関連審決 | 無効2004-89107 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成17ワ5588商標権侵害差止等請求事件 | 判例 | 商標 |
平成25行ケ10188審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成18行ケ10519審決取消請求事件 平成19行ケ10091審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成21行ケ10378審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 指定商品 / 品質誤認(4条1項16号) / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 無効審判 / |
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事件 |
平成
17年
(行ケ)
10783号
審決取消請求事件
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原告X 被告 Y1 被告 Y2 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2006/02/15 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
特許庁が無効2004−89107号事件について平成17年9月26日にした審決を取り消す。 訴訟費用は,被告らの負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判等
原告は,主文同旨の判決を求め,その請求原因として,訴状(訴状追加申立書を含む。)において後記「第3 原告の主張の要点」のとおり主張し,証拠として甲1ないし30を提出し,これらの訴訟書類は口頭弁論期日の呼出状とともに,2回にわたって被告らに送達された。これに対し,被告らは,いずれも,口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面も,また証拠申出書等の書類も何ら提出しなかった。 |
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事案の概要
本件は,原告が,被告らを商標権者とする後記登録商標について,商標法4条1項16号に規定する「商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標」であるとして無効審判請求をしたところ,特許庁は,同審判請求は成り立たないとの審決をしたため,原告が同審決の取消しを求めた事案である。 1 特許庁における手続の経緯 (1) 本件商標 商標権者:被告ら(Y1,Y2) 本件商標: 指定商品:第30類「菓子及びパン,即席菓子のもと」(本件商標の設定登録後,指定商品「パイ」について無効とすべき審決がされ,確定審決の登録がされた。) 登録出願日:平成13年6月13日 設定登録日:平成14年11月29日 登録番号:第4624655号 (2) 本件手続 審判請求日:平成16年11月30日(無効2004-89107号) 審決日:平成17年9月26日 審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない。」 審決謄本送達日:平成17年10月6日(原告に対し) 2 審決の理由の要旨 審決は,以下の理由から,本件商標は,商標法4条1項16号にいう「商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標」とはいえず,その登録を無効とすることはできないと判断した。 (1) 品質の誤認を生ずるおそれについて 「本件商標は,別掲に示したとおり,「3月14日(ホワイトデー)」の文字と「πの日」(「π」の文字部分には,「パイ」の振り仮名が付されている。)の文字を二段に書してなるものである。 ところで,3月14日は,ホワイトデーと称され,「バレンタインデーの1ヶ月後で,本来は男性から女性に白い物(菓子など)をお返しする日」(「現代用語の基礎知識2005」株式会社自由国民社発行)であり,また,円周率(π)が約3.14であることは,義務教育で修得する事項であって,それぞれ広く知られているものといえる。 そうすると,本件商標中の「3月14日」の文字は,ホワイトデーの「3月14日」とπ(円周率)の「3.14」を掛けて表したとみることができるから,本件商標は,全体として「3月14日のホワイトデーはπ(パイ)の日」の意味合いを容易に理解させるものということができる。 そして,3月14日がホワイトデーであり,ホワイトデーには,上記のとおり,男性から女性に白い物(菓子など)を返す日であることからすると,上記意味合いにおける「π(パイ)の日」は,(菓子の)「パイ」を円周率の「π(パイ)」に掛けて表したものであろうと理解される場合も少なからずあるというべきであるから,「3月14日のホワイトデーはπ(パイ)の日」の意味する内容は,「3月14日のホワイトデーはπ(パイ)の日であり,(菓子の)パイの日である」ことを表しているとみるのが相当である。 請求人は,本件商標について,「標章内のパイが菓子のパイを指し示すことは明白である。」と主張している。 しかしながら,本件商標は,「3月14日のホワイトデーはπ(パイ)の日」(さらに進んで,「3月14日のホワイトデーはπ(パイ)の日であり,(菓子の)パイの日である」)といった一体とした意味合いをもって理解されるものであること上記のとおりであり,構成中下段の「π(パイ)の日」の文字部分に限ってみても,該文字部分の意味するところは「π(パイ)の日(菓子のパイの日)」以外になく,菓子の「パイ」そのものではないことは明らかであるから,本件商標をその指定商品に使用した場合,これに接する取引者,需要者が,直ちに当該商品が(菓子の)「パイ」であると,商品の品質について誤認するおそれがあるものとまではいうことができない。 してみれば,本件商標は,そのいずれの指定商品についても,商品の品質の誤認を生ずるおそれはないといわなければならない。 また,請求人は,「広告代理店の実施したアンケートによれば,一般消費者が本件商標に接して75%もの人が容易に菓子のパイとの関係を認識できることを示している。この数字は,商標の文字だけから得られた連想の結果であり,菓子売場や広告で商品(パイ)とともに表示されれば当然,その確率は一層高まると容易に判断できる」旨も主張する。 しかしながら,広告代理店の該アンケートは,まず,バレンタインデーへの関心度及びプレゼントについて問い,次いで,ホワイトデーについて同様の設問をしたものである。請求人の述べる「一般消費者が本件商標に接して75%もの人が容易に菓子のパイとの関係を認識できることを示している」との回答結果を得たという設問についてみても,本件商標の構成文字などを示して「次のキャッチフレーズの狙いはどのようなプレゼントでしょうか」というものであり,設問自体が「ホワイトデーのプレゼント」という答えるべき範囲を前もって提示してされたものである。そうすると,該アンケート結果は,実際の商取引の場における一般取引者,需要者の認識の程度を示すものとみることは到底できないから,この点に関する請求人の主張は,上記判断を左右するものではない。」 (2) 結論 「本件商標は,商標法4条1項16号に違反して登録されたものではないから,同法46条1項の規定により,その登録を無効とすることはできない。」 |
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原告の主張の要点
1 取消事由(品質の誤認を生ずるおそれについての判断の誤り) 審決は,本件商標をその指定商品に使用しても商品の品質の誤認を生ずるおそれはないと判断したが,誤りである。 (1) 審決は,3月14日のホワイトデーに,3.14(π)という数字にちなんで菓子のパイを女性に返すということを認めながら,本件商標の文字部分の意味は「菓子の「パイ」そのものではない」と判断しているが,本件商標の一部に品質を表示する部分がある以上,需要者は「(菓子の)パイの日」にパイが売られると考えるのが自然である。 (2) 仮に,本件商標の全体を総合して品質の誤認を生ずるおそれを判断しなければならないとしても,本件商標のうち最も重要な部分は「(菓子の)パイ」であり,菓子店において菓子類に本件商標が付されていれば「パイ」と思わない人はいない。本件商標の指定商品は,「菓子」「パン」「即席菓子のもと」のいずれについても「パイ」を想起させるものであり,品質誤認のおそれが現実に存在する。 (3) 本件商標の「パイの日」のように語尾に「の日」と付く記念日は,その前後に目的の商品を集中して展示し,その記念日であることを強くアピールすることで営業が成立するのが一般的である。一般需要者は,「パイの日」といわれれば,「パイ」の購入を期待し,商標を付された商品が「パイ」であると考えるのが当然である。 (4) 審決は,原告が提出したアンケート結果(甲7)について,設問自体が答えるべき範囲を前もって恣意的に提示したものであるというが,本件商標はホワイトデーのプレゼントである「菓子のパイ」に付されることを目的としたものであるから,その使用実態に即した形で回答を求めないと正確な数字を得ることができない。上記アンケートは中立の業者により実施され,ホワイトデーの購買動向という条件設定をすることにより,実態に近い結果を得られたものである。 (5) 本件商標がホワイトデーに関する記念日であり,「菓子のパイ」の販売を目的とするものであることは,被告らのホームページからも明らかであり,辞書でも「ホワイトデーは菓子を返す日」と定義されている。本件商標が「菓子のパイ」の記念日を意味し,特別にパイを販売する日であることは,一般需要者であれば容易に理解し得る。 2 結論 以上のとおり,本件商標が商標法4条1項16号に該当しないとした審決の判断は,誤りであり,取り消されるべきである。 |
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当裁判所の判断
1 取消事由(品質の誤認を生ずるおそれについての判断の誤り)について (1) 商標法4条1項16号は,「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」は登録することはできない旨規定している。商品の品質の誤認を生ずるかどうかは,その商標の外観,称呼,観念等から判断して,その指定商品について,その商品が現実に有する品質と異なるものであるかのように需要者をして誤認されるおそれがあるかどうかに照らして判断するべきである。 本件商標は,「3月14日(ホワイトデー)」の文字と「πの日」(「π」の文字部分には,「パイ」の振り仮名が付されている。)の文字を二段に書してなるものである。その指定商品は,第30類「菓子及びパン,即席菓子のもと」であるが,指定商品中「パイ」についての商標登録は,これを無効とする審決が確定している。したがって,本訴において判断すべきは,本件商標をパイ以外の「菓子及びパン,即席菓子のもと」に使用した場合に,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるかどうかである。 (2) 本件商標の上段には,「3月14日(ホワイトデー)」の文字が書されている。我が国では,3月14日は「ホワイトデー」と称され,2月14日のバレンタインデーにチョコレートなどをもらった男性がそのお返しとして贈り物をする日としてよく知られている。ホワイトデーの贈り物として定まったものはないが,マシュマロ,クッキー,キャンディ,ケーキなどの菓子類が贈り物として選択されることが多いことは甲7のアンケート結果からも明らかであり,3月14日が近づくと,菓子店を初めとする小売店がホワイトデーの贈り物用として様々な商品を宣伝・販売していることは,誰もが経験する周知の事実である。 他方,本件商標の下段には,「πの日」と書され,「π」の文字の上部には「パイ」の振り仮名が付されている。「π」は円周率(3.14)を示すものとしてよく知られていることから,「πの日」が3月14日(ホワイトデー)を意味することは容易に理解できる。また,上記のとおりのホワイトデーの習慣に照らすと,一般の需要者であれば,「π」の振り仮名として書された「パイ」から菓子のパイを連想し,本件商標が全体として「3月14日のホワイトデーは菓子のパイの日である」との意味も持つことを理解できるというべきである。 (3) このような本件商標の構成に照らすと,本件商標が3月14日のホワイトデー用のパイ菓子に用いられるものであり,同日が菓子のパイの日であることを需要者にアピールすることによりパイ菓子を販売しようとするものであることは明らかである。パイは,ホワイトデーの贈り物としてはそれほど一般的であるとはいえないが,ホワイトデーの贈り物として販売される場合には,他の菓子類,即席菓子のもと,パン類等とともに販売される可能性が高いことは,その性質上当然である。 (4) 審決は,本件商標の意味するところは,「π(パイ)の日(菓子のパイの日)」にとどまり,菓子のパイそのものではないので,本件商標をその指定商品に使用したとしても,これに接する取引者,需要者が,当該商品が菓子のパイであると誤認するおそれがあるとはいえないとする。 確かに,本件商標は菓子のパイそのものを意味するものではなく,「パイ」の文字は「π」の振り仮名として小さく書されているにすぎない。しかしながら,前記判示のとおり,本件商標はホワイトデーという多くの人が限られた期間内に菓子類等を買い求める機会に使用されるものであり,そのことが商標の構成から明らかであるところ,同商標には,パイ菓子であることを直接的に示す「パイ」という言葉が使われ,全体としても「3月14日は菓子のパイの日」を意味すると理解できるのであるから,ホワイトデーの贈り物として菓子類やパン類を求めにきた需要者は,本件商標に接した場合,その内容,品質がパイ菓子であって,他の種類の菓子やパンではないと認識するのが自然である。そうすると,本件商標が,パイ菓子以外の「菓子及びパン,即席菓子のもと」に使用された場合には,需要者はその商品の内容,品質がパイ菓子であると誤認するおそれがあるというべきである。 2 結論 以上のとおり,「パイ」を除く指定商品について,本件商標が商品の品質の誤認を生ずるおそれのある商標とはいえないとした審決の判断は誤りであり,原告主張の審決取消事由は理由があるので,審決は,取消しを免れない。 |
裁判長裁判官 | 塚原朋一 |
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裁判官 | 野輝久 |
裁判官 | 佐藤達文 |