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事件 平成 24年 (行ケ) 10179号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2012/12/25
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成24年12月25日判決言渡

平成24年(行ケ)第10179号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成24年10月25日

判 決



原 告 X



訴訟代理人弁理士 大 島 厚

同 柴 田 泰 子



被 告 豊田合成株式会社



訴訟代理人弁理士 飯 田 昭 夫
同 江 間 路 子

同 小 滝 正 宏

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び理 由
第1 請求

特許庁が取消2011−300104号事件について平成24年4月12日にし

た審決を取り消す。

第2 争いのない事実

1 特許庁における手続の経緯

(1) 被告は,下記商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。



1
登録番号 第4689853号

出願日 平成14年9月30日
登録日 平成15年7月11日

商標 別紙記載のとおり

商品及び役務の区分 第11類

指定商品 便所ユニット,浴室ユニット,乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発

装置,蒸留装置,熱交換器,牛乳殺菌機,工業用炉,原子炉,飼料乾燥装置,ボイ
ラー,暖冷房装置,冷凍機械器具,業務用衣類乾燥機,美容院用又は理髪店用の機

械器具(いすを除く。,業務用加熱調理機械器具,業務用食器乾燥機,業務用食器


消毒器,水道用栓,タンク用水位制御弁,パイプライン用栓,汚水浄化槽,し尿処

理槽,業務用ごみ焼却炉,家庭用ごみ焼却炉,太陽熱利用温水器,浄水装置,LE

Dランプ,LEDランプを使用した乗物用又は家庭用の読書灯,LEDランプを使

用した自動車内用ブラックライト,LEDランプを使用した自動車用ライト,LE
Dランプを使用した自転車用照明灯,その他の電球類及び照明用器具,自動車用又

は家庭用の空気清浄器,家庭用電熱用品類,水道蛇口用座金,水道蛇口用ワッシャ

ー,ガス湯沸かし器,加熱器,調理台,流し台,アイスボックス,氷冷蔵庫,家庭

用浄水器,浴槽類,あんどん,ちょうちん,ガスランプ,石油ランプ,ほや,あん

か,かいろ,かいろ灰,湯たんぽ,洗浄機能付き便座,洗面所用消毒剤ディスペン

サー,便器,和式便器用いす,家庭用汚水浄化槽,家庭用し尿処理槽,化学物質を
充てんした保温保冷具,火鉢類

(2) 原告は,平成23年2月1日,特許庁に対し,本件商標は,商標法50条

項の規定により,その指定商品中,
「LEDランプ,LEDランプを使用した乗物用

又は家庭用の読書灯,LEDランプを使用した自動車内用ブラックライト,LED

ランプを使用した自動車用ライト,LEDランプを使用した自転車用照明灯,その

他の電球類及び照明用器具」についての登録を取り消すことについて審判(取消2
011−300104号事件)を請求した(以下「本件審判」という。。特許庁は,



2
平成24年4月12日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審

決」という。)をし,その謄本は同月19日に原告に送達された。
2 審決の理由

審決の理由は,別紙審決書写しのとおりであり,その要旨は次のとおりである。

(1) 使用者及び使用商標について

被告(商標権者)は,左に表された外縁が六角形の図の右に「TRUE WHI

TE Hi」の文字を配し,下線が多色の色調のものである点を除き,本件商標と
同一の構成,態様の,本件商標と社会通念上同一といえる商標(以下「本件使用商

標」という。 を表示した使用商品が掲載された被告製品カタログ OPTOELECTRONICS
) 「

PRODUCTS 2008」 甲9(判決注:審判段階における乙1)
( 。以下「被告製品カタログ」

という。)を,本件審判の請求の登録(平成23年2月18日)前3年以内である2

008年(平成20年)5月頃に作成し,これを頒布したものと認められる。

(2) 使用商品について
甲9において本件使用商標を表示した品番「E1S40−1W0C6−01」の

白色の表面実装型LED(以下「本件使用商品」という。)は,
「照明用器具の部品」

であることから,本件請求に係る指定商品中の「照明用器具」の範ちゅうに含まれ

る商品とみるのが相当である。

第3 当事者の主張

1 取消事由に関する原告の主張
審決は,本件商標の使用の有無についての認定,判断を誤ったもので,審決の結

論に影響を及ぼすから,違法として取り消されるべきである。

(1) 本件使用商品

本件使用商品は,表面実装型LEDである。表面実装型LEDは,プリント基板

の表面に直接接続する型のLED(Light Emitting Diode)すなわち発光ダイオー

ドであり,発光ダイオードは,
「電流を流すと発光する半導体素子の一種」 甲4,

11,20,21)であり,商品区分上は,国際分類第9類の「電子応用機械器具


3
及びその部品」中の「半導体素子」の範ちゅうに属する商品である。

(2) 本件審判の請求に係る指定商品
本件審判の請求に係る指定商品は,第11類「LEDランプ,LEDランプを使

用した乗物用又は家庭用の読書灯,LEDランプを使用した自動車内用ブラックラ

イト,LEDランプを使用した自動車用ライト,LEDランプを使用した自転車用

照明灯,その他の電球類及び照明用器具」である。

これらは,すべて国際分類第11類の「電球類及び照明用器具」の範ちゅうに属
する商品であり,このことは本件商標の指定商品の記載方法「……その他の電球類

及び照明用器具」からも明らかである。

(3) 本件使用商品は「電球類及び照明用器具」に属しないこと

ア 発光ダイオードは,半導体素子の一種であり,様々な用途に使用される電子

部品である。発光ダイオードは,例えば,ディスプレイ装置,信号,フロア照明,

壁面イルミネーション,車載メータ,読書灯,家電(空気清浄機,換気扇,液晶テ
レビ等) 携帯電話,カメラのフラッシュ光源,看板,アミューズメント機器(パチ


ンコ台)等,極めて多様な商品に組み込まれて使用されている。

他方,LEDランプのような「電球類及び照明用器具」は,発光ダイオードの用

途の一つとして挙げられるが,発光ダイオードそのものである本件使用商品と,発

光ダイオードを利用した電球類ないし照明用器具とは全く別異の商品である。

イ 被告製品カタログ7頁の本件使用商品の主な用途欄には, Lighting」
「 のみな
らず, Backlight」「Indicator」「Illumination」についても「●」印が付されて
「 , ,

おり,本件使用商品には,照明器具以外にも,液晶テレビディスプレイ等のバック

ライト,携帯電話・車載メータ・家電等のインジケータ(表示器) 飾等のイルミ
,電

ネーション等,様々な用途があることを被告自ら認めている。

ウ 発光ダイオードは,通常はんだ付けにより様々な電気・電子応用機器の電子

回路に接合されて使用される半導体素子であるため,その流通経路は,いわゆるB
2B(企業間取引)に限られている。


4
他方,LEDランプのような「電球類及び照明用器具」は,ビルや個人の住宅等

において,従来の白熱電球や蛍光灯に代えて使用されるものであり,一般の家電を
販売する電器店やスーパー等において販売される普通の最終商品である。

エ 以上のとおり,本件使用商品である発光ダイオードは,電子回路を有する機

器に組み込まれて使用される汎用性のある電子部品であるのに対し,審判請求に係

指定商品である「電球類及び照明用器具」 専ら
は 「照明用」 最終商品であって,


両者は,その形態や用途はもとより,流通経路及び需要者の範囲においても全く異
なる。

したがって,本件使用商品と「電球類及び照明用器具」とは,国際分類の見地か

らもそれぞれ第9類と第11類という異なる区分に属する別異の商品であることは

もとより,商品の構造,用途,需要者,流通経路等の見地からも,全く別異の商品

である。

(4) 指定商品の規範性
商標法27条2項が,
指定商品……の範囲は,願書の記載に基づいて定めなけれ

ばならない」と規定しているとおり,指定商品の範囲は,商標権の範囲を画するも

のであって,高度の規範性を有するものである。すなわち,その指定商品の記載に

基づき,商標権侵害該当性が決せられ,商標登録出願の場面においては後願排除効

の有無が決せられる。したがって,指定商品の記載は明確でなければならず,その

範囲は厳格に解釈される必要がある。
「千九百六十七年七月十四日にストックホルムで及び千九百七十七年五月十三日

にジュネーヴで改正され並びに千九百七十九年十月二日に修正された標章の登録の

ための商品及びサービスの国際分類に関する千九百五十七年六月十五日のニース協

定」
(以下「ニース協定」という。 基づく国際分類の一般的注釈(甲34)の (d)
)に

(甲35はその訳文)において,商品分類の基準について,
「他の商品の一部となる

ことを目的として作られた商品は,同様の商品を通常は他の用途に使用することが
できない場合にのみ,原則として,当該他の商品と同じ類に分類する。 規定して
」と


5
いる。これを本件にあてはめると,他の商品の一部となることを目的として作られ

た本件使用商品「表面実装型LED」は,
「照明用器具」以外に使用することができ
ない場合にのみ,
「照明用器具」と同じ範ちゅうに分類されるのであるが,本件使用

商品は,前記のとおり「照明用器具」以外にも様々な商品に使用されるものである

から,上記の場合に該当しない。

したがって,本件使用商品は,汎用性のある商品であって,
「照明用器具」専用品

ではないから,
「照明用器具」の部品として「照明用器具」の範ちゅうに属すると解
することはできない。

2 被告の反論

(1) 本件使用商品と半導体素子との関係

本件使用商品は,発光ダイオードである半導体素子を使用した光源としてのパッ

ケージ,すなわちLEDランプである。また,本件使用商品は白色LEDランプと

して販売されているものであるが,現時点では原告が主張するような発光ダイオー
ドである半導体素子(以下「LEDチップ」という。 単体で白色光を発光するもの


は,世界の市場に存在しない。ちなみに,本件使用商品で使用されているものは,

パープル色を発光するLEDチップである。

本件使用商品は,断面逆台形状(すり鉢型) 面中央にLEDチップが載置され,


その上にRGBすなわち,赤・緑・青の3色を発光する蛍光体を分散した樹脂が充

填され,LEDチップから放射された光により蛍光体が励起され,白色発光を生ず
るものである。この構造は,例えば, 近紫外LED+蛍光体による白色LED」と


して一般書籍にも紹介されている(乙2) このように,本件使用商品の表面実装型


LEDは,特殊な構造ではなく,一般的な構造であり,半導体素子としてのLED

チップと表面実装型LEDが異なるものであることは,周知の事実である。

(2) LEDランプと表面実装型LEDについて

社団法人日本電子機械工業会発行の日本電子機械工業会規格EIAJ ED−4
901(1996年1月制定) 乙11)1頁には,表2に「LED用語の体系」が



6
記載されている。同表によれば,LEDには赤外LEDと可視LEDがあり,可視

LEDの1つとしてLEDランプがあり,
LEDランプの下位概念にチップLED,
大型LEDランプ,2色LEDランプ,フルカラーLEDランプ等が存在すること

が示されている。よって,チップLEDは,LEDランプに属している。また,同

2頁では,LEDは「半導体PN接合,又はそれと類似の構造の接合に,順方向電

流を通じて自然放出光だけを発するものの総称」とし,LEDランプは「単一の発

光源として機能する可視LEDの総称」と定義し,チップLEDを「面実装用で,
基板又はそれに類するものの上にLEDチップをのせ,
樹脂で封じたLEDランプ」

であると定義し,その英文名称として「Chip LED,Surface mount LED」と表示して

いる。すなわち,チップLEDは,表面実装型LEDである。したがって,表面実

装型LEDは,LEDランプである。

次に,株式会社電子ジャーナル発行「Electronic Journal 別冊 2005高輝度

LEDガイドブック」第4編第5章LEDの組立・パッケージング技術の「1.は
じめに」の欄(乙12)には,
「LEDとは,狭義には化合物半導体のチップ状態を

指すが,実用上はもちろん実装可能なパッケージに入った状態のものを言う。この

ような状態のものをチップと区別する場合には,表面実装型・砲弾型を問わずLE

Dランプと呼ぶ。……」と記載され,表面実装型LEDが,LEDランプであるこ

とが明確に記載されている。

また,日本放送出版協会発行,伊東新太郎著「やさしいLEDのはなし 光エレ
クトロニクス入門」 乙13)75頁には,
( 「7章/LEDランプの種類と規格表/

LEDランプと一口にいってもその種類は千差万別です。用途により形,色,明る

さなどいろいろなものが市販されています……この多岐に渡るLEDをグループ分

けしますと,次のように整理することができます」「/」は改行を示す。以下同様)


との説明があり,「7−1 LEDの分類」として「形状による分類」
(77頁)の

項を設け, 写真7−1をご覧ください。
「 最もポピュラーな小さな丸形のLEDとし
ては……」としていわゆる砲弾型LEDランプの説明がされ,82頁には図7―7


7
として面実装用の小型LEDのランプが紹介されている。つまり,面実装用のLE

DはLEDランプである。
(3) LEDランプと照明器具について

本件使用商品である表面実装型LED(LEDランプ)は,B2Bの企業相手に

した大量販売であるが,最近では,インターネット等で個人的に取り換えを行う方

法も紹介されるなど,個人相手に数個の販売もなされている。はんだ付けは必要で

あるが,ユーザーが個人的に取り換えたりすることは可能だからである。このよう
に,本件使用商品が使用されるところは,従来白熱電球や蛍光灯等を光源としてい

たところであり,白熱電球や蛍光灯を新しい光源としてのLEDランプに置き換え

たにすぎない。

(4) 特許庁の判断

被告は,商願平9−6405号の商標登録出願(乙21の1)に当たり,指定商

品「LEDランプ」に関する資料として,被告作成の青色LEDランプのパンフレ
ット(乙21の2)を添付した。それに対し「LEDランプその他の電球及び照明

器具」 表示は適切でないと認められるから, 高輝度ランプその他の電球及び照明
の 「

器具……」と補正されたい旨の手続補正命令書(乙21の3)を受け取ったが,手

補正書に代える上申書(乙21の4)で,LEDランプが通常使用されている用

語であることの説明をしたことにより,「LEDランプその他の電球及び照明器具」

の表示が認められたのである。これが,日本で最初にLEDランプなる指定商品
認められた出願であり 乙22) 国際分類第11類に属する商品であるとの判断の
( ,

過程を経ているものである。すなわち,国際分類の下,一般的注釈及びアルファベ

ット順一覧表に基づいて,被告が指定商品とした「LEDランプ」は第11類に属

する商品であると我が国において判断したものであり,他国で分類が異なろうと,

日本での解釈,取扱いは,この判断に従うべきものである。

なお,国際分類の一般的注釈では,専用品に関しては, d)専用品の場合にはそ

の専用品の商品と同じ類に分類するが,それ以外の他の全ての場合には(a)に示


8
す基準を適用する,すなわち,商品の材料又は作動方式のような他の補助的な基準

を適用するとされている。これに従えば,本件使用商品は,光源として作動させる
ものであるから,国際分類第11類に分類されるものである。

第4 当裁判所の判断

1 本件使用商標の使用について

本件商標の商標権者である被告が,本件商標と社会通念上同一といえる本件使用

商標を表示した使用商品が掲載された被告製品カタログ(甲9)を,本件審判の請
求の登録(平成23年2月18日)前3年以内である平成20年5月頃に作成し,

これを頒布したことは,当事者間に争いがない。また,甲9の42頁の記載によっ

ても,本件使用商標が本件使用商品について使用されていることが認められる。

2 本件審判の請求に係る指定商品についての使用該当性

(1) 本件審判の請求に係る指定商品は,
「LEDランプ,LEDランプを使用した

乗物用又は家庭用の読書灯,LEDランプを使用した自動車内用ブラックライト,
LEDランプを使用した自動車用ライト,
LEDランプを使用した自転車用照明灯,

その他の電球類及び照明用器具」であるところ,原告は,本件使用商品は,表面実

装型(プリント基板の表面に直接接続する型)のLED,すなわち発光ダイオード

であり,発光ダイオードは電流を流すと発光する半導体素子の一種であるから,国

際分類第9類の「電子応用機械器具及びその部品」中の「半導体素子」の範ちゅう

に属する商品であって,審判請求に係る指定商品である「電球類及び照明用器具」
には属しないと主張する。

(2) しかし,本件使用商品は,被告製品カタログに記載された品番「E1S40

−1W0C6−01」の白色の表面実装型LEDであり,断面逆台形状(すり鉢型)

底面中央にLEDチップが載置され,その上にRGBすなわち,赤・緑・青の3色

を発光する蛍光体を分散した樹脂が充填され,LEDチップから放射された光によ

り蛍光体が励起され,白色発光を生ずるものであり,発光ダイオードを使用した,
光源としてのLEDランプであると認められる(甲9,乙1,2)



9
そ して,社団 法 人日本電子機械工業会発行の日本電子機械工業会 規 格 E I AJ

ED−4901(1996年1月制定) 乙11)1頁の表2に,LEDには赤外L

EDと可視LEDがあり,可視LEDの1つとしてLEDランプがあり,LEDラ

ンプの下位概念にチップLED,大型LEDランプ,2色LEDランプ,フルカラ

ーLEDランプ等が存在することが示され,同2頁に,LEDは 半導体PN接合,


又はそれと類似の構造の接合に,順方向電流を通じて自然放出光だけを発するもの

の総称」とし,LEDランプについて, 単一の発光源として機能する可視LEDの

総称」と定義し,チップLEDについて, 面実装用で,基板又はそれに類するもの


の上にLEDチップをのせ,樹脂で封じたLEDランプ」であると定義し,その英

文名称として「Chip LED,Surface mount LED」
,すなわち「表面実装LED」と表

示していること,また,LEDとは,狭義には化合物半導体のチップ状態を指すが,

実用上は実装可能なパッケージに入った状態のものをいい,表面実装型LEDがL

EDランプとして例示されていること(乙12,13)に照らすと,本件使用商品
は,単体で照明用器具としての機能を有する商品であると認められる。

したがって, 光ダイオードそのものである本件使用商品と, 光ダイオードを
「発 発

利用した電球類ないし照明器具とは全く別異の商品である」との原告の主張は,採

用することができない。

(3) また,指定商品に関する国際分類という観点からみても,以下のとおり,原

告の主張は理由がない。
ア 商標登録出願は,商標の使用をする商品又は役務を,商標法施行令で定める

商品及び役務の区分に従って指定してしなければならないとされているところ(商

標法6条1項,2項)
,商標法施行令は,同区分を,ニース協定1条に規定する国際

分類(以下,単に「国際分類」という。 従って定めるとともに,各区分に,その
)に

属する商品又は役務の内容を理解するための目安となる名称を付し(同令1条,別

表)
,商標法施行規則は,上記各区分に属する商品又は役務を,国際分類に即し,か
つ,各区分内において更に細分類をして定めている(商標法施行令1条,商標法施


10
行規則6条,別表)
。したがって,商標法施行規則別表において定められた商品又は

役務の意義は,商標法施行令別表の区分に付された名称,商標法施行規則別表にお
いて当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質,国際分類を構成す

る類別表注釈において示された商品又は役務についての説明などを参酌して解釈す

るのが相当である(最高裁平成23年12月20日第三小法廷判決・民集65巻9

号3568頁参照)


イ 本件審判の請求に係る指定商品は,商標法施行規則別表(以下「省令別表」
という。)第11類1に定める「電球類及び照明用器具」に属するものであるから,

上記アに説示したところを踏まえて,省令別表第11類1に定める「電球類及び照

明用器具」の意義について検討する。

省令別表第11類1の「電球類及び照明用器具」には, アーク灯」「蛍光灯」
「 , ,

「白熱電球」「豆電球」等が例示され,他方,第9類16「電子応用機械器具及び


その部品」の「 三)半導体素子」には,
( 「トランジスター」「ダイオード」等が例

示されている。

また,国際分類を構成する類別表注釈において,第11類に この類には,
「 特に,

次の商品を含む:/……電気式湯沸かし;/電気式調理用具」と記載され,第9類

に「この類には,特に,次の商品を含まない。/次の電気式機器;/……(d) 暖房

用又は液体加熱用,調理用,換気用等の電気式器具(第11類) と記載されている。


上記例示及び注釈を参酌すると,省令別表第11類1に定める「電球類及び照明
用器具」は,単体で照明用器具としての機能を有する商品をいい,半導体素子(例

えば,LEDチップ)のように回路に組み込んで使用される部品は含まないものと

解するのが相当である。

ウ 本件使用商品は,上記のとおり,LEDチップから放射された光により蛍光

体が励起され,白色発光を生ずるものであり,単体で照明器具としての機能を有す

る商品であるから,これと異なる原告の主張は採用することができない。
なお,原告は,ニース協定に関する主張もしているが,上記のとおり,本件使用


11
商品の理解において前提を異にするものであるから,採用の限りではない。

(4) 以上検討したところによれば,本件使用商品「表面実装LED」は,省令別
表第11類1の「電球類及び照明用器具」に該当するものと認められるから,本件

使用商品は本件請求に係る指定商品中の「照明用器具」の範ちゅうに含まれるとし

た審決の認定,判断に誤りはなく,原告主張の取消事由は理由がない。

3 結論

以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がなく,ほかに本件審決にはこれを取
り消すべき違法はない。よって,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第3部




裁判長裁判官
芝 田 俊 文




裁判官

岡 本 岳




裁判官

武 宮 英 子




12
(別紙)




13