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関連審決 異議2000-90498
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成12行ケ10審決取消請求事件 判例 商標
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平成13行ケ47審決取消請求事件 判例 商標
平成17行ケ10418審決取消請求事件 判例 商標
平成20行ケ10089審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 指定商品 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項11号 /  類似性(類否判断) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  外国 /  非類似 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 254号 商標登録取消決定取消請求事件
原告 株式会社マンダム
訴訟代理人弁理士 倉内義朗
同 秋山鳳見
同 秋山泰治
同 秋山佳子
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人柳原雪身
同 茂木静代
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/01/29
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が異議2000-90498号事件について平成13年4月16日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、登録第4354780号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。本件商標は、平成11年2月16日に登録出願され、「Naturea」(先頭の「N」の文字がやや図案化されている。)の文字を横書きしてなり、第3類「せっけん類、植物性天然香料、動物性天然香料、合成香料、調合香料、精油からなる食品香料、化粧品、歯磨き」を指定商品として、同12年1月28日に設定登録された。本件商標について、同年5月15日、異議の申立てがされ、特許庁は、これを異議2000-90498号事件として審理した結果、同13年4月16日、「登録第4354780号商標の商標登録を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は、同年5月9日、原告に送達された。
2 本件決定の理由の要旨 本件決定は、別紙異議の決定の理由写しのとおり、「NATURIE」と「ナチュリエ」の文字を横書きしてなり第3類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として平成4年12月25日に設定登録された登録第2486678号商標(以下「引用商標」という。)と本件商標とは称呼において類似するものであり、かつ、両者の指定商品は同一又は類似するものであるから、本件商標は、
商標法4条1項11号に違反して登録されたものであり、その登録を取り消すべきものであると判断した。
原告主張の取消事由の要点
本件決定の理由中、「5.当審の判断」を争い、その余は認める。
本件決定は、「アルファベットで書されて、かつ、直ちに英語の読みが特定できない商標に接する場合、ローマ字読みよりも英語読みで称呼を特定する場合が少なからずあるもの」と誤認し、英語読みで称呼を決定する際に本件商標からは「ナチュリー」又は「ナチュリア」の称呼をも生じるものと誤認し、「ナチュリア」と引用商標の「ナチュリエ」の称呼とを比較することによって、本件商標が引用商標と類似すると判断した誤りがあり、取り消されるべきである。
1 本件商標の称呼 (1) アルファベットで書かれて、かつ直ちに英語の読みの特定ができない商標に接した場合、日本人はローマ字読みで称呼を特定するのが一般的である。本件商標は、英単語等の外国語として「Naturea」に相当する語がなく、特定の語義を有しない造語と理解されるものであるから、これをあえて前半部と後半部に分断して、それぞれに似通った英単語を援用して称呼を模索することは不自然であり、ローマ字読みにするのが自然である。ローマ字読みにしたときに本件商標の後半部から生ずる称呼は、「〜レア」である。
(2) 本件商標の英語風の読みを考慮した場合にも、本件商標の後半部「rea」から生じる得る称呼は「〜レア」であって、これが「〜リア」、「リー」と称呼される理由はない。
指定商品「化粧品」における登録例を見ると、「〜REA」を用いたローマ字構成による登録商標は、
A)「〜リア」の片仮名が併記されているもの(甲第3号証の1ないし6) B)「〜レア」の片仮名が併記されているもの(甲第4号証の1ないし12) C)片仮名が併記されていないもの(甲第5号証の1ないし4)に分類することができる。
A)のグループでは、ローマ字の綴りは、「〜AREA」である。これは英語「area」が「地域等」の意味を有するよく知られた英単語で、外来語「エリア」としても知られているため、「REA」の直前に「A」を配する者は特に「〜エリア」と発音されやすいからである。他方、B)に示したように、ローマ字の綴りに特定の語義がなく造語として理解される商標の場合、称呼を特定するために併記される片仮名表記は例外なく「REA」のローマ字表示に倣って「〜レア」となっている。このように、「〜REA」で終わる商標にあっては、「AREA」のように有名な英単語を借用したものでなければ、「〜rea」からはローマ字読みに従い「〜レア」の称呼のみが生じるのである。そうすると、片仮名等の表音表記が併記されていない場合でも、生じる称呼はローマ字読みに基づくのが一般的であり、造語でなる単語の語尾における「REA」から「〜リア」の称呼が普通に生じることはない。
イ 本件決定中で、「ナチュリー」の称呼を生じる根拠とされた「pea(ピー)」、「sea(シー)」、「tea(ティー)」はいずれも3文字からなる短い英単語であるから、本件商標とは場合を異にする。また、「ナチュリア」の称呼を生ずる根拠とされた「Korea(コリア)」、「area(エリア)」は、「ko」「a」といった単純な音に続くもので、直前に「Natu」の長い語がある本件商標とは事案を異にする。むしろ、尿素を意味する英単語「urea」が化粧品の商品名、原材料表示等に用いられて「ウレア」と読まれている事実があることを考慮すると、「rea」の直前に「u」の文字を配する本件商標については、「〜レア」の発声のみが得られるというべきである。
ウ 本件商標を英語読みにするとしても、「natur」に続く母音が「a」の場合は「ナチュ〜」、それ以外の母音の場合は「ネイチュ〜」と読むという区別がある(甲第7号証)。本件商標をあえて英語風に発音するなら「ネイチャ〜」で始まる発声となるのが自然である。
エ 原告は、第3類「せっけん類、香料類、化粧品、歯磨き」を指定商品とし、「ナチュレア」の片仮名と「NATUREA」のアルファベットを上下2段に横書きしてなる商標(「原告後願商標」という。)につき、登録査定を得た(甲第9号証の1、2)。もし「NATUREA」の綴りから「ナチュリア」のような称呼が発生するならば、引用商標が登録の障害となり得るにもかかわらず、原告後願商標が登録査定されたことは、「NATUREA」からは「ナチュレア」の称呼のみが生ずることの証左である。
2 取引の実情 原告は、1927年の設立当初から一貫して化粧品事業を展開しており、1972年には株式会社ピアセラボ(設立時の旧名称日本ドクター・ルノー株式会社)を設立し、同社を通じて、特にプロユースの商品をヘアサロン、エステサロンに提供している。本件商標の「Naturea」に関しては、1997年から本格的な販売活動を行っており、費やした販売促進費及び広告費は、1998年3月までに約900万円、以降1999年3月までの1年間で、750万円、2000年までは500万円、2001年までは140万円となっている。いわゆるプロユースの商品は、需要者である美容師等の技術者にその品質等が理解されれば、同一品質の商品を比較的長期にわたって納入する傾向にあり、商品販売当初にユーザーに認知されるよう、広告宣伝に係る投資も販売時に偏ることになる。このように、一定の商標のもとに商品の品質保証に重きを置く販売方法に徹したため、原告は製品の知名度を上げること課題として、「Naturea」の文字を「ナチュレア」の読みと共に、この種美容店業界に浸透させてきた(甲第8号証の1ないし4)。
このような取引の実際にあって、本件商標について、引用商標と一度たりとも商品の出所につき誤認混同を生ぜしめる状況が生じたことはない。
3 商標の非類似 結局、本件商標「Naturea」の称呼「ナチュレア」と引用商標「NATURIE」の称呼「ナチュリア」とを比較すると、両者は共に4音で構成される中で、前半の「ナチュ」までの2音のみを共通にして、後半において「レア」と「リア」の音の差異を有し、全体の長さがいずれも4音と短く、その中の2音、すなわち全称呼の半分が相違している場合、音の違いが称呼全体に与える影響は極めて大きく、全体を通して一連に称呼したときの聴感は大きく異なるものである。両者は彼此聞き誤るおそれなどなく、称呼非類似である。
また、本件商標「Naturea」と引用商標「NATURIE/ナチュリエ」は、外観上、片仮名文字の有無及び大文字、小文字や文字形態等、欧文字の種類の別があり、観念上も、両者は造語に係る商標で比較をなし得ない。したがって、現実に「Naturea」と「NATURIE/ナチュリエ」の商標を付した商品が併存する場合を想定したときに、両者の間で混同を生じる余地はない。
以上のとおり、本件商標は、外観観念のみならず、称呼においても引用商標とは互いに相紛れることのない非類似の商標である。
被告の反論の要点
1 本件商標の称呼 本件決定が、本件商標から「ナチュリア」又は「ナチュリー」の称呼をも生ずるとした点に誤りはない。
アルファベットで書されて直ちに読みの特定ができない商標に接する場合、ローマ字読みよりも英語読みで称呼を決定する場合が少なからずある。商標の現実の使用状況を前提としない商標登録出願の審査の類否判断において、欧文字表記の商標の称呼認定は、成語の場合はその親しまれた成語の発音に従い、造語であるときは、ローマ字読みに適したものはローマ字読みに、英語読みに適したものは英語読みにするのであるが、実際には英語読みにするものが圧倒的に多い。特に、本件商標の場合、ローマ字読みにしたときには「ナツレア」となり、これは、後記2に述べるように「natural」「ナチュラル」の語が普通に使用されている化粧品等の本件商標の指定商品の分野においては、馴染まれない読みといえるから、英語読みの称呼「ナチュリア」又は「ナチュリー」の称呼をも生ずるということができる。
原告は、本件称呼からは「ナチュレア」の称呼のみが生ずると主張し、その根拠として、「ナチュレア」の片仮名文字と「NATUREA」の欧文字を上下二段に書してなる商標(原告後願商標)が登録査定を受けた旨主張するが、同商標は、併記された片仮名文字により、自然に「ナチュレア」と称呼されるものであるから、
「NATUREA」の欧文字のみよりなる本件商標の自然の称呼が「ナチュレア」に限られるということはできない。
2 取引の実情 造語と理解される欧文字よりなる商標からどのような称呼が生ずるかは、当該商標が使用される商品の役務の取引者・需要者がその取引の実際においてどのように称呼するかによって決せられる。ところで、本件商標の指定商品中の、特に「せっけん類、化粧品」にあっては、近時、無香料の商品、あるいは天然の素材を使用した商品など、いわゆる「自然派」の商品が市場に多く出回っており、「natural」「ナチュラル」の語が普通に使用されている実情にある(乙第1号証)。そして、その余の指定商品についても、自然回帰、天然指向の取引の実情にあることは否定し得べくもない。
したがって、本件商標に係る商品の取引分野における取引の実情、我が国における英語教育の普及の度合いを考慮すると、本件商標より「ナチュリア」又は「ナチュリー」の称呼をも生じ、本件商標と引用商標が「ナチュリア」と「ナチュリエ」の称呼において類似するとした決定の認定に誤りはない。
3 商標の類似 (1) 原告は、本件商標を「ナチュレア」の読みとともに使用している取引の実情があると主張するが、本件商標を「ナチュレア」と称呼する場合であっても、本件商標と引用商標は類似する。
@ 外観については、本件商標の「Naturea」と引用商標中の「NATURIE」とは、共に7文字よりなり、語頭から5文字までが、小文字か大文字かは別として、アルファベットの同一順位の対応する各文字とする点でその配列を含めて同一である。
A 称呼については、本件商標から生ずる称呼が原告主張のごとく「ナチュレア」であるとしても、「ナチュレア」と引用商標から生ずる称呼「ナチュリエ」とは、称呼上影響の大きい語頭音を含む第2音までが同じであり、異なるところは第3音の「レ」と「リ」、第4音の「ア」と「エ」である。この「レ」と「リ」は、子音「r」を共通にし、これに続く母音の「e」と「i」は最も近似する紛らわしい音の一つであるから、「ナチュレア」と「ナチュリア」とを明瞭に聴別し得るとは言い難い。
B 観念については、両商標は共にラテン語に由来する「自然」を意味する「natura」の英語を語幹とする点で共通している。
以上の点を踏まえて、両商標が取引者・需要者に与える印象、記憶、連想等を全体的に考察すると、両商標は相紛れるおそれがあるというべきである。
(2) 原告は、本件商標と引用商標とは明瞭に区別し得るものであり、出所等の混同が生じるおそれはない旨主張する。
しかしながら、出所の混同を生ずるか否かの判断は、当該商標が使用される商品の取引の実情に照らし、その取引者・需要者が払う通常の注意力を基準とすべきところ、両商標は、上記(1)で述べたとおり、称呼が近似し、外観及び観念においても相紛らわしいものである。また、前記2で述べた取引の実情からすると、両商標は、共に「自然の、天然の」を意味する「natural」を連想させ、天然素材を使用した商品であることを印象づける。したがって、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれが十分にあるというべきである。
当裁判所の判断
1 本件商標及び引用商標 本件商標は、先頭のNの文字部分をやや図案化した「Naturea」の文字を横書きしてなり、第3類「せっけん類、植物性天然香料、動物性天然香料、合成香料、調合香料、精油からなる食品香料、化粧品、歯磨き」を指定商品として、平成11年2月16日に登録出願され、同12年1月28日設定登録されたものであり(甲第2号証の1、商標公報)、他方、引用商標は、「NATURIE」と「ナチュリエ」の文字を二段に横書きしてなり、旧第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、昭和63年8月3日登録出願され、平成4年12月25日に設定登録されたものである(甲第2号証の2、商標公報)。引用商標は、「NATURIE」の文字の下に併記された片仮名文字「ナチュリエ」により、「ナチュリエ」と称呼されるものと認められる。また、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものと認められる。
2 本件商標の称呼 (1) 本件商標は、英語等の外国語に「Naturea」に対応する単語がないことから、特定の語義を有しない造語と解されるものであるが、その冒頭の6文字が「自然」「天然」を意味する英単語として一般人に馴染みの深い「nature」と同じ綴りであること、また、「天然」「自然」を意味する形容詞である英単語の「natural」が日本語でも「ナチュラル」とそのまま呼び慣わされて通用している慣れ親しまれた語であることを考慮すると、「Naturea」の前半部分は、「天然」「自然」を意味する語である「ナチュラル」を連想させるものということができる。本件商標の後半部分の「rea」は、欧文字の綴り字の発音について厳密な知識を有しない一般人にとって、各人の知っている単語からの類推によって様々な読み方ができるものであり、英語風に読むときは、「リー」(よく知られた英単語「sea(シー)」、「tea(ティー)」等からの類推)、「リア」(よく知られた英単語「area(エリア)」等からの類推)、「レア」(化粧品、健康薬品等の商品分野で尿素を意味する語として比較的よく知られた「urea(ウレア)」からの類推)などと読まれ、ローマ字読みでは「レア」と読まれるものと認められる。
そうすると、本件商標の全体からは、前半部分の「natu(r)」から生ずる「ナチュ〜」の発音と後半部分の「rea」から生ずる「リー」、「リア」又は「レア」の発音を組み併せた「ナチュリア」、「ナチュリー」又は「ナチュレア」の称呼が自然に生ずるものと認められる。
(2) 原告は、本件商標からは「ナチュレア」の称呼のみが生じ、「ナチュリー」又は「ナチュリア」の称呼は生じないと主張する。しかしながら、本件商標の後半部分の「rea」がローマ字読みの「レア」とのみ発音されると認めるべき理由はない。むしろ、本件商標は、全体としてローマ字読みした場合には、外来語としても全く馴染みのない「ナツレア」と読むことになるのに対し、英語風に読むときは「ナチュラル」(自然、天然)を連想させる「ナチュ〜」と読めるものであるから、全体を一連に称呼するときには、英語風の読み方に従い、後半部分についても「〜リー」、「〜リア」、「〜レア」などと読まれると考えることが常識に合致する。原告は、本件商標を英語読みにした場合でも、後半部分から「リー」、「リア」の称呼は生じないとして、英綴りの読み方についての例を挙げるが、英綴りの読み方について原告主張のようなルールが存在するものとしても、一般人の英語の知識では、各人の知っている単語からの連想によって必ずしもルールに合致しない読み方をすることが多いと考えられるから、原告の主張は採用することができない。
以上からすると、本件商標からは「ナチュレア」のほかに「ナチュリー」又は「ナチュリア」の称呼をも生ずると認められ、本件商標の称呼について本件決定のした認定が誤りであるということはできない。
3 本件商標と引用商標との類否 (1) 前記2のとおり、本件商標からは、「ナチュリー」又は「ナチュリア」の称呼をも生ずると認められるところ、上記各称呼と引用商標の称呼「ナチュリエ」とは、聴感において共通する要素が多く、類似するというべきである。すなわち、
本件商標から生ずる称呼と引用商標の称呼とは、前半の2音節の「ナチュ〜」において共通し、しかも、この部分は「ナチュラル」の語を連想させるものとして比較的印象が強いのに対し、後半部分の「リー」、「リア」(本件商標)と「リエ」(引用商標)は、特定の意味を持たない語尾と認識されて印象が薄いと考えられるうえ、いずれも子音「r」を共通にし、これに続く母音「イー」、「イア」(本件商標)と「イエ」(引用商標)も近似する紛らわしい音であると認められる。してみると、本件商標と引用商標とは、称呼において類似すると認めざるを得ない。
(2) 両商標は、前記(1)のとおり、称呼において類似すると認められるものであり、各構成中のアルファベット文字が一部大文字と小文字の違いはあっても7文字のうち5文字が共通している。このような両商標の称呼外観及びこれらが取引者・需要者に与える印象、記憶、連想等を全体的に考察すると、両商標は、その指定商品に使用されたときには、相互に相紛れるおそれがあるというべきである。
(3) 原告は、本件商標は、ヘアサロン、エステサロン等のプロユース用として提供される原告の商品に使用され、「ナチュレア」の読みと共に、美容店業界に浸透しており、引用商標との間に商品の出所につき誤認混同を生ぜしめる状況が生じたことはないと主張し、両商標の類否判断に当たっては、このような取引の実情が考慮されるべきであると主張する。なるほど、甲第8号証の1ないし4(商品パンフレット)によると、原告の関連会社と認められる株式会社ピアセラボによって本件商標を付したスキンケア商品、ヘアケア商品が「ナチュレアピュアシリーズ」の名称で販売されていることが認められる。しかしながら、商標の登録要件を判断する際に商標の類否判断において考慮される取引の実情とは、主に当該指定商品の取引分野における一般的、恒常的な取引事情であると解されるのであり、現時点における商標の具体的使用態様等の将来変動する可能性もある個別事情は、商標の類否判断に当たって必ずしも重視することを要しないというべきである。本件においては、上記のとおり引用商標と類似すると認められる本件商標を指定商品に使用したときに、引用商標との間で商品の出所の誤認混同を生じさせないと認めるに足りる特別の事情は、本件全証拠を検討しても、これを認めることができない(なお、本件商標が登録要件の判断において引用商標と類似するものと判断されても、そのことから直ちに、現実に商品に使用されている本件商標の具体的な使用が引用商標に類似する商標の使用として引用商標に係る商標権の侵害に当たる、と判断されるものではない。) また、原告は、「Naturea」と「ナチュレア」の文字を上下2段に横書きしてなる原告の出願に係る後願商標が引用商標と非類似の商標と認められて登録された事実(甲第9号証の1、2)を指摘するが、同商標は本件商標と構成を異にするうえ「ナチュレア」の文字を併記することによって称呼を特定しているものであるから、同商標が登録された事実をもってしても本件商標から「ナチュレア」の称呼のみが生ずると認めることはできず、上記事実は、何ら本件における商標の類否判断を左右する性質のものではないというべきである。
4 結論 以上のとおりであるから、原告の主張する取消事由は理由がなく、他に本件決定を取り消すべき瑕疵は見いだすことができない。
よって、原告の請求は、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 古城春実
裁判官 橋本英史