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審判番号(事件番号) データベース 権利
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平成17ワ25426損害賠償請求事件 判例 商標
平成17ワ18156商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  商標的使用 /  指定商品 /  指定役務 /  普通名称(3条1項1号) /  権利濫用(権利の濫用) /  先使用(32条) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  差止 /  先使用権 / 
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事件 平成 16年 (ワ) 25661号 商標権侵害差止等請求事件
原告 有限会社ピーシーワイ
同訴訟代理人弁護士 田中保彦
被告K
被告 株式会社山海堂(以下「被告山海堂」という。)
被告 ジャパンライム株式会社(以下「被告ジャパンライム」という。)
被告 有限会社ソーケン・ネットワーク(以下「被告ソーケン・ネットワーク」という。)
上記四名訴訟代理人弁護士 三堀清
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2005/03/30
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告Kは,運動法又は運動トレーニング法の教授に関する広告,運動法又は運動トレーニング法の講習会の企画・運営又は開催,運動法又は運動トレーニング法の教授に関する書籍,雑誌の記事,DVD,ビデオ等の出版物の執筆,解説又は監修に際し,別紙標章目録記載の各標章(以下順に「被告標章1」,「被告標章2」,「被告標章3」などといい,これらを総称して「被告標章」という。)及び別紙商標目録記載の登録商標(以下「本件商標」という。)を使用してはならない。
2 被告山海堂は,別紙商品目録1記載の書籍(以下「被告書籍」という。)を発行し,販売してはならない。
3 被告山海堂は,発行した被告書籍のうち,販売済みのものを回収し,同書籍の在庫品及び印刷原版とともに廃棄せよ。
4 被告ジャパンライムは,別紙商品目録2記載のDVD(以下「被告DVD」という。)を作成し,販売してはならない。
5 被告ジャパンライムは,作成した被告DVDのうち,販売済みのものを回収し,同DVDの在庫品及び撮影オリジナルDVD又はビデオテープとともに廃棄せよ。
6 被告ソーケン・ネットワークは,別紙商品目録3記載のビデオテープ(以下「被告ビデオテープ」という。)を作成し,販売してはならない。
7 被告ソーケン・ネットワークは,作成した被告ビデオテープのうち,販売済みのものを回収し,同ビデオテープの在庫品及び撮影オリジナルビデオテープとともに廃棄せよ。
事案の概要
本件は,原告が,被告らに対し,被告標章を使用して行われた被告らの行為が原告の有する別紙商標目録記載の商標権(以下「本件商標権」という。)を侵害するとして,同商標権に基づき,被告らの上記行為の差止め及び被告らにより作成された被告書籍,被告DVD及び被告ビデオテープ(以下「被告製品」という。)等の廃棄等を求めた事案である。
1 争いのない事実 (1) 原告の有する商標権 原告は,本件商標権を有している。
(2) 被告らの行為 ア 被告Kの行為 (ア) 被告Kは,平成13年12月ころより,インターネットのホームページ上で,運動法又は運動トレーニング法について,被告標章1を使用して広告をした。
(イ) 被告Kは,平成15年12月ころより,各種団体が開催する運動法のセミナーや講習会において,被告標章2を使用して自己を表記し,運動法又は運動トレーニング法について,被告標章3及び4を使用して講義をした。
(ウ) 被告Kは,平成15年12月ころより,各種スポーツ雑誌において,被告標章4及び5を付した記事を執筆した。
(エ) 被告Kは,被告標章6を付した運動法又は運動トレーニング法に関する平成15年9月20日発行の被告書籍を執筆した。
(オ) 被告Kは,解説者として,被告標章7が付された運動法又は運動トレーニング法を紹介する平成16年7月ころ作成された被告DVDにおいて解説をした。
(カ) 被告Kは,監修者として,被告標章8が付された運動法又は運動トレーニング法を紹介する平成16年初めころ作成の被告ビデオテープを監修した。
イ 被告山海堂の行為 被告山海堂は,平成15年9月20日より,被告書籍を発行し,販売している。
ウ 被告ジャパンライムの行為 被告ジャパンライムは,平成16年7月ころより,被告DVDを作成し,販売している。
エ 被告ソーケン・ネットワークは,平成16年初めころより,被告ビデオテープを作成し,販売している。 2 争点 上記1(2)記載の被告標章を使用する被告らの行為(以下「被告行為」と総称する。)は,本件商標権を侵害するといえるか。
3 争点に関する当事者の主張 (原告の主張) (1) 本件商標と被告標章との類否 ア 本件商標は,「スタビライゼーション」部分が要部であるというべきである。
すなわち,本件商標は,「スタビライゼーション」,「フィジカル」,「コントロール」及び「テクニック」との文字から構成されているところ,これが本件商標権の指定役務である「運動法の教授」の呼称とされた場合,自他商品の識別という観点からすると,語頭の「スタビライゼーション」との称呼が需要者の注意を引く。また,「スタビライゼーション」は,「stabilization」との英単語をカタカナ文字で表記したものであり,一般的には「固定(させること)」又は「安定(させること)」という意味を有するが,運動法の教授という役務について使用された場合は,「身体機能の安定性を向上させる運動法」という観念を生じさせて,他の運動方法とは異なるものであることを表示する機能を有する。
イ これに対し,被告らが使用する被告標章は,「スタビライゼーション」又は「スタビリティー」と,「アスレティック」,「トレーニング」,「研究会」,「専門家」,「ボディバランスを獲得する」,「基礎編」,「BASIC」等の文字をそれぞれ組み合わせ,あるいは「スタビライゼーション」の一語のみで構成されているものであり,「スタビライゼーション」又は「スタビリティー」部分が要部であるというべきである。
そして,「スタビライゼーション」は,前記のとおり「固定(させること)」,「安定(させること)」という観念を生じ,「スタビライゼーション」との称呼を生じる。また,「スタビリティー」は,「固定」,「安定」,「安定性」という観念を生じ,「スタビリティー」との称呼を生じる。
ウ そうすると,被告標章は,本件商標と,その要部の観念において同一であることに加え,被告標章中の「スタビライゼーション」については,本件商標の要部と称呼においても同一であり,同標章中の「スタビリティ」についても,「スタビ」及びラ行の発音が本件商標の要部と同一である。
したがって,被告標章は,本件商標に類似している。
(2) 結論 よって,被告行為は,本件商標権を侵害する。
(被告らの主張) (1) 本件商標と被告標章との類否 被告標章は,いずれも本件商標に類似していない。
本件商標は,いずれも一般的普遍的な文字である「スタビライゼーション」,「フィジカル」,「コントロール」,「テクニック」及び「(PC)」から構成されているところ,全体としてのみ称呼,観念を生じ,「スタビライゼーション」,「フィジカル」,「コントロール」,「テクニック」(又は「フィジカルコントロールテクニック」)及び「(PC)」の各部分からは何らの称呼,観念を生じることはなく,「スタビライゼーション」を要部であるということはできない。
(2) 商標的使用 被告標章が,仮に本件商標に類似する用語であったとしても,@書籍,DVD及びビデオテープの題名として被告標章を使用すること,A書籍,DVD及びビデオテープにおいて,既存のトレーニング方法を解説するために被告標章を使用すること,B既存のトレーニング方法の普通名称として被告標章を使用して基本的なトレーニング方法を教授することは,いずれも商標的使用に当たらない。
(3) 先使用権 ア 「スタビライゼーション・トレーニング」は,被告Kが,ドイツで古くから行われていた医療体操を体系化したものであり,同被告が「フィジーク」平成6年3月号に,「スタビライゼーション30ポーズ」として,初めて我が国に紹介したものである。
その後,被告Kが,「コーチング・マガジン」(ベースボールマガジン社刊)の平成6年6月号から12月号に,「スタビライゼーション・トレーニング」と題する論文を執筆したことが契機となって,「スタビライゼーション・トレーニング」がトレーニング方法の名称として周知されるとともに,被告Kは,「スタビライゼーション・トレーニング」の第一人者として認識されるに至った。
イ 原告は,平成13年7月13日,本件商標の商標登録出願をした。
ウ したがって,被告Kは,「スタビライゼーション・トレーニング」との商標の使用をする権利を有している。また,被告Kは,その余の被告らに対し,同商標の使用を許諾した。
(4) 権利濫用 原告は,上記(3)ア記載の事実を知りながら,自らが「スタビライゼーション・トレーニング」を独占的に使用して不当な利益を得ようとして本件商標を登録したにすぎず,原告による本件商標の登録は不正な競争を目的とするものである。
したがって,原告の本件商標権に基づく差止請求等は,権利の濫用に当たる。
争点に対する判断
1 本件商標と被告標章との類否について 当裁判所は,被告標章が本件商標に類似すると認めることはできないと判断する。その理由は,以下のとおりである。
(1) 本件商標 本件商標は,別紙商標目録記載のとおり,「スタビライゼーション」,「フィジカル・コントロール・テクニック」及び「(PC)」の文字並びにこれらの文字の間に挿入されている記号「\」により構成されて おり,「スタビライゼーション,フィジカルコントロールテクニック,ピイシイ」の称呼を生じるものと認められる(なお,簡易迅速が尊重される当該役務の実際の取引の場においては,上記称呼のほかに,「スタビライゼーション,フィジカルコントロールテクニック」,あるいは「スタビライゼーション,ピイシイ」と称呼されることも想定されるが,後記説示のとおり,「スタビライゼーション」部分が普通名称であり,「フィジカル・コントロール・テクニック\(PC)」部分も一般的な文字を組み合わせたものであって,いずれも自他識別力を欠くことを考慮すると,それ以上に「スタビライゼーション」を含む簡略な称呼は生じないものと解するのが相当である。)。
本件商標のうち,「スタビライゼーション」部分は,英単語である「stabilization」の読みをカタカナ文字で表記したものであり,一般的には「固定」又は「安定」という意味を有する。この表示が運動法の教授という指定役務について使用された場合,需要者は,当該表示を,主動筋のみならず,主動筋を補助する補助筋を刺激し,バランス能力や姿勢反射の改善を図り,四肢の安定性を高めることを目的とした特定のトレーニング方法を表す普通名称である旨理解すると認めることができる(甲2〜11,乙1〜10)。また,「フィジカル・コントロール・テクニック」部分は,いずれも一般的な文字である,「身体の」を意味する「フィジカル」,「管理」を意味する「コントロール」,「技術」を意味する「テクニック」を組み合わせたものであり,全体として,身体を管理する技術という観念を生じ,「(PC)」部分は,「フィジカル」と「コントロール」を英文字で表記した「physical」と「control」の頭文字を結合して括弧を付したものであると認められる。
そうすると,本件商標からは,その文字の意味に即応して,「スタビライゼーションのトレーニング方法を用いて身体を管理する技術」という観念が生じるものと認められる。
そして,本件商標が運動法の教授という指定役務について使用された場合に,@「スタビライゼーション」部分は,特定のトレーニング方法を表す普通名称であるから,独立して自他識別力を有するものではないこと(原告も,第1回口頭弁論期日において,そのことを認める旨の陳述をしている。),A「フィジカル・コントロール・テクニック\(PC)」部分は,一般的な文字を組み合わせたものであって,運動法の教授という指定役務について自他識別力を有するものではないことに照らせば,本件商標は,いずれかの部分が要部ということはいえず,商標全体としてのみ自他識別力を持つものであるということができる。
これに対し,原告は,「スタビライゼーション」部分が本件商標の要部であると主張するが,「スタビライゼーション」が特定のトレーニング方法を表す普通名称であることは前示したとおりであるから,この主張を採用することはできない。
(2) 被告標章 被告標章3は,特定のトレーニング方法を表す普通名称である「スタビライゼーション」のみから構成されるものであり,「スタビライゼーション」の称呼を生ずる。
被告標章4,6は,「スタビライゼーション」の前に,「運動の」を意味する「アスレティック」(被告標章4),スタビライゼーションの具体的内容を意味する「ボディバランスを獲得する」(被告標章6)という形容詞的な文字部分を付したものであり,それぞれ,「アスレティックスタビライゼーション」,「ボディバランスをかくとくするスタビライゼーション」の称呼を生ずる。
被告標章1,2,8は,「スタビライゼーション」の後に(ただし,被告標章8に限り,「スタビライゼーション」の前に「アスレティック」が付されている。),「訓練」を意味する「トレーニング」及び「研究を目的とする会議」を意味する「研究会」(被告標章1),「ある事柄などを専門に担当し,それに精通している人」を意味する「専門家」(被告標章2)又は「基本」を意味する「BASIC」(被告標章8)との文字を付したものであり,それぞれ,「スタビライゼーショントレーニングけんきゅうかい」,「スタビライゼーションせんもんか」,「アスレティックスタビライゼーションベーシック」の称呼を生ずる。
被告標章5の「スタビリティトレーニング」は,「固定」,「安定」又は「安定性」を意味する「スタビリティ」に,「訓練」を意味する「トレーニング」との文字を付したものであり,「スタビリティトレーニング」の称呼を生ずる。
被告標章7は,被告標章5の「スタビリティトレーニング」に,「土台となる部分」を意味する「基礎編」の文字を付したものであり,「スタビリティトレーニングきそへん」の称呼を生ずる。
(3) 本件商標と被告標章の対比 そこで,本件商標と被告標章とを対比すると,本件商標からは,前示のとおり,「スタビライゼーション,フィジカルコントロールテクニック,ピイシイ」,「スタビライゼーション,フィジカルコントロールテクニック」及び「スタビライゼーション,ピイシイ」の称呼が生じ,「スタビライゼーションのトレーニング方法を用いて身体を管理する技術」という観念が生じるのに対し,被告標章は,単に「スタビライゼーション」,「スタビリティトレーニング」のみから構成されるか,あるいは,これらに「研究会」,「専門家」等の文字を組み合わせたものであって,前記認定の称呼と,当該文字の意味に即応した観念が生じるものと認められるから,本件商標と被告標章とは,称呼,観念のいずれにおいても相違するものといわなければならない(なお,本件商標と被告標章とが,外観において類似するか否かについては,原告による主張立証がなく,本件全証拠によっても,両者は外観上類似するものとは認められない。)。
したがって,被告標章が本件商標に類似すると認めることはできない。
2 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとする。
追加
(別紙)商標目録登録番号第4489839号登録日平成13年7月13日登録商標スタビライゼーション\フィジカル・コントロール・テクニック\(PC)商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務41運動法の教授(別紙)標章目録1スタビライゼーション・トレーニング研究会2スタビライゼーション専門家3スタビライゼーション4アスレティック・スタビライゼーション5スタビリティトレーニング6ボディバランスを獲得するスタビライゼーション7スタビリティトレーニング基礎編8アスレティックスタビライゼーションBASIC(別紙)商品目録1書籍書籍名ボディバランスを獲得するスタビライゼーション著者被告K発行者M発行所被告株式会社山海堂発行日2003年9月20日第1刷発行2004年7月23日第2刷発行2DVD題名スタビリティトレーニング基礎編ボディバランスを獲得するスタビライゼーションの理論と実践指導・解説者被告K作製者被告ジャパンライム株式会社販売者被告ジャパンライム株式会社3ビデオ・テープ題名アスレティックスタビライゼーションBASIC監修者被告K作製者被告有限会社ソーケン・ネットワーク販売者被告有限会社ソーケン・ネットワーク以上
裁判長裁判官 清水節
裁判官 山田真紀
裁判官 一場康宏