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事件 平成 20年 (ワ) 22305号 損害賠償等請求事件
アメリカ合衆国ノースカロライナ州〈以下略〉
原告エッチビーアイブランデッド アパレルエンタープライセス エルエルシー
同訴訟代理人弁護士松尾眞
同 兼松由理子
同 岩波修
同 長尾貴子
同訴訟復代理人弁護士前田香織 宇都宮市〈以下略〉
被告株 式会社フリック
同訴訟代理人弁護士高松薫
同 土屋奈生
同 石田晃士
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2010/11/10
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1被告は,原告に対し,1060万7215円及びこれに対する平成20年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,別紙被告標章目録記載1又は2の標章を付した被服を譲渡し,引き渡し,輸入し,又は譲渡若しくは引渡しのために展示してはならない。
3被告は,別紙被告標章目録記載1又は2の標章を付した被服を廃棄せよ。
4原告のその余の請求を棄却する。
5訴訟費用はこれを10分し,その9を被告の負担とし,その余は原告の負- 2 -担とする。
6この判決は,第1ないし第3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
第1請求1被告は,原告に対し,1548万3998円及びこれに対する平成20年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2主文第2,第3項と同旨第2事案の概要1本件は,後記2(2)アないしウの各商標の商標権者である原告が,被告が別紙被告標章目録記載の各標章(以下,同目録記載1の標章を「被告標章1 ,」同目録記載2の標章を「被告標章2」といい,これらを併せて「被告標章」という )を付した別紙商品目録記載の各商品(以下「本件各商品」という ) 。 。
を販売するなどの行為が原告の有する上記各商標の商標権を侵害すると主張して,被告に対し,商標法36条1項に基づき上記行為の差止め及び同条2項に基づき被告標章を付した被服の廃棄を求めるとともに,商標権侵害の不法行為による損害賠償請求権(民法709条,商標法38条2項)に基づき,損害賠償金1548万3998円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年8月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除き,当事者間に争いがない )。
(1) 当事者,「」,「」,「」,「」 ア原告はChampionCHAMPIONチャンピオンCロゴのマーク及びこれらを組み合わせた標章を商標として付した衣料品等を関連会社に製造,販売させることを業とする,アメリカ合衆国デラウェア州法に基づき設立された会社である。
イ被告は,紳士服,婦人服,子供服の販売等を業とする株式会社である。
(2) 原告の商標権原告は,以下の商標の商標権者である(以下,各商標権を併せて「本件各商標権 ,各登録商標を併せて「本件各登録商標」という(甲1の1, 」 。)。
2,2の1,2,3の1,2)ア商 標 登 録第1286289号出願年月日昭和48年7月5日登録年月日昭和52年7月20日商品及び役務の区分第20類指 定 商 品クッション,マットレス商品及び役務の区分第22類指 定 商 品ハンモック商品及び役務の区分第24類指 定 商 品布製身の回り品,毛布商品及び役務の区分第25類指 定 商 品被服登 録 商 標別紙商標目録記載1のとおり(以下「本件登録商標1」といい,その商標権を「本件商標権1」という )。
イ商 標 登 録第1456098号出願年月日昭和50年1月17日登録年月日昭和56年2月27日商品及び役務の区分第10類指 定 商 品医療用手袋商品及び役務の区分第16類指 定 商 品紙製幼児用おしめ商品及び役務の区分第17類指 定 商 品絶縁手袋商品及び役務の区分第20類指 定 商 品クッション,マットレス商品及び役務の区分第21類指 定 商 品家事用手袋商品及び役務の区分第22類指 定 商 品ハンモック商品及び役務の区分第24類指 定 商 品布団カバー,毛布,布製身の回り品商品及び役務の区分第25類指 定 商 品洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,襟巻き,靴下,ゲートル,ショール,スカーフ,足袋,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,ヘルメット,帽子登 録 商 標別紙商標目録記載2のとおり(以下「本件登録商標2」といい,その商標権を「本件商標権2」という )。
ウ商 標 登 録第4057070号出願年月日平成5年12月2日登録年月日平成9年9月19日商品及び役務の区分第25類指 定 商 品洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャッ,,,,,, プ ヘルメット 帽子 ガーター 靴下止め ズボンつりバンド,ベルト,靴類( 靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引 「き手・靴びょう・靴保護金具」を除く,げた,草履類,。)運動用特殊衣服,運動用特殊靴登 録 商 標別紙商標目録記載3のとおり(以下「本件登録商標3」といい,その商標権を「本件商標権3」という )。
(3) 被告の行為被告は,平成20年3月ころから同年6月16日ころまでの間,別紙商品目録の被告標章欄記載の各被告標章を付した同目録の品番欄及び種類欄記載の本件各商品を,同目録記載のとおり,株式会社ノアワールド又は株式会社ウイング・ビートへ販売した。
被告が販売した本件各商品を,別紙商品目録の商品番号欄記載の番号に従い 「本件商品1」ないし「本件商品16」という。 ,(4) 被告標章1及び2は,本件登録商標1ないし3とそれぞれ同一又は類似する。
3争点(1) 被告の行為が真正商品の並行輸入として商標権侵害の実質的違法性を欠くといえるか(争点1)(2) 被告の過失(争点2)(3) 損害額(争点3)第3争点に関する当事者の主張1争点1(被告の行為が真正商品の並行輸入として商標権侵害の実質的違法性を欠くといえるか)について(1) 被告の主張被告は,海外で製造された真正な製品を国内の総代理店等による輸入経路を経ずに輸入しこれを国内の業者に販売する,いわゆる並行輸入業者であるところ,以下のように,本件各商品は真正な並行輸入品であり,商標権侵害の実質的違法性を欠くものである。
ア原告は,本件各登録商標のフィリピン共和国(以下「フィリピン」という )における商標権者でもある。フィリピンの会社であるヘインズブラ 。
ンズ・フィリピン・インコーポレーテッド(以下「ヘインズブランズ・フィリピン」という )は,原告の関連会社であり,原告とヘインズブラン 。
ズ・フィリピンは,共に米国の会社であるヘインズブランズ・インコーポレーテッド(以下「HBI」という )の100%子会社である。 。
フィリピンの会社であるスポーツコネクション・フィリピン・インコーポレーテッド(以下「スポーツコネクション」という )は,下記エ及び。
オのように,ヘインズブランズ・フィリピンから,フィリピンにおける本件各登録商標の使用を許諾されており,本件各商品はスポーツコネクションが当該許諾に基づき製造したものである。
したがって,本件各商品は,原告と親会社を同じくし原告と同視し得るヘインズブランズ・フィリピンから本件各登録商標の使用許諾を受けたスポーツコネクションが製造した商品であるから,被告標章は,原告から使用許諾を受けた者により,又は原告が使用許諾をすることを認めた者から使用許諾を受けた者により,本件各商品に適法に付されたものであり,本件各商品は真正な商品である。
イ本件各登録商標のフィリピンにおける商標権者と日本における商標権者は共に原告である。
ウ本件各登録商標のフィリピン及び日本の商標権者は共に原告である以上,その品質管理は両国において同様の基準に基づいてなされているはずであり,又はそれが十分可能であるというべきところ,本件各商品は原告の関連会社であるヘインズブランズ・フィリピンから使用許諾を受けたスポーツコネクションが製造した商品であるから,本件各商品が輸入されることによって,本件各登録商標を付した商品の品質,信用を害する結果が生じることはない。
エスポーツコネクションは本件各登録商標の使用を許諾されていること(ア) 乙15のライセンス契約書が示すとおり,スポーツコネクションは,ヘインズブランズ・フィリピンとの間で平成19年1月1日付けのライセンス契約を締結しており,ヘインズブランズ・フィリピンより,Champion製品のフィリピンにおけるライセンシーとして本件各登録商標を付した商品を含むChampion製品を製造,販売することにつき許諾を得ている。
加えて,当該ライセンス契約の当事者であるスポーツコネクションの代表者であるA(通称A。以下「A」という )が,スポーツコネクシ 。
ョンがヘインズブランズ・フィリピンとの間でライセンス契約を締結していることを宣誓の上で供述していること(乙32 ,ヘインズブラン)ズ・フィリピン自身が,メールや文書においてスポーツコネクションがライセンシーであることを認めていること(乙33〜35 ,テストマ)ーケティングと称してスポーツコネクションの製造,販売を容認しながらライセンス契約は締結していないという原告の主張は到底信用できるものではないこと等にかんがみれば,スポーツコネクションとヘインズブランズ・フィリピンとの間で上記ライセンス契約が締結されたことは明らかである。
(イ) 原告は,テストマーケティングと称してスポーツコネクションがChampion製品を製造,販売することを容認していたと主張するところ,ライセンス契約としては異例ともいえる1年という短い契約期間であること,また,ライセンス契約は契約期間が終了した後,通常半年程度の猶予期間を設けるが,それを前提とすると乙15のライセンス契約は平成20年6月末日まで効力を有することとなり,この期間が原告の主張するテストマーケティングの期間とも一致することから,乙15のライセンス契約書が,原告のいうテストマーケティングの内容を記載した契約書であると考えるのが自然である。
オ本件各商品はスポーツコネクションにより適法に製造されたものであること(ア) 本件商品1〜4の流通経路本件商品1〜4は,そのデザイン及び製造についてHBIの承認を得た後,スポーツコネクションが製造工場に指定した中華人民共和国(以下「中国」という )の会社であるニンポウ・ダウェイ・コーポレーシ 。
ョン・リミテッド(以下「ニンポウ・ダウェイ」という )により製造。
され,スポーツコネクションから出荷することを許諾された中国の会社であるニンポウ・チンチー・チーシュ・カイファ・チュ・フイシン・トレード・コーポレーション・リミテッド(以下「ニンポウ・チンチー」という )が被告に卸し,輸入されたものである。 。
(イ) 本件商品5及び13の流通経路本件商品5及び13は,そのデザイン及び製造についてHBIの承認を得た後,スポーツコネクションが製造工場に指定した中国の会社であるシンファ・チャンタイ・ガーメント・コーポレーション・リミテッド(以下「シンファ・チャンタイ」という )により製造され,スポーツ 。
コネクションから出荷することを許諾された中国の会社であるニンポウ・チアンイン・インポート・アンド・エクスポート・コーポレーション(「」。), ・リミテッド以下ニンポウ・チアンインというが被告に卸し輸入されたものである。
(ウ) 本件商品6〜12,14〜16の流通経路本件商品6〜12,14〜16は,そのデザイン及び製造についてHBIの承認を得た後,スポーツコネクションが製造工場に指定した中国の会社であるタイチョウ・チンイン・ガーメント・コーポレーション・(「」。), リミテッド以下タイチョウ・チンインというにより製造されスポーツコネクションから出荷することを許諾されたニンポウ・チアンインが被告に卸し,輸入されたものである。
(エ) 本件各商品は,その売買に係る納品書上,スポーツコネクションからフィリピンの百貨店であるティオン・サン・ハリソン(以下「ティオン・サン」という )へ譲渡され,ティオン・サンからニンポウ・チンチ 。
ー又はニンポウ・チアンインを通じて被告が輸入したことになっているが,上記(ア)〜(ウ)のとおりの流通経路で被告が輸入したものである。
被告は,本件各商品を輸入する都度,請求書や出荷証明書等を入手しており,当初から本件各商品自体の実際の流通経路と納品書によって示される流通経路が異なることを認識していたが,本件各商品の取引にスポーツコネクションが関係していることをヘインズブランズ・フィリピンやHBIの関連会社に知られることに嫌悪感を示したAより,スポーツコネクションの社名が表示された請求書等を証拠として提出することを差し控えるよう要請を受けたことから,本件各商品の流通経路として納品書によって示される上記の流通経路を主張してきた。その後,Aが提出を了承したことから,第9回弁論準備手続において陳述した平成21年11月27日付け準備書面( )により,流通経路の主張を上記(ア)〜7(ウ)のように変更した。
本件各商品の流通経路について,納品書上の流通経路が主張立証されれば,フィリピンにおけるライセンシーであるスポーツコネクションが標章を付した製品が,最終的に本件各商品として並行輸入されたといえる。仮に納品書上の流通経路を立証できないとしても,本件では,商品そのものの流通経路が立証できれば物の同一性の主張立証には十分である。この場合に,売買契約がどの当事者間で成立しているのかは物の同一性を判断するに当たっての付随的な事情にすぎず,商品の流通経路が明確になっているのであれば,これに加えて法律上の権利関係を別途主張立証する必要はないはずである。
(2) 原告の主張アスポーツコネクションは本件各登録商標について使用許諾を受けた者ではない。
(ア) ヘインズブランズ・フィリピンは,本件各登録商標の使用に関してスポーツコネクションとの間でライセンス契約を結んだことはなく,スポーツコネクションは,ヘインズブランズ・フィリピンとの間のライセンス契約により本件各登録商標の使用許諾を受けた者ではない。
乙15には,ライセンス契約において通常定められる対象商品,製造地,販売地,品質管理等の内容に関する規定が存在せず,これを根拠とする被告の主張は認められない。
また,被告がライセンス契約書であると主張する乙15は,原本が確認できない上,1頁,26頁,27頁以外の頁は提出されていない。また,26頁に記載された文字の位置が不自然であるなど,複数の書面を切り貼りして作成された書面であることを疑わせる点がある。
さらに,乙15の1頁冒頭部分にはヘインズブランズ・フィリピンの所在地が,また,26頁には同社の送付先が 「 送付先省略 」と記載 ,〈〉されているが ヘインズブランズ・フィリピンの住所は 一貫して住 , ,「〈所省略 」であり,乙15記載の住所はヘインズブランズ・フィリピン 〉の住所であったことはない。ライセンス契約という重要な契約を締結するに当たり,自社の住所地の記載を誤ったまま契約を締結することなど通常あり得ないことであり,上記のように誤った住所が記載されていることは,乙15がヘインズブランズ・フィリピンにより締結されたライセンス契約書ではないことを明確に示すものである。
以上のとおり,乙15はヘインズブランズ・フィリピンとスポーツコネクションとの間のライセンス契約書の一部ではなく,偽造された文書である。
(イ) 平成18年(2006年)2月,原告の前の商標権者であるサラ・リー・グローバル・ファイナンス・エルエルシーの関連会社サラ・リー・フィリピン・インコーポレーテッド(以下「サラ・リー・フィリピン」という )の社員であったB(以下「B」という )は,そのような権 。 。
限がないにもかかわらず,スポーツコネクションをChampion製品のディストリビューター・ライセンシーとして指名する旨のレター(乙12)を無断で配布した。サラ・リー・グローバル・ファイナンス・エルエルシーからChampionブランドのビジネスが切り離されて原告が設立された後,原告は,スポーツコネクションが無権限で本件各登録商標を付した製品を製造,販売するのを中止させるため,直ちに関連会社であるヘインズブランズ・フィリピンを通じて交渉に入り,その結果,スポーツコネクションは,平成19年(2007年)9月20日に製造を中止し,平成20年(2008年)6月末日をもって,本件各登録商標を付した在庫商品の販売を中止することに同意した。したがって,原告は,同期日までの間,スポーツコネクションが本件各登録商標を付した製品を販売することをやむを得ず容認したものである(以下,このことを「テストマーケティング」という。。)このように,スポーツコネクションは,いわば原告との和解により,本件各登録商標を付した製品を製造,販売していたのであって,原告又はヘインズブランズ・フィリピンとスポーツコネクションとの間にライセンス契約が締結されたことはない。
もっとも,原告は無条件にテストマーケティングを認めていたわけではなく,原告がライセンシーに本件各登録商標の使用を許諾するときと同様に,ロゴの形状,色彩,字体,サイズ等を厳格に指定してこれをスポーツコネクションに遵守させていたのであり,商品のデザインについてもスポーツコネクションはあらかじめヘインズブランズ・フィリピンから承認を得ていた。本件各商品は,後記イのように,スポーツコネクションがテストマーケティングとして製造した商品ですらない,全くの偽造品である。
イ本件各商品はスポーツコネクションによって製造されたものではない。
(ア) 本件商品1〜4は,原告が承認していない仕様の商品であり,使用されているロゴの使用態様も原告が許諾したものではなく,その商標(被) 。, 告標章 はスポーツコネクションによって付されたものではない また, , 原告が 本件商品5〜16をスポーツコネクションに確認させたところスポーツコネクションの代表者は,いずれもスポーツコネクションの製造した商品ではないと断定しており,使用されているロゴは原告の定める基準に照らして粗悪であり,その形状等も真正品の仕様と異なっている。
よって,スポーツコネクションが本件各登録商標を付した商品をテストマーケティングとして販売していた時期にかかわらず,本件各商品はスポーツコネクションが製造したものではない。
(イ) 被告は本件各商品のデザイン及び製造についてHBIの承認を得たと主張するが,HBIは本件各商品のいずれについても仕様,デザインを承認していない。HBIが承認した証拠として被告が提出した乙25の1〜16には,承認者として正式な会社名,担当者名は記載されておらず,署名もされていないのであり,原告又はヘインズブランズ・フィリピンにおいてデザイン等の承認に用いられている文書ではない。
また,被告は,スポーツコネクションが,ニンポウ・ダウェイ,シンファ・チャンタイ及びタイチョウ・チンインを本件各商品の製造工場に指定したと主張するが,これらの法人はいずれも原告又はヘインズブラ, 。 ンズ・フィリピンにおいて認定 承認された供給者でも製造者でもないしたがって,仮にスポーツコネクションがこれらの工場に本件各商品の製造を委託したとしても,フィリピンにおける商標権者である原告の承認を得ずに行われたものであるから,本件各商品がスポーツコネクションによって適法に製造された商品ということはできない。
(ウ) 被告は,従前,本件各商品の流通経路として,スポーツコネクションからティオン・サンへ譲渡され,ティオン・サンからニンポウ・チンチー又はニンポウ・チアンインを通じて被告が輸入したと主張していたが,ティオン・サンは本件各商品の売買に何ら関与しておらず,被告の従前の流通経路の主張は認められない。
被告は,本件各商品そのものの流通経路の主張を変更した上で,商品そのものの流通経路が明確になっているのであれば,これに加えて法律上の権利関係を別途主張立証する必要はないと主張するが,法律上の流通経路と実際の商品の流通経路が無関係であるということは通常は考えられず,飽くまで法律上の流通経路に基づいて実際の商品が流通するのが原則というべきである。もっとも,法律上の流通経路と実際の商品そのものの流通経路が異なる場合が存在することは否定できないが,その場合でも両者には何らかの関連があるのが通常である。
被告は,法律上の流通経路の主張として,なお従前の商品そのものの流通経路の主張を維持しているが,被告の主張する法律上の流通経路に挙げられているティオン・サンは本件各商品の売買に関与していない以上,実際の商品そのものの流通経路についての被告の主張も破綻しているといわざるを得ない。
2争点2(被告の過失)について(1) 被告の主張仮に本件各商品が適法な並行輸入に該当しないとしても,被告が適法な並行輸入であると信じたことに過失はない。
被告が本件の取引開始時に入手したのはライセンス契約書の一部の写し(乙15)ではあるが,ライセンス契約を締結している立場の者は,その秘, , 密保持義務により ライセンス契約の重要な部分であるライセンス対象製品製造地,販売地などの条項について,写しの交付のような形で第三者に開示することはあり得ず,乙15が契約書の一部分の写しであることは何ら不自然ではない。
また,被告代表者は,フィリピン国内においてスポーツコネクションが製造する真正製品が広く販売されている実態を実際に見たり,サラ・リー・フィリピンからの手紙(乙12)等で確認した上で,スポーツコネクションと取引することを決意したものであり,さらに,本件各商品の輸入の際には流通経路に係るインボイス等の書類をすべて確認していた。
以上のように,被告は,並行輸入業者としてなし得る最大限の注意を払って本件各商品を輸入したのであって,適法な並行輸入と信じたことにつき過失はない。
(2) 原告の主張被告は,並行輸入を行う者として当然行うべき製造地等の重要な条件の確認を行わず,取引開始時に入手したと主張するライセンス契約書(乙15)等の真贋についても確認せず,ライセンス契約の重要な条件についても把握していなかったばかりか,納品書上の流通経路と実際の商品の流通経路が全く異なることについても何ら調査を行わないままあえて取引を行ったもので, ,(, あるから 必要な調査を尽くしたとは到底いえず 過失推定 商標法39条特許法103条)が覆ることはない。
3争点3(損害額)について(1) 原告の主張ア株式会社栃木銀行作成の計算書(乙44の1〜6)記載の為替レートに基づき計算すると,被告は,本件商品1〜16の販売により,別紙損害計算表記載のとおり,1290万3998円の利益を得ており,原告は同額の損害を被った(商標法38条2項 。)被告の商標権侵害行為により,原告は提訴による弁護士報酬の支払を余儀なくされ,また,被告が訴訟提起から1年以上経過した後に本件各商品の流通経路につき新たな主張,立証を追加したため,原告は新たな宣誓供述書の作成等を強いられることになるなど,被告の不当な訴訟活動により多額の弁護士費用が必要となったことを考慮すると,弁護士費用として258万円を下らない損害を被った。
したがって,被告の侵害行為による原告の損害の額は,1548万3998円を下らない。
イ被告が粗利益の額から控除すべきと主張する代金支払の手数料の額が7万2151円であること,輸入代行業者への委託料の額が117万0822円であることは否認する。
被告が粗利益の額から控除すべきと主張する輸入に係る関税の額が199万3200円,消費税及び地方消費税の額が101万3800円であることは不知。関税,消費税及び地方消費税の額の算出方法についての被告の主張は認める。
(2) 被告の主張ア原告は,本件各商品の販売総額から購入総額を控除した粗利益を被告が本件各商品を販売したことによって得た利益であると主張するが,商標法38条2項は民法709条逸失利益に関する推定規定であるところ,民法上,逸失利益観念されるのは純利益であること等からすれば,商標法38条2項の「利益」とは粗利益から売上高を得るための経費を控除した額と解すべきである。
被告は,本件各商品を輸入,販売するために以下で述べる各経費を支出しており,被告が本件各商品を販売したことによって得た利益の額は,別紙利益計算表及び下記イ〜エのとおり,粗利益の額1290万3998円から売上高を得るための経費合計424万9973円を控除した865万4025円を上回るものではない。
また,原告は,被告の不当な訴訟活動により多額の弁護士費用が必要となったと主張するが,そのような事情はない。
イ商品の購入代金支払の手数料被告は,本件各商品の代金支払の手数料として,下表のとおり,合計7万2151円を支払った(乙45の1〜4 。)なお,乙40の1,2には,それぞれ本件各商品以外のマスキングされた商品が含まれているが,乙40の1,2の商品の代金支払に掛かる手数料等(乙45の1記載の金額)は,1回の支払に掛かる手数料等(マスキングされた商品が含まれているか否かに関らず金額は同額)であり,商品ごとの金額を算出できないものである。
支払対象商品に係る請求書該当する手数料等請求書手数料等の金額乙40の1 乙45の1 ●(省略)●円乙40の2乙41の1 乙45の2 ● 省略 ●円 ()乙41の2 乙45の3 ● 省略 ●円 ()乙41の3乙41の4 乙45の4 ● 省略 ●円 ()合計 円 72,151ウ輸入代行業者への委託料等被告は,本件各商品の輸入に際し,その通関及びそれに付随する手続を輸入代行業者に委託し,その委託手数料,手続等に要する費用及び輸入代行業者が立て替えて支払った費用(以下「委託料等」という )として,。
, ()。 下表のとおり 合計117万0822円を支払った 乙46の1〜10なお,乙46の1,2記載の金額は,乙40の1,2記載の商品の輸入に係る委託料等である。また,乙40の1,2にはそれぞれ本件各商品以外のマスキングされた商品が含まれているが,乙40の1,2記載の商品に係る委託料等(乙46の1,2記載の金額)のうち,搬出手数料,通関料及び輸入貨物取扱料金についてはいずれも1回の手続ごとの金額,CYチャージ,CFSチャージ及びコンテナー運搬料はコンテナーごとに算出される金額であり,改品検査料は検査の有無又はその方法により費用の有無又は金額が定まるものであって,マスキングされた商品を除く本件各商。, 品のみを取り扱った場合でも同額の費用を請求されるものである そして乙46の1,2記載の金額からマスキングされた商品に係る委託料等を抽出することは不可能であるから,乙46の1,2記載の金額からマスキングされた商品に係る委託料等を控除すべきではない。
対象商品に係る該当する請求書及び立替委託料等の金額委託料等の算出方法請求書金明細書乙40の1乙46の1● 省略 ●円乙46の1の金額 ()乙40の2乙46の2● 省略 ●円乙46の2の金額 ()乙41の1乙46の3,4● 省略 ●円乙46の3,4の合計額から ()税金立替分を控除した金額乙41の2乙46の5,6● 省略 ●円乙46の5,6の合計額から ()税金立替分を控除した金額乙41の3乙46の7,8● 省略 ●円乙46の7,8の合計額から ()税金立替分を控除した金額乙41の4乙46の9,10● 省略 ●円乙46の9,10の合計額か ()ら税金立替分及び本件各商品以外の商品に係る部分(● 省(略 ●円:金額の算出方法は下)記のとおり )を控除した金額。
合計円 1,170,822乙41の4記載の商品に係る委託料等(乙46の9,10記載の金額)については,乙46の9の費用の中に本件各商品以外の商品(インボイスNO.「ZLY-WB-0837B」分)に係る委託料等が含まれていたため(乙46の9の備考欄参照 ,乙46の9,10記載の金額の合計から,?乙46の )10記載の税金立替金額及び?本件各商品以外の商品に係る委託料等の金額を控除した金額が,乙41の4に記載された本件各商品に係る委託料等の金額である。乙46の9記載の費用のうち,インボイスNo.「ZLY-WB-0837B」の商品に係る委託料等の明細は以下のとおりである。
() なお,乙46の9記載の費用のうち 「No.11配送トラック賃 , ● 省略円」はトラック1台に掛かる費用であり,積載量によって按分できる類 ●の費用ではないため,乙41の4の商品の委託料等の金額から控除すべきではない。
摘要 金額 No.1輸入通関料一般 ● 省略 ●円 ()ID No.216471929213輸入貨物取扱料(1/2) ● 省略 ●円 ()1000枚分9バン出し入出庫料 ● 省略 ●円 ()()(「」 ) 180016.0M3ZLY-WB-0837B 単価 × 分10貨物はい替仕訳料 ● 省略 ●円 ()(単価)×(」分) 50016.0M3ZLY-WB-0837B 「上記輸入貨物取扱料に係る消費税● 省略 ●円 ()× % 10,0005合計円 57,300エ輸入に係る関税,消費税及び地方消費税被告は,以下の各表のとおり,本件各商品の輸入に係る関税として,199万3200円,本件各商品の輸入に係る消費税及び地方消費税として101万3800円を支払った(乙47の1〜10 。)各表のマスキング商品(乙40の1,2記載の商品のうち本件各商品以。。) 外のもので同号証においてマスキング処理をされている商品 以下同じに係る税金の額の算出方法は,別紙マスキング商品に係る税金の算出方法記載のとおりである。
(ア) 関税対象商品に係る請求書 該当する納付書・領収証 マスキング商品に係 本件各商品に係る関税(商品)書 る関税乙40の1乙47の1● 省略 ●円● 省略 ●円 ()()乙40の2乙47の3● 省略 ●円● 省略 ●円 ()()乙41の1乙47の5● 省略 ●● 省略 ●円 ()()乙41の2乙47の6● 省略 ●● 省略 ●円 ()()乙41の3乙47の7● 省略 ●● 省略 ●円 ()()乙41の4乙47の9● 省略 ●● 省略 ●円 ()()合計円 1,993,200(イ) 消費税及び地方消費税対象商品に係る請求書 該当する納付書 マスキング商品に係る消費税 本件各商品に係る消費(商品)・領収証書・地方消費税税・地方消費税乙40の1乙47の2● 省略 ●円● 省略 ●円 () ()(,, うち 消費税● 省略 ●円 ()地方消費税● 省略 ●円) ()乙40の2乙47の4● 省略 ●円● 省略 ●円 () ()(,, うち 消費税● 省略 ●円 ()地方消費税● 省略 ●円) ()乙41の1乙47の5● 省略 ●● 省略 ●円 () ()乙41の2乙47の6● 省略 ●● 省略 ●円 () ()乙41の3乙47の8● 省略 ●● 省略 ●円 () ()乙41の4乙47の10● 省略 ●● 省略 ●円 () ()合計円 1,013,800第4当裁判所の判断1本件各商標権の侵害について前記第2の2(4)のとおり,被告標章1及び2は,本件登録商標1〜3とそれぞれ同一又は類似している(争いのない事実 。そして,被告標章が付され )た本件各商品は別紙商品目録の種類欄記載のとおり被服,洋服であり,本件各商標権の指定商品と同一又は類似する。
したがって,前記第2の2(3)記載の被告の行為は,指定商品又は指定商品に類似する商品について本件各登録商標に類似する標章を使用するものであって,本件各商標権を侵害するものとみなされる(商標法37条1号 。)また,被告は,本訴訟提起前に被告の行為が商標法等に違反する旨の警告を受けながら何らの対応をせず,また,本訴訟提起後も,主張を変更するまでの1年3か月以上の間,本件各商品の流通経路につき実際の流通経路と異なることを認識しながら納品書上の流通経路のみを主張していたこと(甲20の1,2,顕著な事実,弁論の全趣旨)等からすると,被告には上記商標権侵害のおそれがあると認めるのが相当である。
2争点1(被告の行為が真正商品の並行輸入として商標権侵害の実質的違法性を欠くといえるか)について(1) 被告は,本件各商品は,フィリピンの商標権者でもある原告と親会社を同じくし原告と同視し得るヘインズブランズ・フィリピンから本件各登録商標の使用を許諾されたスポーツコネクションが,当該許諾に基づき製造した真正商品であり,並行輸入した真正商品の販売として被告の行為は商標権侵害の実質的違法性を欠くと主張する。
(2) しかしながら,被告が主張の根拠とするヘインズブランズ・フィリピンとスポーツコネクションとの間の契約書(乙15はその写しとして提出されている )は原本の存在が確認できない上,乙15の記載内容からすると原本 。
は少なくとも27頁の契約書にスケジュールA及びBが別紙として添付されているものと認められるのに対し,書証として提出された乙15は契約書の1頁,26頁,27頁のコピーのみであり,しかも26頁は頁の上下に不自然な余白があるなど,その体裁自体から原本をそのままコピーしたものとは認め難く,何らかの作為が加えられた可能性も否定できないのであって,当該契約書は原本の存在自体に疑義があるといわざるを得ない。
また,乙15には,ヘインズブランズ・フィリピンが原告との間のライセンス契約に基づくスケジュールAに記載された商標のライセンシーであること,ヘインズブランズ・フィリピンは当該商標をサブライセンスする権利を有すること,ヘインズブランズ・フィリピンはスポーツコネクションに対して以下の条項に基づき当該商標を使用する権利を許諾することに同意していること等が記載されているものの,上記のスケジュールAは添付されておらず,ヘインズブランズ・フィリピンがいかなる商標のライセンシーであるのかは不明である上,そもそも,ヘインズブランズ・フィリピンがスポーツコネクションに対して商標の使用を許諾する旨の条項は記載されておらず,ライセンス契約の対象となる登録商標や商品,製造地,販売地等の条件も不明というほかない。
したがって,乙15によっては,ヘインズブランズ・フィリピンがスポーツコネクションに対して本件各登録商標の使用を許諾したとの事実を認めることはできない。
(3) 被告は,ヘインズブランズ・フィリピンがスポーツコネクションに対して本件各登録商標の使用を許諾した事実を根拠付けるものとして,ほかにも証拠を提出するが,以下のように,いずれも被告の主張を裏付けるに足りるものではない。
乙12(サラ・リー・フィリピンが取引先にあてた2006年2月1日付け書簡)には,サラ・リー・フィリピンが,平成18年(2006年)2月1日をもって,スポーツコネクションをフィリピンにおけるチャンピオン製品の販売権者かつライセンシーとして指名した旨の記載が認められるが,ライセンスの対象となる商標等が特定されおらず,また,被告が主張するヘインズブランズ・フィリピンとスポーツコネクションとの間の契約に関するものではないことから,被告主張の事実を裏付けるものではない。
乙31(ヘインズブランズ・フィリピンがスポーツコネクションにあてた2007年5月29日付け書簡)には,ヘインズブランズ・フィリピンがスポーツコネクションに対して平成18年(2006年)8月から12月の期間のロイヤリティーの支払を請求する旨の記載が認められるが,このロイヤリティーがいかなる契約に基づく何に対するものなのかは不明であり,被告主張の事実を裏付けるものではない。
乙32(Aの2009年11月7日付け宣誓供述書)には,ヘインズブランズ・フィリピンとスポーツコネクションがライセンス契約を締結した旨の記載が認められる。しかし,乙32には,ライセンス契約の具体的な内容については記載がなく,また,契約締結の根拠として添付された別紙契約書は乙15であり,乙15からライセンス契約の具体的な内容を認めることができないことは上記(2)で説示したとおりであるから,乙32によっても被告主張の事実を裏付けることはできない。
乙33(BがAにあてた2007年3月30日付け電子メールを再送信した同年4月3日付け電子メール)には,ヘインズブランズ・フィリピンとスポーツコネクションとの間でライセンス契約の締結に向けた交渉が行われている旨の記載が認められるが,当該ライセンス契約の内容は不明である上,送信日が平成19年(2007年)3月30日であるため,被告が同年1月1日に締結されたと主張するライセンス契約を根拠付けるものとは認め難い。
乙34(Aが被告代表取締役Cにあてた2008年4月16日付け電子メール)には,スポーツコネクションに関するライセンス契約のコピーを送付する旨の記載が認められるが,その契約書自体は添付されておらず契約の具体的な内容は不明であるから,被告主張の事実を裏付けるものではない。
乙35(ヘインズブランズ・フィリピンがスポーツコネクションにあてた2007年5月24日付け書簡)には,スポーツコネクションがヘインズブランズ・フィリピンのライセンシーである旨の記載が認められるが,具体的なライセンス契約の内容は不明である上,同文書で使用されたレターヘッドがヘインズブランズ・フィリピンのものと認めるに足りる的確な証拠はない。また,乙35のD名義の署名は同人の真正な署名(甲35)と相違していることからすると,同文書は偽造されたものであるとの疑念があり,その記載を採用することはできない。
そして,ほかにヘインズブランズ・フィリピンがスポーツコネクションに対して本件各登録商標の使用を許諾したとの事実を認めるに足りる証拠はない。
(4) したがって,ヘインズブランズ・フィリピンがスポーツコネクションに対し本件各登録商標の使用を許諾したことが認められない以上,被告が輸入,販売した本件各商品が真正な商品であるということはできず,被告の行為が商標権侵害の実質的違法性を欠くとすることはできない。
3争点2(被告の過失)について上記1のとおり,被告の行為は本件各登録商標についての原告の商標権を侵害するものであるから,商標法39条,特許法103条により,被告には侵害の行為について過失があったものと推定される。
被告は,取引開始時にスポーツコネクションの使用を許諾したライセンス契約書の一部(乙15)やスポーツコネクションをフィリピンにおけるチャンピ(), オン製品のライセンシーに指定した旨の文書の写し 乙12 を確認したことフィリピン国内でスポーツコネクションが製造するChampion製品が販売されていることを確認したこと,本件各商品の輸入の際に流通経路に係るインボイス等の書類を確認していたことから,並行輸入業者としてなし得る最大限の注意を払って本件各商品を輸入しており,適法な並行輸入と信じたことにつき過失はないと主張する。
しかし,上記2の(2),(3)で説示したように,乙15及び乙12には,ライセンス契約の具体的な内容は記載されておらず,スポーツコネクションが本件各登録商標につき使用の許諾を受けているか否かを確認することはできないものであるにもかかわらず,被告はその原本を確認することすらしておらず,また,フィリピンにおける商標権者でもある原告にスポーツコネクションに対する使用許諾の有無を確認したことを認めるに足りる証拠もないことからすると,被告が,本件各商品が真正な商品か否かにつき十分な調査を尽くしたということはできない。
したがって,被告の過失の推定を覆すに足りる事情があると認めることはできない。
4争点3(損害額)について(1) 以上のとおり,被告による本件各商品の販売は本件各商標権を侵害するものであり,かつ,過失の推定を覆すに足りる事情は認められないことから,, 。 被告は 本件各商標権の侵害により原告が被った損害を賠償する責任を負うそして,被告がその侵害行為により受けた利益の額が原告が被った損害(逸失利益)の額と推定される(商標法38条2項 。)前記第2の2(3)のとおり,被告は,平成20年3月ころから同年6月16日ころまでの間,本件商品1〜16を別紙商品目録記載のとおり,株式会社ノアワールド又は株式会社ウイング・ビートへ販売した。本件各商品の輸入,販売により,被告が得た粗利益の額は1290万3998円である(争いのない事実 。)被告は,この粗利益の額から売上高を得るために要した経費を控除した額が本件各商品の販売により被告が受けた利益であり,これが原告の被った損害の額であると解すべきとして,購入代金支払の手数料等の費用の控除を主張するので,以下検討する。
(2) 本件各商品の購入代金支払の手数料証拠(乙41の1〜3,45の2,3)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件商品5〜14(ただし,本件商品12については,5月12日分の販売に係るもの。以下同じ )の輸入について信用状(L/C)決済をする 。
ために,代金支払手数料(信用状(L/C)開設手数料及び通知手数料)と, 。 して 株式会社栃木銀行に合計3万6151円を支払ったことが認められる当該手数料は,本件商品5〜14を輸入,販売するために直接必要な費用と認められるから,被告の利益を算定する際に粗利益の額から控除すべき費用といえる。
被告は,乙45の1の請求書に係る代金支払手数料も控除すべきであると主張するが,この手数料は乙40の1,2に記載された商品の輸入に関するもので本件各商品以外の商品の輸入に関する手数料も含まれているところ,被告が主張するように当該代金支払手数料が1回の支払ごとに掛かる手数料であるならば,本件各商品を輸入しなかったとしても生じた費用といえ,本件各商品を輸入,販売するために直接必要な費用であったと認めることはできないから,粗利益の額から控除すべき費用とは認められない。
また,被告は,乙45の4の請求書に係る代金支払手数料は乙41の4記載の本件各商品の輸入に要した費用であると主張するが,乙41の4の「L/C?」欄は空白であり,乙45の4の請求書には乙41の4に記載された商品の輸入に関するものであることを示す記載はなく,ほかに乙45の4の請求書が乙41の4記載の本件各商品の輸入に関する代金支払手数料であることを認めるに足りる証拠もないから,被告の主張を採用することはできない。
したがって,本件各商品の輸入,販売に係る費用として,上記粗利益の額から控除すべき代金支払手数料の額は3万6151円であると認められる。
(3) 輸入代行業者への委託料等証拠(乙41の1〜3,46の3〜8)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件商品5〜14(ただし,本件商品12については,5月12日分の販売に係るもの。以下同じ )の輸入に際し,通関及びそれに付随する手続 。
を輸入代行業者である松菱運輸株式会社へ委託し,同社に対し委託料等として合計75万3632円を支払ったことが認められる。当該委託料等は,本件商品5〜14を輸入,販売するために直接必要な費用と認められるから,被告の利益を算定する際に粗利益の額から控除すべき費用といえる。
被告は,乙46の1,2の請求書に係る委託料等も控除すべきであると主張するが,この委託料等は乙40の1,2に記載された商品の輸入に関するもので本件各商品以外の商品の輸入に関する委託料等も含まれているところ,被告の主張によれば本件各商品を輸入しなかったとしても生じた費用といえ,本件各商品を輸入,販売するために直接必要な費用であったと認めることはできないから,粗利益の額から控除すべき費用とは認められない。
また,被告は,乙46の9,10の請求書,明細書に係る委託料等については,この委託料等に乙41の4に記載された本件各商品以外の商品の輸入に関する委託料等も含まれているため,本件各商品以外の商品に係る委託料等の金額等を控除した金額を粗利益の額から控除すべきと主張するが,被告が主張する本件各商品以外の商品に係る委託料等の明細についてはこれを認めるに足りる証拠はない。そうすると,乙46の9,10の請求書,明細書に係る委託料等のうち,乙41の4に記載された本件各商品の輸入のために要した金額は不明というほかなく,ほかに乙41の4に記載された本件各商品を輸入するため要した委託料等の金額を認めるに足りる証拠はないから,被告の主張を採用することはできない。
したがって,本件各商品の輸入,販売に係る費用として,上記粗利益の額から控除すべき委託料等の額は75万3632円であると認められる。
(4) 輸入に係る関税,消費税及び地方消費税証拠(乙41の1〜4,47の5〜10,48の3〜6)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件商品5〜16の輸入に際し,関税として合計149万1600円,消費税及び地方消費税として合計75万8500円を支払ったことが認められる。これらの税金は,本件商品5〜16を輸入,販売するために直接必要な費用と認められるから,被告の利益を算定する際に粗利益の額から控除すべき費用といえる。
また,別紙マスキング商品に係る税金の算出方法記載1の,外国から商品を輸入する際に掛かる関税,消費税及び地方消費税の額の算出方法については当事者間に争いはなく,また,証拠(乙52,53)及び弁論の全趣旨によれば,同別紙記載2の,外国から輸入した商品の申告価格(CIF)の算出方法は妥当なものと認められる。そして,証拠(乙40の1,2,48の1,2,50の1,2,51の1,2)によれば,同別紙記載3のとおり,() () 乙40の1記載のマスキング商品に係る関税は円,消費税は ● 省略 ●● 省略円,地方消費税は円と認められ,乙40の2記載のマスキング商 ● ● 省略 ● ()品に係る関税は円,消費税は円,地方消費税は円 ● 省略 ●● 省略 ●● 省略 ● () () ()と認められる。
そして,証拠(乙40の1,2,47の1〜4,48の1,2)により認められる乙40の1,2記載の商品を輸入する際に掛かる関税の額(乙40の1:円,乙40の2:円 ,消費税及び地方消費税の合● 省略 ● ● 省略 ● () () )計額(乙40の1:円,乙40の2:円)から,上記認定● 省略 ●● 省略 ● () ()の乙40の1,2のマスキング商品に係る関税,消費税及び地方消費税の額● 省 を控除すると,被告は,本件商品1〜4の輸入に際し,関税として合計 (円,消費税及び地方消費税として合計円を支払ったことが認め 略 ● ● 省略 ● ) ()られる。これらの税金は,本件商品1〜4を輸入,販売するために直接必要な費用と認められるから,被告の利益を算定する際に粗利益の額から控除すべき費用といえる。
したがって,本件各商品の輸入,販売に係る費用として,上記粗利益の額から控除すべき関税の額は199万3200円,消費税及び地方消費税の額は101万3800円であると認められる。
(5) 以上より,本件各商品の輸入,販売に係る費用として,被告の利益を算定する際に上記粗利益の額1290万3998円から控除すべき費用の合計は379万6783円(=代金支払手数料3万6151円+輸入代行業者への委託料等75万3632円+関税199万3200円+消費税及び地方消費税101万3800円)であり,被告が本件各商品の輸入,販売により受けた利益の額は910万7215円(=粗利益の額1290万3998円-控除すべき費用379万6783円)と認められるから,被告の本件商標権侵害行為により原告が被った損害(逸失利益)の額は910万7215円と推定される(商標法38条2項 。)(6) 弁護士費用原告は,弁護士を選任して本件訴訟を追行していることろ,本件事案の性質や難易度,上記(5)の認容額,被告の訴訟追行態度(本件各商品の真実の流通経路を訴訟提起以前から認識していながら真実と異なる主張を行い,訴訟提起から1年3か月以上経過した後にその主張を変更し,原告に新たな主張,立証を強いたこと等 ,その他諸般の事情を考慮すると,その弁護士費 )用のうち150万円を被告の本件商標権侵害の不法行為と相当因果関係のある損害と認める。
(7) まとめ以上より,被告の本件商標権侵害行為により原告が被った損害額は,合計1060万7215円となる。
5結論よって,原告の請求は,主文第1ないし第3項の限度で理由があるからこの限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 岡本岳
裁判官 坂本康博
裁判官 寺田利彦