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関連審決 異議1998-90637
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17ワ11663不正競争行為差止等請求事件 判例 商標
平成18ネ2387不正競争行為差止等請求控訴事件 判例 商標
平成13行ケ90取消決定取消請求事件 判例 商標
関連ワード 識別力 /  識別機能 /  使用事実 /  指定商品 /  普通名称(3条1項1号) /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項15号 /  著名商標 /  顧客吸引力(グッドウィル) /  類似性(類否判断) /  結合商標 /  通常使用権 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  国内 /  使用許諾 /  登録異議申立 /  継続 /  非類似 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 453号 商標登録取消決定取消請求事件
原告 ユーロポート株式会社
訴訟代理人弁理士 高田修治
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 芦葉松美
同 大橋良三
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/04/19
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成10年異議第90637号事件について平成12年10月13日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表による商品区分第17類の「被服,その他本類に属する商品」を指定商品として,欧文字「ROYAL QUEEN’S POLO TEAM」を横書きして成る,登録第4081555号商標(平成3年4月5日登録出願,平成9年11月14日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。本件商標について,異議申立てがあり,特許庁は,これを平成10年異議第90637号として審理した結果,平成12年10月13日に「登録第4081555号商標の商標登録を取り消す。」との決定をし,その謄本は同年11月1日に原告に送達された。
2 決定の理由 別紙決定書の理由の写しのとおり,本件商標をその指定商品に使用する場合には,これに接する取引者・需要者は,ラルフ・ロ―レン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがあるから,本件商標は商標法4条1項15号に該当すると認定判断した。
原告主張の決定取消事由の要点
決定の理由のうち,「第1 本件商標」,「第2 本件登録異議申立の理由」,「第3 登録取消理由の通知」,「第4 商標権者の意見」は認める。「第5 当審の判断」のうち,7頁20行ないし30行,8頁7行ないし15行,8頁17行ないし23行,8頁33行ないし9頁11行,9頁26行ないし30行,10頁5行ないし14行は認め,8頁16行ないし17行は否認し,その余は争う。
決定は,出所の混同のおそれについての認定,判断を誤ったものであって,この誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として取り消されるべきである。
1 「POLO(ポロ)」の語について (1) 「POLO(ポロ)」は,スポーツのポロ競技を意味する語として我が国において広く知られている。
日本国内の辞書・辞典類(甲第2号証の1ないし35)には,「POLO(ポロ)」の語がポロ競技を意味する語であることが掲載され,ポロ競技の内容も簡潔に記載されている。これらの辞書・辞典類は,いずれも発行部数が多く,家庭や学校・職場などで幅広く用いられていることから、取引者・需要者が身近に接する機会の多いものである。したがって,「POLO(ポロ)」の語がポロ競技を意味する語であることは,我が国において,広く一般に知られているというべきである。
また,「ポロシャツ/POLO SHIRTS」は,ポロ競技に由来するシャツの普通名称として広く知られている(甲第3号証)ことから,「ポロシャツ/POLO SHIRTS」における「ポロ/POLO」の語がポロ競技を意味することについては,ファッション関連商品の取引者・需要者に広く知られており,このことからも,「POLO(ポロ)」の語が,ポロ競技を意味する語として,ファッション関連商品の取引者・需要者に広く知られていることは明らかである。
ポロ・ラルフローレンとポロ・クラブの各ロゴマークについて,ファッションに関心がある10代から40代までの男女280人に対して実施した「ポロ」ブランド調査(甲第27号証)によれば,多くの人が双方のロゴマークについて「両方ともポロをしている」,「ポロ競技をしているところ」等と回答しており,このことからみても,「POLO(ポロ)」の語が,ポロ競技を意味する語として,ファッション関連商品の取引者・需要者に広く知られていることは明らかである。
ポロ競技が我が国において知名度を有しているか否かを判断するにあたっては,ポロ競技の特殊性を考慮に入れるべきであり,我が国において実際にポロ競技をプレイしたり観戦したりしたことのある人の数が少ないことをもって,直ちにポロ競技が我が国において広く知られていないとするのは誤りである。ポロ競技を行うに当たっては,多大な費用と広大な競技場が必要であるため,ポロ競技は,欧米の富裕層を中心として楽しまれる貴族趣味的なスポーツにとどまっており,我が国において実際に競技したり観戦したりしたことのある人の数が少ないことは当然である。それゆえ,ポロ競技は,我が国の国民にとっては高嶺の花のスポーツとして強い憧れの的となっている。このような我が国の国民の持つ強い憧れが,ポロ競技の知名度をより一層高いものとしているのである。
(2) 「POLO(ポロ)」は,「POLO SHIRTS(ポロシャツ)」の略称として,我が国において広く用いられている。
ポロ競技に際してプレイヤーが着用する衿つき半袖シャツは,古くから「ポロシャツ/POLO SHIRTS」と称されており,現在では,遊び着的な衿付きシャツを広く指称する普通名称となっている(甲第3号証)。商品「ポロシャツ/POLO SHIRTS」は、本件商標の出願当時はもとより,その後も,我が国の取引の実際において,「POLO」「ポロ」と略称され,取引者・需要者間で広く用いられていたことが明らかである(甲第4号証ないし第7号証,第21号証,第28ないし第37号証)。
これらの事実からみて,ファッション関連商品の分野における取引者・需要者が,「POLO」「ポロ」の文字に接したとしても,直ちにラルフ・ローレンを想起するという関係にないことは明らかである。したがって,本件商標の指定商品中「ポロシャツ」を始めとする被服について,「POLO商標」には,独創性はもとより,自他商品の識別力も認められないというべきである。
商品である「ポロシャツ」は,米国及び仏国においても「POLO」と略称されており(甲第8,第9,第22、第23号証),商品「被服」について自他商品の識別機能を果たし得ない普通名称である。近時の多種多様の情報媒体の発展等の事情に鑑みると,米国及び仏国において普通名称と認められる商標は,日本においても普通名称とみて差し支えない。
2 本件商標は,「POLO」商標と非類似であることについて 本件商標がラルフ・ローレンに係る商標である「POLO」商標と類似するか否かを判断するに当たっては,「POLO」の語の独創性の程度を勘案して,本件商標中の「POLO」の文字部分が,取引の実際において,独立して自他商品の識別機能を発揮する部分として認識される外観上,観念上あるいは称呼上の要素があるか否かによって判断すべきである。
(1) 外観上の要素について 本件商標は,「ROYAL」「QUEEN’S」「POLO」「TEAM」の各語を同書体・同大の欧文字で表し,等間隔で左書きした構成のものである。本件商標を構成する各語は,いずれも日本人にとってなじみの深い簡潔な英単語である。特に,「POLO」の語は,前述のとおり,ポロ競技を意味する既成の英単語として広く知られており,また,ポロシャツの略称(普通名称)としても広く一般的に用いられていることから,独創性がない語である。したがって,本件商標の外観上,取引の実際において「POLO」の文字部分が独立して自他商品の識別機能を発揮する部分として分離抽出される要素は全く存在しない。
(2) 観念上の要素について ポロ競技には,それが欧米の富裕層が楽しむ貴族趣味的なスポーツ競技であることから,高級イメージがある。本件商標は,このような「ポロ競技」を意味する「POLO」という語のもつ高級イメージを利用したネーミング(名づけ,命名)である。
本件商標は,「女王の」の意味を有する「ROYAL QUEEN’S」の語と,「ポロ競技のチーム」を意味する「POLO TEAM」の語とを結合した商標であって,本件商標を構成する上記各語は,観念的に密接な関連性を有しているというべきである。また,本件商標を構成する「ROYAL」「QUEEN’S」「POLO」「TEAM」の各語は,いずれも日本人にとってなじみの深い簡潔な英単語である。しかも,「POLO」の語は,商品「ポロシャツ」の略称(普通名称)としても,取引者・需要者に広く知られているものであることから、独創性のない語である。したがって,観念上,本件商標中の「POLO」の文字部分が独立して自他商品の識別機能を果たすと考えなければならない要素は全く存在しない。
(3) 称呼上の要素について @本件商標は,外観構成上一体的に表示されていること,A本件商標を構成する各語はいずれも日本人にとってもなじみの深い簡潔な英単語であり,この4者が一体となったからといって,全体の称呼が冗長になるものとも認められないこと,B本件商標を構成する各語は観念的にも密接な関連性を有していること,C「POLO」の語はポロシャツの略称(普通名称)として,ファッション関連商品の取引者・需要者に広く知られており,独創性がないことからすれば,本件商標中の「POLO」の文字部分に相当する「ポロ」の称呼が独立して自他商品の識別機能を果たす,と認識しなければならない要素は全く存在しないというべきである。
したがって,本件商標からは,「ロイヤルクイーンズポロチーム」の一連の称呼のみが生じるとみるのが相当である。
(4) よって,本件商標は,ラルフ・ローレンに係る「POLO商標」とは,明らかに非類似である。
3 混同のおそれがないことについて (1) 商標法4条1項15号の「混同を生ずるおそれ」の有無を,「POLO商標」の独創性の程度や本件商標と「POLO商標」との類似性の程度,その他取引の実情等に照らしつつ,本件商標の指定商品などの取引者・需要者が普通に払う注意を基準として,総合的に判断すれば,本件商標は,出願時においても査定時においても,「POLO商標」と商品の出所について混同を生ずるおそれがないことが明らかである。
(2) 本件商標がラルフ・ローレンに係る「POLO商標」と出所混同のおそれがあるか否かを判断するに当たっては,本願商標の査定時において,「POLO」「ポロ」がポロ競技を意味する英単語,外来語として我が国において広く知られている事実などの存在を考慮に入れるべきである。
(3) ラルフ・ローレンは,我が国において,横長四角形中に記載された「Polo」の文字を「Polo by Ralph Lauren」あるいは「Polo Ralph Lauren」として,「Ralph Lauren」の語と関連づけて,長年にわたって,商品「被服等」に使用することにより,「Polo」の文字とラルフ・ローレンとの関連性を一般に強くアピールしている。しかし,このことは,「常盤堂の雷おこし」あるいは「大幸薬品の正露丸」として長年にわたって使用し,その結果,取引者・需要者に「雷おこし」(普通名称)といえば常盤堂を,「正露丸」(普通名称)といえば大幸薬品をまず想起させるという関係と何ら異ならない。したがって,登録商標「雷おこし」あるいは登録商標「正露丸」の例と同様,「Ralph Lauren」の語の存在を抜きにして,「POLO」の語そのものに強い自他商品識別力を認めることはできない。
ラルフ・ローレンのポロ・ファッションズ社は,前述のとおり,我が国において「POLO」の語を商標として単独で使用することなく,常に「by Ralph Lauren」あるいは「Ralph Lauren」の語と組み合わせて使用してきた。その最大の理由は,「POLO(ポロ)」の語が単独では「ポロシャツ」をはじめとする「被服」について自他商品の識別力を果たし得ないことにある。
本件決定には,「POLO(ポロ)」標章を,「SONY/ソニー」標章や「CHANEL/シャネル」標章と同列に論じている点に誤りがある。「SONY/ソニー」は特定の意味を持たない創造語であり,「CHANEL/シャネル」は我が国ではなじみのない人名であって,いずれも独創性のある語であるから,これらの語が商標の一部を構成する場合,取引者・需要者がこれらの語に注目するのはきわめて自然なことである。これに対し,「POLO」「ポロ」の語は,商品「POLO SHIRT」「ポロシャツ」の略称として取引者・需要者間において広く用いられており,また「ポロ競技」を意味する語としても取引者・需要者に広く知られているものである。
しかも,スポーツ競技の名称は,被服をはじめとするファッション関連商品に好んで用いられる傾向にある。したがって,本件商標に接した取引者・需要者は,「POLO」の語だけに注目することなく,その前後を構成する他の語「ROYAL」「QUEEN’S」「TEAM」との関係を考慮に入れて,全体として認識・理解することになり,ラルフ・ローレンとの関連性を想起することにはならないというべきである。
そうである以上,「POLO」の語が商標の一部に含まれることをもって,取引者・需要者が,直ちにラルフ・ローレンに係る「POLO商標」を想起すると結論づけることはできないのである。
(4) 現在,我が国において,「POLO」及び「POLO」の語を含む結合商標「POLO CLUB」「BEVERLY HILLS POLO CLUB」「WORLD POLO CHAMPIONSHIPS」が,それぞれ第三者によって,商品「被服等」に出願・登録され(甲第14ないし第18号証),かつ使用されており,ラルフ・ローレンに係る「POLO商標」とは明確に区別されて取引されている(甲第13号証)。その他にも,「POLO」の語を一部に含む商標が商品「被服」等について多数出願・登録されている(甲第19号証)。
また,本件商標の出願時,商標「POLO」については,公冠販売株式会社が「被服」等を指定商品とする商標権を保有しており(甲第14,第15号証),同社は,自ら上記商標を使用するとともに,昭和62年1月1日,ラルフ・ローレンに対し上記商標権について通常使用権を許諾して使用させている(甲第20号証)。
米国法人ビーエイチピーシー マーケティング インコーポレイテッドは,商標「Beverly Hills Polo Club」について「被服」等を指定商品とする商標権を保有しており,ラルフ・ローレンとの間で上記商標の使用について異議を申し立てないという実質的な許諾によって和解をしている。
取引者・需要者は,「POLO」の文字が商標の一部に含まれていることをもって直ちにラルフ・ローレンの商品であると認識することはないとみるのが正当であることは,これらのことからみても明らかというべきである。
(5) 使用主義法制をとる米国においても,「POLO」を含む商標が,「被服」「時計」「眼鏡」等を指定商品として,複数の第三者によって多数登録されている(甲第11号証)。米国では,使用事実がなければ商標登録が認められないのであるから,米国において「POLO」の文字を一部に含む商標が「被服」「時計」「眼鏡」等を指定商品として多数登録を認められているということは,ラルフ・ローレンの本国である米国において,「POLO」の文字が商標の一部に含まれていることをもって,直ちにラルフ・ローレンの「POLO商標」との出所混同を生ずるおそれがあると認定されていないことを意味する。このことも,ラルフ・ローレンに係る「POLO商標」の我が国商標法に基づく保護の軽重を判断する上で考慮すべき,取引の実情の一つというべきである。
(6) 以上のとおり,本件商標は,ラルフ・ローレンに係る「POLO商標」と商品の出所について混同を生ずるおそれがないものであるから,決定の認定,判断は,誤りである。
被告の反論の要点
1 「POLO(ポロ)」の語について (1) ポロ競技は,我が国においては,その愛好者は極めて少なく,なじみの薄いスポーツである。原告提出の証拠(甲第2号証の1ないし35)によれば,「POLO(ポロ)」の語がポロ競技のこととして古くから国語辞典,外来語辞典等に記載されていたことは認められるものの,一般的に,辞書,辞典類は,知らない語をひもとく場合に利用されるものであるから、これらに「POLO(ポロ)」の語が記載されていることのみをもって,一般に広く知られているということにはならない。本件商標の登録出願後,決定時までに,上記実情に変更があったともいえない。
(2) 「POLO」商標は,被服や眼鏡等のファッション関連分野においては,ラルフ・ローレンのデザインに係る被服,眼鏡等について使用される標章を総称するものとして,取引者・需要者に広く認識されているものであり,我が国においては,「POLO」「Polo」「ポロ」を始め,「by Ralph Lauren」の文字及び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形」などの各標章を真似た偽物を,「ラルフ・ロ―レンのデザインに係る商品」などと触れ込んで販売している事実もある。また,ポロ競技は,我が国では知名度は低く,愛好者も極めて少ない,なじみの薄いスポーツである。
これらのことを総合すれば,被服を始めとするファッション関連の商品に「Polo」,「ポロ」などの文字が使用された場合には,これに接する取引者・需要者は,スポーツ競技の名称等を表わしたと理解するのではなく,ラルフ・ローレンのデザインに係る商品であると認識することになるというべきである。
(3) 商品「ポロシャツ」が,取引の実際において,「POLO」「ポロ」と略称されている事実があるとしても,原告提出の証拠(甲第4ないし第7号証,甲第21,第25,第28ないし第37号証。なお,甲第28,第29号証には,「POLO」「ポロ」の語が「ポロシャツ」の略称であることを示す記述はない。)は,その多くが,ラルフ・ローレンの「POLO商標」の著名性が確立された後の平成7年から平成12年にかけて発行されたものと認められるところからすれば,それらにおける「POLO」「ポロ」の語に関する記載は,ラルフ・ローレンの「POLO商標」の著名性に引きずられてなされたものとみられなくもないのである。実際,ラルフ・ローレンの「POLO商標」の著名性が確立される前に発行された,辞典類(乙第17ないし第19号証)には,「POLO」「ポロ」の語が「ポロシャツ」の略称であることについての記載は見当たらない。
米国及び仏国における取引の実情において,「POLO」の語が「ポロシャツ」の略称とされているとしても、そのことと我が国における取引の実情との間には直接の関係はない。
仮に,原告主張のように,「POLO」「ポロ」の語が「ポロシャツ」の略称であるということができるとしても,それは,「POLO」「ポロ」の語がポロシャツの略称として用いられていると認識される場合に限られるのであり,また,ポロシャツ以外の本件商標の指定商品については該当しないことが明らかである。
2 本件商標は,「POLO」商標と非類似であるとの主張について 「POLO」の語自体が独創性のないものであるとしても,本件商標の指定商品について「POLO」の語が自他識別能力を有するものであることは,上記1で述べたとおりである。原告の主張は,ラルフ・ローレンに係る標章が「POLO(ポロ)」と呼ばれて著名であったことを無視して商標の類否を論じるものであり,前提を欠くものである。
決定は,本件商標とラルフ・ローレンに係る「POLO商標」との類似性について言及しているわけではなく,本件商標をその指定商品について使用した場合には,商品の出所について混同を生ずるおそれがある旨判断しているものである。
したがって,原告の主張は,失当である。
3 混同のおそれがないとの主張について (1) 前記のとおり,「POLO」商標は,我が国においては,ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等について使用される標章を総称するものとして,取引者・需要者の間に広く認識されているものであり,その認識の度合いは,本件商標の出願時,決定時のみならず,現在においても継続しているというべきである。そして,被服,眼鏡等のファッション関連商品分野においては,「POLO(ポロ)」といえば,ラルフ・ローレンのデザインに係る被服,眼鏡等について使用される標章を直ちに想起させるものであり,我が国において,「POLO」を始め,ラルフ・ローレンの使用する標章を真似た偽物が多く出回っている事実からみても,「POLO商標」は,極めて強い自他商品の識別力,顧客吸引力を有していることが明らかである。
一方,本件商標は,「ROYAL QUEEN’S POLO TEAM」の欧文字を書して成るものであり,その構成は,外観及び称呼上,冗長といえるものである。そして,これらの語が全体として,親しまれた熟語的意味合い,もしくは団体名称を表すものとして,我が国の一般世人によく知られているとの証拠も見いだせないから,これを常に一体不可分のものとしてのみ把握しなければならない特段の事情も認められない。
上記構成態様の本件商標に接する取引者・需要者は,前記の事情からすれば,その構成中の「POLO」の文字部分に強く印象付けられ,ラルフ・ローレンに係る著名商標である「POLO」商標を連想・想起すると考えるのが自然である。
そうすると,本件商標を「被服」を含むその指定商品に使用した場合には,取引者・需要者をして,ラルフ・ローレン又は同人と何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品との間に,出所の混同を生じさせるおそれがあるというべきである。
(2) 「POLO」及びそれを含む結合商標が,第三者によって商品「被服等」について多数出願・登録されていることや,ラルフ・ローレンが商標である「POLO」について,商標権者である公冠販売株式会社から使用許諾を受けている事実等と,商品「被服,眼鏡」等に使用するラルフ・ローレンに係る「POLO商標」が著名であることとの間には直接の関係はない。本件商標が,ラルフ・ローレンとは関係がないものとしてよく知られ,ラルフ・ローレンに係る「POLO商標」と区別して認識されているといった事情は,認められない。
(3) 米国において「POLO」を含む商標が第三者により登録されている事実があるとしても,米国の商標法による商標の保護制度と日本のそれとは,両国間に国情の相違があるように法制度の相違がある以上,同一のものと解釈しなければならない理由はない。
当裁判所の判断
1 本件商標の商標登録出願時における商品の出所の混同のおそれについて (1) 乙第1ないし第10号証,第11,第12号証の各1によれば,次の事実が認められる。
ラルフ・ローレンは,1939年(昭和14年)生まれのアメリカの服飾等のデザイナーである。同人は,1970年,73年の2回にわたりアメリカのファッション界では最も権威があるとされるコティ賞を受賞し,1974年には映画「華麗なるギャツビー」の男性衣装を担当するなどして,世界的に知られるようになった。ラルフ・ローレンがデザインした紳士服、ネクタイ等には、「馬上の競技者が,先端が小さなT字状になった棒のような物を持っている図形」、「Polo Ralph Lauren」、「Polo by Ralph Lauren」といった標章が,単独で又は組み合わされて使用されている(以下、これらを総称して「ラルフ標章」という。)。我が国においては,日本でのラルフ・ロ―レンのデザインに係る商品の輸入・製造・販売のライセンス(許諾)を得ていた西武百貨店(ただし,眼鏡,ネクタイのライセンスは,別の会社が有していた。)の昭和62年におけるポロ・ラルフローレンブランドの小売販売高が約330億円となり,平成元年ころには,第三者がラルフ標章ないしこれに酷似した標章を付した偽ブランド商品を販売して摘発されるという事件が発生するほど,ラルフ標章は顧客吸引力を有するに至っていた。本件商標の商標登録出願前から,各種雑誌等において,ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服,婦人服,眼鏡を始めとする商品が一流ブランドないし流行ブランドとして,「ポロ」,「POLO」,「Polo」のブランド名のもとに紹介され,一般大衆を読者とする新聞でも,平成元年5月19日付け朝日新聞夕刊(乙第12号証の1)に「『ポロ』の偽 大量販売 警視庁 通信販売会社を摘発・・・『Polo(ポロ)』の商標で知られるラルフローレンブランド・・・米国の『ザ・ローレン・カンパニー』社の商標・デザインで西武百貨店が日本での独占製造販売権を持っている『Polo』の商標と乗馬の人がポロ競技をしているマーク」,平成2年11月27日付け朝日新聞東京地方版/栃木 栃木版(乙第11号証の1)に「プレゼント・・・ポロ・・・などの輸入ブランドに人気があるという。女性から男性へは,ポロのセーター(1万4000円)」という各記事が掲載されているように,ラルフ標章は「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)の商標の名で知られ,これを付した商品もブランドとして「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と呼ばれていた。
上記認定の事実によれば,本件商標の商標登録出願時までには,ラルフ標章は,「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)の商標などと呼ばれ,これを付した商品もブランドとして「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と呼ばれて,いずれも紳士服,婦人服,眼鏡等のファッション関連商品についてラルフ・ローレンのデザインに係る商品に付される商標ないしそのブランドとして著名であったことが認められる。
(2) 一般に,簡易,迅速を尊ぶ取引の実際においては,商標は,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほどにまで不可分的に結合していない限り,常に必ずその構成部分全体の名称によつて称呼,観念されるというわけではなく,しばしば,その一部だけによって簡略に称呼,観念され,その結果,一個の商標から二個以上の称呼,観念の生ずることがあるのは,経験則の教えるところである(最高裁判所第1小法廷昭和38年12月5日判決・民集17巻12号1621頁参照)。
また,本件商標が使用される商品である「被服」等のファッション関連商品は,主たる需要者は,老人から若者までを含む一般大衆であって,その商品「被服」等に係る商標やブランドについて,詳しくない者や中途半端な知識しか持たない者も多数含まれている。そして,このような需要者が購入する際は,恒常的な取引やアフターサービスがあることを前提にメーカー名,その信用などを検討して購入するとは限らず,そのような検討もなくいきなり小売店の店頭に赴いたり,ときには通りすがりにバーゲンの表示や呼び声につられて立ち寄ったりして,短い時間で購入商品を決定することも少なくないものである。(以上の事実は,当裁判所に顕著である。) したがって,本件商標についての混同のおそれの判断に当たっては,以上のような経験則,及び取引の実情における需要者の注意力を考慮して判断すべきである。
(3) 本件商標は,19文字からなり,これより生ずる「ロイヤルクイーンズポロチーム」の称呼は長音を含む14音より構成されているから,その外観,称呼とも,一つの名称のものとしては,冗長というべきである。そして,「ROYAL QUEEN’S」は,「女王の」を意味する語で,その後に続く「POLO」以下の語を修飾する語であり,「POLO TEAM」は,「ポロのチーム」という意味であるから,本件商標において「POLO」の文字は重要な意味を持つ言葉と認識されるものと認められる。ところが,本件全証拠によっても,「ROYAL QUEEN’S POLO TEAM」との文字が,全体として特定の熟語や団体名称を表わすものとして我が国の一般の取引者・需要者によく知られているものとは認められない。
このように,本件商標の文字相互の結びつきは,それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほどまでに不可分的に結合しているものとは認めることのできないものである。
(4) そうすると,本件商標がその指定商品である,「被服」等のファッション関連商品に使用された場合には,これに接した取引者・需要者は,その「POLO」の文字部分に着目して,「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)の商標と呼ばれるラルフ標章や,「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と呼ばれるブランド名を連想し,ラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
この点について出所の混同の発生する具体的な例を挙げれば,本件商標は,「POLO」の文字を重要な要素として含んでいるのであるから,これを「ROYAL QUEEN’S POLO TEAM」,「ロイヤルクイーンズポロチーム」という冗長であって一般に知られていない名称で称呼,観念するのではなく,簡略に,「ポロ」の商標と称呼,観念して取引することが考えられる。このようにして取引したとしても,決して不自然ということはできない。まして,「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)の商標と呼ばれるラルフ標章や,「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)ブランドが著名であり,強い顧客吸引力を有していることからすれば,ラルフ・ローレンと関係のある「ポロ」の商標ないし「ポロ」ブランドであることには大きな価値があるから,そのような称呼,観念は,より発生しやすいところである。そして,取引者,特に販売者が,本件商標を,「ポロ」の商標と呼んだとき(前示のとおり,このこと自体を不自然ということはできない。),前記取引の実情における需要者の注意力を考慮すれば,需要者は,本件商標の「POLO」の部分に着目して,それが「ポロ」の商標であるから,ラルフ・ロ―レンに係る著名な「ポロ」の商標ないし「ポロ」ブランドと誤解し,あるいは,ラルフ・ロ―レンに係る著名な「ポロ」の商標とは全体の構成が異なることに気付いたとしても,同じ「ポロ」の一種であって兄弟ブランドないしファミリーブランドと誤解して,その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
もとより,上記は,原告がそのような方法で出所の混同を発生させることを意図して本件商標の登録出願をしたという趣旨ではない。しかし,商標がいったん登録された場合には,自由に譲渡されたり使用権が設定されたりし得るものであるから,出所の混同のおそれは,出願人の出願の意図とは関係なく,取引の実情に基づき客観的に判断せざるを得ないのである。
2 決定時における商品の出所の混同のおそれについて 乙第11号証の2,第12号証の2ないし5によれば,本件商標の商標登録出願後決定時にかけても,朝日新聞,読売新聞,日本経済新聞に「ポロの靴下 ブランド世代・・・足元は,申し合わせたようにラルフロ―レンのポロのマーク」,「アメリカの人気ブランド『ポロ』・・・のロゴ『ポロ・バイ・ラルフ・ロ―レン』」「偽『ポロ』眼鏡枠を摘発・・・ポロ競技のマークで知られる米国のファッションブランド『POLO(ポロ)』の製品に見せかけた眼鏡枠を販売」,「偽ブランドの販売で元社長に有罪判決・・・米国ブランド『ポロ』などのマークが入った偽物のセーターやポロシャツ」,「ラルフロ―レン偽物衣類を販売・・・「ポロ」ブランドの偽物セーター」との記事が掲載されていることにも示されているとおり,「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)の商標などと呼ばれるラルフ標章,及び,そのブランドである「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)ブランドの著名性は継続しており,また,ラルフ標章の顧客吸引力に着目して偽「ポロ」ブランド商品を販売する者も絶えなかったことが認められる。
そして,本件商標の商標登録時から決定時までの間に,前記1の認定に係る事情に変化があったものと認めるに足りる証拠はないから,決定時においても,前記1の認定に係る混同のおそれは,なお継続していたものと認められる。
3 原告の主張について (1) 原告は,@「POLO(ポロ)」は,ポロ競技を表す語として,我が国において広く知られている,A「「POLO(ポロ)」は,「POLO SHIRTS」「ポロシャツ」の略称として,我が国において広く用いられており,米国,仏国においても,同様であると主張する。
しかし,原告の挙げる上記@,Aは,いずれも,前記1の判断の妨げとはなり得ない。
ア @について 本件商標の登録出願時までには,ラルフ標章は,「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)の商標などと呼ばれ,それの付された商品もブランドとして「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と呼ばれて,いずれも紳士服,婦人服,眼鏡等のファッション関連商品についてラルフ・ローレンのデザインに係る商品に付される商標ないしそのブランドとして著名であったことは前示のとおりである。
一方,乙第13ないし第16号証によれば,ポロ競技は,我が国では,平成10年ころでも競技者がわずか約30人という程度のものであって,「スポーツ用語」(株式会社教育社1992年11月25日発行),「ニュースポーツ百科」(株式会社大修館書店1995年9月20日発行),「NEW COLOR SPORTS 1995」(一橋出版株式会社1995年発行)にも取り上げられておらず,関心の薄いスポーツであったことが認められる。
この点に関して,原告は,古くから,辞書・辞典類に「POLO(ポロ)」の語がポロ競技のこととして記載されていること,アンケート調査において,ポロ競技者のロゴマークを示したのに対し,多くの人が「ポロ競技」「ポロというスポーツ」に結び付けた回答をしていることを指摘し,「POLO(ポロ)」は,ポロ競技を表す語として,我が国において広く知られていると主張する。しかしながら,仮に,我が国において「POLO(ポロ)」の語がポロ競技を意味することが広く知られているとしても,そのことと取引者・需要者がポロ競技に関心を寄せていることとは別の問題である。
我が国において,多くのマスコミが,スポーツとしてのポロ競技を取り上げて報道しているとか,テレビ・ラジオや新聞・雑誌において,ポロ競技の試合結果が時々報道されるとか,ポロの観戦に関心のあるファンがある程度はいるとかという事実を認めるに足りる証拠はない。原告は,ポロ競技は我が国において高嶺の花のスポーツとして強い憧れの的となっていると主張するが,そのような事実を認めるに足りる証拠もない。したがって,「POLO(ポロ)」の語がポロ競技を意味することが我が国において広く知られているとしても,そのことは,ポロ競技が我が国において関心の薄いスポーツであるとの前記認定を左右するものではない。
そうである以上,本件商標の指定商品である,「被服」等のファッション関連商品との関係においては,「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)とは,前記ラルフ・ローレンと関係のある「ポロ」の商標ないし「ポロ」ブランドを指すものであると理解されることが多いのは,当然というべきである。
イ Aについては,本件商標が,ポロシャツ以外の物について使用された場合に,「POLO」がポロシャツのことであると理解されることはあり得ないところである。
(2) 原告は,本件商標中の「POLO」の語が外観,観念及び称呼上,他の文字部分から独立して注目されることはない旨主張する。
しかし,一個の商標から二個以上の称呼,観念の生ずることがあることは,前示のとおりであり,前記1の(1)認定に係るラルフ・ローレンと関係のある「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)の商標及び「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)ブランドと呼ばれるものの著名性,同(2)認定に係る経験則及び取引の実情を考慮したとき,取引者・需要者は,本件商標の「POLO」の部分から,本件商標を,例えば,「ポロ」の商標と称し,その結果,ラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがあることは,前示のとおりである。
本件商標について,冷静かつ厳密に分析し,その意味を正確に理解し,取引に当たろうとする者であるならば,誤りなく「ROYAL QUEEN’S」は,「女王の」を意味する語で,「POLO TEAM」は,「ポロのチーム」という意味である,と認識することになるかもしれない。しかし,簡易迅速を尊ぶ取引の実際,本件商標に係る指定商品取引の実情における需要者の注意力,「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)の商標及び「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)ブランドと呼ばれるものの著名性(換言すれば,ラルフ・ローレンと関係のある「ポロ」ブランドであることの価値)を考慮すれば,本件商標に係る指定商品取引の実情においては,本件商標のような結合商標であって,かつ全体としては冗長な商標について,そのように冷静かつ厳密に分析し,その意味を正確に理解することが普通であって,そのように理解されないことは,本件商標の登録の可否を論ずるうえで無視できる程度にしか生じないであろう,などということはできない。
この点に関する原告の主張は,採用することができない。
(3) 原告は,ラルフ標章は,「by Ralph Lauren」あるいは「Ralph Lauren」の語と組み合わせることによって初めて自他商品識別力を有するものであり,「POLO(ポロ)」の語単独では自他商品の識別力を有しないから,本件商標に「POLO」の語が含まれていることをもって,取引者・需要者が直ちにラルフ・ローレンに係る「POLO商標」を想起すると結論づけることはできない旨主張する。
しかしながら,ラルフ標章は,「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)の商標などと呼ばれ,それが付された商品は,ブランドとして「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と呼ばれて,いずれも紳士服,婦人服,眼鏡等のファッション関連商品についてラルフ・ローレンのデザインに係る商品に付される商標ないしそのブランドとして著名であることは前示のとおりである。ラルフ標章及びそれが付された商品のブランドが上記のように呼ばれている以上,本件商標の出所の混同のおそれを判断するに当たっては,上記事実を前提として判断すべきであることは,当然である。
原告の主張は採用することができない。
(4) 原告は,我が国や米国において,ラルフ・ローレン以外にも,「POLO」及び「POLO」を含む結合商標が,第三者によって,商品「被服」等について多数出願・登録され,かつ使用されており,ラルフ標章とは明確に区別して取引されていると主張する。
しかし,「POLO」の語を含む結合商標が他にも多数存在することは当裁判所に顕著ではあるものの,それらが,需要者により,ラルフ・ロ―レンによって使用される「POLO」と明確に区別され,ラルフ・ローレンとは関係のないものとして取引されていることは,本件全証拠によっても認めることができない。
すなわち,前認定のとおり,ラルフ標章が「ポロ(「POLO」ないし「Polo」)の商標,ラルフ標章の付された商品のブランドが「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と呼ばれて,著名である事実に照らせば,需要者が,「POLO」の語を含む結合商標について,ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を示すものであって,それの付された商品を,著名な「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)ブランドないしその兄弟ブランドであるなどと誤解している可能性も十分にあるのである。
のみならず,前認定のとおり,ラルフ標章が「ポロ(「POLO」ないし「Polo」)の商標,ラルフ標章の付された商品のブランドが「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)と呼ばれて,著名である事実に照らせば,「POLO」の文字を含む商標であってこれと区別して認識されているものが,仮にあるとしても,そのことは,本件商標による商品の出所の混同のおそれの認定を左右するものではない。なぜなら,仮に,他の結合商標が,著名な「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)の商標(ラルフ標章)ないし「ポロ」(「POLO」ないし「Polo」)ブランドと呼ばれるものと区別され,出所を異にするものとして理解されているとすると,そのことは,それが,「POLO」とそれ以外の他の特定の文字とが結合した文字から成るものとしてよく知られ,かつ,何らかの事情によりそれがラルフ・ローレンとは関係のないものとしてよく知られるに至っているとか,又は,「POLO(ポロ)」以外の文字の特異性などにより当然にそれがラルフ・ローレンとは関係がないものと認識されるとか等の特段の事情があることを意味するのであって,そうであるからこそ,区別されているといい得るものである。
ところが,本件全証拠によっても,本件商標が「POLO」以外の他の文字と結合した文字から成るものとしてよく知られ,かつ,ラルフ・ローレンとは関係のないものとしてよく知られるに至っているとか,「POLO」以外の文字の特異性などによって当然にそれが認識されるとかというような特段の事情も窺えない。したがって,前記各ブランドの存在によって,本件商標についての前記商品の出所の混同のおそれが減少するものということはできないのである。
4 以上のとおりであるから,原告主張の取消事由は理由がなく,その他決定にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟
7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 阿部正幸
裁判官 山田知司