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審判番号(事件番号) データベース 権利
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昭和59ネ1803 判例 商標
平成10ワ16262不正競争行為差止等請求事件 判例 商標
関連ワード 指定商品 /  類似性(類否判断) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) / 
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事件 昭和 48年 (ワ) 7060号
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裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1974/04/19
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は、別紙第一、第二各目録記載の各標章を附したアンダーシヤツを販売、
頒布してはならない。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
3 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
原告訴訟代理人は、主文第一、二項同旨の判決及び主文第一項請求部分についての仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、
「一 原告の商標権 原告は、次の商標権(以下「本件商標権」という。)を有する。
登録番号 第五三六九九二号登録商標 別添商標公報写しのとおり出願 昭和三三年六月二六日(商願昭三三-一七九五七)出願公告 昭和三三年一〇月二〇日(商標出願公告昭三三-一六六九六)登録日 昭和三四年六月一二日指定商品 第三六類「被服、手巾、釦紐及び装身用ビンの類」二 被告の標章 訴外オツクス株式会社は、別紙第一、第二各目録記載の標章(以下、第一目録記載の標章を「乙標章」、第二目録記載の標章を「丙標章」という。)を附したアンダーシヤツを製造し、被告はこれを卸販売している。
三 被告の本件商標権侵害行為 乙、丙各標章は、以下に説明するとおり本件登録商標に類似するから、被告の前記行為は本件商標権を侵害するものとみなされる。(商標法第37条第1号)。
(一) 本件登録商標の構成 本件登録商標は、人物が帽子をかぶり、アンダーシヤツを着て、腕の一本に錨のマークをつけ、腰をまくり上げ力瘤を出しており、マドロスパイプをくわえているのが主要な特徴で、これが「POPEYE」の欧文字又は「ポパイ」の片仮名の記載と相俟つてポパイのイメージを形づくつている。
(二) 被告の標章の構成の特徴1 乙標章は、人物が帽子をかぶりアンダーシヤツを着て腕の一本に錨のマークをつけ、腕をまくり上げ、力瘤を出しており、かつ、「POPEYE」の欧文字を表示してある。
2 丙標章は、乙標章同様、人物が帽子をかぶり、アンダーシヤツを着て腕の一本に錨のマークをつけ、腕をまくり上げ、力瘤を出しており、かつ、「ポパイ」の片仮名文字が表示されている。
(三) 本件登録商標(以下この項において「甲」という。)と乙、丙各標章との対比1 乙標章は、甲と次の点について違いがある。すなわち、(1)人物の顔の向きが甲ではやや左向きであるのに対し、乙標章では右を向いていること。(2)甲では、人物の足がピンと伸びているのに対し、乙標章では、足をよじるようにしていること。(3)甲には、人物と文字のほかに何も表示されていないのに対し、乙標章では、サンドバツグが人物のそばに表示されていること。(4)甲では、「POPEYE」の欧文字と「ポパイ」の片仮名が表示されているのに対し、乙標章では、「POPEYE」の欧文字のみが表示されていること。
乙標章は、甲と以上のような相違点があるけれども前記、人物が帽子をかぶり、
アンダーシヤツを着て、腕の一本に錨のマークをつけ、腕をまくり上げ、力瘤を出している主要な特徴において甲と共通し、「POPEYE」の欧文字が一致しているから、両者は、外観称呼観念において類似している。
2 丙標章は、甲と次の点において違いがある。すなわち、(1)甲では、人物が立つているのに対し、丙標章では、人物が玩具の蒸気機関車に座つていること。
(2)甲の人物は右腕を振り上げているのに対し、丙標章では左腕を振り上げていること。(3)甲の人物は一人であるのに対し、丙標章では、女子(ポパイ漫画ではオリーブとして登場している)一名と子供(ポパイ漫画に登場している)一名が表示されていること。(4)甲には、人物のほかなんらの表示がないのに、丙標章では、樹木が二本表示されていること。(5)甲には、「POPEYE」の欧文字と「ポパイ」の片仮名文字が表示されているのに対し、丙標章では、「ポパイ」の片仮名文字が表示されているだけであること。
丙標章は、甲と対比して、右のような相違があるけれども、乙標章との対比に記載したとおり、その主要な特徴において甲と共通し、「ポパイ」の片仮名文字の表示において一致している。そして、丙標章の人物三名の表示は、観念においてポパイのイメージを強化して、むしろ甲と丙標章との類似性を強化しており、両者は、
外観称呼及び観念において類似している。
四 請求 よつて、原告は、本件商標権に基づいて、被告に対し、別紙第一、第二各目録記載の標章を附したアンダーシヤツを販売、頒布してはならない旨の裁判を求める。」と述べ、立証として、甲第一号証ないし第四号証を提出した。
被告は、本件口頭弁論期日に出頭しないが、その陳述したものと見做された被告提出の答弁書の記載によれば、請求の趣旨に対しては、「原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、請求原因に対する答弁は、
「一、原告主張の本件商標に関する件は知らない。二、本件の如きわずらわしい事情がありとすれば、当方としては、これにかかわりたくないから、ことが判明するまでは、本件の商品は取り扱わない所存である。」というのである。
理 由 公文書であるから真正に成立したものと認められる甲第一号証(本件商標権登録原簿謄本)、第三号証(本件商標公報)によれば、原告が本件商標権を有することが認められ、被告が、乙、丙各標章を附したアンダーシヤツを販売し、頒布していることは、同被告において明らかに争わないところであるから、被告は、右事実を自白したものと見做される。
ところで、被告は、本件のようなわずらわしい事情があるとすれば、事が判明するまでは、右商品を取り扱わない所存であるというのであるところ、その意は、事が判明すれば、再び乙、丙各標章を附したアンダーシヤツを取り扱う意図を有するものであるということが窺われるから、仮に現在、被告が右アンダーシヤツを取り扱つていないとしても、将来これを販売頒布するおそれがあるものといわなければならない。
そこで、乙丙各標章が、本件登録商標に類似するかどうかについて検討する。
まず、前記第三号証(本件商標公報)によれば、本件登録商標は、「POPEYE」の文字を上部に、「ポパイ」の文字を下部にそれぞれ横書きし、右各文字の中間に、水兵帽をかぶり、水兵服を着た人物ポパイが口にマドロスパイプをくわえ、
錨を描いた左腕を胸に、右腕に力瘤をつくり、両足を開いた状態にあらわされた、
文字と図形との結合から成るものであることが認められる。
乙標章は、上部に大きく「POPEYE」の文字を横書きし、その末尾の「E」の文字から、紐で、苦痛の表情を表わしたサンドバツグが下げられ、そのサンドバツグの左側で前記「POPEY」の文字部分の下方に、船員帽をかぶり、水兵服を着て、口にマドロスパイプをくわえ、両方の手及び前胸部をふくらませ、左前腕部に錨を表わし、右眼を閉じ、両膝をくつつけて、サンドバツグを殴り終つた様子をあらわした人物ポパイの図形が表わされ、右全体の図形の右下方には、「● King Features Syndicate.」と表示された、文字と図形から成るものであることが認められる。
両標章は、野原の線路上に、前面に「POPEYE」の文字を横書きした玩具の蒸気機関車が描かれ、右蒸気機関車の後ろに、人物ポパイが乗り、ポパイは、頭に白い水兵帽をかぶり、水兵服を着て、口にはマドロスパイプをくわえ、両方の手及び前腕部をふくらませ、左手を上に向けて開き、右前腕部に錨を表わし、ポパイの後ろには男の子が右手を開いて乗車し、地面左側にはオリーブ(女性)がポパイらに話しかけながら立つている図を表わし、ポパイの背景には樹木二本が表わされ、
前記蒸気機関車の右下方には「ポパイ」の文字が、その下部には「● KING FEATURES SYNDICATE.」と各横書きされた、文字と図形との結合から成るものであることが認められる。
そこで、本件登録商標と乙、丙各標章とを対比する。
乙標章と本件登録商標とは、「POPEYE」の字体や人物の姿態が異なつている。また、乙標章には、本件登録商標の「ポパイ」なる文字を欠くが、本件登録商標にはないサンドバツグの図形と「● King Features Syndicate」の文字表示があり、それらの点で乙標章は本件登録商標と異なる。しかし、両者は、いずれも「ポパイ」なる称呼において共通し、また、そこに描かれた人物は、ともにわが国においてもポパイ漫画として著名な漫図の人物ポパイを観念せしめる点において共通し、さらに、右のように著名なポパイを表示したものであるという点で全体の外観において類似するものということができるから、結局乙標章は、本件登録商標に類似するものということができる。
次に、本件登録商標と丙標章は、ともにその表示された位置、文字の大きさに差はあつても「POPEYE」の文字を共通にし、また「ポパイ」の字体においてはほゞ共通するものを有し、ポパイの姿態において差異はあるが水兵帽をかぶり、水兵服を着、口にマドロスパイプをくわえたポパイを表示している点では共通している。ただ丙標章では、ポパイのほかに人物二名が表示され、玩具の蒸気機関車とレール、樹木及び「● KING FEATURES SYNDICATE」の表示がある点で右標章は本件登録商標と異なる。しかし、両者とも、「POPEYE」「ポパイ」の文字と人物ポパイの表示がある点で同一であり、その人物も一見ポパイであることが明瞭に覚知されうる。そこで、結局丙標章は、前記乙標章について説明したと同様、本件登録商標と称呼観念を共通にし、外観において類似するものといわなければならない。従つて、丙標章は、本件登録商標と類似する。
以上のとおり、被告において乙、丙各標章を使用するにつき、正当の権限を有する旨主張し立証しない本件では、乙、丙各標章を附したアンダーシヤツを販売、頒布する行為は、商標法第37条第1号により原告の本件商標権を侵害するものと見做される。
よつて、原告の本訴請求は理由があるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第89条、仮執行の宣言につき同法第196条を各適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 高林克已
裁判官 野沢明
裁判官 清永利亮