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関連ワード 包装 /  周知性 /  損害額 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  差止 /  使用許諾 / 
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事件 平成 12年 (ワ) 18167号 商標権侵害差止等請求事件
原告A
原告 株式会社マサトモ
原告ら訴訟代理人弁護士 米田宏己
同 西信子
同 山崎邦夫
同 石川直基
原告ら補佐人弁理士 小谷悦司
同 川瀬幹夫
被告 株式会社フェイクデリック
訴訟代理人弁護士 佐々木 和郎
補佐人弁理士 菊池敏夫
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2001/06/26
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,原告らの負担とする。
事実及び理由
請求
1(1) 被告は,別紙被告標章目録(1)記載の標章(以下「被告標章(1)」という。)を付したジャケット,ジーパン,Tシャツ,ストール,その他の被服類,かばん類,ベルトその他の洋品類,ピアスその他の身飾品等を販売し,販売のために展示し,及び,その包装紙,広告,パンフレット,タッグ等に被告標章(1)を使用してはならない。
(2) 被告は,その本店,支店,営業所及び倉庫に存する被告標章(1)を付したジャケット,ジーパン,Tシャツ,ストール,その他の被服類,かばん類,ベルトその他の洋品類,ピアスその他の身飾品等を廃棄せよ。
(3) 被告は,東京都渋谷区道玄坂2丁目29番1号所在のデパート「渋谷109」に開設している服飾店に設置の被告標章(1)を表示した看板類を撤去せよ。
(4) 被告は,東京都渋谷区道玄坂2丁目29番1号所在のデパート「渋谷109」5階に開設している服飾店の被告標章(1)の店名「moussy」の使用を中止せよ。
2 被告は,別紙被告標章目録(2)記載の標章(以下「被告標章(2)」という。)を宣伝広告のため雑誌,新聞等の刊行物に使用してはならない。
3(1) 被告は,被告標章(1)を「マウジー」と称呼してはならない。
(2) 被告は,被告標章(1)を雑誌,新聞等の刊行物に「マウジー」と記載させてはならない。
4 被告は,原告株式会社マサトモに対し,金800万円及びこれに対する平成12年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要等
1 争いのない事実等 (1) 当事者 ア 原告Aは,ファッションデザイナーであり,原告株式会社マサトモ(以下「原告マサトモ」という。)は,原告Aが代表取締役を務める紳士服等の企画,デザイン,製造販売並びに商標権の使用許諾等を業とする株式会社である。
イ 被告は,平成12年3月に設立された,アパレル商品の企画,製造販売等を業とする株式会社である。
(2) 原告らが有する商標権 原告Aは,別紙商標権目録(1)記載の商標権を有している(以下「本件商標権(1)」といい,その登録商標を「原告商標(1)」という。)。また,原告マサトモは,同目録(2),(3)記載の各商標権を有している(以下「本件商標権(2)」,「本件商標権(3)」といい,その各登録商標をそれぞれ「原告商標(2)」,「原告商標(3)」という。原告商標(1)ないし(3)をまとめて「原告ら各商標」という。)。
(3) 被告による標章の使用 ア 被告は,平成12年4月下旬ころより,東京都渋谷区道玄坂2丁目29番1号所在のデパート「渋谷109」に開設している服飾店「moussy」において,被告標章(1)を,ジャケット,ジーパン,Tシャツ,ストール,その他の被服類,かばん類,ベルトその他の洋品類,ピアスその他の身飾品等に付して販売している。
イ また,被告は,上記「渋谷109」内の5階店頭入口に被告標章(1)記載の店頭看板を,同1階に被告標章(1)記載の店舗案内板を掲げ,かつ包装紙,広告,パンフレット,タッグ,レシート等にも被告標章(1)を付して使用している。
(4) 被告は,今後,被告標章(2)を使用する意思がある。
2 事案の概要 本件は,原告らが,被告に対し,「原告ら各商標と被告標章(1)は類似しているから,被告標章(1)の使用行為は,原告らの商標権を侵害する。」,「別紙原告ら商品等表示目録記載の各表示(以下「本件商品等表示(1)」等といい,これらをまとめて「本件商品等表示」という。)は,原告らの商品等表示として周知,かつ,著名であるところ,被告各標章は,本件商品等表示と類似しており,その使用は原告らの商品又は営業と誤認混同を生じさせる(不正競争防止法2条1項1号,2号違反)」と主張して,商標権及び不正競争防止法3条に基づいて,被告標章(1)の使用差止め及び被告標章(1)が付された商品の廃棄を求めるとともに,不正競争防止法3条に基づいて,被告標章(2)の使用差止め及び被告標章(1)を「マウジー」と称呼することの差止めを求め,さらに,原告マサトモにつき不正競争防止法4条及び民法709条に基づいて被告標章(1)の使用を理由とする損害賠償を求めている事案である。
3 本件の争点 (1) 商標権に基づく請求について 原告ら各商標と被告標章(1)とは類似するかどうか (2) 不正競争防止法違反に基づく請求について ア 本件商品等表示の周知性,著名性の有無 イ 本件商品等表示と被告各標章とは類似するかどうか,被告各標章の使用は原告らの商品又は営業と誤認混同を生じさせるかどうか (3) 原告マサトモが被った損害額
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)について 【原告らの主張】 原告ら各商標の称呼は,「マージ」であるところ,被告標章(1)からは,「マウジー」という称呼が生じるから,原告ら各商標と被告標章(1)は称呼上類似している。すなわち,両者は,称呼上第2音目の「ウ」と「ー(長音)」並びに第4音目「ー(長音)」の有無に相違があるが,前者の「ウ」と「ー(長音)」の相違音については,第2音「ウ(u)」の音は,前音「マ(ma)」の母音と二重母音を形成する関係上,前音の母音「a」に吸収され,「ウ(u)」は,微弱な音となるため,一連に称呼した場合には相紛れるおそれがある。また,後者の「ー(長音)」の有無の相違音については,後尾音における長音は前者「ジ(ji)」の母音の余韻として残るにすぎず,明確には聴音され難いものであって,このような長音の有無の差異が,両称呼の全体に及ぼす影響は極めて小さい。したがって,「マウジー」と「マージ」を一連に称呼した場合,両者は全体として語感,語調が極めて近似している。さらに,後述のとおり,原告Aは世界的に有名なデザイナーであり,原告ら各商標も,「マージ」という称呼のもとに周知著名なものである。これらのことからすると,原告ら各商標と被告標章(1)は,類似しているというべきである。
【被告の主張】 (1) 被告標章(1)について「マウジー」の称呼が生じることは認める。
(2) 原告ら各商標と被告各標章とは,称呼,外観,観念のいずれの点においても類似しているとはいえない。
2 争点(2)について 【原告らの主張】 (1) 本件商品等表示の周知性及び著名性 原告Aは,昭和61年にデザイナーとしてデビューして以来,デザイナー及びファッション業界において,「マージ」と愛称される世界的に有名なデザイナーである。原告Aは,自らデザインした商品を被服,メガネ,かばん,ベルト,ネクタイ,喫煙具,時計,風呂敷,インテリアアイテム等の各種メーカーに実施許諾する際に,本件商品等表示を使用許諾し,これらを付することを義務づけてきた。
その結果,本件商品等表示は,「マージ」という称呼のもとに,原告Aのデザイナーズブランドとして,周知著名なものとなっており,原告らの商品表示,営業表示として,周知著名である。
(2) 本件商品等表示と被告各標章の類否及び誤認混同のおそれ ア 本件商品等表示の略称,通称は,いずれも「マージ」であるところ,被告各標章は,いずれも「マウジー」と称呼するから,本件商品等表示と被告各標章は,称呼の点において類似している。
被告各標章は,強いインパクトを植え付けるという意味で,本物を知ってもらいたいというブランドコンセプトであるところ,原告A自身もブランド立ち上げ当時から物作りの基本を「本物」指向と定義付けて,その思想を表明しており,両者は,商品コンセプトにおいて同一である。
イ 取引者,需要者は,異なる時,異なる場所においては,本件商品等表示と被告各標章を全体的に類似のものとして受け取り,被告商品を原告Aがデザインした商品又は原告らと何らかの関係がある商品として取り扱い,購入する危険が極めて高い。このように,被告各標章の使用は原告らの商品又は営業と誤認混同を生じさせる。被告は,このような誤認を意図して被告標章(1)を「マウジー」と称呼させ,かつ,活字にさせている。
【被告の主張】 (1) 本件商品等表示が,原告らの商品表示,営業表示として,周知著名であるということはない。
(2) 本件商品等表示と被告標章は,称呼,外観,観念のいずれの点においても類似しているとはいえず,また,被告各標章の使用によって,原告らの商品又は営業と誤認混同が生じることはない。
3 争点(3)について 【原告マサトモの主張】 原告マサトモが被った損害は,以下のとおりである。
(1) 使用料相当損害金 450万円 (2) 調査費用 50万円 (3) 弁護士費用 300万円 【原告らの主張】 原告らは,混同惹起行為の停止又は予防として,被告標章(1)を「マウジー」と称呼することの差止めを求めることができる。
【被告の主張】 原告マサトモの主張はすべて争う。
なお,原告らは,被告標章(1)を「マウジー」と称呼してはならない旨主張するが,称呼が音声であり,不正競争防止法にいう商品等表示ではないうえ,音声は,瞬時に消えるものであり,いつ,どこで,誰が「マウジー」と称呼したかを誰がどのようにして差し止めるのかを特定できないから,原告らの上記主張は失当である。
当裁判所の判断
1(1) 原告ら各商標,本件商品等表示及び被告各標章について 上記争いのない事実並びに証拠(甲1の1ないし3,甲3,甲4の1,甲16,18,19,27,29,35)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
ア 原告ら各商標 原告商標(1)は,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合した「MA-JI」の欧文字を横書きし,その上部にほぼ同じ大きさの「マージ」の片仮名文字を横書きして構成された商標であり,「マージ」の称呼を生じる。
原告商標(2)(3)は,いずれも,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合した「MA-JI」の欧文字を横書きし,その下部に欧文字よりも小さな「マージ」の片仮名文字を横書きして構成された商標であって,「マージ」の称呼を生じる。
イ 本件商品等表示 (ア) 本件商品等表示(1)と原告商標(1),本件商品等表示(2)と原告商標(2)(3)は,それぞれ同一である。
(イ) 本件商品等表示(3)は,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合した「MA-JI」の欧文字から構成されているものであって,「マージ」の称呼を生じる。
(ウ) 本件商品等表示(4)は,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合した「MA-JI」の欧文字を横書きし,その下部に上部欧文字よりも小さく「M」「A」「S」「A」「T」「O」「M」「O」の各欧文字を横書きして構成されたものであって,上部からは,「マージ」,下部からは「まさとも」の称呼がそれぞれ生じる。
(エ) 「MA-JI」及び「マージ」は,原告Aの通称に由来する。
ウ 被告各標章 (ア) 被告標章(1)は,小文字からなる「m」「o」「u」「s」「s」「y」の欧文字を横書きして構成されたものであって,「マウジー」の称呼を生じる。
(イ) 被告標章(2)は,片仮名で「マウジー」と表記されているものであって,「マウジー」の称呼を生じる。
(ウ) 被告は,被告各標章を,「強いインパクトを植え付ける」という意味で用いている。
(2) 本件商品等表示の周知性及び著名性について ア 上記争いのない事実並びに証拠(甲13の1ないし29,甲32,36,47,甲50の1ないし10,甲58,甲66の1,甲71の1)及び弁論の全趣旨によると,原告Aは,昭和61年にファッションデザイナーとしてデビューし,その際本件商品等表示(4)を商品に付して,自己のブランド名として使用したこと,原告Aは,昭和63年に本件商品等表示(3)に係る表示を使用した商品を発表したこと,平成元年7月,原告Aは,渋谷区神南に「MA-JIショップ」を出店したこと,平成2年5月16日発行の読売新聞夕刊に,原告Aを紹介する記事が掲載されていること,原告Aは,平成3年上期から東京ファッションデザイナー協議会の正会員となったこと,平成4年9月に,原告Aがデザインした商品を製造販売する原告マサトモが設立されたこと,原告Aは,平成5年までに,自らデザインした商品を,被服,ハンカチ,風呂敷等のメーカーに実施許諾し,本件商品等表示(3)(4)の使用を許諾したこと,原告A及び本件商品等表示(3)(4)を使用した商品は,平成5年までの間に,各種ファッション雑誌等において数多く紹介されたこと,平成5年までの間に,東京の他,大阪,名古屋,高松,沖縄に「MA-JI SHOP」を出店したこと,以上の事実が認められ,これらの事実からすると,本件商品等表示(3)(4)は,少なくとも原告マサトモが設立された後である平成5年ころには,原告Aがデザインした商品又は原告マサトモの商品若しくは営業を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたものと認められる。そして,証拠(甲13の30ないし48,甲16ないし25,甲26の1ないし3,甲27ないし29,甲30の1,2,甲31の1,2,甲33ないし35,甲37の1ないし3,甲38の1,2,甲39ないし41,47,58,甲66の3ないし9,甲67の1ないし6,甲68の1ないし19,甲69の1ないし5,甲70の1ないし11,甲71の2ないし9,甲72の1ないし11,甲73,甲74の1,5,7,甲75の1,2,甲78,80,83,甲85の1ないし7)及び弁論の全趣旨によると,原告Aは,平成6年以降の時期において,自らデザインした商品を,被服,メガネ,かばん,ベルト,ネクタイ,喫煙具,時計,インテリアアイテム等の各種メーカーに実施許諾したが,その際には,本件商品等表示(3)(4)の使用を許諾し,商品,広告等にこれらの表示が使用されてきたこと,原告A及び本件商品等表示(3)(4)を使用した商品は,平成6年以降においても,各種ファッション雑誌等において数多く紹介されたこと,以上の事実が認められる。したがって,本件商品等表示(3)(4)は,平成6年以降現在に至るまで,原告Aがデザインする商品又は原告マサトモの商品若しくは営業を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていると認められる。もっとも,本件商品等表示(3)(4)が原告A又は原告マサトモの商品表示又は営業表示として著名であるとまで認めるに足りる証拠はない。
イ 証拠(甲45の1ないし368)によると,本件商品等表示(1)(2)が原告Aのデザインした商品であることを表示するものとして広く認識されている旨記載した書面が存在するが,これらは,あらかじめ印刷した文書に署名を得たものであって,原告らが,本件商品等表示(1)(2)を,商品,広告等において,商品又は営業を表示するものとして,使用していることを認めるに足りる証拠はないことからすると,これらの表示が需要者の間に広く認識されているとまで認めることはできないし,まして著名であるとは認められない。
2 原告ら各商標及び本件商品等表示と被告各標章の類否について (1) 原告商標(1)ないし(3)と被告標章(1)との類否 ア 前記認定のとおり,原告商標(1)は,「マージ」の称呼が生じるのに対して,被告標章(1)は,「マウジー」の称呼が生じるところ,両者の称呼は,2音目と4音目が異なり,全体としての語感及び語調も異なるものと認められる。両者の称呼が類似する旨の原告らの主張は採用できない。また,原告商標(1)が片仮名と欧文字の上下2段書きであり,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合した「MA-JI」の欧文字と,その上部にほぼ同じ大きさの「マージ」の片仮名文字で構成されているのに対し,被告標章(1)は小文字の「m」「o」「u」「s」「s」「y」からなる欧文字で構成されていることからすると,両者の外観は全く異なる。さらに,原告商標(1),被告標章(1)それぞれの由来等は,前記認定のとおりであるが,これらが,一般に特定の観念を生じるとは認められない。そうすると,原告商標(1)と被告標章(1)が類似するとは認められない。
イ 前記認定のとおり,原告商標(2),同(3)は,「マージ」の称呼が生じるのに対して,被告標章(1)は,「マウジー」の称呼が生じるところ,両者の称呼は,上記認定のとおり,異なるものと認められる。また,原告商標(2),(3)は,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合した「MA-JI」の欧文字と,その下部に欧文字よりも小さな「マージ」の片仮名文字を,ともに横書きして構成されたものであって,被告標章(1)とはその外観が全く異なる。したがって,原告商標(2),同(3)と被告標章(1)が類似するとは認められない。
(2) 本件商品等表示(3),同(4)と被告各標章との類否 ア 前記認定のとおり,本件商品等表示(3)は,「マージ」の称呼が生じるのに対し,被告標章(1)は,「マウジー」の称呼が生じるところ,両者の称呼は,上記認定のとおり,異なるものと認められる。また,本件商品等表示(3)は,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合した「MA-JI」の欧文字から構成されているのに対し,被告標章(1)は,小文字からなる「m」「o」「u」「s」「s」「y」の欧文字を横書きして構成されていることからすると,両者の外観は全く異なる。
前記認定のとおり,本件商品等表示(3)は,「マージ」の称呼が生じるのに対し,被告標章(2)は,「マウジー」の称呼が生じるところ,両者の称呼は,上記認定のとおり,異なるものと認められる。また,被告標章(2)は,片仮名で「マウジー」と表記されているものであるから,本件商品等表示(3)とは,その外観が全く異なる。
したがって,本件商品等表示(3)と被告各標章が類似するとは認められない。
イ 前記認定のとおり,本件商品等表示(4)は,「マージ」「まさとも」の称呼が生じるのに対し,被告標章(1)は,「マウジー」の称呼が生じるところ,両者の称呼は,上記認定したところからすると,異なるものと認められる。また,本件商品等表示(4)は,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合した「MA-JI」の欧文字と,その下部に上部欧文字よりも小さく「M」「A」「S」「A」「T」「O」「M」「O」の各欧文字を横書きして構成されているのに対し,被告標章(1)は,小文字からなる「m」「o」「u」「s」「s」「y」の欧文字を横書きして構成されているから,両者の外観は全く異なる。
前記認定のとおり,本件商品等表示(4)は,「マージ」「まさとも」の称呼が生じるのに対し,被告標章(2)は,「マウジー」の称呼が生じるところ,両者の称呼は,上記認定のとおり,異なるものと認められる。また,被告標章(2)は,片仮名で「マウジー」と表記されているものであるから,本件商品等表示(4)とは,その外観が全く異なる。
したがって,本件商品等表示(4)と被告各標章が類似するとは認められない。
ウ なお,原告が主張するように,本件商品等表示(3),同(4)の略称,通称が「マージ」であるとしても,上記のとおり「マージ」と「マウジー」は称呼において異なるものであるし,外観の違いも無視することはできないから,上記認定のとおり本件商品等表示(3),同(4)と被告各標章が類似するとは認められない。
(3) 次に,本件商品等表示(1),同(2)と被告各標章との類否についても,念のため判断する。
ア 本件商品等表示(1)と原告商標(1),本件商品等表示(2)と原告商標(2)(3)は,それぞれ同一であるから,本件商品等表示(1),同(2)と被告標章(1)との類否については,上記(1)で述べたところがそのまま当てはまる。
イ 前記認定のとおり,本件商品等表示(1),同(2)は,「マージ」の称呼が生じるのに対し,被告標章(2)は,「マウジー」の称呼が生じるところ,両者の称呼は,上記認定のとおり,異なるものと認められる。また,本件商品等表示(1)は,片仮名と欧文字の上下2段書きであり,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合した「MA-JI」の欧文字と,その上部にほぼ同じ大きさの「マージ」の片仮名文字で構成されているのに対し,被告標章(2)は,片仮名で「マウジー」と表記されているものであって,片仮名の「マ」と「ジ」については共通するものの,他に共通点はないから,外観についても,両者は異なる。さらに,本件商品等表示(2)は,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合した「MA-JI」の欧文字と,その下部に欧文字よりも小さな「マージ」の片仮名文字を,ともに横書きして構成されたものであるのに対し,被告標章(2)は,片仮名で「マウジー」と表記されているものであって,片仮名の「マ」と「ジ」については共通するものの,他に共通点はないから,外観についても,両者は異なる。したがって,本件商品等表示(1),同(2)と被告各標章が類似するとは認められない。
(4) 前記1(2)認定のとおり,本件商品等表示(3)(4)は,原告Aがデザインする商品又は原告マサトモの商品若しくは営業を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていると認められるが,そのことを考慮しても,上記(1)ないし(3)認定のとおり,原告ら各商標及び本件商品等表示と被告各標章が類似していない以上,これらが類似していると認めることはできないものというべきである。
3 以上のとおり,本件商品等表示(1)(2)が周知,著名であるとは認められず,また,原告ら各商標及び本件商品等表示と被告各標章が類似していない以上,原告らの本訴請求は,いずれも理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 森義之
裁判官 内藤裕之
裁判官 上田洋幸