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関連審決 審判1970-7900
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審判番号(事件番号) データベース 権利
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平成13行ケ47審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 指定商品 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  存続期間 /  更新登録 /  登録異議申立 /  類似商標 / 
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事件 昭和 52年 (行ケ) 131号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1977/11/29
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が昭和五二年六月七日同庁昭和四五年審判第七九〇〇号事件についてした審決を取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、被告指定代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。
請求原因
一 特許庁における手続の経緯 原告は、昭和四四年六月一三日、特許庁に対し、別紙その一のように「H●NSEL」の文字を横書きした商標について、第三〇類「菓子、パン」を指定商品として登録を出願したが、同四五年六月一〇日拒絶査定を受けた。そこで原告は、同年八月一〇日審判の請求をした(同年審判第七九〇〇号事件)。これに対し特許庁は、昭和五〇年三月一五日出願公告をしたが、訴外森永製菓株式会社よりの商標登録異議申立に対し、同五二年六月六日登録異議決定をし、同年同月七日「本件審判請求は成り立たない。」旨の審決をし、その謄本は、同年同月三〇日原告に送達された。
二 審決理由の要点 本願商標は「H●NSEL」の文字を横書きして成り、第三〇類「菓子、パン」を指定商品とするものである。ところで登録第二六二二五六号商標(以下「引用商標」という。)は別紙その二のように、「ANGEL」、「エンゼル」の各文字を上下二段に横書して成り旧第四三類「菓子及麺麭ノ類」を指定商品として昭和九年四月二六日に登録出願、同一〇年二月一四日に登録され、その後同三〇年三月二三日(第一回)、同五〇年八月一日(第二回)に商標権存続期間更新登録がされているものである。よつて両者を比較検討してみる。本願商標は、前記のとおりであつて、その第二文字はドイツ語特有のウムラウト(変音記号)がついた「●」であるから、これをドイツ語読みした「ヘンゼル」の称呼を出ずる。他方引用商標は構成文字からして「エンゼル」の称呼を生ずる。したがつて両者は同数の音をもつて構成され、しかも第二音以下をすべて同じくし、異なるところは語頭音が「ヘ」と「エ」である点だけである。しかも「ヘ」(he)の音は、それが帯同する母音「エ」(e)が強く響くから、第二音以下の「ンゼル」の音構成を同じくする両者においては、この語頭音の差が全対の称呼に及ぼす影響は少なく、それぞれ一連に称呼するときは全体の語感、語調が極めて近似するものであつて彼此聴き誤る恐れがある。してみると、本願商標は、引用商標と称呼において類似するものといえるし、その指定商品も同一または類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものといわねばならない。
三 審決取消事由 本願商標は引用商標と外観観念はもとより称呼上も明かに区別されるのに、審決はその対比を誤り、称呼上類似するものと即断し、商標法第4条第1項第11号に該当するとしたのは、判断を誤つており、違法であつて取消されねばならない。
(一) 二つの商標が外観称呼観念のいずれか一つの点で類似しているとき、
類似商標とされるのは、あくまでも原則であつて、称呼だけが似ていても、その商標から出ずる観念が著しく相違するときは、両商標の類否に大きな影響を与えると解すべきである。本願商標の「H●NSEL」は、世界中の老若男女はもとより我が国でも情操教育的な文学作品として幼児期より広く親しまれているドイツ人グリム兄弟の著作にかかる童話集「ヘンゼルとグレーテル」の物語の主人公の一人「ヘンゼル」を指す固有名詞であるのに対し、引用商標はその態様からして天使とか天使のような人、愛らしい人を指す英語「ANGEL」「エンゼル」として一般に普及した普通名詞であつて、両者はその観念において全く隔絶している。
(二) 我が国の社会環境や平均的な教育程度並びに商品菓子、パンの需要者、取引者を中心とした社会生活上において、ドイツ語の普及は十分とはいえず、ウムラウトを無視して「H●NSEL」をハンセルというように英語読みをしたり、ローマ字風の読み方をすることは否定できないから、引用商標「エンゼル」とは「ハ」と「エ」との語頭音が、さらに第三文字の「セ」と「ゼ」とが各相違して発音されることになり、両者に称呼類似の懸念は全く生じない。
仮に本件商標が正しく「ヘンゼル」と称呼される場合があるとしても、本願商標から生ずる「ヘンゼル」と引用商標から生じる「エンゼル」とはいずれも四音より構成され、第二音以下の三音を共通にしていることは審決のいうとおりであるが、前記のとおり、それぞれ意味のない単なる創造語とは違い、一般に知られた既成語として独自の観念を有しているし、ドイツ語と英語とよつてくるところが明かに区別され、またいずれも語頭音にアクセントがかかる言葉であるから、語頭音の「ヘ」と「エ」とは明確に区別され、それぞれの全体的語音、語感の相違により、日常取引においても混同を生じない相違があつて、称呼上まぎれるものではない。
したがつて、本願商標は引用商標と出所混同を生じる恐れはなく、類似の商品ということはできない。
被告の答弁
請求原因のうち一、二項は認めるが、三項は争う。審決に判断の誤りはなく、違法のかどはない。
本願商標を構成する文字がグリム童話集の中の「ヘンゼルとグレーテル」における主人公の一人「ヘンゼル」の人名に通じることは認める。しかしながら、「ヘンゼルとグレーテル」といつた場合のように、「グレーテル」と対になつてはじめてグリム童話集中の一主人公を想起することこそあれ、単独で原告の主張するような観念を生じて、外来語ではあるが日本語同様に親しまれて使用されている「エンゼル」と明確に区別できるほどのことはない。したがつて本願商標から生ずる「ヘンゼル」と引用商標から生ずる「エンゼル」の各称呼は審決認定のとおり極めて近似し、出所混同の恐れが大きい。しかもその指定商品も同一または類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものといわねばならない。
証拠(省略)
理 由一 請求原因一、二項の事実は争いがない。そこで取消事由の有無について検討する。
(一) 原告の主張(一)について 本願商標が別紙その一のとおりであり、引用商標が別紙その二のとおりであることは当事者間に争いのないところである。
ところで成立に争いのない甲第一一号証から第一四号証までの各一、二、同第一五号証の一から四まで、同第一七・一八号証の各一・二ならびに弁論の全趣旨を総合すると、本願商標の構成文字に附してあるウムラウトをドイツ語の変母音を示す記号として理解し、本願商標の「H●NSEL」を「ヘンゼル」と正しく称呼しうるほどの者であれば、「ヘンゼル」が単なる創造語でなくドイツ語圏での人名であることはたやすく感得できるであろうが、「H●NSEL」が我が国において原告の主張するように直ちにグリム童話集中の物語「ヘンゼルとグレーテル」の主人公名であると一般の取引者・需要者に感得されるとまではいえないこと、引用商標より生ずる称呼「エンゼル」が我が国において外来語であるが日本語同様に親しまれて使用されていることは被告も認めるところであつて、「エンゼル」は単なる創造語でなく、天使もしくはそれを連想させるような愛称を示す普通名詞として一般の取引者・需要者に理解されていることがそれぞれ認められる。そうすると本願商標である「H●NSEL」は単独で原告の主張するような観念を生じて、引用商標と明確に区別できるものではないといわなければならない。この点に関する原告の主張は採用しがたい。
(二) 原告主張(二)について 前掲証拠ならびに弁論の全趣旨によれば、商品菓子、パンの一般の取引者・需要者を中心とした社会生活において、本願商標の「H●NSEL」を正しく称呼しうるほどの者はむしろ少数であつて、ウムラウトを無視してハンセルと称呼されるのが自然の読み方であると推測することができる。そして正しく称呼する場合があるとしても、前記認定のように「ヘンゼル」と「エンゼル」とは単なる無意味な創造語でなく人名ああるいは普通名詞として理解されること、いずれも外来語であることが明かな語感をそなえていること、しかも本願商標が「ヘンゼル」の称呼を生じるのはウムラウトによつてドイツ語の変母音であることが意識されているからであること、などの諸点にかんがみると、ことに「ヘンゼル」において語頭音にアクセントがかかるものと認められ、したがつて、その語頭の「ヘ」が「エンゼル」の語頭音である母音「エ(e)」をその音節結合にふくむとしても、それに結合した咽頭の無声摩擦音である子音「h」によつて相当程度「エ」とは異なつた音感で発声され、また聴取されるものといえる。してみると、称呼上、「ヘンゼル」と「エンゼル」とは全体の語感、語調においてかなりの程度異なつたものとして称呼され、
聴取されるといわねばならない。この点に関する原告の主張は正当である。
(三) そうすると、本願商標が引用商標と称呼上極めて近似するものとし、ひいては商標法第4条第1項第11号に該当するものとした審決は判断を誤つており、
違法であつて取消を免れない。
二 よつて、原告の本訴請求は理由があるから認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 杉本良吉
裁判官 舟本信光
裁判官 石井彦寿
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