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関連審決 審判1999-30385
関連ワード 包装 /  指定商品 /  商標の同一性 /  不使用 /  通常使用権 /  専用使用権 /  国内 /  分割移転 /  使用許諾 /  継続 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 303号 審決取消請求事件
原告 【A】
訴訟代理人弁理士 古田剛啓
被告 【B】
訴訟代理人弁理士 岡田英彦
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/02/27
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が平成11年審判第30385号事件について平成12年6月23日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 被告は、別紙本件商標のとおりの構成から成る登録第657678号-1商標(昭和38年3月4日登録出願、昭和39年11月10日設定登録。本件商標)の商標権者である。本件商標は、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品としていたが、分割移転により「溶接マスク、防毒マスク、防じんマスク、防火被服」については登録第657678号-2商標となり、さらに、指定商品の一部について商標登録を取り消すべき旨の審決が確定し、指定商品中「たび、えりまき、
マフラー、スカーフ、ネッカチーフ、ショール、ネクタイ、ゲートル、たびカバー、エプロン、おしめ」及び「手袋」については取り消された。
原告は、平成11年3月31日、被告を被請求人として、本件商標の指定商品中「くつ下」について商標法50条1項による登録取消審判の請求をし(審判請求の登録日・同年4月28日)、平成11年審判第30385号事件として審理された結果、平成12年6月23日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年7月19日原告に送達された。
2 審決の理由の要点 (1) 原告(請求人)の主張 (1)-1 審判請求の理由 本件商標の原簿には、専用使用権者及び登録された通常使用権者は存在しない。
そして、本件商標は、被告によって、本件商標の指定商品のうち「くつ下」について継続して3年以上日本国内において使用された事実は存しないから、本件商標は、指定商品中「くつ下」について、商標法50条の規定により、その登録は取り消されるべきである。
(1)-2 答弁に対する弁駁 (1)-2-1 審判乙第1号証ないし審判乙第15号証に対する認否は次のとおりである。
審判乙第1号証については認否を留保する。審判乙第2号証ないし審判乙第15号証は不知であり、否認又は争う。
(1)-2-2 審判乙第2号証の口紙(台紙)に表れているものは、大文字の「SANKO」であり、「anko」が小文字ではなく、「S」,「AN」,「0」の上に同一直線上の細線と「0」の上に太い横棒がない。
審判乙第6号証,審判乙第7号証,審判乙第12号証の靴下の口紙(台紙)に表された「Sanko」の「S」,「an」,「o」の上に同一直線上の細線がなく、かつ「o」の上に太い「横棒」がなく、また箱の蓋の側面部のロゴ体の「サンコー」と分離されて用いられている。
審判乙第11号証の箱の蓋の側面部の「SANKO」は大文字であり、「ANKO」が小文字ではなく、「S」,「AN」,「0」の上に同一直線上の細線と「O」の上に太い「横棒」がない。
以上のような相違があるので、本件商標に対し、審判乙第2、6、7、11、12号証は、いずれも社会通念上、同一の商標と認めることは出来ない。
よって、審判乙第2、6、7、11、12号の各号証が仮に成立したとしても、
本件商標は不使用に該当するので、請求の趣旨のとおりの審決を求めるものである。
(2) 被告(被請求人)の主張及び証拠方法 被告は審判で次のように述べ、証拠方法として審判乙第1号証ないし審判乙第15号証を提出した。
(2)-1 本件商標は横長円内に白抜きした「サンコー」の文字及び「Sanko」の文字を上下に配した態様の商標であり、原告は本件商標の指定商品のうち「くつ下」について本件商標の取消しを請求した。
しかし、本件商標については、通常使用権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において本件審判請求に係る指定商品「くつ下」に使用している。したがって、本件商標は取り消されるべきではない。
(2)-2 本件商標についての使用許諾の契約及び通常使用権者 本件商標の商標権者は、サンコー靴下株式会社(住所 【名古屋市<以下略>】)に対して通常使用権の許諾をしており、本件審判の請求の登録前3年以内においてサンコー靴下株式会社は、本件商標の通常使用権者である。
審判乙第1号証は、商標権者とサンコー靴下株式会社との商標使用許諾の契約についての証明書である。
これにより、サンコー靴下株式会社は、本件審判の請求の登録前3年以内である平成10年6月8日〜平成11年4月27日の期間において、指定商品全部及び日本全国を範囲とする通常使用権であることが証明される。
(2)-3 本件商標の使用の事実及び使用の証明 本件商標の通常使用権者であるサンコー靴下株式会社は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において指定商品「くつ下」について本件商標の使用をしている。以下、この使用の事実について述べるとともに、その使用を証明する。
(2)-3-1 通常使用権者であるサンコー靴下株式会社は、本件審判の請求の登録前3年以内において、その取引先である株式会社池田商店(住所 【新潟市<以下略>】)に、本件商標を付した商品「靴下」を販売している。
a.審判乙第2号証は、上記本件商標の使用の事実があったことについての株式会社池田商店による証明書である。
審判乙第3号証ないし審判乙第5号証は、本件商標を使用した靴下の販売取引があったことを示すもので、審判乙第3号証は株式会社池田商店へ出張伺いに出向いた際に受けた靴下の注文内容を示す受注書、審判乙第4号証はこの受注した靴下の納品書(控)、審判乙第5号証はこの取引に関するサンコー靴下株式会社の得意先元帳である。
b.これにより、サンコー靴下株式会社が、平成10年10月28日に株式会社池田商店から「靴下(品番73-6FR)、30足」の注文を受けて(審判乙第3号証)、平成10年10月31日にこの靴下のうち20足を株式会社池田商店に納品し(審判乙第4号証)、平成10年11月27日にその代金を手形により受け取ったこと(審判乙第5号証)が証明される。
c.そして、上記の販売取引において靴下(品番73-6FR)の一足ごとに取り付けられた口紙(台紙)には、本件商標(横長円内に白抜きした「サンコー」の文字、及び「SANKO」の文字)が付されており、納品の際にこの靴下が収容されていた納品用の箱には本件商標のローマ字部分「SANKO」が付されていたことが証明される(審判乙第2号証の写真参照)。
また、かかる態様による本件商標の使用は、取引社会において通常用いられる手法であり、商標の同一性の範囲内である。
(2)-3-2 通常使用権者であるサンコー靴下株式会社は、本件審判の請求の登録前3年以内において、その取引先である室哲商店(住所 【富山県高岡市<以下略>】)に、本件商標を付した商品「靴下」を販売している。
a.審判乙第6号証及び審判乙第7号証は、上記本件商標の使用の事実があったことについての室哲商店による証明書である。
審判乙第8号証ないし審判乙第10号証は、本件商標を使用した靴下の販売取引があったことを示すもので、審判乙第8号証は室哲商店からの郵便はがきによる注文書、審判乙第9号証はこれら受注した靴下の納品書(控)、審判乙第10号証はこの取引に関するサンコー靴下株式会社の得意先元帳である。
b.これにより、サンコー靴下株式会社が、室哲商店からの郵便はがきにより、
平成10年11月15日に「靴下(品番55816)、10足」及び平成10円11月19日に「靴下(品番61303)、20足」の注文を受けて(審判乙第8号証)、平成10年11月21日にこれらの靴下を室哲商店に納品し(審判乙第9号証)、平成10年12月22日にその代金を受け取ったこと(審判乙第10号証)が証明される。
c.そして、上記の販売取引において靴下(品番55816及び品番61303)の一足ごとに取り付けられていた口紙(台紙)には、本件商標のローマ字部分「Sanko」が付されており、納品の際にこの靴下が収容されていた納品用の箱には本件商標の片仮名部分「横長円内に白抜きしたサンコー」が付されていたことが証明される(審判乙第6号証及び審判乙第7号証の写真参照)。
また、かかる態様による本件商標の使用は、取引社会において通常用いられる手法であり、商標の同一性の範囲内である。
(2)-3-3 通常使用権者であるサンコー靴下株式会社は、本件審判の請求の登録前3年以内において、その取引先である株式会社坂富商店(住所 【栃木県佐野市<以下略>】)に、本件商標を付した商品「靴下」を販売している。
a.ここで被告は、審判乙第11号証及び審判乙第12号証として、かかる本件商標の使用の事実があったことについての株式会社坂富商店による証明書を提出する。
審判乙第13号証ないし審判乙第15号証は、本件商標を使用した靴下の販売取引があったことを示すものである。
審判乙第13号証は株式会社坂富商店からのFAXによる靴下の注文書、審判乙第14号証は受注した靴下の納品書(控)、審判乙第15号証はこの取引に関するサンコー靴下株式会社の得意先元帳である。
b.これにより、サンコー靴下株式会社が、平成10年11月11日に株式会社坂富商店からFAXにより「靴下(品番72920)、10足」及び「靴下(品番61303)、10足」の注文を受けて(審判乙第13号証)、平成10年11月13日にこれらの靴下を株式会社坂富商店に納品し(審判乙第14号証)、平成10年12月2日にその代金を手形により受け取ったこと(審判乙第15号証)が証明される。
c.そして、上記の販売取引において、靴下(品番72920)の一足ごとに取り付けられた口紙(台紙)には、本件商標の片仮名部分「横長円内に白抜きしたサンコー」が付されており、納品の際にこれらの靴下が収容されていた納品用の箱には本件商標のローマ字部分「SANKO」が付されていたことが証明される(審判乙第11号証の写真参照)とともに、靴下(品番61303)の口紙(台紙)には、本件商標のローマ字部分「Sanko」が付され、その納品用の箱には、本件商標の片仮名部分「横長円内に白抜きしたサンコー」が付されていたことが証明される(審判乙第12号証の写真参照)。
また、かかる態様による本件商標の使用は、取引社会において通常用いられる手法であり、商標の同一性の範囲内である。
(2)-4 以上により、通常使用権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において本件審判請求に係る指定商品「くつ下」について本件商標の使用をしていることが証明される。このため、本件商標は取り消されるべきではない。
(3) 審決の判断 (3)-1 被告の提出に係る審判乙第1号証ないし審判乙第15号証をみるに、審判乙第1号証は、商標権者とサンコー靴下株式会社とが平成10年6月8日から平成11年4月27日までを使用許諾の期間とする本件商標の使用許諾証明書であるところ、この書面によりサンコー靴下株式会社が本件商標の通常使用権者であることが認められる。
そして、審判乙第2号証は、商品「靴下」が紙製の包装箱に収納された写真及びその一足の商標部分を拡大した写真(2葉)を株式会社池田商店がサンコー靴下株式会社に注文し、納品書を受領し、その代金を支払ったことの証明書であって、この紙製の包装箱に品番として「73-6FR」と記載されており、靴下の口紙(台紙)の商標部分を拡大した写真に本件商標と社会通念上同一と認められる商標が表記されていることが認められる。
また、審判乙第3号証は平成10年10月28日付けの注文書(写し)、審判乙第4号証は平成10年10月31日付けの納品書(控・写し)及び審判乙第5号証はサンコー靴下株式会社が作成した株式会社池田商店の得意先元帳(写し)と認められるものであり、これらの書類には前記の日付のほか、品番「73-6FR」、
品名「紳士毛スパンシモフリソックス」、単価「¥900」等と記入されていることが認められる。
さらに、審判乙第6号証及び審判乙第7号証は室哲商店が、審判乙第11号証及び審判乙第12号証は株式会社坂富商店が、それぞれ商品「靴下」をサンコー靴下株式会社に注文し、審判乙第8号証ないし審判乙第10号証及び審判乙第13号証ないし審判乙第15号証がそれぞれの品番の商品に対応する取引書類と認められるところ、これらの書類にも前記・株式会社池田商店と同様の項目が記載されており、靴下の口紙(台紙)の商標部分を拡大した写真に本件商標と社会通念上同一と認められる商標が表記されていることが認められる。
しかして、審判乙第6号証ないし審判乙第15号証の発注日又は納品日はいずれも平成10年11月から12月の日付であることが認められる。
(3)-2 してみれば、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者により指定商品中の「くつ下」について使用されていたものと認めることができる。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべき限りでない。
なお、被告より申請のあった証人尋問については、提出の各書面、書証により前記のとおり認定、判断し得るところであるから、これを行わない。
原告主張の審決取消事由
本件商標の使用の事実を認めた審決の認定は、商標法56条1項、特許法151条で準用する民事訴訟法179条及び181条に違反してされたものであり、誤りである。
すなわち、民事訴訟法179条及び181条の趣旨によれば、当事者が自白した事実及び顕著な事実以外の事実は証拠によって証明されなければならないところ、
被告提出の審判甲号各証は、いずれも内容的に信頼できない疑わしいものであり、
審決には、証拠によって事実認定をしたものとはいえない違法がある。なお、本件商標につきサンコー靴下株式会社が黙示的通常使用権を有することは認める。
当裁判所の判断
甲第11ないし第25号証(審判乙第1ないし第15号証)、乙第1、第2号証、第3号証の1ないし3、第4号証、第6号証の1ないし3、第7号証の1ないし5、第8ないし第12号証、検乙第1ないし第5号証及び弁論の全趣旨によれば、審決の理由の要点中「(3) 審決の判断」(3)-1の審決認定事実を認めることができる。原告は、審決の認定には法律違反がある旨種々主張するが、そこに法律違反があるものとは認められない。
上記認定事実によれば、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者により指定商品中の「くつ下」について使用されていたものと認めることができ、本件審判請求を成り立たないものとした審決の判断に、原告主張の誤りはない。
結論
以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がないので、原告の請求は棄却されるべきである。
(平成13年1月25日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 橋本英史