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関連審決 不服2004-11529
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18行ケ10280審決取消請求事件 判例 商標
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平成17行ケ10589審決取消請求事件 判例 商標
平成19行ケ10291審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 包装 /  指定商品 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項11号 /  類似性(類否判断) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  警告 /  類似商標 /  非類似 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10840号 審決取消請求事件
原告 ユニ・チャーム株式会社
訴訟代理人弁理士 網野友康
同 初瀬俊哉
同網野誠
被告 特許庁長官中嶋 誠
指定代理人 堀内真一
同 柴田昭夫
同 小林和男
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/05/10
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2004-11529号事件について,平成17年11月2日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,原告が商標登録出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をしたが,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,その取消しを求めた事案である。
当事者の主張
1 請求の原因(1) 特許庁における手続の経緯ア 原告は,平成15年6月9日,下記の構成から成る商標(以下「本願商標」という )について,指定商品を下記のとおりとして,商標登録出願 。
をした(以下「本願」という 。。)記(商標) マジカルウエスト(指定商品)第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤,封ろう,印刷用インテル,活字,青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,マーキング用孔開型板,電気式鉛筆削り,装飾塗工用ブラシ,紙製乳幼児用使い捨ておしめ(パンツ式のものを含む ,紙製乳幼児用使い捨てトレーニングパンツ,紙製幼児用おしめ, 。)紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,観賞魚用水槽及びその附属品,アルコールを含浸させてなるウェットティッシュペーパー,ウェットティッシュペーパー,衛生手ふき,キッチンペーパー,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,化粧落とし用紙ナプキン,荷札,印刷したくじ(おもちゃを除く ,紙製テー。)ブルクロス,紙類,文房具類,印刷物,書画,写真,写真立て」イ 特許庁は平成16年5月6日に本願について拒絶査定をしたため,原告は,これを不服として審判請求をした。そこで特許庁は,これを不服2004-11529号事件として審理した上,平成17年11月2日 「本,件審判の請求は,成り立たない 」との審決(以下「本件審決」とい 。
う )をし,その審決謄本は平成17年11月14日原告に送達された。 。
(2) 審決の内容審決の内容は,別添審決写しのとおりである。
その理由の要点は,本願商標は,下記の商標(登録第4639518号。
平成14年5月7日出願・平成15年1月24日登録。甲2。以下「引用商標」という )と称呼上及び外観上類似の商標であり,かつ,指定商品も類 。
似の商品を含むものであるから,商標法4条1項11号に該当する,としたものである。
記(商標) マジカルクエスト(商標権者) 任天堂株式会社(指定商品)第9類「理化学機械器具,歩数計,その他の測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く ,。)救命用具,電気通信機械器具,レコード,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,メトロノーム,電子計算機,パーソナルコンピュータ用のゲームプログラムを記憶させた電子回路・光ディスク・磁気ディスク・光磁気ディスク・磁気テープ・磁気カード・ROMカートリッジ及びその他の記憶媒体,パーソナルコンピュータ用ゲームプログラム及びその他の電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,オゾン発生器,電解槽,ロケット,業務用テレビゲーム機,業務用テレビゲーム機用プログラム,業務用テレビゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路・光ディスク・磁気ディスク・光磁気ディスク・磁気テープ・磁気カード・ROMカートリッジ及びその他の記憶媒体,その他の業務用テレビゲーム機の部品及び附属品,家庭用テレビゲームおもちゃ,家庭用テレビゲームおもちゃ用プログラム,家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路・光ディスク・磁気ディスク・光磁気ディスク・磁気テープ・磁気カード・ROMカートリッジ及びその他の記憶媒体,家庭用テレビゲームおもちゃ用のコントローラ・ジョイスティック・メモリーカード並びにその他の家庭用テレビゲームおもちゃの部品及び附属品,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用プログラム,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路・光ディスク・ROMカートリッジ及びその他の記憶媒体,スロットマシン,運動技能訓練用シミュレーター,乗物運転技能訓練用シミュレーター,回転変流機,調相機,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,火災報知機,ガス漏れ警報器,事故防護用手袋,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,消防車,消防艇,スプリンクラー消火装置,盗難警報器,保安用ヘルメット,防火被服,防じんマスク,防毒マスク,磁心,自動車用シガーライター,抵抗線,電極,溶接マスク,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物,ガソリンステーション用装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,金銭登録機,計算尺,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,潜水用機械器具,レギュレーター,アーク溶接機,金属溶断機,検卵器,電気溶接装置,電動式扉自動開閉装置,耳栓」第28類「遊戯用器具,カードゲーム用具,囲碁用具,将棋用具,歌がるた,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,ビリヤード用具,カードゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃの部品及び附属品,その他のおもちゃ,人形,愛玩動物用おもちゃ,運動用具,スキーワックス,釣り具,昆虫採集用具,遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く 」。)(3) 審決の取消事由しかしながら,以下に述べるとおり,本願商標と引用商標とは非類似の関係にあり,本願商標は商標法4条1項11号に該当しないから,これに該当するとした審決は,事実誤認をしており,違法として取消しを免れない。
観念上の非類似本願商標及び引用商標は,それぞれ平易な英単語の片仮名表記を並置して成るものであるが,前半部の「マジカル」が「magical (魔法の)の」意味を有する形容詞である点で共通である。しかし後半部は,本願商標の「ウエスト」が「west (西)あるいは「waist(腰のくびれ,胴回り) 」」を意味するのに対し,引用商標の「クエスト」が「quest (探索,冒険」の旅)を意味している。
したがって,本願商標からは「魔法の腰のくびれ」又は「魔法の西域」のいずれかの観念を,引用商標からは「魔法の探索」の観念を,それぞれ生ずるものであり,両者の観念は取引者・需要者にとって容易に峻別可能である。
称呼上の非類似」, 商標の表示から明らかなように,本願商標からは「マジカルウエスト引用商標からは「マジカルクエスト」の称呼が生じ,両者は,ともに8音から成り,いずれもよどみなく一連に称呼でき,第5音における「ウ」と「ク」との差異音以外の7音は共通である。
(ア) しかし 「ウ」と「ク」は,単一の音自体としても音感等が全く異 ,なる音である。すなわち,両者を比較すると 「ウ」は狭母音であるた ,め,口腔内でくぐもったような音に聞こえるのに対し,「ク」は破裂音「k」と母音「u」の綴り音であり,呼気が「ウ」を発音する場合よりも遙かに勢いよくかつ大量に吐き出されるため,よりくっきりと外に向けて開放的に響く音に聞こえる。そして,両商標の称呼がなめらかに一連に称呼できるものであることに照らせば,8音中の1音のかかる差異が称呼全体に与える影響は大きく,したがって,両商標の称呼は類似しない。
(イ) また,前述した両商標の差異音である「ウ」と「ク」は,それぞれ「ル」と「エ」との間に挟まれている。そうすると,本願商標の称呼「マジカルウエスト」において,差異音「ウ」は「ル」に連続して発音され 「ルウ」が一つの「ル」の音,あるいは「ルー」と長音を延ばし ,た音に聞こえる。そして 「エ」は口腔内を開いて発音する強母音であ ,るから,弱母音「ウ」は,強く響く「ル」と「エ」に挟まれて明確に聞き取ることができない。そうすると,本願商標につき,聴者に聞こえる実際の称呼は 「マジカルエスト「マジカルーエスト」となる。 ,」,これに対し引用商標は 「マジカルクエスト」と,一音一音明確に聴 ,取されるから,両商標の称呼は類似しない。
(ウ) そのほか,前記アのとおり,本願商標からは「魔法の腰のくびれ」又は「魔法の西域」のいずれかの観念を生じさせるのに,引用商標からは「魔法の探索」の観念を生じさせる。このように両商標は,別々の観念を生じさせる文字商標である。したがって,取引者・需要者は,造語より成る商標とは異なり,称呼観念とを連結させて連想的に記憶するから,たとえ両者に称呼上共通する部分があったとしても,聴者は,両者を明確に識別可能である。
外観上の非類似本願商標及び引用商標は,外観上も類似しない。なぜなら,通常の取引者・需要者が商取引に際して発揮する一般的注意力に照らせば 「ウ」の,文字と「ク」の文字とを外観上混同することは到底考えられないからである。なお,前記のとおり,両者は別々の観念を生ずる片仮名の標準文字で書された文字商標であるから,図形商標・造語より成る商標・デザイン化された文字で表された商標等の外観が重要である商標とは異なり,取引者・需要者が自他商品を識別するに当たって,その拠り所とするのは観念及び称呼というべきであり,外観は判断要素として重要でない。
エ 特別の事情の存在本願商標である「マジカルウエスト」及び引用商標である「マジカルクエスト」は,単なる表音文字としての片仮名文字の羅列にとどまらず,前記アのとおり,本願商標は「魔法の腰のくびれ」又は「魔法の西域」の観念を,引用商標は「魔法の探索」の観念を,それぞれ生ずるものである。
したがって,需要者は,称呼外観よりも遙かに強く印象づけられ,より記憶しやすい観念を記憶し,記憶した観念に依拠して商品を識別することになるから,本願商標と引用商標との場合は,それぞれから観念が生じ,かつ,生じる観念がそれぞれ相違することにより,十分に彼此を識別することが可能であるという特別の事情が存在する。
2 請求原因に対する認否請求原因(1),(2)の各事実は認めるが,同(3)は争う。
3 被告の反論審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
(1) 本願商標が商標法4条1項11号に該当することにつき商標が類似するかどうかは,最終的には,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきものであり,具体的にその類否判断をするに当たっては,両商標の外観,観念,称呼を観察し,それらが取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであって,決して上記3要素の一つの対比のみによってなされるべきではない。そして少なくともその一つが類似している場合には,当該具体的な取引の実情の下では商品の出所の混同を生ずるおそれはないと考えさせる特別の事情が認められる場合を除いて,出所の混同を生ずるおそれがあるというべきである(最判昭和43年2月27日・民集22巻2号399頁 。)そして本件においては,後述のとおり,本願商標と引用商標とは,外観及び称呼において類似しており,かつ,当該指定商品取引の実情等において商品の出所の混同をきたすおそれはないと考えさせる特別の事情が存在するとも認められないから,両商標は類似するというべきである。
(2) 観念上の非類似の主張に対し原告は,本願商標からは「魔法の腰のくびれ」又は「魔法の西域」のいずれかの観念を,引用商標からは「魔法の探索」の観念を生ずる旨主張するが,失当である。
すなわち,本願商標については 「マジカル」と「ウエスト」はそれぞれ ,複数の語義を有しており,本願商標「マジカルウエスト」はかかる両者を結合させたものであるから,多くの取引者・需要者がその商標自体から直ちに一定の意義を想起できるものとはいえない。また,そもそも「魔法の腰のくびれ」という観念自体が,どのような腰のくびれなのか具体的に不明確であり 「魔法の西域」という観念も,なぜ生じるのか不明である。 ,次に,引用商標については,確かに,その構成中の「クエスト」の文字がテレビゲーム等の題号の一部に使用されているが,テレビゲーム等の主たる需要者は,子供を含む若年層を中心とした一般的な消費者であり,そのような一般的な消費者が「クエスト」を「探索」の意味をもって直ちに理解するとはいえない。また,本願商標及び引用商標が 「魔法の腰のくびれ 「魔 ,」,法の西域 「魔法の探索」を意味する親しまれた熟語として定着している 」,わけでもない。
(3) 称呼上の非類似の主張に対し原告は,本願商標と引用商標は称呼上類似していない旨主張するが,失当である。
すなわち,本願商標と引用商標の称呼上の差異は,第5音における「ウ」と「ク」の音にあるが 「ウ」は,前舌面を下歯の歯ぐきにわずかに触れる ,程度に後退させ,後舌面を高め,唇を尖らせ,口腔の狭い部分から音を出すことによって発する音であり 「ク」は,後舌面を軟口蓋に接し破裂させて ,発する無声子音〔k〕と母音〔u〕との結合した音節である。このような,本願商標における「ウ」と引用商標における「ク」は,ともに「ウ」の母音を共通にする互いに音感・音質において近似する音であって,かつ,当該差異音は,称呼の識別において比較的聴取しがたい中間に位置している。そして,本願商標と引用商標は,ともに全体をよどみなく一連に,なめらかに称呼される商標であるから,このような商標において,上記のような差異音の一音が全体の称呼に及ぼす影響は小さい。さらに,本件は,前記(2)のとおり,称呼に結びついている観念が相違していることにより観念称呼類否判断に影響を与えるといえる場合にも当たらない。
(4) 外観上の非類似の主張に対し原告は,本願商標と引用商標は外観上類似していない旨主張するが,失当である。
すなわち,本願商標と引用商標は,それぞれ「マジカルウエスト」と「マジカルクエスト」の片仮名文字を標準文字で表してなる。つまり,両者は,ともに片仮名8文字から成り,語頭の「マジカル」と語尾の「エスト」の合計7文字を共通にし,その差異は,同書,同大,等間隔で一体的に表された8文字構成中のわずかに一字であり,しかも,5文字目という,比較的目に留まりにくい中間部に位置するに過ぎない。そして,相違する「ウ」と「ク」の文字自体,その態様から,外観上近似した印象を与える。
以上から,時と処を異にして接した場合,本願商標と引用商標は外観上極めて紛らわしく,一般的な消費者である需要者は,混同するおそれがあるというべきである。
(5) 特別の事情が存在する旨の主張に対し原告は,本願商標からは「魔法の腰のくびれ」又は「魔法の西域」のいずれかの観念を生じ,引用商標からは「魔法の探索」の観念を生じる,したがって,両者は生じる観念が相違するから,取引者・需要者が十分に識別することが可能であるという特別の事情が存在する旨主張するが,失当である。
すなわち,仮に両商標から原告が主張するような観念が生ずる場合があったとしても,本願商標と引用商標とは,前記のとおり,称呼及び外観において類似し,本件における観念の差異は,取引者・需要者に両商標の差異を格段印象づけるほど明確なものとはいえないから,この差異が称呼上及び外観上の類似性をしのぐものとはいえない。
当裁判所の判断
), 1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯 ,(2)(審決の内容)の各事実はいずれも当事者間に争いがない。
2 本願商標と引用商標の類否の有無(請求原因(3))(1) 商標の類否は,対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり,その具体的取引状況に基づいて判断すべきである(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁 。)そこで,以上の見地に立って,本願商標と引用商標の類否について判断する。
(2) 本件における事実関係前記1の請求原因(1)(特許庁における手続の経緯)において認定したとおり,平成15年6月9日に出願された本願商標は,標準文字の片仮名である「マジカルウエスト」から成る商標であって,指定商品を第16類の「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」等とするものである。一方,平成14年5月7日に出願され平成15年1月24日に登録された引用商標(甲2)は,同じく標準文字の片仮名である「マジカルクエスト」から成る商標であって,指定商品を第9類の「理化学機械器具」等及び第28類の「遊戯用器具」等とするものである。
(3) 観念上の類否原告は,本願商標「マジカルウエスト」からは「魔法の腰のくびれ」又は「魔法の西域」のいずれかの一方の観念が生じ,また引用商標「マジカルクエスト」からは「魔法の探索」の観念が生ずるものであり,このように,本願商標と引用商標は,生じる観念が相違するから,取引者・需要者が十分に識別することが可能であると主張する。
確かに,甲第3号証ないし第11号証によれば,引用商標の構成中の「クエスト」の文字が 「エバークエスト」等のように,複数のロールプレイン ,グゲーム(RPG)の題号の一部に使用されており,その中には,昭和61年5月に一作目が発売されて以来,その累計出荷本数が4000万本を超えると報じられる「ドラゴンクエストシリーズ」もあることが認められる。しかし,たとえ「クエスト」の文字を題号の一部に含むロールプレイングゲームが複数存在し,その中には上記の「ドラゴンクエストシリーズ」のように広く知れ渡った題号が存在したとしても,それ以上に,題号のみならずそれらのゲームの内容までが取引者・需要者と認められる一般消費者に広く浸透し 「クエスト」に接したときにそれが「探索」という意味であると直ちに ,理解されるほどの状況になっているということは困難であるのみならず,一般消費者の英語の理解度からしても 「クエスト」に接したとき,それが ,「探索」という意味であると直ちに理解することも困難というべきである。
また,原告が,本願商標及び引用商標から生ずる観念であると主張する「魔法の腰のくびれ 「魔法の西域」又は「魔法の探索」という観念自体 」,が,いずれも一般的な言語表現とはいえず,その具体的意味すら明らかでないものであるから,これを本願商標に係る各指定商品の取引者・需要者である一般消費者が直ちに想起できるということ自体にも無理がある。
したがって,原告の上記の主張は採用することができない。
(4) 称呼上の類否ア 前記のとおり,本願商標は 「マジカルウエスト」という標準文字から ,成る商標であり,引用商標は 「マジカルクエスト」という標準文字から ,成る商標である。したがって,その構成上,第5文字目における「ウ」又は「ク」に差異があるが,他の部分は共通していることから,本願商標からは「マジカルウエスト」の称呼が生じ,引用商標からは「マジカルクエスト」の称呼が生ずることが認められる。
そこで,この「マジカルウエスト」と「マジカルクエスト」の両称呼を対比すると,両称呼は,ともに8音構成からなり,そのうち7音が共通し,相違する音は,第5音目の「ウ」と「ク」のみである。しかるに,両音はともに「ウ」の母音を共通にし,しかも,いずれも8音構成の第5音目という中間の位置にあるから,本願商標と引用商標を,それぞれ一連に称呼する場合,聴者は差異音「ウ 「ク」からは特に強い印象を受けないま 」,まに聞き流してしまう可能性が高く,両商標の称呼は全体の語感,語調が近似した紛らわしいものというべきであり,両商標は,称呼において類似するということになる。
イ これに対し原告は 「ウ」と「ク」は,単一の音自体としても音感等が ,全く異なるから,両商標の称呼がなめらかに一連に称呼できるものであることに照らし,8音中の1音の差異が称呼全体に与える影響は大きい,しかも,本願商標は 「マジカルエスト 「マジカルーエスト」と称呼され ,」,るのに対し,引用商標は 「マジカルクエスト」と,一音一音明確に聴取 ,される,本願商標と引用商標は,別々の観念を生ずる文字商標であるから,取引者・需要者は,造語より成る商標とは異なり,称呼観念とを連結させて連想的に記憶する,などを指摘し,両者が称呼上類似しないと主張する。
しかし,上記アにおいて検討したとおり,本願商標と引用商標において,その唯一の差異音である「ウ」と「ク」は,ともに「ウ」の母音を共通にし,しかも,いずれも8音構成の中の第5音目という中間の位置にあることに鑑みると,本願商標と引用商標の両称呼を,各指定商品の取引者・需要者と認められる一般消費者が聴けば,両商標の称呼がなめらかに一連に称呼できるものであることに照らしても,商品の出所について誤認混同を生ずる虞れがあることは否定できない。また,本願商標が「マジカルエスト 「マジカルーエスト」と称呼されるというのは,本願商標における 」,「ウ」が 「マジカル」の直後であり 「ウエスト」の語頭に位置してい ,,,。 ることに照らし 「ウ」の音を過小評価したものであって,採用できないさらに,本願商標と引用商標が,そもそも別々の観念を生ずるといえないことは,前記(3)で判断したとおりである。
以上によれば,原告の上記の主張は採用することができない。
(5) 外観上の類否ア 前記のとおり,本願商標は「マジカルウエスト」という標準文字から成る商標であり,引用商標は「マジカルクエスト」という標準文字から成る商標であって,その構成上,第5文字目における「ウ」又は「ク」に差異があるが,他の部分は共通していることは,前記のとおりである。そうすると,本願商標と引用商標は,ともに片仮名8文字が,同書,同大,等間隔で一体的に表された標準文字から構成され,しかも,語頭4文字の「マジカル」と,語尾3文字の「エスト」が共通であり,その差異は,比較的目にとまりにくい中間部(第5文字目)の「ウ」と「ク」のみであるから,両商標は,全体の外観が近似した紛らわしいものであると認められる。したがって,両商標は,外観において類似するというべきである。
イ 原告は,取引者・需要者が商取引に際して発揮する一般的注意力に照らせば 「ウ」の文字と「ク」の文字とを外観上混同することは到底考えら ,れない,本願商標及び引用商標は,別々の観念を生ずる片仮名の標準文字で書された文字商標であるから,取引者・需要者が自他商品を識別するに当たって,その拠り所とするのは観念及び称呼である,と主張する。
しかし,一般消費者が 「ウ」の文字と「ク」の文字を混同するはずが ,ないといえたとしても,上記アで検討したような両商標の外観の近似の程度に照らせば,一般消費者が時と処を異にして両商標を見れば,両者は外観上紛らわしく,商品の出所について誤認混同を生ずる虞れがあることは否定できない。また,本願商標と引用商標が,そもそも別々の観念を生ずるといえないことは,前記(3)で判断したとおりである。
以上によれば,原告の上記の主張は採用することができない。
(6) 特別の事情の存在の有無本願商標と引用商標とは,上記(4),(5)で認定判断したとおり,称呼及び外観において類似するものである。また,原告が主張するような観念の差異が仮に認められるとしても,前記のとおり,本願商標及び引用商標から生ずる観念であるとされる「魔法の腰のくびれ 「魔法の西域」又は「魔法の 」,探索」という観念は,いずれも一般的な言語表現ではなく,その具体的意味すら明らかでないのであるから,この程度の差異をもって彼此を識別することが可能な特別の事情が存在するということもできない。
したがって,これに関する原告の主張も採用することができない。
(7) 小活以上に説示したところによれば,本願商標と引用商標は,その称呼,外観において類似しており,全体的に考察してみて,本願商標は,引用商標の類似商標と認めるのが相当である。したがって,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断に誤りはない。
3結論以上によれば,原告の本訴請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 田中孝一