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関連ワード 指定商品 /  不正競争の目的 /  類似性(類否判断) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  外国 /  非類似 / 
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事件 昭和 48年 (行ケ) 54号
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裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1974/09/18
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が、昭和四十七年十二月七日、同庁昭和四一年審判第九、二八一号事件及び同庁同年審判第九、二八二号事件(併合)についてした審決は、取り消す。
訴訟費用は、被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、被告訴訟代理人は、「原告の請求は、棄却する。訴訟費用は、原告の負担とする。」との判決を求めた。
請求の原因
原告は、本訴請求の原因として、次のとおり述べた。
一 特許庁における手続の経緯 原告は、昭和四十二年一月四日、被告を被請求人として、被告が商標権者である別紙記載のとおりの登録第六三四、一七三号商標及び登録第六二六、一二〇号商標(以下「本件登録商標」という。)について、登録無効の審判を請求し、昭和四一年審判第九、二八一号事件及び同年審判第九、二八二号事件(併合)として審理されたが、昭和四十七年十二月七日、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決があり、その謄本は、昭和四十八年四月十九日、原告に送達された。
二 本件審決理由の要点 本件登録商標中、登録六三四、一七三号商標は、「MERRYWOOD」の文字を一連に横書してなり、商標法施行令第1条別表第十三類手動利器を指定商品とし、昭和三十七年十月二十三日商標登録出願、昭和三十九年一月十六日登録がされたもの及び登録第六二六、一二〇号商標は、「MERRYWOOD」の文字を一連に横書してなり、商標法施行令第1条別表第十九類フオーク、スプーンを指定商品とし、昭和三十七年十月二十三日商標登録出願、昭和三十八年十月八日登録がされたものであり、また、請求人(原告)が引用する(一)登録第四九五、五六四号商標は、「WOOD」の文字を横書してり、旧商標法(大正十年法律第九十九号をいう。以下同じ。)第5条、同法施行規則(大正十年農商務省令第三十六号をいう。
以下同じ。)第十5条第八類利器及び尖刃器を指定商品とし、昭和三十一年一月二十八日商標登録出願、昭和三十二年二月二日登録がされたもの、(二)登録五九八、三九四号商標は、「WOOD」の文字を横書してなり、商標法施行令第1条別表第十三類手動利器及び金具(他の類に属するものを除く。)を指定商品とし、前記(一)の登録商標と連合の商標として昭和三十五年七月十五日商標登録出願、昭和三十七年十月二月登録がされたもの、(三)登録第四七五、九九七号商標は、
「LUCKY WOOD」及び「ラツキーウツド」の文字を上下二段に横書してなり、旧商標法第5条、同法施行規則第十5条第八類利器及び尖刃器を指定商品とし、登録第四五六、〇九四号商標と連合の商標として昭和三十年二月二十八日商標登録出願、昭和三十一年一月二十八日登録がされたもの、(四)登録第四九七、九八七号商標は、(LUCKY WOOD」の文字を横書してなり、旧商標法第5条、同法施行規則第十5条第十九類農工器具を指定商品とし、昭和三十一年三月十五日商標登録出願、昭和三十二年三月十一日登録がされたもの、(五)登録第五六二、四九九号商標は、左方部には円輪郭内に帯状円輪部を残して中央部を円形黒色地とし、その中に森林記号三個を白抜に表し、その外部円輪郭と中央円形黒色部との間の帯状円輪部に「LUCKY WOOD BRAND」の文字(上半部弧状に)及び「TABLE-WARES」の文字(下半部弧状に)を円輪状に収めた図形を配し、それに接してその右方には棒線を介して「LUCKY」及び「WOOD」の文字を上下二段に横書してなり、旧商標法第5条、同法施行規則第十5条第八類利器及び尖刃器を指定商品とし、登録第四四一、六四六号商標ほか二件の登録商標と連合の商標として、昭和三十四年十月十三日商標登録出願、昭和三十五年十二月十五日登録がされたもの、(六)登録第六二四、二九九号商標は、前記(五)の商標と同様の構成をもつてなり、商標法施行令第1条別表第十三類手動利器、手動工具及び金具(他の類に属するものを除く。)を指定商品とし、登録第四四五、
五三三号商標ほか六件の登録商標と連合の商標として昭和三十五年七月五日商標登録出願、昭和三十八年九月十日登録がされたもの、(七)登録第六二四、三〇〇号商標は、円輪郭の内側に帯状円輪部を残して中央部を円形黒色地とし、それに三個の森林記号を白抜に表し、その外側線輪郭との間の帯状円輪郭には上半部に「LUCKY WOOD BRAND」の文字を、下半部には「TABLE-WARES」の文字を円輪状に収めてなり、商標法施行令第1条別表第十三類手動利器、手動工具及び金具(他の類に属するものを除く。)を指定商品とし、登録第四四五、
五三三号商標ほか七件の登録商標と連合の商標として昭和三十五年七月十五日商標登録出願、昭和三十八年九月十日登録がされたもの、(八)登録第六九七、三八二号商標は、矩形輪郭内上部に、更に上下二段部に分けた矩形枠を設け、その上段枠内にはデザートナイフの図形を収め、その右方上部に「18-8STAINLESS」の文字を附記し、その下段枠内には右方に棒線を介して「DESSERT」及び「KNIFE」の文字を上下二段に横書し、これに接して右方に小形黒地の円内に「6」の文字を白抜に表し、これらの下部左方外側輪郭内には、前記(五)の商標と同様の記号的図形及び文字を配してなり、商標法施行令第1条別表第十三類ステンレス製洋食ナイフを指定商品とし、登録第四五六、〇九四号商標ほか六件の登録商標と連合の商標として昭和三十八年十月九日商標登録出願、昭和四十一年二月二日登録がされたもの、(九)登録第六九七、三八三号商標は、前記(八)の商標中洋食ナイフの図形の右方上部に記された文字に代わつて「18CR-STAINLESS」と記されているほか、他の文字図形において全く同様の構成をもつてなり、商標法施行令第1条別表第十三類ステンレス製洋食ナイフを指定商品とし、登録第四五六、〇九四号商標ほか六件の登録商標と連合の商標として昭和三十八年十月九日商標登録出願、昭和四十一年二月二日登録がされたもの、(十)登録第四四〇、七九九号商標は、「ウツド」及び「WOOD」の文字を上下二段に横書してなり、旧商標法第5条、同法施行規則第十5条第七類他類に属しない金属製品を指定商品とし、昭和二十八年五月十一日商標登録出願、昭和二十九年二月二十四日登録がされたもの、(十一)登録第六一〇、八七四号商標は、「WOOD」の文字を横書してなり、商標法施行令第1条別表第十九類なべ類、湯沸かし類、国旗、うちわ、せんす、ちようちん、あんどん、石油ランプ、灯芯、ほや、ろうそく立て、湯たんぽ、あんか、かいろ、かいろ灰、火ばし、五徳、十能、火消しつぼ、はえ取り紙、はえたたき、ねずみ取り器、植木ばち、金魚ばち、洋服ブラシ、紙製手ふき及び脱臭器を指定商品とし、前記(十)の登録商標と連合の商標として昭和三十五年七月五日商標登録出願、昭和三十八年五月七日登録がされたもの、(十二)登録第四四五、五三三号商標は、筆記体風の「Lucky&Wood」及び「ラツキーエンドウツド」の文字を上下二段に横書してなり、旧商標法第5条、同法施行規則第十5条第七類他類に属しない金属製品を指定商品として昭和二十八年六月三十日商標登録出願、昭和二十九年五月二十八日登録がされたもの、(十三)登録第四七五、九九六号商標は、「LUCKY WOOD」及び「ラツキーウツド」の文字を上下二段に横書してなり、旧商標法第5条、同法施行規則第十5条第七類他類に属しない金属製品を指定商品とし、前記(十二)の登録商標と連合の商標として昭和三十年二月二十八日商標登録出願、昭和三十一年一月二十八日登録がされたもの、
(十四)登録第五六二、四九八号商標は、前記(五)の商標と同様の構成をもつてなり、旧商標法第5条、同法施行規則第十5条第七類他類に属しない金属製品を指定商品とし、登録第四四二、四一五号商標ほか二件の登録商標と連合の商標として昭和三十四年十月十三日商標登録出願、昭和三十五年十二月十五日登録がされたもの、(十五)登録第六一六、〇八六号商標は、前記(七)の商標と同一の構成をもつてなり、商標法施行令第1条別表第十九類なべ類、湯沸かし類、加熱器、流し台、調理台、食器類、パン入れ、つぼ、たる、菓子かん、茶かん、調理用具、その他の台所用品、清掃または洗たく用具、標札、ネームプレート、湯たんぽ、あんか、かいろ灰、火ばし、五徳、十能、火消しつぼ、植木ばち、金魚ばち、はしご、
きやたつ、郵便受け、買物かご、帽子掛けかぎ、貯金箱、小鳥かご、便器、裁縫用具及び浴そう類を指定商品とし、登録第四五六、一九八号商標ほか六件の登録商標と連合の商標として昭和三十五年七月九日商標登録出願、昭和三十八年六月五日登録がされたもの、(十六)登録第七二四、九九五号商標は、前記(八)の商標中、
洋食用ナイフの図形に代わつて洋食用スプーンの図形を収め、「KNIFE」の文字に代わつて「SPOON」の文字を記したほか、それと同様の構成をもつてなり、商標法施行令第1条別表第十九類ステンレス製デザートスプーンを指定商品とし、登録第四四二、四一五号商標ほか七件の登録商標と連合の商標として昭和三十八年十月九日商標登録出願、昭和四十一年十一月十六日登録がされたもの、(十七)登録第七二四、九九六号商標は、前記(十六)の商標中、洋食用スプーンの図形に代わつて洋食用フオークの図形を収め、「SPOON」の文字に代わつて「FORK」の文字を記したほか、それと同様の構成をもつてなり、商標法施行令第1条別表第十九類ステンレス製デザートフオークを指定商品とし、登録第四四二、四一五号商標ほか七件の登録商標と連合の商標として昭和三十八年十月九日商標登録出願、昭和四十一年十一月十六日登録がされたもの、(十八)登録第七二四、九九七号商標は、前記(十七)の商標中、洋食用フオークに代わつてフルーツ用フオークの図形を収め、「DESSERT」の文字に代わつて「FRUIT」の文字を記したほか、それと同様の構成をもつてなり、商標法施行令第1条別表第十九類ステンレス製フルーツフオークを指定商品とし、登録第四四二、四一五号商標ほか七件の登録商標と連合の商標として昭和三十八年十月九日商標登録出願、昭和四十一年十一月十六日登録がされたものである。
請求人(原告)は、登録無効の審決を求める理由として、「本件登録商標の「MERRYWOOD」における「MERRY」も「WOOD」も、前者が、楽しいという意味の形容詞であり、後者が、木、木材、森及び林という観念の名詞であつて、ともに人口にかいしやされている言葉であるから、本件登録商標は、「MERRY」と「WOOD」とに分析することもできる商標である。したがつて、本件登録商標と請求人(原告)の有する前記(一)から(十八)の商標の「LUCKYWOOD」又は「WOOD」に酷似しているといわなければならない。特に、これら請求人(原告)の商標は、洋食器(ナイフ、スプーン及びフオーク)の業界において、「LUCKY WOOD」の名で本国は勿論諸外国においても広く知られているものであるが、この請求人(原告)の商標の「LUCKY WOOD」と本件登録商標の「MERRYWOOD」とは、前者の「LUCKY」が幸運なという意味であるに対し、後者の「MERRY」が楽しいとか愉快なという意味であり、ともに、明るく、楽しい、幸せな感じを表す言葉として共通性をもつているから、このような、明るく、楽しい幸せな感じを代表するような「LUCKY」と「MERRY」という、外国人の間で特に好んで使われる二つの形容詞を考えるとき、そして、これらの両語がいずれも「WOOD」という同一の名詞と結合しているものであることを考えるとき、「LUCKY WOOD」と「MERRYWOOD」とは、外観称呼及び観念のいずれからみても、酷似のものである。このことは、北日本洋食器株式会社が、MERRY/WOODなる商標を被請求人(被告)の許諾を得たと称して飲食用に使用していることに徴しても、明らかである。ところで、
「MERRYWOOD」なる登録商標を、被請求人(被告)がもつていることが判明したのは、この商標を表示した飲食用ナイフ、スプーン及びフオークがオーストラリア市に大量に出廻つていること、そのデザインも請求人(原告)の専有するそれに酷似している旨バイヤーからの書翰によるものであり、この事実に徴しても、
本件登録商標は、請求人(原告)の有する「LUCKY WOOD」を十分意識して、不正な競争を行おうとする意図にでたものであることが明らかである。したがつて、本件登録商標は、商標法第4条第1項第十一号に該当し、同法第四十6条によりその登録を無効とすべきものである。」旨主張した。
これに対し、被請求人(被告)は、
「請求人(原告)は、一見明瞭な一連不可分の構成になる本件登録商標の「MERRYWOOD」を、無理に「MERRY」と「WOOD」とに分析して議論を展開しているが、これは本件登録商標を請求人(原告)の専有する引用登録商標に接近させようとして不自然な類否判断をしているものである。このこと(両者が類似しないこと)は、前記(一)の商標と(二)の商標(又は前記(十)の商標と(十一)の商標)の「WOOD」は、互いに連合する商標であるが、前記(三)の商標(又は前記(四)の商標)の「LUCKY WOOD」とは連合していないと同時に、前記(三)の商標(又は前記(四)の商標)に関しての連合は、登録第四五六、〇九四号商標、前記(六)から(九)及び前記(十六)から(十八)の商標(又は前記(六)及び(七)の商標)となつていることからみても明白である。また、登録第二三〇、一七一号商標(又は登録第五〇〇、八四八号商標)の「LUCKY」に対し、登録第二五二、五四五号商標(又は登録第六〇九、六四八号商標)の「MERRY」が単独の登録例として現存すること及び「LUCKY」の既登録商標に対し、「LUCKY WOOD」の商標が単独の商標として登録されていることは、「LUCKY WOOD」の商標を一連の造語的商標とみるを妥当とすると同時に、本件登録商標の「MERRYWOOD」も当然一連にした造語的商標とみるのが妥当である。したがつて、本件登録商標の「MERRYWOOD」と引用登録商標の「LUCKY WOOD」とは、外観上全く相違するとともに、称呼及び観念上も非類似のものであることは極めて明白である。被請求人(被告)が出荷販売するオーストラリア市の有限会社ニユーフイツロイ貿易社は、本件登録商標と同一構成よりなる「MERRYWOOD」の商標権を濠州連邦において専有するものであり、本件登録商標が同国において請求人(原告)の商品と誤認、混同を生ずるいわれはないから、被請求人(被告)が不正競争の目的をもつて本件登録商標を使用しているとの請求人(原告)の主張は、言語道断である。」旨答えた。
よつて、按ずるに、本件登録商標は、前記のとおり「MERRYWOOD」の文字を横書してなるものであるが、その「MERRY」の文字と「WOOD」の文字とは表現態様上引用登録商標の「LUCKY」と「WOOD」又は「ラツキー」と「ウツド」における(両者の間に約一字分程度の間隔があるもの、棒線を介して上下二段に記したもの及び「&」又は「アンド」の文字を介して横書したもの等)とは異なり、同大一連に記されているばかりでなく、その「MERRY」と「WOOD」との間には、語義においても「たのしい森」として結合すべき密接な関係があるとともに、語呂においても「メリーウツド」とよどみなく称呼され、これを分離して称呼及び観念すべき特別の事情もないから、本件登録商標は、この両者を結合一体のものとして「メリーウツド」と称呼及び観念(楽しい森)されるものというを自然とする。これに対し、引用登録商標は前記のような構成の態様上「ラツキーウツド」又は「ウツド」の称呼及び観念(幸福の森又は森)を生ずるものとするを自然とするから、本件登録商標と引用登録商標とは、外観においては勿論のこと、
称呼及び観念においても相紛れるおそれのない非類似の商標というを相当とする。
この点について請求人(原告)は、本件登録商標における「MERRYWOOD」と、引用登録商標における「LUCKY WOOD」とにおいて、その「MERRY」も「LUCKY」も、ともに、明るく、楽しい、幸せな感じを表す言葉として外国人の間では特に好んで使われる二つの形容詞であり、しかも両者がいずれも「WOOD」と同一の名詞と結合しているものであることを考え併せるとき、「LUCKY WOOD」と「MERRYWOOD」とは酷似のものである旨主張するが、その「MERRYWOOD」と「LUCKY WOOD」において、前者の「MERRY」と、後者の「LUCKY」とは、ともに一般に親しまれ、確然と区別された称呼及び観念を有する語であるから、これが、「WOOD」なる共通の語と結合したとしても、両者は、外観称呼及び観念のいずれの点においても互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というを相当とする。したがつて、この点に依拠してする請求人(原告)の主張は、採用することができない。
したがつて、本件登録商標は、商標法第4条第1項第十一号に該当するものとし、その登録を無効とすべき限りでない。
三 本件審決を取り消すべき事由 本件登録商標及び引用商標のそれぞれの構成及び指定商品並びに登録出願及び登録の各年月日が、いずれも本件審決認定のとおりであることは認めるが、本件審決は、原告が主張した本件登録商標の登録を無効とする事由についての判断を誤つた結果、右登録は無効とすべきものではないとした点において、判断を誤つた違法があり、取り消されるべきものである。すなわち、
(一)本件登録商標を構成する文字のうち、「MERRY」は、英語で「楽しい」という意味の形容詞であり、「WOOD」は、英語で、「森、木材」という観念の名詞であり、日本においても、ともに人口にかいしやされている言葉であるから、
本件登録商標は、「MERRY」と「WOOD」とに分析することができ、「ウツド」の称呼、「森、木材」の観念も生ずるところ、引用商標からも同様の称呼観念を生ずるから、両商標は類似する。
(二)本件登録商標の一部を構成する「MERRY」は、英語で、「楽しい、陽気な、愉快な、おもしろい、快活な、浮かれる」という意味であり、引用商標の一部を構成する「LUCKY」は、英語で、「幸運な、えんぎのよい、めでたい」という意味で、いずれも、明るく、良い意味の言葉であり、外国人が好んで使い、日本においても人口にかいしやされており、このようにかなり共通性をもつた言葉が、
いずれも「WOOD」という共通の言葉に結合していることからみて、両商標は称呼観念上類似するものというべきである。
(三)本件登録商標と引用商標とは、英文字を対比すれば、それぞれ前後二つに分かれる文字の前半が、前者は「MERRY」であるに対し、後者は「LUCKY」である点で違いはあるが、(1)本件登録商標は、その指定商品であるスプーン、
フオーク及びナイフにおいて、これらの柄の裏面や刀面というごく狭い場所に、小さく、浅く刻印されていること、(2)両商標の前後二つに分かれる文字の後半の「WOOD」を共通にしていること、及び(3)「MERRY」も「LUCKY」もアルフアベツト五文字からなり、最後がいずれも「Y」であること等からみて、
両商標は外観上類似するというべきである。
本件審決は、本件登録商標の「MERRY」の文字と「WOOD」の文字とは、
表現態様上、引用商標の「LUCKY」と「WOOD」又は「ラツキー」と「ウツド」において両者の間に約一字分程度の間隔がある等とは異なり、同大一連に記されている旨述べるが、このような商標構成上の表現の違いは問題にならないことである。本件登録商標は、「MERRY」と「WOOD」の単語からなる言葉であり、一つの単語からなる特定の意味のある言葉ではない。本件審決は、「MERRY」と「WOOD」との間には、語義においても「たのしい森」として結合すべき密接な関係がある旨述べているが、「たのしい森」とは言語学上、その意味は不明であるし、辞典にも単語として存在しないから、本件審決認定のように、結合すべき密接な関係があるとはいえない。更に、本件審決は、語呂において「メリーウツド」とよどみなく称呼され、二つの単語を結合一体のものとして「メリーウツド」と称呼観念(たのしい森)されるものというを自然とする旨述べるが、本件登録商標の構成は、一つの意味をもつた言葉ではなく、「MERRY」と「WOOD」の二つの単語の結合からなるものであるから、前記のような認定ないし判断は、実に不自然なことである。
被告の答弁
被告訴訟代理人は、請求の原因に対する答弁として、次のとおり述べた。
原告の主張事実中、特許庁における手続の経緯及び本件審決理由の要点並びに本件登録商標及び引用商標のそれぞれの構成及び指定商品並びに登録出願及び登録の年月日がいずれも原告主張のとおりであることは認めるが、その余は争う。本件審決の認定、判断は正当であり、原告主張の違法の点はない。原告の主張は、一見明瞭な一連不可分の構成になる本件登録商標を、「MERRY」と「WOOD」に無理に分析することを前提とするもので、不自然な類否判断である。本件登録商標は、一連とした造語的商標であり、引用商標とは構成音全体の語感が異なるから、
称呼及び観念非類似というべきである。本件登録商標の指定商品であるナイフに刻印された商標は、明確であり、なお、マークとして、「MERRYWOOD」の頭文字である「M・W」を楕円形の円線内に配置して刻印してあり、引用商標においては、マークとして、樹木三本を円形の円線内に配置して刻印しており、両商標の、指定商品についての相違は明瞭である。
証拠関係(省略)
理 由(争いのない事実)一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本件審決理由の要点、本件登録商標及び引用商標のそれぞれの構成、指定商品並びに登録出願及び登録の年月日がいずれも原告主張のとおりであることは、本件当事者間に争いがない。
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)二 本件審決は、本件登録商標は、結合一体のものとして「メリーウツド」と称呼観念(楽しい森)される、という前提に立つて、引用商標は、「ラツキーウツド」又は「ウツド」の称呼観念(幸福の森又は森)を生ずるから、両者相紛れるおそれのない非類似の商標であると判断したが、この判断は誤りであること、以下に説示するとおりである。すなわち、
前記当事者間に争いのない事実によれば、本件登録商標は、別紙記載のとおり、
これを構成する文字は、M・E・R・R・Y・W・O・O・Dの各欧文字が、同一書体、同一の大きさ及び同一の間隔で、一連かつ一体に横書してなるものであることを認めることができるが、前記欧文字からなる本件登録商標を機械的に発音する場合でも、我が国における欧語、特に英語の普及の度合いからみて、本件登録商標を構成する文字の前半部分に当たる「MERRY」は、英語で、「陽気な」あるいは「楽しい」の意味を有する単語であり、後半部分に当たる「WOOD」は、英語で、「森」の意味を有する単語であり、本件登録商標はこの二つの単語からなるものであるから、これを「MERRY」と「WOOD」とに分けることもできるものであることを、一般世人において容易に理解するものと認めるのが相当であり、しかして、本件登録商標を、「メリーウツド」と結合体のものとしてのみ理解されるべきものであるとする特段の事情の認むべき証拠のない本件においては、本件登録商標は、「メリーウツド」(陽気な森あるいは楽しい森)のほか、「ウツド」(森)の称呼観念を生ずるとみるを相当とする。
本件審決は、引用商標からは、その構成の態様上、「ラツキーウツド」(幸福の森)又は「ウツド」(森)の称呼観念を生ずるとしながら、本件登録商標は、
「MERRY」と「WOOD」を結合一体のものとして、「メリーウツド」と称呼観念されるものというを自然とするとするが、なぜそれが自然とするかの理由は全く明確でない。(あるいは、引用商標において、「LUCKY」と「WOOD」との間に一字分程度の間隔があることを捕えて、右のような判断に及んだものかとも推測されるが、称呼観念に関する限り、一字分程度の間隔があるかないかを問題にするのは混乱といわざるをえない。けだし、「LUCKY」も「WOOD」も比較的短い英文字であり、しかも、前者が形容詞であることもあつて、一般にはこれに接した場合、一字分程度の間隔の有無にかかわらず、一連に、あるいは各別に、称呼し、又は観念するを通例とすると認められるからである。) 叙上のとおり、本件登録商標からは、「メリーウツド」と称呼観念(楽しい森)されるものであり、「ウツド」の称呼観念を生ずるものではないとした本件審決の認定ないし判断は誤りであり、引用商標が「ラツキーウツド」の称呼観念(幸福の森)のほか「ウツド」の称呼観念(森)を生ずるものであることは被告も認めて争わないところであるから、本件登録商標と引用商標とは、いずれも前記「ウツド」の称呼観念を生ずる点において、互いに類似するものというべく、したがつて、両者が称呼及び観念においても類似しないとした本件審決は、その判断を誤つたものというほかはない。
(むすび)三 以上説示したとおりであるから、その主張の点に違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由があるものということができる。よつて、これを認容することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法第7条及び民事訴訟法第八十9条を適用し、主文のとおり判決する。
裁判官 三宅正雄
裁判官 中川哲男
裁判官 秋吉稔弘