• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 審判1985-15244
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成12行ケ10審決取消請求事件 判例 商標
平成13行ケ47審決取消請求事件 判例 商標
平成20行ケ10089審決取消請求事件 判例 商標
平成14行ケ88審決取消請求事件 判例 商標
平成11行ケ309審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 指定商品 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  類似範囲 /  存続期間 /  更新登録 /  外国 /  非類似 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙1PDFを見る pdf
事件 平成 1年 (行ケ) 245号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1990/04/18
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が、同庁昭和六〇年審判第一五二四四号事件について、平成元年九月一四日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた判決
一 原告 主文同旨二 被告1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
請求の原因
一 特許庁における手続の経緯 原告は、昭和五八年九月六日、別紙本願商標記載のとおり、片仮名横書きで「ハニーベル」と表した構成の商標(以下「本願商標」という。)について、指定商品を第一七類「被服、布製身回品、寝具類」として、商標登録出願をした(昭和五八年商標登録願第八五五五八号)が、昭和六〇年六月二一日に拒絶査定を受けたので、同年七月二二日、これに対し審判の請求をした。
特許庁は、同請求を同年審判第一五二四四号事件として審理した上、平成元年九月一四日、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年一一月九日、原告に送達された。
二 本件審決の理由の要点1 本願商標の構成、指定商品、本願商標登録出願の日は、第一項のとおりである。
2 これに対し、拒絶査定において拒絶の理由に引用した登録第七六五三七一号商標(以下「引用商標」という。)は、別紙引用商標のとおり「フアニーベル」の片仮名文字を横書きしてなり、第一七類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、昭和四一年六月二七日に登録出願、同四二年一二月二五日登録、その後、昭和五三年八月二日、同六二年一二月一四日の二回に亘り、商標権存続期間更新登録がなされたものである。
3 よって、本願商標と、引用商標との類否について判断するに、両者は、その構成文字に相応して「ハニーベル」、「フアニーベル」のそれぞれの称呼を生ずること明らかである。
そこで、本願商標より生ずる「ハニーベル」の称呼と、引用商標より生ずる「フアニーベル」の称呼を比較するに、両称呼は、語頭において「ハ」と「フア」の音に差異を有するものであるが、前者の「ハ」は「ha」と発音されるものであり、
後者の「フア」は「フ」と「ア」を同時に一音として発音し「fa」と発音されるものであるから、両者は母音(a)を共通にし、僅かに子音において「h」と「f」の差を有するにすぎない近似音であるところから、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語調、語感が近似し、称呼上互いに相紛れるおそれがあるものといわなければならない。
4 してみれば、本願商標と引用商標とは、称呼上類似の商標であり、かつ、その指定商品も同一にするものであるから、結局、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。
三 本件審決を取り消すべき事由 本件審決は、引用商標から生ずる称呼の認定を誤り(認定判断の誤り第1点)、
本願商標から生ずる称呼と引用商標から生ずる称呼の類否の判断を誤った(認定判断の誤り第2点)結果、本願商標と引用商標は称呼上類似の商標であると判断を誤った違法があるから、取り消されなければならない。
1 認定判断の誤り第1点 本件審決は、引用商標の「「フア」は、「フ」と「ア」を同時に一音として発音し「fa」と発音されるものである」と認定する。
右本件審決は、「引用商標からは「フアニーベル」の称呼のみではなく、「ファニーベル」の称呼も生ずる。」との趣旨と解されるが、引用商標からは、「ファニーベル」の称呼は生じないから、この点において本件審決の認定判断は誤りである。
即ち、第一音、第二音ともに大文字で同格的に表されている「フア」は、その構成どおり「fu」と「a」の二音からなる音として発音されるものであり、これを「fa」と発音すると認定した点において誤りである。「fa」の発音は「フ」に続く第二音が小文字の「ァ」によって表示された場合における発音である。
文字表記において、前の文字に続く文字が、前の文字と同格的に同大の文字で表されているか、あるいは小さく表されているかは、その文字を読む上において極めて重要であり、両者を混同すべきではない。また、商標の称呼は、商標の構成にしたがって自然的に生じるものであり、構成を離れて、あるいは構成を修正して称呼を導き出すべきではない。
商標法第27条第1項は、「登録商標の範囲は、願書に添付した書面に表示した商標に基づいて定めなければならない。」と規定し、また、同法第5条第1項柱書きにおいては、「商標登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書に商標登録を受けようとする商標を表示した書面および必要な説明書を添附して特許庁長官に提出しなければならない。」と規定する。
同法第4条第1項第11号にいうところの「他人の登録商標又はこれに類似する商標」とは、登録出願の願書に添附された書面に表された商標又はこれと称呼外観観念のいずれかにおいて類似する商標である。引用商標は、別紙引用商標に記載の通り、「フ」、「ア」、「ニー」、「ベ」、「ル」のそれぞれの文字を、同書・同大・一連に表記した構成に係るものである。これに類似する商標とは、この「フアニーベル」と称呼外観観念のいずれかにおいて類似する商標である。
引用商標の最初の二文字は「フア」であって、「ファ」ではない。漢字表記の商標においては称呼の多様性ということがあり得るが、表音表記の片仮名商標においては、称呼の多様性はあり得ない。「フア」と表記すれば、「fu a」の称呼しか生じず、「fa」の称呼は生じない。
もし、「fa」の称呼も生ずると認めるとすれば、誤用、誤読に基づく商標の類似範囲までも考慮することになって、登録商標の範囲がきわめて不明確になり、いたずらに登録商標の範囲を広げることとなり、前記商標法第27条第1項、同法第5条第1項柱書きの趣旨に反する。
2 認定判断の誤り第2点 本件審決は、本願商標及び引用商標の「それぞれを一連に称呼するときは、全体の語調、語感が近似し、称呼上互いに相紛れるおそれがあるものといわなければならない。」と認定判断しているが、両者は、称呼上において非類似の商標というべきであり、右認定判断は誤りである。
(一) 本願商標からは「ハニーベル」の称呼が生じ、語頭音に「ハ」の音を有する四音構成の称呼を有している。
一方、引用商標の称呼は、その構成のとおり「フアニーベル」であって、語頭音に「フ」の音を有する五音構成の称呼を有するものである。
そして、本願商標の語頭音「ハ」は、無声摩擦音「h」と母音「a」の結合した音節で、明確に一音節で発音され、開放的な音感を有するのに対し、引用商標の語頭音「フ」は、無声摩擦音「f」と母音「u」との結合した音節で、ややこもり気味の音感を有している。引用商標はこの「フ」音に直音の「ア」音を続けた構成であり、それぞれ一音として「フ・ア」のように二音に明確に区別して発音されるものであり、一音節で明快な響きをもって発音される「ハ」音とは明らかに聴別可能である。
この「ハ」と「フア」は、いずれも商標の称呼における識別上重要な位置を占める第一音ないし第二音における差異であり、一連に称呼した場合にも、明瞭にその差異を聴別可能であるといわざるを得ない。したがって、両商標を一連に称呼した場合にも、本願商標では「ハニーベル」とよどみなく、一気一連に称呼されるのに対し、引用商標では「フ・ア・ニー・ベル」のごとく前半部が一音ごとに分断されたような語韻、語調が生じるものであり、両者は聞き誤られる恐れはなく、互いに称呼上において非類似の商標である。
(二) また、仮に引用商標から「ファニーベル」の称呼が生ずるとしても、本願商標と引用商標は称呼非類似である。
「honey」、「funny」の単語は、いずれも初歩的な英語であり、かつ、我国において親しまれた用語であるので、本願商標の「ハニーベル」における「ハニー」は英語の「honey」の、「ファニーベル」の「ファニー」は英語の「funny」の、各表音表記であることは、いずれも、容易に認識可能である。
即ち、「ハニー」の称呼に接すれば、「honey」を容易に連想し、「ファニー」の称呼に接すれば、容易に「funny」を連想する。
なお、後記第三、請求の原因に対する認否及び被告の主張の二中、英語の「funny」の語は、「ファニー」と称呼され「おかしな、奇妙な、へんてこな」等の語義をもって、例えば、「ファニーフェイス」、「ファニーガール」等の用例にみられるように、一般にもよく知られているところであることは認める。
また、「ハニー」の語頭音「ハ」は極めて開放的な音感を有しているのに対し、
「ファニー」の「ファ」は、あいまいな音感であり、両者は聴者に与える印象を異にする。したがって、「ハニー」と「ファニー」の称呼に接した場合、この語頭音における音感の相違もあいまって、両者は「honey」の「ハニー」、「funny」の「ファニー」として明瞭に聞き分け可能である。
請求の原因に対する認否及び被告の主張
一 請求の原因一及び同二は認め、同三中、後記認める部分以外の部分は争う。本件審決の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由はない。
二 本件審決が、引用商標の「「フア」は、「フ」と「ア」を同時に一音として発音し、「fa」と発音されるものである」と認定したこと及び本件審決は、「引用商標からは「フアニーベル」の称呼のみではなく、「ファニーベル」の称呼も生ずる。」との趣旨であることは認める。
本件審決において、引用商標の語頭の「フア」は「フ」と「ア」を同時に一音として発音し、「fa」と発音されるものであると認定したのは、「ファン」、「フィルム」、「フェルト」等は、「フアン」、「フイルム」、「フエルト」と書く慣用もあること(乙第一号証の一、二)に鑑み、引用商標に接する取引者、需要者は「フア」とのみ認識するとは限らず、「ファ」を表記したものとみる場合も決して少なくないと判断したものである。
外来語の表記方法は必ずしも統一されているものではなく、文字表記において、
前の文字に続く文字が、前の文字と同じ大きさで表されているか、小さく表されているかにより画然と区別されるものとは限らないのが実情であり、片仮名文字で表された語を、文字どおりに発音(称呼)することによって、特定の語義を有する成語を認識することができず、ただちに、特定の語を想起できる場合には、その特定の語の通常の発音をもって称呼することは、日常生活の中でもしばしば経験するところである。
これを本件事案についてみるに、引用商標は「フアニーベル」の文字を書してなるものであるが、構成全体をもって、特定の語義をもって親しまれた成語を表したものとはみられないし、前半の「フアニー」の文字部分は、文字どおり「フ」「ア」「ニー」と称呼しても、特定の語義を持った成語を認識させるものとはいえないのに対し、後半の「ベル」の文字部分は「鐘」を意味する英語「bell」を表したものと容易に理解される。
しかして、英語の「funny」の語は、「ファニー」と称呼され「おかしな、
奇妙な、へんてこな」等の語義をもって、例えば、「ファニーフェイス」、「ファニーガール」等の用例にみられるように、一般にもよく知られているところである。なお、請求の原因三2(二)中、「honey」、「funny」の単語は、
いずれも初歩的な英語であり、かつ、我国において親しまれた用語であるので、本願商標の「ハニーベル」における「ハニー」は英語の「honey」の、「ファニーベル」の「ファニー」は英語の「funny」の、各表音表記であることは、いずれも、容易に認識可能であるとの主張は認める。
このような事情が存することよりすれば、引用商標に接する取引者、需要者は、
該商標構成中の「フアニー」の文字部分は、英語の「funny」に由来した表記と容易に理解し、「ファニー」と称呼すると判断したものであり、本件審決に誤りはない。
証拠関係(省略)
理 由一 請求の原因1及び二は当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の認定判断の誤り第1点について検討する。
1 成立について当事者間に争いのない甲第三号証によれば、引用商標が、別紙引用商標記載のとおり、「フアニーベル」の片仮名を横書きしてなる構成であることが認められる。
引用商標から、その片仮名をそのままに読んだ「フアニーベル」の称呼が生ずることは自明である。
また、本件審決が、引用商標の「「フア」は、「フ」と「ア」を同時に一音として発音し「fa」と発音されるものである」と認定したこと及び本件審決は、「引用商標からは「フアニーベル」の称呼のみではなく、「ファニーベル」の称呼も生ずる。」との趣旨であることは当事者間に争いがない。
2 成立について当事者間に争いのない乙第一号証の一、二によれば、外来語の「ファン」「フィルム」「フェルト」等は「フアン」「フイルム」「フエルト」等と書く慣用もあることが認められる。
また、英語を始めとする外国語の知識の普及につれ、外国語を起源とする外来語であることが一般に知られている語については、例えば「フアン」「フイルム」「フエルト」と表記されていても、より原語の発音に近い「ファン」「フィルム」「フェルト」と発音されるように、「フア」の表記が「ファ」とも発音される場合があることは当裁判所に顕著である。
更に、引用商標を構成する「フアニーベル」の語のうち、「ベル」は、英語の「bell」に起源を有する外来語として周知であるが、「フアニー」については、特定の意味を一般に認識できないので、「フアニーベル」の語は全体としては意味不明である。
これに対し、英語の「funny」の語は、「ファニー」と称呼され「おかしな、奇妙な、へんてこな」等の語義をもって、例えば、「ファニーフェイス」、
「ファニーガール」等の用例にみられるように、一般にもよく知られ、親しまれていることは当事者間に争いがない。
そうすると、引用商標を構成する「フアニーベル」の文字に接した国民の中には、これを「funny」「bell」の英語に由来するものと解し、「フアニーベル」の文字を「ファニーベル」と称呼する者も少なくないものと認められる。
したがって、引用商標からは「ファニーベル」の称呼は生じない旨の原告の主張は認められない。また、引用商標から「ファニーベル」の称呼が生ずると認定することが、商標法第27条第1項又は同法第5条第1項柱書きの趣旨に反するものでもない。
三 次に、認定判断の誤り第2点について検討する。
1 本願商標から生ずる「ハニーベル」の称呼と、引用商標から生ずる「ファニーベル」の称呼とを対比すると、両者は共に四音からなり、第二音以下の「ニーベル」を共通にし、語頭の音の「ハ」と「ファ」の母音「a」も共通であり、語頭の音の子音のみを異にすることは明らかである。
2 しかしながら、両者は、わずか四音からなる称呼のなかで、両者の識別に重要な働きをする第一音を異にし、「ハ」の子音「h」は声門を調音点とする弱い無声摩擦音であるのに対し、「ファ」の子音「φ」は両唇を調音点とする無声両唇摩擦音であることは音声学の常識として当裁判所に顕著であり、母音を同じくするとはいえ、「ハ」は極めて開放的な音感を有するのに対し、「ファ」は子音の両唇における呼気の摩擦音によりこもった音感を有するものと認められる。
また、前記乙第一号証の一、二によれば、第一八期国語審議会の外来語表記委員会が、昭和二九年の同審議会の部分報告においては原音の「ファ」「フィ」「フェ」「フォ」はなるべく「ハ」「ヒ」「ヘ」「ホ」と書くものとされていたのを、
日本人が日頃話したり聞いたりする音に即した仮名を使用するとの基本的立場から、仮名「ファ」「フィ」「フェ」「フォ」の表記を外来音ファ、フィ、フェ、フォに対応するものとして使用することを内容の一部として含む、一般の社会生活で外来語を書き表す際のよりどころの試案をまとめた事実が認められるが、この事実からもうかがわれる、英語を始めとする外国語や外来語の知識の国民一般への普及にともない、例えば、子音「f」が母音を伴った原語の発音に近い日本語の発音である「ファ」「フィ」「フェ」「フォ」と「ハ」「ヒ」「ヘ」「ホ」の発音を注意して識別することが一般化していることは当裁判所に顕著である。
更に、「honey」、「funny」の単語は、いずれも初歩的な英語であり、かつ、我国において親しまれた用語であるので、本願商標の「ハニーベル」における「ハニー」は英語の「honey」の、「ファニーベル」の「ファニー」は英語の「funny」の、各表音表記であることは、いずれも、容易に認識可能であることは当事者間に争いがない。
以上の事実を総合すれば、本願商標の称呼「ハニーベル」と引用商標から生ずる称呼の一つである「ファニーベル」とは前記の共通点があるにもかかわらず、それぞれを一連に称呼しても互いに相紛れるおそれはないものと認めることができる。
3 したがって、本願商標の称呼「ハニーベル」と引用商標から生ずる称呼の一つである「ファニーベル」とは、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語調、語感が近似し、称呼上互いに相紛れるおそれがある旨の本件審決は認定判断を誤ったものであり、この判断に基づく、本願商標と引用商標とは称呼上類似の商標である旨の本件審決の認定判断も誤りである。
四 よって、その主張の認定判断の誤り第2点につき認定判断を誤った違法があることを理由に、本件審決の取消を求める原告の本件請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条を各適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 元木伸
裁判官 西田美昭
裁判官 木下順太郎
  • この表をプリントする