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関連審決 無効2008-890108
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19行ケ10392審決取消請求事件 判例 商標
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平成12行ケ231審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 包装 /  品質保証機能 /  質保証機能 /  先願主義 /  指定商品 /  著名な略称 /  周知商標 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  公序良俗(4条1項7号) /  4条1項8号 /  4条1項10号 /  4条1項19号 /  不正目的(不正の目的) /  立体的形状 /  結合商標 /  外観(外観類似) /  国内 /  差止 /  無効審判 /  外国 /  継続 / 
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事件 平成 22年 (行ケ) 10032号 審決取消請求事件
原告 X
訴訟代理人弁理士 山口朔生
同 真島竜一郎
被告株式会社フィルモア代表者代表取締役 遊佐典之
訴訟代理人弁理士 牛木理一
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/05/27
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は,原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求 特許庁が無効2008-890108号事件について,平成21年9月14日にした審決を取り消す。
第2争いのない事実1特許庁における手続の経緯被告は,登録第5010048号商標(平成18年6月28日登録出願,出願番号商願2006-060153号,平成18年12月8日登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。本件商標の構成は,別紙1(本件商標 )のとおりであり,その指定商品は,別紙指定商品目録のとおり,第14類,第18類,第24類,第25類の商品である。
原告は,本件商標は,商標法4条1項7号に該当するとして,本件商標の登録を無効とすることを求めて無効審判請求(無効2008-890108号)をした。
特許庁は,平成21年9月14日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月29日,原告に送達された。
2審決の理由 別紙審決書写しのとおりである。要約すると,以下のとおりである。商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法4条1項7号に該当するのは,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られ,当事者間における利害の調整に関わる事柄のような私的な利害の調整は,原則として,公的な秩序の維持に関わる商標法4条1項7号の問題ではない。本件商標と別紙2(引用商標・「mosrite」,「モズライト」の文字商標等の構成からなる商標)を比較すると,本件商標はその構成全体として一体の商標とみるのが相当であり,かつ,たとえ,その構成文字中に「MOSRITE」の欧文字を有するとしても,該文字部分のみが注目されるとする理由がないばかりでなく,図形部分についても,引用商標の図形部分とは外観上印象を異にするから,本件商標と引用商標は別異の商標である。引用商標は,ギターの愛好家等においては,周知,著名な商標といえるものの,本件商標の指定商品(第14類)についてまでも著名性を有するものとはいい難く,本件商標に接した取引者,需要者をして,引用商標を想起,認識させるものとは認められない。
本件商標の商標権者が,引用商標の商標権者等に承諾を得ることなく,本件商標を登録出願し,登録を受けたことについて,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあるとはいえず,商標法4条1項7号に該当しない。
第3当事者の主張1原告主張の取消事由(商標法4条1項7号の解釈適用の誤り)についての原告の主張  商標法4条1項7号の解釈の誤り 審決は,3つの判決例を挙げて,商標法4条1項7号は,著しく社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限って適用されるべきであり,私的な利害の調整を目的とする場合に適用されるべきではないとする。
しかし,商標法4条1項7号についての審決の解釈は,以下のとおり,誤りである。審決が引用した3つの判決は,いずれも,本件とは事案を異にする。
すなわち,?知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10349号事件判決(甲11の1)は,「我が国とカナダ国の国際信義に反し,両国の国益を損なうおそれが高い」と判断されているように,極めて国際性の高い特殊な事案であり,本件とは事案を異にする,?知的財産高等裁判所平成14年(行ケ)第616号事件判決(甲11の2)は,「原告の本件商標登録出願が不正の目的でなされたと断定することもできない。」としたものであるのに対し,本件は,不正の目的を有する場合であるから,事案が異なる,?知的財産高等裁判所平成19年(行ケ)第10391号事件判決(甲11の3)は,国内商標権者は,商標登録を受けているものの,外国における周知商標権者が日本国内に参入することを阻止する意図があるとまでの認定がされていない事案であるのに対し,本件商標について,被告は,仮にロレッタ製のモズライト・ギターが登場すれば,輸入代理店を含めて,差止請求訴訟を提起することも辞さない旨主張している
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10094号事件。甲3の1参照)から,上記判決とは前提を異にする。
以上のとおり,商標法4条1項7号についての審決の解釈は,本件には適用されるべき事案ではないにもかかわらず,適用されるものとした誤りがある。
なお,原告は,平成20年2月19日に,「mosrite」の文字と,その左に中央に欧文字Mを大きく配し,Mの文字の周囲を,内側へ向けて櫛歯状の突起を多数設けられた円形の枠で囲んだ図形とからなる商標について出願した。原告の出願に対しては,審査官から,「この商標登録出願に係る商標は,米国Z氏若しくは同人の設立したモズライト社或いはユニファイド・サウンド・アソシエーション社の業務に係るギターを表示するものとして,本願商標の登録出願前より取引者,需要者間に広く認識されている商標と類似するものですから,これを同氏と何らの関係も認められない出願人が,自己の商標として採択使用することは,公の秩序を害するおそれがあり穏当ではありません。したがって,この商標登録に係る商標は,商標法第4条1項7号に該当します。」との拒絶理由通知を受けた。
審決は,原告に対する上記拒絶理由の判断と矛盾するものであり,商標法4条1項7号の解釈を誤ったものであるといえる。
商標法4条1項7号に該当しないとした判断の誤り仮に,前記審決の商標法4条1項7号についての解釈を前提としても,本件商標は,商標法4条1項7号に該当すると判断されるべきである。
引用商標である「mosrite」等がエレキギターの世界では著名であることは,被告において認識している。被告は,「mosrite」又は「MOSRITE」の文字をその構成部分として含む9件の商標(本件商標を含む。)を出願し,登録を受け(甲1の1,甲3の3,甲3の4,甲19の1ないし6),同登録商標により利益を得ている。本件商標の構成を引用商標と比較すると,本件商標は,「M」の欧文字を大きく中心にすえ,その周囲に「MOSRITE」の文字を配しており,被告が熟知しているモズライトギターの品質保証機能,広告宣伝機能を利用している。また,平成4年2月に発行されたロッコーマン株式会社のカタログ(甲22)には,本件商標と不等間隔に配置された星印の位置において共通し,,円形の周囲の欧文字が「CRAFTEDWITHPRIDEINU.S.A.」である点において相違する商標が,モズライトギターの商標として使用されていることに照らすならば,被告が不正の意図を有して,本件商標の登録をしたものと推認される。
本件商標は,被告の前記のような意図に基づいて登録されたものであって,いずれも原告の著名な商標を剽窃するものとして無効とされるべきものである。なお,被告が提起した商標権侵害差止等請求事件の控訴審判決(知的財産高等裁判所平成19年(ネ)第10094号平成20年8月28日判決。
甲3の1)において,被告が商標登録を受けた4つの商標のうち2つについて,商標法4条1項10号に該当し,無効とすべきものであると判断されている。
以上のとおり,被告は,無効とされるべき登録商標に基づいて権利行使するなどして利益を図っており,本件商標登録を認めると,商標権に基づく権利行使によって市場に混乱を来すことになり,商標法の予定する秩序に反し,許容し得ない場合に当たるといえる。
引用商標を想起,認識させるものではないとした認定判断の誤り審決は,引用商標は,ギターの愛好家等においては,周知,著名な商標といえるが,本件商標の指定商品(第14類の商品)においてまでも著名性を有するものとはいい難く,本件商標に接した取引者,需要者をして,引用商標を想起,認識させるものではないと認定した。
しかし,仮に,引用商標を想起,認識させるものでないのであれば,「MOSRITE」の文字を入れる必要はないことを考慮すれば,本件商標から引用商標を想起,認識させるものというべきである。また,本件商標において,「M」の文字を選択し,大きく表示しているのも,モズライトの頭文字である「M」を想起,認識させるものといえる。
本件商標に係る指定商品の一つである貴金属の需要者は,商標を入念に識別する。貴金属の需要者のうちのギターの愛好者は,本件商標から引用商標を想起,認識する。審決は,取引者,需要者について,日用品の購入者である一般消費者と,実用性は低くしかし嗜好性も価格も極めて高い貴金属の購入者との相違を認識していない点で,誤りがある。
2被告の反論商標法4条1項7号の解釈の誤りの主張に対しア原告が審決で提出した甲3の1及び甲4の判決は,いわゆる事例判決であって,本件商標登録が商標法4条1項7号に該当することを示した判決ではない。原告は,審決が本件商標について商標法4条1項7号を適用しなかったことの誤りについて,何ら合理的な理由を述べていないので,その主張自体失当である。
イ商標法4条1項7号は,本来,商標を構成する「文字,図形,記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」(標章)それ自体が,公の秩序又は善良な風俗に反するような場合に,そのような商標について,登録商標による権利を付与しないことを目的として設けられた規定である(商標の構成に着目した公序良俗違反)。
また,商標法4条1項7号は,商標登録を受けるべきでない者からされた登録出願について,商標保護を目的とする商標法の精神にもとり,商品流通社会の秩序を害し,公の秩序又は善良な風俗に反することになるから,そのような者から出願された商標について,登録による権利を付与しないことを目的として適用される例がなくはない(主体に着目した公序良俗違反)。しかし,商標法は,出願人からされた商標登録出願について,当該商標について特定の権利利益を有する者との関係ごとに類型を分け,商標登録を受けることができない要件を,同法4条各号において個別具体的に定めているから,当該出願が商標登録を受けるべきでない者からされたか否かについては,特段の事情がない限り,当該各号該当性の有無に即して判断されるべきである。
そして,特段の事情があるか否かの判断に当たっても,出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は,あくまでも,当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから,そのような場合にまで「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない。
商標法4条1項7号に該当しないとした誤りの主張に対し原告が縷々主張する内容は,本件訴訟とは無関係のものであって,反論の必要を認めない。
引用商標を想起,認識させるものとは認められないとした認定判断の誤りの主張に対し本件商標は,ギターとは関係のない第14類その他の商品について,中央のM図形の周囲に,FILLMOREを出所とするMOSRITECOLLECTIONを上下に分けて文字表示し,さらにその外周囲に星をちりばめて一体化したものである。本件商標は,全体として,創作性と自他識別性を有する標章といえる。したがって,指定商標の取引者,需要者のうち,ギターの愛好者が本件商標から引用商標を想起するとの原告の主張は失当である。審決の認定判断に誤りはない。
第4当裁判所の判断1商標法4条1項7号に該当しないとした審決の認定,判断の当否当裁判所は,本件商標が商標法4条1項7号に該当しないとした審決に誤りはないと判断する。その理由は,以下のとおりである。
商標法4条1項7号の解釈・適用について商標法は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」について商標登録を受けることができず,また,無効理由に該当する旨定めている(商標法4条1項7号,46条1項1号)。商標法4条1項7号は,本来,商標を構成する「文字,図形,記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」(標章)それ自体が公の秩序又は善良な風俗に反するような場合に,そのような商標について,登録商標による権利を付与しないことを目的として設けられた規定である(商標の構成に着目した公序良俗違反)。
ところで,商標法4条1項7号は,上記のような場合ばかりではなく,商標登録を受けるべきでない者からされた登録出願についても,商標保護を目的とする商標法の精神にもとり,商品流通社会の秩序を害し,公の秩序又は善良な風俗に反することになるから,そのような者から出願された商標について,登録による権利を付与しないことを目的として適用される例がなくはない(主体に着目した公序良俗違反)。
確かに,例えば,外国等で周知著名となった商標等について,その商標の付された商品の主体とはおよそ関係のない第三者が,日本において,無断で商標登録をしたような場合,又は,誰でも自由に使用できる公有ともいうべき状態になっており,特定の者に独占させることが好ましくない商標等について,特定の者が商標登録したような場合に,その出願経緯等の事情いかんによっては,社会通念に照らして著しく妥当性を欠き,国家・社会の利益,すなわち公益を害すると評価し得る場合が全く存在しないとはいえない。
しかし,商標法は,出願人からされた商標登録出願について,当該商標について特定の権利利益を有する者との関係ごとに,類型を分けて,商標登録を受けることができない要件を,法4条1項各号で個別的具体的に定めているから,このような規定振りに照らすならば,当該出願が商標登録を受けるべきでない者からされたか否かについては,特段の事情がない限り,当該各号の該当性の有無によって判断されるべきであるといえる。すなわち,商標法は,商標登録を受けることができない商標について,同項8号で「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号,芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」と規定し,同項10号で「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標・・・」と規定し,同項15号で「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標・・・」と規定し,同項19号で「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的・・・をもって使用をするもの・・・」と規定している。商標法のこのような構造を前提とするならば,少なくとも,これらの条項(商標法4条1項8号,10号,15号,19号)の該当性の有無と密接不可分とされる事情については,専ら,当該条項の該当性の有無によって判断すべきであるといえる。
また,当該出願人が本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して,先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨や,国際調和や不正目的に基づく商標出願を排除する目的で設けられた法4条1項19号の趣旨に照らすならば,それらの趣旨から離れて,商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは,商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので,特段の事情のある例外的な場合を除くほか,許されないというべきである。
そして,特段の事情があるか否かの判断に当たっても,出願人と,本来商標登録を受けるべきと主張する者(例えば,出願された商標と同一の商標を既に外国で使用している外国法人など)との関係を検討して,例えば,本来商標登録を受けるべきであると主張する者が,自らすみやかに出願することが可能であったにもかかわらず,出願を怠っていたような場合や,契約等によって他者からの登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず,適切な措置を怠っていたような場合(例えば,外国法人が,あらかじめ日本のライセンシーとの契約において,ライセンシーが自ら商標登録出願をしないことや,ライセンシーが商標登録出願して登録を得た場合にその登録された商標の商標権の譲渡を受けることを約するなどの措置を採ることができたにもかかわらず,そのような措置を怠っていたような場合)は,出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は,あくまでも,当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから,そのような場合にまで,「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない。
以下,上記の観点から,審決を検討する。
事実認定ア引用商標について(この項の年号は西暦で表記する。)Z(以下「Z」という。)は,1953年ころからギターの製作を始めたが,1962年,ベンチャーズのメンバーの一人がZの製作したギターを演奏した。以来,Zはベンチャーズ・モデルと称するギターを製作した。
1964年に発売されたベンチャーズのアルバムのジャケットにモズライトの名称の表記されたギターが掲載された。モズライトギターは,改良が加えられ,メタル・ナット,ローラー・ブリッジ,メタル・ノブ,アーム・ユニットに,“MosriteofCalifornia”の文字が表記された。1968年,我が国のファーストマン楽器製作株式会社が,Zと業務提携契約を締結し,Zの許諾を得て,日本国内で数機種を生産し,また輸入販売も行った。その後,Z経営に係る会社は,倒産したが,1977年ころから,Zは,オリジナル・ベンチャーズ・モデルの製作を再開し,1か月に50本ほど製作,販売をした。Zの死後は,原告が,ベンチャーズ・モデル等のギター製作を継続している(甲14の3,甲17の2)。
イ被告は,?引用結合商標と同一の商標(登録第4715753号,甲3の3),?「mosrite」と「モズライト」の文字を上下2段書きにした商標(甲3の4),?「MOSRITEROSIE」(指定商品:楽器,演奏補助品,音さ。甲19の1),?引用商標の筆記体文字部分「ofCalifornia」を筆記体文字部分「ofClassics」に替えた商標(指定商品:楽器,演奏補助品,音さ。甲19の2),?引用商標の筆記体文字部分「ofCalifornia」を筆記体文字部分「Ranger」に替えた商標(指定商品:楽器,演奏補助品,音さ。
甲19の3),?「mosrite」「モズライト」を上下2段書きにした商標(指定商品:電気通信機械器具,レコード,メトロノーム等。甲19の5)等の商標登録を受けている。
ウ本件商標と引用商標について本件商標及び引用商標の態様本件商標は,別紙1のとおり,中央に欧文字Mを大きく配し,Mの文字の周囲を,内側へ向けて櫛歯状の突起を多数設けられた円形の黒枠で囲み,その円形の黒枠の外側に,円形の約上半分を取り囲むように円形に沿って「MOSRITECOLLECTION」の欧文字,円形の下部に円形に沿って「FILLMORE」の欧文字を配し,それらの欧文字の外側に,中心の円と同心円状に21個の星形形状を配したものである。
他方,引用商標は,別紙2のとおり,左側に,外側に歯車状の小さな突起を有する黒い円形状の中に白抜きでMの文字を配し,右側上部に大きく「mosrite」の横書きの欧文字を,右側下部に小さく「ofCalifornia」の横書き筆記体欧文字を配置したものである。
本件商標と引用商標の対比本件商標は,?全体として円形状であり,外側に多数配した星印が強く印象的であること,?「MOSRITE」の文字は,大文字で,内向き櫛歯状の円形の周囲に,円形の左上部から右上部にかけて「COLLECTION」とともに一連で記載され,また「FILLMORE」の文字も併せて記載されていることから,必ずしも「MOSRITE」のみが注意を惹く態様で表記されていないこと,?内向きに櫛歯状となった白抜きの円の中に黒色で「M」の文字が表記されていること等の点で特徴がある。
これに対し,引用商標は,?全体として横長形状であること,?「mosrite」が,小文字で,明瞭に記載されていること,その下段には,「ofCalifornia」の文字が記載されていること,?左側には,外側に櫛歯状となった黒丸の中に白抜きで「M」の文字が表記されていること等の点で特徴がある。
両商標は,円形の中に「M」の文字が記載されていること,「mosrite」の文字を含むことにおいて共通する。しかし,本件商標は,引用商標と対比すると,本件商標は,?「MOSRITE」の文字が,必ずしも読み易い態様で記載されているわけではなく,「MOSRITE」と「COLLECTION」は一連に表記されていること,?「FILLMORE」の文字が,同一の大きさで併記されていること,?「MOSRITE」の文字は大文字で記載されていること,?全体形状が円形であり,中央の大きな「M」の文字や外側の21個の星形形状が,看者に対して強い印象を与えること等の相違点に照らすならば,本件商標と引用商標とは,指定商品に係る取引者,需要者において,全体として異なる印象を与えるものであるといえる。
なお,甲22のモズライトギターのカタログ(甲22の3枚目)のギターの写真の上部には,中央に欧文字Mを大きく配し,Mの文字の周囲を,内側へ向けて櫛歯状の突起を多数設けられた円形の枠で囲み,その円形の枠の外側に,円形の約上半分を取り囲むように円形に沿って「CRAFTEDWITHPRIDE」の欧文字,円形の下部に円形に沿って「INU.S.A.」の欧文字を配し,それらの欧文字の外側に,中心の円と同心円状に多数の星印を配した標章が使用された例のあることが認められる。しかし,前記商標は,甲22のカタログに一箇所使用されているのみであり,どれほどの頻度で使用されていたかは明らかではない。したがって,上記商標が記載された甲22から,同標章が,取引者,需要者に知られていた商標であるということはできない。
原告は,第14類に属する貴金属等の商品の取引者,需要者中のギターの愛好者は,引用商標を想起,認識するはずであると主張する。しかし,本件商標と引用商標との相違点にかんがみれば,需要者,取引者が,指定商品に付された本件商標に接した場合に,引用商標を想起,認識するものとは認め難い。
判断前記で述べたとおり,商標法4条1項7号に該当するか否かは,本来,商標を構成する「文字,図形,記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」(標章)それ自体が「公の秩序又は善良な風俗に反する」ような場合に,そのような商標について,登録商標による権利を付与しないことを目的として設けられたものである。
この点について,商標出願が,商標登録をされるべきでない者からされた場合においても,「公の秩序又は善良な風俗に反する」場合が存在しないわけではない。しかし,商標法が,商標登録出願人と,当該商標に関して特定の権利利益を有する者との関係ごとに,類型を分類して,商標登録を受けることができない要件を,法4条1項各号で個別的具体的に定めているという規定振りに照らすならば,当該出願が商標登録を受けるべきでない者からされたか否かについては,特段の事情がない限り,当該各号の該当性の有無によって判断されるべきであるといえる。すなわち,商標法は,商標登録を受けることができない商標について,同項8号,10号,15号,19号等が規定しており,同号該当性の有無と密接不可分とされる事情については,専ら,当該条項の該当性の有無によって判断すべきであるといえる。
前記で認定した事実によれば,引用商標は,ギター等の商品の出所を示すものとして,我が国の音楽愛好家,特にギター愛好家に知られていること(ただし,前記認定のとおり,引用商標が,どれほどの頻度で使用されていたか,取引者,需要者にどの程度知られていたかは,必ずしも明らかでない。),被告が,Zや関係者から,その承諾を受けることなく,商標登録出願を行っていることが伺われ,本件商標と引用商標とは,「MOSRITE」を含む点において共通するが,そのような事実を前提としてもなお,本件商標が,商標法4条1項7号所定の「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するということはできない。原告の主張は,いずれも採用できない。
2結論以上によれば,原告主張の取消事由は理由がない。その他,原告は縷々主張するが,いずれも理由がない。よって,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部裁判長裁判官飯村敏明裁判官齊木教朗裁判官大須賀滋は,填補につき,署名押印することができない。
裁判長裁判官飯村敏明(別紙1)本件商標(別紙2)引用商標(別紙)指定商品目録第14類キーホルダー,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製針箱,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製宝石箱,貴金属製の花瓶及び水盤,記念カップ,記念たて,身飾品,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,貴金属製コンパクト,貴金属製靴飾り,時計,貴金属製喫煙用具第18類かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具第24類布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバー,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,ビリヤードクロス,布製ラベル第25類被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴