審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成10ワ9655商標法違反差止等請求事件 | 判例 | 商標 |
昭和61ワ7184 | 判例 | 商標 |
平成5ワ1111 | 判例 | 商標 |
昭和50ネ2172 | 判例 | 商標 |
平成18ネ2387不正競争行為差止等請求控訴事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 識別力 / 商品商標 / 包装 / 識別機能 / 指定商品 / 周知性 / 混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) / 不正目的(不正の目的) / 類似性(類否判断) / 権利濫用(権利の濫用) / 先使用(32条) / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 国内 / 専用権 / 差止 / 連合商標 / 類似商標 / 先使用権 / 外国 / 継続 / 商号 / |
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事件 |
昭和
61年
(ワ)
3663号
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 1989/09/13 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
一 被告は、ゴルフ用品の製造、販売営業の施設又は活動に、別紙第一目録一ないし八並びに一〇ないし一三記載の各標章を使用してはならない。 二 被告は、別紙第二目録一1(二)、2(二)、3(二)、二2ないし5、三1(二)ないし(四)、2(一)、(二)記載の各文字を抹消し、同文字及び「森田ゴルフ株式会社」のいずれかの文字の記載のあるカタログ、領収書、封筒、包装紙及び商品引換券を廃棄せよ。 三 被告は、その販売するゴルフクラブのヘツドに別紙第三目録1、2記載の各標章を、ゴルフ用品の包装の別紙第四目録1、2記載の各標章を、ゴルフクラブのカタログに別紙第五目録1ないし6記載の各標章をそれぞれ付し、これを付したゴルフクラブのヘツド、ゴルフ用品の包装及びゴルフクラブのカタログを譲渡し、引渡し又は譲渡若しくは引渡しのために展示してはならない。 四 被告は、別紙第三目録1、2の標章を付したゴルフクラブヘツドから右各標章を抹消し、右抹消ができないときはこれを廃棄し、同第四目録1、2記載の標章を付したゴルフ用品の包装、同第五目録1ないし6記載の標章を付したゴルフクラブのカタログを廃棄せよ。 五 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 六 訴訟費用はこれを一〇分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 七 この判決は原告勝訴部分に限り仮に執行することができる。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨1 被告は、ゴルフ用品の製造、販売営業の施設又は活動に、別紙第一目録記載の各標章を使用してはならない。 2 被告は、別紙第二目録記載の本店及び支店の店舗建物の壁面、看板及び庇テントの文字を抹消し、同文字及び「森田ゴルフ株式会社」の記載のあるカタログ、領収書、封筒、包装紙及び商品引換券を廃棄せよ。 3 被告は、その販売するゴルフクラブのヘツドに別紙第三目録記載の各標章を、 ゴルフ用品の包装に別紙第四目録記載の各標章、ゴルフクラブのカタログに別紙第五目録記載の各標章をそれぞれ付し、これを付したゴルフクラブのヘツド、ゴルフ用品の包装及びゴルフクラブのカタログを譲渡し、引渡し又は譲渡若しくは引渡しのために展示してはならない。 4 被告は、前項の各標章を付したゴルフクラブのヘツド、ゴルフ用品の包装及びゴルフクラブのカタログを廃棄せよ。 5 訴訟費用は被告の負担とする。 6 仮執行の宣言二 請求の趣旨に対する答弁1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
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当事者の主張
一 請求原因(不正競争防止法1条1項2号に基づく請求)1 原告の営業表示とその周知性(一) 原告は、昭和三七年四月に設立された株式会社であり、ゴルフ器具の製造とその卸販売を主たる業務とするものである。原告の右営業は、我が国の国産ゴルフクラブヘツド及びゴルフクラブ製造、販売の先駆者である【A】(以下「【A】」という。)が昭和初期に始め、第二次大戦により一時中断したが昭和二六年ころ姫路市において森田ゴルフ器具製作所として再開し、昭和三六年に森田ゴルフ株式会社(以下「姫路森田ゴルフ」ともいう。)となつて続けられてきた営業を承継したものである。そして、右森田ゴルフ器具製作所や姫路森田ゴルフの商号に由来する「森田ゴルフ」や「森田ゴルフ株式会社」の表示は右営業とともに原告に引き継がれ、右表示(以下前者を「原告表示(1)」、後者を「原告表示(2)」といい、これを併せて「原告表示」という。)は、原告の設立後は、原告の営業表示として周知になり、現在に至つている。 (二) 右の経緯を詳しく述べると次のとおりである。 (1) 原告は、昭和三七年四月二日、大阪府高槻市<以下略>(住居表示の変更により、昭和四三年六月一日からは同市<以下略>)において、資本金八〇〇万円、ゴルフ器具の製造、販売等を目的として設立された株式会社であり、代表取締役は【B】(以下「【B】」という。)である。 (2) 原告の沿革は、我が国でゴルフが一部の人々の間でようやく盛んになり始めた昭和の初めに、原告の前代表取締役【C】(以下「【C】」という。)の実父【A】が兵庫県下において、国産ゴルフクラブヘツドの製造、販売を開始したことにさかのぼる。当時日本国内にはゴルフ用品を販売している店は五店くらいしかなく、製造業者も、ゴルフクラブヘツドのメーカーは【A】だけで、この外にはシヤフトメーカーが一社あつただけであつた。このように、【A】は、我が国のゴルフクラブヘツド製造、販売業者の先駆者であつた。【A】は、義弟(妹婿)【D】と共同経営を行い、クラブヘツド等を製造し、卸販売していたものであるが、その製造するゴルフクラブヘツド及びゴルフクラブは国産品の九〇パーセントを占めていた(なお、現在我が国で姫路がゴルフクラブの産地となつているのは、【A】の下で働いていた職人が戦後次々と姫路で独立していつたことによる。)。 (3) その後、昭和一四年には戦時体制となり、奢侈品の製造禁止令が施行され、他の一切のゴルフクラブ製造工場は操業中止になつたが、【A】だけは製造を許可されて操業を続けていた。しかし、昭和一六年には奢侈品の販売禁止令が施行され、【A】も製造中止のやむなきに至つたが、アイアンヘツドの鍛造技術が評価されて陸軍省指定工場として軍刀等の製造に切り換えて操業していた。 (4) そして、【A】は、戦後、昭和二六年ころから姫路市において、森田ゴルフ器具製作所の商号でゴルフクラブヘッド等の製造、販売を単独経営にて再開した。その後、戦後の経済復興に伴いゴルフ人口も増加し、歴史と技術を有する森田ゴルフ器具製作所は順調に業績を伸ばして発展した。 (5) ところで、【A】には、長男【E】、次男【F】、三男【C】、四男【G】、五男【H】、長女【I】がいたが、【E】と【F】が医学部に進学し、医師への道を志したので、三男の【C】が同製作所の仕事を手伝うことになつた。そして、昭和三四年ころ、【A】が引退することになり、【C】は、父の個人営業を会社組織に変更して承継すべく、昭和三六年に同じ姫路市に本店を有する姫路森田ゴルフを設立してその代表取締役に就任し、次第にその営業規模を拡大した結果、 従業員数も八〇名以上となり、営業所も福岡市、広島市及び名古屋市に設置され、 販売地域は日本全国に広まつた。 (6) そして、姫路森田ゴルフは、工場拡張のために昭和三七年には工場を地の利のよい大阪府高槻市へ移転することとしたが、その際、同年四月二日に同じ商号の森田ゴルフ株式会社すなわち原告を設立した(初代代表取締役は【A】の長男の【E】が就任し、その後、【C】に交替し、昭和六一年三月一七日に同人が死亡したので、その妻【B】に交替している。)。原告の設立は、実質的には姫路森田ゴルフの本店が移転したものにすぎない。なお、姫路にあつた姫路森田ゴルフの工場は昭和四四年に操業廃止となつた。 (7) 以上によつて明らかなとおり、【A】が始めたゴルフ器具の製造、販売の営業は、その先駆者的地位と優れた技術のため、つとに取引業者及び需要者間に広く知られていた。そのため、【A】が、昭和二六年ころ、森田ゴルフ器具製作所の商号で右営業を再開すると、ゴルフクラブヘツド及びゴルフクラブの取引業者及び需要者の間では日ならずして「森田ゴルフ」の表示が同製作所の営業表示として広く認識されるようになり、姫路森田ゴルフが設立されるとともに「森田ゴルフ株式会社」の表示も周知となつた。そして、事実上、右営業を承継した原告が設立されてから後は、これらの表示は、原告の営業表示として周知になり、現在に至つている。 2 被告による営業表示の使用 被告は、別紙被告表示使用一覧表記載のとおり、別紙第一目録記載の表示(以下「被告表示」という。)を、同第二目録記載の各場所に記載したり(右各場所毎の記載表示は同目録記載のとおり)、カタログ、領収書、封筒、包装紙、商品引換券に記載するなどして、ゴルフ用品の製造、販売営業の施設又は活動に使用し、又は使用するおそれがある。 3 原告表示と被告表示の類似性 被告表示は、いずれも以下に述べるとおり原告表示(「森田ゴルフ」及び「森田ゴルフ株式会社」)と同一であるか又は類似する。 (一) 別紙第一目録一の表示について 右表示は、「森田ゴルフ株式会社」の文字を横書きしてなるものであり、原告表示(2)と称呼、観念において同一である。 (二) 別紙第一目録二(1)、(2)の表示について 右表示は、「森田ゴルフ」の文字を縦書き又は横書きしてなるものであり、原告表示(1)と称呼、観念において同一である。 (三) 別紙第一目録三、一〇の表示について 右表示は、「MORITA GOLF」の文字を横書きしてなるものであり、原告表示(1)又は同(2)の要部(以下類似性に関して述べるときは、この意味の場合でも単に「原告表示」と略す。)を欧文字で表記したにすぎず、称呼、観念において原告表示と同一であるから、原告表示に類似する。 (四) 別紙第一目録四の表示について 右表示は、「モリタゴルフ」の文字を横書きしてなるものであり、原告表示をかたかなで表記したにすぎず、称呼、観念において原告表示と同一であるから、原告表示に類似する。 (五) 別紙第一目録五(1)、(2)の表示について 右表示は、「森田ゴルフ」の文字を縦書き又は横書きし、その前部にMとGを結合したいわゆるMGマークを記載した結合標章であるが、外観上も「森田ゴルフ」の部分が要部といいうるし、「モリタゴルフ」の称呼、観念を生じるから、全体として原告表示に類似する。 (六) 別紙第一目録六、七、一二、一三の表示について 右表示は、「森田ゴルフ」又は「モリタゴルフ」の文字を大きく縦書き又は横書きし、その前部又は上部に小さな文字又は輪郭だけを着色した文字で「マツシー」と記載した結合標章であるが、「マツシー」の部分を構成する文字が「森田ゴルフ」又は「モリタゴルフ」の部分を構成する文字の四分の一程度の大きさしかないこと又は「マツシー」の部分を構成する文字が輪郭だけを着色しているため外観上薄く見えることから、「森田ゴルフ」又は「モリタゴルフ」の部分が看者の注意を最も引きやすい部分であり、外観上の要部である。また、「マツシー」の称呼を生じる「massie」の語はゴルフクラブのアイアンクラブの番手を示すものとして用いられている(アイアンクラブの三番がミツドマツシー、四番がマツシーアイアン、五番がマツシー、六番がスペードマツシー、七番がマツシーニブリツクと呼ばれている。)から、「マツシー」の語を「ゴルフ」の文字と併せ用いると営業主体や商品主体の識別性に乏しく、「森田ゴルフ」又は「モリタゴルフ」の部分が称呼及び観念上も要部となる。そして、この部分は、称呼、観念において原告表示と同一であるから、右表示は全体として原告表示に類似する。 (七) 別紙第一目録ハの表示について 右表示は、「森田ゴルフ」という大きな文字と、その前部に、欧文字「Masshy」(Mの頭文字が大きく、他の五文字は極く小さい。)と「MORITA GOLF」の小さな欧文字を上下二段に横書きしたものを結合した標章であるが、欧文字「Masshy」は「マツシー」の称呼を生じ、アイアンクラブの番手を表す語と同一称呼であるから、「ゴルフ」の文字と併せ用いると営業主体や商品主体の識別性に乏しく、また、読みにくい欧文字部分よりも、漢字及びかたかなからなる「森田ゴルフ」の部分が目をひくから、「森田ゴルフ」の部分が要部である。そして、この部分は、称呼、観念において原告表示と同一であるから、右表示は、全体として原告表示に類似する。 (八) 別紙第一目録九の表示について 右表示は、同じ大きさのかたかなで「マツシーモリタゴルフ」と横書きしたものであるが、「マツシー」はアイアンクラブの番手を表す語と同一称呼であるから、 「ゴルフ」の文字と併せ用いると営業主体や商品主体の識別性に乏しく、称呼及び観念上、「モリタゴルフ」の部分が要部である。そして、この部分は、称呼、観念において原告表示と同一であるから、右表示は、全体として原告表示に類似する。 (九) 別紙第一目録一一の表示について 右表示は、「森田ゴルフ」の文字の横下方に「千里店」という支店名を結合させた文字標章であるが、営業主体の表示は「森田ゴルフ」の部分であるから、その要部は「森田ゴルフ」の部分である。そして、右部分は、称呼、観念において原告表示と同一であるから右表示は、全体として原告表示と類似する。 4 誤認混同のおそれ及び営業上の利益を害されるおそれ(一) 被告は、昭和三八年七月一九日に商号を「大阪森田ゴルフ株式会社」、本店を大阪市<以下略>(現所在地は同市<以下略>)において、ゴルフ用品の製造、販売等を目的として設立された株式会社であり、現にゴルフクラブ等のゴルフ用品を製造、販売しているものである(なお、被告は、昭和六一年一〇月二日に右と同一地を本店所在地とする「マツシー森田ゴルフ株式会社」に吸収合併された。)。 (二) 被告の営業は、右のとおりゴルフクラブ等の製造、販売であつて、原告の営業と同一であり、被告が原告表示に類似した被告表示を使つて右営業を行えば、 取引業者及び需要者をして原告の営業と誤認混同させるおそれがある。 (三) 現に、昭和五九年に被告の千里店及び堺泉北店がオープンする前にも、原告の取引先から原告に宛るべき注文が誤つて被告に出されたり、外国のバイヤーが原告と誤つて被告に商談を持ち込むなどの誤認混同がしばしばあつた。そして、被告の千里店及び堺泉北店がオープンした直後から、原告の取引先及び需要者から誤認による苦情電話等が原告に殺到し、取引業者及び需要者に誤認混同を生じさせている。 (四) これにより原告がその営業上の利益を害されるおそれがあることはいうまでもない。 5 よつて、原告は、被告に対し、請求の趣旨第一項及び第二項記載のとおり、被告表示の使用の差止め並びに店舗看板等の右表示の抹消及び右表示の記載されたカタログ、領収書、封筒、包装紙及び商品引換券の廃棄を求める。 (商法20条1項に基づく請求)1 原告は、前記のとおり商号を「森田ゴルフ株式会社」、本店を大阪府高槻市<以下略>(現所在地は、住居表示変更により同市<以下略>)、目的をゴルフ器具の製造、販売等、資本金を八〇〇万円として、昭和三七年四月二日に設立された株式会社である。 2 被告は、前記のとおり商号を「大阪森田ゴルフ株式会社」、本店を大阪市<以下略>(現所在地は同市<以下略>)、目的をゴルフ用具の製造販売等として、昭和三八年七月一九日に設立された株式会社である。 3 そして、被告は、長らくその営業表示として商号である「大阪森田ゴルフ株式会社」を使用していたが、その営業が原告の営業と同一であり、原告の営業が取引業者及び需要者の間で信用を得てその商号及び略称(「森田ゴルフ」)が広く認識されているのを知つて、前記のとおり原告の商号と全く同一の「森田ゴルフ株式会社」という商号及び原告の商号と類似する「森田ゴルフ」、「モリタゴルフ」、 「MORITA GOLF」、「マツシー森田ゴルフ」、「マツシーモリタゴルフ」等の商号を被告の商号として店舗看板等に使用し、もつて、取引業者及び需要者をして原告の営業と誤認混同させている。被告は、商法20条1項にいわゆる不正の競争の目的をもつて原告の商号と同一又は類似する商号を使用しているものである。 4 よつて、原告は、商法20条1項に基づき、請求の趣旨第一項及び第二項記載のとおり、被告の右商号の使用差止め並びに店舗看板等の右商号の抹消及び右商号の記載されたカタログ、領収書、封筒、包装紙及び商品引換券の廃棄を求める。 (商法21条に基づく請求)1 被告は、前記のとおり不正の目的をもつて被告の営業が原告の営業であると誤認せしむべき商号を使用している。そのため、前記のとおり、原告に対し、顧客からの苦情が相次ぎ、原告は、将来にわたつて営業上の利益を害されるおそれがある。 2 よつて、原告は、商法21条に基づき、請求の趣旨第一項及び第二項記載のとおり、被告の右商号の使用差止め並びに店舗看板等の右商号の抹消及び右商号の記載されたカタログ、領収書、封筒、包装紙及び商品引換券の廃棄を求める。 (商標権に基づく請求)1 原告は、左記商標権(以下「本件商標権」といい、その登録商標を「本件商標」という。)を有している。 出願日 昭和五四年九月二一日公告日 昭和五七年八月七日登録日 昭和五八年五月二六日登録番号 第一五八七三一五号指定商品 第二四類 ゴルフクラブ、その他本類に属する商品商標の構成 別紙原告商標目録記載のとおり、「森田ゴルフ株式会社」の文字を左横書きしてなるもの。 2 被告は、その販売するゴルフクラブのヘッドに別紙第三目録記載の標章を、ゴルフ用品の包装に別紙第四目録記載の標章を、ゴルフクラブのカタログに別紙第五目録記載の標章をそれぞれ付し、又は付するおそれがある(以下、右の各標章を一括して「被告標章」という。)。 3(一) 被告の製造するゴルフクラブヘツドは本件商標権の指定商品に属する。 (二) 本件商標の要部は「森田」の部分にある。 被告標章は、いずれも「モリタ」の称呼を生じるから本件商標と称呼において同一であり、被告標章のうち「森田ゴルフ」の文字を使用するものは外観においても本件商標と類似する。したがつて、被告標章は本件商標と同一であるか又は類似する。 4 よつて、原告は、被告に対し、本件商標権に基づき、右各標章の使用の差止め並びに右各標章を付したゴルフクラブのヘッド、ゴルフ用品の包装及びゴルフクラブのカタログの廃棄を求める。 二 請求原因に対する認否(不正競争防止法1条1項2号に基づく請求)1 請求原因1(一)の事実のうち、原告がその主張のころに設立され、その主張のような営業を営んでいることは認めるが、原告表示の周知性に関する主張は争う。 同(二)(1)ないし(4)の事実は認める。 同(5)の事実のうち、【A】に原告主張の子供がいたことは認め、その余の事実は争う。 同(6)、(7)の事実及び主張は争う。 2 請求原因2で主張される営業表示の使用の各事実に対する認否は別紙被告表示使用一覧表認否欄記載のとおりである。 3 請求原因3の事実は争う。 4 請求原因4(一)の事実は認め、同(二)ないし(四)の事実及び主張は争う。 (商法20条1項に基づく請求) 請求原因1、2の事実は認め、同3の事実及び主張は争う。 (商法21条に基づく請求) 請求原因事実は争う。 (商標権に基づく請求)1 請求原因1の事実は認める。 2 同2の事実は被告が販売するゴルフクラブのヘツドに別紙第三目録1記載の標章を付している事実は否認、同2記載の標章を付している事実は認める。ゴルフ用品の包装に別紙第四目録1、2記載の標章を付している事実は認める。 ゴルフクラブのカタログに別紙第五目録1、3記載の標章を付していることは否認。同2、4記載の標章を付していることは認める。 3 同3(一)、(二)の事実及び主張は争う。 三 被告の主張1 原告表示の周知性について 一般需要者の間では原告がゴルフクラブの製造、卸業者であると知る人は少なく、原告の営業表示は、広く認識されているとはいえない。 それは、原告が取り扱うゴルフクラブの市場占有率は、輸入品を除く国産ゴルフクラブにおいて一パーセント程度と低いこと、原告はゴルフクラブ以外のゴルフ用品を取り扱つておらず、したがつて、ゴルフクラブ以外のゴルフ用品を含めたときの市場占有率はゴルフクラブだけのときのそれより一層低いこと、原告が取り扱うゴルフクラブのブランド名はクラウナーであり、ゴルフクラブにはクラウナーの刻印があるものの、原告を表示する名称は一切使われておらず、かつ、包装及びタツグにおいても原告を表示する名称は一切なく、商品をみてクラウナーと原告を結び付けることができないこと等から、当然のことである。 大阪においては、被告の方が著名であり、「森田ゴルフ」といえば、一般需要者は、国道一号線の梅田新道本店、新御堂筋の千里店、泉北ニユータウン内の堺泉北店と大型店舗を展開している被告を想起するというのが現状である。 2 誤認混同のおそれについて 原告の営業は、ゴルフクラブの、それもクラウナーゴルフ製造株式会社(以下「クラウナーゴルフ製造」という。)が製造したゴルフクラブのみの卸業であり、 その顧客はゴルフ用品の小売店である。卸業が小売店を兼ね、一般需要者に直接販売すると、卸先の小売店から反発を受けるので、直接、一般需要者に小売りすることは行われていない。 他方、被告は、ゴルフ用品全般を扱うゴルフ用品の小売業を営んでおり、顧客は一般需要者である。 このように、原告と被告では営業活動の対象が明白に異なるのであるから、営業の誤認混同のおそれはない。 四 抗弁1 先使用(一) 原告は、昭和三七年四月二日に設立された会社であり、事業を開始したのは原告が森田不動産株式会社(以下「森田不動産」という。)から高槻市の土地を賃借して工場を建設した昭和三八年九月二二日以降であるから、原告表示が周知性を獲得したとしてもそれは昭和三八年以降のことである。しかるところ、被告は、 昭和三一年四月、大阪市<以下略>において、【F】、【J】夫婦が創業したゴルフ用品小売業にまでその前身をさかのぼることができるものであり、【F】、 【J】夫婦は、創業時から善意で「森田ゴルフ製作所大阪支店」の名称を使用し、 昭和三三年七月からは「森田ゴルフ」の名称で営業を続けていたものであつて、右表示は営業とともに被告に承継されてきたのであるから、被告は原告表示の使用につき先使用権を有する。 (二) 右の点を詳述すると、次のとおりである。 (1) 【A】は、大正一四年に「ニツポンゴルフ研究所」を創設し、昭和三年ころから兵庫県神崎郡<以下略>で「ニツポンゴルフ」又は「森田ゴルフ器具製作所」の名称でゴルフクラブを製造し始めた。 (2) その後、【A】は、戦争によりゴルフクラブの製造を中断していたが、昭和二六年ころ、姫路市において「森田ゴルフ器具製作所」の名称でゴルフクラブの製造を再開した。 (3) 【F】は、昭和二八年三月に医大を卒業し、同年一一月に【J】と結婚し、姫路市で【A】と同居していたところ、昭和三〇年夏、大阪のゴルフ用品小売業者が森田ゴルフ器具製作所の職人を引き抜こうとしたことが事前に発覚し、未遂に終わるという事件が発生した。この事件を機に、【A】はゴルフ用品の小売店を出店すべきだと考えるようになり、【F】、【J】夫婦に大阪でゴルフ用品の小売店を開くように勧めた。これは、【J】の実父が海産物卸業を営んでいて、長女で男兄弟がいなかつた【J】が家業を継ぐべく育てられていたのを【A】が見込んだことと、【A】の長男【E】は三田市で医師をしており、三男【C】は結核療養中であつたため【E】にも【C】にもゴルフクラブ製造販売業をさせられなかつたためである。 (4) そこで、【F】、【J】夫婦は、昭和三〇年一二月に大阪市<以下略>に店舗を借り、昭和三一年四月、「森田ゴルフ製作所大阪支店」の名称でゴルフ用品の小売、ゴルフクラブの誂え及び修理業を開いた(以下これを便宜「大阪支店」という。)。右大阪支店では、森田ゴルフ器具製作所で製造したゴルフクラブだけでなく、舶来のゴルフクラブ、キヤデイバツグ、ボール等を小売し、ゴルフクラブの修理だけでなく、ゴルフクラブの誂えも行つた。そして、店舗を借りる敷金等開業に必要な資金は全て【F】、【J】夫婦が用意したし、営業は森田ゴルフ器具製作所とは独立採算で行つていた。 右のとおり、大阪支店は、【A】の勧めで森田ゴルフ器具製作所のゴルフクラブ製造部門から独立した小売店として発足したものである。 (5) その後、【F】、【J】夫婦は、昭和三三年七月、大阪支店を大阪市<以下略>に移転したが、この時から「製作所」を省いた「森田ゴルフ」の商号を使用し、店の看板等も「森田ゴルフ大阪支店」とした。また、昭和三五年七月には隣接地を買収して店舗を拡張したが、この時からは看板も単に「森田ゴルフ」とした。 (6) その後、昭和三六年一月九日には、同所において、右営業を法人化した「株式会社森田ゴルフ」(以下「神明町森田ゴルフ」という。)が設立され、同社は、昭和三六年六月一〇日、高槻市に約二〇〇〇坪の土地を取得した。 (7) そして、昭和三七年四月二日、高槻市で「森田ゴルフ株式会社」すなわち原告が設立され、次いで、昭和三七年九月一日、神明町森田ゴルフが取得した右土地の現物出資により高槻市に森田不動産が設立された。 (8) ところが、現物出資による不動産の移転にも譲渡所得税が課税されることが判明したので、税金対策上、神明町森田ゴルフを昭和三八年六月三〇日に解散した。そして、神明町森田ゴルフの営業を承継するものとして、昭和三八年七月一九日、「大阪森田ゴルフ株式会社」(以下「大阪森田ゴルフ」という。)すなわち被告が設立され、以後、被告は、神明町森田ゴルフと同様、「森田ゴルフ」の表示を使用して営業を行つている。なお、被告の商号に「大阪」の語が付されたのは、当時、解散したとはいえ、登記簿上、同一場所を本店所在地とする神明町森田ゴルフが存在し、「森田ゴルフ」と「株式会社」の先後を入れ替えたにすぎない「森田ゴルフ株式会社」の商号を使用することが許されなかつたためである。 (9) その後、大阪森田ゴルフすなわち被告は、昭和六一年一〇月二日、神明町森田ゴルフを商号変更したマツシー森田ゴルフ株式会社に吸収合併された。 (10) 以上によつて明らかなように、被告は、原告が設立される以前から「森田ゴルフ」の名称でゴルフ用品の販売を行つていた大阪支店の営業を承継し、その当時から使用されている「森田ゴルフ」の表示を承継使用しているものであるから、右表示について先使用権を有する。 2 商標権の行使 被告は次の商標権(以下、それぞれ「被告商標権(一)ないし(三)」といい、 その商標をそれぞれ「被告登録商標(一)ないし(三)」という。)を有しており、被告表示の使用はこれらの商標権の行使であるから、不正競争防止法6条により原告はその使用を差し止めることはできない。 (一) 出願日 昭和五四年三月二〇日(商願昭五四―二〇二七四) 公告日 昭和五七年九月一六日(商公昭五七―五四二〇〇) 登録日 昭和五九年八月二六日 登録番号 第一七〇六三六八号 指定商品 二四類 おもちや、人形、娯楽用具、運動具(ゴルフクラブを除く)、釣り具、楽器、演奏補助品、蓄音機(電気蓄音機を除く)、レコード、これらの部品及び附属品運動具、その他本類に属する商品 商標の構成 別紙被告商標権目録(一)記載のとおり(二) 出願日 昭和五七年一〇月一二日(商願昭五七―九〇〇五八) 連合商願 昭五四―二〇二七四 公告日 昭和五九年一〇月二六日(商公昭五九―七九九七〇) 登録日 昭和六〇年七月二九日 登録番号 第一七八九八一五号 指定商品 二四類 運動具、その他本類に属する商品 商標の構成 別紙被告商標権目録(二)記載のとおり(三) 出願日 昭和五八年七月二〇日(商願昭五八―六八八四二) 連合商標 一七〇六三六八 連合商願 昭五七―九〇〇五八 公告日 昭和六〇年六月一四日(商公昭六〇―三八一六九) 登録日 昭和六一年二月二八日 登録番号 第一八四〇七五一号 指定商品 二四類 運動具、その他本類に属する商品 商標の構成 別紙被告商標権目録(三)記載のとおり3 権利行使の不許以下に述べるような事情を考慮すると、原告の本訴請求は許されない。 (一) 【A】の承諾 【A】は、森田ゴルフ器具製作所を経営していたが、順次、子供たちに右営業を分業させていつた。すなわち、まず、初めに、昭和三一年四月、【F】、【J】夫婦がゴルフ用品の小売業として独立し、次いで、昭和三六年四月四日設立の姫路ゴルフの代表者に長女【I】の夫【K】がなり、昭和三六年一〇月二日設立の姫路森田ゴルフ(昭和四一年二月二八日に「日邦ゴルフ株式会社」と商号変更)の代表者には三男【C】がなつて、鍛造によるアイアンヘツド、クラブの製造を行い、昭和三七年四月二日設立の原告の代表者には長男【E】がなり、ロストワツクスによるアイアンヘツド製造を行うという次第であつた。 そして、【F】、【J】夫婦が、昭和三六年一月に被告の前身である神明町森田ゴルフを大阪市<以下略>に設立する際、【A】に相談したところ、【A】は「株式会社森田ゴルフ」の商号を使用することに賛成した。また、【A】は、【F】、 【J】夫婦が大阪支店時代から「森田ゴルフ」の表示を営業表示として使用していることを知つており、【F】、【J】夫婦が「森田ゴルフ」の営業表示を使用することを承諾していた。 (二) 原告の黙認 右のとおり、被告は、被告の前身である大阪支店時代から「森田ゴルフ」の表示を継続して使用していたが、原告は、昭和六一年の本訴提起及びこれに先立つ昭和六〇年の商号商標使用禁止仮処分事件(大阪地方裁判所昭和六〇年(ヨ)第三一六五号事件、以下「本件仮処分」という。)の申請に至るまで、被告に対し、右表示の使用につき異議を述べたことはなく、被告は三〇年近くにわたつて問題なく右表示を使用してきた。 (三) 被告の寄与 そして、ゴルフ用品の分野において「森田ゴルフ」の表示が著名になつているとすれば、それは既述のような被告の長年にわたる営業努力によるところが大きい。 (四) 【E】の承諾 【E】は、「マツシー森田ゴルフ」の表示を被告が使用することを承諾していた。すなわち、【E】は、本件仮処分事件において、当時病床にあつた原告の代表取締役【C】の意向を受けて審尋期日に出頭するなどしていたものであるが、同人は、「マツシー森田ゴルフ」の表示を使用することには異議がない旨、【F】に対し手紙を書き送つている。 (五) 被告の周知性 一般需要者の間では、「森田ゴルフ」の表示はむしろ被告の表示として周知である。 五 抗弁に対する認否1 抗弁1(先使用)について(一) 抗弁1は争う。 (二) 【F】、【J】夫婦は、原告の前身である森田ゴルフ器具製作所の支店又は営業所として「森田ゴルフ」の表示を使用していたにすぎないし、同夫婦が「森田ゴルフ」の表示の使用を開始した時点では既に右表示は森田ゴルフ器具製作所の営業表示として周知であつたから、先使用の主張は理由がない。 (三) この点を詳述すると次のとおりである。 (1) 既述のとおり、【A】は、昭和二六年には森田ゴルフ器具製作所としてゴルフクラブの製造を再開し、「森田ゴルフ」として、知られていたところ、昭和三〇年ころ、医師国家試験の受験に失敗し困つていた【F】が、【A】に対し、 【F】の妻【J】とともに森田ゴルフ器具製作所の仕事を手伝わせてほしい旨申し出てきた。 (2) 当時、【A】は、右製作所のあつた姫路では東京方面からの電話注文を即時通話で受けることができなかつたことから、これを受けることのできる大阪に営業所を置くことを計画していたところでもあつた。そこで、右申し出を受けた【A】は、【F】、【J】夫婦に大阪で仕事をしてもらうことにした。そして、 【C】が大阪市<以下略>の店舗を見つけてきて、【J】を名目上の責任者とし、 姫路から同製作所の従業員四名を右店舗の店員として派遣し、同所でのゴルフクラブの小売販売を行わせた。 (3) こうして、右店舗は、原告の前身である森田ゴルフ器具製作所の支店ないし営業所として発足し、「森田ゴルフ製作所大阪支店」又は同「大阪営業所」と呼ばれていた。右のとおり、大阪支店はあくまでも森田ゴルフ器具製作所の一部門として、同製作所の製品を販売することをその目的としたものであつたから、その当時、右店舗において「森田ゴルフ」の表示が使われていても何ら不思議はない。それは、あくまでも原告の前身である右製作所を示すものとして使われていたものである。 (4) しかるに、その後、大阪支店は、次第に右製作所の製品を扱わなくなり、 右製作所の製品を販売するとの本来の目的を逸脱して、修理部門を拡大し、独自にゴルフクラブを製造できるような態勢を整えだしたので、右製作所の営業を承継した原告と大阪支店の関係が悪化してきた。 (5) そこで、昭和三八年ころには、【A】も【C】も諦めて大阪支店の独立を許すこととした。こうして、昭和三八年七月一九日に【J】を代表取締役として大阪森田ゴルフ株式会社すなわち被告が設立されたのであるが、右商号は、原告との混同を避けるために大阪の文字を加えて「大阪森田ゴルフ株式会社」としたものであり、その製造に係るゴルフクラブにも「O.M.G.」の標章を付して原告のそれと区別していた。 (6) なお、この間、昭和三六年一月九日には、大阪支店と同じ大阪市<以下略>に神明町森田ゴルフが【J】を代表取締役として設立されているが、これは原告が高槻市に工場用地を取得しようとした際、その土地の地目が田であつたため農地法5条の転用許可を受ける必要があつたところ、姫路の業者では許可を得られにくかつたため、大阪に居住している【J】を名目上の代表取締役として原告の方で設立したものである。また、原告と被告の取引は、昭和五三年ころには全くなくなつている。 (7) 以上によれば、被告の先使用の抗弁の理由のないことは明らかであろう。 2 抗弁2(商標権の行使)について 被告が被告商標権(一)ないし(三)を有していることは認めるが、以下の理由により被告のこの抗弁は失当である。 (一) 被告表示の使用は営業表示としての使用であつて、商標権の行使とはいえない。 (二) 仮に、被告表示の使用の中に一見商標権の行使に当たるといえるものがあるとしても、ゴルフクラブは、被告登録商標(一)の指定商品から除かれているから、被告がゴルフクラブに被告登録商標(一)を使用することは被告の商標権の行使とはいえない。 (三) 登録商標との同一性について 商標権者は指定商品について登録商標を使用する権利を専有するが(商標法25条本文)、自己が積極的に使用する権利である商標専用権は登録商標と同一のものに限定され、類似商標については他人の使用を禁止しうるにとどまる。しかるところ、被告表示はいずれも被告登録商標(一)ないし(三)と同一ではなく、これらに類似するにすぎないものであるから、被告表示の使用は被告商標権(一)ないし(三)の行使とはいえない。 3 抗弁3(権利行使の不許)について 争う。 六 再抗弁(権利濫用―抗弁2に対し) 仮に、被告表示の使用につき商標権の行使とみるべきものがあるとしても、以下に述べる事情を考慮すると、被告商標権の行使は権利の濫用である。 1 被告は、取引業者及び需要者をして原告の周知表示又は本件商標と彼此混同させてあたかも原告の営業又は商品であるかの如き誤認混同を惹起させようとの不正競争目的をもつて被告商標権(一)ないし(三)を行使しているものである。 2 被告登録商標にはいずれも無効原因がある。 まず、被告登録商標(一)、(二)は、「マツシー」又は「Masshy」の文字からなるものであり、「マツシー」の称呼を生じるが、既述のとおりマツシーとはゴルフクラブのアイアンクラブの五番を示すものであり、右表示が右クラブに付されれば自他商品識別力を欠くし、その他のゴルフクラブに付されると商品の品質を誤認させるおそれがある。右各商標は、商標法3条1項1号、三号及び六号並びに同法4条1項16号に違反して登録されたものである。 また、被告登録商標(三)も、「マツシー」の文字と「森田ゴルフ」の文字を上下二段に横書きしてなるが、これをゴルフクラブに付すると、「マツシー」の部分はアイアンクラブ五番を示す語として自他商品識別力を欠如するため、「森田ゴルフ」の部分が要部となり、先願の原告の登録商標「森田ゴルフ株式会社」に類似するから、商標法4条1項11号に違反して登録されたものである。 七 再抗弁に対する認否 争う。 |
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証拠(省略)
理 由(不正競争防止法1条1項2号に基づく請求について)一 請求原因1(一)、(二)(原告の営業表示とその周知性)の事実のうち、同(二)(1)(原告の設立)、同(2)(昭和初期の【A】によるゴルフクラブヘツド及びゴルフクラブの製造開始)、同(3)(右営業の第二次大戦による中断)、同(4)(戦後の右営業の再開と発展)の各事実及び同(5)の事実のうち、【A】に原告主張の子供がいたことについては、当事者間に争いがない。 そして、右争いのない事実に、成立に争いのない甲第一号証、第三ないし第五号証、第九号証の一ないし三、第一九号証の一、二、第二〇号証、第二四ないし第二六号証、第四五ないし第四八号証、乙第二ないし第六号証、第八、九号証、第一三号証の一、二、第三八、三九号証、証人【E】の証言により成立を認める甲第二九ないし第三一号証、第三四号証、第三七号証、弁論の全趣旨により成立を認める甲第二号証、第一四号証、第一五ないし第一八号証の各一、二、第三二、三三号証、 第三八号証、官署作成部分についてはその方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定され原告作成部分については証人【E】の証言により真正に成立したものと認められる甲第三五号証の一ないし一六、証人【J】、同【L】、同【E】の各証言、被告代表者本人尋問の結果、森田ゴルフ器具製作所の慰安旅行の写真であることに争いがなく、証人【L】の証言により昭和三三年に撮影されたものと認められる検甲第一九号証、証人【J】の証言により昭和三六、七年ころに神明町の大阪支店の店舗を撮影した写真であると認められる検乙第一、二号証に弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。 1 【A】は、大正一四年ころ、兵庫県下において、ゴルフクラブヘツドやゴルフクラブの製造に関する研究所を創設し、昭和三年ころからは「森田ゴルフ器具製作所」等の名称を用いてゴルフクラブヘツド等の製造を開始した。ゴルフクラブヘツドのメーカーとしては日本で最古参の部類に属するといえる。そして、昭和九年ないし一〇年ころには、国内需要の約九〇パーセントを賄うまでになつた。その後、 第二次大戦中は右製造を一時中断せざるをえなかつたが、【A】は、戦後昭和二六年ころから姫路市において「森田ゴルフ器具製作所」の商号でゴルフクラブヘツドやゴルフクラブの製造を再開した。そして、「森田ゴルフ器具製作所」又はその略称である「森田ゴルフ」の表示は、【A】の営むゴルフクラブ製造販売業の営業表示として遅くとも昭和三〇年ころには国内の取引業者の間で広く認識されるに至つた。 2 そのころ、【A】は、ゴルフ用品の小売店を大阪市に出店することを計画したが、当時、【A】の子供のうち、長男【E】は三田市で医師をしており、次男【F】、【J】夫婦と三男【C】らは同居していたものの、三男【C】はまだ独身で結核の病歴があり、独り大阪へ出て小売店の営業を担当できる状況ではなかつた。 一方、次男【F】は、医師を目ざしていたが、まだ医師国家試験受験中で就業しておらず、その妻【J】が商家の出で商売の素養があつたことから、【F】、 【J】夫婦が大阪へ出て小売店を開くことになつた。 3 【F】、【J】夫婦は、昭和三〇年一二月大阪へ出て同市<以下略>に店舗を借り受け、昭和三一年四月ころから「森田ゴルフ製作所大阪支店」の名称でゴルフ用品の小売、ゴルフクラブの誂え及び修理業を開いた。右大阪支店の営業は、森田ゴルフ器具製作所製造のゴルフクラブを同製作所から購入して小売することと、大阪、奈良などの業者から仕入れたその他のゴルフ用品を小売することであつたが、 【F】が昭和三一年中に国家試験に合格し病院に勤務するようになつたこともあつて、右営業は【J】が責任者となつて行われた。そして、右大阪支店の経営は、姫路の森田ゴルフ器具製作所とは別に独立採算制で行われていたが、同店はもともと森田ゴルフ器具製作所のゴルフクラブを販売することを主たる目的として【A】の意向を受けて始められたものであり、その開業資金を銀行から借入れるに当たつて【A】が保証人になつていたほか、森田ゴルフ器具製作所への支払を他の仕入れ先への支払の後にしてもらつたり、合同で慰安旅行に出かけたりするなど、同製作所とは密接な関係にあり、いわば森田ゴルフ器具製作所の小売部門として発足したものであつた。 4 その後、大阪支店は、昭和三三年六月三〇日に大阪市<以下略>に土地を購入して同所に移り、この時から「製作所」を省いた「森田ゴルフ」の名称を使用するようになり、店の看板等にも「森田ゴルフ大阪支店」と表示した。これは、「製作所」の文字のない方がゴルフクラブ以外のゴルフ用品一般を揃えている印象を与えることと、当時の顧客も「製作所」を省いて「森田ゴルフ」と称呼するようになつていたこととによる。 さらに、大阪支店は、昭和三五年七月には隣接する神明町<以下略>の土地を買収して店舗を拡張し、この時から看板に表示してあつた「大阪支店」の記載をやめて単に「森田ゴルフ」とし、「大阪支店」と書いてあつた場所には「工場直売」と記載した。もちろん、右当時もゴルフクラブは森田ゴルフ器具製作所から仕入れられていたが、ゴルフクラブ以外のゴルフ用品については仕入れ業者が五〇社程に上るまでになり、大阪支店は、次第に森田ゴルフ器具製作所とは独立した性格を強めていつた。 そして、昭和三六年一月九日には同所を本店所在地とする「株式会社森田ゴルフ」(神明町森田ゴルフ)が設立され、【J】がその代表取締役に就任した。同社の発起人は【F】、【J】夫婦のほか、【J】の実父【M】などであり、資本金等設立費用も同人らが拠出したもので、【A】や【C】はその役員にもなつておらず、神明町森田ゴルフは、役員構成の面からも資本関係の面からも【A】らからは独立したといえるものであつた。しかし、当時はまだ「森田ゴルフ器具製作所」の製品の販売は続けられていて、取引上は協力関係にあり、神明町森田ゴルフの設立に当つて【A】は「株式会社森田ゴルフ」の商号を使用することについて何ら異議を述べなかつた。 5 一方、【A】は、昭和三〇年以降も姫路市において「森田ゴルフ器具製作所」の経営を続け、姫路市<以下略>の本店と第一工場、同市<以下略>の第二工場、 広島直売所、福岡直売所を設けるなどして事業を発展させ、同人と同居していた三男【C】も、体調の回復に伴い、その経営に参画していた。そして、昭和三六年四月には同市<以下略>を本店所在地とする姫路ゴルフ株式会社(姫路ゴルフ)が、 次いで同年一〇月には同市<以下略>を本店所在地とする森田ゴルフ株式会社(姫路森田ゴルフ)が、相次いで設立された。前者は、森田ゴルフ器具製作所の姫路第二工場を独立させたもので、代表取締役には【A】の長女【I】の夫である【K】が就任した。また、後者は、森田ゴルフ器具製作所の姫路第二工場以外の部分の営業を承継したもので、代表取締役には【C】が就任した。【C】はかつて結核を患つていたが、昭和三四年には【B】(原告の現代表取締役)と結婚し、右事業の経営にも責任者として参画できる程度に健康を回復しており、【A】の後継者となる形で姫路森田ゴルフの代表取締役に就任したものである。 6 【A】はこうして姫路に二つの会社を設立する一方、これまでの鍛造法によるアイアンヘツドの製造に代えて鋳造法による製造を開始することも計画しており、 神明町森田ゴルフ名義で高槻市<以下略>(後の南庄所町)に工場用地を購入していた。そして、昭和三七年四月二日には右土地の所在地を本店所在地とする「森田ゴルフ株式会社」すなわち原告が設立され、その代表取締役には【A】の長男【E】が医師を辞めて就任した。 その後、右土地は【A】を代表取締役として昭和三七年九月一日に設立された森田不動産に現物出資され、原告が同地上の建物を森田不動産から賃借する形で原告の営業が始められた。 7 ところが、右土地が、登記簿上、神明町森田ゴルフ名義で取得されていたことから、右土地の取得資金に関連して神明町森田ゴルフが課税されるのではないかということが問題になり、【F】、【J】夫婦は、その支払を免れるため、神明町森田ゴルフを解散することにし、昭和三八年七月一七日、神明町森田ゴルフについて解散登記をするとともに、同月一九日には従来の営業を実質的に承継するものとして同じ場所に「大阪森田ゴルフ株式会社」すなわち吸収合併前の被告を設立した。 8 そして、原告設立後、【A】によつて始められたゴルフクラブヘツド等製造事業の中心は、従来の鍛造法によつていた姫路ゴルフ及び姫路森田ゴルフからも、鋳造法によつている原告の方に移り、従来、【A】の下で働いていた従業員が原告へ移籍したりしたほか、【A】自身も高槻市へ移り、同所に居住していた。 9 そして、原告が昭和四一年ころに出したゴルフ雑誌の広告では、高槻市<以下略>が本社・高槻工場、姫路市<以下略>が姫路第一工場、同市<以下略>が姫路第二工場、大阪市<以下略>が大阪直売所とされ、その他に京都直売所、広島直売所、福岡直売所、名古屋直売所が表記されていたが、姫路市<以下略>の姫路ゴルフについては昭和四三年五月に解散登記がなされ、姫路市<以下略>の姫路森田ゴルフも昭和四一年二月に日邦ゴルフ株式会社と商号変更後、昭和四四年ころには事実上閉鎖状態になつた(ただし、解散登記は昭和四九年一二月)。 そして、【C】も高槻市に移住して【E】とともに原告の経営に携わつていたが(昭和四六年ころ代表取締役に就任)、昭和四五年に【A】が死亡し、同年に原告が出したゴルフ雑誌の広告には、高槻市<以下略>を原告の所在地とし、姫路市<以下略>を姫路直売所とするほかは京都直売所と名古屋直売所だけを表記する状況になつていた。なお、その間、昭和四二年一月には高槻市<以下略>を所在地とし【A】の長女【I】を代表者とする森田ゴルフ販売株式会社が設立されている。 10 その後、新たにゴルフクラブの製造、販売の分野に進出してくる業者も多く、逐次各種新製品が出まわつたりすることもあつて、原告製品の業界における市場占有率は、【A】の時代のような大きなものでは有りえなくなつていつたが、原告は、【A】以来の伝統と技術をうたつて営業を続けている。 しかし、その間に原告と被告の間の取引は次第に少なくなり、被告自身もゴルフクラブの製造にまで事業を拡大するなどしていくうち、原告と被告の間には昭和五九年中の取引を最後に商取引上の関係すらなくなつた。 11 しかるところ、被告は、昭和五九年に豊中の千里店と堺泉北店を出店したが、そのパンフレツトに【A】が大正一四年に研究所を創設して以来の由来を原告と区別することなく記載したり、被告の営業表示として当時の被告の正式商号である大阪森田ゴルフ株式会社の表示を使用せず、単に「森田ゴルフ」と表記したり、 「森田ゴルフ株式会社」の表示を使用したりした。 こうした状況をみた原告は、昭和六〇年七月一八日、被告を相手に「森田ゴルフ」等の表示の使用差止等を求める本件仮処分を申請し、昭和六一年四月二五日には本件訴訟を提起した。 12 なお、本件仮処分申請中の昭和六一年三月二二日ころ、既に原告の代表取締役の地位を退いてはいたがなお取締役の地位にあつた【E】は、【F】に対し、被告がマツシー森田ゴルフの表示を使用するのであれば、原告と区別することができるので異議はない旨の手紙を書き送つている。 以上の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。 以上認定の事実に照らすと、次のように認めることができるというのが相当である。すなわち、【A】が戦前に始めたゴルフクラブヘツドやゴルフクラブの製造、 販売の営業は、その先駆者的地位と優れた技術のため、早くから取引業者及び需要者に知られ、戦後、【A】が昭和二六年ころに「森田ゴルフ器具製作所」の名称で右営業を再開すると、昭和三〇年ころには、ゴルフ器具取引業者の間では、「森田ゴルフ」の表示は、【A】の右営業を意味するものとして広く知られるようになつた。そして、その後、昭和三一年四月に【F】、【J】夫婦が【A】の意向を受けて大阪で「森田ゴルフ製作所大阪支店」の営業を始め、昭和三六年一〇月に姫路市に「森田ゴルフ株式会社」が、次いで、昭和三七年四月に高槻市に「森田ゴルフ株式会社」すなわち原告が設立され、それぞれが営業を営んでいた昭和三〇年代には、「森田ゴルフ」ないし「森田ゴルフ株式会社」の表示は、【A】の事業を引き継いでいる者又はこれに関連する事業を営む者の営業表示として、取引業者間に広く知られるようになつていた。その後、姫路森田ゴルフは、昭和四四年ころに事実上閉鎖状態になつたが、原告の右営業と営業表示の使用は継続され、右表示の周知性は、なお維持、承継されているということができる。一方、【F】、【J】夫婦の営業を実質的に承継した神明町森田ゴルフないし被告は、次第に【A】の事業との関連性を薄めていき、昭和五九年を最後に原告との取引も全く無くなり、その営業は、【A】の事業との関連性を想起させる右表示をそのまま用いるべき実体を失つた。現在、右営業表示の主体といえるのは、原告であるということができる。 二 次に請求原因2(被告表示の使用と使用のおそれ)について検討する。 1 別紙第一目録一記載の表示<12791-001>について 成立に争いのない甲第九号証の一、二、第一〇、第一一号証と弁論の全趣旨によれば、被告は、右表示をそのカタログや昭和六〇年五月ころの領収書、封筒等に使用していたものと認めるのが相当である(なお、右証拠中の右表示の上部又は左側にあるMGマークは、その表記態様からみて、右表示とは別体とみることができるというのが相当である。)。 2 別紙第一目録二記載の表示<12791-002>について 成立に争いのない甲第九号証の一ないし三、第一二号証、第四一号証、第五五、 五六号証、第六三号証の一ないし一五、大阪市の電話帳であることについて争いのない甲第六一号証、被告の本店の写真であることについて争いのない甲第八号証の一、いずれも被写体について争いのない検甲第七号証、第九、一〇号証、第一六号証、検乙第七ないし第九号証と弁論の全趣旨によれば、被告は、右表示をカタログ、包装紙、商品引換券、電話帳、本店店舗壁面、千里店北側歩道立看板等に使用していたものと認められる(右例示の使用例については被告も過去の使用例として認めている。右標章が使用されているカタログ、包装紙は本件仮処分により執行官保管中。)。 そして、弁論の全趣旨により原告主張の昭和六一年五月に撮影されたものと認められる検甲第一ないし第一六号証、昭和六三年七月に撮影されたものと認められる検甲第二〇、二一号証によれば、原告が主張する第二目録記載の各場所において、 現在、右表示が使用されていると認められるのは(なお、右検甲号各証が、本件証拠上、最新の資料であるので、以下、右昭和六一年五月時点又はそれ以降における右場所での使用を「現在使用」という。)、千里店入口横看板、同店付近歩道看板、堺泉北店駐車場看板である。 3 別紙第一目録三記載の表示<12791-003>について 右表示の現在使用を認めるに足る証拠はない。ただし、前掲甲第九号証の二、三によれば、右表示はカタログに使用されているものと認められる。 4 別紙第一目録四記載の表示<12791-004>について 右表示の現在使用を認めるに足る証拠はない。ただし、右表示を昭和六一年四月ころまで原告主張の場所で使用していたことは被告は認めるところである。 5 別紙第一目録五記載の表示<12791-005>について 右表示の堺泉北店駐車場看板での現在使用については当事者間に争いがない。右表示がかつて本店店舗壁面、袖看板、千里店建物看板に使用されていたことは被告も認めるところであるが、右各場所での現在使用を認めるに足る証拠はない。 6 別紙第一目録六記載の表示<12791-006>について 右表示の現在使用については争いがない。 7 別紙第一目録七記載の表示<12791-007>について 右表示の現在使用については争いがない。 8 別紙第一目録八記載の表示<12791-008>について 右表示の現在使用及び商品引換券での使用については争いがない。 9 別紙第一目録九記載の表示<12791-009>について 右表示の現在使用について争いがない。 10 別紙第一目録一〇記載の表示<12791-010>について 右表示がカタログに使用されていることについては当事者間に争いがないが、右表示の現在使用を認めるに足る証拠はない。 11 別紙第一目録一一記載の表示<12791-011>について 前掲検甲第九、一〇号証によれば、右表示の現在使用を認めることができる。 12 別紙第一目録一二記載の表示<12791-012>について右表示の現在使用については争いがない。 13 別紙第一目録一三記載の表示<12791-013>について 右表示の現在使用については争いがない。 そして、弁論の全趣旨に照らすと、以上の各表示は、現在使用中のものはもちろん、その他のものについても使用のおそれを認めるのが相当である。 三 次に、請求原因3(原告表示と被告表示の類否)について検討する。 1 別紙第一目録一ないし四及び一〇の表示について これらの表示は、いずれも原告主張の理由により原告表示に類似するというのが相当である。 2 別紙第一目録五(1)、(2)の表示について 右表示は、「森田ゴルフ」の文字を縦書き又は横書きし、その前部にMとGを組み合わせた標章(MGマーク)を記載した結合標章であるが、「森田ゴルフ」の部分がMGマークに比して大きく記載されていること及び右マークは、一見してMとGの組み合わせであることが看取できるようなものではなく、これによつて直ちに特別の称呼、観念を生じるとも認め難いことなどからすると、右表示の要部は、 「森田ゴルフ」の部分であるというべきである。そして、これは原告表示と称呼、 観念において同一であるから、全体として原告表示に類似する。 3 別紙第一目録六、七、一二、一三の表示について これらの表示は、「森田ゴルフ」又は「モリタゴルフ」の文字を大きく縦書き又は横書きし、その前部又は上部に小さな文字又は輪郭だけを着色した文字で「マツシー」と記載した結合標章である。 しかるところ、成立につき争いのない甲第四三号証の八(外来語辞典)、同号証の九(ゴルフなんでも百科)及び弁論の全趣旨により成立を認める甲第三九号証(捜査参考図)によれば、「マツシー」(massie)とはアイアンクラブの五番手を表す語であると認められるが、被告代表者【N】本人尋問の結果や弁論の全趣旨によれば、アイアンクラブは現在では番号を付して呼ばれるのが通常であり、 「マツシー」の語はアイアンクラブの番手を表す語としては、日常頻繁に用いられているものではなく、いわば死語に近いものであると認められる。そして、右各表示の「マツシー」の文字が「森田ゴルフ」若しくは「モリタゴルフ」の文字と明確に区別する形で小さく書かれ、あるいは「マツシー」の文字の輪郭だけが着色されていて外観上薄く目立たないものになつていることからすると、右各表示のうち看者の注意を強く引く部分は「森田ゴルフ」若しくは「モリタゴルフ」の部分であり、そこが右各表示の要部であるというべきである。しかるところ、右部分は、称呼、観念において原告表示と同一であるから、右各表示は、結局、原告表示に類似する。 4 別紙第一目録八の表示について 右表示は、「森田ゴルフ」という大きな文字と、その前部に、欧文字「Masshy」(Mの頭文字が大きく、他の五文字は小さい。)と「MORITA GOLF」の小さな欧文字を上下二段に横書きしたものを結合した標章であるが、「森田ゴルフ」の部分が大きく、また、漢字及びかたかなからなるため読みやすいのに対し、欧文字部分は日本人にとつては右「森田ゴルフ」の部分より読みにくく、いきおい「森田ゴルフ」の部分が看者の目を引くことになり、この部分が右表示の要部である。そして、この部分は、称呼、観念において原告表示と同一であるから、右表示は、全体として原告表示に類似する。 5 別紙第一目録九の表示について 右表示は、同じ大きさのカタカナで「マツシーモリタゴルフ」と横書きしたものである。原告は、「マツシー」はアイアンクラブの番手を表す語と同一称呼であるから、「ゴルフ」の文字と併せ用いると営業主体や商品主体の識別性に乏しく、称呼及び観念上、「モリタゴルフ」の部分が要部であると主張する。しかし、「マツシー」の語はアイアンクラブの番手を表す語としては死語に近いことは前認定のとおりであり、又、右表示が「マツシー」の部分と「モリタゴルフ」の部分を区別することなく、 同じ大きさの同一形態の文字で「マツシーモリタゴルフ」と一体的に表記したものであることからすると、右表示は、看者により全体として一体的に観察され、原告表示とは区別して認識されるものであるということができる。右表示は、全体的な構成、形態からみて、単なる「モリタゴルフ」とは異なることを強調し、それを看者に認識させるものになつているということができ全体として原告表示に類似しないというのが相当である。 6 別紙第一目録一一の表示について 右表示は、「森田ゴルフ」の文字の下に「千里店」という支店名を結合させた文字標章であるが、営業主体の表示は「森田ゴルフ」の部分であり、これは、称呼、 観念において原告表示と同一であるから、右表示は、全体として原告表示と類似する。 四 進んで、請求原因4(誤認混同及び営業上の利益を害されるおそれ)についてみるに、原告と被告は前示のとおり、いずれもゴルフクラブの製造、販売に関する営業を営む者であり、その意味で両者の営業が類似していることは明らかである。 もつとも被告は、原告はゴルフクラブの卸販売をしているだけであり、被告はゴルフクラブ等の小売販売をしているものであるから、業種が異なり、誤認混同は生じないと主張するところ、既に判示した事実や前掲証人【E】の証言及び弁論の全趣旨によれば、右業種の違いは肯認できる。 しかしながら、一般的にみても、右のように類似した営業において互に類似した営業表示を使用すれば、その間に誤認混同を生じるおそれがあることは、容易に推認できる。のみならず、前掲証人【E】の証言によれば、現に、被告で商品を購入した一般需要者が、商品についての苦情を原告に申し述べてきたことや、被告に注文するはずの者が誤つて原告に注文のフアツクスを送つてきたりしたことがあることが認められる。 原告と被告の営業に誤認混同が生じ原告の営業上の利益を害されるおそれがあることは肯認できるというのが相当である。 五 先使用の抗弁について 被告は、原告表示、殊に「森田ゴルフ」の表示について先使用の主張をする。 しかしながら、右表示が、遅くとも昭和三〇年ころには【A】の営業表示として周知になつており、原告がこれを承継したものと認むべきことは前示のとおりである。このような場合において、被告の右先使用の主張を肯認するには、被告ないしその前身と目される者が、右表示が【A】の営業表示として周知になる以前から、 右表示又はこれと類似の表示を善意で自己の表示として使用していたことが必要であるが、かかる事実を認めるに足る証拠はない。被告の右主張は理由がない。 六 商標権行使の抗弁について 被告が被告登録商標(一)ないし(三)を有していることは当事者間に争いがない。 しかし、被告表示は、いずれも被告登録商標(一)ないし(三)と同一とはいえず、せいぜいこれに類似するといえるものにすぎない。 しかるところ、商標権者が登録商標に類似するにすぎない標章を使用する行為は、不正競争防止法6条にいう「商標法ニ依リ権利ノ行使ト認メラルル行為」には該当しないと解される(最高裁判所昭和五六年一〇月一三日判決民集三五巻七号一一二九頁参照)。 よつて、被告の右抗弁は採用できない。 七 権利行使不許の抗弁について 被告は、(一)【A】の承諾、(二)原告の黙認、(三)被告の寄与、(四)【E】の承諾、(五)被告表示の周知性等を理由に権利行使の不許を主張する。 そこで、以下、前記一に判示した事実を参酌して検討するに、【A】の承諾及び原告の黙認の事実それ自体は肯認するとしても、それは、いずれも被告ないしその前身たる営業が【A】ないし原告の営業と互に関連性を有し利害を共通にしうるような関係にあることを前提としたものであり、前示のように両者間に商取引上の関係すらなくなり、かえつて、利害相反の関係すら生じるようになつたときのことまでを想定したものではないというべきである。 また、被告の寄与の点も、被告ないしその前身たる営業の活動が「森田ゴルフ」の周知性を高めるについて何程かの貢献をしたことは事実であるとしても、その後の事情により原告が右表示の主体であると認められる以上、右事実は、原告の権利行使を当然に不当視させる程の理由になるものとは考えられない。 さらに、【E】が「マツシー森田ゴルフ」の表示使用を承諾したとの点も前示原、被告両示の類否に関する当裁判所の判断と何ら矛盾するものではなく、これによつて、原告が被告表示の使用を承諾したことになるものでもない。 そして、「森田ゴルフ」の表示は一般需要者の間では、むしろ被告の営業表示として周知であるとの点については、仮に、そうだとしても、取引業者の間ではそれ以前から原告の営業表示として周知となつていたと認められる前示事実関係の下においては、これをもつて権利行使不許の理由とすることはできないというべきである。 以上のようにみてくると、被告の主張する事由は、いずれも権利行使不許の理由とするには十分なものではないといわざるをえず、かかる事由を総合考慮しても、 被告の右主張を理由あるものとすることはできない。 八 以上のとおりであるから、原告表示に類似する被告表示の使用の差止めを求める請求の趣旨第一項の請求は、原告表示に類似し、かつ使用の事実又は使用のおそれの認められる別紙第一目録一ないし八及び一〇ないし一三記載の各表示については理由があるが、同九の表示については失当であり、被告表示の抹消等を求める請求の趣旨第二項については原告表示に類似し、かつ、被告が現に使用している事実の認められる前記各表示(別紙第二目録でいえば一1(二)、2(二)、3(二)、二2ないし5、三1(二)ないし(四)、2(一)、(二)の各表示)については理由があるが、その余の各表示については失当である。 (商法20条1項又は同法21条に基づく請求について) 原告は商法20条又は同法21条に基づいても請求の趣旨第一項及び第二項の請求をする。 そこで、不正競争防止法に基づく請求の認められなかつた表示について、右各請求の当否をみるに、原告表示と類似せず又は被告による現在の使用の事実の認められない前記各表示については、同法20条1項又は21条による請求も理由がないというべきである(なお、不正競争防止法に基づく請求の認められたものについては、二重にこれを認める必要性に乏しく、原告の請求もそのような趣旨のものではないと解される。)。 (商標法に基づく請求について)一 原告の商標権 原告が本件商標権を有することは当事者間に争いがない。 二 被告標章の使用と使用のおそれ1 成立に争いのない甲第九号証の一によれば、被告はその販売するゴルフクラブのヘツドに別紙第三目録1記載の標章を付したことがあると認められ、同2記載の標章を付していることについては争いがない。 2 被告がゴルフ用品の包装に別紙第四目録1、2記載の標章を付していることについては争いがなく、成立に争いのない甲第四〇号証によれば、被告はゴルフ用品の包装に同3記載の標章を付していることが認められる。 3 前掲甲第九号証の一ないし三によれば、被告は、ゴルフクラブのカタログに別紙第五目録1、3、5ないし7記載の標章を付したことがあると認められ、被告がゴルフクラブのカタログに同2、4記載の標章を付していることについては争いがない。 4 そして、以上認定の事実と弁論の全趣旨に照らすと、以上の各標章については、現在使用中であることに争いのないものはもちろん、その他のものについても、これらの標章を付した各対象物件が現存することは考えられ、又、これらの標章が付されるおそれはあるものと認めるのが相当である。 三 本件商標と被告標章の類否1 本件商標の要部 本件商標は、「森田ゴルフ株式会社」の文字を横書きしてなるが、「株式会社」の部分は会社の種類を表す語にすぎないから、特に看者の注意を引くものとはいえない。したがつて、本件商標の要部となるのは「森田ゴルフ」の部分であるが、 「ゴルフ」の部分は、元来がスポーツの種類を表す語であるから、本件商標がゴルフ用品やその包装紙、カタログに付された場合に看者の注意を強く引き、他の商品との識別に最も力を発揮する部分は「森田」の部分であるということができる。本件商標の要部は、「森田」又は「森田ゴルフ」の部分であるというのが相当である。そして、右要部からは、「モリタ」ないし「モリタゴルフ」の称呼、観念を生じる。 2 別紙第四目録3及び同第五目録7以外の標章について しかるところ、別紙第四目録3及び同第五目録7以外の標章は、いずれも「モリタ」ないし「モリタゴルフ」の称呼、観念を生じるものであるといえる。そして、 それは、本件商標の要部から生じる称呼、観念と同一であるから、これらの標章はいずれも本件商標に類似する。 3 別紙第四目録3及び同第五目録7の標章について 別紙第四目録3及び同第五目録7の標章は、欧文字「Masshy」(Mの頭文字が大きく、他の五文字は小さい。)と「MORITA GOLF」の小さな欧文字を上下二段に横書きしたものである。「Masshy」の部分からは「マツシー」の称呼が生じ、「MORITA GOLF」の部分からは「モリタゴルフ」の称呼、観念を生じる。 しかし、右「MORITA GOLF」の部分は、上段の「Masshy」の部分と比較するとはるかに小さなものである。しかも、「Masshy」の部分は太く筆記体風のいわばデザイン化された文字で看者の注意を強く引くような形態で表記されている。右標章は、その文字の配列等全体的な構成、形態からみると、単なる「モリタゴルフ」とは異なることを強調しているものであり、看者においても容易にこれを感得しうるものになつているということができる。右標章の要部は、 「Masshy」の部分であり、そこに商品識別機能を有するものと認めるのが相当である。そうすると、右標章は、本件商標とは、その要部を異にするものであり、これに類似しないというべきである。 四 したがつて、被告商標の使用の差止め請求の趣旨第三項の請求は、本件商標に類似し、かつ、被告の使用の事実又は使用のおそれの認められる別紙第三目録1、 2、同第四目録1、2、同第五目録1ないし6記載の各標章については理由があるがその余の標章(別紙第四目録3、同第五目録7記載の標章)については失当である。また、被告標章を付したゴルフクラブのヘツド等の廃棄を求める請求の趣旨第四項の請求については、本件商標に類似し、かつ、被告が現に使用していることについて争いのないもの及びこれを付した対象物件の現存が考えられる前記各標章については理由があるが、その余の標章(前同)については失当である。ただし、ゴルフクラブヘツドについては、物品の性質上、右各標章の抹消が可能なときは抹消にとどめ、それができないときに廃棄するのが相当である。 (結論) 以上のとおりであるから、原告の本訴請求は、被告表示の使用の差止めを求める請求の趣旨第一項については別紙第一目録一ないし八並びに一〇ないし一三記載の各表示についてこれを認容し、被告表示の抹消等を求める請求の趣旨第二項については別紙第二目録一1(二)、2(二)、3(二)、二2ないし5、三1(二)ないし(四)、2(一)、(二)記載の各表示についてこれを認容し、被告標章の使用の差止めを求める請求の趣旨第三項については、別紙第三目録1、2、同第四目録1、2、同第五目録1ないし6記載の各標章についてこれを認容し、被告標章を付したゴルフクラブヘツド等の廃棄を求める請求の趣旨第四項については別紙第三目録1、2、同第四目録1、2、同第五目録1ないし6記載の各標章について前示抹消又は廃棄の限度でこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法89条、92条1項本文を、仮執行宣言につき同法196条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。 |
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追加 | |
別紙被告表示使用一覧表(省略)第一目録<12791-014><12791-015>第二目録一本店(大阪市<以下略>)1店舗建物の正面壁面に貼着された左記文字<12791-016>2店舗建物の正面入口上部壁面に記載された左記文字<12791-017>3店舗建物の壁面に付設された袖看板に記載された左記文字<12791-018>4店舗建物の屋上看板に記載された左記文字<12791-019>5店舗建物の庇テントに記載された左記文字<12791-020>二千里支店(豊中市<以下略>)1店舗建物の付設された看板の左記文字<12791-021>2店舗建物の壁面に記載された左記文字<12791-022>3店舗建物の入口横看板に記載された左記文字<12791-023>4店舗建物付近の歩道沿いの電柱看板に記載された左記文字<12791-024>5店舗建物付近の歩道沿いに設置された立看板に記載された左記文字<12791-025>三堺泉北支店(堺市<以下略>)1店舗建物に付設された看板に記載された左記文字<12791-026>2店舗建物の駐車場看板に記載された左記文字<12791-027>第三目録第四目録<12791-028>第五目録<12791-029><12791-030><12791-031><12791-032><12791-033> |
裁判官 | 上野茂 |
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裁判官 | 小松一雄 |
裁判官 | 青木亮 |