の略称として周知である。また,引用商標中の「左向きのインディアンの図形」は原告がライセンシーのマルヨシを通じて使用した標章である。したがって,引用商標を付した商品も本件商標を付した商品も,需要者は等しく原告を出所と認識するのであり,被告はもとより他の第三者を出所と認識することはない。このように,そもそも引用商標は,被告又は他の第三者を出所とする識別機能を有しないのであり,本件商標の使用により,引用商標の出所表示機能が害されるということはあり得ないのであるから,本件商標が引用商標と類似すると認定する合理的な理由はなく,商標法8条1項を適用して本件商標の登録を無効とすべき理由は存しない。
3 前訴判決の拘束力について 商標登録を無効とする審決の認定判断に不服があるときは,商標権者がその取消しを求めて訴えを提起できることは当然であり,単に当該審決が先行審決を取り消した先行判決の認定判断に従っているという理由で,商標権者が当該審決の認定判断の違法からの救済を求めることができなくなることにはならないし,裁判所もその審決を取り消す判決ができなくなるということにはならない。前訴判決の認定判断には,前記の本件審決の違法と同様の違法があるのであり,審決がそのような違法な先行判決に従って認定判断したことのみをもって,商標権者が当該審決の違法を争えず救済を求めることができないとすることは,実定法上の根拠もないばかりか憲法違反でもある。
したがって,前訴判決の違法な認定判断が,特許庁を拘束し,本件審決の取消訴訟の係属する裁判所をも拘束するとする根拠はない。
被告の反論の要点
原告の主張する取消事由は,前訴判決の拘束力に反するものであって,全く理由のないものである。
当裁判所の判断
1 乙1号証によれば,前訴判決は,概要次のとおり認定判断して,これに基づき,本件商標が引用商標とは非類似の商標であり商標法8条1項に違反して登録されたものではないとした第1次審決を取り消したものであることが認められる。
(1) 本件商標は,欧文字「Indian」を特徴のある書体で表した商標であって,その構成文字に相応して「インディアン」の称呼及び「北米原住民」の観念を生ずる。
(2) 引用商標中の欧文字「Indian」は,特徴のある筆記体の書体で,活字体の「MOTOCYCLE」とは,その書体が異なり,また,文字の大きさも,欧文字「Indian」の方が,欧文字「MOTOCYCLE」よりはるかに大きく,共に看者の注意を引くインディアン図形と,インディアン(北米原住民)という観念を共通にしている。引用商標を見た取引者・需要者中の多くの者は,引用商標を,日本人にとって一般によく知られているインディアンを用いた商標として,認識し,理解するものというべきである。そうすると,引用商標からは,「インディアン」との称呼が生じ,インディアン(北米原住民)との観念も生じる。
(3) したがって,引用商標と本件商標は,その取引者・需要者が取引の場においてその出所を混同するほどに類似している,とみるべきである。引用商標と本件商標との間には,その外観において幾つかの差異があるものの,欧文字「Indian」の特徴のある書体は共通しており,その外観上の差異がその称呼及び観念から生じるインディアン商標としての類似性を否定し得るものでないことは明らかである。
(4) 商標法46条1項1号所定の無効理由の判断において,ある商標が同法8条1項の規定における先願の商標とされるためには,それが商標登録されている必要があると解すべき理由はない。また,審決時において,商標法8条3項に規定する事由が生じていることが明らかにならない限り,引用商標は,本件商標に対する関係で先願の商標としての地位を失わない。
2 上記事実によれば,前訴判決は,先願である引用商標と本件商標は,その称呼及び観念を共通にし,取引者・需要者が取引の場においてその出所を混同するほどに類似しているとの理由に基づいて,第1次審決を取り消したものであり,同判決は確定した(前記「当事者間に争いのない事実」)から,同判決の上記認定判断は,行政事件訴訟法33条1項の拘束力を有するものであるところ,本件審決は,前訴判決の認定判断に従ってされたものであることは明らかであり,その限りにおいて,本件商標が先願に係る引用商標と類似の商標であるとした本件審決の認定判断を違法とすることはできない。
(1) 原告が本件審決の取消事由として主張するもののうち,少なくとも,本件商標と引用商標とが外観,称呼及び観念のいずれにおいても相違しているとして,両商標の対比考察の方法を非難し,両商標を非類似であるとしている点は,前訴判決の拘束力に従ってされた本件審決を違法ならしめる理由となるものではなく,失当である。
原告は,前訴判決の認定判断に違法があることを理由に,拘束力が生じないと主張するもののようであるが,前記「当事者間に争いのない事実」記載のとおり,前訴判決は,上告を棄却し上告受理申立てを受理しない決定により,適法に確定していることが明らかであって,前訴判決の違法をいう原告の主張は採用の限りでない。なお,原告の違憲の主張は,前訴判決の違法を前提とするものであり,その前提を欠き,失当である。
(2) 原告は,取引の実情を考慮すれば,本件商標と引用商標とは,同一又は類似の商品に使用しても,商品の出所について誤認混同を生じるおそれはないと主張する。
しかし,本件商標及び引用商標の指定商品は被服類であるから,その需要者は,一般の消費者であり,必ずしも商標やブランドについて詳しい知識を持つ者ばかりではなく,商品の購入に際し,メーカー名などについて常に注意深く確認するとは限らないことは,経験則に照らして推認するに難くないところであって,本件商標と引用商標とが,その称呼及び観念を共通にし,共に日本人にとって一般によく知られているインディアンを用いた商標として類似性を有している以上,取引の場において,出所について誤認混同を生じるおそれを否定できないことは明らかである。
また,原告は,本件商標が,原告の衣類等の商品に使用される商標として,本件商標の登録査定時には需要者の間に周知であったと主張するが,その提出する証拠の中には,雑誌,業界紙等に原告の行うライセンス事業についての紹介記事や宣伝広告が掲載されたものがあるものの,原告(そのライセンシーグループを含む。)の商品の売上金額について的確に認定し得る客観的な資料もないなど,本件全証拠を検討しても,本件商標が,その登録査定時(平成9年5月16日,甲65号証)当時において,原告の商品表示として需要者の間に広く認識されていたとまで的確に認めることはできないのであって,本件商標が使用されても商品の出所について誤認混同を生じるおそれがないとすることはできない。なお,原告は,遅くとも引用商標の登録査定時(平成16年2月3日)には周知であったとも主張しているが,本件商標が商標法8条1項の規定に違反して商標登録されたものであるかどうかは,本件商標の登録査定時を基準として判断すべきであることは明らかであるから(同条3項は,先願の商標登録出願が事後的になかったものとみなされる場合を規定したものであって,同条1項違反の判断基準時を定めたものでないことはいうまでもない。),本件商標が引用商標の登録査定当時に周知であったかどうかは,両商標の類似性を検討する際に考慮の対象となる取引の実情とは関係ない事柄である。
したがって,本件において取引の実情を考慮しても,称呼及び観念を共通にする本件商標と引用商標が同一又は類似の商品に使用された場合には,商品の出所について誤認混同を生じるおそれを否定できないのであって,両商標が類似の商標であるとした本件審決の判断に誤りはない。
(3) 原告は,引用商標を付した商品も本件商標を付した商品も,需要者は等しく原告を出所と認識するのであり,本件商標の使用により,引用商標の出所表示機能が害されることはあり得ないから,商標法8条1項を適用して本件商標の登録を無効とすべき理由は存しないと主張する。
しかし,商標法8条1項は,同一又は類似の商品又は役務について使用する同一又は類似の商標について,複数の商標登録出願があったときは,先願の出願人のみが商標登録を受ける旨定めているのであるから,前記のとおり,本件商標が先願である引用商標と類似するものであり,その指定商品も同一又は類似するものである以上,同条項により先願である引用商標が優先し,本件商標については商標登録の余地がないというべきである。原告は,引用商標を付した商品も本件商標を付した商品も,需要者は等しく原告を出所と認識すると主張するが,そのように認めるべき証拠はなく,原告の上記主張は失当である。
3 以上のとおりであって,原告主張の取消事由は理由がなく,その他,審決に,これを取り消すべき誤りは認められない。
よって,原告の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 若林辰繁
裁判官 沖中康人