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関連ワード 指定商品 /  指定役務 /  周知商標 /  公序良俗(4条1項7号) /  4条1項19号 /  無効審判 / 
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事件 平成 20年 (行ケ) 10466号 審決取消請求事件
原告株式会社オメガビジョン
訴訟代理人弁理士川原 田一穂
同 小川孝文
被告赤 城印刷有限会社
訴訟代理人弁護士高橋勝男
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/03/31
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2008-890008号事件について平成20年10月28日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,被告が商標登録を有していた下記商標登録(第4767820号。以下「本件商標」という。)に対し原告が無効審判請求をしたところ,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,これに不服の原告がその取消しを求めた事案である。
記・商標 ・指定商品第9類コンピュータソフトウエア・指定役務第42類コンピュータソフトウエアの設計・バージョンアップ,コンピュータソフトウエアの貸与
当事者の主張
1 請求原因(1) 特許庁における手続の経緯被告は,平成15年4月24日に本件商標の登録出願(商願2003-038444号)をし,平成16年4月30日に登録第4767820号として商標登録を取得したところ,平成20年1月29日に至り原告から,商標法46条1項3号違反(権利を承継しない者による出願)及び不正競争防止法2条1項1号違反(混同を生じさせる行為)を理由に商標登録の無効審判請求がなされたので,特許庁は,これを無効2008-890008号事件として審理した上,平成20年10月28日,「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決をし,その謄本は同年11月7日原告に送達された。
(2) 審決の内容審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,?@本件商標登録出願は被告によりなされ同人によって商標登録を受けているもので登録出願によって生じた権利の承継はなく,商標法46条1項3号違反はない,?A商標登録出願の無効理由は商標法46条に限定列挙されているところ,不正競争防止法2条1項1号は無効理由として規定されていない,?B請求人たる原告は,弁駁書において商標法4条1項19号(周知商標の不正使用)に触れる主張をしているが,商標法56条において準用する特許法153条1項により職権により採り上げて審理するまでもない,等というものである。
(3) 審決の取消事由上記審決理由のうち,?@(商標法46条1項3号違反),?A(不正競争防止法2条1項1号違反)は争わないが,?B(職権審理せず)は争う。
すなわち,本件商標登録は商標法4条1項19号(周知商標の不正使用)に違反してなされた可能性を否定できず,更には同項7号違反(公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標)の可能性も考えられる。本件商標の指定商品及び指定役務は被告の業務とは何ら関係のないものであり,当時利害関係にあった原告と被告との状況に照らしてみても,原告が当時インターネットや出版物で広く広告宣伝に使用していたレーベルを,被告がその独特の形状からなるロゴを冒用してあたかも適式のものであるかのように特許庁へ商標登録出願した行為は,原告に対する業務妨害行為というほかない。
しかるに本件審判においては審理の過程において原告と被告との利害関係等について更なる説明を求めることもせず,消極的な対応に終始したものである。
2 請求原因に対する認否請求原因(1),(2)の各事実は認めるが,(3)は争う。
3 被告の反論(1) 審決の判断には何ら誤りはなく,原告の主張する取消事由は理由がない。
(2) なお,原告は,審決の判断において言及されている条項のほかに新たに商標法4条1項7号違反を主張するが,同号に関する主張は特許庁での審理において主張されていないものであって,本件訴訟では審理の対象とはならない。
(3) また原告は,本件商標の登録出願行為を原告に対する業務妨害行為であると主張するが,被告が本件商標の登録出願をした平成15年4月24日当時は,原告と被告との間に利益が対立する状況にはなく,むしろ被告は原告の代表取締役であったEから本件商標の取得を依頼されて登録出願したものである。
(4) なお,本件商標登録に対しては平成20年5月2日に原告から商標法50条1項に基づく商標登録取消審判請求がなされ(審判請求の登録日 平成20年5月19日),特許庁の審理の結果,「登録第4767820号商標の商標登録は取り消す。」旨の審決(甲49)が確定しており(取消2008-300549号。審決確定日は,平成20年10月9日),このように商標登録としての効力を失った本件商標につき重ねて登録無効の審決を求める実益は存在しないものである。
当裁判所の判断
1請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
2 取消事由の有無(1) 原告が審決の取消事由として主張するところは,前記のとおり「本件商標登録は商標法4条1項19号に違反してなされた可能性を否定できず,更には同項7号違反の可能性も考えられる。本件商標の指定商品及び指定役務は被告の業務とは何ら関係のないものであり,当時利害関係にあった原告と被告との状況に照らしてみても,原告が当時インターネットや出版物で広く広告宣伝に使用していたレーベルを,被告がその独特の形状からなるロゴを冒用してあたかも適式のものであるかのように特許庁へ商標登録出願した行為は,原告に対する業務妨害行為というほかない。しかるに本件審判においては審理の過程において原告と被告との利害関係等について更なる説明を求めることもせず,消極的な対応に終始したものである」というものであるが,これは,商標法56条が準用する特許法153条1項が「審判においては,当事者又は参加人が申し立てない理由についても,審理することができる」と定めていることから,特許庁は本件に関し,職権により商標法4条1項19号(周知商標の不正使用)及び同項7号違反(公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標)の各事由があるか否かを審理すべきであったのにこれをせず前記のような審決をするに至ったのは違法である,という主張と解される。
(2) しかしながら,ア商標法56条の準用する特許法153条は,その1項で「審判においては,当事者又は参加人が申し立てない理由についても,審理することができる」と,その2項で「審判長は,前項の規定により当事者又は参加人が申し立てない理由について審理したときは,その審理の結果を当事者及び参加人に通知し,相当の期間を指定して,意見を申し立てる機会を与えなければならない」と定めているが,同条の規定の仕方からして,審判合議体が当事者において申し立てていない事由(本件において商標法4条1項19号又は7号該当事由)の有無を職権で採り上げるかどうかはその裁量に委ねられていると解するのが相当であり,したがって,上記事由を審判合議体が職権で採り上げなかったことをもって違法と解することはできない。
イのみならず,証拠(甲1〜34,39,51,乙1〜4)及び弁論の全趣旨によれば,本件商標の出願がなされた平成15年4月24日以前から,印刷業を営む被告代表者A・その妻B・その子Cと原告会社の代表取締役(社長)であるD・同じく代表取締役(会長)であるEとは,ゲームソフトの制作等について共同して仕事をする関係にあり,前記CとEとはかつては個人的関係にあったこと,前記A側と前記D及びE側とは少なくとも平成16年12月ころから民事訴訟の提起等を契機に不仲となったこと等が認められ,これらの事実に,「本件商標は,もともとEから依頼されて取得した」とする乙4(Bの陳述書)の記載等を総合すると,本件商標登録はEの依頼に基づき被告が取得したとする上記陳述書記載を否定することはできないと認められるから,本件商標登録につき商標法4条1項19号又は7号の事由があるということもできない(なお,本件商標登録が商標法50条1項に基づき既に取消審決を受け,平成20年10月9日確定していることは前記第3,3(4)のとおりである。甲49,50)。
3 結語以上のとおりであるから,原告主張の取消事由は理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 今井弘晃
裁判官 清水知恵子