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関連審決 審判1993-17678
関連ワード 指定商品 /  記述的商標(3条1項3号) /  品質誤認(4条1項16号) / 
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事件 平成 11年 (行ケ) 117号 審決取消請求事件
原告 ローランド株式会社代表者代表取締役 【A】
訴訟代理人弁護士 島田康男
訴訟復代理人弁護士 黒田彩霧
訴訟復代理人弁理士 【B】
被告 特許庁長官【C】
指定代理人 【D】
同 【E】
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1999/11/25
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成5年審判第17678号事件について平成11年2月18日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成4年3月24日、「WORKSTATION」の欧文字と「ワークステーション」の仮名文字とを2段に横書きしてなり、指定商品及び商品区分を第24類「楽器その他本類に属する商品」とする商標(以下「本願商標」という。)の登録出願(平成4年商標登録願第33198号)をしたが、平成5年7月14日(謄本送達日)拒絶査定を受けたので、平成5年9月2日、拒絶査定不服の審判を請求した。特許庁は、これを平成5年審判第17678号事件として審理した結果、平成11年2月18日、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決をし、
その謄本は平成11年3月29日原告に送達された。
2 審決の理由 審決の理由は、別紙審決書の理由及び更正決定の各写しのとおりである。要するに、株式会社リットーミュージック発行「キーボードマガジン」6月号の「ワークステーション・シンセサイザー大全」の特集(甲第2号証。発行は平成7年6月1日である。以下「甲第2号証刊行物」という。)、株式会社立東社発行「THE楽器VOL.2キーボード/多重録音編 '90→ '91」(甲第3号証。発行は1990年(平成2年)6月18日である。以下「甲第3号証刊行物」という。)及びヤマハ株式会社の商品カタログ「1997 YAMAHA DIGITAL MUSICAL INSTRUMENTS」商品カタログ(甲第4号証及び乙第3号証。1997年(平成9年)10月の作成である。以下「甲第4号証刊行物」という。)の記載によれば、「ワークステーション」及び「Workstation」の各文字は、楽器との関係からみれば、楽器の一種、すなわち、「シンセサイザーにシーケンサーとエフェクトが内蔵され、1台で音楽造りが行える環境を整えた機器(楽器)」の意味合いで理解、認識されていると認められるから、これらの文字からなる商標が楽器に使用された場合、取引者、需要者はこれを商品を識別すべき標識とは認識しないので、本願商標は、上記機能を備えたシンセサイザーに使用しても、商品の品質、機能を表示するにとどまるものであり、上記以外の楽器に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあり、商標法3条1項3号及び同法4条1項16号に該当する、というものである。
原告主張の審決取消事由の要点
審決中、甲第2号証ないし甲第4号証刊行物に、審決認定の各記載があるとした部分は認めるが、その余の認定判断の部分は争う。
審決は、「ワークステーション」及び「Workstation」の各文字が、
楽器との関係からみれば、「シンセサイザーにシーケンサーとエフェクトが内蔵され、1台で音楽造りが行える環境を整えた機器(楽器)」の意味合いで理解され、
認識されているものと、挙示の各証拠により認定し、この認定に基づき、本願商標が商標法3条1項3号及び同法4条1項16号に該当すると判断した。しかし、審決の上記認定は、証拠評価の誤りに基づく誤りであり、したがってこれを前提とする上記判断も誤りであるから、審決は、違法であり、取り消されるべきである。
1 甲第2号証刊行物中の審決の挙げる記載は、「ワークステーション」及び「Workstation」が楽器の一種として認識されているとする審決の根拠となるものではない。
(1) 甲第2号証刊行物には、審決の認定した記載の前提として、「“ワークステーション”という言葉は、実体があるようで、実はけっこう曖昧に使われている。
「ワークステーションとはこういうものを指す」という定義はない」という記載がある(32頁左欄1〜6行目)。
このように審決認定の記載自体が、「ワークステーション」や「Workstation」の意味内容について明確な定義はない、としたうえでのものであるから、上記記載からこれらの言葉の意味内容と審決認定のように一義的に定めることはできないはずである。
(2) 甲第2号証刊行物の36頁及び42頁の「ミュージシャンに聞く」との表題の記事には、それが株式会社コルグ及びエンソニック社の機器を推薦する欄であるにもかかわらず、「ワークステーション」との言葉は全く使用されていない。
(3) 甲第2号証刊行物には、株式会社コルグに関する記事として、「ハイ・クオリティの音源、シーケンサー、エフェクターを一体化した“ミュージック・ワークステーション”のコンセプトが受け入れられ、10万台を超えるビッグ・ヒット商品となった。国産初の本格的ワークステーションの誕生である。」(甲第2号証36頁左欄)というものがある。
他方、株式会社コルグが「ミュージックワークステーション」の語を用いるのは、楽器の種類としてではなく、商標としてであることは、後に述べるとおりである。
そうすると、甲第2号証刊行物の記事の筆者は、商標及び商標法に対する理解不足から、文章作成の際、「ワークステーション」の語を安易に使用し、結果的に誤用したものというべきであり、このような説明による記事は、審決認定の事実を認める根拠とはなり得ない。
2 甲第3号証刊行物の「ワークステーションの頂点」との文言を含む株式会社コルグの商品広告も、審決認定の根拠になるものではない。
(1) 平成3年9月3日、原告は、株式会社ヤマハとの間で、それぞれ、相手方(過半数の株式を有する子会社を含む。)が、電子楽器又はそれに関連する商品について商標「MUSIC WORKSTATION/ミュージックワークステーション」の使用をすることに対して、自己の有する商標権に基づく権利主張をしない、
との契約を締結した。
株式会社コルグは、当時株式会社ヤマハが過半数の株式を有する子会社であったから、株式会社コルグによる「MUSIC WORKSTATION/ミュージックワークステーション」の使用が、商標としての使用であることは明らかである。
(2) これを前提にした場合、甲第3号証刊行物における「ワークステーションの頂点」との文言は、ヤマハ株式会社の子会社であった株式会社コルグが、ヤマハ株式会社が商標として用いてきた「MUSIC WORKSTATION/ミュージックワークステーション」の一部を取り上げて表記しているにすぎないものであることが明らかである。このことは、「ワークステーションの頂点」の下に「音楽創造のための機能をすべて1台に、それも専門機以上の性能で集約させる。コルグが他社に先駆けて発表した「MUSIC WORKSTATION」。その中でもTシリーズは、88keyピアノ鍵盤(T1)をはじめとする鍵盤バリエーション、大量のデータストックやPCMデータのロードも可能にするディスクドライブ、そしてaiシンセンスシステムの音の幅を格段に広げる大容量波形ROMなどの搭載により、まさにHighest Positionと言える、音楽創造ステーションです。ミュージックワークステーション、Tシリーズ、妥協のないクリエイティブワークを望む全ての人に、コルグからのプレゼンテーションです。」と記載され、
宣伝対象の「Tシリーズ」なる楽器が、「ミュージックワークステーション」という商標で販売されている楽器の中で頂点を極める高性能のものである旨が示されていることによっても、裏付けられるところである。
3 甲第4号証刊行物の「Workstation」という語も、審決認定の根拠にはならない。
「Workstation」の下の写真横に記載されている製品型番号真上には、「MUSIC SYNTHESIZER」又は「MUSIC PRODUCTION SYNTHESIZER」と記載されているだけであり、同刊行物末尾の価格表には、「ワークステーション」の分類はなく、「WORKSTATION」と記載された頁中に掲載されている機器(「W7 Version 2」及び「W5 Version 2」。これらは、甲第2号証刊行物において「ワークステーション」と位置づけられている「W7」及び「W5」の後継機である。)がシンセサイザー/キーボード」の分類に入れられている。
このように、甲第4号証刊行物には、「ワークステーション」という音楽機器の分類はなく、そうである以上、これが「ワークステーション」の語が音楽機器の一種を意味するとする審決認定の根拠となることもあり得ない。
4 審決のいう「シンセサイザーにシーケンサーとエフェクトが内蔵され、1台で音楽造りが行える環境を整えた機器(楽器)」を指し示す一般的な呼称、用語は、
「オール・イン・ワン」なのであって、「ワークステーション」ではない。このことは、甲第3号証刊行物中の「楽器/音楽業界おもしろ用語辞典90〜91」と題する記事中に、「オール・イン・ワン」の用語の説明として、「最近は流行のキーボードの形態で、1つのボディの中にシンセサイザー、シーケンサー、ドラムマシン、
エフェクターといった複数の機材を内蔵しています。このタイプのメリットは、面倒なセッティングなしに演奏や曲創りを楽しめる点でしょう。」(206頁)と記載されていることからも明らかである。
5 審決の認定が誤りであることは、別の面からも明らかである。
すなわち、原告をはじめ、株式会社ヤマハ、株式会社コルグなどの音楽機器製造業者も、有名楽器店も、現在、楽器の分類として「ワークステーション」という語を用いず、審決のいう「シンセサイザーにシーケンサーとエフェクトが内蔵され、
1台で音楽造りが行える環境を整えた機器(楽器)」については、「シンセサイザー&キーボード」、「キーボード」、「シンセサイザー・デジタルピアノ関係」、
「シンセサイザー」、「キーボード・シンセサイザー」、「シンセサイザー・キーボード・エレクトリックピアノ」等を用いており、このことは本件審決時においても同様であったと推認される。このような状態の下で、取引者、需要者が、「ワークステーション」の語に審決認定の意味を与えることはあり得ない。
被告の反論の要点
審決の認定判断は正当であって、審決に原告主張の違法はない。
1 審決は、甲第2号証刊行物中の原告も認める記載から、「ワークステーション」の語は、楽器を取り扱う取引者、需要者の間においては、「シンセサイザーにシーケンサーとエフェクトが内蔵され、一台で音楽造りが行える環境を整えた機器(楽器)」を表すもの、あるいは「これに類する一台で音楽造りが行える環境を整えた機器(楽器)」を表すものと理解されていると認定したものであって、原告主張のように「ワークステーション」の語を一義的なものと認定したのではない。
甲第2号証刊行物の45頁の「最新機種徹底比較」の記事には、同記事の筆者とは異なる複数の者がコメンテーターとして明記されていること、同刊行物を出版した株式会社リットーミュージックが音楽関連事業を主な事業の一つとする企業であることからすると、原告主張のように、同刊行物が「ワークステーション」という語を誤用したまま出版されたと考えるのは、不自然というほかはない。
2 甲第3号証刊行物に記載されている株式会社コルグ社の広告に用いられている「ワークステーションの頂点」という語句は、広告において、大きく表された「ワークステーションの頂点」の文字が商品の写真とともに中央部に顕著に表示されており、このような広告の体裁からすれば、これに接する取引者、需要者は、「写真の商品がワークステーションの中で頂点に立つもの」であることを表したものと理解するのが自然である。
3 甲第4号証刊行物においては、原告が「W7」及び「W5」の後継機であるという「W7 Version 2」及び「W5 Version 2」が掲載されている頁をはじめ3頁にわたって、「Workstation」の文字が記載されており、その文字の大きさや体裁は、他の頁の「Sinthesizer」、「Sinthesizer/Sampler」、「Electronic Piano」などと同様である。
このことは、同刊行物の作成者であるヤマハ株式会社自身も、「Workstation」の語を甲第2号証刊行物と同義のものとして使用していることを物語るものであり、これに接した取引者、需要者も同様に認識するものというべきである。
4 審決の認定が正しいことは、前述の株式会社リットーミュージックが発行した「シンセサイザーの全知識」第4版(1998年5月1日発行)に、8章にわたって本文が組まれ、第8章が「ワークステーション」に当てられ、「音源、エフェクター、シーケンサー、ミキサー・・・。従来は別々の機材だったこれらの要素を1台に詰め込んでしまったのがワークステーションだ。最後に、DTM時代には欠かすことのできないワークステーションについてまとめておこう。」との記載に続き、ワークステーションについての説明がなされていることによっても裏付けられるところである。
当裁判所の判断
1 甲第2号証刊行物について(1) 甲第2号証によれば、甲第2号証刊行物には、「ワークステーションという楽器」という大見出しの記事の冒頭の部分に、「今では、シンセサイザーの代名詞といってもいいほど身近な言葉になった“ワークステーション”だが、キミはどれだけ、ワークステーションについて理解しているだろうか。ローランドの新製品、XP-50の登場を機会にここで“楽器”としてのワークステーションについてもう一度考えてみることにしよう。」(32頁上段1〜7行目)との記載があり、「ワークステーションっていったい何だろう」という小見出しの後には、「“ワークステーション”という言葉は、実体があるようで、実は結構曖昧に使われている。
「ワークステーションとはこういうものを指す」という定義はないのだが、一般的には「キーボード・タイプのシンセサイザーにシーケンサーとエフェクトが内蔵され、1台で音楽づくりが行える環境を整えた機器(楽器)」という意味で使われることが多いので」(同頁左欄3〜10行目)、「まずはじめは、ワークステーションとはどういう楽器/機器なのかについて、簡単に整理しておこう。ワークステーションに含まれるさまざまなブロックであるキーボード、音源、シーケンサー、エフェクターなどは、いずれも単独の機器としても存在しているし、MIDIを使えば簡単にシステム化できる。」(同欄15〜22行目)という記載があり、「ワークステーションが生まれた背景」という小見出しの後には、「現在では、ワークステーションもすっかり楽器の1つのジャンルとして定着しているが、ワークステーションが登場してきた背景には、実にいろいろな要素がある。」(同頁右欄3〜6行目)という記載があることが認められる。
甲第2号証刊行物の上記記載によれば、「ワークステーション」という語は、同刊行物の発行された平成7年6月ころ、既に、楽器との関係では、楽器の一種、すなわち、キーボード・タイプのシンセサイザーにシーケンサーとエフェクトが内蔵され、キーボード、音源を含め、それ1台で音楽づくりを行うことができる環境を整えた機器(楽器)、あるいはこれに類する機器(楽器)という意味で使われることの多いものとなっていたことが認められる。
(2) また、甲第2号証によれば、甲第2号証刊行物の34頁には、「5大メーカーの最新機種を概観」という小見出しのもとで、「ワークステーションは、各メーカーの様々なモデルがあるが、ここではメーカーごとの特徴と、その大まかな概要だけを簡単に整理しておくことにしよう。」(34頁右欄9〜12行目)という記載があり、これに続いたローランド(原告)、コルグ、ヤマハ、ヤンチャン及びエンソニックの製造業者5名が挙げられており、ローランド(原告)の欄には、「ローランドは、音源やシーケンサーなど、すでに定評のあるモデルを統合してワークステーション化してきており」(同欄14〜17行目)との記載、コルグの欄には「コルグはM1登場以来、Mシリーズ、Tシリーズ、01/Wシリーズと、一貫してワークステーションをメインモデルに位置づけており、」(同欄26〜29行目)との記載、ヤマハの欄には「ヤマハの最近のワークステーションは、“ミュージック・シンセサイザー”W5/W7という、シンプルな名前だが」(同欄38〜41行目)との記載、ヤンチャンの欄には「ヤンチャンのK-2000JV3は、ワークステーションのベーシックな部分をすべてカバーしながらも」(同欄50〜52行目)との記載、エンソニックの欄には「エンソニックは・・・サンプラーとそれを統合したサンプリング・ワークステーション(ASRシリーズ)には絶大な人気がある。」(35頁左欄1〜5頁)との記載があることが認められる。
上記記載において、「ワークステーション」という語は、ローランド(原告)、
コルグ、ヤマハ、ヤンチャン及びエンソニックの5製造業者の製造する音楽機器を総称する名称として使用されており、ある特定の業者の商品と結び付いて使用されてはいないことが明らかである。
(3) 原告は、甲第2号証刊行物に「“ワークステーション”という言葉は、実体があるようで、実はけっこう曖昧に使われている。「ワークステーションとはこういうものを指す」という定義はない」との記載があるのをとらえ、「ワークステーション」の意味内容を審決のように一義的に認定するのは誤りであると主張する。
しかし、審決が、甲第2号証刊行物の記載を、「ワークステーション」の語が、
楽器との関係で一般にどのような意味で認識されているかについての認定をするための資料にしただけであることは、審決の記載自体で明らかであり、「ワークステーション」の語が一義的な意味内容を有していないからといって、楽器との関係で、審決認定のように認識されないことになるわけのものではないから、原告の上記主張は、主張自体失当である。
原告は、甲第2号証刊行物の「ミュージシャンに聞く」との表題の欄には、それが株式会社コルグ及びエンソニック社の機器を推薦する欄であるにもかかわらず、
「ワークステーション」との言葉が全く使用されていないことを挙げて、審決の前記認定を論難するが、上記両社の機器を推薦する欄に「ワークステーション」の語が用いられていないからといって、同刊行物で述べられている意味で用いられないことになるものではないことは明らかであるから、失当である。
原告は、株式会社コルグが「ミュージックワークステーション」の語を商標として使用していたとして、これを根拠に、甲第2号証刊行物の記事における「ワークステーション」の使用は誤用であるとも主張する。
しかし、株式会社コルグが「ミュージックワークステーション」の語を商標として使用していたとしても、「ワークステーション」の語が同刊行物で述べられている意味で一般に用いられないことになるものではないことは明らかであるから、これを根拠に誤用をいう原告の主張も失当である。
2 甲第4号証刊行物について 甲第4号証及び乙第3号証によれば、甲第4号証刊行物の6頁から8頁にかけて、見出しと広告記事とを区別するように横線が引かれ、その上段にいずれも「Workstation」という欧文字が大きく記載されており、上記横線の下に、
具体的な音楽機器の広告文及び写真が掲載されていること、及び、これらの「Workstation」の文字の大きさや字体、文字と模様、広告文あるいは写真などの関係は、他の頁の「Sinthesizer」、「Sinthesizer/Sampler」、「Electronic Piano」などの場合と同様であることが認められ、これらの事実からすると、「Workstation」という語は、他の頁の「Sinthesizer」などと同じく、3頁にわたって掲載されている各音楽機器の種類を示すものとして使用されているとみるのが相当である。
甲第4号証刊行物の「Workstation」の下の写真横に記載されている製品型番号真上には「MUSIC SYNTHESIZER」、「MUSIC PRODUCTION SYNTHESIZER」と記載されているだけであること、末尾の価格表には「ワークステーション」の分類はなく、「WORKSTATION」と記載された頁中に記載されている機器が「シンセサイザー/キーボード」の分類中に入れられていることを根拠として、同刊行物において「Workstation」という語が音楽機器の一つの種類を意味するものとして使用されているとはいえないとする原告の主張は、採用することができない。原告主張の事実は、「WORKSTATION」の語の当てられる機器に別の語が当てられることもあることは意味し得ても、「WORKSTATION」の語が上記のように使用されていることと何ら矛盾するものではないからである。
3 以上によれば、審決が挙げた甲第3号証刊行物の記載の有する意味のいかんにかかわらず、甲第2号証刊行物と甲第4号証刊行物のみから、審決認定の事実は、
認め得るものというべきである。
4 原告は、甲第3号証刊行物の記載を根拠に、審決のいう「シンセサイザーにシーケンサーとエフェクトが内蔵され、1台で音楽造りが行える環境を整えた機器(楽器)」を指し示す一般的な呼称、用語は、「オール・イン・ワン」なのであって、「ワークステーション」ではないと主張する。
しかしながら、仮に甲第3号証の発行された平成2年6月ころ、「オール・イン・ワン」という語句が原告主張のように用いられていたとしても、これをもって、その後の時点において、「ワークステーション」という語が上記の機器(楽器)を意味するものとして用いられることがあったことを否定する根拠とはなし得ないことは自明というべきであるから、採用できない。
5 音楽機器製造業者や楽器店に楽器の分類として「ワークステーション」の語をもともと使用していなかった者、あるいは使用しなくなった者があるからといって、直ちに、この語に審決認定の意味が与えられないことにも、あるいは、この語からいったん与えられていた審決認定の意味が失われることにもなるものではないから、音楽機器製造業者や楽器店が現在楽器の分類として「ワークステーション」の語を使用していないとして、これを根拠に審決の認定の誤りをいう原告主張も採用できない。
以上によれば、原告主張の審決取消事由は理由がなく、その他、審決の認定
にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。よって、原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、
主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 山田知司
裁判官 宍戸充