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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成15ワ23577商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
平成18ネ2387不正競争行為差止等請求控訴事件 判例 商標
平成19ワ14984商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
平成15ワ10016損害賠償等請求事件 判例 商標
平成16ワ12032損害賠償請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  識別機能 /  指定商品 /  周知性 /  不正目的(不正の目的) /  顧客吸引力(グッドウィル) /  ただ乗り(フリーライド) /  類似性(類否判断) /  結合商標 /  損害額 /  使用料相当額 /  先使用(32条) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  国内 /  警告 /  差止 /  無効審判 /  継続 /  商号 / 
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事件 平成 10年 (ワ) 16262号 不正競争行為差止等請求事件
原告 株式会社インディアンモトサイクルカンパニージャパン
訴訟代理人弁護士 佐藤雅巳復代理人弁護士 古木睦美
被告 東洋エンタープライズ株式会社
訴訟代理人弁護士 伊藤真
補佐人弁理士 野原利雄
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2003/12/26
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,別紙「被告標章目録」記載の各標章をジャケット,シャツ,セーター及び帽子に付して使用してはならない。
2 被告は,前記目録記載の各標章のいずれかを付して使用したジャケット,シャツ,セーター及び帽子を輸入し,譲渡し,引渡し又は譲渡若しくは引渡しのために展示してはならない。
3 被告は,その占有にかかる前項記載のジャケット,シャツ,セーター及び帽子を廃棄せよ。
4 被告は,原告に対し,178万2500円及びこれに対する平成10年7月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 原告のその余の請求を棄却する。
6 訴訟費用はこれを5分し,その2を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
7 この判決は,第4項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
原告の請求
1 主文第1項ないし第3項と同じ。
2 被告は,原告に対し,3000万円及びこれに対する平成10年7月24日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 訴えの要旨及び被告の反論 本件は,1950年代以前にアメリカ合衆国で人気を博したオートバイのメーカーに由来する,「インディアン」という名称のブランドの使用を巡る紛争である。
原告は,別紙「原告表示目録」1ないし3記載の各表示(以下,その番号に従い「原告表示1」などといい,これらを総称して「原告各表示」という。また,便宜上,原告表示1を「インディアンロゴ」と,原告表示2を「ヘッドドレスロゴ」とそれぞれいい,原告表示2のうちインディアンロゴを除く図形部分(羽根飾りを冠した右向きインディアンの横顔図)を「インディアン図形」という。また,原告表示3は,ヘッドドレスロゴの下段に,さらに小書した特徴ある筆記体英文字「Indian Motocycle Co.,Inc.」を配してなるものであるが,「Indian Motocycle Co.,Inc.」の部分を「モトサイクルロゴ」という。)を衣類等に付して使用しているところ,平成6年5月には,これら各標章が,少なくとも衣類及び帽子について,原告が輸入販売及びライセンスに使用する商品等表示として,需要者の間に周知であったと主張する。そして,被告が,遅くとも平成7年6月以後,別紙「被告標章目録」1ないし17記載の各標章(以下,その番号に従い「被告標章1」などといい,これらを総称して「被告各標章」という。)を付した衣類等の商品を製造販売するなどした行為は,「他人の商品等表示‥‥として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し」て,「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」(不正競争防止法2条1項1号)に該当すると主張して,被告に対し,被告各標章の使用差止等及び損害賠償を求めている。
これに対し,被告は,上記不正競争行為の成立要件(@周知性,A類似性,B誤認混同のおそれ)を争うとともに,仮に同行為が成立するとしても,被告は,原告各表示が周知性を獲得する以前から,被告各標章を使用していたとして,不正競争防止法12条1項3号に基づく同法の適用除外(いわゆる先使用の抗弁)を主張している。
2 争いのない事実 (1) 当事者 原告は,皮革製品,衣料品,袋物,洋品雑貨等の輸出入及び販売等を目的とする株式会社である。
被告は,繊維製品,化学製衣料品,雑貨類等の国内販売及び輸出入等を目的とする株式会社である。
(2) 原告の商品等表示 原告は,平成6年5月ころから,別紙「原告表示目録」記載の各表示(原告各表示)を,衣類及び帽子について,自らの輸入販売及びライセンスに関する「商品等表示」(不正競争防止法2条1項1号)として使用している。
(3) 被告各標章の使用 被告は,遅くとも平成7年6月以後,別紙「被告標章目録」記載1ないし17の各標章(被告各標章)を,別紙「使用態様目録」記載の部位に付し,「自己の商品等表示」として使用したジャケット,シャツ,セーター及び帽子を製造又は輸入し,販売した(なお,被告が今後も被告各標章を使用するおそれがあるかどうかについては,後記のとおり争いがある。)。
(4) 関連各商標(事情) ア 原告商標等 ところで,原告は,下記のとおり,原告表示3を登録商標とする商標権をかつて有していた(以下,原告表示3を「原告商標」ということがある。)。
原告商標は,平成4年2月6日,訴外A(以下「訴外A」という。)により,商品区分を第17類,指定商品を被服等として商標登録出願され,平成7年9月29日に商標登録された(登録第2710099号)。原告は,同年10月16日,Aから上記登録商標の商標権を譲り受け,平成8年5月27日に権利移転登録がされたものである。
しかるに,特許庁は,平成14年2月28日,先願の後記被告商標に類似することを理由に,原告商標の登録を無効とする旨の審決をし,原告は,同審決に対して取消訴訟を提起したが,東京高等裁判所は,同年12月27日,原告の請求を棄却する判決をした。同判決は,平成15年6月12日付け最高裁の上告不受理決定により確定した。
また,原告は,平成7年11月2日,原告表示1(インディアンロゴ)を,商品区分を平成3年政令第229号による改正前の商標法施行令別表の商品区分第25類(以下,同表における商品区分を単に「第25類」などと表記する。),指定商品を被服,帽子等として商標登録出願した。同標章は,平成9年7月4日に商標登録された(登録第4022987号)。
イ 被告商標 他方,被告は,平成3年11月5日,別紙「被告商標目録」記載の片仮名「インディアンモーターサイクル」を横書き一連に配した商標(以下「被告商標」という。)を,商品区分を第17類,指定商品を被服等として商標登録出願した。同標章は,平成6年3月31日に商標登録された(登録第2634277号)。
しかるに,特許庁は,平成15年3月28日,被告は片仮名からなる上記被告商標につき商標登録を有するところ,あえて英文字「Indian」や「Motocycle」を指定商品に用いており,登録商標である被告商標と類似する商標を故意にその指定商品に使用し,他人の業務にかかる商品と混同を生じさせているというべきであるとして,商標法51条1項に基づき,被告商標の登録を取り消す旨の審決(甲242)をした。被告は,同審決に対して取消訴訟を提起し,同訴訟
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3争点(1)原告各表示が,原告の商品等表示として,需要者の間で周知なものといえるか(争点1)。
(2)被告標章1ないし17が,それぞれ原告各表示に類似するか(争点2)。
(3)被告が被告各標章を衣類等に付して使用することが,原告の「商品又は営業と混同を生じさせる行為」に該当するか(争点3)。
(4)被告主張にかかる先使用の抗弁(不正競争防止法12条1項3号)の成否(争点4)。
(5)差止の必要性(争点5)。
(6)原告の損害額(争点6)。
第3争点に関する当事者の主張1争点1(原告各表示が,原告の商品等表示として,需要者の間で周知なものといえるか)について(原告の主張)ア「インディアン」は,そもそも,1901年にアメリカ合衆国マサチューセッツ州スプリングフィールドで設立されたオートバイのメーカー(以下「オリジナル・インディアン社」という。)に由来するブランドである。
1990年(平成2年)6月,訴外B(以下「訴外B」という。)は,同所において「インディアン・モトサイクル・カンパニー・インク」(以下「米国インディアン社」という。)を設立し,1953年のオリジナル・インディアン社の操業停止に伴い事実上途絶えていた「インディアン」ブランドを復興した。訴外Aは,上記Bから,日本における「インディアン」ブランドに関するビジネス上の一切の権利を譲り受け,第2,2(4)記載のとおり,平成4年2月6日,同人の名義で原告商標を商標登録出願するとともに(後の登録第2710099号),平成5年(1993年)6月3日に原告会社を設立して,代表取締役に就任した。
原告は,訴外Aから,上記登録第2710099号の商標権の譲渡を受けたほか,関連する多数の商標権を有しており,現在に至るまで「インディアン」ブランドに関するビジネスを展開している。
イ平成5年(1993年)7月24日,繊研新聞及び日経流通新聞において,原告会社の設立,「インディアン」ブランドの輸入及び原告によるライセンスビジネスの展開が報道された。同ブランドは,同年11月の時点で,米国では既にブームとなっており,日本でもブーム着火は時間の問題という状況にあった。
原告及びそのマスターライセンシーである訴外株式会社サンライズ社(以下「訴外サンライズ」という。)は,平成6年(1994年)1月から平成7年(1995年)2月にかけて,若い男性向けカジュアルファッションの大手専門店において無料で配布されている月刊広報誌「DICTIONARY」に定期的に広告を掲載し,さらに,若者に人気のある東京都内の渋谷道玄坂のビルの1階に基幹店(アンテナショップ)を開設するなど,「インディアン」ブランドの宣伝に努めた。
ウ宣伝のかいあって,「インディアン」ブランドは,平成6年(1994年)前半には市場に浸透し,同年に入って,訴外サンライズは訴外マルヨシとバッグについてサブライセンス契約を締結した。訴外マルヨシは,同年5月に展示会を開催し,「インディアン」ブランドを使用した商品の販売を開始した。
以上の経緯から分かるとおり,原告各表示は,衣類,帽子及びバッグ等につき,原告が輸入販売し,又はライセンスに使用する商品等表示として,平成6年5月には,需要者の間で周知となっていた。
エなお,原告の「インディアン」ブランドは,本訴提起後も,雑誌等において広告ないし紹介されており,原告は,東京都内原宿の1号店に続き,平成12年9月に,直営店の2号店を福岡にオープンした。
このことは,原告の「インディアン」ブランドの着実な成長を示すものであり,同ブランドが周知であることは明らかである。
(被告の主張)原告各表示が,平成6年5月の時点で,原告の商品等表示として周知であった旨の原告の上記主張は争う。上記の時点のみならず,原告商標の登録査定日である平成7年3月30日においても,また現時点においても,上記各表示は周知性を獲得していない。
2争点2(被告標章1ないし17が,それぞれ原告各表示に類似するか)について(原告の主張)被告標章1ないし17からは,下記のとおり,そのいずれからも,筆記体英文字「Indian」が要部として抽出される。
ア被告標章1の要部が中央に大書された筆記体英文字「Indian」であることは明らかである。
イ被告標章2における筆記体英文字「Indian」は,その右側に配された活字体英文字「ARROW」と書体を異にする上,これらを一連一体に称呼観念すべき必然性がない。
したがって,被告標章2の要部としては上記「Indian」が抽出されるというべきである。
ウ被告標章3の中央に大書された筆記体英文字「Indian」は,標章全体の構成からして,他の構成要素と可分であるから,同標章の要部と認められる。
エ被告標章4において,中央の筆記体英文字「IndianMotorcycle」は,上段の活字体英文字「WORLD'SFINEST」や下段の活字体英文字「SPRINGFIELD,MASS.」よりも大書されている。また,上記「IndianMotorcycle」の「I」及び「M」は,いずれも大文字で他の文字より大書されているから,「Indian」と「Motorcycle」は構成上可分である上に,日常使用されていない「Motorcycle」という言葉を「Indian」と結びつけて使う必然性もないから,「IndianMotorcycle」を一連一体にのみ称呼観念すべき理由はない。
よって,同標章からは,「Indian」が要部として抽出される。
オ被告標章5の構成自体から,同標章の要部として,最下段の筆記体英文字「Indian」が抽出されるというべきである。
カ被告標章6の要部は,左側に配された筆記体英文字「Indian」というべきである。
キ被告標章7の要部は,中央に大書された筆記体英文字「Indian」と認められる。
ク被告標章8は,大書した筆記体英文字「IndianMotorcycle」からなる。したがって,同標章4について述べたこと(上記エ)がそのまま当てはまり,「Indian」が要部として抽出される。
ケ被告標章9の中央に配された筆記体英文字「Indian」は,活字体英文字の他の構成要素と可分であり,かつ,他の構成要素より大書されている。
したがって,同標章からは,上記「Indian」が要部として抽出される。
コ被告標章10の中央に配された筆記体英文字「IndianMotorcycle」は,他の構成要素と構成上可分であり,また,被告標章4で述べたこと(上記エ)がそのまま当てはまる。
したがって,同標章からは,「Indian」が要部として抽出される。
サ被告標章11の中央に2段に配された筆記体英文字「IndianMotorcycle」は,他の構成要素と明瞭に区別でき,かつ,「Indian」と「Motorcycle」を一体にのみ把握すべき理由はないから,筆記体「Indian」が要部として抽出される。
シ被告標章12におけるライダーの着衣の胸には,筆記体「Indian」が明瞭に表示されており,見る者の注意をひく。したがって,上記「Indian」が同標章の要部というべきである。
ス被告標章13におけるオートバイの中央部には,筆記体「Indian」が明瞭に表示されており,見る者の注意をひく。したがって,上記「Indian」が同標章の要部というべきである。
セ被告標章14の中央に配された筆記体英文字「IndianMotorcycle」は,他の構成要素と構成上可分であり,また,被告標章4で述べたこと(上記エ)がそのまま妥当する。
したがって,同標章からは,「Indian」が要部として抽出される。
ソ被告標章15の中央に配された筆記体英文字「IndianMotorcycle」は,他の構成要素と構成上可分であり,また,被告標章4で述べたこと(上記エ)がそのまま妥当する。
したがって,同標章からも,「Indian」が要部として抽出される。
タ被告標章16の中央に配された筆記体英文字「IndianMotorcycle」は,図形の中に配されている上に,他の文字が活字体であるのに対して筆記体であるから,見る者の注意をひく。また,上記「IndianMotorcycle」の「Indian」を「Motorcycle」と一連一体にのみ把握しなければならない理由がないことは,上記エで述べたとおりである。
よって,同標章からは,上記「Indian」が要部として抽出される。
チ被告標章17の上部に配された筆記体英文字「IndianMotorcycle」は,同標章中央部の図形及び最下段の「TheIronHorse」と構成上可分であり,かつ,上記「IndianMotorcycle」の「Indian」は,「Motorcycle」とも可分である。
よって,同標章の要部として上記「Indian」を抽出することができる。
ところで,これら要部として抽出される筆記体英文字「Indian」は,外観において原告表示1に類似するとともに,原告表示2,3の要部に類似する。また,そこから生じる「インディアン」なる称呼及び「北米原住民(インディアン)」なる観念は,それぞれ,原告表示1から生じる称呼及び観念と同一であるとともに,原告表示2,3の要部から生じる称呼及び観念とも同一である。
以上によれば,被告各標章は,原告各表示と類似するというべきである。
(被告の主張)原告は,インディアンロゴの書体が特徴ある筆記体であることを強調し,それを前提に,被告標章1ないし17から,いずれも要部として筆記体英文字「Indian」を抽出した上,被告各標章が原告各表示に類似すると主張するかのようである。
しかしながら,インディアンロゴの書体は,既に公知公用の「スクリプト」と称せられるタイプフェース(書体)の1種に若干のアレンジを加えたものにすぎず,「特徴ある筆記体」といえるものではない。したがって,原告の主張は前提を欠いている。また,被告標章1ないし17は,いずれもその構成中に筆記体英文字「Indian」を含むものの,これらの書体(ロゴタイプ)はインディアンロゴにおけるそれと明瞭に異なる。したがって,被告各標章は,いずれも原告各表示に類似しないというべきである。
また,上記書体(ロゴタイプ)の違い以外にも,被告各標章は,下記のとおり,構成上ないし外観上,原告各表示との相違点を有している。
ア被告標章1における筆記体英文字「Indian」は,楕円形の図案の中に配されている。
イ被告標章2は,筆記体英文字「Indian」と活字体英文字「ARROW”50S」を横一列に配して構成されている。
ウ被告標章3は,横長の図案と組み合わされて一体に構成されている。
エ被告標章4の中央には筆記体英文字「IndianMotorcycle」が配されているものの,これは横書きに連続して一体に記載されている。
オ被告標章5においては,「FIREWATER」,「SALOON」及び「Indian」が横書き3段に一体となって記載されている。
カ被告標章6は,「IndianMotorcycle」を横書きで一体に配してなる。
キ被告標章7は,「WorldsFinest」,「Indian」及び「MOTORCYCLE」が横書き3段に一体となって構成されている。
ク被告標章8においては,筆記体英文字「IndianMotorcycle」が横書きに連続して一体に記載されている。
ケ被告標章9においては,「FORSBERG」,「Indian」,「MOTORCYCLE」及び「SEATTLEWASH.」が二重線でデザインされた枠の中に横書き4段に一体になって記載されている。
コ被告標章10における「IndianMotorcycle」は,二重線でデザインされた枠の中に横書きに連続して一体に記載されているものである。
サ被告標章11においては,楕円形状に英文字が配された中に,骸骨の図案が配置され,その下に「Indian」及び「Motorcycle」が一体となって2段表記されている。
シ被告標章12は,オートバイに乗ったレーサー3人の写真であるが,胸のロゴマーク「Indian」自体が判読困難である。
ス被告標章13は,燃料タンク部分に「Indian」の記載のあるオートバイの写真であり,インディアンロゴとは外観が大きく異なる。
セ被告標章14は,炎を模した図案に囲まれた枠の中に6段の英文が配され,その中に「IndianMotorcycle」が横書きに連続して一体に配されている。
ソ被告標章15は,5段の英文が配され,左右対称に女性のシルエットが図案化されたまとまりのあるデザインの中で,その2段目に「IndianMotorcycle」が横書きに連続して一体に記載されているものである。
タ被告標章16は,4段の英文が配され,その1段目と2段目の間に羽根飾りのイラストが配されているが,「IndianMotorcycle」は,このイラスト中央部の三角の中に極めて小さく表記されているにすぎない。
チ被告標章17は,縦長の図案の上部に,同図案と一体をなす書体を用いて,「IndianMotorcycle」と横書きに連続して一体に記載されたものである。
以上のとおり,被告各標章に含まれる筆記体英文字「Indian」は,いずれもインディアンロゴとは書体が異なる上,これら各標章は,その構成ないし外観が原告表示1と異なるものである。したがって,被告各標章は,いずれも同表示と類似しない。また,原告表示2及び3とは外観が大きく異なっており,これら各表示とも類似しない。
3争点3(被告が被告各標章を衣類等に付して使用することが,原告の「商品又は営業と混同を生じさせる行為」に該当するか)について(原告の主張)被告は,片仮名横書きの「インディアンモーターサイクル」なる商標を登録していながら(第2,2(4)),これを使用せず,原告各表示の周知性ただ乗りしようとして,原告のライセンスビジネスと競合する商品(衣類等)の分野において,被告各標章を使用している。このような被告の行為が,商品の出所につき混同を生じさせる行為であることは明らかである。
(被告の主張)被告各標章は,シャツの胸部分(被告標章1,6,7,12ないし14及び17),背部分(同標章9ないし11,15及び16)及び袖部分(同標章8)にいずれもデザインとして,あるいは,ジャケット(同標章2),帽子(同標章3),シャツ(同標章4)及びセーター(同標章5)のデザインとして用いられているものであり,その使用態様からして,商品の出所を示す表示として需要者が意識することはない。したがって,混同は生じない。
4争点4(先使用の抗弁の成否)について(被告の主張)上述のとおり,被告は,被告による被告各標章の使用は不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当しないと主張するものであるが,仮にこれが不正競争行為に該当すると判断された場合の仮定抗弁として,以下のとおり先使用の抗弁(不正競争防止法12条1項3号に基づく同法の適用除外)を主張する。
被告は,被告のアパレル業者としての評判と実績を知ったヴィンテージバイク愛好家から,ライダージャケットの製作依頼があったことをきっかけに,彼らの薦めにより同ジャケットの商標名を「インディアンモーターサイクル」と決定し,平成3年(1991年)11月5日,被告商標を商標登録出願した。その後,平成6年(1994年)に同商標が登録されたことをふまえ,具体的な商品企画に着手すると同時に,カナダ国における商標「INDIANMOTORCYCLE」の権利者であるオンタリオ・リミテッド社との間で業務提携を図り,翌平成7年(1995年)から同社商品の一部をサンプル輸入して販売するとともに,オリジナル商品の企画販売を開始した(乙7,8,11ないし13,47ないし49)。
このような経緯からも明らかなとおり,被告の商標採択及び商標登録出願は,原告のいかなる事実行為より先行している。「POPEYE」1995年(平成7年)6月25日号(乙7)にインディアンロゴを主体とする標章を付した被告取扱いにかかるジャケット及び帽子の紹介記事が,また,「FINEBOYS」1995年(平成7年)7月号(乙11)にインディアンロゴを付した被告取扱いにかかるブルゾン及びカット・ソーの紹介記事が,それぞれ掲載されていることに照らしても,被告が,平成7年春ころには,被告各標章を付した多様な商品を既に輸入,製造,販売するなどしていたのは明らかである。しかるに,少なくともこの時点で原告各表示が周知性を獲得していた事実は認められない。
したがって,被告には上記先使用の抗弁が成立する。
(原告の主張)被告の上記主張は,争う。
被告は,片仮名商標「インディアンモーターサイクル」(被告商標)を商標登録出願し,登録を受けながら,これを一切使用せず,原告の企業努力により「インディアン」ブランドが市場に浸透すると,すかさず英文字からなるインディアンロゴ等多数の標章を使用し始めた。まず片仮名の商標を出願して登録を得た上で,正規のライセンシーがビジネスを開始すると,英文字の商標の使用を開始して,他人の企業努力の成果に便乗する,そして警告等を受けると片仮名商標の商標権をもって対抗するというのは,米国映画「ビッグ・ウェンズデー」に由来する著名な商標「BEARSURFBOARD」をめぐる紛争の場合と全く同じ被告の常套手段である。このような被告各標章の使用が,原告の企業努力の成果に便乗し,不当な利益を得る目的から出たものであることは明白であって,被告が被告各標章を「不正の目的でなく使用し」(不正競争防止法12条1項3号)たものとはいえない。したがって,被告主張にかかる先使用の抗弁は成立しない。
5争点5(差止の必要性)について(原告の主張)被告は,現在被告各標章を使用していないと主張する。しかし,上述のとおり,被告は,片仮名横書きの「インディアンモーターサイクル」につき商標登録を受けながら(第2,2(4)),これを使用せず,原告からの警告を無視して,被告各標章を使用し続けたものである。
このような経緯に照らせば,被告が被告各標章の使用を再開するおそれがあり,差止の必要性が存する。
(被告の主張)被告は,現在被告各標章を付した商品を保有しておらず,被告各標章を使用していない。また,今後使用するつもりもない。
したがって,差止めの必要性は存しない。
6争点6(原告の損害額)について(原告の主張)被告は,被告各標章を付して使用した商品を少なくとも6億円分販売しており,これにより,原告は,原告各表示の使用料相当額3000万円の損害を被った。
よって,3000万円を損害賠償として請求する。
(被告の主張)原告の上記主張は,争う。
被告各標章を付した商品の販売実績は,別紙「被告商品販売実績表」(平成15年9月2日付け被告準備書面に添付したもの。なお,同表を以下単に「被告商品販売実績表」という。)のとおりである。損害に関する原告の主張は,過大な数値に基づくものである。
第4当裁判所の判断1争点1(原告各表示が,原告の商品等表示として,需要者の間で周知なものとといえるか)について(1)本件における事実関係証拠(甲2ないし7,12,14ないし23,26ないし28,33ないし43,75ないし99,145ないし232,244)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の各事実が認められる。
@平成5年(1993年)7月24日付け繊研新聞(甲16)に,「米アンティークバイク『インディアン』ウエア発売」との見出しの下,訴外Aを社長とするインディアンモトサイクルジャパン(原告会社)が設立され,同年秋から,「インディアン」をイメージキャラクターにした商品の輸入販売及びライセンス事業が開始される旨の記事が掲載された。
また,同日付け日経流通新聞(甲17)にも,「米国のオートバイメーカー,インディアン・モトサイクル社(マサチューセッツ州)のライセンス供与を行っている『インディアン・モトサイクル・ジャパン』(東京・渋谷,スコット・A社長)は,米国で人気上昇中のアンティークバイク『インディアン・モトサイクル』関連商品のライセンス事業を,国内で展開する。」,「『インディアン』は1901-53年まで製造された高級バイクで,米国を象徴するブランドの一つ。会社は53年に解散したが,実業家のB氏が92年1月に再建した。」との各記載を含む記事が掲載された。
A「POPEYE」1993年(平成5年)11月10日号(甲18)に,「1940年代,アメリカでハーレー・ダヴィッドソンと人気を二分したバイクメーカーがインディアン・モトサイクル社」であり,そのロゴグッズは,「アメリカを象徴するトレードマークのひとつとして,‥‥‥未だに根強いインディアン・マニアを持つほどの存在」であるところ,これらのロゴグッズがアパレルなどのキャラクターグッズとして復活しており,「米国では既にブームとなっている模様」で,「日本でもブーム着火は時間の問題だといえる。」との記事が掲載された。
B若い男性向けのカジュアルファッションの大手専門店で配布されている月刊広報誌「DICTIONARY」平成6年(1994年)1月号(甲20)に,原告表示2(ヘッドドレスロゴ)を表示した原告及び訴外サンライズの広告が掲載された。
原告は,このころ,若者向けカジュアルファッション流行の発信地として知られる東京都内の渋谷道玄坂に,「インディアン」ブランドを使用した衣類等を販売する直営店(基幹店)を開設した。
C平成6年ころ,原告のマスターライセンシーである訴外サンライズは,「インディアン」ブランドを使用したバッグの製造販売につき,訴外マルヨシとサブライセンス契約を締結した。
訴外マルヨシは,同年5月ころ,展示会を開催して原告各表示を付したバッグの製造販売を開始し,「グッズプレス」1994年(平成6年)11月号(甲26)及び「フィールド・ギア」1994年(平成6年)12月号(甲27)において,原告各表示を付したバッグ,Tシャツ等の商品広告が掲載された(これらの広告においては,問い合わせ先として,訴外サンライズないし同マルヨシが記載されている。)。
Dまた,訴外サンライズは,「インディアン」ブランドを使用した革製ジャケットの製造販売につき,訴外西澤株式会社(以下「訴外西澤」という。)とサブライセンス契約を締結した。
訴外西澤は,平成7年10月ころ,パンフレットを配布して原告各表示を付した革製ジャケットの製造販売を開始し,「GETON!」1995年第4号(甲33),「マッシモ」1995年11月号(甲35),「Hot・DogPRESS」1995年10月10日号(甲36),「OutRider」1995年11月号(甲37),「エム・エー・ワン」1995年12月号(甲38),「FINEBOYS」1995年12月号(甲39),同1996年1月号(甲42)及び「BOON」1996年1月号(甲41)においては,いずれも「インディアン」なる名称の下に革製ジャケットの広告が掲載された(これらの広告においては,問い合わせ先として,原告のサブライセンシーである訴外西澤が記載されている。もっとも,掲載された商品のすべてに原告各表示が現実に使用されているのか,使用されているとして,具体的にどのような態様で使用されているかは,証拠上,明確でない。)。
E他方,「POPEYE」1995年(平成7年)6月号(甲28),「FINEBOYS」1995年7月号(甲29),同年9月号(甲30),同年10月号(甲31),1996年(平成8年)12月号(甲54),「MONOコレクション」平成8年9月発行(甲52),同年12月発行(甲56),「BOON」1996年9月号(甲53),「ファインマックス」1997年(平成9年)10月号(甲57),「HOTBIKE」1997年11月号(甲58)には,「インディアン」なる名称の下,被告東洋エンタープライズ株式会社を問い合わせ先として,インディアンロゴ等を付して使用した革製ジャケット等の広告が掲載されている(もっとも,掲載された商品のすべてにインディアンロゴ等が現実に使用されているのか,使用されているとして,具体的にどのような態様で使用されているかは,証拠上,明確でない。)。
F1997年(平成9年)5月20日付け(甲72)繊研新聞には,原告表示1(インディアンロゴ)を大書して原告の同年秋物・冬物コレクション(展示会)の開催を知らせる広告が掲載され,同年6月10日付け同新聞(甲75)には,原告表示1を胸に付した衣服(トレーナー)の写真と共に「インディアンモトサイクルカンパニージャパン‥‥‥は,秋冬物から『インディアン』ブランドにニット・カットソーを加え,ライセンスビジネスを強化する。」との記事が掲載された。
また,「ボディファッション」1997年(平成9年)8月号(甲79)には,原告表示3(原告商標)を掲げ,「『インディアン』のライセンス事業拡大」,「アンダーウエア・ソックス業界に参入」との2段の見出しで始まる公告記事が,「LEGFASHION」1997年9-10月号(甲80)には,原告表示1(インディアンロゴ)及び原告表示3(原告商標)を掲げ,「ニットなど加え,ライセンス事業を拡大」との見出しの下に,原告の「インディアン」ブランドに関する事業について説明する広告記事が,それぞれ掲載された。
G「イージーライダーズジャパン」1997年(平成9年)12月号(甲82)には,原告を問い合わせ先として,インディアンロゴ等を付した衣類等の広告が掲載され,「ポパイ」1998年(平成10年)1月10/25日号(甲85),同年3月25日号(甲89),「メンズエクストラ」同年4月号(甲92)には,原告各表示を付した衣服,オートバイ模型,自転車等の広告が掲載された。
H1998年(平成10年)5月27日付け繊研新聞(甲94)に,原告表示1(インディアンロゴ)を掲げて原告会社の同年秋物・冬物コレクション(展示会)の開催を知らせる広告が掲載され,同年6月11日付け同新聞(甲99)には,「インディアンモトサイクルカンパニージャパン‥‥‥は,今秋冬物からカジュアルブランドの『インディアン』に“レッド・アンド・ゴールド”ラインを新設する。」との記事が掲載された。
I2000年(平成12年)1月から12月にかけて,「東京ストリートニュース!」,「BOYSRUSH」,「Lightning」,「Free&Easy」,「BORN’BiKERS」をはじめとする10種類前後の若者向けカジュアルファッション月刊誌に,毎月のように,原告各表示を付したTシャツ,帽子,ジャケット等に関する原告の広告宣伝及び紹介記事が掲載された(甲149以下)。
「東京ストリートニュース!」2000年(平成12年)3月号(甲158)には,原告各表示を付した原告の衣類等の広告とともに,「バイカー,ネイティブ好きの心をくすぐる,今やヤロウファッションを語る上で欠かせないのがインディアンモトサイクル。休日のオープン前ともなれば店の前には列ができ,限定キャップはプレミアが付くほどの人気なんだ。ファションリーダー・Cが着始めて火が付いたって話も有名。」との文章が掲載されており,「BOYSRUSH」2000年(平成12年)4月号(甲160)には,「インディアンモトサイクルをたまには違う気分で着たい」との見出しの下,「インディアンモトサイクル,今,すげー人気だよな。でも,みーんな同じような着方してないか?」との文章とともに原告の衣類の広告写真が掲載されている。
J原告各表示に関する原告のライセンス先及びライセンス商品は,平成12年10月現在,三竹産業(皮革製品),元林(ライター等),兼松日産農林(マッチ),プラニングジャパン(カット&ソー商品),福井めがね工業(眼鏡),丸石自転車(自転車),ライフギアーコーポレーション(鞄類)及びオーエイチプラン(ライダー用皮革製品)の合計8社に上った(甲147)。
また,原告は,原告各表示を付したカット&ソー,ニット類,デニム製品,バッグ類,ジュエリー及びアクセサリー類,皮革製品,帽子等の各商品を自ら製造又は輸入して販売し,平成12年9月には,前記渋谷の1号店に続き,直営店の2号店を福岡市内にオープンした。
K2000年(平成12年)12月から2002年(平成14年)7月にかけて,「BOYSRUSH」,「Lightning」,「smart」,「Free&Easy」,「BORN’BiKERS」をはじめとする10種類前後の若者向けカジュアルファッション雑誌及び「KyushuWalker」,「シティ情報Fukuoka」等の地方誌において,毎月のように,原告各表示等を付したジャケット,ブルゾン,デニムパンツ,スニーカー,眼鏡,アクセサリー及びライター等に関する原告等の広告宣伝及び紹介記事が掲載された(甲176以下)。
上記のうち,例えば「RIDERSCLUB」2000年(平成12年)12月号(甲177)には,「ハーレーを凌いだビッグブランド」との小見出しとともに,背中にインディアンロゴ等を付した黒革のライダージャンパーの写真が掲載されている。また,「smart」2002年(平成14年)5/13&5/27号(甲221)には,原告表示1(インディアンロゴ)を掲げ,「インディアン,春の新作紹介。」との見出しの下に,春物のTシャツ,スニーカー,バッグ等の原告の商品が写真とともに紹介されているが,そこには,「『インディアン』って聞くと,あのネイティヴアメリカンの濃ゆ〜いスタイルを思い描きがち。けれど,ここのスタイルはちと違う。」との記載がある。これは,「インディアン」ブランドが,若者向けカジュアルブランドファッションの中でも,いわゆるネイティブ系のブランドとして一般的なものであることを前提にした記載である。
Lこの間,原告は,平成13年7月ころには,直営店の3号店である久留米店を開店し,平成14年9月ころには,4号店である神戸店を開店した。
原告が直接取り引きする小売店は,平成14年7月ころ現在で,全国100店舗近くに及び(甲229),原告のライセンシーである前記プラニングジャパンの取引先小売店は全国で150店舗近く(甲230),同じく原告のライセンシーである前記オーエイチプランの取引先小売店は全国で70店舗以上に及ぶ(甲231の1)。
(2)原告各表示の周知性上記(1)において認定したとおり,原告による「インディアン」のブランドビジネスは,「POPEYE」平成5年11月10日号に,1940年代にアメリカでハーレー・ダヴィッドソンと人気を二分したオリジナル・インディアン社のロゴグッズが復活しており,米国では既にブームとなっている模様で,日本でもブーム着火は時間の問題との記事が掲載された状況の下(前記(1)A),若い男性向けカジュアルファッションの大手専門店において無料で配布されている月刊広報誌に広告を掲載し,東京都内の渋谷道玄坂に,「インディアン」ブランドを使用した衣類等を販売する直営店(第1号店)を開設したことに始まる(同B)。
訴外サンライズを介して原告からライセンスを受けた訴外マルヨシは,平成6年5月ころ,原告各表示を付したバッグの製造販売を開始し,これに伴い,同年11月から同年12月にかけて,2種類程度の雑誌に,原告各表示を付した訴外マルヨシのバッグ等の広告が掲載された(同C)。また,同様に訴外サンライズを介して原告からライセンスを受けた訴外西澤は,平成7年10月ころ,原告各表示を付したジャケットの販売を開始し,これに伴い,同年10月から翌平成8年1月にかけて,5ないし6種類の雑誌に,「インディアン」の名称の下,訴外西澤の製造販売する革製ジャケットの広告が掲載された(同D)。
その後も原告のライセンスビジネスは拡大し(同FないしH),平成12年に入ると,10種類前後の若者向けカジュアルファッション雑誌において,毎月のように,原告各表示等を付したTシャツ,帽子,ジャケット等に関する原告の広告宣伝及び紹介記事が掲載されるようになり,「バイカー,ネイティブ好きの心をくすぐる,今やヤロウファッションを語る上で欠かせないのがインディアンモトサイクル。休日のオープン前ともなれば店の前には列ができ,限定キャップはプレミアが付くほどの人気なんだ。ファションリーダー・Cが着始めて火が付いたって話も有名。」(甲158)との記載や,「インディアンモトサイクル,今,すげー人気だよな。でも,みーんな同じような着方してないか?」(甲160)との記載が見られるようになった(同I)。原告のライセンス先(ライセンス商品)は,平成12年10月現在で,三竹産業(皮革製品),元林(ライター等),兼松日産農林(マッチ),プラニングジャパン(カット&ソー商品),福井めがね工業(眼鏡),丸石自転車(自転車),ライフギアーコーポレーション(鞄類)及びオーエイチプラン(ライダー用皮革製品)の合計8社に上った(同J)。
上記によれば,原告各表示は,平成12年10月ころには,若年男性向けのいわゆるアメリカンカジュアル系のブランドファッション市場において,原告の商品等表示として,需要者の間に広く認識された(不正競争防止法2条1項1号)ものと認められる。
(3)周知性の獲得時期についてところで,第3,1(原告の主張)記載のとおり,原告は,原告各表示は,平成6年5月ころに,既に原告の商品等表示として周知であったと主張する。
しかしながら,これに先立つ平成5年11月に,日本でも「インディアン」ブランドのブーム着火は時間の問題との記事が掲載され,そのころから,原告は,若い男性向けカジュアルファッションの大手専門店において無料で配布されている月刊広報誌に広告を掲載するなどし,「インディアン」ブランドの宣伝に努めていたものの((1)A,B),平成6年5月ころの時点においては,証拠上原告の最初のライセンシーと認められる訴外マルヨシとのライセンスビジネスが開始し,原告各表示等を付したバッグが市場に流通し始めたばかりであるから(同C),この時点で,原告各表示が原告のライセンスビジネスにかかる商品等表示として市場に浸透し,需要者の間に広く認識されていたということはできない。原告の上記主張は採用できない。
また,被告各標章の使用が開始された平成7年6月ころについてみても,上記の事情に加え,平成6年11月から同年12月にかけて,2種類程度の雑誌に,原告各表示等を付したバッグ等の広告が掲載された事実が認められるにとどまるから,この時点において,原告各表示が周知になったということもできない。
さらにいえば,その後の平成7年10月ころ,原告からライセンスを受けた訴外西澤が,原告各表示等を付したジャケットの販売を開始し,同年10月から翌平成8年1月にかけて,5ないし6種類の雑誌に,「インディアン」の名称の下,訴外西澤の製造販売する革製ジャケットの広告が掲載されたが,原告のライセンスビジネスは,いまだ本格的に展開する途上にあり,この時点で,被告も原告各表示とほぼ同一の標章を使用していたものと認められ((1)D),原告各表示が商品の出所として原告を表示するものと認識されていたことをうかがわせる客観的な資料が存在しないことを併せ考えると,平成7年10月の時点はもちろんのこと,平成8年の時点においても,原告各表示が原告の商品等表示として周知であったとは認められない。
上述したところは,東京高等裁判所が,原告の提起した審決取消訴訟(東京高裁平成14年(行ケ)第140号)において,原告表示1(インディアンロゴ)を構成要素の1つとする結合商標である原告商標(原告表示3)について,周知性の立証のため原告が提出した約160以上に及ぶ多数の書証(そのうち相当数のものは,本件訴訟で提出された書証と同一であるとうかがわれる。)を精査した上,同商標は,その登録査定時である平成7年3月30日の時点において,原告に係る被服等を表示するものとして周知であったとまで認めることはできないとの判断を示し,平成14年12月27日付けで原告の請求を棄却する旨の判決(乙46)をしたこと及び同判決が平成15年6月12日付け最高裁の上告不受理決定により既に確定していることからも,裏付けられるというべきである。
2争点2(被告標章1ないし17が,それぞれ原告各表示に類似するか)について原告表示1(インディアンロゴ)は,特徴ある字体の筆記体英文字「Indian」を横一列に配したものであり,「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
原告表示2(ヘッドドレスロゴ)は,羽根飾りを冠した右向きインディアンの横顔図(インディアン図形)の中央部にインディアンロゴを配した結合商標であるが,表示全体及び中央部のインディアンロゴの部分が見る者の目をひく部分であり,これらからはいずれも「インディアン」の称呼及び「北米原住民」の観念を生ずる。
また,原告表示3(原告商標)は,@インディアン図形,Aインディアンロゴ及びB下段に小書された筆記体英文字「IndianMotocycleCo.,Inc.」(モトサイクルロゴ)から構成される結合商標であるが,外観上一見して見る者の目をひく@とその中央に配されたAを組み合わせた部分が,自他商品識別力の高い要部と認められるところ,この部分から,「インディアン」の称呼及び「北米原住民」の観念を生ずる。また,下段のBの部分(モトサイクルロゴ)については,上段のインディアンロゴを中央に配したインディアン図形と視覚上分離して見て取ることができる上に,その構成に照らし,前者が後者の付記的部分にとどまるとはいえず,両者を常に一体不可分に認識すべき格別の理由もないから,モトサイクルロゴの部分も,独立して商品の識別機能を果たし得るものと認められる。しかるところ,同ロゴの「Co.,Inc.」の部分は,一般に株式会社等の法人組織を指す英文表記「CompanyIncorporated」の略語として知られ,かつ,しばしば用いられるものであるから,モトサイクルロゴは,全体として会社名を表したものと認識でき,このような場合,「Co.,Inc.」を除いた「IndianMotocycle」の部分だけが認識・把握され,取引上通用することも十分あり得るというべきである。
上記を総合すれば,原告表示3においては,表示(商標)全体のほか,@Aを組み合わせた部分及びBの部分を,いずれも自他商品識別力を有する要部と認めることができ,同表示からは,「インディアン」はもちろんのこと,「インディアンモトサイクルシーオーインク」,「インディアンモトサイクルカンパニーインク」のほか,「インディアンモトサイクル」の各称呼を生ずるとともに,オートバイで山道や原野を走る競技が「モトクロス」ないし「モトクロスレース」と一般に称されるなど,「モト/Moto」が「モーター/Motor」の簡略語として通用している実情にかんがみれば,「北米原住民」のほか,「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」及び「『インディアンモトサイクル』という名称のオートバイ(自動二輪車)を扱う会社」の各観念をそれぞれ生ずるというべきである。
以上を前提に,被告各標章と原告各表示の類否を判断する。
ア被告標章1は,大きな黒地の楕円形の中に白抜きで筆記体英文字「Indian」を大書し,その下に小さな活字体英文字「APIECEOFAMERICANHISTORY」を横一列に配してなる結合標章である。
字体の大きさが明らかに異なること,及び,下段の活字体英文字「APIECEOFAMERICANHISTORY」が一般名詞の組み合わせからなる修辞語句であり,格別の識別力を有しないことに照らし,被告標章1の要部が中央に大書された筆記体英文字「Indian」であるのは明らかであるところ,この要部からは,原告各表示と同様に「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章1は原告各表示に類似する。
イ被告標章2は,特徴ある字体の筆記体英文字「Indian」と,活字体英文字「ARROW”50S」とを白抜きで横一列に配してなる。
「Indian」と「ARROW”50S」とでは字体が異なる上,その間には一文字分のスペースが存すること,また,「ARROW”50S」の部分から特定の観念が生じにくく(オリジナル・インディアン社が1950年代に製作したバイクの車種「ARROW」を指すものと推測されるが,一般の需要者が直ちにこのような内容を観念するのは困難である。),格別の識別力を有しないことからすると,被告標章2の少なくとも要部の1つとして,「Indian」が抽出されるというべきところ,そこからは,原告各表示と同様に「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章2は原告各表示に類似する。
ウ被告標章3は,風になびく旗あるいはオートバイの燃料タンク部を模したような形の図形を背景に,その中央に筆記体英文字「Indian」を大書し,その右下に小書した筆記体英文字「Eighty」を配した結合標章である。
上記の構成態様からして,被告標章3の要部が中央に大書された「Indian」であるのは明らかであるところ,そこからは,原告各表示と同様に「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章3は原告各表示に類似する。
エ被告標章4は,中央に筆記体英文字「IndianMotorcycle」をやや右上がりに大書し,その上段に活字体英文字「WORLD'SFINEST」を,下段に活字体英文字「SPRINGFIELD,MASS.」をそれぞれ小書した構成からなる。
「IndianMotorcycle」の字が格段に大きい上に,上段の「WORLD'SFINEST」は一般的な修辞語句であり,下段の活字体英文字「SPRINGFIELD,MASS.」は地名(マサチューセッツ州スプリングフィールド)であって,いずれも識別力を有しないから,被告標章4の要部が中央に大書された「IndianMotorcycle」であるのは明らかである。この「IndianMotorcycle」からは,「インディアンモーターサイクル」の称呼及び「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」の観念が生じるところ,前者は原告表示3から生じる称呼の1つである「インディアンモトサイクル」と類似し,後者は同表示から生じる観念の1つである「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」と同一である。
したがって,被告標章4は原告表示3に類似する。
ところで,上記「IndianMotorcycle」の「I」及び「M」は,いずれも大文字で他の文字より大書されており,「Indian」と「Motorcycle」は構成上可分である上に,オートバイを示す「Motorcycle」という言葉をインディアン(北米原住民)を示す「Indian」と結びつけて使う必然性はなく,「IndianMotorcycle」を一連一体にのみ称呼観念すべき理由はないから,「IndianMotorcycle」のほか,「Indian」の部分も要部として抽出されるというべきである。しかるところ,この「Indian」の部分からは,原告各表示と同様に「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章4は原告各表示に類似する。
オ被告標章5は,中央に活字体英文字「FIREWATER」及び「SALOON」を2段に配し,その上段に炎が燃え上がる様子を形取った図形をあしらい,下段に特徴ある字体の筆記体英文字「Indian」をそれぞれ配してなる。
「FIREWATER」及び「SALOON」からやや離れた下段に,これらの活字体英文字と変わらない大きさの字体で筆記体英文字「Indian」が配されていることからして,この「Indian」の部分が,少なくとも要部の1つとして抽出されるというべきところ,この部分からは,原告各表示と同じ「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章5は原告各表示に類似する。
カ被告標章6は,筆記体英文字「Indian」及び「Motorcycle」を,その間に「Motorcycle」とほぼ同じ横幅の間隔を空けて,横一列に並べてなる標章である。
被告標章6を一連一体に称呼観念した場合には,「インディアンモーターサイクル」の称呼及び「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」の観念が生じるところ,前者は原告表示3から生じる称呼の1つである「インディアンモトサイクル」と類似し,後者は同表示から生じる観念の1つである「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」と同一である。
したがって,被告標章6は原告表示3に類似する。
また,上記の構成態様からして,「Indian」の部分が独立した識別力を有することもあり得るものと認められ,上記「Indian」も要部の1つとして抽出されるというべきところ,この部分からは,原告各表示と同じ「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章6は原告各表示に類似する。
キ被告標章7は,中央に筆記体英文字「Indian」を白抜きで大書し,その上段に筆記体英文字「WorldsFinest」を,下段に活字体英文字「MOTORCYCLE」を白抜きで配した構成からなる。
「Indian」が,上記「WorldsFinest」及び「MOTORCYCLE」に比して格段に大きな字体で中央に大書されているその構成態様に照らし,「Indian」の部分が要部の1つであるのは明らかであるところ,この部分からは,原告各表示と同じ「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章7は原告各表示に類似する。
ところで,上記「WorldsFinest」は何ら識別力を持たない修辞部分である一方で,下段の「MOTORCYCLE」は中央の「Indian」と一連一体に称呼観念され,独立した識別力を持つことが十分あり得るから,被告標章7からは,「インディアンモーターサイクル」の称呼及び「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」の観念が生じ得る。前者は原告表示3から生じる称呼の1つである「インディアンモトサイクル」と類似し,後者は同表示から生じる観念の1つである「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」と同一である。
したがって,この点からも被告標章7は原告表示3に類似する。
ク被告標章8は,筆記体英文字「IndianMotorcycle」を横一列一連に白抜きで配した標章である。
この標章からは,「インディアンモーターサイクル」の称呼及び「北米原住民(インディアン)のモーターサイクル(オートバイ)」の観念を生じるところ,前者は原告表示3から生じる称呼の1つである「インディアンモトサイクル」と類似し,後者は同表示から生じる観念の1つである「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」と同一である。
したがって,被告標章8は原告表示3に類似する。
ところで,上記「IndianMotorcycle」の「I」及び「M」は,いずれも大文字で他の文字より大書されており,「Indian」と「Motorcycle」は構成上可分である上に,オートバイを示す「Motorcycle」という言葉をインディアン(北米原住民)を示す「Indian」と結びつけて使う必然性はなく,「IndianMotorcycle」を一連一体にのみ称呼観念すべき理由はないから,「IndianMotorcycle」のほか,「Indian」の部分も要部として抽出されるというべきである。しかるところ,この「Indian」の部分からは,原告各表示と同じ「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章8は原告各表示に類似する。
ケ被告標章9は,旗(フラッグ)の形を基調にしたような枠取りを背景に,中央に筆記体英文字「Indian」を大書し,この「Indian」の上下に同じ字体で「FORSBERG」と「MOTORCYCLE」を分けて配し,さらに「MOTORCYCLE」の下段に「SEATTLEWASH.」を配してなる結合標章である。
上記「Indian」が,他の活字体英文字の構成要素と可分であり,かつ,他の構成要素より大書されていること,その一方で,最下段の「SEATTLEWASH.」が「ワシントン州シアトル」を表す固有名詞であり,識別力を有しない部分であることなどからすれば,被告標章9の要部が中央に大書された筆記体英文字「Indian」であるのは明らかである。しかるところ,この部分からは,原告各表示と同じ「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章9は原告各表示に類似する。
また,上記「FORSBERG」が識別力を有しない固有名詞である一方で,同「MOTORCYCLE」はその上に配された「Indian」と一連一体に称呼観念され,独立した識別力を有することがあり得ると認められるから,被告標章9からは,「インディアンモーターサイクル」の称呼及び「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」を生じ得る。しかるところ,前者は原告表示3から生じる称呼の1つである「インディアンモトサイクル」と類似し,後者は同表示から生じる観念の1つである「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」と同一である。
したがって,この点からも被告標章9は原告表示3に類似する。
コ被告標章10は,旗(フラッグ)の形を基調にしたような枠取りを背景に,中央に筆記体英文字「IndianMotorcycle」をやや右上がりに大書し,その上部に筆記体英文字の文章「Here'stheSecretof」を2段に分けて,下部に活字体英文字の文章「ONLYHEHASTHEMIRACLESPRINGFRAME」を3段に分けてそれぞれ配し,さらに左上には,羽根飾りを冠した笑うインディアンの顔を配してなる結合標章である。
格段に大きな字体の筆記体英文字「IndianMotorcycle」を,他の構成要素と可分な態様で,中央に右上がりに配したその構成に照らし,上記「IndianMotorcycle」が被告標章10の少なくとも要部の1つであるのは明らかであるところ,この部分からは,「インディアンモーターサイクル」の称呼及び「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」の観念を生じる。前者は原告表示3から生じる称呼の1つである「インディアンモトサイクル」と類似し,後者は同表示から生じる観念の1つである「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」と同一である。
したがって,被告標章10は原告表示3に類似する。
ところで,上記「IndianMotorcycle」の「I」及び「M」は,いずれも大文字で他の文字より大書されており,「Indian」と「Motorcycle」は構成上可分である上に,オートバイを示す「Motorcycle」という言葉をインディアン(北米原住民)を示す「Indian」と結びつけて使う必然性はなく,「IndianMotorcycle」を一連一体にのみ称呼観念すべき理由はないから,被告標章10からは,「IndianMotorcycle」のほか,「Indian」の部分も要部として抽出されるというべきである。しかるところ,この「Indian」の部分からは,原告各表示と同様に「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章10は原告各表示に類似する。
サ被告標章11は,中央に羽根飾りとバンダナを冠した右向きの髑髏の図形及び2段に分けて表記した活字体英文字「IndianMotorcycle」を配し,これら中央の構成部を楕円形で囲むように,上部に活字体英文字「VARDCOMPANYOF」を,下部に活字体英文字「PASADENA」及び「CALIFORNIA」を配した構成からなる。
中央部を囲むように配された「VARDCOMPANYOF」,「PASADENA」及び「CALIFORNIA」は,一体となって「カリフォルニア州パサダナのヴァード・カンパニー(ヴァード社)」を表すものであり,このうち「VARD」の部分は,会社を表す語である「COMPANY」がこれに続くことから,商品の出所たる会社を表す語と認識される可能性があり,商品出所の識別力を有する部分となり得る。しかしながら,他方,中央に配された上記髑髏の図及び「IndianMotorcycle」もまた,一体となって見る者の目を強くひくものであって,要部となり得る部分というべきである。そして,髑髏の図と筆記体英文字「IndianMotorcycle」は構成上可分であり,かつ,必ずしも結びつけて観念されるものでもないから,髑髏の図も「IndianMotorcycle」も,それぞれ独立した要部として抽出されるものと認められる。しかるところ,この「IndianMotorcycle」からは,「インディアンモーターサイクル」の称呼及び「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」の観念を生じる。前者は原告表示3から生じる称呼の1つである「インディアンモトサイクル」と類似し,後者は同表示から生じる観念の1つである「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」と同一である。
したがって,被告標章11は原告表示3に類似する。
ところで,上記「IndianMotorcycle」は,「Indian」と「Motorcycle」が2段に分けて配しており,これらを一体にのみ把握すべき理由はないから,「Indian」の部分も要部として抽出されるというべきである。この「Indian」の部分からは,原告表示1並びに原告表示2及び3の各要部を構成するインディアンロゴとほぼ同一の外観(字体)を生じるほか,原告各表示と同様に「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章11は原告各表示に類似する。
シ被告標章12は,クラシックなオートバイにまたがったライダー3人からなる図形標章であり,これらライダーの着衣の胸には,いずれも筆記体英文字「Indian」が表示されている。
並んだライダー3人の胸に表示された「Indian」は,被告標章12の中でも,図形それ自体とともに一見して見る者の注意をひく部分であり,上記「Indian」が同標章の要部の1つとして抽出される。しかるところ,この部分からは,原告表示1並びに原告表示2,3の要部を構成するインディアンロゴとほぼ同一の外観(字体)を生じるほか,原告各表示と同様に「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章12は原告各表示に類似する。
ス被告標章13は,中央部のガソリンタンクに筆記体英文字「Indian」を明瞭に表示したオートバイと,その背後に掲げられた「WORLD'SMOSTMODERNMOTORCYCLES」,「RevolutionaryNewARROWandSCOUT」等の英文字表記が記載された横断幕が組み合わされて構成された標章である。
「WORLD'SMOSTMODERNMOTORCYCLES」(世界(米国)で最もモダンなオートバイ),「RevolutionaryNewARROWandSCOUT」(革命的な新車「アローとスカウト」)等の部分は,その配置された場所や意味内容に照らし識別力が薄弱である。他方,オートバイのガソリンタンクに付された「Indian」は唯一白抜きで標章全体の中央部分に配されており,見る者の目をひくから,この部分が少なくとも要部の1つとして抽出されるというべきである。しかるところ,この部分からは,原告表示1並びに原告表示2及び3の各要部を構成するインディアンロゴとほぼ同一の外観(字体)を生じるほか,原告各表示と同様,「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章13は原告各表示に類似する。
セ被告標章14は,中央に2本線の枠付で筆記体英文字「IndianMotorcycle」を大書し,その上部に「WORLD'SFINEST」を,下部に「BRAND」を分けて配し,さらに下段に会社名を表す活字体英文字「RESTORATIONCO.」を,最下段に住所を表す「610N.QUEENSAVE.LINDENHURST,NY11757」等を配して,これら文字を囲む燃え上がる炎をあしらったような枠の最上部には,羽根飾りを冠した笑うインディアンの顔を配してなる結合標章である。
2本線の枠付で中央に大書されている上に,他の構成要素と構成上可分であることからすれば,上記「IndianMotorcycle」が被告標章14の少なくとも要部の1つとして抽出されるというべきところ,この部分からは,「インディアンモーターサイクル」の称呼及び「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」の観念が生じる。前者は原告表示3から生じる称呼の1つである「インディアンモトサイクル」と類似し,後者は同表示から生じる観念の1つである「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」と同一である。
したがって,被告標章14は原告表示3に類似する。
ところで,上記「IndianMotorcycle」の「I」及び「M」は,いずれも大文字で他の文字より大書されており,「Indian」と「Motorcycle」は構成上可分である上に,オートバイを示す「Motorcycle」という言葉をインディアン(北米原住民)を示す「Indian」と結びつけて使う必然性はなく,「IndianMotorcycle」を一連一体にのみ称呼観念すべき理由はないから,被告標章14からは,「IndianMotorcycle」のほか,「Indian」の部分も要部として抽出されるというべきである。しかるところ,この「Indian」の部分からは,原告各表示と同じ「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章14は原告各表示に類似する。
ソ被告標章15は,中央上部の筆記体英文字「IndianMotorcycle」の上段に大書した活字体英文字「RUNTOTHESUN」を配し,また,下段に女性の座像を形取った図形を両脇に伴った活字体英文字「GRAHAMS」及び「RESTORATION&CUSTOM」を配した上,最下段に「SO,CAL」を配した構成からなる。
中央下部から最下段にかけて配された活字体英文字「GRAHAMS」,「RESTORATION&CUSTOM」及び「SO,CAL」は,一体となって「南カリフォルニアの『グラハム』(人名を表す固有名詞である。)修理ないし改造店」を観念させるものであるが,配置された場所や大きさに照らすと,格別の識別力を有していないということができる。他方,中央上部に唯一筆記体で配された「IndianMotorcycle」は,他の構成要素と構成上可分であるから,最も大きく書かれた上段の「RUNTOTHESUN」とともに,少なくとも被告標章15の要部の1つとして抽出されるというべきである。しかるところ,この部分からは,「インディアンモーターサイクル」の称呼及び「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」の観念を生じる。前者は原告表示3から生じる称呼の1つである「インディアンモトサイクル」と類似し,後者は同表示から生じる観念の1つである「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」と同一である。
したがって,被告標章15は原告表示3に類似する。
ところで,上記「IndianMotorcycle」の「I」及び「M」は,いずれも大文字で他の文字より大書されており,「Indian」と「Motorcycle」は構成上可分である上に,オートバイを示す「Motorcycle」という言葉をインディアン(北米原住民)を示す「Indian」と結びつけて使う必然性はなく,「IndianMotorcycle」を一連一体にのみ称呼観念すべき理由はないから,被告標章15からは,「IndianMotorcycle」のほか,「Indian」の部分も要部として抽出される。しかるところ,この「Indian」の部分からは,原告各表示と同じ「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章15は原告各表示に類似する。
タ被告標章16は,中央に左右に広げた羽根とインディアンの横顔図を組み合わせた図形を配し,その図形の中に筆記体英文字「IndianMotorcycle」を小書したほか,図形の上部に太い字体で活字体英文字「THEIRONHORSE」を,下部に3段に分けた同様の字体の活字体英文字「FOURCYLINDERCLUBDAYTONABEACHFLORIDA」をそれぞれ大書した構成からなる結合標章である。
上記「THEIRONHORSE」及び「FOURCYLINDERCLUBDAYTONABEACHFLORIDA」は,太い字体で大書されている点で見る者の目をひくが,中央部に配された筆記体英文字「IndianMotorcycle」を伴う上記図形も同様に見る者の目をひく。
したがって,この図形及び「IndianMotorcycle」を組み合わせた部分も要部というべきであり,そこからは,「インディアンモーターサイクル」の称呼及び「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」の観念を生じる。前者は原告表示3から生じる称呼の1つである「インディアンモトサイクル」と類似し,後者は同標章から生じる観念の1つである「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」と同一である。
したがって,被告標章16は原告表示3に類似する。
ところで,上記「IndianMotorcycle」の「I」及び「M」は,いずれも大文字で他の文字より大書されており,「Indian」と「Motorcycle」は構成上可分である上に,オートバイを示す「Motorcycle」という言葉をインディアン(北米原住民)を示す「Indian」と結びつけて使う必然性はなく,「IndianMotorcycle」を一連一体にのみ称呼観念すべき理由はないから,被告標章16からは,「IndianMotorcycle」のほか,「Indian」の部分も要部として抽出されるというべきである。しかるところ,この「Indian」の部分からは,原告各表示と同じ「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章16は原告各表示に類似する。
チ被告標章17は,別紙「被告標章目録」17記載のとおりの抽象的な図柄の上部に,飾り文字のような特徴ある字体の筆記体英文字「IndianMotorcycle」を大書し,下部に活字体英文字「TheIronHorse」を小書して,それぞれ配してなる結合標章である。
上記の構成から明らかなとおり,最上段に大書された筆記体英文字「IndianMotorcycle」は,他の構成要素と構成上可分であり,かつ,その独特の字体及び大きさからして,見る者の目をひく部分である。したがって,この「IndianMotorcycle」の部分が要部として抽出されるのは明らかであるところ,この部分からは,「インディアンモーターサイクル」の称呼及び「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」の観念を生じる。前者は原告表示3から生じる称呼の1つである「インディアンモトサイクル」と類似し,後者は同表示から生じる観念の1つである「インディアン(北米原住民)のオートバイ(自動二輪車)」と同一である。
したがって,被告標章17は原告表示3に類似する。
ところで,上記「IndianMotorcycle」の「I」及び「M」は,いずれも大文字で他の文字より大書されており,「Indian」と「Motorcycle」は構成上可分である上に,オートバイを示す「Motorcycle」という言葉をインディアン(北米原住民)を示す「Indian」と結びつけて使う必然性はなく,「IndianMotorcycle」を一連一体にのみ称呼観念すべき理由はないから,「IndianMotorcycle」のほか,「Indian」の部分も,それ自体で商品の出所を示し得る部分として抽出される。しかるところ,この「Indian」の部分からは,原告各表示と同じ「インディアン」の称呼及び「北米原住民(インディアン)」の観念を生じる。
したがって,被告標章17は原告各表示に類似する。
以上のとおりであって,被告各標章は,いずれも原告各表示のうちの1又は複数と類似するものと認められる。
3争点3(被告が被告各標章を衣類等に付して使用することが,原告の「商品又は営業と混同を生じさせる行為」に該当するか)について証拠(甲129ないし144)によれば,被告は,被告各標章を,シャツ,ないしセーターの胸(被告標章1,4,6,7,12ないし14,17),背中(同標章5,9ないし11,15及び16)あるいは袖(同標章4,8)の各部分に,さらには,革ジャンパーの襟内側の最下部(同標章2)や帽子に(同標章3),それぞれ付して使用した事実が認められる。
そうすると,被告は,原告が原告各表示を付して使用する商品と競合する商品(衣類等)に,最も需要者の目につきやすい態様で(被告標章1,3ないし17),あるいは,商品の出所を示す態様で(同標章2),被告各標章を使用したということができる。このような被告の行為が,これら各標章を付した上記各商品の出所につき,原告と混同を生じさせる行為であることは明らかである。
被告は,被告各標章は,いずれもデザインとして用いられているものであり,その使用態様からして,商品の出所を示す表示として需要者が意識することはないから,混同は生じない旨を主張するが,上述したところに照らし,採用できない。
4争点4(先使用の抗弁の成否)について上記1ないし3で判示したところによれば,被告が被告各標章を衣類等に付して使用する行為は,原告の周知の商品等表示と類似する商品等表示を使用し,原告の商品と混合を生じさせる行為(不正競争防止法2条1項1号)に該当する。
しかるに,被告は,同法12条1項3号に基づく先使用の抗弁を主張しているので,以下,この点につき判断する。
上記1で判示したとおり,原告の商品等表示である原告各表示が周知性を獲得した時期は,証拠上,平成12年10月ころと認められるものであって,原告の最初のライセンシーである訴外マルヨシが原告各表示等を付したバッグの製造販売を開始したばかりの平成6年5月ころはもちろんのこと,被告が被告各標章の使用を開始した平成7年6月ころについても,その時期に原告各表示が周知性を獲得していたとまでは認められない(なお,被告が遅くとも平成7年6月ころに被告各標章を使用していたことについては,第2,2(3)記載のとおり,当事者間に争いはない。ちなみに,「POPEYE」1995年(平成7年)6月25日号(乙7)にインディアンロゴを主体とする標章を付した被告取扱いにかかるジャケット及び帽子の紹介記事が,「FINEBOYS」1995年(平成7年)7月号(乙11)にインディアンロゴを付した被告取扱いにかかるブルゾン及びカット・ソーの紹介記事が,それぞれ掲載されていることが認められることに照らし,証拠上も,上記のように認められる。)。
そうすると,被告は,原告の商品等表示(原告各表示)が需要者の間に広く認識される前から,その商品等表示と類似する被告各標章を自らの商品等表示として使用していたものと認められる。
そこで,被告が被告各標章を「不正の目的でなく使用し」(不正競争防止法12条1項3号)たといえるかどうかについて検討する。この点に関しては,前記争いのない事実(第2,2)及び証拠により認められる事実(第4,1)に加え,証拠(甲1〜25,32,44〜67,111〜120,234〜238,240〜243)及び弁論の全趣旨を総合すると,下記の各事実が認められる。
@オリジナル・インディアン社は,1901年にアメリカ合衆国マサチューセッツ州スプリングフィールドで設立され,1923年に「インディアン・モトサイクル・カンパニー」に商号を変更したオートバイ・メーカーである。
同社は,「INDIANMOTOCYCLE」(インディアン・モトサイクル)と略称され,1950年代以前,ハーレー・ダビッドソンと並ぶアメリカ合衆国を代表するオートバイ・メーカーとして知られていた。同社の用いるインディアンロゴ,ヘッドドレスロゴ,インディアン図形,活字体「INDIAN」及び左向きインディアン図形等は,オリジナル・インディアン社の製造販売するオートバイに付された商標として,米国はもとよりヨーロッパや日本でも周知であった。
オリジナル・インディアン社は,1953年に操業を停止し,その後1959年に解散した。「Indian」ブランドのオートバイは,一部の同好者に根強く愛好されていたが,同社は既に解散し,同社の名称を用いた活動も30年以上にわたって行われなかったので,1990年当時,「Indian」(インディアン)ないし「IndianMotocycle」(インディアン・モトサイクル)の商標は,商品の出所識別機能をほとんど失っていた。
A訴外Bは,「Indain」ブランドのオートバイの製造販売を再開すること及びインディアンロゴ,ヘッドドレスロゴ等を使用した「Indain」ブランドの商品に関するライセンスビジネスを展開することを企図して,1990年(平成2年)6月ころ,かつてオリジナル・インディアン社が存在したマサチューセッツ州スプリングフィールドに米国インディアン社(インディアン・モトサイクル・カンパニー・インク)を設立した。
訴外Bによる「インディアン」ブランド復活の動きは,米国の一般紙である「TheDailyNews」1991年(平成3年)7月1日号(甲6)及び「USATODAY」同月5日号(甲7)で報じられた。
上記報道の約4か月後の平成3年(1991年)11月5日,被告は,片仮名からなる被告商標「インディアンモーターサイクル」を商標登録出願した。
B他方,「インディアン」ブランドの将来性に着目した訴外Aは,平成4年(1992年)2月6日,原告商標を商標登録出願し,さらに平成5年6月3日,訴外サンライズと合弁して原告会社を設立した。
平成5年(1993年)7月24日付け繊研新聞(甲16)及び同日付け日経流通新聞(甲17)において,原告会社の設立,並びに,「Indain」ブランド商品の輸入及びライセンスビジネスの展開等が報じられたが,これらの記事においては,「Indain」ブランドは,同年11月の時点で既に米国ではブームを呼んでおり,日本でも「ブーム着火は時間の問題」とされていた。
C原告は,平成5年秋ころから,インディアンロゴ及びヘッドドレスロゴ等が付されてたジャケット,Tシャツ,帽子,バッグ等の輸入販売を行った。また,原告は,平成6年1月から平成7年2月にかけて,ヤングメンズカジュアルの分野で有名な全国展開の専門店において配布されている月刊誌「DICTIONARY」に定期広告するなど,「Indain」ブランドの宣伝に努めた。この広告においても,インディアンロゴ及びヘッドドレスロゴが使用されていた。
訴外サンライズは,インディアンロゴ及びヘッドドレスロゴ等が付されてたジャケット,Tシャツ,帽子,バッグ等の輸入販売を継続する一方で,平成6年に訴外マルヨシとサブライセンス契約を締結した。訴外マルヨシは,同年5月に展示会を行い,上記契約に基づく原告商標の使用を開始し,原告各表示を付したバッグを販売するなどした。
Dすると,被告は,平成6年9月21日に,インディアン図形,インディアンロゴ及び活字体英文字「MOTOCYCLE」を組み合わせた商標並びに左向きインディアン横顔図,インディアンロゴ及び活字体英文字「MOTOCYCLE」等を組み合わせた商標を登録出願した。
また,被告は,平成7年5月ころから,(ア)インディアンロゴ,(イ)インディアンロゴ及び活字体英文字「MOTOCYCLE」を組み合わせた商標,(ウ)インディアンロゴ,左向きインディアン横顔図及び英文字筆記体「MotorcycleCo.」を組み合わせた商標等,いずれもインディアンロゴを主体に構成された商標を付したジャケット,シャツ,帽子等の輸入,製造販売及び広告を開始した。
E原告は,上記の被告によるインディアンロゴ等の使用に対し,原告商標が登録される前,平成7年6月30日付け「警告書」(甲32)をもって,英文字「Indian」等の使用は,既に登録査定を受けた原告商標の登録により生じる商標権の侵害に当たり,被告が上記使用を継続する場合には,民事・刑事上の責任を追及するつもりである旨通知した。
これに対し,被告は,出願中の原告商標は登録されるべきものではないと考えており,設定登録された場合には,直ちに無効審判を申し立てるつもりであるとともに,被告の方でも,原告商標の使用が被告商標権を侵害することを理由に,原告に対して法的措置を取るつもりである旨文書で回答した。
F被告は,上記のやり取りの後も,インディアンロゴ等を含む標章を付したジャケット等の製造販売及び広告を継続した。証拠上認められる,被告による被告商標等使用の態様の一例は,以下のとおりである。
(ア)「ポパイ」1995年(平成7年)6月号(甲28)には,ジャンパーに関する広告にインディアンロゴを大書して左向きインディアン図形等と組み合わせた標章が付されている一方で,英文字筆記体「IndianMotorcycle」を付した帽子の写真等が掲載されている。
(イ)「ファインボーイ」1995年(平成7年)7月号(甲29)には,左胸にインディアンロゴを付したシャツ等の写真が掲載されている。
(ウ)「ファインボーイ」同年9月号(甲30)には,インディアンロゴを含む英文字標章を付した帽子の写真等が掲載されている。
(エ)「ファインボーイ」同年10月号(甲31)には,インディアンロゴを含む英文字筆記体の標章「IndianMotocycle」を背中に付したジャンパーの写真が掲載されている。
以上から分かるとおり,被告は,平成7年6月ころから同年10月ころにかけて,被告商標の指定商品に属するジャンパー等に関する広告に,登録商標「インディアンモーターサイクル」と社会通念上同一の範囲にあると認められる英文字「IndianMotorcycle」を使用したものと認められる。
しかしながら,片仮名からなる被告商標を実際に需要者に提供される商品に付した事実は認めることができない。また,英文字活字体「IndianMotorcycle」からなる標章については,これを実質的に同一と認められる英文字標章「INDIANMOTORCYCLE」が,原告商標と全く同じ構成の商標と類似することを理由に,特許庁で拒絶査定を受け,拒絶査定不服審判請求,請求不成立の審決及び審決取消訴訟の提起を経て,平成12年12月21日付けの東京高裁判決により,これを登録しない旨の上記特許庁の審決が確定している。
その一方で,被告は,インディアンロゴを含む多数の標章を実際に商品に付して使用しており,その中には,自ら登録する被告商標から生じる「インディアンモーターサイクル」の称呼ではなく,原告商標から生じる「インディアンモトサイクル」の称呼を生じる英文字筆記体「IndianMotocycle」の使用(上記(エ))も含まれている。
G訴外Aは,平成7年9月29日に原告商標が登録されると,同年10月16日,原告商標権を原告に譲渡した。
原告は,そのころ訴外サンライズを介して訴外西澤とライセンス契約を締結し,訴外西澤は,平成7年から平成8年にかけて,雑誌広告を掲載し,展示会を催すなど,その製造販売する革製レザージャケット等の広告宣伝に努めた。
そのころ,原告は,被告が平成8年の秋冬シーズンからインディアンロゴを付したレザージャケット等の製造販売を開始するとの情報を入手し,原告及び訴外Aは,平成8年5月21日,被告らに対する商標権侵害差止等の訴えを提起した(東京地方裁判所平成15年8月28日判決・同庁平成8年(ワ)第9391号事件)。
これに対し,被告は,同年7月22日,原告らに対する商標権侵害差止等の訴えを提起した(同庁平成8年(ワ)第14026号事件)。また,インディアンロゴ及び活字体英文字「MOTOCYCLE」を組み合わせた商標,インディアンロゴ及び英文字筆記体「Motorcycle」を組み合わせた商標等,インディアンロゴを主体に構成された商標を付したジャケット,シャツ,帽子等の販売を継続した。
H被告は,上記訴訟提起に先立つ平成8年7月19日,英文字活字体「INDIANMOTORCYCLE」を商標登録出願した(ただし,これについては,上記Fで触れたとおり,全く同じ構成の先願商標と類似することを理由に,これを登録しない旨の特許庁の審決が既に確定している。)。
また,被告は,平成9年1月,左向きインディアン横顔図(登録第4145016号)を商標登録出願し,同年3月には,インディアンロゴ及び「Motorcycle」を上下2段に配した商標を登録出願した。
I特許庁は,平成15年3月28日,被告は片仮名の被告商標「インディアンモーターサイクル」を有するところ,あえて英文字「Indian」や「Motocyle」を指定商品に用い,登録商標である被告商標と類似する商標を故意にその指定商品に使用し,他人の業務にかかる商品と混同を生じさせているものであるとして,商標法51条1項の規定に基づき,被告商標の登録を取り消す旨の審決(甲242)をした。
他方,原告商標については,前記第2,2(4)ア記載のとおり,平成15年6月12日付け最高裁の上告不受理決定により,その登録が無効である旨の審決が確定した。
Jちなみに,被告は,米国映画「BIGWEDNESDAY」の中で用いられて有名になった商標「BEARSURFBOARDS」につき,まず片仮名商標「ベアーサーフボード」を出願して登録を受けた上,「BEARSURFBOARDS」に図形を組み合わせた商標を出願し,拒絶査定を受けたにもかかわらず,かかる結合商標を使用する正規のマスターライセンシーである訴外サクラインターナショナルに対し,商標権侵害を理由とする訴訟を提起した。
また,被告は,上記のほかにも,米国のカジュアルスポーツ系のブランドで,商社トーメンの系列会社がライセンシーである「O’NEILL」,米国のビールメーカーであるバドワイザーの主力商品名の1つである「BUDLIGHT」,米国ラスベガスに古くからあるスターダストホテルに由来する「STARDUST」,米国の著名な小説家の固有名詞「MARKTWAIN」,その小説の主人公の固有名詞「TOMSAWYER」,米国国旗の名称であり,米国国防総省の機関紙名でもある「STARSANDSTRIPES」など,海外の著名なブランドないし固有名詞に関連する商標を多数出願している。
上記の事実関係を前提に検討すると,被告は,最も代表的な米国の一般紙である「TheDailyNews」及び「USATODAY」において,「インディアン」ブランド復活の動きが報じられた時から約4か月経過した平成3年(1991年)11月5日に,被告商標を出願している。また,出願中の平成5年(1993年)7月24日,繊研新聞及び日経流通新聞の記事により,原告会社の設立や「Indain」ブランド商品の輸入及びライセンスビジネスの展開等が報道され,「Indain」ブランドは,同年11月の時点で既に米国でブームを呼んでおり,日本でも「ブーム着火は時間の問題」と報じられ,ブランドビジネスの専門業者として,このような状況を知らなかったはずはないのに,平成6年3月31日に被告商標の登録を受けても,自ら登録商標及びこれと実質的に同一の範囲にある商標を使用することはしなかった。また,訴外サンライズが訴外マルヨシと原告商標に関するサブライセンス契約を締結し,訴外マルヨシが平成6年5月ころから実際に原告商標等を付したバッグの販売を開始しても,商標権者としてこれに対応することはしなかった。その一方で,原告らによるインディアンロゴを主体とする各種商標(原告商標を含む。)の使用開始と歩調を合わせるかのように,平成6年9月21日に,インディアン図形,インディアンロゴ及び活字体英文字「MOTOCYCLE」を組み合わせた商標並びに左向きインディアン横顔図,インディアンロゴ及び活字体英文字「MOTOCYCLE」等を組み合わせた商標を登録出願したほか,被告商標の登録から1年以上経過した平成7年5月ころから,(ア)インディアンロゴ,(イ)インディアンロゴ及び活字体英文字「MOTOCYCLE」を組み合わせた商標,(ウ)インディアンロゴ,左向きインディアン横顔図及び英文字筆記体「MotorcycleCo.」を組み合わせた商標等,いずれもインディアンロゴを主体に構成された商標を付したジャケット,シャツ,帽子等の輸入,製造販売及び広告を開始した。
また,被告は,原告からの平成7年6月30日付け警告書に文書で応答した後も,インディアンロゴ等を含む標章を付したジャケット等の製造販売や広告を継続したが,その主な使用の態様は,指定商品に属するジャンパー等に被告商標と社会通念上同一の範囲にあると認められる英文字「IndianMotorcycle」を使用したというものである。被告商標「インディアンモーターサイクル」は,雑誌広告等の上で活字になったにとどまり,現実に需要者に提供される商品について,同商標が付されて使用された事実を認めることはできない。また,上記「IndianMotorcycle」については,これと実質的に同一と認められる英文字商標「INDIANMOTORCYCLE」が,原告商標と全く同じ構成の先願商標と類似することを理由に,これを登録しない旨の特許庁の審決が既に確定していることから分かるとおり,被告商標よりもむしろ当時出願中であった原告商標との類似性が強いと認められる商標である。その一方で,被告が現実に使用したのは,被告商標よりも原告商標との類似の程度が強いと認められるインディアンロゴを含む多数の標章であり,その中には,自ら登録する被告商標から生じる「インディアンモーターサイクル」の称呼ではなく,原告商標から生じる「インディアンモトサイクル」の称呼を生じる英文字筆記体「IndianMotocycle」を含むものも存在する。このような行為は,自ら被告商標を登録し,かつ,原告らが使用する原告商標等の存在を知りながら,あえてその登録商標と同一の範囲ではなく,類似の範囲にある商標を指定商品について使用し,原告の業務にかかる登録する商品と混同を生じさせたものと評価されてもやむを得ない。このことは,これと同趣旨の判断をして,商標法51条1項の規定に基づき,被告商標の登録を取り消した特許庁の審決(甲242)の存在からも,裏付けられるというべきである。
さらに被告については,原告が指摘するとおり,米国映画「BIGWEDNESDAY」の中で用いられて有名になった商標「BEARSURFBOARDS」につき,まず片仮名商標「ベアーサーフボード」を出願して登録を受けた上,「BEARSURFBOARDS」に図形を組み合わせた商標を出願し,拒絶査定を受けたにもかかわらず,かかる結合商標を使用する正規のマスターライセンシーに対し,商標権侵害訴訟を提起した事実,及び,このほかにも,@米国のカジュアルスポーツ系のブランドで,商社トーメンの系列会社がライセンシーである「O’NEILL」,A米国のビールメーカーであるバドワイザーの主力商品名の1つである「BUDLIGHT」,B米国ラスベガスに古くからあるスターダストホテルに由来する「STARDUST」,C米国の著名な小説家の固有名詞「MARKTWAIN」,Dその代表作(小説)の主人公の固有名詞「TOMSAWYER」,E米国国旗の名称であり,米国国防総省の機関紙名でもある「STARSANDSTRIPES」など,海外の著名なブランドないし固有名詞に関連する商標を多数出願している事実が認められるのであって,上述した被告商標の出願・登録の経緯,同商標の実際の使用態様及び原告らとの紛争の経緯に,上記「ベアーサーフボード」に関する商標登録等の各事実を併せ考えれば,被告は,自ら登録商標を使用するよりも,むしろ類似の商標を使用する他者に対して権利行使し,そのことによって経済的利益を得ることを主な目的として,被告商標を出願し,その登録を得たものというべきである。
上記の事情を総合考慮すれば,被告は,「インディアン」ブランドが日本においてブームとなることを予想し,これに便乗することを考えて被告商標を商標登録出願した上で,原告により「インディアン」ブランドを用いたライセンス事業が行われるに至ったことに伴い,被告各標章の使用を開始し,その後,原告の上記ライセンス事業の規模が拡大され,原告各表示が需要者の間に周知となった後においては,原告各表示の周知性に便乗する意図で被告各標章の使用を継続したものと認めることができる。そうすると,平成7年6月から現在に至るまでの被告による被告各標章の使用において,被告が被告各標章を「不正の目的でなく使用し」たものとは認めることはできない。したがって,不正競争防止法12条1項3号に基づく同法の適用除外(先使用の抗弁)をいう被告の主張は,理由がない。
5争点5(差止の必要性)について被告は,現在既に被告各標章を付した商品の販売をしておらず,被告は被告各標章を使用していないものであり,今後使用するつもりもないから,差止めの必要性は存しないと主張する。
しかしながら,証拠上(甲234以下),本訴提起から3年以上を経た平成14年(2002年)に至っても,被告が被告各標章の使用を続けていると認められる上に,既に判示した本件の事実関係に照らせば,「インディアン」ブランドの使用をめぐる原告被告間の紛争は深刻なものであって,被告が今後被告各標章の使用を継続するおそれを否定することはできない。
したがって,差止の必要性はなお存在するものと認められる。被告の上記主張は,採用することができない。
6争点6(原告の損害額)について被告が,遅くとも平成7年6月以後,被告各標章を別紙「使用態様目録」記載の各部位に付して使用したジャケット,シャツ,セーター及び帽子を製造又は輸入し,販売した事実については,当事者間に争いがないところ(前記第2,2(3)),証拠(甲234〜238)によれば,被告は,原告各表示が周知性を獲得した平成12年(2000年)10月以後も,被告標章4を付した半袖Tシャツ及び長袖Tシャツ(その中には,同標章に加えて被告標章8が付されたものもある。)を販売した事実が認められる。
よって,不正競争防止法5条2項1号に基づき使用料相当額損害額を算定するに際し,上記半袖Tシャツ及び長袖Tシャツの販売総額が問題となるが,被告は,平成15年9月2日付け準備書面において,被告商品販売実績表記載のとおり,商品ごとに,出荷時期から同準備書面の提出時期までの期間における,被告各標章を付したジャケット,シャツ,セーター及び帽子の販売数量及び販売総額を開示しており,少なくとも上記期間内に被告が販売した商品の数量が被告商品販売実績表記載の数量を下回らないことは,当事者間に争いがない。しかるところ,同表によれば,上記半袖Tシャツ及び長袖Tシャツの販売総額は,下記計算式に示すとおり6621万0060円であり,これら各商品の平均販売開始時期(出荷時期)は概ね平成10年(1998年)3月と認められる。
512万9460+600万5760+766万7640+640万5600+912万2880+506万8800+590万1120+699万8400+662万1120+728万9280=6621万0060(円)したがって,この販売総額合計に,被告商品販売実績表に記載された上記各商品の平均販売開始時期(平成10年3月)から上記準備書面による開示時期(平成15年8月末日とみるのが相当である。)までの期間である65か月を,原告各表示の周知性獲得時期(平成12年10月)から上記準備書面による開示時期(平成15年8月末日)までの期間である35か月で案分した数値である65分の35を乗じたものが,本件における原告の損害額算定の基礎となる被告の販売総額とみるのが相当というべきである。しかるところ,この販売総額は,下記計算式に示すとおり,3565万円(ただし,1万円未満切り捨て)となる。
6621万0060×35/65≒3565万1570(円)そして,前記認定にかかる我が国において「インディアン」ブランドが展開されるに至った経緯,需要者の間における「インディアン」ブランドの人気,原告各表示の周知性,顧客吸引力,原告のライセンス事業及び被告の事業において対象とされている商品の種類,範囲,原告及び被告の各販売量等の一切の事情を考慮すれば,原告各表示の使用につき通常受けるべき実施料率は,販売額の5%と認めるのが相当であるから,不正競争防止法5条2項1号による原告の損害額は,上記3565万円の5%に相当する178万2500円と認めることができる。
7結論上記において認定判断したところによれば,被告による不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為を根拠とする原告の請求は,被告に対して,被告各標章の使用及びこれを使用した商品の輸入,譲渡等の差止め並びに被告各標章を使用した商品の廃棄を求め,損害賠償金178万2500円及びこれに対する平成10年7月24日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があり,その余は理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官三村量一裁判官青木孝之裁判官吉川泉(別紙)原告表示目録被告標章目録(別紙)使用態様目録商品部位対応する甲号証被告標章1シャツ胸甲129同2ジャケット内側ジッパー合わせ甲130同3帽子前頭部甲131同4シャツ胸甲132,甲137,甲142,甲143シャツ袖甲141,甲144同5セーター背甲133同6シャツ胸甲134同7シャツ胸甲135同8シャツ袖甲136,甲137同9シャツ背甲134同10シャツ背甲132同11シャツ背甲138同12シャツ胸甲139同13シャツ胸甲140同14シャツ胸甲141同15シャツ背甲142同16シャツ背甲143同17シャツ胸甲144(別紙)被告商標目録被告商品販売実績表