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関連審決 審判1999-30323
関連ワード 識別力 /  包装 /  識別機能 /  指定商品 /  不使用 /  通常使用権 /  専用使用権 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  国内 /  連合商標 /  存続期間 /  更新登録 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 498号 審決取消請求事件
原告 イザンベール株式会社
訴訟代理人弁護士 田中克郎
同 宮川 美津子
同 中村勝彦
被告A
訴訟代理人弁護士 川本隆司
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/06/27
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が平成11年審判第30323号事件について平成12年11月6日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 主文と同旨 2 被告 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は、「MAGIC」の欧文字と「マヂック」の片仮名文字を上下2段に横書きしてなり、旧商標法施行規則(大正10年農商務省令第36号)に基づく区分による第3類「香料及び他類に属しない化粧品」を指定商品とする登録第0431006号商標(昭和27年6月4日登録出願、昭和28年9月10日設定登録、昭和49年3月8日、昭和58年8月29日及び平成5年10月28日各存続期間更新登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。
原告は、平成11年3月17日、被告を被請求人として、本件商標につき不使用による登録取消しの審判請求をし、その予告登録が同年4月7日(以下「予告登録日」という。)にされた。
特許庁は、同請求を平成11年審判第30323号事件として審理した上、
平成12年11月6日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同月27日に原告に送達された。
2 審決の理由 審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、本件商標は、通常使用権者と認められる株式会社ピカソ美化学研究所(以下「ピカソ美化学」という。)により、予告登録日前3年以内に日本国内において、その指定商品中「クリーム」について使用されていたから、本件商標の登録は、商標法50条の規定により取り消すべき限りでないとした。
原告主張の審決取消事由
1 審決は、ピカソ美化学が使用した商標が本件商標と社会通念上同一と認められるものと誤認した(取消事由)結果、本件商標が予告登録日前3年以内に日本国内において、その指定商品について使用されていたものと誤って判断したものであるから、違法として取り消されるべきである。
2 取消事由(同一性の誤認) (1) 審決は、写真(乙第20号証)及びパンフレット(乙第21号証)に示されたスキンケアクリーム(以下「本件クリーム」という。)の容器に「ALOE」と「MAGIC」の各欧文字を上下2段に横書きして表された商標(以下「ピカソ商標」という。)につき、「『ALOE』と『MAGIC』と2段に表示されている標章中『ALOE』の文字部分が、乙第21号証のパンフレットに『天然保湿成分をゆたかに配合しアロエとホホバがよりお肌をしっとりさせ、肌荒れを防ぎます。』と記載されているように、商品『クリーム』の品質、原材料を端的に示しているといえるから、『ALOE』と『MAGIC』と2段に表示されている標章は、本件商標と社会通念上同一と認めざるを得ない」(審決謄本11頁27行目〜32行目)と判断した上、本件商標は、通常使用権者と認められるピカソ美化学により、予告登録日前3年以内に日本国内において、その指定商品中クリーム(本件クリーム)について使用されていたものとした(同12頁11行目〜15行目)。
しかしながら、ピカソ商標は、「ALOE」の文字部分と「MAGIC」の文字部分とが、書体、大きさ及び色彩を同じくし、上下2段にバランスよく配置されており、全体として2段併記の商標として一体に結合した態様であるとともに、「アロエマジック」と一連によどみなく称呼し得るものである。このようなピカソ商標の態様及び本件クリームの容器にその原材料が「アロエベラ」である旨が別途記載されていることに照らし、ピカソ商標に接した取引者、需要者において、「ALOE」の文字部分を原材料表示であるとして独立して認識することはあり得ない。
すなわち、ピカソ商標は、「ALOE」及び「MAGIC」の各文字部分が全体として一つの商標を構成するものであって、そうすると、ピカソ商標は、外観称呼及び観念とも本件商標と異なるものであるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標であるとは到底いうことができない。
したがって、審決が「『ALOE』の文字部分が・・・商品『クリーム』の品質、原材料を端的に示しているといえるから、『ALOE』と『MAGIC』と2段に表示されている標章は、本件商標と社会通念上同一と認めざるを得ない」とした判断は誤りであり、この判断を前提として、本件商標が、通常使用権者と認められるピカソ美化学により、予告登録日前3年以内に日本国内において、その指定商品中「クリーム」について使用されていたと認定したことも誤りというべきである。
(2) 被告は、ピカソ美化学が使用していた「MAGIC COLOR」及び「LIP MAGIC」の各商標が本件商標と社会通念上同一と認められる商標であるとも主張する。
しかしながら、「MAGIC COLOR」及び「LIP MAGIC」の各商標は、「COLOR」の文字部分又は「LIP」の文字部分と「MAGIC」の文字部分とが、それぞれ書体及び色彩を同じくして一体に書してなるものであり、「マジックカラー」又は「リップマジック」とよどみなく称呼し得るものであって、これらの商標に接した取引者、
需要者が、単に「MAGIC」の文字部分のみ独立して認識することはあり得ない。
そうすると、これらの商標は、本件商標と称呼観念及び外観が全く異なるものであって、本件商標と社会通念上同一と認められる商標であるということはできない。
(3) 被告は、さらに、「HAIR MAGIC」の欧文字と「ヘヤー マジック」の片仮名文字を上下2段に横書きしてなり、平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表の区分による第4類「頭髪用化粧品」を指定商品とする登録第0675473号商標(昭和38年10月22日登録出願、昭和40年5月13日設定登録、昭和50年8月27日、昭和60年7月16日及び平成7年9月28日各存続期間更新登録、以下「関連商標」という。)が、本件商標と、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号、以下「8年改正法」という。)による商標法の改正によって廃止される前の連合商標(同改正前の同法7条)の関係にあったところ、関連商標の通常使用権者である株式会社アリミノ(以下「アリミノ」という。)が、平成8年4月及び6月にヘアートリートメント剤について使用した「GN」、「HAIR」、「MAGIC」の各欧文字を上下3段に横書きしてなる商標(以下「アリミノ商標」という。)が関連商標と社会通念上同一と認められる商標であると主張する。
しかしながら、アリミノ商標は、「GN」、「HAIR」及び「MAGIC」の各文字部分が3段に表された態様であるが、上記各文字部分が書体、大きさ及び色彩を同じくして、バランスよく配置されており、外観において緊密な一体性を有するとともに、「ジーエヌヘアーマジック」と一連によどみなく称呼し得るものであるから、「GN」、「HAIR」及び「MAGIC」の各文字部分が全体として一つの商標を構成するものであり、そうすると、アリミノ商標は、外観称呼及び観念とも本件商標と異なるものであって、本件商標と社会通念上同一であるということはできない。
被告の反論
1 審決の認定、判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
2 取消事由(同一性の誤認)について (1) 原告は、ピカソ商標の上下2段に横書きされた「ALOE」の文字部分と「MAGIC」の文字部分とが、全体として一つの商標を構成するものであると主張するが、審決が認定判断するとおり、「ALOE」の文字部分は、本件クリームの品質、
原材料を端的に示しているものであり、「ALOE」の文字部分と「MAGIC」の文字部分とを一体的に一つの商標として把握しなければならない必然性は全くなく、したがって、原告の上記主張は誤りである。
(2) また、本件商標の通常使用権者であるピカソ美化学は、「MAGIC COLOR」の商標を使用して本件商標の指定商品であるアイシャドウを、さらに、「LIP MAGIC」の商標を使用して本件商標の指定商品である口紅を、それぞれ予告登録日前3年以内に日本国内において販売した。
「MAGIC COLOR」の商標の「COLOR」の文字部分は商品の機能を表示するものにすぎず、また、「LIP MAGIC」の商標の「LIP」の文字部分は、その構成文字が「MAGIC」の文字部分の構成文字の半分の横幅である上、商品の用途である「口唇」を特定するために使用されている付記的部分であるにすぎないから、これらの各商標において、自他商品識別機能を果たすのは「MAGIC」の文字部分である。したがって、これらの商標は本件商標と社会通念上同一と認められる商標と評価すべきものである。
そうすると、この点からも、本件商標は、予告登録日前3年以内に日本国内において、通常使用権者であるピカソ美化学により指定商品につき使用されていたものというべきである。
(3) さらに、被告は、関連商標の商標権者であるところ、平成7年1月1日、
アリミノに対し、許諾商品の範囲をヘアトリートメントセット剤とし、許諾期間を3年とする約定により、関連商標の通常使用権の許諾をした。
本件商標と関連商標とは、8年改正法による商標法の改正によって廃止される前の連合商標の関係にあった。そして、本件審判は、平成12年3月31日より前に請求されたものであるから、本件審判については上記改正前の同法50条2項の規定がなお効力を有し(8年改正法附則10条2項)、予告登録日前3年以内であって、かつ、平成9年3月31日(8年改正法の施行日の前日)までの間に、
日本国内において、関連商標の通常使用権者が本件審判請求に係る指定商品について関連商標を使用していれば、本件商標についての商標登録の取消しを免れることができる。
アリミノは、アリミノ商標を使用して、平成8年4月9日及び同年6月3日に滝川株式会社に対し本件商標の指定商品であるヘアートリートメント剤各10本を販売し、また、同年6月7日に株式会社小西武雄商店に対してヘアートリートメント剤80本を販売した。
そして、「GN」、「HAIR」、「MAGIC」の各文字を上下3段に横書きしてなる構成態様のアリミノ商標は、「HAIR/MAGIC」の文字部分に自他商品識別機能があるから、アリミノ商標と関連商標とは、社会通念上同一と認められる商標というべきである。
当裁判所の判断
1 取消事由(同一性の誤認)について (1) まず、ピカソ商標が本件商標と社会通念上同一と認められる商標といえるか否かにつき検討する。
本件クリームの容器が示されている写真(乙第20号証)及びパンフレット(乙第21号証)によれば、ピカソ商標の態様等につき、本件クリームの円筒形容器の側面の緑色の地に、いずれも白色の欧文字によって、「ALOE」の文字と「MAGIC」の文字とを上下2段に横書きして表したものであること、「ALOE」及び「MAGIC」の各文字部分を構成する文字は、書体及び大きさが同一であること、上段の「ALOE」の文字部分と下段の「MAGIC」の文字部分との間隔は、各文字の大きさの5分の1ないし6分の1程度で、極めて近接しており、かつ、上段の「ALOE」の文字部分の横方向の長さは下段の「MAGIC」の文字部分のそれよりも多少短いものの、それぞれの文字部分の横方向中央を同じ位置にそろえ、下段の文字部分中の上段の文字部分と重ならない部分がその前後端で同じ長さとなるようにし、全体に上下段の文字部分がまとまりよく配置されていることが認められる。
上記態様等に照らすと、ピカソ商標は、上下2段に表されているとしても、その全体が外観において極めて緊密な一体性を有しているものというべきである。他方、前掲パンフレット(乙第21号証)の記載によれば、本件クリームの成分は、アロエベラ(ALOE VERA)にホホバオイル(JOJOBA OIL)を配合したものであることが認められるが、上記ピカソ商標の態様に照らして、これに接した取引者、
需要者が、「ALOE」の文字部分が本件クリームの原材料表示であると理解し、下段の「MAGIC」の文字部分のみを独立した商標として認識するとするのは極めて不自然である。したがって、ピカソ商標は、原材料に由来する「ALOE」の語と「魔法」を意味する「MAGIC」の語とを組み合せた「ALOE MAGIC」との造語によって表されたものであって、全体として1個の商標を構成するものと認められ、また、「ALOE MAGIC」の文字が「アロエマジック」と一連によどみなく称呼し得ることにかんがみて、「アロエマジック」の称呼を生じ、特定の具体的観念は生じないものと認めるのが相当である。
そして、本件商標はその構成に応じて「マジック」の称呼及び「魔法」の観念を生ずるものと認められるから、本件商標と称呼及び観念において異なるものであり、そうすると、ピカソ商標が本件商標と社会通念上同一と認められる商標であるとはいえない。
したがって、ピカソ商標につき、「『ALOE』と『MAGIC』と2段に表示されている標章中『ALOE』の文字部分が、乙第21号証のパンフレットに『天然保湿成分をゆたかに配合しアロエとホホバがよりお肌をしっとりさせ、肌荒れを防ぎます。』と記載されているように、商品『クリーム』の品質、原材料を端的に示しているといえるから、『ALOE』と『MAGIC』と2段に表示されている標章は、本件商標と社会通念上同一と認めざるを得ない」(審決謄本11頁27行目〜32行目)とした審決の判断は誤りであり、本件商標の指定商品にピカソ商標を用いたとしても、指定商品についての本件商標の使用をしたことに当たるということはできない。
(2) 被告は、さらに、本件商標の通常使用権者であるピカソ美化学が「MAGIC COLOR」の商標を使用して本件商標の指定商品であるアイシャドウを、また、「LIP MAGIC」の商標を使用して本件商標の指定商品である口紅を、それぞれ予告登録日前3年以内に日本国内において販売したところ、「MAGIC COLOR」及び「LIP MAGIC」の各商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標と評価すべきものであると主張するので、この点について検討する。
(ア) 製造元をピカソ美化学、発売元を株式会社ジュテームとするアイシャドウの容器及び外箱の写真(乙第12号証)によれば、同外箱の長方形状の1面に「MAGIC COLOR」の欧文字を横書きした商標が付されていること、その構成文字は、大きさ、書体及び色彩が同一でまとまりよく配置されていることが認められ、
その態様に照らすと、「MAGIC COLOR」の文字全体が1個の商標を構成するものと認められる。なお、被告は、「MAGIC COLOR」の商標の「COLOR」の文字部分が商品の機能を表示するものであって、自他商品識別機能を果たすのは「MAGIC」の文字部分であると主張するが、「MAGIC COLOR」の文字の上記態様に照らし、また、それが「マジックカラー」と一連によどみなく称呼し得ること等にかんがみて、当該商標は、「魔法」を意味する「MAGIC」の語と機能に関連する「COLOR」の語とを組み合せた「MAGIC COLOR」との造語によって表されたものであって、「MAGIC COLOR」の文字全体に自他商品識別機能があるものと認めるのが相当であるから、被告の上記主張は採用することができない。
そして、「MAGIC COLOR」の商標は、上記のように「マジックカラー」の称呼を生じ、また、特定の具体的観念は生じないと認められるから、本件商標と称呼及び観念において異なり、さらに本件商標と外観が顕著に異なるものであって、
そうすると、「MAGIC COLOR」の商標が本件商標と社会通念上同一と認められる商標であるとはいえない。
したがって、本件商標の指定商品に「MAGIC COLOR」の商標を用いたとしても、指定商品についての本件商標の使用をしたことに当たるということはできない。
(イ) 製造元をピカソ美化学、発売元を株式会社ジュテームとする口紅の外箱の写真(乙第8号証)によれば、同外箱の長方形状の1面に「JE T'AIME」の欧文字と「LIP MAGIC」の欧文字とを上下2段に横書きした商標が付されていること、そのうちの「LIP MAGIC」の文字部分は、「JE T'AIME」の文字部分と色彩が異なり、
また、構成文字の大きさが小さく表されていること、さらに、「LIP MAGIC」の文字部分のみについて見るに、そのうちの「LIP」の文字部分を構成する各文字が「MAGIC」の文字部分を構成する各文字のおおむね3分の1の横幅であるものの、「LIP MAGIC」の文字部分全体として、各文字が書体及び色彩を同じくしてまとまりよく配置されていることが認められる。
そうすると、構成文字の大きさ及び色彩の相違並びに「JE T'AIME」の語がフランス語であるのに対し「LIP MAGIC」の語が英語であることによって、仮に、「LIP MAGIC」の文字部分が「JE T'AIME」の文字部分から独立した別個の商標であるとしても、「LIP MAGIC」の文字部分の上記態様に照らして、その部分全体が1個の商標を構成するものと認められる。なお、被告は、「LIP MAGIC」の商標の「LIP」の文字部が商品の用途を表示するものであって、自他商品識別機能を果たすのは「MAGIC」の文字部分であると主張するが、「LIP MAGIC」の文字部分の上記態様に照らし、また、「LIP MAGIC」の文字が「リップマジック」と一連によどみなく称呼し得ること等にかんがみて、当該商標は、用途に関連する「LIP」の語と「魔法」を意味する「MAGIC」の語とを組み合せた「LIP MAGIC」との造語によって表されたものであって、「LIP MAGIC」の文字全体に自他商品識別機能があるものと認めるのが相当であるから、被告の上記主張は採用することができない。
そして、「LIP MAGIC」の商標は、上記のように「リップマジック」の称呼を生じ、また、特定の具体的観念は生じないと認められるから、本件商標と称呼及び観念において異なり、さらに、本件商標と外観が顕著に異なるものであって、
そうすると、「LIP MAGIC」の商標が本件商標と社会通念上同一と認められる商標であるとはいえない。
したがって、本件商標の指定商品に「LIP MAGIC」の商標を用いたとしても、指定商品についての本件商標の使用をしたことに当たるということはできない。
(3) 本件商標に係る商標登録原簿写し(乙第1号証)並びに関連商標に係る商標登録原簿写し(乙第27号証)及び公告公報(乙第32号証)によれば、関連商標は「HAIR MAGIC」の欧文字と「ヘヤー マジック」の片仮名文字を上下2段に横書きしてなるものであって、本件商標と関連商標とは、8年改正法による商標法の改正によって廃止される前の連合商標(同改正前の同法7条)の関係にあったことが認められる。そして、被告は、関連商標の通常使用権者であるアリミノが、予告登録日前3年以内であって、かつ、平成9年3月31日(8年改正法の施行日の前日)までの間に、日本国内において、アリミノ商標を使用して本件審判請求に係る指定商品であるヘアートリートメント剤を販売したところ、アリミノ商標は関連商標と社会通念上同一と認められる商標であると主張するので、この点について検討する。
アリミノが販売するヘアートリートメント剤の写真4葉(乙第28号証の1〜4)によれば、アリミノ商標の態様等につき、同ヘアートリートメント剤の円筒形容器の側面に、「GN」、「HAIR」及び「MAGIC」の各欧文字を上下3段に横書きして表したものであること、「GN」、「HAIR」及び「MAGIC」の各文字部分を構成する文字は、書体及び大きさが同一であること、各文字部分の間隔は、各文字の大きさの3分の2程度であって互いに近接しており、また、それぞれの文字部分の横方向の長さは、上段から下段に向かうに従って長くなるものの、それぞれの文字部分の横方向中央を同じ位置にそろえ、上段から下段に向かうに従って、各文字部分の左右の文字端がおおむね等間隔で広がるようにし、全体に上中下各段の文字部分がまとまりよく配置されていることが認められる。
上記態様等に照らすと、アリミノ商標は、上下3段に表されているとしても、その全体が外観において極めて緊密な一体性を有しているものと認められ、「GN」、「HAIR」及び「MAGIC」の各文字を組み合せた「GN HAIR MAGIC」との造語によって表されたものであって、全体として1個の商標を構成するものであると認めるのが相当である。
また、前掲ヘアートリートメント剤の写真4葉(乙第28号証の1〜4)によれば、同ヘアートリートメント剤の容器には、アリミノ商標のほか、「Gals Nippon」、「Treatment set」、「(Technical)」の各欧文字を上下3段に横書きした表示、及び「ギャルスニッポン」、「トリートメントセット・テクニカル」の各文字を上下2段に横書きした表示が付されており、さらに、同ヘアートリートメント剤に係る化粧品製造品目追加許可申請書(乙第29号証の1)には、「新たに製造する品目」として「頭髪用化粧品類 ギャルスニッポン トリートメントセット・テクニカル」との記載があるところ、これらの事実によれば、同ヘアートリートメント剤は、その製品としての名称を「ギャルスニッポン トリートメントセット・テクニカル」とするものであり、アリミノ商標の「GN」の文字部分は、上記名称のうち特に識別力が強いものと認められる「ギャルスニッポン」の部分の英語表記である「Gals Nippon」の頭文字を組み合せたものであることが推認される。
そうすると、アリミノ商標の「GN」の文字部分は、同商標が自他商品識別標識としての機能を果たす上でとりわけ重要な部分であると解されるから、アリミノ商標に接する取引者、需要者が、「GN」の文字部分を省いて、これを「ヘアーマジック」と称呼するものとは認め難く、したがって、アリミノ商標からは、多少冗長にわたるものの、「ジーエヌヘアーマジック」の称呼が生ずるものと認めるのが相当である。また、アリミノ商標からは特定の具体的な観念は生じないと認められる。
なお、前掲ヘアートリートメント剤の写真のうち乙第28号証の4によれば、同ヘアートリートメント剤の包装箱には、「Gals Nippon」の欧文字と「Let's HAIR」の欧文字とを右端をそろえて上下2段に横書きし、その右側に接して「MAGIC」の欧文字を横書きし、更にその右側に接して「(Technical)」の欧文字を横書きしたものであって、各文字部分の構成文字の大きさが、「MAGIC」、「Let's HAIR」、「(Technical)」及び「Gals Nippon」の各文字部分の順に小さくなるように表した表示が付されていることが認められる。しかしながら、この表示全体から「ヘアーマジック」の称呼が生ずるものとは認められないし、まして、このような表示が包装箱に存在するからといって、アリミノ商標から「ヘアーマジック」の称呼が生ずるとする理由もない(なお、被告は、上記表示のうち構成文字の大きい「MAGIC」の文字部分につき、直截的に本件商標の使用と解することも可能である旨主張するが、アリミノが本件商標についての専用使用権者又は通常使用権者である旨の主張立証はないから、上記主張はそれ自体失当といわざるを得ない。)。
他方、関連商標は、その構成に応じて「ヘヤーマジック」又は「ヘアーマジック」の称呼が生じ、特定の具体的な観念は生じないものと認められる。
そうすると、アリミノ商標と関連商標とは、ともに特定の具体的な観念が生ずるものではないが、称呼を異にし、さらに、外観においても顕著に異なるものであるから、社会通念上同一と認められる商標であるとはいえない。
したがって、本件商標の指定商品にアリミノ商標を使用したとしても、本件審判請求に係る指定商品についての関連商標の使用をしたことに当たるということはできないから、本件商標と連合商標の関係にあった商標が、予告登録日前3年以内であって連合商標制度の廃止までの間に日本国内において、その通常使用権者であるアリミノにより本件商標の指定商品につき使用されていたとの被告の主張は、その余の点につき判断するまでもなく、採用することができない。
2 以上のとおり、本件商標が通常使用権者と認められるピカソ美化学により、
予告登録日前3年以内に日本国内において、その指定商品中「クリーム」について使用されていたとの審決の判断は誤りであり、また、当該判断のほか、本件商標又はこれと連合商標の関係にあった商標が、通常使用権者により、予告登録日前3年以内に(連合商標にあっては、予告登録日前3年以内であって連合商標制度の廃止までの間に)日本国内において、本件審判請求に係る指定商品に使用されていたとする被告の主張を認めることもできないから、審決は結論に影響を及ぼす瑕疵があり、違法として取消しを免れない。
よって、原告の請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 石原直樹
裁判官 宮坂昌利