運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連ワード 識別力 /  包装 /  指定商品 /  普通名称(3条1項1号) /  顧客吸引力(グッドウィル) /  結合商標 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  同一の商品 /  著名人 /  利益額 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙1PDFを見る pdf
事件 昭和 54年 (ワ) 11817号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1982/10/22
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告【A】及び被告株式会社日本糖尿食品協会は、原告に対し、各自金四四三万九二六〇円及びこれに対する昭和五三年一〇月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告有限会社健康守る会代理部は、原告に対し、金五九万七九一四円及びこれに対する昭和五四年六月五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告のその余の請求はいずれも棄却する。
四 訴訟費用はこれを四分し、その三を被告ら、その余を原告の負担とする。
五 この判決は、原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨1 被告【A】及び被告株式会社日本糖尿食品協会は、原告に対し、各自金二五〇〇万円及びこれに対する昭和五三年一〇月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 被告有限会社健康守る会代理部は、原告に対し、金六一九万一〇三四円及びこれに対する昭和五四年六月五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
4 仮執行宣言。
二 請求の趣旨に対する答弁1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
当事者の主張
一 請求の原因1 原告は、昭和四六年一月二七日、訴外【B】から、その出願に係る別紙商標目録記載の商標についての商標登録を受ける権利を譲り受けて出願人の名義変更をし、その登録とともに次の商標権(以下、「本件商標権」といい、その登録商標を「本件登録商標」という。)を取得した。
出願日 昭和四五年一〇月二〇日公告日 昭和四七年一〇月二〇日登録日 昭和四九年六月一日登録番号 第一〇六八一〇一号登録商標 別紙商標目録記載のとおり指定商品 第二九類 茶、コーヒー、ココア、清涼飲料、果実飲料、氷。
2 被告【A】(以下「被告【A】」という。)及び被告株式会社日本糖尿食品協会(以下「被告協会」という。)は、共同して、被告協会が製造発売元、被告【A】が「健康守る会代理部」の名称を用いて総発売元となつて、昭和四九年六月一日から昭和五三年九月三〇日までの間、商品名を「制糖茶」という中国茶(バンザクロ又はガバという植物の果実を顆粒、粉末等にしたもの)(以下「被告商品」という。)を製造し、これについて別紙標章目録(一)ないし(五)記載の標章(以下、順に「被告標章(一)」、「被告標章(二)」、「被告標章(三)」、
「被告標章(四)」、「被告標章(五)」といい、これらを総称するときは、単に「被告標章」という。)を使用した。すなわち、例えば、被告商品の包装外箱の左側面右下に被告標章(一)及び(二)を、その裏面上部に被告標章(三)を、その正面上部に被告標章(四)をそれぞれ附し、右包装外箱の内部に被告商品と共に入れ又は独自に頒布される広告用チラシの表面左側に被告標章(五)を附した上、被告商品を販売することにより、被告標章を使用した。また、被告有限会社健康守る会代理部(以下「被告代理部」という。)は、昭和五三年一〇月五日から昭和五四年六月四日まで、右同様にして被告商品を製造、販売し、被告商品について被告標章を使用した。
3 被告商品は、本件登録商標に係る指定商品のうち「茶」に属し、又はこれに類似するものである。
4 被告標章(一)ないし(五)は、次に述べるとおり、いずれも本件登録商標に、その要部において類似している。
(一) 本件登録商標は、特殊の字体により縦書きした「制糖」の文字とそのほぼ真下に小用している子供及びその左横下に這つている蟻を図案化した図形とを配した文字と図形の結合商標であり、その主要部は、「制糖」の特殊文字と右図形とにある。
(二) 被告標章(一)及び(二)は、活字による「日糖協」の文字と特殊の字体による「制糖茶」の文字と小用している子供及びその左横下に這つている蟻を図案化した図形とよりなつている。そのうち、「日糖協」の文字の部分は付記部分にすぎないから、本件登録商標との対比上除外してよい。そして、「制糖茶」の文字の部分中、「茶」は商品の普通名称を表示するものであるから、その要部は「制糖」の部分にあり、右要部は、外観称呼及び観念のいずれにおいても、本件登録商標中の「制糖」の文字部分と同一又は類似している。また、被告標章(一)及び(二)の前記図形部分は、本件登録商標の図形部分と同一である。したがつて、被告標章(一)及び(二)における文字と図形の結合関係は、全体として本件登録商標と外観及び称呼において類似している。
(三) 被告標章(三)及び(五)は、特殊の字体による「制糖茶」の文字よりなる。そのうち「茶」は商品の普通名称を表示するものであるから、その要部は「制糖」の部分にあり、右要部は、外観称呼及び観念のいずれにおいても、本件登録商標中の「制糖」の文字部分と同一又は類似している。
(四) 被告標章(四)は、「制糖茶」の英字名である「SEITO-CHA」の文字よりなる。そのうち「CHA」は商品の普通名称を表示するものであるから、
その要部は「SEITO」の部分にあり、右要部は、称呼において、本件登録商標中の「制糖」の文字部分と同一である。
5 以上のとおり、被告らは、本件登録商標に係る指定商品と同一の又は類似する商品について本件登録商標に類似する被告標章を使用して、原告の本件商標権を侵害したので、これにより原告の受けた損害を賠償すべき義務がある。
6(一) 原告は、昭和四九年三月ころから、商品名を「制糖茶」という被告商品とほぼ同一の商品に本件登録商標を使用している。
(二) 被告【A】及び被告協会が共同して前記期間中に販売した被告商品の売上高は、昭和五一年四月一日から昭和五二年三月三一日までの売上高が別表(一)の売上高欄記載のとおりであるから、これに基づいて推計すると別表(二)の売上高欄記載のとおりであり、利益率は右一年間の利益率と同率の三七・八パーセントと推定されるから、右被告らが得た利益の額は別表(二)の利益欄記載のとおり合計三八一二万二四二二円である。また、被告代理部が前記期間中に販売した被告商品の売上高は、被告【A】及び被告協会の昭和五三年四月一日から同年九月三〇日までの売上高に基づいて推計した額の二分の一を下ることはないから、合計一二四二万六〇一七円であり、利益率は三七・八パーセントと推定されるから、被告代理部が得た利益の額は合計四六九万七〇三四円である。
(三) また、原告は、原告訴訟代理人両名との間で、本件訴訟の弁護士報酬として、被告【A】及び被告協会に対する請求について三一九万円、被告代理部に対する請求について一四九万四〇〇〇円を支払う旨の契約をした。
(四) したがつて、原告は、被告【A】及び被告協会に対しては前記利益額同額の損害と右弁護士費用の合計四一三一万二四二二円の、被告代理部に対しては同じく合計六一九万一〇三四円の損害賠償請求権を有する。
7 よつて、原告は、被告【A】及び被告協会に対し各自前記損害金の内金二五〇〇万円とこれに対する侵害行為の後である昭和五三年一〇月一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、被告代理部に対し前記損害金六一九万一〇三四円とこれに対する侵害行為の後である昭和五四年六月五日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求の原因に対する認否1 請求の原因1及び2は認める。ただし、2のうち被告商品が「茶」であることは否認する。
2 同3は否認する。被告商品は健康食品又は自然食品である。
3 同4は争う。
被告商品は茶ではないから、被告標章(一)及び(二)のうち「制糖茶」の文字からなる部分並びに被告標章(三)及び(五)は、「制糖」と商品の普通名称としての「茶」とに分離し得るものではなく、「制糖作用を備え、茶と同じ用法をもつて使用することのできる健康食品」の意味を有する不可分一体の標章である。したがつて、右の「制糖茶」の文字は、本件登録商標の一部をなす「制糖」の文字とは判然と区別し得る全く別個の標章である。
4 同5は否認する。
5 同6の(二)ないし(四)は否認する。
証拠(省略)
理 由一 請求の原因1及び2については、被告製品が茶であることを除き当事者間に争いがない。
二1 前記争いのない事実によれば、被告商品はバンザクロ又はガバという植物の果実を顆粒、粉末等にしたもので、商品名を「制糖茶」というものであるところ、
成立に争いのない甲第四号証の二、第五号証の一及び第六号証、証人【C】の証言並びに被告本人尋問の結果によれば、被告商品には、煎じて飲むためのもの、湯又は水に溶かして飲むためのもののほか錠剤やオブラートで飲むためのものもあるが、その商品名に「茶」とあるように、「お茶」、「漢方茶」、「飲料水」等として宣伝されていたことが認められるから、被告商品は全体として、本件登録商標に係る指定商品のうち「茶」に少くとも類似する商品であると認めるのが相当である。なお、被告は被告商品は健康食品又は自然食品であると主張するが、「健康食品」又は「自然食品」という商品区分は、商標法施行令第1条及び別表において定められている商品区分とは全く別個の方法による区分であるから、被告商品が「茶」に類似するものであることを否定する理由にはなり得ない。
2 次に、前記争いのない事実によれば、本件登録商標は別紙商標目録記載のとおりのものであり、特徴のある字体により縦書きした「制糖」の文字とその下に「小用している子供及びその左横に這つている蟻を図案化した図形」(以下「本件商標図形」という。)を配した文字と図形との結合した商標であること、被告標章は別紙標章目録記載のとおりのものであつて、被告標章(一)は活字体により小さく横書きした「日糖協の」文字とその右側にそれより大きく特徴のある字体により横書きした「制糖茶」の文字(そのうち「制糖」の二文字の字体は本件登録商標における「制糖」の二文字の字体と同一)とこれらの文字の下にこれらの文字に比して大きい本件商標図形と同一の図形とを配した文字と図形との結合した標章であること、被告標章(二)は被告標章(一)と同一の文字と図形とをほぼ同様に結合したものの周囲を正方形の枠で囲んだものであること、被告標章(三)は被告標章(一)及び(二)における「制糖茶」の三文字と同一の字体により横書きした「制糖茶」の文字より成る標章であること、被告標章(四)は特徴のある字体により横書きした「SEITO-CHA」の文字より成る標章であること、被告標章(五)は被告標章(三)と同一の字体により縦書きした「制糖茶」の文字の「糖」と「茶」の間の右端に小さく(R)を配した標章であることが、それぞれ認められる。
本件登録商標は、右のとおり、「制糖」の文字と本件商標図形との結合した商標であるが、これらを上下に単純に並ベ配したものであつて、図形中に文字が組み入れられたものに比べれば、その結合の度合は強くなく、各部分の大きさもほぼ同程度であり、右の文字が本件商標図形から生ずる称呼をそのまま文字化したものでないことも明らかである上、「制糖」の文字の部分はその用語自体においても字体においても独創性の高いものであり、また、本件商標図形も独創性の高い図形であると認められる。これらの点を勘案すると、本件登録商標においては、全体としてのほか、右の文字の部分と本件商標図形の部分とがいずれも同程度に、かつ、各別に、強く需要者の注意を引く結果、自他商品の識別標識となる要部であると認めるのが相当である。
被告標章(一)及び(二)は、前記のとおり、本件商標図形と同一の図形の上に小さく文字を配し、又は更にそれを正方形の枠で囲んだものであつて、その要部は本件商標図形と同一の図形にあると認められるから、これらの標章は、本件商標図形と同一の図形を要部とするものであり、本件商標図形がそれ自体強く需要者の注意を引くものであることを考慮すれば、これらの標章は全体として本件登録商標と類似していると認められる。また、被告標章(三)及び(五)のうち「茶」の部分は被告商品の種類を示すものであり、被告標章(五)のうち(R)は登録商標である旨の表示であるから、「制糖」の二文字がこれらの標章において主として商品の識別力を有する要部であると認められ、これらの各文字は前記のとおり本件登録商標における「制糖」の文字と同一であるから、これらの標章と本件登録商標とは、
「制糖」の文字という要部において同一であつて(ただし、被告標章(三)の場合は、横書きである点のみ異なる。)、右の文字が前記のとおりそれ自体強く需要者の注意を引くものであることを考慮すれば、これらの標章も全体として本件登録商標と類似していると認められる。被告標章(四)は、独立して使用されるときは、
その観念は必ずしも明らかではないが、前記争いのない事実のとおり他の被告標章と共に使用されるときは、「制糖茶」をローマ字で表記したものであると認識することができるから、被告標章(三)及び(五)と同様、「SEITO」の部分が要部であり、その部分において本件登録商標の要部である「制糖」の文字の部分と称呼及び観念において同一であると認められ、少くとも他の被告標章と共に使用される以上、全体として本件登録商標と類似していると認めるのが相当である。
3 以上の事実によれば、被告らの請求の原因2記載の行為は、本件商標権の指定商品に少くとも類似する商品について本件登録商標に類似する標章を使用したものであつて、本件商標権を侵害するものであつたとみなされる。そして、被告らには、その侵害の行為について過失があつたものと推定され、右推定を覆すに足りる主張、立証はないから、被告らは右侵害行為により原告が受けた損害の賠償をする責任を有する。
三1 原告が昭和四九年三月ころから商品名を「制糖茶」という被告商品とほぼ同一の商品に本件登録商標を使用していることは、被告がこれを明らかに争わないので、自白したものとみなされる。
2 前顕甲第四号証の二、第五号証の一及び第六号証、成立について争いのない乙第一号証の九、第二号証の一〇・一一、第三号証の九・一〇、第四号証の一〇・一一、第五号証の九・一〇、第六号証の一・二及び第七号証の一ないし一二並びに被告本人尋問の結果によれば、次の各事実が認められる。
(一) 昭和五一年ないし昭和五二年ころの被告商品には、少くとも別表(三)の種類欄記載のとおりの種類があつた。
(二) 昭和五二年九月ころの被告商品の定価は別表(三)の定価欄記載のとおりであつた(煎じ用二五〇gの定価は、他の被告商品の定価から少くとも三〇〇〇円であつたと推認し得る。)。
(三) 被告商品は、大半が被告【A】の主宰する健康守る会の会員に頒布されたもので(被告【A】が健康守る会代理部の名称を用いて販売した被告商品を含む全販売商品中の会員頒布商品の占める割合は、売上高において約九二ないし九八パーセントであつた。)、会員には、定価の一五ないし二〇パーセント引きで頒布されたから、昭和五二年九月ころの被告商品の実際の販売価格は、少くとも別表(三)の販売価格欄記載のとおりであつた。
(四) 被告商品の昭和五一年四月一日から昭和五二年三月三一日までの一年間の販売個数は、別表(三)の個数欄記載のとおりであつた。
(五) 右期間中の被告【A】が健康守る会代理部の名称を用いて販売した被告商品を含む商品の総売上高は四八六八万三五六五円であつた。
(六) 昭和五一、二年ころ、被告【A】が健康守る会代理部の名称を用いて販売した被告商品を含む商品の総売上高は、「モトゲエキス」という毛生薬が週刊誌等で紹介され一時的によく売れたため、非常な伸びを示したが、被告商品の販売個数はそれほどの伸びを示さなかつた。
(七) 被告商品の販売による純利益率は、定価を基準にすれば約三〇パーセント、実際の販売価格を基準にすれば約二五パーセントであつた。
(八) 被告商品の販売個数は、昭和四九年六月から昭和五三年九月まで、月平均三〇〇個ないし六〇〇個ぐらい、最高で月一二〇〇個ぐらいであつた。
(九) 被告【A】が健康守る会代理部の名称を用いて昭和四九年六月一日から昭和五三年九月三〇日までの間に販売した被告商品を含む商品の総売上高は、別表(四)の総売上高欄記載のとおりであつた(昭和四九年六月一日から昭和五〇年三月三一日までは、昭和四九年四月一日から昭和五〇年三月三一日までの一二分の一〇として推計)。
3 以上の事実によれば、昭和五一年四月一日から昭和五二年三月三一日までの一年間の被告商品の売上高は、少くとも別表(三)の売上高欄記載のとおり二二一七万八二四〇円であつて、右の一年間の被告【A】が健康守る会代理部の名称を用いて販売した商品の総売上高に占める被告商品の売上高の割合は約四五・六パーセントであり、前記1(六)の事実から他の年度も少くともこれ以上の割合であつたものと推認し得るから、昭和四九年六月一日から昭和五三年九月三〇日までの間の被告商品の売上高は、少くとも別表(四)の売上高欄記載のとおり八〇七八万五二〇〇円であり、その販売による利益は、少くともその二五パーセントに相当する二〇一九万六三〇〇円であつたものと認めるのが相当である。甲第一一号証及び証人【C】の証言中には、以上の認定に反し、また、右の額を超える利益があつた旨の部分が存するが、以上の認定を覆し、また、右の額を超える利益を証するに足りるものではなく、他にこれらの認定を覆し、また、右の額を超える利益を認めるに足りる証拠はない。
4 成立に争いのない甲第五号証の二、前顕甲第六号証、証人【C】の証言及び被告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない(一部既に認定した事実を含む。)。
(一) 本件登録商標は、昭和四五年ころ、原告と被告【A】とが被告協会を設立して健康食品の製造、販売をすることを企図していたときに、被告【A】の依頼により訴外人が創作したものである。
(二) 原告が前記1の「制糖茶」の製造、販売を開始したのは昭和四九年三月ころからであるが、それが本格化したのは昭和五一年からであり、それ以前は、原告は主として「蕃麗茶」という商品名で同種の商品を製造、販売していた。
(三) したがつて、本件登録商標は、被告らが前記侵害行為を開始した昭和四九年六月以前において需要者間に広く知られていたものではない。
(四) 被告商品の販売は、大半が健康守る会の会員に対するものであり、健康守る会の会員とは、被告【A】の発行に係る「健康タイムズ」という月刊紙の定期購読者であつて、主として同紙上で被告商品の広告がされた。
(五) 被告商品は、中国特産の漢方植物を原料とする健康食品であるとして宣伝されていた。
(六) 被告商品の広告用パンフレツトには、著名人名による推薦文等が掲げられている。
(七) 「週刊現代」昭和五二年九月八日号の「糖尿病から高血圧までブームの健康茶10を総点検する」と題する記事中で、被告商品が紹介された。
(八) 被告標章中の「制糖茶」又は「SEITO-CHA」の文字及び本件商標図形は、糖尿病等の人のための健康飲料として宣伝された被告商品に使用するときは、それ自体が相当の顧客吸引力を有する。
右認定事実を総合考慮すると、被告【A】及び被告協会が共同して被告商品を製造、販売して得た利益中二〇パーセントが被告商品に被告標章を使用したことと相当因果関係のある利益であると認めるのが相当である。
5 以上1ないし4の事実によれば、原告は、右被告両名が被告標章を使用して被告商品を販売したことにより、被告らの得た前記3記載の利益金二〇一九万六三〇〇円の二〇パーセントに当たる四〇三万九二六〇円相当の損害を受けたものと推定される。
四 被告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、被告代理部による昭和五三年一〇月五日から昭和五四年六月四日までの八か月間の被告商品の月平均売上高は、
被告【A】及び被告協会による昭和五三年四月一日から同年九月三〇日までの六か月間の被告商品の月平均売上高の二分の一を下らないこと、被告代理部による右期間中の被告商品の販売の実態は、被告【A】及び被告協会による右期間中の販売の実態と変わるところがないこと、したがつて、被告商品の販売による利益率、被告標章を使用したことと相当因果関係のある利益の割合については、被告【A】及び被告協会の被告商品の販売に係る場合と同様であることが認められ、これらの認定を覆すに足りる証拠はない。
右事実によれば、被告代理部による前記期間中の被告商品の売上高は少くとも九九五万八二八五円であり、これにより被告代理部の得た利益は少くともその二五パーセントに相当する二四八万九五七一円であり、被告標章を使用したことと相当因果関係のある利益は、右利益額の二〇パーセントに当たる四九万七九一四円であると認められる。
右事実と前記三1の事実によると、原告は、被告代理部が被告標章を使用して被告商品を販売したことにより、四九万七九一四円相当の損害を受けたものと推定される。
五 原告が原告訴訟代理人両名に対し本件訴訟の提起、追行を委任したことは、本件記録上明らかであり、弁論の全趣旨によれば、原告は、その報酬として、被告【A】及び被告協会に対する請求について三一九万円、被告代理部に対する請求について一四九万四〇〇〇円を支払う旨の契約をしたことが認められるところ、事案の性質、審理の経過、認容額等を考慮すると、右弁護士費用中、被告【A】及び被告協会に対する関係では、四〇万円、被告代理部に対する関係では一〇万円が本件商標権侵害行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
六 以上のとおりであるから、原告に対し、被告【A】及び被告協会は不真正連帯の関係で、前記三5及び五記載の損害の合計四四三万九二六〇円の、被告代理部は、前記四及び五記載の損害の合計五九万七九一四円の各賠償をなすべき義務を負う。
七 よつて、原告の本訴請求は、被告【A】及び被告協会に対しては各自前記損害金四四三万九二六〇円及びこれに対する侵害行為の後である昭和五三年一〇月一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の、被告代理部に対しては前記損害金五九万七九一四円及びこれに対する侵害行為の後である昭和五四年六月五日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第89条第92条本文、第93条1項本文を、仮執行の宣言につき同法第196条1項を各適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 牧野利秋
裁判官 川島貴志郎
裁判官 大橋寛明