関連審決 | 無効2000-35355 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成15行ケ316審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成13行ケ516審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成18行ケ10280審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成12行ケ461審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成7行ケ93 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 識別力 / 識別機能 / 指定商品 / 普通名称(3条1項1号) / 周知商標 / 周知性 / 混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) / 4条1項10号 / 4条1項11号 / 類似性(類否判断) / 結合商標 / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 離隔的 / 取引の実情 / 出所の混同 / 継続的に使用 / 継続 / 非類似 / |
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事件 |
平成
13年
(行ケ)
518号
審決取消請求事件
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原告 塩沢織物工業協同組合 訴訟代理人弁護士 山崎隆夫 同弁理士 庄司建治 被告 白新染織株式会社 訴訟代理人弁理士 吉井剛 同 吉井雅栄 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2002/09/30 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が無効2000-35355号事件について平成13年10月10日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告 主文と同旨 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は、別添審決謄本写し商標目録(以下「商標目録」という。)(1)のとおりの構成からなり、指定商品を商標法施行令別表の区分による第24類「絣織物」とする商標登録第4365149号商標(平成11年1月13日出願、平成12年3月3日設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。 原告は、平成12年6月30日、被告を被請求人として、本件商標の商標登録を無効にすることについて審判を請求した。 特許庁は、同請求を無効2000-35355号事件として審理した上、平成13年10月10日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同月22日、原告に送達された。 2 審決の理由 審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、@本件商標は、商標目録(2)のとおりの構成からなり、指定商品を平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表の区分による第16類(以下「旧16類」という。)「紬織物」とする商標登録第1392047号商標(昭和51年7月6日登録出願、昭和54年9月28日設定登録、以下「引用商標A」という。)、商標目録(3)のとおりの構成からなり、指定商品を旧16類「織物、編物、フェルト、その他の布地」とする商標登録第1434232号商標(昭和52年8月23日登録出願、昭和55年9月29日設定登録、以下「引用商標B」という。)と同一又は類似する商標であって、指定商品においても類似するとして、商標法4条1項11号違反をいう請求人(注、原告)の主張について、本件商標は、引用商標A、Bとは、外観、観念、称呼のいずれの点においても類似するものではなく、全体として出所の混同を生ずるおそれのない非類似の商標であるとし、A本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標(審判甲第7号証の2〜4、本訴甲第12号証の2〜4)と類似する商標であって、その商品に使用するものであり、さらに、審判甲第7号証の4(本訴甲第12号証の4)の「塩沢」の文字自体も商品「織物」において請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であるとして、同項10号違反をいう請求人の主張について、本件商標と請求人に係る審判甲第7号証の2〜4(本訴甲第12号証の2〜4)の商標とは非類似の商標であるとして、本件商標は、同法4条1項11号、10号の規定に違反して登録されたものではなく、同法46条1項1号の無効事由に該当しないから、その登録を無効とすることはできないとした。 |
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原告主張の審決取消事由
審決は、本件商標と引用商標A、Bとの類否の判断を誤り(取消事由1)、 また、「塩沢」の周知性の認定判断を誤った(取消事由2)ものであるから、違法として取り消されるべきである。 1 取消事由1(本件商標と引用商標A、Bとの類否判断の誤り) (1) 審決は、本件商標の要部は、「越後塩沢同人会」の文字部分及び印影「越後塩澤同人會之印」の文字部分であり、引用商標A、Bの要部は、「塩沢織物工業協同組合」の文字部分及び印影「塩澤織物工業協同組合之印」の文字部分であると認定したが、いずれも誤りである。慣例化されている使用の実態、取引の実情、需要者らの注目度等から判断すれば、本件商標の要部は、「塩沢絣」、「伝統工芸品」及び「越後塩沢同人会」の各文字部分であり、引用商標Aの要部は、「塩沢紬」、「伝統的工芸品」及び「塩沢織物工業協同組合」の各文字部分であり、引用商標Bの要部は、「本塩沢」、「伝統的工芸品」及び「塩沢織物工業協同組合」の各文字部分である。 塩沢紬は昭和50年2月19日に、本塩沢は昭和51年12月15日に、 いずれも伝統的工芸品産業の振興に関する法律(以下「伝産法」という。)2条1項所定の伝統的工芸品に指定され、原告の組合員らは引用商標Aについては昭和51年4月1日から、引用商標Bについては同年12月20日から、各商標と共に財団法人伝統的工芸品産業振興協会が発行する伝統マークが表示された伝統証紙を商品に貼付し、長年にわたって結合商標として継続して使用してきた。この継続的使用により、引用商標Aの「塩沢紬」及び「伝統的工芸品」の各文字部分並びに引用商標Bの「本塩沢」及び「伝統的工芸品」の各文字部分は、自他商品の識別機能を有する要部となった。 (2) 本件商標の要部である「伝統工芸品」の文字部分と引用商標A、Bの要部である「伝統的工芸品」の文字部分とは、「的」の文字の有無というわずかな相違にすぎない。また、本件商標の要部である「塩沢絣」の文字部分は、引用商標Aの要部である「塩沢紬」の文字部分とは、絣模様を表す「絣」の文字と糸を紡ぎ織り上げた意の「紬」の文字とのわずかな相違にすぎず、引用商標Bの要部である「本塩沢」の文字部分とは、「絣」の文字と「本」の文字とのわずかな相違にすぎず、 いずれも要部の2文字「塩沢」を共通にしているから、外観において類似している。 また、本件商標は「デントウコウゲイヒン」及び「シオザワガスリ」、 「シオザワカスリ」の称呼が生ずる。引用商標Aは「デントウテキコウゲイヒン」及び「シオザワツムギ」の称呼が生じ、「デントウコウゲイヒン」と「デントウテキコウゲイヒン」とは相違点である「テキ」の有無はわずかであり、「シオザワガスリ」、「シオザワカスリ」と「シオザワツムギ」とは「シオザワ」の称呼が共通である。引用商標Bは「デントウテキコウゲイヒン」及び「ホンシオザワ」の称呼が生じ、「デントウテキコウゲイヒン」の称呼の相違点がわずかなことは上記のとおりであり、「シオザワガスリ」、「シオザワカスリ」と「ホンシオザワ」とは「シオザワ」が共通である。したがって、本件商標と引用商標A、Bとは、称呼においても類似している。 さらに、本件商標の文字部分「伝統工芸品」からは伝産法による伝統的工芸品の指定を受けた絹織物を連想させ、引用商標A、Bの「通商産業大臣指定」、 「伝統的工芸品」の各文字部分も伝統的工芸品の指定を受けた絹織物を連想させるから、本件商標と引用商標A、Bとは、観念においても類似している。 以上のとおり、本件商標と引用商標A、Bとは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似するから、類似の商標であり、これを非類似の商標であるとした審決の判断は誤りである。 (3) 審決は、業界における商標使用の態様を勘案することなく類否判断をした誤りがある。織物業界においては、産地を表示する図柄(山頂、降雪、反物、家屋等)、文字(産地、組合名等)を結合させた産地表示商標を中央に、品質保証表示及び産地をより明確にさせる補助的表示を産地表示商標の両側に配置した広義の産地表示商標を貼付し、その左側に伝統的工芸品の指定を受けた品名を表示する商標、伝統証紙を貼付し、その右側又は左側に、家庭内品質表示法に基づく品質に関する表示事項を表示した証票を貼付する慣行である。したがって、本件商標は、単独で使用されることはなく、中央の産地表示商標の左側に補助的に貼付されて使用されるのが実態であり、産地表示商標と密接不可分の使用関係にある。本件商標と引用商標A、Bとの類否判断に当たっては、上記慣行及び使用の実態を勘案し、離隔的な観察によって、外観上、称呼上及び観念上の類否判断をすべきであったのに、審決は、これを看過し、本件商標と引用商標A、Bとを対比するだけで類否判断をした誤りがある。 2 取消事由2(「塩沢」の周知性の認定判断の誤り) 塩沢織物の歴史は、審決に指摘されているように、約1200年前の奈良時代にまでさかのぼる。原告及びその組合員らが昭和35年ころから現在に至るまで絹織物に使用してきた甲第12号証の3、4の商標中「塩沢」、「塩澤」、「塩沢紬」、「本塩沢」の各文字部分は、塩沢地域(新潟県塩沢町、六日町。以下、新潟県の町名については県名を省略し、町名のみを表示する。)の地場産業の物産品である絹織物を表すものとして、長年にわたる実績がある。そして、塩沢紬及び本塩沢が、いずれも伝産法2条1項所定の伝統的工芸品に指定されたことは、上記1(1)のとおりである。 さらに、塩沢町、六日町及び新潟県等は、「塩沢」の文字を付した絹織物を地場産業の物産品として位置付け、これを育成するための支援、宣伝等をし、また、「塩沢紬」、「本塩沢」に関し、書籍、雑誌等に掲載され、テレビでも紹介され、原告も、昭和52年度より現在まで、毎年、伝統的工芸品産業の維持、発展、 地場産業としての織物を振興促進するための種々の事業を行ってきた。 以上により、「塩沢紬」及び「本塩沢」の共通の要部である「塩沢」は、織物において、地元はもちろん、新潟県内、全国の需要者に周知となった。 したがって、本件商標は、原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている上記甲第12号証の3、4の商標に類似する商標であり、出所の誤認混同を生ずるおそれがあるものであって、商標法4条1項10号の規定に違反して登録されたものである。 |
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被告の反論
審決の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。 1 取消事由1(本件商標と引用商標A、Bとの類否判断の誤り)について (1) 原告は、本件商標の要部は、「塩沢絣」、「伝統工芸品」及び「越後塩沢同人会」の各文字部分であると主張するが、前2者の文字部分は、特段変わった書体ではなく、正に当該文字どおりのことを表しているにすぎないから、自他商品識別力がないか弱い部分である。 また、原告は、長年にわたる継続的使用により、引用商標Aの「塩沢紬」及び「伝統的工芸品」の各文字部分並びに引用商標Bの「本塩沢」及び「伝統的工芸品」の各文字部分は、自他商品の識別機能を有する要部となったと主張するが、 「塩沢紬」、「本塩沢」及び「伝統的工芸品」という文字部分は、長年使用したとしても周知商標となることはあり得ず、要部とはならない。本件商標の要部は、 「越後塩沢同人会」の文字部分、印影「越後塩澤同人會之印」の文字部分及び飾り縁の図形部分であり、引用商標A、Bの要部は、「塩沢織物工業協同組合」の文字部分、印影「塩澤織物工業協同組合之印」の文字部分並びに飾り縁及び地模様の図形部分である。 (2) 原告は、本件商標の要部は、上記のとおり「塩沢絣」、「伝統工芸品」及び「越後塩沢同人会」の各文字部分であり、引用商標Aの要部は、「塩沢紬」、 「伝統的工芸品」及び「塩沢織物工業協同組合」の各文字部分であり、引用商標Bの要部は、「本塩沢」、「伝統的工芸品」及び「塩沢織物工業協同組合」の各文字部分であるとして、これを前提に類否の主張をしているが、その要部のとらえ方が誤っていることは、上記のとおりである。 (3) 原告は、本件商標が単独で使用されることはなく、本件商標と組み合わせて使用される他の商標と類似するから、本件商標に無効事由があるかのように主張している。しかし、何ゆえ本件商標と組み合わせて使用される他の商標の存在が本件商標の無効事由となるのか、その趣旨が不明である。 2 取消事由2(「塩沢」の周知性の認定判断の誤り)について 「塩沢」は地名であり、周知商標ではあり得ない。伝産法2条1項所定の伝統的工芸品の指定を受けているのは、「塩沢」ではなく、「塩沢紬」及び「本塩沢」であるところ、「塩沢紬」及び「本塩沢」が伝統的工芸品の指定を受けたからといって、直ちに、これらが周知商標であるということにはならない。むしろ、 「塩沢紬」及び「本塩沢」は伝統的工芸品であるから、有名な「大島紬」、「結城紬」同様、品質表示にほかならないというべきである。 仮に、「塩沢紬」、「本塩沢」が特定の織物を表示するものとして周知であったとしても、本件商標には「塩沢紬」及び「本塩沢」の文字部分は存在しない。 また、甲第12号証の3、4のどの部分が周知性を有するのか、原告の主張からは不明である。甲第12号証の4の上段の商標は、3枚の証紙からなっており、中央の証紙が引用商標Aと類似するが、この中央の証紙が単独で使用されることはないとすれば、原告が周知性を有していると主張するのは、3枚の証紙からなる全体をいうものと解される。ところが、本件商標の要部は、上記のとおり、「越後塩沢同人会」、印影「越後塩澤同人會之印」の各文字部分及び飾り縁の図形部分であり、これらの部分は甲第12号証の2〜4のいずれの証紙にも存在しないから、本件商標と甲第12号証の2〜4の商標とは非類似の商標であり、本件商標は商標法4条1項10号に該当しない。 |
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当裁判所の判断
1 取消事由1(本件商標と引用商標A、Bとの類否判断の誤り)について (1) 本件商標は、商標目録(1)のとおりの構成からなり、指定商品を商標法施行令別表の区分による第24類「絣織物」として、平成11年1月13日に登録出願し、平成12年1月12日の登録査定を経て、同年3月3日に設定の登録がされたものであり、引用商標Aは、同目録(2)のとおりの構成からなり、指定商品を旧16類「紬織物」として、昭和51年7月6日に登録出願し、昭和54年9月28日に設定の登録がされたものであり、引用商標Bは、同目録(3)のとおりの構成からなり、指定商品を旧16類「織物、編物、フェルト、その他の布地」として、昭和52年8月23日に登録出願し、昭和55年9月29日に設定の登録がされたものである(当事者間に争いのない事実、甲第2号証の2)。 (2) そして、商標目録(1)の記載及び甲第3号証によれば、本件商標は、黄色の地の上に、上段に「伝統工芸品」、中段に「塩沢絣」、下段に「越後塩沢同人会」の各文字を筆文字で横書き(中段の「塩沢絣」の文字は、上段及び下段の文字に比較し、おおよそ3倍の大きさに表示されている。)し、下段の「越後塩沢同人会」の「会」の文字に重ねるように方形の輪郭内にてん書体で「越後塩」、「澤同人」、「會之印」の文字を3列に縦書きした赤色の印影を表示し、全体を額縁状の飾り縁で囲ってなるものであることが認められる。 また、商標目録(2)、(3)の記載及び甲第4、第5号証によれば、引用商標Aは、方眼状に白色の線が入り、各方眼中には白色の雪の結晶状の模様を施した黄色の地の上に、上から「通商産業大臣指定」、「伝統的工芸品」、「塩沢紬」、 「新潟県南魚沼郡塩沢町大字目来田107番地1」、「塩沢織物工業協同組合」の各文字を5段に横書き(中段の「塩沢紬」の文字は、上段の「伝統的工芸品」及び下段の「塩沢織物工業協同組合」の文字に比較しておおよそ5倍の大きさに筆文字で表示されている。)し、下段の「塩沢織物工業協同組合」の「組」と「合」の文字に重ねるように「塩澤織物」、「工業協同」、「組合之印」の文字を3列に縦書きした赤色の印影を表示し、全体を額縁状の飾り縁で囲ってなるものであり、引用商標Bは、引用商標Aの文字部分「塩沢紬」が「本塩沢」に置き換えられ、その余の部分は引用商標Aと同一の構成からなるものであることが認められる。 (3) 原告は、本件商標の要部は、「塩沢絣」、「伝統工芸品」及び「越後塩沢同人会」の各文字部分であり、引用商標Aの要部は、「塩沢紬」、「伝統的工芸品」及び「塩沢織物工業協同組合」の各文字部分であり、引用商標Bの要部は、 「本塩沢」、「伝統的工芸品」及び「塩沢織物工業協同組合」の各文字部分であると主張するので、この点について検討する。 ア まず、「塩沢」の語について辞典類の記載を見ると、「広辞苑第三版」(平成3年1月10日株式会社岩波書店発行、甲第62号証)には、「絹織物の一。新潟県塩沢地方で産出。高級の紬絣(つむぎがすり)で知られる」と記載され、「広辞苑第四版」(平成8年10月15日同社発行、甲第47号証の1〜3)にも同一の記載がある。「日本語大辞典」(平成元年11月6日株式会社講談社発行、乙第3号証)には、「新潟県南部、魚野うおの 川沿いの町。旧宿場町。塩沢御召おめし など織物が特産。石打 いしうち などのスキー場があり、観光の町としても有名。 人口二万一〇〇一(一九八八 )」と記載されている。 また、「きもの用語辞典」(昭和51年3月31日株式会社ケーエスピー発行、乙第2号証)には、「塩沢御召(しおざわおめし)」の見出し語の下、 「新潟県塩沢町を中心に、手織機で作られる『結城』風の『絣御召』であるが生産は少ない。一般には、近くの十日町で織られる絣御召をこの名で呼ぶことが多く、 純粋の塩沢は本塩沢として区別される。盛夏用には薄手の夏御召も生産される。また製品により塩沢紬、塩沢結城などと称せられることもある」と記載されている。 イ 次に、「塩沢紬」、「本塩沢」について書籍を見ると、「日本の地場産業〈伝統的工芸編〉」(昭和56年10月5日通産企画調査会発行、甲第31号証の1〜11)には、「塩沢紬は、明和年間(一七六四〜七二)の頃、上布の絣や縞の模様付けの技術が、絹織物に応用されたことによって生まれたといわれている。 真綿を手で紡ぎ、更に、糸を手でくくって絣模様をつけた糸を、一本ずつ模様に合わせて織りあげる。塩沢紬の特色は、真綿の手紡ぎ糸を使った、ごく細かい模様の蚊絣、十字絣、亀甲絣などである。・・・なお、塩沢紬は塩沢お召、塩沢絣、塩沢結城という別称があり、薄地の夏物は、夏塩沢とも呼ばれている。・・・本塩沢の起源は、寛永年間(一六二四〜四四)に、播麿国明石の浪人・堀次郎将俊がこの地に住みつき、しぼのある絣織物を、近在の婦女子に伝えたといわれているが、文献では、元治元年(一八六四)の『覚』並びに『南魚沼郡誌』に、絹のしぼ織物について記載されていることから、江戸時代には、絹のしぼ織物が織られていたことがわかる。本塩沢は、緯糸に強い撚りをかけて出すしぼが特色である絣の縮織物で、 歴史的にも『絹縮』として、つとにその名声は高い。・・・本塩沢は、夏物の高級着尺地として、現在もなお親しまれている」と記載され、「日本のきものNo.62」(昭和58年11月15日清田のり子発行、甲第32号証の1〜4)には、「塩沢といえば現在本塩沢といわれている塩沢御召のしぼのある風合と細かい絣が思い出されるが、昭和三十年代後半からこの絣の技術を生かした塩沢紬に力を入れるようになった。現在は塩沢紬が60%弱、本塩沢が36%、それに夏塩沢を少し生産していて、塩沢と隣接する六日町が産地である」と記載され、「ノンフォーマルきものの手引き きもの産地ガイド」(昭和56年3月1日東京織物卸商業組合・和装部会発行、甲第33号証の1〜3)には、「本塩沢の起源は、一説には寛永年間(一六六一〜七二)に播磨国明石の浪人堀次郎将俊がこの地に住みつき、撚糸を用いたしぼのある絣織物を考案し、近在の婦女子に伝えたといわれている。・・・塩沢紬は明和年間(一七六四〜七一)の頃に創られたと伝えられるが、詳細は不明である」と記載され、「伝統工芸品銘鑑」(昭和58年3月18日サンケイ新聞年鑑局マーケティング事業部発行、甲第34号証の1〜6)には、「沿革・・・越後上布の整織技術を絹織物に適用したのが塩沢紬、本塩沢で、いずれも江戸時代に創製されたといわれているが、詳細は不明。しかし、いずれも江戸時代後期には塩沢の絣織(塩沢紬)絹縮(本塩沢)として全国に知れ渡った絹織物の産地だったことは確かで・・・名称の由来 ともに生地名を冠したもので、紬を塩沢紬、お召を本塩沢という。このほか、塩沢紬は、“ゆきやま紬”“古代紬”“塩沢絣”“塩沢結城”、本塩沢は“ゆきの中のきれ”とも呼ばれる」と記載され、「日本織物風土記」(平成7年3月全国繊維工業技術協会発行、甲第39号証の1〜5)には、 「越後上布の製造技術を受け継いで作られた絹織物が塩沢紬と本塩沢であって、 『塩沢紬』は明和年間(1764〜71)に、『本塩沢』は元治元年(1864)の【覚】の中に、運上品として江戸時代に創製されたと言われています」と記載され、「新潟県の伝統的工芸品」(昭和62年10月新潟県伝統的工芸品月間推進協議会発行、甲第35号証の1〜5)、「伝統的工芸品の本」(平成7年3月1日財団法人伝統的工芸品産業振興協会発行、甲第38号証の1〜6)、「伝統的工芸品の本(平成8年版)」(平成8年2月29日同法人発行、甲第40号証の1〜8)等にも同様の記載がある。 また、「塩沢絣」について、「十日町織物史」(昭和43年1月10日十日町織物工業協同組合発行、乙第4号証)には、「十日町は昔から明石の絣をやり、くびる技術をもっている。戦後塩沢絣の男物を織っていたが、・・・いまの塩沢ができました」と記載されている。 ウ 以上の記載からは、新潟県塩沢地方(塩沢町及びその周辺の地域を含む。)は古くから織物の産地であり、江戸時代に現在の塩沢紬に当たる絣織り絹織物、本塩沢に当たる縮織物が作られるようになり、その後、これらの産地としてその名が全国に知られるようになったこと、「塩沢紬」及び「本塩沢」の語は江戸時代のころから塩沢地方で生産される上記絹織物の名称として使用されてきたこと、 「塩沢」の語は、本来、新潟県塩沢地方を表す固有名詞であったが、同地方が絹織物の産地として知られるようになるとともに、「新潟県塩沢地方で産出」される「高級の紬絣」の「絹織物」をも表すようになったことが認められる。そうすると、遅くとも本件商標の登録出願がされた平成11年1月13日当時、「塩沢紬」、「本塩沢」及び「塩沢」の語は、絹織物の一種を表す普通名称となっていたものと認められるから、「塩沢紬」、「本塩沢」及び「塩沢」の各文字部分は自他商品識別機能を有しないものというほかない。 原告は、引用商標Aの「塩沢紬」及び引用商標Bの「本塩沢」は、いずれも昭和50年から昭和51年にかけて伝産法による伝統的工芸品に指定され、長年にわたり継続的に使用されてきたことにより、両商標の上記各文字部分が自他商品の識別機能を獲得した旨主張するが、そのような事実によって上記判断が左右されるものではない。 エ 本件商標は、上記(2)のとおり「伝統工芸品」、「塩沢絣」、「越後塩沢同人会」、及び印影「越後塩澤同人會之印」の各文字部分並びに黄色の地に全体を額縁状の飾り縁で囲んだ図形部分の5部分の構成からなり、上記構成中「塩沢絣」の文字部分は、上段及び下段の文字に比較し、おおよそ3倍の大きさに表示され、 本件商標の主要な位置を占めていると認められるが、当該文字部分が自他商品識別機能を有しないことは上記のとおりである。また、「伝統工芸品」の文字部分は、 伝統的な技術又は技法等を用いて製造される工芸品を指す普通名詞であるか、又は伝産法にいう伝統的工芸品の趣旨で商品の品質を表示するものであるから、自他商品識別機能が希薄であることが明らかであり、上記図形部分も、枠内の上記文字部分を目立たせるためのありふれたものであって、格別の自他商品識別機能を有するものということはできない。これに対し、「越後塩沢同人会」及び印影「越後塩澤同人會之印」中の「越後塩澤同人會」の各文字部分は、固有の団体の名称を表示するものと認められるから、自他商品識別機能を有し、これらが本件商標の要部を構成するものというべきである。 オ 一方、引用商標Aは、上記(2)のとおり「通商産業大臣指定」、「伝統的工芸品」、「塩沢紬」、「新潟県南魚沼郡塩沢町大字目来田107番地1」、「塩沢織物工業協同組合」及び印影「塩澤織物工業協同組合之印」の各文字部分並びに方眼状に白色の線が入り、各方眼中には白色の雪の結晶状の模様を施した黄色の地に全体を額縁状の飾り縁で囲った図形部分の7部分からなるものであって、上記構成中「塩沢紬」の文字部分は、上段及び下段の文字に比較し、おおよそ5倍の大きさに表示され、本件商標の主要な位置を占めていると認められるが、当該文字部分が自他商品識別機能を有しないことは上記のとおりである。また、「通商産業大臣指定」及び「伝統的工芸品」の文字部分は、伝産法に基づく「通商産業大臣指定の伝統的工芸品」であることを表示したもので、商品の品質を表示するものとして自他商品識別機能は希薄であることが明らかであり、「新潟県南魚沼郡塩沢町大字目来田107番地1」の文字部分は、住所を記載したものにすぎないし、上記図形部分も、枠内の上記文字部分を目立たせるためのありふれたものであって、格別の自他商品識別機能を有するものということはできない。これに対し、「塩沢織物工業協同組合」及び印影「塩澤織物工業協同組合之印」中の「塩澤織物工業協同組合」の各文字部分は、原告の名称を表示するものと認められるから、自他商品識別機能を有し、これらが引用商標Aの要部を構成するものというべきである。 また、引用商標Bは、上記(2)のとおり引用商標Aの文字部分「塩沢紬」が「本塩沢」に置き換えられたものであるところ、「本塩沢」の文字部分が自他商品識別機能を有しないことは上記のとおりであり、その余の部分は引用商標Aと同一の構成からなるから、引用商標Bの要部も、引用商標Aと同様に「塩沢織物工業協同組合」及び印影「塩澤織物工業協同組合之印」中の「塩澤織物工業協同組合」の各文字部分というべきである。 (4) 以上の検討に基づき、本件商標と引用商標A、Bとの類否について見るに、本件商標の要部である「越後織物同人会」及び印影「越後塩澤同人會之印」の各文字部分と引用商標A、Bの共通の要部である「塩沢織物工業協同組合」及び印影「塩澤織物工業協同組合之印」の各文字部分は、それぞれの文字配列及び印影は全く異なるから、外観において類似しないことが明らかである。 また、称呼においても、上記各文字部分に相応して、本件商標が「エチゴオリモノドウジンカイ」、「エチゴオリモノドウニンカイ」、「エチゴオリモノドウジンカイノイン」、「エチゴオリモノドウニンカイノイン」の称呼が生じ、引用商標A、Bが「シオザワオリモノコウギョウキョウドウクミアイ」、「シオザワオリモノコウギョウキョウドウクミアイノイン」の称呼が生ずるものと認められ、音構成、音数が全く異なるから、両商標は類似しないことが明らかである。 さらに、観念においては、本件商標からは「越後塩沢の織物団体」との観念が生じ、引用商標A、Bからは「塩沢の織物団体」との観念を生じ、いずれも塩沢の織物団体である点において近似した観念を生ずることは否定し得ないが、塩沢地方が古くから織物の産地であることは前示のとおりであり、これによれば、同地方に織物団体が複数存在することは本件商標及び引用商標A、Bの指定商品の取引者、需要者において通常予想し得るところと認められる上、当該団体を表す文字部分が、本件商標は「同人会」であるのに対し、引用商標A、Bは「工業協同組合」であって、その構成を全く異にするから、上記程度の類似は自他商品識別力を損なうものではなく、全体として観念の類似もないといわざるを得ない。 そうすると、本件商標と引用商標A、Bとは、外観、称呼、観念のいずれの点においても類似するものではないから、全体として出所の混同を生ずるおそれのない非類似の商標というべきである。 (5) 原告は、織物業界においては、産地を表示する図柄(山頂、降雪、反物、 家屋等)、文字(産地、組合名等)を結合させた産地表示商標を中央に、品質保証表示及び産地をより明確にさせる補助的表示を産地表示商標の両側に配置した広義の産地表示商標を貼付し、その左側に伝統的工芸品の指定を受けた品名を表示する商標、伝統証紙を貼付し、その右側又は左側に、家庭内品質表示法に基づく品質に関する表示事項を表示した証票を貼付する慣行があり、本件商標が単独で使用されることはないから、本件商標と引用商標A、Bとの類否判断に当たっては、上記慣行及び使用の実態を勘案し、離隔的な観察によって、外観上、称呼上及び観念上の類否判断をすべきであったのに、審決は、これを看過した誤りがある旨主張するので検討する。 商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであり、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、かつ、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものであるが(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁、同平成9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁)、上記具体的な取引状況とは、その指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すものと解すべきである(最高裁昭和49年4月25日第一小法廷判決・取消集〔昭和49年〕443頁)。本件において、証拠(甲第12号証の1〜4、第13〜第23号証、第58号証、第114〜第125号証)によれば、原告の組合員及び十日町市の一部の絹織物製造業者が、本件商標及び引用商標A、B、 あるいはこれに類する商標を、これらの商標とは別の3部分からなる商標(中央部分が、雪国の風景、雪上にさらされた反物等の図形を主とした構成からなり、その両側に品質や産地等の主として文字部分からなる補助的な標章を配するなどの構成からなる。)と共に使用していることが認められるが、同事実によっては、本件商標の指定商品である絣織物全般について、上記のような商標の使用方法が、一般的、恒常的であるものとは認めることができず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって、原告の上記主張も採用することができない。なお、原告の上記主張の趣旨とするところが、本件商標と共に使用される上記別の商標が相互に類似するために商品の出所混同が生ずるおそれがあるというのであれば、これは共に使用される当該別の商標の類否の問題であって、本件商標と引用商標A、Bの類否の判断に当たって考慮すべきものではないから、主張自体失当というほかない。 (6) 以上のとおり、本件商標と引用商標A、Bとは、外観、観念、称呼のいずれの点においても類似するものではないから、全体として出所の混同を生ずるおそれのない非類似の商標であるとした審決の判断に誤りはなく、原告の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(「塩沢」の周知性の認定判断の誤り)について 原告は、「塩沢紬」及び「本塩沢」の共通の要部である「塩沢」が周知であるから、甲第12号証の3、4の商標は原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であり、本件商標は、これに類似する商標であって、出所の誤認混同を生ずるおそれがあると主張する。 しかし、本件商標と甲第12号証の3、4の商標の類否について見るに、甲第12号証の3、4の商標中の「塩沢」の文字部分は、「塩沢」の語が地名の表示又は絹織物の一種の普通名称であることは上記のとおりであるから、これが周知であるとしても、自他商品識別機能を有しないものというほかなく、同「塩澤」の文字部分も「塩沢」の「沢」の文字を旧字体の「澤」に置き換えたものにすぎないから、同様に自他商品識別機能を欠く。また、甲第12号証の3、4の各第1段目の左から2番目の部分は、いずれも引用商標Aと全く同一であり、同じく各第2段目の左から2番目の部分は、いずれも引用商標Bと全く同一であるから、その類否は、上記2に説示したとおりである。甲第12号証の3、4の商標中のその余の部分が本件商標と類似しないことは明らかである。 したがって、本件商標と原告に係る甲第12号証の3、4の商標とは非類似の商標であるとした審決の判断に誤りはなく、原告の取消事由2は理由がない。 3 以上のとおり、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 篠原勝美 |
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裁判官 | 岡本岳 |
裁判官 | 宮坂昌利 |