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関連ワード 識別力 /  包装 /  指定商品 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  類似性(類否判断) /  損害額 /  逸失利益 /  通常使用権 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  国内 /  差止 /  組成した物 / 
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事件 平成 20年 (ワ) 2259号 商標権侵害差止等請求事件
原告ホームランド・ハウスウェアズ ・エルエルシー
同訴訟代理人弁護士松尾眞
同 兼松由 理子
同 岩波修
同 竹村朋子
被告株式会社 河合本店
同訴訟代理人弁護士加 瀬 野忠吉
同 小松 原玲子
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2009/09/17
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1被告は,別紙被告標章目録記載の標章を付した,1台で電気式ミキサー,電気式ジューサー,ミル及びフードプロセッサーの4つの機能を有する調理( ,。) 器具 その容器又は包装に当該標章を付する場合 当該容器又は包装を含むを製造し,譲渡し,引き渡し,譲渡もしくは引渡しのために展示し,又は輸入してはならない。
2被告は,別紙被告標章目録記載の標章を付した,1台で電気式ミキサー,電気式ジューサー,ミル及びフードプロセッサーの4つの機能を有する調理( ,。) 器具 その容器又は包装に当該標章を付する場合 当該容器又は包装を含むを廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,2520万3375円及びこれに対する平成20年23月1日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
4原告のその余の請求を棄却する。
5訴訟費用は,これを3分し,その2を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
6この判決は,1項ないし3項に限り,仮に執行することができる。
, 。 7原告のために この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める
事実及び理由
全容
第1当事者の求めた裁判1原告(1) 主文1項及び2項と同旨(2) 被告は,原告に対し,4375万2500円及びこれに対する平成20年3月1日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(3) 訴訟費用は,被告の負担とする。
(4) 仮執行宣言2被告(1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は,原告の負担とする。
第2事案の概要1前提事実(1) 当事者ア原告原告は,1台で電気式ミキサー,電気式ジューサー,ミル及びフード(「」。) プロセッサーの4つの機能を有する調理器具 以下 原告商品 というを製造し,日本における独占的販売権を与えた訴外株式会社オークローンマーケティング(以下「訴外OLM」という )を通じて販売してい 。
3る株式会社である(弁論の全趣旨 。)イ被告被告は 被服製造及び繊維製品の売買等を主たる業とし インターネッ , ,(。)。 トを通じて雑貨品等の販売も行っている株式会社である 争いがない(2) 本件商標原告は,次の商標権(以下「本件商標権」といい,その登録商標を「本件商標」という )を有している(甲1の1・2 。 。 )登録番号第4901640号出願年月日平成16年9月6日登録年月日平成17年10月14日商品及び役務の区分第7類指定商品家庭用電気ミキサー及びこれらの部品並びに付属品,家庭用電気式ジューサー及びこれらの部品並びに付属品,家庭用食器洗浄機及びこれらの部品並びに付属品,家庭用電気式ワックス磨き機及びこれらの部品並びに付属品,家庭用電気洗濯機及びこれらの部品並びに付属品,家庭用電気掃除機及びこれらの部品並びに付属品,家庭用電気式クラッシャー及びグラインダー及びこれらの部品並びに付属品 家庭用生ごみ 廃 ,(棄物)処理機及びこれらの部品並びに付属品,家庭用調理用電動ナイフ及びこれらの部品並びに付属品 家庭用製粉機 手 ,(動式のものを除く )及びこれらの部品並びに付属品,家庭 。
用電気式泡立て器及びこれらの部品並びに付属品登録商標(標準文字)MAGIC BULLET(3) 被告による被告標章の使用被告は,楽天株式会社等が運営する複数のインターネット上のショッピ(,,), ングサイト楽天市場ビッターズ!ショッピングにおいてYahoo4「雑貨天国」の名称で通信販売業を行っている(楽天株式会社におけるサ, ,)。 イトについては争いがなく その余のサイトについては 弁論の全趣旨平成18年3月から平成20年2月までの間,被告は,別紙被告標章目録記載の標章(以下「被告標章」という )を包装箱及び本体に付した, 。
1台で電気式ミキサー,電気式ジューサー,ミル及びフードプロセッサーの4つの機能を有する調理器具(以下「被告商品」という )を輸入し, 。
「」,(,)。 雑貨天国 において 展示・販売した 甲2の1〜5 弁論の全趣旨2原告の請求原告は,被告に対し,本件商標権に基づき,被告標章を付した被告商品の譲渡等の差止及び廃棄,並びに4375万2500円の損害賠償(民法709条)及びこれに対する平成20年3月1日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めている。
3争点(1) 本件商標と被告標章の類否(争点1)(2) 原告の損害(争点2)第3争点に関する当事者の主張1争点1(本件商標と被告標章の類否)について【原告の主張】以下のとおり,被告標章は,本件商標と称呼及び観念が同一であり,外観においても,欧文字から構成される点で類似しているから,取引の実情も考慮すれば,需要者らにおいて,商品の出所につき誤認混同を生じるおそれが高く,類似性が認められる。
(1) 外観被告標章は,本件商標と同じく「」の英文字から構MAGIC BULLET成されており,表記上の違いは,類似性を否定するものではない。
(2) 称呼5本件商標は 「マジックブレット」と称呼されるところ,被告標章から ,も,同一の称呼が生じる。
(3) 観念本件商標からは 「魔法の弾丸」との観念が生じるところ,被告標章か ,らも,同一の観念が生じる。
(4) 取引の実情原告商品と被告商品は いずれも 1台で電気式ミキサー 電気式ジュー ,,,, , サー ミル及びフードプロセッサーの4つの機能を有する調理器具でありインターネットでの通信販売が行われている。
【被告の主張】本件商標は,標準文字で横一列に「」と記載されていMAGIC BULLETるだけであるが,被告標章は 「G」の部分を他の文字とは色の異なる図柄 ,で大きく表示し,二段書きで記載した構成となっており,その外観が大きく異なるから,類似性が認められない。
2争点2(原告の損害)について【原告の主張】原告の損害は,以下のとおり,合計4375万2500円である。
(1) 逸失利益次のとおり,被告が本件商標権を侵害することによって得た利益は3977万5000円であり,原告の被った損害と推定すべきである(商標法38条2項 。)ア楽天市場分1240万円楽天市場における被告商品の販売台数は1万台を下らないところ,その販売価格は2480円であり,粗利益率は少なくとも50%である。
〔計算式〕2,480×10,000×0.5=12,400,000イビッダーズ分1312万5000円6ビッダーズにおける被告商品の販売台数は1万台を下らないところ,, 。 その販売価格は2625円であり 粗利益率は少なくとも50%である〔計算式〕2,625×10,000×0.5=13,125,000ウ!ショッピング分1425万円Yahoo!ショッピングにおける被告商品の販売台数は1万台を下ら Yahooないところ,その販売価格は2850円であり,粗利益率は少なくとも50%である。
〔計算式〕2,850×10,000×0.5=14,250,000(2) 弁護士費用397万7500円被告の本件商標権侵害行為により原告が支払を余儀なくされた弁護士費用は,上記3977万5000円の1割を下らない。
【被告の主張】(1) 損害の不発生原告は,訴外OLMに本件商標の独占的通常使用権を与え,日本において自ら原告商品を販売していない。
したがって,原告は,本件商標の市場での使用権がなく,原告商品の販売減少による逸失利益観念できない。
(2) 損害額についてア原告の損害と推定されるのは,被告の純利益と解すべきである。
イ被告の利益を算定するにあたっては,別紙一覧表記載の仕入額,輸入諸経費,広告費,人件費を控除すべきである。
ウ弁護士費用は争う。
第4争点に対する判断1争点1(本件商標と被告標章の類否)について(1) 本件商標ア外観7標準文字の欧文字で,横一列に「」と記載したも MAGIC BULLETのである。
称呼本件商標は 「マジックブレット」との称呼を生じる(甲1の2 。 , )ウ観念本件商標からは 「魔法の弾丸」との観念が生じる(争いがない 。 , )エ要部本件商標は,2つの英単語「」と「」とが結合したMAGICBULLET商標であるが,両者の間隔は表記上わずかであり,両者が結びついた言葉として表記されており,また,両者の言葉の有する識別力に特段の違いがあるとはいえないことから,全体が要部であると認められる。
(2) 被告標章ア外観被告標章の外観は,別紙被告標章目録記載のとおりであり,欧文字の「」と「」を,二段書きで記載したものである。
magicBULLETこのうち「g」の文字は,円形状の飾り文字になっており(上記円形は,三つの細長い三角形が渦状に配置されることにより形成されている,上記文字だけが赤色で表記されている(その余は黒色 。また, 。) )「」の各文字は,飾り文字を除き,横幅に対して2倍程度の高さmagicを有する縦長の文字(ゴシック体)で記載され,飾り文字のみ,横幅は他の文字の2倍程度,高さは他の文字と同程度の大きさで記載されている。
一方 「」の各文字(ゴシック体)は 「」の各文字の , ,BULLET magic半分程度の高さで記載されている。
称呼被告標章は 「マジックブレット」との称呼を生じる(甲2の4 。 , )8ウ観念被告標章からは 「魔法の弾丸」との観念が生じる(甲5,6 。 , )エ要部被告標章は,2つの英単語「」と「」とが結合した標magicBULLET章であるが,両者がまとまって記載されており,また,両者の言葉の有する識別力に特段の違いがあるとはいえず,全体が要部であると認められる。
なお,前記アのとおり 「」の「g」が特徴ある形状であるた ,magicめ,需要者の注意を引くが,これだけで独立した識別力を有しているとはいえず,上記認定を左右するには至らない。
(3) 類否判断外観被告標章は,本件商標とは異なって二段書きであり 「」の語,magicについて,小文字で表記され 「g」の文字が赤い円形状の飾り文字に ,,「」 。 なっておりより大きく記載されているという違いがあるBULLETイ称呼及び観念被告標章と本件商標は,称呼及び観念が同一である。
取引の実情(甲2の4・5,甲4)本件商標が原告商品について使用される場合は,被告標章と同一のデザインが用いられている。
そして,原告商品は,被告商品と同じく,1台で電気式ミキサー,電気式ジューサー,ミル及びフードプロセッサーの4つの機能を有する調理器具であり,両者の形態はほぼ同一である。
エ検討被告標章と本件商標は,称呼及び観念が同一であるし,外観も,2つの同じ英単語を欧文字表記した点で共通しており,文字態様やデザイン9の違いは,両者の同一性の認定を妨げるほどのものではない。
そして,上記ウの取引の実情も考慮すれば,被告標章と本件商標は,需要者である一般消費者に,商品の出所につき誤認混同を生じさせるおそれがあり,全体として類似していると認められる。
2争点2(原告の損害)について(1) 逸失利益の発生被告は,本件商標を使用せず原告商品を販売していない原告には,逸失利益は存在しないと主張する。
しかしながら,原告は,本件商標を付した原告商品を製造し,日本において独占的販売権を与えた訴外OLMに原告商品を販売し,訴外OLMが原告商品を日本国内において販売しているのであるから,被告の本件商標権侵害行為により,原告商品の販売数が減少するという不利益を受ける立場にあるといえるのであって,逸失利益は存在する。
(2) 逸失利益の額ア控除すべき費用商標法38条2項にいう「利益の額」とは,純利益ではなく限界利益であると解するのが相当であり,その算定にあたっては,侵害行為に直接必要な変動経費は控除の対象となるが,当該行為をしなくても発生する費用は控除の対象とすべきではない。
そして,被告商品について,仕入額及び輸入諸経費は,商品の数量に応じて変動する経費であって控除の対象となるといえるが,被告は,これに加え,広告費及び人件費も控除の対象となると主張するので,以下検討する。
(ア) 広告費について被告は,平成18年3月から平成19年12月までの間に行った広告について,別紙一覧表「広告費」欄記載の金額を超える広告掲載料10を支払っている(乙4。上記別紙一覧表の広告費は,被告が楽天株式会社に支払った広告料を,被告商品と他の主力商品の売上割合に応じて算出したものである。。)しかしながら,この広告掲載料の支払が,被告商品に係るものであることを認めるに足りる証拠はない。むしろ,楽天株式会社発行の平成18年2月16日付ないし平成20年1月18日付被告宛請求明細書(乙11)をみると,広告掲載料の明細が記載されており,これらのうち「 楽天スーパーポイント明細メール(平成18年1月:7 【 】」0万円,同年2月2件:合計60万円,同年3月4件:合計210万円,同年4月2件:70万円,同年5月2件:70万円,同年6月:25万円,同年8月4件:130万円,同年9月3件:105万円,同年10月3件:90万円「 15,000ショップ突破記念! ,),【大感謝セール】上部枠 (平成18年2月:70万円「 特典付き 」 ),【!春の新作&決算セール】最終処分!決算セール枠 (平成18年2 」月:63万円「!!楽天イーグルス応援!激安 ),GOGOSPECIALダッシュ!安さ爆発応援 (平成18年3月:28万円)というもの 」, 。 は 商品の種類に関係なく支出された広告掲載料であると考えられるまた 「楽天モバイル 特別広告枠(ビューティー「楽天ビューテ , )」,ィーニュース特別広告」という広告は,商品の種類を限定したものであることが推認されるが(美容関連もしくは清掃用品関連の商品と推測される,少なくとも,被告商品(調理器具)の種類とは異な 。)るものと考えられる。そして,被告商品に関連して広告掲載料が支払われたことを窺わせる記載は,上記被告宛請求書(乙11)中には見あたらない。
したがって,別紙一覧表「広告費」欄記載の広告費は,原告商品に係るものであることを証拠上認めることができず,被告の限界利益を11算定するにあたり控除すべき費用とは認められない。
(イ) 人件費について被告の人件費の推移(乙14の1〜4)をみても,被告商品の販売期間について,特に人件費が増加した事実は認められない。被告は,全売上額に占める被告商品の売上額の割合に相当する人件費は控除されるべきであると主張するが,上記のとおり被告商品の販売に伴って人件費が増加した事実がない以上,相当因果関係がある費用とはいえない。
そして,被告商品の販売に係る被告の作業は,パッケージされた商品の輸入,インターネット上の大手ショッピングサイトを利用した,既設ウェブショップにおける販売,宅配業者を利用しての配送(甲3の1〜3)であり,被告において,部品の箱詰め作業や,販売に係る営業活動,配達業務などを行っていた事実は認められない。また,輸入された商品が被告の下に送付されるのは,毎月0回から2回程度に過ぎないし(乙9の1 ,販売に係るウェブサイトの整備や,取引に )際してのメール処理も,コンピュータを利用した定型的な作業であって,被告商品の数量に応じて変動する費用とは認められない。
したがって,本件において被告の主張する人件費は,被告の限界利益を算定するにあたり控除すべき費用とは認められない。
逸失利益の計算上記判断を前提にすると,被告商品について取引(返品を含む )が。
行われた平成18年1月から平成20年3月までの被告の限界利益は,次の?@から?A及び?Bを控除した2291万3375円と認められ,これが原告の逸失利益と推定される。
?@被告商品の売上額6823万6837円(乙1)?A被告商品の仕入額3968万1007円(乙2)12?B輸入諸経費564万2455円(乙3,9,10(枝番含む)。)ウ弁護士費用本件訴訟の内容からすれば,被告の本件商標権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は,229万円と認める。
3まとめ(1) 差止及び廃棄請求について被告標章は,本件商標権を侵害すると認められるところ,被告は,被告標章を付した,1台で電気式ミキサー,電気式ジューサー,ミル及びフードプロセッサーの4つの機能を有する調理器具を販売するなどしているか, 。 ら 侵害の停止及び侵害の行為を組成した物の廃棄の必要性が認められる(2) 損害賠償請求について本件商標権侵害行為(不法行為)に基づく原告の損害は,2520万3375円及びこれに対する不法行為の後であると認められる平成20年3月1日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の限度で認められる。
4よって 主文のとおり判決する なお 主文1項の 展示 には インター ,(,「」,ネット上の展示も含まれ。。)
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 達野ゆき