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関連審決 無効2003-35279
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成16行ケ256審決取消請求事件 判例 商標
平成20行ケ10089審決取消請求事件 判例 商標
平成13行ケ47審決取消請求事件 判例 商標
平成12行ケ10審決取消請求事件 判例 商標
平成14行ケ88審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 指定商品 /  周知性 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項11号 /  4条1項15号 /  ただ乗り(フリーライド) /  類似性(類否判断) /  不使用 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  国内 /  不使用取消審判 /  類似商標 /  継続 /  非類似 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10418号 審決取消請求事件
原告 メルク・ホエイ株式会社
訴訟代理人弁理士 岸田正行
同 水野勝文
被告 三共株式会社
訴訟代理人弁理士 浅村皓
同 浅村肇
同 小池恒明
同 岩井秀生
同 宇佐美利二
同 江成文恵
同 坂倉夏子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2005/10/26
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求める裁判
1 原告 (1) 特許庁が無効2003-35279号事件について平成17年3月9日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,「メバスタン」の片仮名文字と「MEVASTAN」の欧文字とを二段に横書きしてなり,指定商品を第5類「薬剤」とする,登録第4553203号商標(平成13年3月16日出願,平成14年3月22日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である(なお,原告は,平成17年1月7日,本件商標の商標権者であった株式会社模範薬品研究所を合併し,本件商標に係る商標権を承継したものである。)。
被告は,平成15年7月4日,本件商標の商標登録を無効にすることについて審判を請求し,特許庁は,これを無効2003-35279号事件として審理した結果,平成17年3月9日,「登録第4553203号の登録を無効とする。」との審決をし,同月22日,その謄本を原告に送達した。
2 審決の理由 別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件商標は,@「メバスチン」の片仮名文字を横書きしてなる登録第2112919号商標(以下「引用E商標」という。)及び「MEVASTIN」の欧文字を横書きしてなる登録第2112920号商標(以下「引用F商標」という。引用E,F商標は,ともに昭和62年6月12日出願され,平成元年2月21日設定登録されたものであり,いずれもその指定商品に「薬剤」を含む。)と,称呼において相紛らわしい類似の商標であり,指定商品も同一又は類似の商品であるから商標法4条1項11号に該当し,A被告が使用する,「メバロチン」の片仮名文字を横書きしてなる登録第2049558号商標(昭和63年5月26日設定登録。以下「引用A商標」という。),「MEVALOTIN」の欧文字を横書きしてなる登録第2069627号商標(昭和63年8月29日設定登録。以下「引用B商標」という。),「MEVALOTIN」の文字を含む審決書別掲(1)の構成よりなる登録第2448922号商標(平成4年8月31日設定登録。以下「引用C商標」という。)及び「MEVALOTIN」の文字を含む同別掲(2)の構成よりなる登録第2448923号商標(平成4年8月31日設定登録。以下「引用D商標」という。引用AないしD商標は,いずれもその指定商品に「薬剤」を含む。)は,医薬品を取り扱う業界における取引者及び需要者の間で周知であり,本件商標は,引用AないしD商標と語頭の2文字又は2音が共通し,外観上及び称呼上近似したものであるから,本件商標を指定商品である「薬剤」に使用した場合,これに接する取引者及び需要者は,その商品が被告の業務に係る商品であるかのごとく誤認し,その出所につき混同を生じさせるおそれがあり,商標法4条1項15号に該当する,とするものである。
審決が,上記Aの結論を導く過程において,引用AないしD商標の周知性について認定したところは,次のとおりであり,審決のこの認定判断については,原告も争っていない(原告第1準備書面2頁)。
「引用A商標ないし引用D商標は,請求人の業務に係る商品「高脂血症治療剤」(動脈硬化治療剤)に使用され,平成1年の発売以来,その売上高は,当初の70億円(市場占有率17.5%)から,その売上を延ばし,売出しからの僅か11年間で,1兆59億円にも達している。
さらに,上記商品の宣伝広告費も,発売以来の14年間で4億3000万円以上である。
その他にも,「メバロチン」に関して,株式会社医薬広告社を通じて平成7年4月から同14年10月までの広告出稿一覧表,協和企画株式会社を通じて1995年度から2001年度にかけての広告出稿一覧表及び株式会社東宣を通じて1995年度から2002年度にかけての広告出稿一覧表のとおり広告している事実がある。
してみれば,請求人の業務に係る商品「高脂血症治療剤」に使用する引用A商標ないし引用D商標は,本件商標の出願時及び登録査定時のいずれの時点においても,医師,薬剤師,病院等の医薬品購入担当者,医薬品取扱業者などのこの種商品を取り扱う業界における取引者及び需要者の間において,広く知られていたものと認められる。」(審決書13頁18〜34行。証拠の引用部分は省略。以下,引用AないしD商標を使用した被告の業務に係る商品「高脂血症治療剤」(動脈硬化治療剤)を「被告商品」ということがある。)
原告主張の取消事由の要点
審決は,本件商標と引用E,F商標との類似性についての判断(商標法4条1項11号該当性の判断)並びに本件商標と引用AないしD商標との混同を生ずるおそれについての判断(商標法4条1項15号該当性の判断)を誤ったものであって,この誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として取り消されるべきである。
1 本件商標と引用E,F商標との類似性(商標法4条1項11号該当性)について (1) 本件商標からは「メバスタン」の,引用E,F商標からは「メバスチン」の称呼がそれぞれ生じるものであるところ,本件商標と引用E,F商標とは第4音の「タ」と「チ」の差異により明確に聴別されるものである。
審決は,差異音が同行に属する近似音であることから,この差異が両称呼の全体に及ぼす影響は小さいものであって,両称呼を一連に称呼するときは,それぞれの全体の語感,語調が近似したものとなり,彼此聴き誤るおそれがある(審決書12頁27行〜30行)としている。
しかし,差異音が同行に属する音であるという理由のみをもって,差異音を近似音であると断定するのは,短絡的であり,誤りである。
すなわち,差異音「タ」と「チ」は,前者が破裂音,後者は破擦音であって,ともに明瞭に聴取される音であり,「タ」は口を開いて舌尖を前歯のもとに密着して破裂させて発する無声子音「t」と母音「a」との結合した音であるのに対し,「チ」は口を狭めて舌尖と上前歯との間で形成される無声の破擦音「t,」と母音「i」との結合した音であり,両者は発音方法において顕著な差異を有する。また,相違音「タ」(ta)と「チ」(chi)はその母音「a」と「i」が非近似母音である。加えて,前音の「ス」が摩擦音,後音の「ン」が通鼻音でともに弱音のため,「タ」と「チ」の差異音は一層明瞭に聴取されるので,「メバスタン」と「メバスチン」の音調の差異は明らかである。したがって,両商標は称呼上明らかに非類似の商標である。
また,特許庁の審査基準によれば,相違する音が語頭音でないがその音質(例えば,相違する1音が共に同行音であるが,その母音が近似しないとき),音調(例えば,相違する音の部分に強めるアクセントがあるとき)上著しい差異があるときは,称呼非類似としており,本件商標と引用E,F商標は,審査基準に照らしても称呼上明らかに非類似の商標である。
(2) 商標の類否判断においては,取引の実情に基づいて具体的な誤認混同を生ずる虞があるか否かによって類否が決せられるべきものであることは最高裁判所昭和43年2月27日判決(民集22巻2号399頁)が示すとおりである。
ア 原告が本件商標を使用している医薬品「HMG-CoA還元酵素阻害剤(高脂血症治療剤)メバスタン」(以下「原告商品」ということがある。)は,医家向けの医薬品であり,一般大衆薬ではない。したがって,本件商標に接する取引者・需要者は医師,薬剤師,病院等の医薬品購入担当者,医薬品取扱業者などで,医師や薬剤師は医薬品の取引に相当の注意力を有する専門家であるから,末端の消費者を対象とする商品,あるいは一般に市販される薬剤とは異なり,混同されるおそれはそもそも少ないものである。そうすると,本件商標と引用E,F商標のように明確な差異を有する両商標が,細心の注意力をもって医薬品を選別する医師,薬剤師に彼此混同されるおそれは皆無である。
イ 一方,引用E,F商標は,実際には使用されていないと考えられる。引用E,F商標が「薬剤」について使用されていないのであれば,現時点ではもとより,本件商標の登録査定時においても,本件商標と引用E,F商標とが現実に彼此相紛れることはあり得ない。これに対し,本件商標は,設定登録後,平成15年7月から実際に「高脂血症治療剤」の商標として,善意,平穏かつ公然に,継続して使用されてきたものであり,本件商標の登録を無効にしてまで守るべき保護法益はない。
この点について,審決は,引用E,F商標の使用の蓋然性をいうが,将来生ずるか否か不確定な事由を根拠とするものであって,前記最高裁判決の趣旨に反する。
2 本件商標と引用AないしD商標との混同を生ずるおそれ(商標法4条1項15号該当性)について 審決は,本件商標を「薬剤」に使用した場合,その商品が,被告の業務に係る商品であるかのごとく誤認し,出所につき混同を生じさせるおそれがあると判断する理由として,@本件商標と引用AないしD商標は,取引者及び需要者の注意を惹く特徴的な部分である「MEVA」「メバ」の2文字及び「メバ」の音部分を共通にする外観上及び称呼上近似したものであること,A本件商標がいわゆる後発医薬品(ジェネリック医薬品)であり,ジェネリック医薬品の銘柄名が類似することが多く,誤処方,誤調剤を誘発するおそれがあるとの医師の見解が発表されていることを挙げているが,次のとおり誤りである。
(1)「MEVA」「メバ」の2文字及び「メバ」の音部分は特徴的な部分とはいえない。
ア 平成元年当時,「メバポン」なる薬剤が存在していたほか,被告商品の発売日である平成元年10月2日以前に,同じく「高脂血症治療剤」であり,かつ,世界的に広く知られている「メバコール(MEVACOR)」なる医薬品が存在していた。これは,アメリカの「メルク社」が1987年(昭和62年)に開発したものであり,我が国では販売されていないが,日経産業新聞等にも掲載され,我が国においても周知・著名であった医薬品である。このように,「メバロチン」の発売前に,すでに「MEVA」「メバ」の2文字及び「メバ」の音部分をもつ高脂血症治療剤が存在していたのであるから,当該部分は「高脂血症治療剤」の商標において特徴的な部分とはいえず,これに独創性を認めることもできない。
イ 本件商標からは「メバスタン」の,引用AないしD商標からは「メバロチン」のそれぞれ称呼を生じるので,両商標は第3音,第4音において「スタ」と「ロチ」の2音が相違する。この相違する2音のうち「ス」(su)と「ロ」(ro)は,母音が異なり,また,子音「s」と「r」においても,前者が歯音の摩擦音であるに対し,後者は歯茎音の弾音であって,両者はその発音位置,発音方法が異なる非近似音である。また,「タ」(ta)と「チ」(chi)は,子音がともに50音図の同行に属しているものの,母音の「a」と「i」が明瞭に隔たる音色を備えた非近似音である。
よって,両商標を全体として称呼した場合,「スタ」と「ロチ」の非近似音2音の差異により全体の音感は全く異なるものであるから,両商標は称呼上近似する商標とはいえない。特に,両者は共に語尾に位置する「ン」を含めて5音中,2音をも異にする。しかも,語尾音「ン」はそもそも明確に聴取されにくい音であるばかりでなく,薬剤の商標の接尾語としてありふれて採択・使用されており,医薬品の商標の識別上,極めて弱い音である。したがって,両者の差異は実質上「メバスタ」と「メバロチ」の4音中における2音の差異となり,これが称呼全体に与える影響は極めて大きいものである。両商標は称呼上も明らかに非類似の商標である。
また,外観上「メバスタン」「MEVASTAN」と「メバロチン」「MEVALOTIN」とは,「メバ」「MEVA」と「ン」「N」の文字を共通にしているが,「スタ」「STA」と「ロチ」「LOTI」の文字は全く異なるので,外観上も両者を見誤ることは無く,混同を生じるおそれは全くない。
(2) ジェネリック医薬品の銘柄名と誤処方,誤調剤を誘発するおそれの有無について ア 本件商標の使用に係る原告商品は,医家向けの薬剤で,被告商品のジェネリック医薬品である。よって,両商標を使用した商品の取引者,需要者は医師,薬剤師,病院等の医薬品購入担当者,医薬品取扱業者などであるところ,医師や薬剤師は医薬品の取引に相当の注意力を有する専門家であるから,末端の消費者を対象とする商品,あるいは一般に市販される薬剤とは異なり,混同されるおそれはそもそも少ないものである。したがって,本件商標と引用AないしD商標のごとく明確な差異を有する両商標が,細心の注意力をもって医薬品を選別する医師・薬剤師等に混同されるおそれは皆無である。
また,医薬品の商標は厚生労働省の承認を要する関係上,今後本件商標が「高脂血症治療剤」以外の薬剤に使用されることはないから,本件商標が医家向け専用の医薬品以外の医薬品に使用されることもないので,上記のような状況が今後変化するおそれもない。
かかる状況下において,引用AないしD商標が医師,薬剤師などの取引者及び需要者の間において広く知られているとしても,医薬の専門家たる取引者,需要者が本件商標の語頭の「メバ」のみを見て「メバロチン」と認識することは通常あり得ないことである。これを見過って誤処方,誤調剤が行われるというのは,甚だしいケアレスミスであって,もはや商標の類否の問題ではない。
現実の取引において,少なくとも本件商標について,引用AないしD商標と混同されたという事実はいまだ聞かない(甲45号証)。審決のいうように,ジェネリック医薬品の銘柄名が類似することが多く,誤処方,誤調剤を誘発するおそれがあるとの医師の見解が発表されているとしても,それは一部の医師の単なる見解にすぎず,必ずしも現実と一致するものではない。
イ 以上のように,原告商品は被告商品のジェネリック医薬品であるという特別な事情を斟酌したとしても,本件商標と引用AないしD商標とが商品の出所の混同を生じさせるおそれはない。 (3) 医薬品の商標については,その薬品の一般名称,原料,成分,効能,効果,対象となる患部などを表す文字から採択した造語,あるいはこれらの文字の略称と,語尾に「チン」「ニン」「ミン」「トン」「タン」,あるいは「ン」などを組み合わせたものが非常に多い。本件商標の「メバスタン」も「メバロン酸」の合成阻害作用と一般名「プラバスタチンナトリウム」から採択されたのであり,医薬品の商標採択上の一般的手法ともいえるネーミングであって,引用AないしD商標にただ乗りする意図などないことは明白である。
そして,本件商標は,設定登録後,平成15年7月から実際に「高脂血症治療剤」の商標として,善意,平穏かつ公然に,継続して使用されてきたものであるから,権利の安定上からも,商標権者の保護からも,ひいては法目的たる流通秩序の維持といった産業政策上の観点からも,本件商標が引用AないしD商標と商品の混同を生じるおそれがあるとするのは誤りである。
被告の反論の要点
審決の認定判断に誤りはなく,原告の主張はいずれも理由がない。
1 本件商標と引用E,F商標との類似性(商標法4条1項11号該当性)について (1) 原告は「タ」と「チ」の音質の違いのみをことさら強調し,当該差異音が発音方法において顕著な差異を有し,第3音「ス」と第5音「ン」の性質から,該差異音の音調の差異が明らかである旨主張するが,これは称呼全体での比較を無視した主張である。なぜなら,「メバスタン」「メバスチン」のそれぞれの称呼を全体に一気に称呼する場合には,両称呼共,第2音目の「バ」の部分に若干強めのアクセントをおいて発音するのが自然であり,語頭部の共通音「メバ」が強い印象を与えること,第3音目「ス」においても共通していること,第4音目の差異音「タ」と「チ」は,それぞれの語の中間に位置する音であり,特に強いアクセントがおかれる訳でもないこと,また,当該差異音は,薬剤の語尾としてありふれている「タン」及び「チン」の一部であり,聴者において「タン」と「チン」は相似た印象を受けること等を考え合わせれば,両商標を一連に称呼する場合は,当該差異は聴者においては比較的印象が弱く,全体の語調・語感において相似た印象を受け,彼此聞き誤るおそれの充分にある互いに相紛らわしい称呼と断ずるのが相当であるからである。
また,原告が引用する審査基準の部分は,称呼が類似すると判断され得る場合であっても,音質,音調上著しい差異があり,その全体の音感を異にするときは,非類似と判断される場合があるという趣旨であり,審決の判断は審査基準に即したものであって誤りはない。
(2) 取引の実情について ア 原告は,本件商標に接する取引者・需要者は,医師,薬剤師など医薬品の取引に相当の注意力を有する専門家であるから,本件商標と引用E,F商標が混同されるおそれは皆無である旨主張する。
しかしながら,現に医師,薬剤師の間で薬剤の取り違えが社会問題化している実情があるのであって,医師,薬剤師は一般需要者に比してより高い注意力を有しているという一般論のみをもって,混同のおそれが皆無であるとする原告の主張は,現在の薬剤をとりまく取引の実情を全く考慮しておらず,失当というべきである。
イ 商標法4条1項11号は,先願登録商標の使用の有無を問わず,同一又は類似の商品又は役務について使用される後願の同一又は類似商標を排除する旨規定しているのであり,たとえ将来不使用取消審判において引用E,F商標が取り消されたとしても,当該商標権は,当該審判の予告登録日に消滅したものとみなされるだけであって,本件商標の登録査定時に引用E,F商標が有効に存在していたことに変わりはないから,本件商標が商標法4条1項11号に反して登録されたとする審決の判断に誤りはない。
また,仮に本件商標の登録査定時に引用E,F商標が不使用であったとしても,今後使用する蓋然性を否定し得るものではないから,本件商標と引用E,F商標とが現実に彼此相紛れることはあり得ないとする原告の主張は失当である。
なお,本件商標は,引用AないしD商標の著名性にただ乗りする形でネーミングされ,使用されてきたのであるから,本件商標を善意に使用してきたとする原告の主張は到底受け入れられない。
2 本件商標と引用AないしD商標との混同を生ずるおそれ(商標法4条1項15号該当性)について (1) 「MEVA」「メバ」の2文字及び「メバ」の音部分が特徴的であることについて ア 原告が主張する「メバポン」は,メバロチンが発売された翌年の平成2年にはすでに販売が中止もしくは終了していた。また,米国メルク社が商品化した「MEVACOR」(一般名ロバスタチン)は,被告の有する特許権との関係から,我が国において発売されることがなかったものであり,我が国では僅かにニュースとして伝えられていたにすぎないから,これによって引用AないしD商標の「MEVA」「メバ」部分の独創性,特徴性に影響を及ぼさない。また,その他にも語頭に「メバ」を含み,指定商品を薬剤とする商標が出願されていた例があるが,平成12年以降に「メバロチン」の名声にただ乗りすべく大量に出願されるに至るまでの間においては,使用されていなかったり消滅した商標があったにとどまる。
イ 原告は,本件商標と引用AないしD商標とが非類似であると主張するが,商標法4条1項15号で要件とされる商標の類似性とは,引用商標の著名性・独創性,需要者の共通性,その他取引の実情等と共に総合勘案して混同を生ずるか否かを判断する一つの要素(最判平成12年7月11日民集54巻6号1848頁)であるにすぎず,商標法4条1項11号における商標の類似性と同程度のものでなければならないことはなく,混同を惹起する程度に両商標が類似していれば足ると解釈すべきである。
両商標は,これを一連に称呼する場合,全体の語調・語感において相似た印象を受け,彼此聞き誤るおそれの充分にある互いに相紛らわしい称呼であり,外観上も近似したものといえるのであって,外観上及び称呼上近似したものということができるとした審決の判断に誤りはない。
(2) 薬剤の取り違え,その他の取引の実情について 職務上高度の注意力をもった医師・薬剤師をもってしても,医療機関の患者数の急増等により,特に最近は,医療用医薬品の誤投薬などによる医療事故が多発しており,時には患者を死に至らしめる深刻な薬剤の誤投与・誤調剤について社会問題化しているのは明白な事実である。
そして,そのような誤投薬・誤調剤の原因の大きな一つに,薬剤の類似名称が挙げられており,取り違えられた薬剤名の事例中の全てが,その名称の語頭あるいは語尾のいずれか一方が同一文字からなる名称である。ことに本件商標と引用AないしD商標のような,名称の語頭と語尾とが同一文字からなる名称である場合の取り違え事例は,61事例中の39事例であり,かかる事例が過半数以上の大多数を占めているのである。
このような問題がありながら,医師・薬剤師においては高い注意力があるという一般論をもって混同の生ずるおそれはないとする原告の主張は,現在の医薬品業界を取り巻く真の実情を完全に無視した主張である。
(3) 本件商標が「メバロン酸」の合成阻害作用(正しくは,数あるコレステロールの合成段階の一段階である「メバロン酸」への合成段階を助ける酵素の働きを阻害する作用)と一般名「プラバスタチンナトリウム」から採択されたとする原告の主張は,被告の独創的な名称採択を完全に模倣したことを自認しているに等しいものであり,原告のそのような名称採択方法は,後発品命名の際の一手法として挙げられている「先発品に近似させる手法」に則って採択されたものにほかならない。
当裁判所の判断
1 本件商標と引用E,F商標との類似性(商標法4条1項11号該当性)について (1) 本件商標からは「メバスタン」の,引用E,F商標からは「メバスチン」の称呼がそれぞれ生じることは明らかであり,両称呼は,語頭からの3音「メバス」と語尾音の「ン」が一致しており,第4音目の「タ」と「チ」の差異があるにすぎない。このように,本件商標と引用E,F商標とは,その称呼を構成する5音のうち4音において共通しており,とりわけ,語頭部分に位置している「メバス」の3音は,一般に語頭の音の方が聴者に比較的強い印象を与えるものであることからすると,取引者,需要者の注意を惹き,記憶に残りやすい音であるということができる。
原告は,差異音「タ」と「チ」は発音方法において顕著な差異を有し,その前音の「ス」と後音の「ン」がともに弱音のため,「タ」と「チ」の差異音が一層明瞭に聴取され,「メバスタン」と「メバスチン」の音調の差異は明らかであり,両商標は称呼非類似であると主張する。
しかしながら,本件商標も引用E,F商標も,商標全体を一連のものとして発音した場合には,いずれも「バ」の部分にアクセントがおかれて発音されるのが自然であって,差異音である「タ」と「チ」に特にアクセントがおかれるとは考えにくく,また,一般に語尾に位置する「タン」「チン」の部分の語調は弱く発音され,語頭に位置する「メバ」の部分に比して印象の弱い部分ということができる。したがって,両商標を一連のものとして称呼する場合,聴者には差異音「タ」「チ」からは特に強い印象を受けないままに,聞き流してしまう可能性が高く,また,商標全体の音感においても極めて近似した印象を与えるものであり,本件商標と引用E,F商標とは,外観上の相違点(「タ」と「チ」,「TAN」と「TIN」の「I」の相違。なお,両商標とも特定の意味を持たない造語であるから,本件においては観念の対比は意味を持たない。)を考慮しても,称呼において互いに相紛らわしい類似した商標ということができる。
なお,原告は,特許庁の審査基準を引用して,本件商標と引用E,F商標は,審査基準に照らしても称呼上明らかに非類似の商標であると主張する。しかし,当該審査基準の趣旨はともかくとして,審査基準は審査官による審査の際の一つの目安,指針を示したものにすぎず,商標の類否はあくまで個々具体的に判断すべきものであるから,審査基準に依拠してその類否を云々する原告の主張は失当である。
(2) 原告は,本件商標に接する取引者・需要者は医師,薬剤師等の医薬品の取引に相当の注意力を有する専門家であるから,混同されるおそれは皆無であると主張する。
確かに,医師や薬剤師は,医薬の知識を有する専門家であり,薬剤の投与等について高度の注意力が要求されている者であるが,だからといって,およそ薬剤の取引者・需要者である医師,薬剤師など医療関係者であれば,一般的に薬剤について混同するおそれはないということはできないのであって,現に,後記のとおり,我が国の医療現場で,医師や薬剤師等の医療関係者において,名称の似た薬剤を誤って処方してしまう例が報告され,その数も決して少なくないことが認められる(乙52号証の1,53号証の1,2)のであるから,原告の主張は採用することができない。
(3) 原告は,引用E,F商標が現実に使用されていないことを前提に,本件商標と相紛れることはない旨主張する。
しかしながら,商標法4条1項11号にいう先願の「他人の登録商標」は,後願の同一又は類似商標の出願時(査定時)において,現に有効に存在しているものであれば足り,現実に使用されていることを必要とするものではない。仮に,現実の使用の有無を取引の実情として考慮するとしても,その使用の蓋然性が否定できない以上,類似の商標を同一又は類似の商品に使用した場合に商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは否定できず,商標法4条1項11号該当性を否定することはできないというべきであり,本件において,少なくとも引用E,F商標の使用の蓋然性を否定する事情を認めるに足りる証拠はないから,原告の主張は理由がない。
また,原告は,本件商標は設定登録後善意,平穏かつ公然に,継続して使用されてきており,本件商標の登録を無効にしてまで守るべき保護法益はないとも主張するが,商標法4条1項11号の規定を無視するものであって,採用の限りでない。
(4) 以上のとおり,本件商標と引用E,F商標とは類似の商標であって,その指定商品も同一又は類似の商品であるから,本件商標は商標法4条1項11号に該当し,その登録が無効であるとの審決の判断に誤りはない。
2 本件商標と引用AないしD商標との混同を生ずるおそれ(商標法4条1項15号該当性)について 前記1で検討したとおり,本件商標は,商標法4条1項11号に該当し,その登録を無効とすべきものであるから,同条項15号該当性の点について判断するまでもなく,原告の取消事由は理由がないことになるが,念のため,同条項15号該当性の点についても検討することとする。
(1) 引用AないしD商標の周知著名性について 被告が高脂血症治療剤に使用する引用AないしD商標が,本件商標の出願時及び登録査定時において,医薬品を取り扱う業界における取引者,需要者の間において広く知られていたとの審決の認定については,原告も争っていないことは前記のとおりである。
引用AないしD商標の周知性の程度について補足すれば,次のとおりである。
被告が引用AないしD商標を使用している高脂血症治療剤(メバロチン)は,発売2年目の平成2年に動脈硬化用剤市場で58.1%(第1位)のシェアを獲得し,翌平成3年には高脂血症用剤市場でのシェアが68.4%(第1位)となり,平成5年以降は医薬品単品として1000億円を超える売上を達成し,その後も平成14年度まで,高脂血症用剤市場では第1位のシェアと年間1000億円以上の売上を継続的に維持しており,また,医療関係の雑誌等においても継続的な宣伝広告がされている(乙11〜16号証,29〜31号証)。
以上からすると,引用AないしD商標は,本件商標の出願時(平成13年3月16日)及び登録査定時(平成14年3月ころ)において,医師,薬剤師,病院等の医薬品購入担当者などの医薬品取扱業者等の取引者・需要者の間で,極めて著名であることが認められる。また,高脂血症治療剤は患者が長期間反復服用するものであり,患者は服用している医薬品の名称を医師あるいは調剤薬局等を通じて知ることが多いことからすれば,引用AないしD商標は,被告商品を服用する患者の間においても広く知られているものと認めることができる。
(2) 本件商標と引用AないしD商標の類似性について ア 本件商標からは「メバスタン」の称呼が生じ,引用AないしD商標からは「メバロチン」の称呼が生ずることは明らかであり,本件商標と引用AないしD商標とは,その構成文字及び称呼において,「MEVA」「メバ」の文字及び「メバ」の音と「N」「ン」の文字及び「ン」の音を共通にし,「STA」「スタ」と「LOTI」「ロチ」の文字及び音において差異を有するものである。
両商標の称呼を対比すると,本件商標と引用AないしD商標とは,その称呼を構成する5音のうち3音において共通しており,とりわけ,語頭部分に位置している「メバ」の2音は,一般に語頭の音の方が聴者に比較的強い印象を与えるものであることからすると,取引者・需要者の注意を惹き,記憶に残りやすい音であるということができる。また,本件商標も引用AないしD商標も,商標全体を一連のものとして発音した場合には,いずれも「バ」の部分にアクセントがおかれて発音されるのが自然であって,差異音である「ス」「タ」と「ロ」「チ」に特にアクセントがおかれるとは考えにくく,この点からも,語頭部分にある「メバ」の2音が取引者・需要者の注意を惹く特徴的な部分とみることができる。このように,本件商標と引用AないしD商標は,語頭部分に位置して印象の強い特徴的な部分である「メバ」の2音が共通している。
また,両商標の外観を対比すると,欧文字部分においては,本件商標(8文字構成)と引用BないしD商標(9文字構成)は,6文字が共通し,その配列も,語頭の「MEVA」,語尾の「T」「N」が共通し,片仮名文字部分においては,本件商標と引用A商標は,ともに5文字からなり,そのうち語頭の「メバ」と語尾の「ン」の3文字が共通しており,本件商標と引用AないしD商標は,その外観においても相当程度の共通点が存在している。
イ 原告は,被告商品が販売される前から語頭に「メバ」の2文字及び音を含む薬剤が存在したなどとして,「メバ」の2文字及び音が引用AないしD商標の特徴的な部分であるとはいえない旨主張する。
確かに「医薬品・医療衛生用品価格表」平成元年度版(乙26,32号証)には「メバポン」という消炎・鎮痛剤が記載されているが,その平成2年度版以降のもの(乙26号証)には,その記載がなくなっていること,また,昭和62年10月から平成2年12月にかけて,日経産業新聞,日経金融新聞,化学工業日報,日刊薬業等に,米国内において商品名を「メバコール」とする高脂血症剤が米国メルク社から販売され,収益を挙げていることなどを紹介する記事が掲載されている(甲36の3〜35)が,この「メバコール」は日本国内では販売されなかったこと(弁論の全趣旨),被告商品の発売以前に,語頭に「メバ」の文字を含む薬剤を指定商品とする商標出願がされていたこと(甲48ないし50号証の各1,2)が認められる。
上記認定したところによれば,「メバポン」の販売期間は極めて短かったことが推認され,「メバコール」は我が国においては医薬品として販売されていなかったものであり,また,上記認定の語頭に「メバ」の文字を含む商標出願に係る医薬品が実際にどの程度流通していたか明らかでないことからすれば,引用AないしD商標の構成中の「メバ」の2文字及び音が,その各出願当時,医薬品の商標としてありふれたものであったと認めることはできず,引用AないしD商標のうち,「メバ」の文字及び音部分が,取引者・需要者の注意を惹く特徴的な部分に当たるとみることを妨げるべき事情は見当たらないのであって,原告の主張は採用することができない。
ウ 以上のとおり,本件商標と引用AないしD商標は,その称呼及び外観において相当程度の類似性を有するということができる。
(3) 商品間の関連性,取引者・需要者の共通性について 原告が本件商標を使用している高脂血症治療剤メバスタン(原告商品)は,被告が引用AないしD商標を使用している高脂血症治療剤メバロチン(被告商品)と同一の有効成分を含有し,同一の効能・効果を奏する,いわゆる後発医薬品(ジェネリック医薬品)であり,このことは原告も認めるところである。したがって,両商品の性質,用途,目的における関連性は極めて高いということができ,これを取り扱う医療機関や薬局も共通し,これらの薬剤を投与される患者層も共通にすることが認められる。
(4) 混同を生ずるおそれについて 以上のような引用AないしD商標の周知著名性,それらと本件商標との類似性の程度,両商標に係る商品の関連性の強さ,取引者・需要者の共通性を考慮すれば,原告が本件商標を高脂血症治療剤に使用した場合,その取引者・需要者において,これを被告あるいは被告と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と混同するおそれがある,というべきである。
原告は,原告商品及び被告商品の取引者・需要者は医師,薬剤師等の医薬品の取引に相当の注意力を有する専門家であるから,混同されるおそれは皆無であると主張し,医師,薬剤師等による「混同し,誤って使用するおそれはない」旨の証明書(甲45号証の1〜101)を提出する。
確かに,医師や薬剤師は,医薬の知識を有する専門家であって,薬剤の投与等について高度の注意力が要求されている者であり,誤処方,誤調剤のないことが期待されている。しかし,だからといって,およそ薬剤の取引者・需要者である医師,薬剤師など医療関係者であれば,薬剤について混同するおそれはないということはできないのであって,現に,厚生労働省の医療安全対策ネットワーク事業の下で報告されたインシデント事例のうち,医薬品関連情報は,「平成13年10月18日〜同年11月19日報告分」で88件あり,そのうち薬剤名が似ていたことを要因とするものが19件(21.6%)となっており,さらに,「平成13年11月19日〜平成14年3月26日報告分」では179件あり,そのうち薬剤名が似ていたことを要因とするものが34件(19.0%)あったことが報告されていること(乙52号証の1),平成14年11月20日に行われた厚生労働省の医薬品・医療用具等対策部会において,薬剤等に関する事故の原因が話題とされ,医薬品名の類似性に関して,「薬剤師とか医師は,大体頭とおしりの名前を見るのではないかとか,・・・」という指摘がされていること(乙53号証の1),また,平成15年9月18日に行われた同対策部会においては,医薬品について「名称類似によるアクシデント,インシデントが発生しているわけです」など医薬品の名称の類似と医療事故との関係が指摘されており,安全使用推進室長が,「販売名の問題について,先ほど言いましたように医薬品の医療事故関係の問題としていちばんの問題ですので,・・・」と述べていること(乙53号証の2)が認められる。
上記認定したところによれば,医療の現場では,医師や薬剤師等の医療関係者において,名称の似た薬剤を誤って処方する等の例が報告され,その数も決して少なくないのであって,医師や薬剤師が医薬の知識を有する専門家であって,一般に薬剤の投与等について高度の注意力が要求されている者であることを考慮しても,なお,本件商標を使用した高脂血症治療剤を被告あるいは被告と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と混同するおそれがあることを否定することはできない。
原告が提出する前記証明書(甲45号証の1〜101)において,多くの医師や薬剤師等が,医師及び薬剤師並びに患者において,原告商品と被告商品を混同し,誤って使用するおそれはないと考えられる旨を表明しているとしても,本件商標と引用AないしD商標の類似性の程度,引用AないしD商標の周知著名性など前記認定の諸事情を考慮すれば,そのことから直ちに,実際の医療の現場において,医師及び薬剤師並びに患者が,本件商標を使用した高脂血症治療剤を被告あるいは被告と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と混同するおそれがないと断ずることはできない。また,上記証明書を提出した医師らにおいて,これまでに原告商品と被告商品とを実際に誤用した事実がなく,他にも原告商品と被告商品とが誤用された事例が報告されていないとしても,そのことは混同のおそれを否定する事情とならないことはいうまでもない。
なお,原告は,本件商標は,医薬品の商標採択上の一般的手法ともいえるネーミングであって,引用AないしD商標にただ乗りする意図はなく,設定登録後,善意,平穏かつ公然に,継続して使用されてきたものであるから,混同を生じるおそれがあるとするのは誤りであるとも主張しているが,既に検討したとおり,原告が本件商標を高脂血症治療剤に使用した場合,その取引者・需要者において,これを被告あるいは被告と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と混同するおそれがあるというべきであるから,原告の本件商標採択の意図がどうであれ,また,本件商標を設定登録後使用してきたとしても,そのことは本件商標が商標法4条1項15号に該当することを妨げる理由となるものでないことはいうまでもない。
(5) 以上のとおりであるから,原告が本件商標を薬剤,特に高脂血症治療剤に使用した場合,その取引者・需要者において,被告あるいは被告と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と混同するおそれがあるということができるから,本件商標は商標法4条1項15号に該当し,その登録が無効であるとの審決の判断にも誤りはない。
3 以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がなく,その他,審決にこれを取り消すべき誤りは認められない。
よって,原告の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 沖中康人
裁判官 若林辰繁