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事件 平成 12年 (ワ) 10198号 商標権侵害差止等請求事件
原告 株式会社啓和
同訴訟代理人弁護士 黒田健二
同 黒須克佳
同 渡邉協
被告 有限会社アイ・ビー・イー
被告 アイビーイー・テクノ株式会社(旧商号 アイ・ビー・イー販売株式会社)
被告両名訴訟代理人弁護士 高橋二郎
同 尾関孝英
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2001/09/14
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告有限会社アイ・ビー・イーは,原告に対し,金265万7000円及びこれに対する平成12年5月29日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 原告の被告有限会社アイ・ビー・イーに対するその余の請求及び被告アイビーイー・テクノ株式会社に対する請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用はこれを20分し,その1を被告有限会社アイ・ビー・イーの負担とし,その余は原告の負担とする。
4 この判決の第1項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1 被告らは,その販売する家庭用浄水器につき,別紙被告標章目録記載(1)及び(2)の各標章を使用してはならない。
2 被告らは,その所有しかつ占有する別紙被告標章目録記載(1)又は(2)の標章を付した家庭用浄水器,パンフレット,のぼり,看板等の広告物,その他同標章を使用した物品を廃棄せよ。
3 被告らは,別紙被告標章目録記載(1)又は(2)の標章を使用した説明会を開催してはならない。
4 被告らは,自己又は第三者をして,原告の取引先に対し,原告が宗教の会社である等と虚偽の事実を陳述し又は流布してはならない。
5 被告らは,原告に対し,連帯して,金1億2432万7138円及びこの内別紙「請求金額一覧表」の「請求金額」欄(1)ないし(7)記載の各金員に対する,同表の各「請求金額」欄に対応する「支払期限」欄記載の日からそれぞれ支払済みまで,同表の各「請求金額」欄に対応する「遅延損害金」欄記載の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 争いのない事実(認定事実には証拠を掲げる。証拠を掲げていない事実は争いのない事実である。) (1) 原告は,家庭用・業務用浄水器の製造及び販売等を目的とする株式会社であり,被告有限会社アイ・ビー・イー(以下「被告IBE」という。)は,生物活性剤による水質の改善研究,生物活性剤等の生産及び販売等を目的とする有限会社,被告アイビーイー・テクノ株式会社(以下「被告IBEテクノ」という。)は,生物活性剤による水質の改善研究,生物活性剤等の生産及び販売等を目的とする株式会社である。
(2) 被告IBEは,平成元年6月28日,アイワ株式会社(以下「アイワ」という。)に対し,ライフエナジーという名称の浄水器(以下「ライフエナジー」という。)を販売する権利を,1000万円で譲渡した。
(3) 被告らは,平成3年ころから,自らライフエナジーの販売を開始した。
アイワは,平成5年7月までの間に,被告IBEテクノとの間で,被告らがライフエナジーを国内で販売する場合は1台につき1万円,国外で販売する場合は1台につき5000円の金員(以下この金員を「販売手数料」という。)をアイワに支払う旨を合意した(甲第10号証の2,弁論の全趣旨)。
(ただし,この合意が国内販売の場合4000円,国外販売の場合3000円の合意に変更されたか否かは,当事者間に争いがある。) (4) アイワは,平成6年3月31日,次の商標権(以下「本件商標権」といい,この登録商標を「本件商標」という。)を登録した(甲第4号証)。
登録番号 第2643043号 出願日 平成3年12月27日 商願平3-136465 登録日 平成6年3月31日 商品の区分 第19類 指定商品 台所用品(電気機械器具,手動利器及び手動工具に属するものを除く)日用品(他の類に属するものを除く) 商 標 別紙商標目録記載のとおり (5) 原告は,平成9年7月1日,アイワから本件商標権を譲り受け,同年9月8日,移転登録を了した(甲第1,第4号証)。
また,原告は,同年8月25日,アイワとの間で,譲渡日を同年10月31日として,アイワの全ての営業について譲渡を受ける旨を合意した(甲第2号証)。
(6) 原告及び被告らは,平成9年10月19日,三河湾リゾートリンクスにおいて,次の内容を合意した(甲第5号証,以下「本件合意」という。)。
ア 被告IBEテクノからアイワへの「手数料未払金」(約2700万円)を,被告IBEからアイワへの貸付金,及び,被告IBEテクノからアイワへの売掛金と相殺する。
イ 原告と被告らの提携の証として,被告IBEテクノは,今後も,「商品名・ライフエナジー,発売元・原告」の商品を扱う。ただし,被告IBEテクノは,原告に対し,「商標権代」を支払わない。
ウ 被告IBEは,原告に対し,今後毎月,UFO200本を無償供与する。
エ 原告と被告らの一体感を増すべく,今後,合同研修会を実施する。
(7) 原告は,平成12年3月29日,被告らに対し,本件合意を解除する旨の意思表示をした。
2 原告の各請求の内容及び争点 (1) 本件商標権に基づく差止請求(請求1),廃棄請求(請求2)及び本件商標権の侵害による損害賠償請求(請求5別紙「請求金額一覧表」(3)) 【原告が,被告らに対し,被告らは,本件合意が解除された後も,本件商標と同一又は類似の別紙被告標章目録記載(1)及び(2)の各標章(以下これらを「被告標章」という。)を使用して,家庭用浄水器を販売するなどしているが,この行為は本件商標権を侵害する行為であると主張して,被告標章を使用することの差止め等を求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償の支払を求めるもの】 ア 原告の被告らに対する本件商標の使用許諾は,本件合意において,UFOの無償供与や合同研修会の実施の対価としてされたものか。
イ UFOの無償供与や合同研修会の実施について,被告らに債務不履行があったか。また,その債務不履行を理由とする本件合意(本件商標の使用許諾)の解除は有効か。 ウ 被告らは本件商標権を侵害する行為を行ったか。
エ 損害の発生及び額 (2) 不正競争防止法2条1項1号の周知表示混同惹起行為の差止請求(請求3) 【原告が,被告らに対し,本件商標は,原告の商品表示として需要者の間に広く認識されているところ,被告らが,本件商標と同一又は類似の被告標章を使用して説明会を開催する行為は,原告の営業上の利益を侵害するおそれがあると主張して,その開催の差止めを求めるもの】 ア 被告らが,平成11年7月6日,札幌市内のワシントンホテルにおいて,「IBEライフエナジー説明会」を開催したか。
イ 被告らは,被告標章を使用した説明会を開催して,原告の営業上の利益を侵害するおそれがあるか。
(3) 不正競争防止法2条1項13号の信用毀損行為の差止請求(請求4)及び同行為に基づく損害賠償請求(請求5別紙「請求金額一覧表」(1)) 【原告が,被告らに対し,被告らが,前記(2)アの説明会の受付において,原告について「あの宗教の会社」などと述べた行為は,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する行為であると主張して,それらの行為の差止めを求めるとともに,不正競争防止法4条に基づいて損害賠償の支払を求めるもの】 ア 被告らが,前記(2)アの説明会の受付において,「あの宗教の会社」などと述べたか。
イ 前項の発言が,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知といえるか。
ウ 損害の発生及び額 (4) 債務不履行に基づく損害賠償請求(請求5別紙「請求金額一覧表」(2)) 【原告が,被告らに対し,被告らは,本件合意に定められた毎月200本のUFOの無償供与と,原告と合同の研修会の開催を行わなかったと主張して,債務不履行による損害賠償の支払を求めるもの】 ア 被告らに,本件合意について上記債務不履行があったか。(争点(1)イに同じ。) イ 損害の発生及び額 (5) 販売手数料の支払請求(請求5別紙「請求金額一覧表」(2),(4)ないし(6)) 【原告が,被告らに対し,被告らが平成7年6月1日から平成12年3月29日までに販売したライフエナジーの販売手数料の支払を求めるもの,平成9年10月19日から平成12年3月29日までに販売したライフエナジーの販売手数料の請求(別紙「請求金額一覧表」(2))については,上記(4)の債務不履行に基づく損害賠償請求と選択的併合】 ア 被告IBEテクノとアイワの間で,平成7年5月31日以降は販売手数料を支払わない旨の合意が成立したか。
イ 販売手数料の額 (6) 債務不履行に基づく損害賠償請求(請求5別紙「請求金額一覧表」(7)) 【原告が,被告らに対し,被告らが,原告との合意に反して,原告が契約している代理店を自己の代理店としたと主張して,債務不履行による損害賠償の支払を求めるもの】 ア 原告と被告らの間で,平成9年10月19日又はそれ以前の時期に,相手方が契約している代理店を自己の代理店としない旨の合意が成立したか。
イ 被告らに,前項の合意に反する行為があったか。
ウ 損害の発生及び額 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)について 【原告の主張】 ア 原告は,本件合意において,被告らに対し,本件商標の無償使用を許諾したが,これはUFOの無償供与と合同研修会の実施という被告らの債務と引換えに,その対価としてされたものである。
イ(ア) 被告IBEは,原告に対し,本件合意に定められた毎月200本のUFOの無償供与を一度も履行しなかった。
原告は,被告らから,数度にわたり合計550本のUFOの無償供与を受けたが,これは原告が必要に応じて請求したもので,このような非定期的な供与は本件合意以前から行われており,本件合意に定められた毎月200本のUFOの無償供与とは異なる。
(イ) 被告らは,本件合意に定められた原告と合同の研修会を実施しなかった。
本件合意で実施が定められた合同研修会は,原告と被告らが対等な立場で行う合同研修会であるところ,被告らが実施した研修会は,被告ら主催のものであって原告と共催の合同研修会ではない。したがって,これらの研修会の実施をもって,本件合意に定められた合同研修会を実施したということはできない。
(ウ) 原告は,平成12年3月29日,被告らの上記債務不履行を理由として,本件合意を解除した。
ウ(ア) 被告らは,本件合意の解除後,原告の許諾なく,別紙被告標章目録記載(1)の標章(以下「被告標章(1)」という。)を付した家庭用浄水器(ライフエナジー)を販売するとともに,被告標章目録記載(2)の標章(以下「被告標章(2)」という。)を付したのぼりを立てて同商品を広告宣伝した。
(イ) 本件商標は,「LIFEENERGY」という英単語をアルファベットの大文字で横書きし,その下部に「ライフエナジー」という片仮名文字を横書きで表示するもので,「生命力」という観念を生じるものである。
これに対し,被告標章(1)は,「LIFEENERGY」という英単語をアルファベットの大文字で横書きしたものを青色の長方形で囲み,その下部に「ライフエナジー」という片仮名文字を横書きで表示したものを黄色の長方形で囲み,上記青色の長方形の上部に生体制御装置という意味の「BIO CONTROL SYSTEM」という英単語をアルファベットの大文字で横書きしたものを黄色の長方形で囲み,これらの各長方形の背後に,緑色と青色のグラデーションで配色した三角形を表示したものである。被告標章(1)は,長方形や三角形の図形が付加されているが,その中核部分である「LIFEENERGY」及び「ライフエナジー」の字体及び称呼が本件商標と同一であるから,本件商標と同一又は類似する。
被告標章(2)は,「ライフエナジー」という片仮名文字を縦書きで表示したものであり,本件商標と称呼が同一で,字体もほぼ同一であるから,本件商標と同一又は類似する。
(ウ) 被告らが被告標章を使用して販売したのは,家庭用浄水器であるから,本件商標権の指定商品に該当する。
(エ) したがって,被告らによる被告標章の使用行為は,本件商標権を侵害する。
エ 被告らは,平成12年3月30日以降,少なくとも2600台の上記家庭用浄水器(ライフエナジー)を販売した。
本件商標について原告が受けるべき使用料は,1台当たり4000円が相当であるから,原告が被告らの商標権侵害行為によって被った損害額は1040万円を下らない。
オ よって,原告は,被告らに対し,本件商標権に基づき,被告標章の使用差止め及び廃棄を求めるとともに,不法行為による損害賠償として,1040万円及びこれに対する不法行為の後である平成12年11月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
【被告らの主張】 ア(ア) 被告らは,本件合意以前に,アイワから本件商標の使用を無償で許諾されており,アイワからその使用料を請求されたことはなかった。
そして,原告は,アイワから営業譲渡を受けることにより,本件商標の無償使用許諾についても承継した。
本件合意において,「但し,IBE販売鰍ヘ褐[和に商標権代は支払わない。」と記載されているのは,販売手数料を支払わないことを約した趣旨であり,本件合意の他の債務の対価として,本件商標の使用許諾がされたものではない。
(イ) 本件合意において,本件商標の使用許諾が確認されたとしても,それは本件合意の他の債務と対価性を有するものではない。すなわち,原告と被告らの間でのUFOの価値は1本当たり500円と非常に安価であったこと,合同研修会の実施は原告の事業に不可欠とはいえないことからすると,UFOの無償供与や合同研修会の実施についての合意は,原告と被告らの間の円滑な関係を維持するための付随的事項にすぎないから,これらの各債務を本件商標使用許諾の対価と評価することはできない。
イ 被告らは,UFOの無償供与や合同研修会の実施について,友誼的な意図で善意の提供を約したものであって,これらの約束は法的保護に値するものではないから,被告らがこれらについて債務不履行になることはない。
ウ 被告らには,次のとおり,債務不履行と評価すべき事実はなかった。
(ア) 毎月200本のUFOを無償供与することも,非定期に550本のUFOを無償供与することも,被告IBEの好意の証としての無償供与という意味では同一の内容である。原告から請求のある都度,合計550本を無償供与したように,原告の請求があればいつでも送る準備があったが,原告からは一度も請求がなかった。
(イ) 被告らは,原告と合同の研修会を実施したのみならず,100回以上にわたり,原告の説明会や講習会に出席した。
エ したがって,本件商標の使用許諾は有効に存続している。
オ(ア) 被告らが被告標章(2)を付したのぼりを立てて,家庭用浄水器(ライフエナジー)の広告宣伝をしたことはない。のぼりを立てて広告宣伝したのは他の業者である。
(イ) 被告らは,原告の要請を受けて,原告の販売に協力する意図で本件商標を使用していたのであり,本訴の提起後,被告らが販売する商品については,独自の商標に変更した。
カ 損害についての原告の主張は争う。
(2) 争点(2)について 【原告の主張】 ア 被告らは,平成11年7月6日,札幌市内のワシントンホテルにおいて,原告が「株式会社啓和説明会」と題する説明会を開催している1階下の会場において,「IBEライフエナジー説明会」と題する説明会を開催した。
被告らの上記行為は,原告の商品表示として需要者の間に広く認識されている本件商標と同一の商品表示を使用して原告の営業と混同を生じさせる行為であり,不正競争防止法2条1項1号に定める周知表示混同惹起行為に該当する。
イ 被告らが,原告主催の説明会と近接する日時場所において,被告標章を使用して類似の説明会を開催した場合,原告主催の説明会に出席するはずの顧客が奪われ,原告の営業上の利益が侵害されるおそれがある。
【被告らの主張】 ア 被告らが,原告主張の日時場所において,説明会を開催したことはない。原告主張の説明会を開催したのは,被告らとは無関係の業者によるものである。
イ 原告の営業上の利益が侵害されるおそれがあるという原告の主張は否認する。
(3) 争点(3)について 【原告の主張】 ア 原告と被告らは,家庭用浄水器の販売について競争関係にある。
イ 被告らは,平成11年7月6日,前記(2)【原告の主張】ア記載の「IBEライフエナジー説明会」受付において,原告の顧客に対し,「あの宗教の会社の講演会は4階でやっている。」などと述べた。
ウ 宗教団体をめぐる消費者被害事件が多発している昨今の社会状況下において,原告が宗教の会社ではないにもかかわらず,顧客に対して宗教の会社である旨告知することは,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したことになるから,被告らの上記行為は,不正競争防止法2条1項13号に定める信用毀損行為に該当する。
エ 原告が被告らの上記信用毀損行為によって被った無形損害は15万円を下らない。
オ よって,原告は,被告らに対し,上記信用毀損行為の差止めを求めるとともに,不正競争防止法4条に基づく損害賠償として,15万円及びこれに対する訴状送達の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
【被告らの主張】 ア 被告らが,原告主張の日時場所において,原告主張の告知をしたことはない。
イ 上記告知が原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知であるという原告の主張は争う。
ウ 損害についての原告の主張は争う。
(4) 争点(4)について 【原告の主張】 ア 前記(1)【原告の主張】イ(ア)及び(イ)記載のとおり,被告らは,本件合意に定められた毎月200本のUFOの無償供与と,原告と合同の研修会の開催を行わなかった。これらは,原告の毎月の販売活動に必要なものであって,毎月定期的に給付されなければ意味がないので,履行期の徒過により履行不能となっている。
イ 原告が,被告らの上記債務不履行によって被った損害額は,上記債務の対価の額である本件商標の使用料に等しいところ,この使用料は,ライフエナジー1台当たり4000円(国内販売)が相当である。被告らは,平成9年10月19日から平成12年3月29日までの間に,少なくとも1万0078台のライフエナジーを国内で販売したから,本件商標の使用料合計は4031万2000円を下らない。
したがって,原告が被告らの債務不履行によって被った損害額は4031万2000円を下らない。
ウ よって,原告は,被告らに対し,債務不履行に基づく損害賠償として,4031万2000円及びこれに対する平成12年3月29日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
【被告らの主張】 ア 前記(1)【被告らの主張】イ記載のとおり,UFOの無償供与や合同研修会の実施は,被告らの善意に基づくものであるから,被告らがこれらについて債務不履行になることはない。
イ 前記(1)【被告らの主張】ウ(ア)及び(イ)記載のとおり,UFOは無償で550本供与したし,合同研修会も開催した。
ウ 損害についての原告の主張は争う。
(5) 争点(5)について 【原告の主張】 ア アイワと被告らは,平成5年7月までの間に,被告らがライフエナジーを国内で販売する場合は1台につき1万円,国外で販売する場合は1台につき5000円の販売手数料をアイワに支払う旨を合意した。この販売手数料は,アイワが取得したライフエナジーの独占的販売権を一部買戻したことに伴う買戻金としての性質と,商標使用料としての性質をあわせ有する。
また,販売手数料の支払期限については,明示の合意はないが,過去には各年5月31日締めで翌月末日までに支払われてきた。
イ(ア) 被告らが,平成7年6月1日から平成9年10月19日までに販売したライフエナジーの台数は,過去の販売台数からすると,国内販売が4584台,国外販売が336台を下らない。
(イ) 被告らは,平成7年6月1日から平成9年10月19日までの販売手数料として,被告らが主張する国内販売が4000円,国外販売が3000円を算定の基礎としても,合計1934万4000円を支払うべきである。
(ウ) よって,原告は,被告らに対し,上記販売手数料として,1934万4000円及びこのうち810万7000円について平成8年7月1日から,810万7000円について平成9年7月1日から,313万円について同年11月1日からそれぞれ支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
ウ(ア) 被告らが,平成9年10月19日から平成12年3月29日までに販売したライフエナジーの台数は,国内販売が1万0078台を下らない。
(イ) 被告らは,平成9年10月19日から平成12年3月29日までの販売手数料として,合計4031万2000円を支払うべきである。
(ウ) よって,原告は,被告らに対し,上記販売手数料として,4031万2000円及びこれに対する平成12年3月29日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
【被告らの主張】 ア 被告ら代表者とアイワ代表者亡A(以下「アイワ代表者」という。)は,前記1(3)の合意後まもなく再協議し,被告IBEテクノが支払う販売手数料の金額を,1台につき,国内販売が4000円,国外販売が3000円に変更する旨を合意した。
なお,国内販売1万円,国外販売5000円の支払実績はない。
この販売手数料は,アイワがライフエナジーの販売権を1000万円で取得していることに鑑みて支払うことにしたものであり,本件商標使用の対価ではない。
イ 平成7年初めころ,アイワと被告らの協議の結果,被告らが同年2月23日,アイワに2000万円を融資する代わりに,同年5月31日をもって被告らの販売手数料の支払を廃止する旨の合意が成立した。
平成3年12月21日から平成7年5月31日までの販売分に係る販売手数料は,アイワ代表者の要請に基づき被告ら内部に留保されていたが,平成9年10月19日の本件合意により,被告IBEからアイワに対する貸付金と相殺された。
また,本件合意において,「商標権代」を支払わないこととされているのは,上記販売手数料を今後も支払わないことを確認したものである。
ウ 販売手数料の額についての原告の主張は争う。
なお,被告らが平成7年6月1日から平成9年10月19日までに原告以外に販売したライフエナジーの台数は,国内販売が4583台,国外販売が459台である。
(6) 争点(6)について 【原告の主張】 ア 原告と被告らは,平成9年10月19日又はそれ以前の時期に,相互の販売権を侵害しないこと,すなわち,相手方が契約している代理店を自己の代理店としないことを合意した(以下,「販売権不侵害合意」という。)。
イ 被告らは,平成9年12月ころ,当時の原告の主要な代理店であったBを自己の代理店とし,原告の販売権を侵害した。
ウ 原告は,被告らの販売権侵害行為がなければ,上記代理店との取引を平成16年6月9日まで継続できたのであり,その間に得べかりし5412万1138円の利益を失い,同額の損害を被った。
エ よって,原告は,被告らに対し,債務不履行に基づく損害賠償として,5412万1138円及びこれに対する平成13年2月27日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
【被告らの主張】 ア 販売権不侵害合意の存在は否認する。
イ Bが原告との代理店契約を解消し,被告らの代理店となった事実は認めるが,その原因は原告の行動にあり,被告らの関与によるものではない。原告の代理店であったBは,原告とのトラブルから,被告らに対し,繰り返し被告らの代理店になることを要請していたところ,平成10年1月ころ,被告らの求めに応じて原告の同意を取り付け,合意書を持参したため,被告らの代理店としたものである。
ウ 損害についての原告の主張は争う。
当裁判所の判断
1 争点(1)について (1) 前記第2の1の事実に証拠(甲第3号証の1,2,第4号証,第10号証の1ないし4,第20号証,乙第3号証,第4号証の1,2,第8号証,第10号証,第26号証,原告代表者,被告ら代表者)と弁論の全趣旨を総合すると,本件合意に至る経過は次のとおりであると認められる。
ア 被告IBEは,平成元年6月28日,アイワに対し,被告IBEが製造する家庭用浄水器ライフエナジーを,総販売元として独占的に販売する権利を1000万円で譲渡した。
イ 被告らは,平成3年ころから,自らライフエナジーの販売を開始し,被告IBEテクノとアイワの間で,平成5年7月ころまでには,販売開始に遡って販売手数料をアイワに支払うという合意が成立した。その金額については,一旦は,国内販売の場合は1台につき1万円,国外販売の場合は1台につき5000円と合意されたものの,すぐに国内販売の場合が4000円,国外販売の場合が3000円に変更された。ただし,販売手数料は,現実にアイワに支払われることなく,被告IBEテクノの内部に留保された。
なお,アイワと被告IBEテクノの間で販売手数料の支払が合意された平成5年当時には,未だ本件商標は登録されていなかった。
ウ 被告IBEは,平成7年1月27日,アイワに対し,アイワによる商品の販売が被告IBEが有する特許権を侵害している旨の警告書を送付した。そして,その後,アイワと被告らの協議の結果,被告IBEが同年2月23日アイワに2000万円を貸し付けること,被告らからアイワに副社長を派遣すること,同年5月31日をもって販売手数料の支払を廃止することの各合意が成立し,以後,アイワ代表者が亡くなるまで,アイワ代表者からの販売手数料の請求はなかった。
被告IBEテクノは,平成8年2月22日,アイワに対し,500万円を貸し付けた。 エ 平成8年12月10日,アイワ代表者が死亡し,同人の妻であった原告代表者がアイワの代表者となった。その後,原告代表者は,被告ら代表者と交渉し,数回にわたって販売手数料の支払を求めたが,被告らの了解は得られず,アイワが被告らからライフエナジーの供給を受ける立場であったことからそれ以上強く支払を求めることもできなかった。
なお,原告代表者は,販売手数料に商標使用の対価を含むものと考え,これを「商標権代」と称して,被告らに支払を求めていた。
オ 原告は,平成9年8月25日,アイワから全ての営業について譲渡を受けたが,ライフエナジーの販売という事業の継続のためには,被告らから営業譲渡についての承諾を得ることが必須であった。
原告代表者は,平成9年9月9日付けで,被告らに対し,平成7年6月1日以降の販売手数料の支払を求める書面を送付した。この書面において,原告代表者は,国内販売の場合は4000円,国外販売の場合は3000円による支払を求めていた。
カ 平成9年10月19日,三河湾リゾートリンクスにおいて,本件合意が成立した。
本件合意において相殺によって支払われることになった「手数料未払金」は,平成7年5月31日までの間のライフエナジーの販売数量を基礎として,国内販売の場合は4000円,国外販売の場合は3000円でそれぞれ計算された金額で,平成7年6月1日以降の販売手数料を含まないものであったが,原告代表者は,被告らから営業譲渡についての承諾を得て,ライフエナジーの安定的な供給を受けることを第一に考えていたので,平成7年6月1日以降の販売手数料の支払を含まない内容の本件合意を行うに至った。
原告代表者と被告ら代表者はいずれも,本件合意当時,販売手数料と商標使用料を明確に峻別して認識していたわけではなく,本件合意中の1項の「手数料」と2項の「商標権代」は,同一のものと認識していた。
キ 被告らは,平成9年10月19日付けの書面によって,アイワから原告への営業譲渡を承諾した。
(2)ア 上記(1)の事実のうち,販売手数料の金額が,国内販売の場合は4000円,国外販売の場合は3000円に変更された事実及び平成7年5月31日をもって販売手数料の支払を廃止するとの合意が成立した事実について,被告ら代表者は,尋問において,これらの事実が存した旨の供述をし,乙第26号証(被告ら代表者の陳述書)にも,同旨の記載がある。
イ そして,上記被告ら代表者の供述及び記載に,@証拠(甲第10号証の1ないし3,被告ら代表者)によると,被告IBEテクノは,平成5年7月に,アイワに対し,販売手数料の金額を,国内販売の場合は4000円,国外販売の場合は3000円にする旨の書面を送付したが,これに対して,アイワの側は異議を述べなかったことが認められること,A原告代表者が平成9年9月9日付けで被告らに対して送付した書面においても,国内販売の場合は4000円,国外販売の場合は3000円による販売手数料の支払を求めていること,B本件合意において,平成7年5月31日までの販売手数料について,国内販売の場合は4000円,国外販売の場合は3000円によって計算した金額について清算することが定められたことを総合すると,上記(1)のとおり,販売手数料の金額が,国内販売の場合は4000円,国外販売の場合は3000円に変更された事実を認めることができる。
ウ また,上記被告ら代表者の供述及び記載に,@上記(1)ウで認定した事実からすると,平成7年1月ころには,被告らとアイワの力関係は,被告らが優位に立ったことが窺われるから,被告らが販売手数料を支払わないといえば,アイワは不本意ながらも,融資等と引換えにそれを受け入れざるを得ない状況にあったものと推認されること,A上記(1)ウ認定のとおり,アイワ代表者が死亡するまでの間に,アイワ代表者が被告IBEテクノに対して,平成7年6月1日以降の販売手数料の支払を求めたことはないこと,B上記(1)エ及びオ認定のとおり,原告代表者は,被告らに対して,販売手数料の支払を求めていたが,証拠(原告代表者)によると,原告代表者は,夫であるアイワ代表者の存命中は専業主婦であって,当時のアイワの経営に関与していなかったものと認められるから,原告代表者は,従前の経過を認識した上で,支払を求めているとは解されないこと,C本件合意において,平成7年5月31日までの販売手数料について清算することが定められたのみであることを総合すると,上記(1)認定のとおり,平成7年5月31日をもって販売手数料の支払を廃止するとの合意が成立した事実を認めることができる。
(3) 上記(1)で認定した事実からすると,もともと販売手数料は,独占販売権の一部買戻しの対価として支払が約されたものであり,販売手数料についての取決めがされた時には,本件商標権は登録されていなかったのであるから,販売手数料の内容に商標使用の対価を含んでいたものとは考えられない。
上記(1)で認定した事実からすると,原告代表者も被告ら代表者もいずれも,販売手数料と商標使用料を明確に峻別して認識していなかったというのが実態ではあるが,少なくとも,アイワも原告も,販売手数料の他に別途商標使用料を請求できるとは考えていなかったことが明らかであるから,本件商標権の登録後も,被告らにライフエナジーの販売が許諾されており,平成7年6月1日以降は,販売手数料が支払われなくなったことと考え合わせても,アイワによって,本件商標の使用が無償で許諾されていたものと解するほかない。
原告は,アイワによる本件商標の無償使用許諾を承継する立場にあったから,本件合意のうち,「原告と被告らの提携の証として,被告IBEテクノは,今後も,『商品名・ライフエナジー,発売元・原告』の商品を扱う。」という部分は,被告らに対する本件商標の使用許諾を確認的に記載したものであり,「ただし,被告IBEテクノは,原告に対し,『商標権代』を支払わない。」という部分は,それが従前どおり無償であること及び従前どおり販売手数料を支払わないことを確認したものであると解される。
(4) 以上のとおり,本件合意のうち本件商標の無償使用許諾の部分は,原告がアイワから承継した事項を確認的に記載したものであるから,本件合意において,UFOの無償供与と合同研修会の実施という被告らの債務と引換えに,その対価として本件商標の無償使用が許諾されたとは認められない。
また,UFOの無償供与の本数は,1か月200本であるところ,後記3のとおり,UFOは,原告と被告らとの間において1本500円で取引されていたから,その価値は1か月10万円にすぎないこと,及び,後記3のとおり,合同研修会の実施は,抽象的な枠組みを定めたにすぎないことからすると,UFOの無償供与や合同研修会の実施が,その経済的な価値に照らしても,本件商標の無償使用許諾と対価関係にあるとは認められない。
したがって,仮に被告らに上記債務の不履行があったとしても,それを理由とする本件合意の解除によって,本件商標の使用ができない状態となったということはできず,他に使用許諾の解除原因及び解除の意思表示があった旨の主張立証もない。
そうすると,原告の被告らに対する本件商標の使用許諾は現在まで継続しているということになるから,その余の点を判断するまでもなく,原告の本件商標権に基づく差止め等の請求及び商標権侵害による損害賠償の請求はいずれも理由がない。
(5) なお,証拠(乙第33号証,被告ら代表者)によると,被告らは,平成12年8月1日以降,原告へ供給する分を除くライフエナジーの製造販売を中止し,被告らが販売する家庭用浄水器の商品名をアクアエリアスに変更し,現在は被告標章を使用していないことが認められる。
2 争点(2)及び(3)について (1) 証拠(乙第10号証,第26号証,被告ら代表者)と弁論の全趣旨によると,Bは,平成11年7月6日,原告が同日,ライフエナジーの説明会を開いた会場と同じ札幌市内のワシントンホテルにおいて,ライフエナジーの説明会を開いたこと,Bはもともと原告の代理店であったが,この時点においては被告らの代理店になっていたこと,Bは被告らの代理店ではあるが,独立の販売業者であり,被告らとの間の代理店契約に基づきライフエナジーの供給を受けているにすぎないこと,以上の事実が認められる。
上記認定のとおり,Bは被告らの代理店ではあるものの,あくまで独立の販売業者であり,被告らから商品の供給を受けて販売しているにすぎないから,Bが開催した説明会を,直ちに被告らが開催したものと評価することはできないし,他に被告ら自身が開催したものと同視できるような事情も認められない。
そして,他に,被告らが,平成11年7月6日に,札幌市内のワシントンホテルにおいて,ライフエナジーの説明会を開いたことを認めるに足りる証拠はない。
よって,原告の不正競争防止法2条1項1号に基づく差止請求は理由がない。
(2) 原告は,被告らは,平成11年7月6日に札幌市内のワシントンホテルにおいて開催されたライフエナジーの説明会において,「あの宗教の会社の講演会は4階でやっている。」などと述べたと主張し,甲第18号証(原告代表者の陳述書)には,同年9月13日に,Bが札幌市内で説明会を開いたこと,その際に,Bの説明会の受付をしていた者が原告を指して「その宗教的な会社の説明会は下の階でやっている」と述べた旨の記載があることが認められる。仮に,これが上記同年7月6日の説明会について述べたものであり,その際,受付において上記発言があったとしても,(1)と同様に,説明会はBが主催したものであることからすると,この発言を被告らの行為であると認めることはできない。
そして,他に,被告らが,平成11年7月6日に,札幌市内のワシントンホテルにおけるライフエナジーの説明会において,上記発言をしたことを認めるに足りる証拠はない。
よって,原告の不正競争防止法2条1項13号に基づく差止め及び損害賠償請求はいずれも理由がない。
3 争点(4)について (1) 証拠(乙第5,第12,第19,第21号証)と弁論の全趣旨によると,本件合意の後,被告らは,平成9年11月7日から平成12年1月26日まで,原告からの請求により,11回にわたって合計550本のUFOを無償供与したが,月に200本のUFOを無償供与したことはなかったこと,UFOは,無償配布が前提とされた非売品であり,被告らは,当初,アイワに対して無償で供給していたが,平成5年の年間供給数が2万本を超えたことから,平成6年2月以降は,1本につき500円の対価をアイワが支払って取得することとし,アイワは1本につき500円の対価を支払って取得していたこと,原告は,本件合意の後も平成12年3月29日までの間,合計1万8900本,月平均約650本のUFOを,1本につき500円の対価を支払って取得し,毎月開催する説明会において販売促進用に配布していたこと,以上の事実が認められる。
上記で認定した事実によると,UFOは,無償配布が前提とされた非売品ではあるが,原告と被告らの間では,1本につき500円で原告が買い取っていたのであるから,UFOの無償供与について,友誼的な約束にすぎず,法的保護に値する債務ではないということはできない。
(2) 原告代表者は,尋問において,被告らの社員であるCに対して,本件合意に従ったUFOの無償供与を求めたが,供与されなかったと供述しているが,この供述はあいまいであり,上記(1)認定のとおり,被告らは,原告からの請求によってUFOを無償供与していることを考え合わせると,この供述を信用することはできず,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。
しかしながら,被告IBEは,本件合意によって,UFOを毎月200本無償供与することを約したのであるから,それを本件合意に従って履行していない以上,債務不履行となるというべきである。
なお,本件合意を記載した甲第5号証(議事録)には,被告IBEがUFOの無償供与を約したことが明記されているから,原告のこの点に関する被告IBEテクノに対する請求は認められる余地がない。
(3) 上記で認定した事実によると,原告は,毎月開催する説明会において販売促進用に配布するUFOが必要であり,被告IBEから無償で取得できるはずの200本についても,被告IBEの履行がなければ月々対価を支払って取得せざるを得なかったということができるから,UFOを毎月200本無償供与するという被告IBEの債務は,毎月定期的に供与されなければ意味のない債務というべきである。
そうすると,被告IBEの上記債務不履行によって,原告が被った損害額は,原告が無償で取得できなかったために,被告らに支払った金額と解するのが相当である。
原告が無償で取得できた本数は,平成9年分が同年10月19日から12月31日まで480本(73日/365日×2400本),平成10年及び11年分が各2400本,平成12年分が同年1月1日から原告が解除の意思表示をした同年3月29日まで584本(89日/366日×2400本,1本未満四捨五入)で,合計5864本となり,無償供与を受けた550本を控除した5314本につき,1本当たり500円を乗じた265万7000円が原告の被った損害額となる。
なお,原告は,上記債務不履行によって被った損害額は,上記債務の対価の額である本件商標の使用料に等しいと主張するが,前記1認定のとおりこのような対価関係を認めることはできないから,原告の主張を採用することはできない。
また,原告が,本訴状送達より前に,被告IBEに対して,UFOの無償供与の債務不履行に基づく損害賠償について請求したことを認めるに足りる証拠はないから,上記損害賠償請求の遅延損害金は,訴状送達の日の翌日である平成12年5月29日を始期とする限度で認められる。
(4) 本件合意では,「原告と被告らの一体感を増すべく,今後,合同研修会を実施する。」とされているところ,原告代表者は,尋問において,本件合意でいうところの合同研修会とは,原告と被告ら双方が主催者として名を連ねた共催の研修会を意味すると述べている。しかし,証拠(乙第6号証の1ないし5,乙第11,第12,第19号証)によると,被告ら代表者は,主催名義の如何を問わず,原告と被告ら双方から社員が参加した研修会や被告らから講師を派遣した原告の説明会が合同研修会に相当すると考えていたものと認められる。
本件合意のみからでは,合同研修会の意義が一義的に明らかではないこと,原告が本件合意の履行として被告らに研修会の主催名義を共催とするよう申し入れた事実を認めるに足りる証拠がないことからすると,本件合意に定められた合同研修会が,主催者の名義が共催であるものに限定されると解することはできない。また,本件合意は,合同研修会の実施形態,回数,費用負担等について何も定めておらず,現実の実施にはなお細部について相互の調整が必要であったといわざるを得ない。
そうすると,本件合意は,今後,合同研修会を実施するという抽象的な枠組みを定めたに止まるものというべきである。
証拠(乙第6号証の1ないし5,第11,第12号証)によると,原告と被告ら双方の社員が参加した研修会が開催されていたこと,原告主催の説明会に被告らが講師を派遣したことは多数回に及ぶことが認められるから,少なくとも,上記のような抽象的なレベルでの本件合意について,被告らに債務不履行があったと認めることはできない。
(5) 以上によると,本件合意についての被告らの債務不履行は,UFOの無償供与の点についてのみ認められるから,原告の損害賠償請求は,被告IBEに対し,265万7000円及びこれに対する平成12年5月29日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で理由がある。
4 争点(5)について (1) 前記1認定のとおり,アイワと被告IBEテクノとの間において,販売手数料を支払う旨の合意がされたが,その後,平成7年5月31日をもって販売手数料の支払を廃止する旨の合意が成立したものと認められる。また,原告と被告IBEとの間において,販売手数料を支払う旨の合意がされた事実を認めるに足りる証拠はない。
したがって,平成7年6月1日から平成9年10月19日までの間の販売手数料の支払を求める原告の請求は理由がない。
(2) また,原告は,アイワと被告らとの間の契約関係を,営業譲渡によって承継しており,さらに,前記1認定のとおり,本件合意によっても,販売手数料を支払わないことが確認されている。
したがって,平成9年10月19日から平成12年3月29日までの間の販売手数料の支払を求める原告の請求も理由がない。
5 争点(6)について (1) 原告は,原告と被告らの間で,平成9年10月19日又はそれ以前に,相手方が契約する代理店を自己の代理店としないことを合意した旨主張する。
原告は,その根拠として,被告ら代表者には,アイワや原告の販売網を侵害してはならないという規範意識があったこと,アイワと被告らとの間の平成5年4月20日付け議事録(甲第19号証)に「アイワ株式会社及びIBEは,お互いの販売組織のバッティングを起こさないよう常に配慮し,連携を取りながらすすむものとする。」との記載があること等を主張する。
証拠(被告ら代表者)によると,被告ら代表者は,ライフエナジーの販売元であるアイワや原告にとって代理店の存在が重要であることは十分に認識しており,徒にアイワや原告の販売網を侵害してはならないという意識を有していたことが認められる。しかし,そうであるからといって直ちに,被告らが,アイワ又は原告との間において,相手方が契約する代理店を自己の代理店としないという,法的義務を伴った合意をしたと認めることはできない。また,アイワと被告らとの間の平成5年4月20日付け議事録(甲第19号証)では,「アイワ株式会社及びIBEは,お互いの販売組織のバッティングを起こさないよう常に配慮し,連携を取りながらすすむものとする。」との条項が設けられていることが認められるが,上記条項が「配慮する」という表現をとっていること,その内容も具体的な法的義務を負わせるには抽象的にすぎることからすると,上記条項を根拠として直ちに,被告らが,アイワ又は原告との間において,相手方が契約する代理店を自己の代理店としないという,法的義務を伴った合意をしたと認めることはできない。そして,他に,アイワ又は原告と被告らとの間で代理店に関する具体的な定めが存在したことを認めるに足りる証拠がないことからすると,アイワ又は原告と被告らとの間で,原告の主張するような販売権不侵害の合意がされたことを認めることはできないというべきである。
(2) 原告の代理店であったBが平成9年末から平成10年にかけて,被告らの代理店となった事実は当事者間に争いがない。
しかしながら,上記のとおり,販売権不侵害の合意が認められない以上,そのことのみでは,被告らの行為が債務不履行を構成することはないし,他に,被告らに責任を負わせるべき事情を認めるに足りる証拠はない。
したがって,その余の点を判断するまでもなく,販売権侵害の債務不履行に基づく原告の損害賠償請求は理由がない。
6 以上によると,本訴請求は,被告IBEに対し,金265万7000円及びこれに対する平成12年5月29日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,被告IBEに対するその余の請求と被告IBEテクノに対する請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 森義之
裁判官 岡口基一
裁判官 男澤聡子